説明

ガス注入器

【課題】ガスを一定圧力により持続的かつ緩やかに消化管へ注入することができ、かつ自動停止することができるガス注入器を提供する。
【解決手段】患者の消化管へガスを注入するためのガス注入器1であって、ガスの圧力源・供給源として、高圧ガスボンベではなく専用のガス貯蔵容器6とポンプ2を採用し、容積可変のガス貯蔵容器の中に予め蓄えられているガスを、ポンプにより循環させながら、その一部を消化管へ分配して、注入するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプを用いて患者の消化管へガスを注入するためのガス注入器に関し、特にCT Colonography(以下「CTC」という)検査において大腸を拡張させるために炭酸ガスを注入するのに適している。そして、本発明はガスの損失を防止しかつ注入流路内のガスの注入圧力を所望の圧力に保持するために、予めガス貯蔵容器の中に蓄えられているガスをポンプにより循環させながらその一部を消化管へ分配して注入することを特徴とする簡易構造のガス注入器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ断層撮影(CT)技術の進歩により、注腸X線検査や大腸内視鏡検査の進歩した我が国においてもCT画像を利用したCTC検査の研究が盛んに行われている。
【0003】
ところで、このCTC検査において有用なCT画像を得ようとする場合、空気や炭酸ガス(CO)を注入して大腸を拡張する必要がある。
【0004】
ここで、炭酸ガス(CO)は空気に比べて腸管からの吸収速度が約130倍と速く呼気中に速やかに排出されるため、検査中や検査後の患者の腹痛や膨満感が軽減されるなどのメリットがある。また、正常血中ガス濃度に対する影響も少なく、既に内視鏡検査に応用されておりその安全性が確認されている。このため、今後はCTC検査においても、炭酸ガスを用いた大腸の拡張方法が普及するものと期待されている。
【0005】
しかしながら、上述のとおり、炭酸ガス(CO)は空気に比べて極めて速い速度で腸管から吸収されるため、CTC検査中を通じて大腸を拡張した状態に維持しておくためには、随時大腸内へ炭酸ガスを補充する必要がある。また、過大な圧力でのガスの注入や一時の大量のガスの注入は、患者に不快感を与えるばかりでなく、最悪の場合、腸管穿孔を引き起こして患者の生命を脅かすことがある。したがって、炭酸ガスの注入は一定圧力により持続的かつ緩やかに注入できることが極めて重要となる。
【0006】
このため、近年では英国Medicsight社や米国E-Z-EM社により、炭酸ガスを所定の圧力により持続的かつ緩やかに大腸へ注入することができ、かつ腸管内の圧力が所定の設定圧力を超える場合はガスの注入を速やかに自動停止することができる炭酸ガス自動注入装置が開発され販売されている(非特許文献1−5参照)。また、大腸など消化管へ炭酸ガスを注入することを直接の目的とするものではないが、同様の技術を用いた炭酸ガスの自動注入装置としては、腹腔鏡外科手術などにおいて内視鏡及び処置具と共に使用される送気装置又は気腹装置が知られている(特許文献1−4参照)。
【0007】
しかしながら、これらの自動注入装置は、いずれも多量のガスを注入することができるよう、ガスの圧力源・供給源として、炭酸ガスが充填されたガスボンベや病院内において一括して管理されている複数のガスボンベ等からなるガス施設など、高圧の外部ガス供給手段を使用することを前提として開発されているものである。このため、これらの自動注入装置では、高圧のガス供給源から低圧の注入圧力を持続的かつ安定して得るために特殊な注入回路や制御機器を必要としていた。特に、装置に付随させて高圧のガスボンベを単独で用いるタイプの自動注入装置の場合は、ガスの消費に伴って低下するボンベ内の圧力変動に対応して厳密に制御する必要があるため、自動注入装置の構造および制御システムが極めて複雑なものとなり高価な装置となっていた。
【0008】
したがって、この分野においては、構造及び操作が簡単でかつ安価な炭酸ガスの自動注入装置に対する強いニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Pickhardt,P.J.:ScreeningCT Colonography:How I do it.AJR 189;290-298,2007
【非特許文献2】飯沼元,三宅基隆:国立がんセンターにおけるCT Colonography:月刊INNERVISION 第262号付録;3,2008
【非特許文献3】山崎通尋,平野雄士:空気の注入と体位,撮影条件:月刊INNERVISION 第262号付録;6-7,2008
【非特許文献4】鈴木雅裕:患者さんにやさしい炭酸ガス注入:月刊INNERVISION 第262号付録;23,2008
【非特許文献5】飯沼元,三宅基隆ら:MDCTと三次元画像 1)CT colonography:臨床放射線 Vol.52 No.11;1318,2007
【特許文献1】特開平5−154094号公報
【特許文献2】特表平8−509410号公報
【特許文献3】特開2000−139830号公報
