説明

ガラス入りプロピレンポリマー組成物

強度、剛性、衝撃特性及び溶融強度の改良された組合せを有するガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物、それらから製造される製品;並びにその製品の製造方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強く、剛く且つ強靱なガラス入り耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物(glass−filled impact propylene copolymer composition)、それから製造される製品及びその製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、成形加工性、靭性、耐湿性、耐ガソリン性、耐薬品性に優れ、比重が低く且つ安価であるので、射出成形品及び押出品、フィルム、シートなどの形態で多くの用途に用いられている。耐衝撃性改良の進歩により、プロピレンポリマーの多様性及び用途が更に拡大した。ポリプロピレンホモポリマー(及びランダムコポリマー)の耐衝撃性を改善するためには、典型的には、エラストマー成分が、プロピレンポリマーとエラストマー成分(耐衝撃性プロピレンコポリマー)との反応器内ブレンドの製造によって、又はプロピレンポリマーとエラストマー成分との配合によって、添加される。前者の方法では、プロピレンポリマー及びエラストマー成分が同じプロセスの1つ又はそれ以上の反応器中で製造される。耐衝撃性改良プロピレンポリマーの使用は、自動車外装品及び内装品の分野で、電気機器装置ハウジング及びカバー並びに他の家庭用品及び身の回り品においてますます拡大している。
【0003】
自動車用品は射出成形によって通常加工される。しかし、部品が中空であるような自動車コンポーネントは多く、射出成形によってこれらを製造することは非常に困難であり、費用がかかる。このような部品の多くは、特に大きい部品は、ポリマーが高溶融強度のような適正な加工特性及び強度、剛性及び靭性、特に低温靭性のような最終製品の性質を有するならば、おそらくブロー成形によって製造できるであろう。射出成形及び押出用の市販プロピレンポリマーは優れた性質を有するが、良好な溶融強度、強度、剛性及び靭性の組合せを持たないことが知られている。
【0004】
特許文献1は、無機充填剤と共にエラストマー成分中に配合することよって、カップリングされたプロピレンポリマーを改質しようとする試みを記載している。得られたカップリングされたプロピレンポリマー組成物は、適正な溶融強度及び靭性を有するが、剛性は有さない。特許文献2は、剛く、頑丈で且つ強靱なガラス入りプロピレンポリマーを記載しているが、このポリマーは良好な溶融強度を有さない。特許文献3は、良好な溶融強度及び耐衝撃性、特に良好な低温耐衝撃性を有するカップリング耐衝撃性プロピレンコポリマーを記載しているが、強度及び剛性の改良は取り組まれていない。
【0005】
【特許文献1】US 2003/0069362 A1
【特許文献2】USP 5,916,953
【特許文献3】USP 6,472,473 B1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
強度、剛性、耐衝撃性及び溶融強度の良好なバランスを示す耐衝撃性プロピレンポリマー組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の主目的は、強度、剛性、耐衝撃性及び溶融強度の良好なバランスを示す耐衝撃性プロピレンポリマー組成物、それから製造される製品並びにその製品の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明のガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物は、カップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー、ガラス繊維及び、場合によっては、カップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマーとガラス繊維との間で相溶化剤として働くのに充分な量の官能基化オレフィンポリマーを含む。好ましくは、耐衝撃性プロピレンコポリマーはアジ化スルホニル(sulfonyl azide)、最も好ましくは4,4’−オキシ−ビス(スルホニルアジド)ベンゼンとカップリングさせ、官能基化オレフィンポリマーは無水マレイン酸でグラフト化されたプロピレンホモポリマーである。
【0009】
別の態様において、本発明のガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物は、シート押出、異形押出、圧縮成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、カレンダー成形、真空成形、熱成形、押出ブロー成形又はそれらの組合せ、好ましくはブロー成形によって製品に加工する。
【0010】
