説明

ガラス板端部の塗布方法、ガラス板端部の塗布装置、及びそのガラス板端部の塗布方法により端部が被覆されたガラス板

【課題】ガラス板の端部に塗布液を均一に低コストで塗布することができるガラス板端部の塗布方法、ガラス板端部の塗布装置、及びそのガラス板端部の塗布方法により端部が被覆されたガラス板を提供する。
【解決手段】ガラス板端部の塗布装置100は、ガラス板10を略水平に保持して回転するガラス板回転部11と、ガラス板10の端部10aに耐酸性を有する黒セラミックから成る被膜を形成して端部10aの外観品質を向上すべく、微小なノズル群20を用いたインクジェット方式によりガラス板10の端部10aに液状の黒セラミックペーストを塗布する塗布部12と、塗布部位置調節部としての1軸のボール螺子13とを備える。塗布部12は、ボール螺子13により位置決めされており、ノズル群20が配置されているフレーム21と、塗布部回転角度調節部等が配置されている可動部14とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板端部の塗布方法、ガラス板端部の塗布装置、及びそのガラス板端部の塗布方法により端部が処理されたガラス板、特に、インクジェット方式に代表される印刷方式に用いられる微小ノズル群により塗布液を塗布するガラス板端部の塗布方法、ガラス板端部の塗布装置、及びそのガラス板端部の塗布方法により端部が被覆されたガラス板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクジェット方式に代表される印刷方式に用いられる微小ノズル群により、塗布液がガラス板の表面の平面上に塗布されている(例えば、特許文献1乃至4)。また、従来より、合わせガラスについては、中間膜を保護すべく、シランカップリング剤、無機顔料、樹脂等から成る塗料がガラス板の端部(エッジ)に刷毛等により塗布されている。
【0003】
ガラス板の中でも、特に、自動車のガラス窓構造に使用される自動車用強化ガラス板は、通常、ガラス板の端部(エッジ)に研磨処理が施される。ここで、自動車用強化ガラス板の端部(エッジ)の研磨処理は、研磨ホイール及び端部(エッジ)間に研磨液を注入しながら、高速で回転している研磨ホイールを端部(エッジ)に押し当てて、端部(エッジ)に沿って移動させることにより実施される。この研磨処理によって端部(エッジ)表面に細かいキズがついて、この細かいキズに光が乱反射して白く見える(白濁する)。この端部(エッジ)に研磨処理が実施された自動車用強化ガラス板をモール等で覆うことにより端部(エッジ)が露出しない構造としていた。ところが、最近、自動車ボディーと自動車用強化ガラス板の面一感を出すべく、自動車用強化ガラス板の端部(エッジ)をモールで覆わないことが多くなっている。自動車用強化ガラス板の端部(エッジ)をモールで覆わず、研磨処理された自動車用強化ガラス板の端部(エッジ)を露出させると、自動車ボディーと自動車用強化ガラス板との境界において白濁した端部(エッジ)が目立って見栄えが悪くなってしまう。
【0004】
ここで、研磨ホイールのメッシュを細かくする、送り速度を遅くする、研磨液の濃度を高くする等の対処によって研磨面の粗さを小さくすることにより、見栄えが向上して端部(エッジ)の研磨品質を上げることができる。しかし、端部(エッジ)の研磨品質を上げると、1枚あたりの研磨処理時間の長大化による生産性の低下、研磨ホイールの消耗増大、及び研磨液の使用量増大等を招いてコストが上昇してしまう。
【0005】
以上より、自動車用強化ガラス板の端部(エッジ)をモールで覆わない場合は、自動車用強化ガラス板の端部(エッジ)に透明被覆層を形成することがなされていた(例えば、特許文献5参照)。
【特許文献1】特許3385119号公報
【特許文献2】国際公開第2005/018941号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/019360号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2005/051856号パンフレット