【特許文献4】特開2002−159443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、構造及び操作が簡単であり、それでいてガスを一定の圧力で自動的に持続的かつ緩やかに患者の消化管へ注入することができるガス注入器であって、特にCTC検査において、患者の大腸を拡張するために炭酸ガスを注入するのに適しているガス注入器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、消化管を拡張するのに適したガス注入器について鋭意検討を重ねた結果、生体に対するガスの注入部位を主に大腸などの消化管へ限定し、かつ使用する注入ガスも主として炭酸ガスなどに限定した場合、例えばCTC検査時間中に必要とされる注入ガスの量は、数リットルから十数リットルまでと極めて少量で済まされることを見い出した。
【0012】
そこで、本発明者等は、注入ガスを昇圧し患者の消化管へ送り出すためのガスの圧力源・供給源として、高圧ガスボンベではなく専用のガス貯蔵容器とポンプを採用し、ガス貯蔵容器の中に予め蓄えられているガスを前記ポンプにより循環させながらその一部を消化管へ分配して注入することにより上記の目的を達成できる簡易構造のガス注入器を開発し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
具体的には、本発明によれば、患者の消化管へガスを注入するためのガス注入器であって、前記ガスを移送するためのポンプと、前記ポンプの吐出口から排出されたガスを前記ポンプの吸引口へ返還するための循環流路と、前記循環流路を循環するガスの一部を消化管へ送気するために、前記循環流路の途中から分岐している注入流路と、前記注入流路内のガスの注入圧力を測定するために、前記注入流路の途中に設けられた圧力計測手段と、ガスを貯蔵し、かつ注入により消費されるガスの量によらず前記循環流路を流れるガスの流量を一定に保つために、前記注入流路との分岐点と前記ポンプ吸引口との間で前記循環流路の一部を形成するように入口ポート及び出口ポートが接続されている容積可変のガス貯蔵容器と、そして前記循環流路を流れるガスの流量を調節することにより、前記注入流路内のガスの注入圧力を所望の圧力へ調節しかつその圧力を一定に保持する、前記分岐点と前記ガス貯蔵容器の入口ポートとの間に設けられた圧力調節弁と、を備えていることを特徴とする前記ガス注入器が提供される。
【0014】
なお、本発明のガス注入器は、CTC検査などにおいて大腸など患者の消化管を拡張するために使用されることを想定して開発されているため、使用するガスは人体に対して安全なガスであれば、例えば空気などを使用することができるが、注入時の患者の不快感を低減するのにより一層効果があることから、炭酸ガスを使用することがより好ましい。
【0015】
本発明では、注入ガスを昇圧し患者の消化管へ送り出すためのガスの圧力源・供給源として、高圧ガスボンベではなく、循環流路内のガス貯蔵容器とこれに接続されたポンプを採用している。そして、予めガス貯蔵容器の中に蓄えられたガスを前記ポンプにより循環させながら、その一部を前記循環流路の途中から分岐した注入流路を介して消化管へ分配して注入する構成を採用している。
【0016】
すなわち、本発明のガス注入器では、消化管へ注入するのに必要なガスの圧力は、ポンプの周りに設けられた循環流路の中を比較的多量のガスを循環させることにより発生させている。そして、ポンプにより昇圧されたガスの圧力を循環流路の一定区間内でプラス圧に保ち、さらにその圧力を調節できるように、循環流路の途中には循環流路を流れるガスの流量を調節するための圧力調節弁が設けられている。
【0017】
したがって、患者の消化管へガスを注入するための注入流路は、上記循環流路内のガスの圧力がプラス圧に保たれている区間、すなわちポンプの吐出口から圧力調節弁までの区間の途中から分岐しており、注入流路内のガスの圧力(注入圧力)は、循環流路を流れるガスの流れ及び圧力によって一定のプラス圧になるように支持されている。
【0018】
なお、本発明のガス注入器では、注入流路内においてより精密なガスの圧力(注入圧力)の調整を望むような場合、循環流路内の圧力調節弁に加えてガス注入器のポンプへ流量可変型のポンプを適用することもできる。このようなポンプの吐出流量の可変化は、例えばポンプのモーターの回転数を可変制御可能とすることなどにより簡単に実現することができる。そして圧力調節弁と流量可変型のポンプの併用により、循環流路を流れるガスの流量および圧力をより広範囲にかつ高精度で調節できるようになり、その結果、注入ガスの精密な圧力調整および圧力制御が可能となる。
【0019】
ただし、ガス注入器の複雑化を避けてコスト面を重視するような場合は、循環流路内の圧力調節弁を省略し若しくは圧力調節弁に換えて、流量可変型のポンプのみにより循環流路を流れるガスの流量および圧力を調節することも可能である。
【0020】
ところで、大腸のような消化管では、人体に安全でかつ消化管の拡張に必要な圧力は1〜25mmHg(133〜3300Pa)程度であり、また消化管内で単位時間当たりに消費されるガスの量(吸収量)は、腹腔鏡外科手術などで消費されるガスの量(リーク量など)に比べて少ない。このため、消化管内の圧力が所望の圧力に達した後、この圧力を維持するために継続して注入しなければならない単位時間当たりのガスの量(ガス流量)は極めて少なくなり、この結果、注入流路内のガスの流れは殆んどなくなり、注入流路内のガスの注入圧力(全圧)は実質的に消化管内の圧力と等しい静的圧力が支配する。