更に別の態様においては、本発明のガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物は、自動車用品、例えばシートバック、ヘッドレスト、ニーボルスター、グラブボックスドア、計器パネル、バンパフェイシア、バンパビーム、荷台フロア、中央コンソール、インテークマニホールド、スポイラー、サイドモールディング、ピラー、ドアトリム、エアバッグカバー、HVACダクト、スペアタイヤカバー、流体リザーバ、リアウィンドウシェルフ、リソネータ、トランクボード又はアームレストに加工する。
【0011】
更に別の態様において、本発明は、本発明のガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物を二次加工品にブロー成形する方法であって、ガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物を押出機中でダイを通して押出し、溶融管状パリソンを形成し、前記パリソンを成形金型内に保持し、金型中に気体を吹き込むことによって金型の輪郭に従ってパリソンを付形し、そしてブロー成形された自動車用品を生成する工程を含む方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書中で使用する以下の用語は以下の意味を有するものとする:
「耐衝撃性プロピレンコポリマー(impact propylene copolymer)」は、市販されており、当業者にはよく知られており、例えば、E.P.Moore,Jr,Polypropylene Handbook,Hanser Publishers,1996,220〜221ページ並びにUSP3,893,989号及び第4,113,802号に記載されている。本明細書中で使用する用語「耐衝撃性プロピレンコポリマー」は、ポリプロピレンが連続相であり且つエラストマー相がその中に分散されている異相プロピレンコポリマーを意味する。当業者ならば、このエラストマー相が更に結晶領域を含むことができることが理解されるであろう。結晶領域は、本発明ではエラストマー相の一部と見なされる。耐衝撃性プロピレンコポリマーは、物理的ブレンドではなく反応内プロセスによって得られる。通常、耐衝撃性プロピレンコポリマーは、二段又は多段プロセスにおいて形成される。これは場合によっては、少なくとも2つのプロセス段階が行われる単一反応器、又は場合によっては複数の反応器を含む。
【0013】
「カップリング剤」は、ポリマー鎖の脂肪族及び芳香族の両方のCH、CH2、CH3基の炭素水素結合中に挿入可能なカルベン(carbene)又はナイトレン(nitrene)基をそれぞれ形成できる少なくとも2つの反応性基を含む化合物を意味する。反応性基は一緒に、ポリマー鎖を「カップリング」することができる。カップリング剤がポリマー鎖のカップリングに有効となるように、熱、音波エネルギー、放射線又は他の化学的活性化エネルギーでカップリング剤を活性化する必要がある場合がある。カルベン基を形成できる反応性基を含む化合物の例としては、例えばジアゾアルカン、末端置換メチレン基及びメタロカルベンが挙げられる。ナイトレン基を形成できる反応性基を含む化合物の例としては、例えばホスファゼンアジド類、アジ化スルホニル類、アジ化ホルミル類及びアジ化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の改良されたガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマーの製造方法はカップリング剤を用いた耐衝撃性プロピレンコポリマーのカップリングを含む。好ましくは耐衝撃性プロピレンコポリマーはプロピレンポリマーを含む連続相とエラストマー相を有する。連続相のプロピレンポリマーは、典型的にはホモポリマープロピレンポリマー又はランダムプロピレンコポリマー、より典型的にはホモポリマープロピレンポリマーとする。プロピレンポリマーは、チーグラー−ナッタ触媒、制限幾何触媒(constrained geometry catalyst)、メタロセン触媒又は任意の他の適当な触媒系を用いて製造できる。連続相を構成するプロピレンポリマーがホモポリマープロピレンポリマーである場合には、示差走査熱量測定法によって測定されるプロピレンポリマーの結晶化度が、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%、最も好ましくは少なくとも62%である。示差走査熱量測定法を用いた結晶化度%の測定方法は、当業者に知られている。
【0015】
エラストマー相は制限幾何触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒又は任意の他の適当な触媒を用いて製造できる。
【0016】
カップリング反応は、反応押出によって、又はカップリング剤を耐衝撃性プロピレンコポリマーと混合し且つカップリング剤と耐衝撃性プロピレンコポリマーとの間においてカップリング反応を引き起こすのに充分なエネルギーを加えることができる任意の他の方法によって行う。好ましくは、このプロセスは、USP Application 09/133,576(1998年8月13日出願)に記載されたような、溶融混合機又はポリマー押出機のような単一容器中で実施する。用語「押出機」は、その最も広い意味を含むものとし、ペレットを押出する装置並びにフィルム、射出成形品、ブロー成形品、形材及びシート押出品、フォーム及び他の製品を形成するための押出物を生成する押出機のような装置を含む。
