説明

ガルバノ装置およびレーザ加工装置

【課題】ミラーの倒れによる加工用の光の位置決め精度又は物品の加工精度の低下を抑制する。
【解決手段】ガルバノ装置は、ミラー2と、ミラー2を回転させるモータ1と、ミラー2の被検領域6の傾きを検出する検出器DT1と、検出器DT1によって検出された被検領域6の傾きとミラー2の回転角とに基づいて該回転角におけるミラー2の倒れ量を得る処理部50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガルバノ装置およびそれを含むレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ穴あけ加工機、レーザトリマ装置、レーザリペア装置などの工作機械においてガルバノ装置が使用される。ガルバノ装置は、モータの回転軸にミラーを取付けて該ミラーの回転角を制御しながら該ミラーでレーザ光を目標位置に向けて反射する。レーザ光の照射位置を目標位置に高精度に位置決めするためには、ミラーの回転角を高精度に制御する必要がある。ミラーの回転角の検出には、静電容量センサや、光学式又は磁気式エンコーダが用いられうる。
【0003】
工作機械には高速性も求められていることから、ガルバノ装置のミラーを高速に回転駆動する必要がある。しかしながら、モータの回転軸およびミラーの動バランスが取れていない場合やモータの磁石とコイルとによって生じる力に回転方向以外の成分が含まれる場合に、モータの回転軸に対して倒れ方向に振動する振動が励起される。従来から、モータにおける振動を抑制するために回転軸に対する動バランスの調整を行うことが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開昭61−116632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
倒れ方向の振動は、従来のガルバノ装置が有するようなミラーの回転角を検出する検出器では検出することができず、当該振動が存在するままで物品が加工され、加工不良が生じうる。
【0005】
本発明は、上記の課題認識を契機としてなされたものであり、例えば、ミラーの倒れによる加工用の光の位置決め精度又は物品の加工精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面は、ガルバノ装置に係り、前記ガルバノ装置は、ミラーと、前記ミラーを回転させるモータと、前記ミラーの被検領域の傾きを検出する検出器と、前記検出器によって検出された前記被検領域の傾きと前記ミラーの回転角とに基づいて前記回転角における前記ミラーの倒れ量を得る処理部とを備える。
【0007】
本発明の第2の側面は、レーザ加工装置に係り、前記レーザ加工装置は、前記ガルバノ装置と、前記ガルバノ装置の前記ミラーにレーザ光を照射するレーザ光源とを備え、前記ミラーの回転角の制御によって加工対象の物品に対するレーザ光の照射位置が制御される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、ミラーの倒れによる加工用の光の位置決め精度又は物品の加工精度の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態のガルバノ装置の構成を模式的に示す図である。本発明の第1実施形態のガルバノ装置GM1は、ミラー2と、モータ(回転モータ)1と、検出器DT1と、処理部50とを備える。モータ1は、ミラー2を回転させる。検出器DT1は、ミラー2の被検領域6の傾きを検出する。処理部50は、検出器DT1によって検出された被検領域の傾きとミラー2の回転角とに基づいて該回転角におけるミラー2の倒れ角(倒れ量)を演算する。
【0011】
ミラー2は、モータ1の回転軸9に取付けられていて、レーザ装置(不図示)から照射されるレーザ光を加工対象の物品又は他のミラーに向けて反射する。ミラー2は、モータ1によって回転方向3に回転される。ミラー2の回転角は、ロータリエンコーダ(回転検出器)8によって検出される。ミラー2は、軸倒れ方向4に倒れる。倒れとは、基準軸(回転軸9の設計上の中心軸)に対する傾きを意味する。
【0012】
処理部50は、この実施形態では、ミラー2の回転角を制御する制御部を兼ねていて、基準面に対するミラー2の回転角が目標回転角になるようにロータリエンコーダ8の出力(回転角)に基づいてモータ1をフィードバック制御する。
【0013】