【0021】
一方、これに対し循環流路を流れるガスは、注入中、注入流路内のガスの圧力を常に一定のプラス圧に支持しなければならないので、注入流路を流れるガスの流量の変動によらず、常に所定の流量が循環流路を循環している必要がある。したがって、循環流路を流れるガスの圧力を把握するためには、ガスの静的圧力のみならず動的圧力も計測する必要がある。
【0022】
このため、本発明では、注入圧力および消化管の内部圧力を把握し、若しくは圧力調節弁またはポンプを制御するために利用するガスの圧力を計測するための圧力計測手段は、循環流路内ではなく、実質的に消化管内の圧力とみなすことができる静的圧力に支配されている注入流路内に設けているという特徴がある。
【0023】
また、管路を流れるガスの圧力損失は、流速(管路の断面積が一定であれば、流量)の2乗に比例する。このため、循環流路を流れるガスの流量が消化管へのガスの注入に伴って減少すると、圧力損失の減少によりポンプの吐出口から圧力調節弁までの区間の循環流路内のガスの圧力及びその圧力より支持されている注入流路内のガスの圧力までもが一定の圧力に保持できなくなるという不都合を生じる。
【0024】
そこで、本発明では、炭酸ガスなど注入ガスを貯蔵し、そして大気圧下、循環流路を流れるガスの流量を一定に保つように容積を変化させながらガスの減少分を補充することができる容積可変のガス貯蔵容器を循環流路の途中に接続し、そしてそれにより上記の問題を解決している。
【0025】
容積可変のガス貯蔵容器は、大気圧と均衡を保ちながら循環流路を流れるガスの流量を一定に保つようにその容積を変化できるものであれば、特にその形状や構造、材質などに制限はないが、機能性および製作の容易性、コスト面などを考慮すると、プラスチック材料などの可撓性材料から作製されていることが好ましい。また、ある立体形状の天板が上下動することによりその容積を変化させることができるフロート式の構造を有するようなタイプのガス貯蔵容器であってもよい。
【0026】
特に、容器内のガスの残量によって天板のみが水平を保持しながら上下に移動するタイプの蛇腹構造のガス貯蔵容器やフロート式の構造のガス貯蔵容器である場合、ガス注入時の天板の高さの変化を測定することにより、注入流路内に専用の積算計を設けることなく容易に注入したガスの積算使用量を算出することが可能となる。なお、上述されたガス貯蔵用器に必要とされる容積の大きさは、消化管内でのガスの吸収速度および予定される検査等の処置時間などから算出し決定することができる。
【0027】
本発明では、容積可変のガス貯蔵容器は圧力調節弁とポンプ吸引口との間で循環流路の一部を形成するように接続され、注入により消費されるガスの量によらず循環流路を流れるガスの流量を一定に保つように機能する。したがって、容積可変のガス貯蔵容器は、炭酸ガスなど注入に必要なガスを予め蓄えておく貯蔵容器としての役割を果たすと共に、循環流路を流れるガスの流量を変化させないようにガスの注入に伴って消費されるガスの減少分を補償する、いわゆるアキュムレーターとしての役割も果たしている。
【0028】
なお、容積可変のガス貯蔵容器は、オペレータの操作ミス等によりその中に貯蔵された注入ガスがポンプを通さずに直接患者の消化管へ逆流することがないよう、入口ポートにガスの逆流を防止するための逆止弁を設けていることが好ましい。
【0029】
このように、本発明によるガス注入器では、注入ガスを昇圧し患者の消化管へ送り出すためのガスの圧力源・供給源として、循環流路内のガス貯蔵容器とこれに接続されたポンプを採用し、そしてガス貯蔵容器の中に蓄えられたガスを前記ポンプにより循環させながら、その一部を前記循環流路から分岐した注入流路へ分配することにより消化管へガスを注入するように構成している。そして、注入により消費されたガスの減少分は容積可変のガス貯蔵容器から補充するように接続しているので、循環流路を流れるガスの流量は注入により消費されるガスの量によらず一定に保たれる。
【0030】
また、そのため、注入中のポンプ吐出口から圧力調節弁までの区間など循環流路内のガスの圧力も一定に保たれており、その結果、循環流路内のガスの圧力によって支持される循環流路から分岐した注入流路内のガスの圧力(注入圧力)も一定に保たれる。
【0031】
さらに、本発明によるガス注入器では、循環流路内に設けられた圧力調節弁の開度を調節して循環流路(および注入流路)へ流れるガスの流量を調節することにより、循環流路から分岐した注入流路内のガスの圧力(注入圧力)を例えば1〜25mmHg(133〜3300Pa)の所望の圧力に調節することができるように構成している。また、ガス注入器のポンプが流量可変型である場合は、ポンプの回転数を調節することによっても上記のように注入流路内のガスの圧力(注入圧力)を調整することもできる。そして、循環流路を流れるガスの流量は、先述のように注入により消費されるガスの量によらず一定に保たれるので、前記圧力調節弁若しくは流量可変型のポンプにより調節されたガスの注入圧力も注入により消費されるガスの量によらず一定に保たれる。
【0032】
この結果、本発明によれば、構造及び操作が簡単であり、それでいてガスを一定の圧力で自動的に持続的かつ緩やかに患者の消化管へ注入することができるガス注入器であって、特にCTC検査において、患者の大腸を拡張するために炭酸ガスを注入するのに適しているガス注入器を提供することができる。