【0017】
好ましいカップリング剤は、ポリ(スルホニルアジド)、より好ましくはビス(スルホニルアジド)である。本発明に有用なポリ(スルホニルアジド)の例は、WO 99/10424に記載されている。ポリ(スルホニル)アジドとしては、1,5−ペンタンビス(スルホニルアジド)、1,8−オクタンビス(スルホニルアジド)、1,10−デカンビス(スルホニルアジド)、1,10−オクタデカンビス(スルホニルアジド)、1−オクチル−2,4,6−ベンゼントリス(スルホニルアジド)、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)、1,6−ビス(4’−スルホンアジドフェニル)ヘキサン、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、並びに分子当たり平均1〜8個の塩素原子及び2〜5個のスルホニルアジド基を含む塩素化脂肪族炭化水素の混合スルホニルアジドのような化合物、更にそれらの混合物が挙げられる。好ましいポリ(スルホニルアジド)としては、オキシ−ビス(4−スルホニルアミドベンゼン)、2,7−ナフタレンビス(スルホニルアジド)、4,4’−ビス(スルホニルアジド)ビフェニル、4,4’−ジフェニルエーテルビス(スルホニルアジド)及びビス(4−スルホニルアジドフェニル)メタン並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0018】
アジ化スルホニルは市販されているか、又はアジ化ナトリウムと対応する塩化スルホニルとの反応によって簡便に製造されるが、種々の試薬(亜硝酸、四酸化二窒素、ニトロソニウムテトラフルオロボレート)によるスルホニルヒドラジンの酸化を使用した。
【0019】
ビス(スルホニルアジド)をカップリング剤に用いる場合、耐衝撃性プロピレンコポリマーのカップリングには、耐衝撃性プロピレンコポリマーの総重量に基づき、好ましくは100万部当たり100部(100ppm)又はそれ以上の量(又はそれより多い量、以下同じ)の、より好ましくは150ppm又はそれ以上の量の、最も好ましくは200ppm又はそれ以上の量の、アジドを用いる。匹敵するカップリングされていない耐衝撃性原プロピレンコポリマーに比較して、延性・脆性遷移温度の大きい低下が望ましいようないくつかの場合には、耐衝撃性プロピレンコポリマーのカップリングには、耐衝撃性プロピレンコポリマーの総重量に基づき、450ppm又はそれ以下の量(又はそれより少ない量、以下同じ)の、好ましくは300ppm又はそれ以下の量の、ビス(スルホニルアジド)を用いる。カップリングする耐衝撃性プロピレンコポリマーの選択においては、所望の量のカップリング剤によってカップリングされた後のカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマーが容易に加工できる充分に高い溶融流量を有するように、充分に高い溶融流量を有するポリマーを選択することが重要である。
【0020】
本発明に使用するガラス繊維は、典型的には、長さ1/8〜1/2インチ(3〜13mm)、好ましくは3/16〜5/16インチ(5〜8mm)に細断されたものであり、そして場合によっては、サイズ剤、好ましくはシランサイズ剤で被覆されたものである。本発明において有用な典型的なガラス繊維の直径は、4〜25マイクロメーター(μm)、好ましくは5〜15μmである。本発明の組成物中に含まれるガラス繊維の量は、曲げ弾性率によって測定される配合生成物の剛性を増加させるのに充分な量であり、典型的には総ガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物の10重量%〜70重量%の量である。本発明の生成物中に使用するガラス充填材の量は、要求される性質のバランスによって異なる可能性があり、ガラス装填量が多いほど剛い最終材料が生成される。溶融強度、靭性、剛性及び強度の適当なバランスを得るためには、ガラス繊維の混和量は好ましくは10〜60重量%、より好ましくは25〜50重量%である。引張特性によって測定される強度及び剛性と耐衝撃性によって測定される靭性とのバランスを得るのには、20〜40重量%のガラス繊維を含む組成物が特に有利であることを見出した。
【0021】
本発明の組成物は、場合によってはカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマーマトリックスとガラス繊維とを接着させる官能基化ポリオレフィンポリマーを含む。典型的には、これらの官能基化オレフィン系ポリマーは、ポリオレフィンのグラフト変性に適当な不飽和有機化合物を含むポリオレフィンのグラフト共重合体である。グラフト化前の不飽和有機化合物は好ましくは少なくとも1つのエチレン不飽和部位及び少なくとも1つのカルボニル基(−C=O)を含む。少なくとも1つのカルボニル基を含む不飽和有機化合物の代表的なものは、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル及びそれらの塩であり、金属及び非金属の両者を含む。好ましくは、有機化合物はカルボニル基と共役するエチレン性不飽和を含む。代表的な化合物としては、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルクロトン酸及び桂皮酸並びにそれらの無水異物、エステル及び塩誘導体(もしあれば)が挙げられる。無水マレイン酸は、少なくとも1つのエチレン性不飽和部位及び少なくとも1つのカルボニル基を含む好ましい不飽和有機化合物である。