この実施形態では、検出器DT1は、ミラー2に検出光を照射する照射部5と、ミラー2で反射された検出光を受光する受光面を有するセンサ7とを含み、該受光面に検出光が入射する位置に基づいてミラー2の被検領域6の倒れを検出する。センサ7としては、例えば、PSD(Position Sensitive Detector)が好適であり、受光面における検出光の受光位置に基づいて被検領域6の傾きを検出することができる。
図2は、ミラー2の倒れ角(倒れ量)を検出する原理を説明するための図である。この実施形態では、ミラー2の上部に被検領域6として平坦な反射面が形成されている。ここでは、一例として、被検領域6としての反射面がモータ1の回転軸9と直交する場合を考える。
【0014】
センサ7は、1次元のPSDであるものとする。モータ1の回転軸9と直交しかつミラー2のレーザ加工用の反射面6rとも直交するように配置されている。照射部5から射出される検出光の被検領域6への入射角をθ[rad]とすると、検出光は、被検領域6から反射角θ[rad]で反射してセンサ7に入射する。
【0015】
センサ7の受光面とモータ1の回転軸9を延長した線とが交差する点Zと、ミラー2の被検領域6との距離をRとすると、センサ7への検出光の入射位置は、点ZからR・tanθだけ離れた位置となる。
【0016】
図3は、ミラー2に角度θt[rad]の倒れが発生した状態を示す図である。回転軸9は、ベアリング10によって支持されうる。ベアリング10は、ラジアル方向の荷重を支持する。ベアリング10の内輪は、モータ1の回転軸(いわゆるロータ側)に取付けられ、ベアリング10の外輪は、モータ1のケース側(いわゆるステータ側)に取付けられる。
【0017】
このような構成において発生する倒れによる振動は、ベアリング10を固定端として回転軸9およびミラー2が倒れることに起因する振動モードが支配的である。被検領域6への検出光の入射角は、θ+θt[rad]となり、反射角もθ+θt[rad]となる。このとき、センサ7の受光面への検出光の入射位置は、点ZからR・tan(θ+2θt)だけ離れた位置となる。
【0018】
図4は、図3に示す状態からミラー2をθm[rad]だけモータ1によって回転させた状態を示す図である。ミラー2をθm[rad]だけ回転させると、被検領域6に対する検出光の入射角は、θ+θt・cos(θm)[rad]となる。したがって、検出光は、反射角θ+θt・cos(θm)[rad]で反射されて、センサ7に入射する。このとき、センサ7への入射位置は、点ZからR・tan(θ+2θt・cos(θm))だけ離れた位置となる。
【0019】
ここで、Rおよびθは、設計値であるので、既知である。θmは、ロータリエンコーダ8により検出することができる。
【0020】
よって、処理部50は、検出器DT1によってR・tan(θ+2θt・cos(θm))およびR・tanθを測定し、これに基づいて倒れ角(倒れ量)θtを演算によって得る。処理部50は、倒れ角(倒れ量)θtが許容値を超えているときは、それを示すエラー信号を出力する。
図5は、図1に示す2つのガルバノ装置が組み込まれたレーザ加工装置の例である。このレーザ加工装置は、加工対象の物体32に照射するレーザ光31のX軸方向位置を制御するX軸ガルバノユニット(第1ガルバノユニット)と、レーザ光31のY軸方向位置を制御するY軸ガルバノユニット(第2ガルバノユニット)と、制御部20とを備えうる。X軸およびY軸は、XY座標系に従うものであり、互いに直交する軸である。
X軸ガルバノユニットは、X軸ミラー(第1ミラー)23と、X軸ミラー23を回転させるX軸モータ(第1モータ)24と、X軸ミラー23の倒れ角(倒れ量)を測定するX軸ミラー倒れ角測定部(第1測定部)25とを含む。X軸ミラー倒れ角測定部25は、図1〜図4を参照して説明した検出器(第1検出器)DT1および処理部(第1処理部)30に相当する構成を含む。X軸ガルバノユニットは、更に、X軸モータ24を制御するX軸モータ制御部22と、X軸モータ24に回転角を指令してレーザ光のX軸方向の位置を制御するX軸モータ位置位置指令部21とを含みうる。
【0021】
Y軸ガルバノユニットは、Y軸ミラー(第2ミラー)28と、Y軸ミラー28を回転させるY軸モータ(第2モータ)29と、Y軸ミラー28の倒れ角(倒れ量)を測定するY軸ミラー倒れ角測定部(第2測定部)30とを含む。Y軸ミラー倒れ角測定部30は、図1〜図4を参照して説明した検出器(第2検出器)DT1および処理部(第2処理部)30に相当する構成を含む。Y軸ガルバノユニットは、更に、Y軸モータ29を制御するY軸モータ制御部27と、Y軸モータ29に回転角を指令してレーザ光のY軸方向の位置を制御するY軸モータ位置位置指令部26とを含みうる。X軸モータ24の回転軸とY軸モータ29の回転軸とは、互いに直交する。