【0033】
本発明によるガス注入器では、消化管へ注入されるガスの圧力は圧力調節弁若しくは流量可変型のポンプにより循環流路を流れるガスの流量を調節することにより調整される。このため、循環流路内に設けられた圧力調節弁の開度若しくは流量可変型のポンプの回転数は、注入流路内に設置された圧力計測手段により計測されるガスの注入圧力に基づいて手動により調節することができる。
【0034】
その結果、循環流路を流れるガスの流量および注入流路内のガスの注入圧力は注入により消費されるガスの量によらず一定に保たれるので、実際には一度手動で圧力調節弁の開度若しくは流量可変型のポンプの回転数を調節すれば、その後は実質的に圧力調節弁若しくは流量可変型のポンプを調節することなくガスの注入圧力が一定に保つことができる。
【0035】
また、本発明のガス注入器では、目標圧力を設定することができ、そして圧力計測手段により計測された注入流路内のガスの注入圧力と前記設定された目標圧力とを比較することにより、注入圧力が目標圧力と一致するように圧力調節弁を作動若しくは流量可変型のポンプの回転数を制御する第1の制御装置を含めることができる。
【0036】
この場合、循環流路内に設けられた圧力調節弁の開度若しくは流量可変型のポンプの回転数は、注入流路内に設置された圧力計測手段により計測されるガスの注入圧力に基づいてフィードバック制御により自動的に調節される。
【0037】
さらに、本発明のガス注入器では、上限圧力及び下限圧力を設定することができ、そして圧力計測手段により計測される注入流路内のガスの注入圧力が前記上限圧力より高くなった時又は前記下限圧力より低くなった時はポンプを停止させる第2の制御装置を含めることもできる。
【0038】
この場合、ガスの注入圧力が人体に対して危険な圧力に到達する前、若しくは消化管の拡張が維持できなくなる圧力へ低下する前にポンプが停止されるので、過剰注入による人体に対する危険や圧力不足による観察不良を未然に防ぐことができ、またオペレータの監視負荷を低減することができる。なお、ポンプが停止すると、ガス注入器の注入流路、循環流路及びガス貯蔵容器内のガスの圧力は大気圧へ戻るため、注入流路と連通にある消化管の内部圧力も大気圧へ戻り人体へ悪影響を及ぼすことはない。
【0039】
また、本発明のガス注入器では、注入経路の一部を形成するように消化管からの排出物を逆流させないよう貯留するための排液バックを接続することが好ましい。通常、大腸などの消化管の中には液状の内容物が含まれているため、消化管から排出された内容物を排液バックで捕捉することにより、注入流路を介してガス注入器へ逆流するのを防止するのに有効だからである。
【0040】
また、本発明のガス注入器では、前記注入経路の途中に消化管からのガスの逆流を防止するための逆止弁を設けることができる。この逆止弁は、ポンプを停止すると消化管の中のガスが直ちにガス注入器へ逆流してしまうのを防止するために機能する。
【0041】
また、本発明のガス注入器では、注入流路の途中に消化管へ又は消化管からのガスの流れを遮断することができる開閉弁を設けることができる。
【0042】
この開閉弁は、ガス注入器を立ち上げる時、ポンプを起動すると直ちにガスが患者の消化管へ流れてしまうのを防止するために、若しくはポンプを停止すると消化管の中のガスが直ちにガス注入器へ逆流してしまうのを防止するために機能する。すなわち、注入流路内に開閉弁があれば、注入の開始は、ポンプを起動して圧力調節弁により注入流路内のガスの注入圧力を調節した後、同じ注入流路内に設けられた開閉弁を全閉から全開の状態へ開けることにより実施し、一方、注入の終了は、ポンプを停止することなく開閉弁を全開から全閉の状態へ閉じることにより実施することができる。
【0043】
また、本発明では上記の開閉弁を利用して、さらに上限圧力及び下限圧力を設定することができ、そして圧力計測手段により計測される注入流路内のガスの注入圧力が前記上限圧力より高くなった時又は前記下限圧力より低くなった時は前記開閉弁を閉じる第3の制御装置を含めることができる。
【0044】
この場合、ガスの注入圧力が人体に対して危険な圧力に到達する前、若しくは消化管の拡張が維持できなくなる圧力へ低下する前に消化管へ又は消化管からのガスの流れが遮断されるので、過剰注入による人体に対する危険や圧力不足による観察不良を未然に防ぐことができ、またオペレータの監視負荷を低減することができる。ただし、ポンプを停止する場合と異なり、注入されたガスはそのまま消化管の中へ閉じ込められるため、消化管の内部圧力は急激に低下せず、消化管へのガスの吸収に伴って徐々に大気圧へ戻ることとなる。
【0045】
また、本発明のガス注入器では、注入流路の途中に圧力計測手段により計測される注入流路内のガスの圧力(注入圧力)が所定の圧力より高くならないようにガスを大気中へ開放する安全弁を備えることができる。
【0046】
この場合、ガスの注入圧力が人体に対して危険な圧力に到達する前に注入ガスが大気中へ開放されるので、過剰注入による人体に対する危険を未然に防ぐことができる。特に安全弁は、電気的又はソフト的に作動する上述の開放弁やポンプと異なり機械的又はハード的に作動するものであるため、構造が単純でかつ極めて信頼性が高いという特徴があり安全の確保のために有用である。