【0022】
不飽和有機化合物は、ポリオレフィンへのグラフト化後に、ポリオレフィンポリマーの重量に基づき、0.01重量%又はそれ以上(又はそれより多い量、以下同じ)、好ましくは0.05重量%又はそれ以上、より好ましくは0.1重量%又はそれ以上、より好ましくは0.5重量%又はそれ以上、最も好ましくは1.0重量%又はそれ以上を構成するような量で使用する。不飽和有機化合物含量の最大量は都合の良いように変化可能であるが、典型的にはポリオレフィンポリマーの重量に基づき、20重量%又はそれ以下(又はそれより少ない量、以下同じ)、好ましくは15重量%又はそれ以下、より好ましくは10重量%又はそれ以下、より好ましくは5重量%又はそれ以下、最も好ましくは2重量%又はそれ以下を構成する。
【0023】
少なくとも1つのカルボニル基を含む不飽和有機化合物は、USP 3,236,917及びUSP 5,194,509号に教示されたような任意の公知方法によって、ポリオレフィンにグラフトさせることができる。例えばポリマーを二本ロール混合機中に投入し、60℃の温度で混合する。次いで、不飽和有機化合物を、例えばベンゾイルペルオキシドのような遊離基開始剤と共に添加し、グラフト化が完了するまで成分を30℃において混合する。別法では、反応温度はより高く、例えば、210℃〜300℃であり、遊離基開始剤は用いないか又は低濃度で用いる。別の好ましいグラフト化方法は、USP 4,950,541号に教示されており、混合装置として二軸スクリュー脱揮押出機を用いる。ポリオレフィン及び不飽和有機化合物を混合し、押出器内で、反応体が溶融する温度において遊離基開始剤の存在下で反応させる。好ましくは、不飽和有機化合物を押出機内の加圧下に保持されたゾーン中に射出する。
【0024】
官能基化オレフィンに好ましいオレフィンはプロピレンポリマーである。プロピレンポリマーは、プロピレンのホモポリマー又はプロピレンと別のα−オレフィン、例えばエチレンとのコポリマーであることができる。プロピレンのホモポリマーが好ましい。適当な官能基化プロピレンポリマーは、マレイン化レベルがポリプロピレンの重量に基づき、0.1〜4重量%、好ましくは0.4〜2重量%、より好ましくは0.5〜1.25重量%のマレイン化ポリプロピレンである。適当な官能基化プロピレンポリマーは、15〜500g/10分、好ましくは50〜300g/10分の溶融流量(MFR)(230℃及び適用荷重2.16kgの条件下で測定)を有する。適当なマレイン化ポリプロピレンの例は、DuPontから商品名FUSABONDとして入手できる。FUSABONDの等級P MD511D、P M613−05、P MZ203D及びP MD353Dが好ましい。他の適当な官能基化プロピレンポリマーは、Uniroyal製のPOLYBOND 3150及びPOLYBOND 3200並びにStandridge Color Corporation製のSCC 23712である。
【0025】
官能基化オレフィンポリマーを、本発明の生成物中に混和する場合には、ポリマー材料とガラス繊維との間で相溶化剤として働くのに充分な量で存在させる。一般に、官能基化ポリマーはガラス入りのカップリングされたプロピレンポリマー組成物の重量に基づき、0.1重量%又はそれ以上、好ましくは0.3重量%又はそれ以上、より好ましくは0.5重量%又はそれ以上、更に好ましくは1重量%又はそれ以上、最も好ましくは1.5重量%又はそれ以上の量で存在する。官能基化ポリマーは、典型的には、カップリングされた耐衝撃性プロピレンポリマーより高価であるので、総生成物中のこのような官能基化ポリマーの割合を最小限に抑える経済的誘因がある。一般に、官能基化ポリマーは、ガラス入りのカップリングされたプロピレンポリマー組成物の重量に基づき、20重量%又はそれ以下、好ましくは12重量%又はそれ以下、より好ましくは10重量%又はそれ以下、更に好ましくは6重量%又はそれ以下、最も好ましくは4重量%又はそれ以下の量で存在する。
【0026】
カップリングされたプロピレンポリマー組成物中には、場合によっては、種々の添加剤、例えば顔料、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤、中和剤、スリップ剤、粘着防止剤、帯電防止剤、透明剤、ワックス、難燃剤、加工助剤、押出助剤及び当業界の技術の範囲内の他の添加剤を、組合せて又は単独で用いて混和する。有効量は公知であり、組成物のパラメーター及び暴露条件によって異なる。
【0027】
本発明の充填剤入り熱可塑性組成物の製造は、公知の任意の適当な混合手段によって、例えば個々の成分をドライブレンドしてから、最終製品(例えば、自動車部品)の製造に使用する押出機中で直接溶融混合するか、又は別の溶融ブレンド装置(例えば、押出機、バンバリーミキサーなど)中で予備混合し、そしてペレットに微粉砕することによって実施できる。
【0028】