制御部20は、X軸ミラー倒れ角測定部25から提供されるX軸ミラー23の倒れ角およびY軸ミラー倒れ角測定部30から提供されるY軸ミラー28の倒れ角が許容値を超えている場合には、それらが許容値に収まるまで待つ。そして、制御部20は、両倒れ角がそれぞれの許容値に収まった後に、物体32の加工が開始又は再開されるように、レーザ装置35、X軸モータ位置指令部21およびY軸モータ位置指令部26を制御する。
【0022】
物体32をレーザ加工する際は、制御部20は、X軸モータ位置指令部21およびY軸モータ位置指令部26に物体32の加工位置(レーザ光の照射位置)の座標を指令する。X軸モータ位置指令部21およびY軸モータ位置指令部26は、制御部20から送られてきた座標をX軸ミラー23およびY軸ミラー28の回転角に変換し、その回転角を示す情報をX軸モータ制御部22およびY軸モータ制御部27に指令する。
【0023】
加工速度を向上させるためにミラーの角加速度を速くすると、該ミラーの駆動を停止した時に該ミラーに倒れ(或いは、振動)が生じ、それが相当期間にわたって残りうる。そこで、上記のように、ミラーの倒れが許容値に収まるまで物体の加工の開始又は再開を待つことによって物体に加工不良を低減することができる。
[第2実施形態]
図6は、本発明の第2実施形態のガルバノ装置の構成を模式的に示す図である。第2実施形態のガルバノ装置GM2は、第1実施形態における検出器DT1を検出器DT2で置き換えたものである。第2実施形態において言及しない事項、第1実施形態に従いうる。
【0024】
検出器DT2は、干渉計によって構成される変位計を含み、該変位計を使ってミラー2の被検領域13の傾きを検出する。検出器DT2は、光源5aと、ハーフミラー11と、ミラー12と、センサ14とを含む。光源5aから射出された光は、その一部がハーフミラー11を透過してミラー2の被検領域13である反射面で反射され、更にハーフミラー11で反射されてセンサ14の受光面に入射する。被検領域13は、例えば、ミラー2の裏面に設けられうる。光源5aから射出された光の他の一部は、ハーフミラー11で反射され、ミラー12で反射された後にハーフミラー11を透過してセンサ14の受光面に入射する。ミラー2の被検領域13で反射された光とミラー12で反射された光とによってセンサ14の受光面に干渉縞が形成され、この干渉縞がセンサ14によって検出される。このような干渉計は、マイケルソン干渉計と呼ばれる。ただし、検出器DT2は、他のタイプの干渉計で構成されてもよい。
【0025】
図7は、一般的なマイケルソン干渉計の構成を示す図である。マイケルソン干渉計は、振動する物体の変位を測定するための測定器として知られている。光源Aから出射された光は、ハーフミラーBを透過する第1の光とハーフミラーBで反射される第2の光とに分割される。ハーフミラーBを透過した第1の光は、反射物(測定対象の物体)Dで反射され、ハーフミラーBで更に反射されて観測点Eに入射する。ハーフミラーBで反射された第2の光は、反射物Cで反射されてハーフミラーBを透過して観測点Eに入射する。観測点Eに入射する第1の光と第2の光が干渉することによって干渉縞が形成される。反射物Dの変位に応じて第1の光および第2の光の光路長が変化することによって干渉縞が変化し、この変化を検出することによって光路長の変化、すなわち反射物DEの変位を測定することができる。
【0026】
図8は、ミラー2の倒れ角(倒れ量)の検出に関する説明図である。ミラー2の倒れがない状態において、ミラー2の加工用反射面(加工用のレーザ光を反射する面)が光源5aの光軸と直交するものとする。ミラー2の裏面に加工用反射面と平行に設けられた被検領域13としての反射面に入射した光は、ハーフミラー11の方向に反射される。この状態における干渉計(検出器DT2)による測定値(変位量)を基準値0とする。
【0027】
図9は、ミラー2に角度θt[rad]の倒れが発生した状態を示す図である。この状態では、ミラー2の被検領域13は、Rtan(θt)の距離だけ光源5aから離れていて、この変位が干渉計(検出器DT2)によって測定される。
【0028】
図10は、図9に示す状態からミラー2をθm[rad]だけモータ1によって回転させた状態を示す図である。ミラー2をθm[rad]だけ回転させると、被検領域13は、Rtan(θt)/cos(θm)の距離だけ光源5aから離れ、この変位が干渉計(検出器DT2)によって測定される。
【0029】
ここで、Rは、ミラー2側のベアリング10から被検領域13までの距離であり、既知である。θmは、ロータリエンコーダ8により検出することができるほか、θmとして目標回転角を使用することもできる。
【0030】