【0047】
本発明によるガス注入器は、患者の大腸などの消化管を拡張するために使用することを目的としているため、注入流路の先端部分には消化管の中へ挿入するためのガス注入手段を含んでいてもよい。例えば、CTC検査などにおいて大腸を拡張するために使用する場合は、肛門から大腸へ挿入するのに適した大腸カテーテルが使用される。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、注入ガスを昇圧し患者の消化管へ送り出すためのガスの圧力源・供給源として、高圧ガスボンベではなく専用のガス貯蔵容器とポンプを採用し、容積可変のガス貯蔵容器の中に予め蓄えられているガスを前記ポンプにより循環させながらその一部を消化管へ分配して注入するよう構成したので、注入流路内のガスの圧力(注入圧力)は循環流路内に設けた圧力調節弁若しくは流量可変型のポンプにより所望する任意の圧力へ調整することができ、かつ注入により消費されるガスの量によらず一定に保つことができる。
【0049】
その結果、本発明によれば、構造及び操作が簡単であり、それでいてガスを一定の圧力で自動的に持続的かつ緩やかに患者の消化管へ注入することができるガス注入器であって、特にCTC検査において、患者の大腸を拡張するために炭酸ガスを注入するのに適しているガス注入器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による第1の実施形態に係るガス注入器の全体を概略的に示した回路図である。
【図2】本発明による第2の実施形態に係るガス注入器の全体を概略的に示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の一実施形態に係るガス注入器について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例】
【0052】
[実施例1]
図1は、本発明による第1の実施形態に係るガス注入器1全体の回路を概略的に示している。図1を参照して理解されるように、実施例1のガス注入器1は、ガスを移送するためのポンプ2と、ポンプ2の吐出口21から排出されたガスをポンプ2の吸引口22へ返還するための循環流路3と、そして循環流路3を循環するガスの一部を消化管へ送気するための注入流路4とから構成されている。
【0053】
また、循環流路3には、ガスを貯蔵しかつ注入により消費されるガスの量によらず循環流路3を流れるガスの流量を一定に保つための循環流路の一部を形成するように入口ポート61及び出口ポート62が接続されている容積可変のガス貯蔵容器6と、そして循環流路3を流れるガスの流量を調節することにより、注入流路内のガスの注入圧力を所望の圧力へ調節しかつその圧力を一定に保持するための圧力調節弁7が含まれている。また、ガス貯蔵容器6の入口ポート61には、ガスの逆流を防止するための逆止弁10が設けられている。
【0054】
さらに、注入流路4には、注入流路内のガスの注入圧力を測定するための圧力計測手段5と、消化管へ又は消化管からのガスの流れを遮断するために機能する開閉弁8と、そして消化管からの排出物を逆流させないよう貯留するための排液バック9とが含まれており、さらに注入流路4の先端部分には、コネクター41を介して患者の消化管へ挿入するための注入手段20が接続されている。
【0055】
実施例1のガス注入器1では、注入ガスを昇圧し患者の消化管へ送り出すためのガスの圧力源・供給源として、高圧ガスボンベではなく、循環流路3内のガス貯蔵容器6とこれに接続されたポンプ2を採用しているため、消化管へ注入するのに必要なガスの圧力は、ポンプ2の周りに設けられた循環流路3の中を比較的多量のガスを循環させることにより発生させる。そして、ポンプ2により昇圧されたガスの圧力を循環流路3の一定区間内でプラス圧に保ち、そしてその圧力を調節できるように、循環流路3には循環流路を流れるガスの流量を調節するための圧力調節弁7が設けられている。
【0056】
したがって、注入流路4内のガスの圧力(注入圧力)は、注入中、ポンプ2の吐出口21から圧力調節弁7までの区間を流れるガスの流れ及び圧力によって一定のプラス圧になるように支持される。
【0057】
また、実施例1のガス注入器1では、圧力計測手段5は循環流路3内ではなく注入流路4内に設けている。その理由は、大腸のような消化管では消化管内の圧力が所望の圧力に達した後、その圧力を維持するために注入しなければならないガス流量が極めて少なくなる。このため、注入流路4内のガスの注入圧力は実質的に消化管内の圧力と等しい静的圧力とみなすことができ、そのため注入流路4内への圧力計測手段5の設置は、注入圧力や消化管の内部圧力を把握し、そして圧力調節弁7またはポンプ2を制御するために利用するのにも有益だからである。
【0058】
実施例1のガス注入器1では、容積可変のガス貯蔵容器6は循環流路3の一部を形成するように接続され、注入により消費されるガスの量によらず循環流路3を流れるガスの流量を一定に保つように機能する。したがって、容積可変のガス貯蔵容器6は、炭酸ガスなど注入に必要なガスを予め蓄えておく貯蔵容器としての役割を果たすと共に、循環流路3を流れるガスの流量を変化させないようにガスの注入に伴って消費されるガスの減少分を補償する、いわゆるアキュムレーターとしての役割も果たしている。なお、ガス貯蔵容器6へのガスの充填は入口ポート61又は出口ポート62を介して行うこともできるが、実施例1のガス注入器1のように専用のガス充填ポート63が設けられている場合はこれを利用して充填すると余分な手間が省けて便利である。