【特許文献5】特開2002−12024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、自動車用強化ガラス板の端部(エッジ)のように立体的な部分に塗布液をむらがない状態で且つ低コストで塗布して自動車用強化ガラス板の端部(エッジ)に均一な厚さで且つ厚みのある被膜を形成するのは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、ガラス板の端部に塗布液を均一に低コストで塗布することができるガラス板端部の塗布方法、ガラス板端部の塗布装置、及びそのガラス板端部の塗布方法により端部が被覆されたガラス板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載のガラス板端部の塗布方法は、ガラス板とノズル群とを相対的に移動する移動ステップと、前記ガラス板の端部に被膜を形成すべく、前記ノズル群により塗布液を塗布する塗布ステップとを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載のガラス板端部の塗布方法は、請求項1記載のガラス板端部の塗布方法において、前記ガラス板の端部と前記ノズル群との間隔を略一定に保つべく、前記ノズル群の位置を調節する位置調節ステップを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載のガラス板端部の塗布方法は、請求項1又は2記載のガラス板端部の塗布方法において、前記塗布ステップは、前記ノズル群が前記ガラス板の端部の垂線方向に対向するように、前記ガラス板の平面形状に合わせて前記ガラス板の平面方向の前記ノズル群の角度を調節する角度調節ステップを有することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載のガラス板端部の塗布方法は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布方法において、前記塗布ステップは、前記ガラス板の断面形状に合わせて前記ノズル群の配置を調節する配置調節ステップを有することを特徴とする。
【0012】
請求項5記載のガラス板端部の塗布方法は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布方法において、前記移動ステップは、前記ガラス板を回転するガラス板回転ステップであることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載のガラス板端部の塗布方法は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布方法において、前記塗布液は、温度 20℃、せん断速度 10.5/secの条件で、粘度が5〜100Pa・sであることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項7記載のガラス板端部の塗布装置は、ガラス板とノズル群とを相対的に移動する移動手段と、前記ガラス板の端部に被膜を形成すべく、前記ノズル群により塗布液を塗布する塗布手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載のガラス板端部の塗布装置は、請求項7記載のガラス板端部の塗布装置において、前記ガラス板の端部と前記ノズル群との間隔を略一定に保つべく、前記ノズル群の位置を調節する位置調節手段を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項9記載のガラス板端部の塗布装置は、請求項7又は8記載のガラス板端部の塗布装置において、前記塗布手段は、前記ノズル群が前記ガラス板の端部の垂線方向に対向するように、前記ガラス板の平面形状に合わせて前記ガラス板の平面方向の前記ノズル群の角度を調節する角度調節手段を有することを特徴とする。
【0017】
請求項10記載のガラス板端部の塗布装置は、請求項7乃至9のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布装置において、前記塗布手段は、前記ガラス板の断面形状に合わせて前記ノズル群の配置を調節する配置調節手段を有することを特徴とする。
【0018】
請求項11記載のガラス板端部の塗布装置は、請求項7乃至10のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布装置において、前記移動手段は前記ガラス板を回転することを特徴とする。
【0019】
請求項12記載のガラス板端部の塗布装置は、請求項7乃至11のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布装置において、前記ノズル群は前記ガラス板の端部を覆うように配置されていることを特徴とする。
【0020】