よって、処理部50は、干渉計によってRtan(θt)/cos(θm)で計算される変位量を測定することにより、倒れ角(倒れ量)θtを演算によって得ることができる。
【0031】
この実施形態のガルバノ装置も図5に例示するようなレーザ加工装置に組み込まれうる。そのようなレーザ加工装置の制御部20は、X軸ミラー倒れ角測定部25から提供されるX軸ミラー23の倒れ角およびY軸ミラー倒れ角測定部30から提供されるY軸ミラー28の倒れ角がそれぞれ許容値に収まるまで待つ。そして、制御部20は、両倒れ角がそれぞれの許容値に収まった後に、物体32の加工が開始又は再開されるように、レーザ装置35、X軸モータ位置指令部21およびY軸モータ位置指令部26を制御する。
【0032】
この実施形態では、マイケルソン干渉計を適用した検出器を例示的に説明したが、このような検出器に代えて、例えば、レーザドップラー速度計、レーザドップラー振動計又はレーザエンコーダ等を適用した検出器を用いることもできる。
【0033】
[第3実施形態]
図11は、本発明の第3実施形態のガルバノ装置の構成を模式的に示す図である。第3実施形態のガルバノ装置GM3は、第1実施形態における検出器DT1を検出器DT3で置き換えたものである。第3実施形態において言及しない事項、第1実施形態に従いうる。
【0034】
検出器DT3は、静電容量センサを含み、該静電容量センサを使ってミラー2の被検領域の傾きを検出する。検出器DT3は、ミラー2の被検領域に取付けられた受信電極16と、受信電極16と平行に対向するように配置された分割構造電極15とを含む。分割構造電極15は、例えば、円形の電極を一対の半円状電極(分割電極)に2分割した構造を有する。受信電極16と分割構造電極15とによってキャパシタンスが形成される。1/2周期の位相差を有する正弦波状の電気信号を2つの半円状電極に対して印加すると、受信電極16では、分割構造電極15の各半円状電極との容量結合によって電気信号が発生する。検出部DT3は、この電気信号を計測することにより、ミラー2の被検領域の倒れ角(倒れ量)を検出する。
【0035】
図12は、ミラー2の倒れ角(倒れ量)の検出に関する説明図であり、図11に示す構成を上から見た図である。ミラー2の倒れがない状態のとき、ミラー2の被検領域に設けられた受信電極16の中心と分割構造電極15の中心とが一致している。そのため、図12のように、受信電極16と分割構造電極15の2つの半円状電極のそれぞれとの重なり具合が同じであるので、受信電極16に発生する信号の強度が0となる。
図13は、ミラー2に角度θt[rad]の倒れが発生した状態を示す図である。ベアリング10は、ラジアル方向の荷重を支持する。ベアリング10の内輪は、モータ1の回転軸(いわゆるロータ側)に取付けられ、ベアリング10の外輪は、モータ1のケース側(いわゆるステータ側)に取付けられる。このような構成において発生する倒れによる振動は、ベアリング10を固定端として回転軸9およびミラー2が倒れることに起因する振動モードが支配的である。回転軸9が振動している状態、すなわちミラー2に倒れが生じている状態におけるある瞬間において、受信電極16は、分割構造電極15の2つの半円状電極のうちの一方の半円状電極の影響を他方よりも大きく受ける。そこで、ミラー2の倒れ角度θtと受信電極16で発生する信号との関係を示すデータを予め求めて登録しておく。そして、ガルバノ装置GM3の動作時に、受信電極16で発生する信号と当該データとに基づいてミラー2の被検領域の倒れ角(倒れ量)θtを検出することができる。
【0036】
ミラー2をθm[rad]だけモータ1によって回転させた場合においては、受信電極16と分割構造電極15との空間的な配置が変化する。そこで、予め回転角θmにおけるミラー2の被検領域の倒れ角θtと受信電極16で発生する信号との関係を示すデータを求めておく。そして、ガルバノ装置GM3の動作時に、処理部50は、受信電極16で発生する信号と当該データとに基づいて、回転角θmにおけるミラー2の被検領域の倒れ角(倒れ量)θtを得ることができる。
【0037】
この実施形態のガルバノ装置も図5に例示するようなレーザ加工装置に組み込まれうる。そのようなレーザ加工装置の制御部20は、X軸ミラー倒れ角測定部25から提供されるX軸ミラー23の倒れ角およびY軸ミラー倒れ角測定部30から提供されるY軸ミラー28の倒れ角がそれぞれ許容値に収まるまで待つ。そして、制御部20は、両倒れ角がそれぞれの許容値に収まった後に、物体32の加工が開始又は再開されるように、レーザ装置35、X軸モータ位置指令部21およびY軸モータ位置指令部26を制御する。
【0038】
[第4実施形態]