本発明のガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマーは熱可塑性である。熱の適用によって軟化又は溶融させる場合には、本発明のガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物は、常法、例えばシート押出、異形押出、圧縮成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、カレンダー成形、真空成形、熱成形及び/又は押出ブロー成形を単独又は組合せて用いることによって製品に加工できる。ガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物はまた、目的に適した任意の機械で、フィルム、繊維、多層積層品又は押出シートに成形、紡糸又は圧伸成形することもできるし、1種又はそれ以上の有機又は無機物質と配合することもできる。本発明のガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物は好ましくは二次加工品にブロー成形する。
【0029】
本発明のブロー成形品は、本発明のガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物の予備配合ペレットを、従来型のブロー成形機、好ましくは押出ブロー成形機を使用して従来の条件を用いてブロー成形することによって製造できる。例えば押出ブロー成形の場合には、樹脂温度は240℃又はそれ以下(又はそれより低い温度、以下同じ)、好ましくは230℃又はそれ以下、より好ましくは220℃又はそれ以下である。更に、樹脂温度は190℃又はそれ以上(又はそれより高い温度)、好ましくは200℃又はそれ以上、より好ましくは210℃又はそれ以上である。適切な温度を有する前記ガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物をダイを通して溶融管状パリソンの形態で押出する。次いで、パリソンを成形金型内に保持する。その後、気体、好ましくは空気、窒素又は二酸化炭素を金型中に吹き込むことによって金型の輪郭に従ってパリソンを付形し、中空成形自動車用品を生成する。ブロー成形自動車用品の例は、シートバック、ヘッドレスト、ニーボルスター(knee bolster)、グラブボックスドア、計器パネル、バンパフェイシア、バンパービーム、荷台フロア、中央コンソール、インテークマニホールド、スポイラー、サイドモールディング、ピラー、ドアトリム、エアバッグカバー、HVACダクト、スペアタイヤカバー、流体リザーバ、リアウィンドウシェルフ、リソネータ、トランクボード又はアームレストである。
【0030】
別法として、カップリングは、ブロー成形品の形成も行う押出機中で、例えばブロー成形機、好ましくは押出ブロー成形機中で実施できる。耐衝撃性プロピレンコポリマー、カップリング量のアジ化スルホニル、ガラス繊維並びに場合によっては官能基化ポリマー及び追加成分をブロー成形機中に投入して、ガラス入りの耐衝撃性プロピレンコポリマー混合物を形成する。この混合物を、耐衝撃性プロピレンコポリマーのカップリングを引き起こすのに充分な溶融加工温度に暴露して、溶融されたガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物を形成する。この溶融されたガラス入りの耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物を溶融管状パリソンに押出する。ブロー成形品の形成は前記と同様である。
【0031】
許容され得るブロー成形品、特に大きいブロー成形品、例えば自動車用品の製造には、適切なポリマー強度が必要である。ポリマーの溶融強度が低すぎる場合には、パリソンの重量がパリソンの伸長を引き起こし、ブロー成形品における変わりやすい肉厚及び重量、製品のブローアウト及びネックダウンのような問題が起きるおそれがある。溶融強度が高すぎると、粗いパリソン、ブロー不足及び過剰なサイクル時間が生じる可能性がある。本発明のガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマーは少なくとも15センチニュートン(cN)、より好ましくは少なくとも30cNの溶融強度を有し、更には60cNもの高い溶融粘度とすることもできる。
【実施例】
【0032】
本発明の実施を説明するために、好ましい実施態様の例を以下に示す。しかし、これらの実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
【0033】
実施例1及び2に使用するカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマーの製造は以下の通りである。原樹脂をドラム中で2000ppmの鉱油と共に30分間タンブルし、次いでCiba Specialty Chemicals Corporationから商品名IRGANOX 1010として入手可能なテトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]を1000ppm、Ciba Specialty Chemicals Corporationから商品名IRGAFOS 168として入手可能なトリスアリールホスファイト加工安定剤を1000ppm及び所望の量の4,4’−オキシ−ビス(スルホニルアジド)ベンゼン(BSA)カップリング剤を添加した。この混合物を30分間タンブルし、次いでWerner and Pfleiderer ZSK40二軸スクリュー押出機を通して250ポンド/時の供給速度、300回転/分のスクリュー速度において、180/190/200/200/210/220/230/240/230/240/240℃(供給材料入口からダイまで)の温度分布を用いて押出した。