【0059】
容積可変のガス貯蔵容器6は、大気圧と均衡を保ちながら循環流路3を流れるガスの流量を一定に保つようにその容積を変化できるものであれば、特にその形状や構造、材質などに制限はないが、実施例1のガス注入器1では、機能性および製作の容易性、コスト面などを考慮して、プラスチックの可撓性材料からなる容積可変のガス貯蔵容器6を採用している。また、実際のガス貯蔵用器6に必要とされる容積の大きさは、消化管内でのガスの吸収速度および予定される検査等の処置時間などから算出し決定することができる。
【0060】
このように、実施例1のガス注入器1は、注入ガスを昇圧し患者の消化管へ送り出すためのガスの圧力源・供給源として、循環流路3内のガス貯蔵容器6とこれに接続されたポンプを採用し、そしてガス貯蔵容器6の中に蓄えられたガスをポンプ2により循環させながら、その一部を循環流路3から分岐した注入流路4へ分配することにより消化管へガスを注入するように構成されている。そして、注入により消費されたガスの減少分は容積可変のガス貯蔵容器6から補充するように構成されているので、循環流路3を流れるガスの流量は注入により消費されるガスの量によらず一定に保たれる。
【0061】
また、そのため、注入中のポンプ2の吐出口21から圧力調節弁7までのガスの圧力も一定に保たれており、その結果、循環流路3内のガスの圧力によって支持される注入流路4内のガスの注入圧も一定に保たれる。
【0062】
次に、実施例1のガス注入器1の使用手順について説明する。
【0063】
1.注入の準備
実施例1のガス注入器1では、ガス充填ポート63を介して炭酸ガスなどの注入ガスを必要量、ガス貯蔵容器6へ充填する。この時、充填ガスがガス注入器1の回路の外へ流出しないよう、注入流路4に設けられた開閉弁8を閉じておく。また、注入流路4に開閉弁8を備えていないタイプのガス注入器では、ガス貯蔵容器6の出口ポート62を、若しくは入口ポートに逆止弁10が設けられていないタイプのガス貯蔵容器6の場合は入口ポート61及び出口ポート62の両ポートを予めクランプ等(図示せず)で閉塞しておくことによりガスを充填することができる。
【0064】
一方、注入流路4の先端部分には、コネクター41を介して注入手段20を接続しておき、そして前記注入手段20を患者の消化管へ挿入する。
【0065】
2.注入圧力の調整
ポンプ2の起動により直ちにガスが消化管へ流れるのを防止するため、注入流路4の開閉弁8を閉じた状態でポンプ2を起動する。そして圧力計測手段5に計測された注入流路4内のガスの注入圧力に基づいて、前記注入圧力が所望の圧力となるように循環流路3内の圧力調節弁7の開度を調節する。
【0066】
3.注入の開始および注入圧力の最終調整
前記圧力調節弁7の調節により所望の注入圧力が得られたならば、注入流路4の開閉弁8を徐々に全開の状態へ開けることにより患者の消化管へのガスの注入を開始する。この時、ガスの注入圧力は開閉弁8を開くことにより一旦低下するが、患者の消化管の拡張に伴い比較的短時間で元の注入圧力へ回復しそして平衡状態に保たれる。また、事前に調節した元の注入圧力と回復した注入圧力との間に差が生じる場合があるが、その場合は、回復した注入圧力が所望の圧力となるように圧力調節弁7を再度調節してやればよい。
【0067】
4.注入の終了
検査の終了またはガス貯蔵容器6内のガス残量の減少によりガスの注入を終了する場合、消化管へのガスの供給を停止し、そして消化管の中のガスがガス注入器1へ逆流するのを防止するために注入流路4の開閉弁8を全閉の状態へ閉じる。そして注入手段20を患者の消化管から引き抜いた後、ポンプ2を停止する。また、代替のステップとして、注入流路4の開閉弁8を全閉とせず、ポンプ2を停止した後で注入手段20を患者の消化管から引き抜いてもよい。この場合、消化管の内部圧力は、ガス注入器の注入流路、循環流路及びガス貯蔵容器を介して短時間で大気圧へ戻ることとなる。
【0068】
[実施例2]
図2は、本発明による第2の実施形態に係るガス注入器1’全体の回路を概略的に示している。図2を参照して理解されるように、実施例2のガス注入器1’は、圧力計測手段5により計測された注入流路4内のガスの注入圧力に基づき、圧力調節弁7、ポンプ2および開閉弁8を作動することができる制御装置11,12,13を備えていること以外、実施例1のガス注入器1と同じ構成を備えている。
【0069】
したがって、実施例2のガス注入器1’は、ガスを移送するためのポンプ2と、ポンプ2の吐出口21から排出されたガスをポンプ2の吸引口22へ返還するための循環流路3と、そして循環流路3を循環するガスの一部を消化管へ送気するための注入流路4とから構成される。
【0070】
また、循環流路3には、ガスを貯蔵しかつ注入により消費されるガスの量によらず循環流路3を流れるガスの流量を一定に保つため、循環流路の一部を形成するように入口ポート61及び出口ポート62が接続されている容積可変のガス貯蔵容器6と、そして循環流路3を流れるガスの流量を調節することにより、注入流路内のガスの注入圧力を所望の圧力へ調節しかつその圧力を一定に保持するための圧力調節弁7が含まれている。
