説明

ガラス基板接続用異方導電フィルム

【課題】液晶パネルなどのガラス基板上に形成された電極端子とFPC基板上の電極とを接続する場合において、隣接する電極端子間の絶縁性を保ちつつ、相対する電極端子間には良好な電気的接続性を実現して接着させ、電極端子の位置合わせを行うに際しては良好な電極端子の視認性を有する異方導電フィルムの提供。
【解決手段】少なくとも有機バインダー、銅成分を含む合金粒子、及び平均粒径が10〜1000nmである無機系フィラーからなる異方導電フィルムであって、異方導電フィルムに対して、該合金粒子が0.1〜10体積%、該無機系フィラーが0.001〜0.5質量%であり、かつ膜厚が10〜60μmである異方導電フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子間を接着すると共にその端子間を電気的に接合する異方導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
異方導電フィルムは、液晶パネルのガラス基板上に形成された電極端子(例えば、インジウム−スズ酸化物(以下、ITOという)電極、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)電極)とフレキシブルプリント基板(以下、FPCという)やTape Automated Bonding(TAB)基板とを接続する場合をはじめ、ベアチップ等様々な端子間を接着すると共に電気的に接続する場合に使用する。
異方導電フィルムは、一般的に絶縁性のエポキシ系熱硬化樹脂、硬化剤及び導電粒子からなるシート状のものである。液晶パネルの接続用の導電粒子としては、金メッキを施した樹脂粒子が使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
液晶パネルへの異方導電フィルムの使用方法としては、例えば、液晶パネルなどのガラス基板上に形成された電極端子とFPC基板上の電極とを接続する場合、通常、電極端子上に異方導電フィルムを仮付けした後、異方導電フィルムを介して電極端子とFPC基板の電極の位置合わせを行い、ついで加熱加圧して本圧着を行う。このとき、異方導電フィルム中の樹脂によって、電極端子とFPCとを確実に接合し、端子間に確率的に存在する導電粒子を介して電気的な接続を行う。導電粒子は、一つの基板上の隣り合う端子間(ピッチ)の絶縁性を保ちつつ、相対する端子間に電気的な接続を行う。
【0004】
ガラス基板上の電極端子とFPC電極の位置合わせを行うに際して、ガラス基板上の電極端子上に異方導電フィルムを仮付けし、これを異方導電フィルムを通してガラス基板上の電極端子位置を確認する場合(透過)は、はっきりと認識できるが、これをガラス基板側から電極端子の位置を確認する場合(反射)に、張り付けられた異方導電フィルムの透過性や反射性によって電極端子が確認できない問題が生じていた。
【特許文献1】特許第3356079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、液晶パネルなどのガラス基板上に形成された電極端子とFPC基板上の電極とを接続する場合において、隣接する電極端子間の絶縁性を保ちつつ、相対する電極端子間には良好な電気的接続性を実現して接着させ、電極端子の位置合わせを行うに際しては良好な電極端子の視認性を有する異方導電フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ある特定の平均粒径を有する無機系フィラーが、ある特定割合で存在していることを特徴とする異方導電フィルムを用いることで、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0007】
(1)少なくとも有機バインダー、平均粒径が10〜1000nmである無機系フィラー、及び銅成分を含む合金粒子からなる異方導電フィルムであって、異方導電フィルムに対して、該無機系のフィラーが0.001〜0.5質量%、該合金粒子が0.1〜10体積%であり、かつ膜厚が10〜60μmである異方導電フィルム。
(2)無機系のフィラーがカーボンである(1)に記載の異方導電フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の異方導電フィルムは、液晶パネルなどのガラス基板上に形成された電極端子とFPC基板上の電極とを接続する場合において、隣接する電極端子間の絶縁性を保ちつつ、相対する電極端子間には良好な電気的接続性を実現して接着させ、電極端子の位置合わせを行うに際しては電極端子の視認性が良好であるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明における有機バインダーとしては、既知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂又は、電子線硬化性樹脂等の絶縁性樹脂を用いることができる。接続安定性と取り扱いの容易さから、熱硬化性樹脂を含む有機バインダーが好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂を用いることができるが、中でもエポキシ樹脂が好ましい。