図14は、本発明の第4実施形態のレーザ加工装置の構成を模式的に示す図である。このレーザ加工装置には、第1〜第3実施形態のガルバノ装置が組み込まれうる。このレーザ加工装置は、加工対象の物体32に照射するレーザ光31のX軸方向位置を制御するX軸ガルバノユニット(第1ガルバノユニット)と、レーザ光31のY軸方向位置を制御するY軸ガルバノユニット(第2ガルバノユニット)と、制御部20とを備えうる。X軸およびY軸は、XY座標系に従うものであり、互いに直交する軸である。
X軸ガルバノユニットは、X軸ミラー23と、X軸ミラー23を回転させるX軸モータ24と、X軸ミラー23の倒れ角(倒れ量)を測定するX軸ミラー倒れ角測定部25とを含む。X軸ミラー倒れ角測定部25は、第1〜第3実施形態の検出器DT1〜DT3のいずれか、および、処理部50に相当する構成を含む。X軸ガルバノユニットは、更に、X軸モータ24を制御するX軸モータ制御部22と、X軸モータ24に回転角を指令してレーザ光のX軸方向の位置を制御するX軸モータ位置指令部21とを含みうる。
【0039】
Y軸ガルバノユニットは、Y軸ミラー28と、Y軸ミラー28を回転させるY軸モータ29と、Y軸ミラー28の倒れ角(倒れ量)を測定するY軸ミラー倒れ角測定部30とを含む。Y軸ミラー倒れ角測定部30は、第1〜第3実施形態の検出器DT1〜DT3のいずれか、および、処理部50に相当する構成を含む。Y軸ガルバノユニットは、更に、Y軸モータ29を制御するY軸モータ制御部27と、Y軸モータ29に回転角を指令してレーザ光のY軸方向の位置を制御するY軸モータ位置位置指令部26とを含みうる。X軸モータ24の回転軸とY軸モータ29の回転軸とは、互いに直交する。
X軸ミラー23の倒れは、X軸モータ24によるX軸ミラー23の回転によってレーザ光31が走査されるX軸方向と直交するY軸方向に、加工対象の物体32に入射するレーザ光31の位置を変化させる。また、Y軸ミラー28の倒れは、Y軸モータ29によるY軸ミラー28の回転によってレーザ光31が走査されるY軸方向と直交するX軸方向に、加工対象の物体32に入射するレーザ光31の位置を変化させる。
【0040】
したがって、X軸ミラー23の倒れ角(倒れ量)は、Y軸モータ29によってY軸ミラー28を回転させることにより、また、Y軸ミラー28の倒れ角(倒れ量)は、X軸モータ24によってX軸ミラー23を回転させることによって、補償することができる。
【0041】
物体32をレーザ加工する際は、制御部20は、X軸モータ位置指令部21およびY軸モータ位置指令部26に物体32の加工位置(レーザ光の照射位置)の座標を指令する。X軸モータ位置指令部21およびY軸モータ位置指令部26は、制御部20から送られてきた座標をX軸ミラー23およびY軸ミラー28の回転角に変換し、その回転角を示す情報をX軸モータ制御部22およびY軸モータ制御部27に指令する。
【0042】
X軸モータ位置指令部21は、補償部21aを有する。補償部21aは、Y軸ミラー倒れ角測定部30によって測定されたY軸ミラー28の倒れ角(倒れ量)によるX方向におけるレーザ光31の位置ずれが補償されるように、X軸モータ制御部22に指令するX軸ミラー23の回転角を補正する。Y軸モータ位置指令部26は、補償部26aを有する。補償部26aは、X軸ミラー倒れ角測定部25によって測定されたX軸ミラー23の倒れ角(倒れ量)によるY方向におけるレーザ光31の位置ずれが補償されるように、Y軸モータ制御部27に指令するY軸ミラー28の回転角を補正する。
【0043】
この実施形態によれば、X軸ミラーの倒れによるレーザ光のずれをY軸ミラーの回転角によって補償し、Y軸ミラーの倒れによるレーザ光のずれをX軸ミラーの回転角によって補償することができるので、高精度かつ高速に物体を加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態のガルバノ装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態においてミラーの倒れ角を検出する原理を説明するための図である。
【図3】本発明の第1実施形態においてミラーの倒れ角を検出する原理を説明するための図である。
【図4】本発明の第1実施形態においてミラーの倒れ角を検出する原理を説明するための図である。
【図5】本発明の好適な実施形態におけるレーザ加工装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態のガルバノ装置の構成を模式的に示す図である。
【図7】一般的なマイケルソン干渉計の構成を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態においてミラーの倒れ角を検出する原理を説明するための図である。