請求項13記載のガラス板端部の塗布装置は、請求項7乃至12のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布装置において、前記ノズル群は略U型の多角形のフレームに設置されていることを特徴とする。
【0021】
請求項14記載のガラス板端部の塗布装置は、請求項7乃至12のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布装置において、前記ノズル群は円弧状曲面を有するフレームに設置されていることを特徴とする。
【0022】
請求項15記載のガラス板端部の塗布装置は、請求項13又は14記載のガラス板端部の塗布装置において、前記フレームは複数に分割されていることを特徴とする。
【0023】
請求項16記載のガラス板端部の塗布装置は、請求項7乃至15のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布装置において、前記塗布液は温度 20℃、せん断速度 10.5/secの条件で、粘度が5〜100Pa・sであることを特徴とする。
【0024】
請求項17記載のガラス板は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布方法により端部が被覆されたことを特徴とする。
【0025】
請求項18記載のガラス板は、請求項17記載のガラス板において、前記被膜は耐酸性を有することを特徴とする。
【0026】
請求項19記載のガラス板は、請求項17又は18記載のガラス板において、前記被膜はセラミックから成ることを特徴とする。
【0027】
請求項20記載のガラス板は、請求項17又は18記載のガラス板において、前記被膜は樹脂から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1記載のガラス板端部の塗布方法及び請求項7記載のガラス板端部の塗布装置によれば、ガラス板とノズル群とを相対的に移動し、ガラス板の端部に被膜を形成すべく、ノズル群により塗布液を塗布するので、ガラス板の端部に塗布液を均一に低コストで塗布することができる。
【0029】
請求項2記載のガラス板端部の塗布方法及び請求項8記載のガラス板端部の塗布装置によれば、ガラス板の端部とノズル群との間隔を略一定に保つべく、ノズル群の位置を調節するので、ガラス板の端部に塗布液を正確に塗布することができる。
【0030】
請求項3記載のガラス板端部の塗布方法及び請求項9記載のガラス板端部の塗布装置によれば、ノズル群がガラス板の端部の垂線方向に対向するように、ガラス板の平面形状に合わせてガラス板の平面方向のノズル群の角度を調節するので、ガラス板の端部に塗布液をガラス板の平面形状に応じて正確に塗布することができる。
【0031】
請求項4記載のガラス板端部の塗布方法及び請求項10記載のガラス板端部の塗布装置によれば、ガラス板の断面形状に合わせてノズル群の配置を調節するので、ガラス板の端部に塗布液をガラス板の断面形状及び厚さに応じて正確に塗布することができる。
【0032】
請求項6記載のガラス板端部の塗布方法及び請求項16記載のガラス板端部の塗布装置によれば、塗布液は、温度 20℃、せん断速度 10.5/secの条件で、粘度が5〜100Pa・sであるので、ノズルからの射出を容易にすることができる。
【0033】
請求項12記載のガラス板端部の塗布装置によれば、ノズル群はガラス板の端部を覆うように配置されているので、ガラス板の端部に塗布液をむらがない状態で効率良く塗布することができる。
【0034】
請求項13記載のガラス板端部の塗布装置によれば、ノズル群は略U型の多角形のフレームに設置されているので、様々な厚みのガラス板に対応することができる。
【0035】
請求項14記載のガラス板端部の塗布装置によれば、ノズル群は円弧状曲面を有するフレームに設置されているので、様々な厚みのガラス板に対応することができる。
【0036】
請求項15記載のガラス板端部の塗布装置によれば、フレームは複数に分割されているので、ノズルの大きさ等の都合で1つのフレームの中にノズルを多数入れるのが困難な場合に、1つのフレームの中に入れるノズル数を減らしてノズルの位置的な干渉を防ぐことができる。
【0037】
請求項18記載のガラス板によれば、被膜は耐酸性を有するので、ガラス板が酸性雨により侵食されるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態に係るガラス板端部の塗布方法及びガラス板端部の塗布装置を図面を参照しながら説明する。なお、ガラス板は、車両用の窓ガラスに用いられるものとして説明する。
【0039】