【0010】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、脂環式エポキシ基を有する化合物、分子内の二重結合をエポキシ化した化合物が好ましい。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂あるいは、それらの変性エポキシ樹脂を用いることができる。
【0011】
本発明に用いる硬化剤は、前記硬化性の絶縁性樹脂を硬化できるものであればよい。
硬化性の絶縁性樹脂として、熱硬化性樹脂を用いる場合は、100℃以上で熱硬化性樹脂と反応し、硬化できるものが好ましい。エポキシ樹脂の場合は、保存性の点から、潜在性硬化剤であることが好ましく、例えば、イミダゾール系硬化剤、カプセル型イミダゾール系硬化剤、カチオン系硬化剤、ラジカル系硬化剤、ルイス酸系硬化剤、アミンイミド系硬化剤、ポリアミン塩系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤等を用いることができる。保存性、低温反応性の点から、カプセル型のイミダゾール系硬化剤が好ましい。
【0012】
本発明における銅成分を含む合金粒子としては、金、銀、ニッケル等一種又は数種の金属と銅から成る合金粒子であって、中でも、銀銅の合金粒子が好ましい。合金粒子は、カーボンとの親和性を高めるため、銅成分は少なくとも30質量%以上であることが好ましい。
本発明においては、異方導電フィルムに対して、該合金粒子が0.1〜10体積%含まれているのが好ましい。0.1体積%未満では、電気的接続において抵抗値が悪くなるため好ましくない。10体積%より多い場合は、隣接端子間での粒子による短絡の問題がでてくるため好ましくない。
【0013】
本発明における無機系フィラーとしては、シリカ、アルミナ、カーボンブラックに代表されるカーボン類、チタンブラック、チタン酸窒化物、黒色低次酸化チタン、グラファイト粉末、鉄黒などを用いることができ、黒色の無機系フィラーが好ましく、カーボンが最も好ましい。これは、銅成分を含む合金粒子表面との優れた親和性によって分散が効果的に行われ、少量で電極視認性が向上するため、また、接続端子を傷つけないためである。
【0014】
無機系フィラーの含有量は、異方導電フィルムに対して、0.001〜0.5質量%である。0.001質量%未満では、異方導電フィルムをガラス基板上の電極端子に仮付けし、電極端子と例えばFPC基板上の電極の位置合わせを行う場合に、ガラス基板側からの電極端子の視認性(反射)が悪くなるため好ましくない。0.5質量%より多い場合は、ガラス基板側からの電極端子の視認性はよくなるが、合金粒子の接続を阻害する傾向があり、異方導電フィルムが脆くなるため好ましくない。
無機系フィラーの平均粒径は、10〜1000nmである。平均粒径が10nmより小さい場合には、無機系フィラーの異方導電フィルムへの分散が悪くなり、粒子径が1000nmより大きい場合には、接続阻害を引き起こす。特に導電性を有する無機系フィラーでは、端子間の絶縁性が保てなくなる。
【0015】
本発明の異方導電フィルムを作製する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
エポキシ樹脂を含む有機バインダー中に合金粒子と無機系フィラーを指定量入れ攪拌を行う。その後、潜在性硬化剤を入れ泡立たないように内容物が均一になるまでさらに攪拌する。この時攪拌時間を30秒〜15分、回転数を50rpm〜10000rpmの間で調整する。好ましくは、2分〜10分、500rpm〜10000rpmである。これをPETやテフロン(登録商標)等のベースフィルム上に10〜60μmの厚さでダイコータ等で塗工して、連続して溶剤分を60℃以下で乾燥させ、厚みが均一な異方導電フィルムを得る。
【0016】
本発明の異方導電フィルムは、有機バインダー、合金粒子、無機系フィラーを含んでなる接着性フィルムであり、この接着性フィルムは通常はベースフィルム(保持フィルム)上に形成される。このため、得られる異方導電フィルムは、通常は剥離可能なベースシート上に形成される。
本願明細書では、この異方導電フィルムとベースフィルムとの積層体を異方導電フィルムということがある。
【0017】
本発明における異方導電フィルムの膜厚は、10〜60μmであり、より好ましくは15〜50μmである。10μm未満である場合は、端子間の有機バインダーの量が少なすぎるため接着性が得られにくく、60μmを超える場合には、圧接時に接続されるべき端子間における有機バインダーの排除が充分に行えず、物性低下の原因となる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
無機系フィラーの平均粒径はベックマン・コールター社のサブミクロン粒子アナライザー(N4型)を用いて求めた。
[実施例1]
以下のようにして異方導電フィルムを作製した。