【0071】
ただし、実施例2のガス注入器1’は、実施例1の注入器1と異なり、目標圧力を設定することができ、そして圧力計測手段5により計測されたガスの注入圧力と前記設定された目標圧力とを比較することにより、注入圧力が目標圧力と一致するように圧力調節弁7を作動させる第1の制御装置11を備えている。このため、実施例2のガス注入器1’では、圧力調節弁7の開度は、圧力計測手段5により計測されるガスの注入圧力に基づいてフィードバック制御により自動的に調節される。
【0072】
また、実施例2のガス注入器1’は、上限圧力及び下限圧力を設定することができ、そして圧力計測手段5により計測されるガスの注入圧力が前記上限圧力より高くなった時又は前記下限圧力より低くなった時はポンプ2を停止させる第2の制御装置12を備えている。このため、実施例2のガス注入器1’では、ガスの注入圧力が人体に対して危険な圧力に到達する前、若しくは消化管の拡張が維持できなくなる圧力へ低下する前にポンプ2が停止されるので、過剰注入による人体に対する危険や圧力不足による観察不良が未然に防がれる。
【0073】
さらに、ガス注入器1’の注入流路4には、注入流路内のガスの注入圧力を測定するための圧力計測手段5と、消化管へ又は消化管からのガスの流れを遮断するために機能する開閉弁8と、そして消化管からの排出物を逆流させないよう貯留するための排液バック9とが含まれており、さらに注入流路4の先端部分には、コネクター41を介して患者の消化管へ挿入するための注入手段20が接続されている。
【0074】
また、実施例2のガス注入器1’では、第2の制御装置の代替手段として若しくは併用手段として、上述の開閉弁8を利用して、さらに上限圧力及び下限圧力を設定することができ、そして圧力計測手段5により計測されるガスの注入圧力が前記上限圧力より高くなった時又は前記下限圧力より低くなった時は開閉弁8を閉じる第3の制御装置13を備えることもできる。このため、実施例2のガス注入器1’では、ガスの注入圧力が人体に対して危険な圧力に到達する前、若しくは消化管の拡張が維持できなくなる圧力へ低下する前に消化管へ又は消化管からのガスの流れが遮断されるので、制御装置12によるポンプ2の停止の場合と同様に過剰注入による人体に対する危険や圧力不足による観察不良が未然に防がれる。
【0075】
また、実施例2のガス注入器1’の残りの構成および機能は実施例1のガス注入器1の場合と同じであるので、ここではそれらの説明を省略する。
【0076】
次に、実施例2のガス注入器1’の使用手順について説明する。
【0077】
1.注入の準備
実施例2のガス注入器1’では、ガス充填ポート63を介して炭酸ガスなどの注入ガスを必要量、ガス貯蔵容器6へ充填する。この時、充填ガスがガス注入器1の回路の外へ流出しないよう、注入流路4に設けられた開閉弁8を閉じておく。また、注入流路4に開閉弁8を備えていないタイプのガス注入器では、ガス貯蔵容器6の出口ポート62を、若しくは入口ポートに逆止弁10が設けられていないタイプのガス貯蔵容器6の場合は入口ポート61及び出口ポート62の両ポートを予めクランプ等(図示せず)で閉塞しておくことによりガスを充填することができる。
【0078】
また、実施例2のガス注入器1’では、ガスの注入圧力が目標圧力と一致するようにフィードバック制御されるので、所望の目標圧力を予め制御装置11へ設定する必要がある。またこれと同様に、ガスの注入圧力が所定の上限圧力より高くなった時又は下限圧力より低くなった時はポンプ2を停止させるか若しくは開閉弁8を閉じる安全装置を備えている場合は、前記上限圧力及び下限圧力を予め第2の制御装置12若しくは第3の制御装置13へ設定する必要がある。
【0079】
一方、注入流路4の先端部分には、コネクター41を介して注入手段20を接続しておき、そして前記注入手段20を患者の消化管の中へ挿入する。
【0080】
2.注入の開始
ポンプ2の起動により直ちにガスが消化管へ流れるのを防止するため、注入流路4の開閉弁8を閉じた状態でポンプ2を起動する。しかしながら、この時、実施例2のガス注入器1’では、ガスの注入圧力は目標圧力と一致するようにフィードバック制御されるため、実施例1のガス注入器1のように手動で循環流路3内の圧力調節弁7の開度を再度調節する必要はない。そして実施例2のガス注入器1’では、注入流路4の開閉弁8を徐々に全開の状態へ開けることにより患者の消化管へのガスの注入を開始すればよい。
【0081】
3.注入の終了
検査の終了またはガス貯蔵容器6内のガス残量の減少によりガスの注入を終了する場合、消化管へのガスの供給を停止し、そして消化管の中のガスがガス注入器1へ逆流するのを防止するために注入流路4の開閉弁8を全閉の状態へ閉じる。そして注入手段20を患者の消化管から引き抜いた後、ポンプ2を停止する。また、代替のステップとして、注入流路4の開閉弁8を全閉とせず、ポンプ2を停止した後で注入手段20を患者の消化管から引き抜いてもよい。この場合、消化管の内部圧力は、ガス注入器の注入流路、循環流路及びガス貯蔵容器を介して短時間で大気圧へ戻ることとなる。
【符号の説明】
【0082】
1,1’・・・ ガス注入器
2 ・・・・・・・ ポンプ
3 ・・・・・・・ 循環流路
4 ・・・・・・・ 注入流路
5 ・・・・・・・ 圧力計測手段
6 ・・・・・・・ ガス貯蔵容器