図1は、本発明の実施の形態に係るガラス板端部の塗布装置の構成を概略的に示す図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は上面図を示す。
【0040】
図1において、ガラス板端部の塗布装置100は、ガラス板10を略水平に保持して回転するガラス板回転部(移動手段)11と、ガラス板10の端部10aに耐酸性を有する黒セラミックから成る被膜を形成して端部10aの外観品質を向上すべく、図2で後述する微小なノズル群20を用いたインクジェット方式によりガラス板10の端部10aに液状の黒セラミックペースト(塗布液)を塗布する塗布部(塗布手段)12とを備える。なお、液状の黒セラミックペーストは、温度 20℃、せん断速度 10.5/secの条件における粘度が5〜100Pa・sであるので、ノズル群20から容易に射出することができる。ここで、液状の黒セラミックペーストの粘度測定は、ブルックフィールド社製のデジタル粘度計(型式RVDV−E)を用いて、スピンドルRV7を使用し、回転数 0.833回転/秒(50rpm)で行った。
【0041】
なお、通常、ガラス板10の表面の黒セラミック被膜は車内側に形成されるから酸性雨に濡れることはないが、本実施例においては、外部に露出するガラス板10の端部10aに形成されるので、耐酸性を有する黒セラミック被膜を使用している。また、黒セラミック被膜とガラス板10との界面まで酸性雨を到達しにくくして被膜の耐酸性をより発揮するために、液状の黒セラミックペーストを厚く塗布して焼成後の被膜の厚さが約15μmとなるようにしている。ここで、形状が複雑な端部10aに液状の黒セラミックペーストをスクリーン印刷により厚く塗布するのは困難である。また、刷毛やスポンジ等によりガラス板10の端部10aに塗布液を塗布する場合、塗布液が低粘度でなければ塗布することができないので、被膜の厚さが薄くなってしまう。そして、刷毛やスポンジ等で塗布液を塗ると、塗布むらが発生して美観を損なったり、ガラス板10の表面10bに塗布しないためにマスキング処理を行う必要がある。よって、本実施の形態では、インクジェット方式によりガラス板10の端部10aに液状の黒セラミックペーストを厚く塗布することにより、ガラス板20と被膜との界面まで酸性雨が到達しにくくして高い耐酸性を得ている。そして、微小なノズル群20を用いているので、ガラス板10の表面10bへの塗布を最小限とすることができ、塗布むらも美観を損なわない程度とすることが可能である。
【0042】
また、黒セラミックとしては、非結晶化タイプのガラスフリットを含む光沢のあるものでも、結晶化タイプのガラスフリットを含む光沢度の低いものを用いてもよい。ここで、非結晶化タイプのガラスフリットを含む光沢のある黒セラミックを用いた場合に、添加する光沢成分及び結晶化成分の量を調整することにより、つや消し状態を調整することができる。
【0043】
ガラス板端部の塗布装置100は、更に、塗布部位置調節部(位置調節手段)としての1軸のボール螺子13を備える。このボール螺子13は、ガラス板10の端部10aとノズル群20が配置されたフレーム21(図2)との間隔を略一定に保つために、ガラス板10の表面10bに平行且つガラス板回転部11の回転円の径方向(矢印A)にボール螺子13の移動軸が合うように設置されている。
【0044】
塗布部12は、更に、フレーム21を回転するための塗布部回転角度調節部(角度調節手段)を有する。この塗布部回転角度調節部の回転方向は、ガラス板10の表面10bに平行な平面方向(矢印B)である。この塗布部角度調節部の回転により、フレーム21の向きをガラス板10の平面形状に合わせて端部10aの垂線方向に対向するように調節することができる。
【0045】
図2は、図1における塗布部12の構成を概略的に示す部分拡大図である。
【0046】
図2において、塗布部12は、ボール螺子13により位置決めされており、ノズル群20が配置されているフレーム21と、塗布部回転角度調節部等が配置されている可動部14とを有する。なお、ノズル群20への塗布液の供給機構は省略している。
【0047】
フレーム21の形状は、ガラス板10の端部10aを覆うように略U字型の多角形あるいは円弧状曲面を有する形状とすることができる。図2には、略U字型の多角形のフレーム21を示した。このフレーム21は、低部21aと2つの指部21b、21cから構成されている。これらの低部21aと2つの指部21b、21cには、それぞれ複数の微小なノズルが配置されている。
【0048】