【0034】
実施例1及び2並び比較例A及びB(本発明の例ではない)の組成物を表Iに示す。部はガラス入りカップリング耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物の重量に基づくものである。表I中の用語説明は以下の通りである。
「PP−1」は、密度0.9g/cc及びMFR 0.8g/10分並びにエチレン含量9重量%の耐衝撃性プロピレンコポリマーであるThe Dow Chemical Companyから入手可能なPolypropylene DC108を用いたカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマーであった。DC108を150ppm(存在するポリマー総重量に基づく)の4,4’−オキシ−ビス(スルホニルアジド)ベンゼン(BSA)とカップリングさせ、密度0.9g/cc、MFR 0.4g/10分及び溶融強度25cNを有するカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマーを生成した。
【0035】
「PP−2」は、密度0.9g/cc及び溶融流量1.2g/10分並びにエチレン含量9重量%の耐衝撃性プロピレンコポリマーであるThe Dow Chemical Companyから入手可能なPolypropylene C104−01を用いたカップリング耐衝撃プロピレンコポリマーであった。C104−01を200ppmのBSAとカップリングさせ、密度0.9g/cc、MFR 0.5g/10分及び溶融強度25cNを有するカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマーを生成した。
【0036】
「PP−3」は、密度0.9g/cc、MFR 1.4g/10分及び溶融強度5cNであるThe Dow Chemical CompanyからPropylene C105−02として入手可能な、エチレン含量が9重量%の耐衝撃性プロピレンコポリマーであった。
【0037】
「PP−4」は、密度0.9g/cc、MFR 0.7g/10分及び溶融強度12cNであるThe Dow Chemical CompanyからPropylene 5D45として入手可能な、分別(fractional)溶融プロピレンホモポリマーであった。
【0038】
「GF」は、平均直径14μm、平均長さ4mm及び147Aサイズ剤0.65%を有するOwens Corning製のCRATEC PLUS 147A−14P 4mmとして市販されているガラス短繊維であった。
【0039】
「官能基化ポリマー」は、分子量が150,000〜250,000及び最小重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が4.5である、Standridge Color Corporation製のSCC 23712として市販されている、活性無水マレイン酸部分が1.5%の4MFRホモポリマーポリプロピレンであった。
【0040】
「カーボンブラック」は、Standridge Color Corporation製のSCC 2422であった。
【0041】
「IRGANOX 1010」安定剤は、前述した通りである。
【0042】
物理的性質は、Toro射出成形機で射出成形した試験片について測定した。射出成形条件は以下の通りであった。供給温度:140°F;バレル温度:背部,420°F;中央,430°F;前部,440°F;及びノズル,430°F。保持圧力は550psiに設定した。以下の物理的性質の試験を、実施例1及び2並びに比較例A及びBについて実施し、これらの試験の結果を表Iに示す:
【0043】
「灰分」は、ASTM D5630に従って測定したものであり、%で記録する。
「MFR」,溶融流量は、温度230℃及び適用荷重2.16kgにおいてASTM D1238に従って測定したものであり、結果はg/10分で記録する。
「密度」は、ASTM D792に従って測定したものであり、結果はg/ccで記録する。
【0044】
「FM」,曲げ弾性率は、ASTM D790に従って測定したものであり、結果はメガパスカル(MPa)で記録する。
【0045】
「TS」,引張強さ及び「TY」,引張降伏は、ASTM D638に従って測定したものであり、結果はMPaで記録する。
【0046】
「アイゾッド」は、低温を装着した標準アイゾッド衝撃試験ユニット中でISO 180に従って−40℃で及びASTM D256に従って室温で測定されたノッチ付アイゾッドであった。結果をキロジュール/m2(kJ/m2)で記録する。
【0047】