7 ・・・・・・・ 圧力調節弁
8 ・・・・・・・ 開閉弁
9 ・・・・・・・ 排液バック
10・・・・・・・ 逆止弁
11・・・・・・・ 第1の制御装置
12・・・・・・・ 第2の制御装置
13・・・・・・・ 第3の制御装置
20・・・・・・・ 注入手段
21・・・・・・・ 吐出口
22・・・・・・・ 吸引口
41・・・・・・・ コネクター
61・・・・・・・ 入口ポート
62・・・・・・・ 出口ポート
63・・・・・・・ ガス充填ポート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の消化管へガスを注入するためのガス注入器であって、
前記ガスを移送するためのポンプと、
前記ポンプの吐出口から排出されたガスを前記ポンプの吸引口へ返還するための循環流路と、
前記循環流路を循環するガスの一部を消化管へ送気するために、前記循環流路の途中から分岐している注入流路と、
前記注入流路内のガスの注入圧力を測定するために、前記注入流路の途中に設けられた圧力計測手段と、
ガスを貯蔵し、かつ注入により消費されるガスの量によらず前記循環流路を流れるガスの流量を一定に保つために、前記注入流路との分岐点と前記ポンプ吸引口との間で前記循環流路の一部を形成するように入口ポート及び出口ポートが接続されている容積可変のガス貯蔵容器と、そして
前記循環流路を流れるガスの流量を調節することにより、前記注入流路内のガスの注入圧力を所望の圧力へ調節しかつその圧力を一定に保持する、前記分岐点と前記ガス貯蔵容器の入口ポートとの間に設けられた圧力調節弁と、
を備えていることを特徴とする前記ガス注入器。
【請求項2】
前記ガス注入器は、目標圧力を設定することができ、そして前記注入圧力と前記目標圧力とを比較することにより、前記注入圧力が前記目標圧力と一致するように前記圧力調節弁を作動させる第1の制御装置を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のガス注入器。
【請求項3】
前記ガス注入器は、上限圧力及び下限圧力を設定することができ、そして前記注入圧力が前記上限圧力より高くなった時又は前記下限圧力より低くなった時は前記ポンプを停止させる第2の制御装置をさらに含んでいることを特徴とする請求項2に記載のガス注入器。
【請求項4】
前記ガス注入器は、前記注入経路の一部を形成するように消化管からの排出物を逆流させないよう貯留するための排液バックを含んでいる特徴とする請求項1又は2に記載のガス注入器。
【請求項5】
前記注入経路は、その途中に消化管からのガスの逆流を防止する逆止弁を含んでいる特徴とする請求項1又は2に記載のガス注入器。
【請求項6】
前記注入流路は、その途中に消化管へ又は消化管からのガスの流れを遮断することができる開閉弁を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス注入器。
【請求項7】
前記ガス注入器は、請求項6に記載の開閉弁と、上限圧力及び下限圧力を設定することができ、そして前記注入圧力が前記上限圧力より高くなった時又は前記下限圧力より低くなった時は前記開閉弁を閉じる第3の制御装置をさらに含んでいることを特徴とする請求項2に記載のガス注入器。
【請求項8】
前記容積可変のガス貯蔵容器は、その入口ポートにガスの逆流を防止する逆止弁を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス注入器。
【請求項9】
前記容積可変のガス貯蔵容器は、可撓性のプラスチック材料から作製されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス注入器。
【請求項10】
前記ガスは、炭酸ガスであることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス注入器。
【請求項11】
前記消化管は、大腸であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス注入器。
【請求項12】
前記注入流路は、その途中に前記注入圧力が所定の圧力より高くならないようにガスを大気中へ開放する安全弁を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス注入器。
【請求項13】
前記注入流路は、その先端部分に患者の消化管の中へ挿入するためのガス注入手段を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス注入器。
【請求項14】
前記注入手段は、肛門から大腸へ挿入される大腸カテーテルであることを特徴とする請求項13に記載のガス注入器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−227484(P2010−227484A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81211(P2009−81211)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(591246997)堀井薬品工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】