塗布部12は、ガラス板10の厚みや端部10aの断面形状に対応するために、指部21b、21cのガラス板10の断面方向の角度(矢印C)を調節するためのノズル角度調節部(配置調節手段)を備えている。このノズル角度調節部は、可動部14に配置されている。通常、ガラス品種が同一の場合、端部10aの形状は同一であるので、ノズル角度調節部によるフレーム21の調節は、端部10aの形状を変更するときに一度行えばよい。
【0049】
図1のガラス板端部の塗布装置100によれば、前述したガラス板回転部11、塗布部位置調節部、塗布部回転角度調節部、及びノズル角度調節部が連動して可動することにより、ガラス板10の端部10aとフレーム21との間隔を一定に保ちつつ、ガラス板10の形状が複雑であっても端部10aに対してフレーム21の向きを真っ直ぐに対向させることができる。従って、ガラス板10の端部10aに、均一で美観に優れた厚みのある黒セラミック塗布膜を形成することができる。そして、この黒セラミック塗布膜が形成されたガラス板10を所定の温度で焼成することにより、均一で美観に優れた厚みのある黒セラミック被膜を端部10aに形成することができる。
【0050】
図3は、本発明の実施の形態に係るガラス板端部の塗布方法を示すフローチャートである。
(ガラス板10の切断・研磨・搬送)
まず、ガラス板10の切断・研磨工程より、矩形のガラス板10が所定の形状に切断され、そのガラス板10の端部10aが略半円形状に研磨され、洗浄され、そして乾燥される。この切断・研磨工程には、一般的な処理方法を実施する装置を用いることができる。そして、搬送工程により、端部10aが研磨されたガラス板10は、本発明の実施の形態に係るガラス板端部の塗布方法における塗布工程に送られる。
(ガラス板端部の塗布工程)
ガラス板端部の塗布工程を、複数のステップに分けて説明する。
(ステップS301:ガラス板10の固定及び形状計測)
ガラス板10は、その中心部をガラス板端部の塗布装置100におけるガラス板回転部11に載置され、真空引き等の処理で固定される。次に、ガラス板10の形状が計測されて制御部15に設定される。ガラス板10の形状は、光学的に2次元のカメラ又は1次元のセンサを用いて取得した画像に対してエッジ検出等の画像処理を行うことにより計測することができる。あるいは、ガラス板10を回転しながら接触針により機械的に計測することもできる。前工程の切断工程から形状データを取得することもできるが、研磨工程により形状に若干の変動が発生することがあり、ガラス板回転部11への位置合わせの精度によってもずれることがある。よって、前述したように光学的又は機械的にその都度、ガラス板10の形状を計測して、このような形状の変動に対応している。
(ステップS302:制御データの作成)
ステップS301より取得したガラス板10の形状のデータを基にして、ガラス板10の回転角度に対する塗布部位置調節部の位置データと塗布部回転角度調節部の角度データを計算し、制御部15に設定する。
(ステップS303:ガラス板10及び塗布部12の開始位置決め)
ステップS302より制御部15に設定した制御データに従って、ガラス板10及び塗布部12を開始位置に移動する。この際、ノズル角度調節部により、端部10aの断面形状に合うようにフレーム21の形状を調節する。
(ステップS304:塗布液の塗布)
ステップS302により制御部15に設定した制御データに従って、ガラス板10を回転しながら端部10aに液状の黒セラミックペーストを塗布し、黒セラミック塗布膜を形成する。ガラス板10の回転速度やノズル群20からの液状の黒セラミックペーストの噴射量は、黒セラミック塗布膜が所定の厚みになるように、適宜調整することができる。
(ガラス板10の搬送・焼成)
ステップS304により、端部10aに黒セラミック塗布膜が形成されたガラス板10は、ガラス板回転部11から取り外され、焼成工程へ搬送される。ガラス板10が焼成工程で焼成されることにより、端部10aに黒セラミック被膜が形成されたガラス板10を得ることができる。なお、ガラス板10を曲げガラスに成型する場合には、その成型工程に含まれる過熱工程を焼成工程とすることができる。
【0051】
ガラス板10の端部10aへの被膜形成に加えて、ガラス板10の表面10bへの被膜形成を行う場合は、ステップS301の前あるいはステップS304の後に行うことができる。
【0052】
本実施の形態によれば、ガラス板10とノズル群20とを相対的に移動し、ガラス板10の端部10aに黒セラミック被膜を形成すべく、ノズル群20により液状の黒セラミックペーストを塗布するので、ガラス板10の端部10aに均一に液状の黒セラミックペーストを低コストで塗布することができる。
【0053】