エポキシ樹脂を含む有機バインダー中に合金粒子として平均粒径5μmの銀銅合金粒子を1.0体積%入れ、無機系のフィラーとして平均粒径120nmのカーボンブラックを0.03質量%入れた後攪拌を行った。攪拌を行った後、潜在性硬化剤、硬化剤の安定性を損ねない溶剤を入れ泡立たないように内容物が均一になるまで混合した。これをPETのベースフィルム上に25μm程度の厚さでダイコータ等で塗工して、連続して溶剤分を60℃以下で乾燥させ、異方導電フィルムを得た。
【0019】
[比較例1]
無機系のフィラーとして、平均粒径2μmのアルミナを30質量%入れた以外は、実施例1と同様に行って、異方導電フィルムを得た。
[比較例2]
合金粒子に代えて、平均粒径5μmの金メッキ樹脂粒子を使用し、無機系のフィラーとして、平均粒径120nmのカーボンを0.03質量%、平均粒径2μmのアルミナを30質量%入れる以外は、実施例1と同様に行って、異方導電フィルムを得た。
[比較例3]
合金粒子に代えて、平均粒径5μmの金メッキ樹脂粒子を使用した以外は、実施例1と同様に行って、異方導電フィルムを得た。
【0020】
[比較例4]
無機系のフィラーとして、平均粒径5μmのカーボンを0.03質量%入れた以外は、実施例1と同様に行って、異方導電フィルムを得た。
[比較例5]
無機系のフィラーとして、平均粒径120nmのカーボンを0.0001質量%入れた以外は、実施例1と同様に行って、異方導電フィルムを得た。
[比較例6]
無機系のフィラーとして、平均粒径120nmのカーボンを1.0質量%入れた以外は、実施例1と同様に行って、異方導電フィルムを得た。
ここで実施例及び比較例で使用した導電粒子の種類、無機系のフィラーの種類、平均粒径及び添加量を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
(電極端子の視認性)
異方導電フィルムの電極端子の視認性の確認は、ガラス基板上に形成された電極端子として、ガラス基板上のITO電極を用い、異方導電フィルムをガラス基板のITO電極側に仮圧着し、その後異方導電フィルムのベースフィルムを取り除いた状態でCCDカメラを用いてITOガラス基板越しに異方導電フィルム上の電極の見易さについて視認を行う。この時、電極端子がはっきりと視認できるときを視認性良好として○、確認が困難な時に視認性不良として×として表2に示す。
【0023】
(物性の確認)
1)接続性
異方導電フィルムの接続抵抗値の測定は、異方導電フィルムを室温でITO基板に異方導電フィルムを仮圧着し、その後FPCを本圧着し、隣り合うFPC端子から引き出した測定パッド間の抵抗値を抵抗測定器(HIOKI 3227 mΩHiTESTER)で測定することで接続抵抗値を求める。その結果を表2に示す。この時、接続抵抗値が≦10Ωの時を接続良好として○、接続抵抗値が>10Ωの時は、接続不安定として×で示す。
【0024】
2)絶縁性
異方導電フィルムの絶縁性の確認は、ガラスに異方導電フィルムを仮圧着後、FPCを本圧着し、隣り合った端子間の絶縁性を絶縁抵抗測定器(TOA ULTRAMEGOHMMETER SM−8210)で25V印加時の絶縁抵抗値を測定することで求める。この結果も表2に示す。結果は、抵抗値が≧10Ωのとき絶縁と判断し○、抵抗値が<10Ωのときは短絡と判断し×で示す。
【0025】
3)接着性
異方導電フィルムの接着性の確認は、ガラスに異方導電フィルムを仮圧着後、FPCを本圧着し、圧着したFPCを引っ張り強度試験器(SHIMADZU AGS−50A)で引上げ速度50mm/minで90°剥離を実施しPeel強度を測定することで求める。この結果も表2に示す。結果は、Peel強度が≧7 N/cmのとき接着性良好として○、<7 N/cmのときに接着性不良として×で示す。
上記の方法で異方導電フィルムの接続抵抗及び、絶縁性、接着性について実施例と比較した。この結果も表2に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
この結果から実施例は、比較例に比べ、電極視認性、接続抵抗値、絶縁性、接続性において良好なものであることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の異方導電フィルムは、低接続抵抗、高絶縁信頼性を示し、ディスプレイ装置等の接続材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機バインダー、銅成分を含む合金粒子、及び平均粒径が10〜1000nmである無機系フィラーからなる異方導電フィルムであって、異方導電フィルムに対して、該合金粒子が0.1〜10体積%、該無機系フィラーが0.001〜0.5質量%であり、かつ膜厚が10〜60μmである異方導電フィルム。
【請求項2】
無機系のフィラーがカーボンである請求項1記載の異方導電フィルム。

【公開番号】特開2007−18760(P2007−18760A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196270(P2005−196270)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】