「DTUL」,荷重たわみ温度は、ASTM D648に従って0.45MPaにおいて測定したものであり、結果を℃で記録する。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例2は、50ポンドのアキュムレータヘッドを有するDavis Standardブロー成形機上で4インチのダイを用いてカーペット被覆自動車荷台フロアにブロー成形した。加工条件は、実施例2の粉砕再生材料40%(40% regrind)を用いて設定した。押出機及びヘッドの温度は、406°Fの溶融温度が得られるように400°Fに設定した。サイクル時間は160秒間であった。金型内プロセスによってプラスチック部分にカーペットを加えた。荷台フロア(カーペットを含む)は35×33×0.75インチで、重さが4594gであった。
【0050】
中空成形荷台フロアを、ダイムラー・クライスラーのPF01231環境落下試験に従って評価した。その結果を表IIに記録する。
【0051】
【表2】

【0052】
表I及びIIのデータからわかるように、本発明の組成物は溶融強度、剛性、強度及び衝撃特性の良好なバランスを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)カップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー、(ii)ガラス繊維及び(iii)場合によっては、カップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマーとガラス繊維との間で相溶化剤として働くのに充分な量の官能基化オレフィンポリマーを含んでなるガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物。
【請求項2】
前記カップリングされた耐衝撃性プロピレンポリマーがカップリング剤と耐衝撃性プロピレンポリマーとの反応によって形成される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カップリング剤がアジ化スルホニルである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アジ化スルホニルが4,4’−オキシ−ビス(スルホニルアジド)ベンゼンである請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記官能基化オレフィンポリマーがカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物の重量に基づき0.1重量%又はそれより多い量〜20重量%又はそれより少ない量で存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記官能基化オレフィンポリマーが無水マレイン酸でグラフト化されたプロピレンホモポリマーである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
シート押出、異形押出、圧縮成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、カレンダー成形、真空成形、熱成形、押出ブロー成形又はそれらの組合せによって製品に加工される請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
自動車シートバック、ヘッドレスト、ニーボルスター、グラブボックスドア、計器パネル、バンパフェイシア、バンパビーム、荷台フロア、中央コンソール、インテークマニホールド、スポイラー、サイドモールディング、ピラー、ドアトリム、エアバッグカバー、HVACダクト、スペアタイヤカバー、流体リザーバ、リアウィンドウシェルフ、リソネータ、トランクボード又はアームレストに加工される請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
(i)押出機中でダイを通してガラス入りのカップリングされた耐衝撃性プロピレンコポリマー組成物を押出し;
(ii)溶融管状パリソンを形成し;
(iii)パリソンを成形金型内に保持し;
(iv)金型中に気体を吹き込むことによって金型の輪郭に従ってパリソンを付形し;そして
(v)ブロー成形された自動車用品を生成する
工程を含んでなる請求項1に記載の組成物を自動車用品にブロー成形する方法。
【請求項10】
前記自動車用品がシートバック、ヘッドレスト、ニーボルスター、グラブボックスドア、計器パネル、バンパフェイシア、バンパービーム、荷台フロア、中央コンソール、インテークマニホールド、スポイラー、サイドモールディング、ピラー、ドアトリム、エアバッグカバー、HVACダクト、スペアタイヤカバー、流体リザーバ、リアウィンドウシェルフ、リソネータ、トランクボード又はアームレストである請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2007−504322(P2007−504322A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525336(P2006−525336)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/025167
【国際公開番号】WO2005/021644
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】