本実施の形態によれば、ガラス板10の端部10aとノズル群20との間隔を略一定に保つべく、ノズル群20の方向Aに関する位置を調節するので、ガラス板10の端部10aに液状の黒セラミックペーストを正確に塗布することができる。
【0054】
本実施の形態によれば、ノズル群20がガラス板10の端部10aの垂線方向に対向するように、ガラス板10の平面形状に合わせてガラス板10の平面方向Bのノズル群20の角度を調節するので、ガラス板10の端部10aに液状の黒セラミックペーストをガラス板10の平面形状に応じて正確に塗布することができる。
【0055】
本実施の形態によれば、ガラス板10の断面形状に合わせてノズル群20の方向Cに関する配置を調節するので、ガラス板10の端部10aに液状の黒セラミックペーストをガラス板10の断面形状及び厚さに応じて正確に塗布することができる。
【0056】
本実施の形態によれば、ノズル群20がガラス板10の端部10aを覆うように配置されているので、ガラス板10の端部10aに液状の黒セラミックペーストをむらがない状態で効率良く塗布することができる。
【0057】
本実施の形態によれば、ノズル群20は略U型の多角形のフレーム21に設置されているので、様々な厚みのガラス板10に対応することができる。
【0058】
本実施の形態によれば、黒セラミック被膜は耐酸性を有するので、ガラス板10が酸性雨により侵食されるのを防止することができる。
【0059】
本実施の形態では、被膜は耐酸性を有する黒セラミックから成るが、これに限定されるものではなく、例えば耐酸性を有する樹脂から成っていてもよい。
【0060】
本実施の形態では、フレーム21は略U型の多角形であるが、これに限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、ガラス板10の端部10aに対向する面が円弧状曲面であってもよい。
【0061】
本実施の形態では、1つのフレーム21に6個のノズルが設置されているが、これに限定されるものではなく、フレーム21を複数に分割して1つのフレーム21に設置されるノズル群20の数を少なくしてもよい。これにより、ノズル群20の大きさの都合で1つのフレーム21の中にノズル群20を多数入れるのが困難な場合に、ノズル群20の位置的な干渉を防ぐことができる。
【0062】
本実施の形態では、塗布液の塗布後に焼成工程へ搬送されるとしたが、これに限定されるものではなく、塗布後すぐにフレーム21の近傍に配置した乾燥用ヒータにより乾燥させてもよく、UV硬化タイプの塗布液を塗布して、塗布後すぐにフレーム21の近傍に配置したUV照射装置によりすぐに硬化させてもよい。これにより、端部10aの品質低下やガラス搬送装置(例えば、ロール搬送装置、エア搬送装置、自重金型搬送装置、トング吊搬送装置)への塗布液の付着を防止することができる。
【0063】
本実施の形態では、ガラス板10の端部10aが略半円状(かまぼこ状)であるが、これに限定されるものではなく、図5に示すように、ガラス板10の端部10aが糸面50を有していてもよい。
【0064】
本実施の形態では、焼成後の黒セラミック被膜の厚さを15μmとしているが、これに限定されるものではなく、黒セラミック被膜の厚さが10〜30μmであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態に係るガラス板端部の塗布装置の構成を概略的に示す図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は上面図を示す。
【図2】図1における塗布部12の構成を概略的に示す部分拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るガラス板端部の塗布方法を示すフローチャートである。
【図4】図2の塗布部12の変形例の構成を概略的に示す部分拡大図である。
【図5】図1におけるガラス板10の端部10aの変形例の構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10 ガラス板
10a 端部
11 ガラス板回転部
12 塗布部
13 ボール螺子
14 可動部
15 制御部
20 ノズル群
21 フレーム
100 ガラス板端部の塗布装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板とノズル群とを相対的に移動する移動ステップと、
前記ガラス板の端部に被膜を形成すべく、前記ノズル群により塗布液を塗布する塗布ステップとを備えることを特徴とするガラス板端部の塗布方法。