【図9】本発明の第2実施形態においてミラーの倒れ角を検出する原理を説明するための図である。
【図10】本発明の第2実施形態においてミラーの倒れ角を検出する原理を説明するための図である。
【図11】本発明の第3実施形態のガルバノ装置の構成を模式的に示す図である。
【図12】本発明の第3実施形態においてミラーの倒れ角を検出する原理を説明するための図である。
【図13】本発明の第3実施形態においてミラーの倒れ角を検出する原理を説明するための図である。
【図14】本発明の第4実施形態のレーザ加工装置の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 モータ
2 ミラー
5 光源
6 被検領域
7 センサ
8 ロータリエンコーダ
9 回転軸
10 ベアリング
11 ハーフミラー
12 ミラー
13 被検領域
14 センサ
15 分割構造電極
16 受信電極
50 処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーと、
前記ミラーを回転させるモータと、
前記ミラーの被検領域の傾きを検出する検出器と、
前記検出器によって検出された前記被検領域の傾きと前記ミラーの回転角とに基づいて前記回転角における前記ミラーの倒れ量を得る処理部と、
を備えることを特徴とするガルバノ装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記ミラーの倒れ量が許容値を超えているときに、それを示すエラー信号を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載のガルバノ装置。
【請求項3】
前記ミラー、前記モータ、前記検出器および前記処理部によって第1ガルバノユニットが構成され、
前記ガルバノ装置は、
第2ミラーと、前記第2ミラーを回転させる第2モータと、前記第2ミラーの被検領域の傾きを検出する第2検出器と、前記第2検出器によって検出された前記被検領域の傾きと前記第2ミラーの回転角とに基づいて前記第2ミラーの回転角における前記第2ミラーの倒れ量を得る第2処理部とを含む第2ガルバノユニットと、
前記第1ガルバノユニットにおける前記ミラーの倒れ量を前記第2ガルバノユニットにおける前記第2ミラーの回転角によって補償し、前記第2ガルバノユニットにおける前記第2ミラーの倒れ量を前記第1ガルバノユニットにおける前記ミラーの回転角によって補償する補償部とを更に備え、
前記第1ガルバノユニットにおける前記モータの回転軸と前記第2ガルバノユニットにおける前記第2モータの回転軸とが直交している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のガルバノ装置。
【請求項4】
前記検出器は、
前記ミラーに検出光を照射する照射部と、
前記ミラーで反射された検出光を受光する受光面を有するセンサとを含み、
前記受光面に検出光が入射する位置に基づいて前記ミラーの倒れを検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガルバノ装置。
【請求項5】
前記検出器は、干渉計を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガルバノ装置。
【請求項6】
前記検出器は、静電容量センサを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガルバノ装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のガルバノ装置と、
前記ガルバノ装置の前記ミラーにレーザ光を照射するレーザ装置とを備え、
前記ミラーの回転角の制御によって加工対象の物品に対するレーザ光の照射位置が制御される、
ことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項8】
前記ミラーの倒れが許容値を超えているときに該物品の加工を停止する制御部を更に備える、
ことを特徴とする請求項7に記載のレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−282326(P2009−282326A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134653(P2008−134653)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】