【請求項2】
前記ガラス板の端部と前記ノズル群との間隔を略一定に保つべく、前記ノズル群の位置を調節する位置調節ステップを備えることを特徴とする請求項1記載のガラス板端部の塗布方法。
【請求項3】
前記塗布ステップは、前記ノズル群が前記ガラス板の端部の垂線方向に対向するように、前記ガラス板の平面形状に合わせて前記ガラス板の平面方向の前記ノズル群の角度を調節する角度調節ステップを有することを特徴とする請求項1又は2記載のガラス板端部の塗布方法。
【請求項4】
前記塗布ステップは、前記ガラス板の断面形状に合わせて前記ノズル群の配置を調節する配置調節ステップを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布方法。
【請求項5】
前記移動ステップは、前記ガラス板を回転するガラス板回転ステップであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布方法。
【請求項6】
前記塗布液は、温度 20℃、せん断速度 10.5/secの条件で、粘度が5〜100Pa・sであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布方法。
【請求項7】
ガラス板とノズル群とを相対的に移動する移動手段と、
前記ガラス板の端部に被膜を形成すべく、前記ノズル群により塗布液を塗布する塗布手段とを備えることを特徴とするガラス板端部の塗布装置。
【請求項8】
前記ガラス板の端部と前記ノズル群との間隔を略一定に保つべく、前記ノズル群の位置を調節する位置調節手段を備えることを特徴とする請求項7記載のガラス板端部の塗布装置。
【請求項9】
前記塗布手段は、前記ノズル群が前記ガラス板の端部の垂線方向に対向するように、前記ガラス板の平面形状に合わせて前記ガラス板の平面方向の前記ノズル群の角度を調節する角度調節手段を有することを特徴とする請求項7又は8記載のガラス板端部の塗布装置。
【請求項10】
前記塗布手段は、前記ガラス板の断面形状に合わせて前記ノズル群の配置を調節する配置調節手段を有することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布装置。
【請求項11】
前記移動手段は前記ガラス板を回転することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布装置。
【請求項12】
前記ノズル群は前記ガラス板の端部を覆うように配置されていることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布装置。
【請求項13】
前記ノズル群は略U型の多角形のフレームに設置されていることを特徴とする請求項7乃至12のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布装置。
【請求項14】
前記ノズル群は円弧状曲面を有するフレームに設置されていることを特徴とする請求項7乃至12のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布装置。
【請求項15】
前記フレームは複数に分割されていることを特徴とする請求項13又は14記載のガラス板端部の塗布装置。
【請求項16】
前記塗布液は、温度 20℃、せん断速度 10.5/secの条件で、粘度が5〜100Pa・sであることを特徴とする請求項7乃至15のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布装置。
【請求項17】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガラス板端部の塗布方法により端部が被覆されたことを特徴とするガラス板。
【請求項18】
前記被膜は耐酸性を有することを特徴とする請求項17記載のガラス板。
【請求項19】
前記被膜はセラミックから成ることを特徴とする請求項17又は18記載のガラス板。
【請求項20】
前記被膜は樹脂から成ることを特徴とする請求項17又は18記載のガラス板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−230849(P2007−230849A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57666(P2006−57666)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】