キャブの後端下部構造
【課題】車両の重量化を抑制しつつ、キャブロック装置が固定されるブラケットとキャブの後端下部との結合部分の剛性を確保する。
【解決手段】キャブの後端下部構造1であって、フロアパネル13の後端部に曲折形成されて下方に凹むフロア凹部31と、キャブロック装置が固定されるとともにストライカ52を挿通するストライカ挿通孔が形成された底部61と、底部61の左右両側から上方へ延びてバックパネル14の後面に接合される側部とを有するキャブロックブラケット60と、バックパネル14の下端縁のうちフロア凹部31の後方部分から下方へ延びる縦板部41aと、縦板部41aの下端から前方へ曲折して延び、フロア凹部31に上下で重なって接合される横板部とを有するバックパネル延長部41と、を備え、底部61の底フランジ部62は縦板部41aの後面に、底部61の下面はフロア凹部31の上面に接合される。
【解決手段】キャブの後端下部構造1であって、フロアパネル13の後端部に曲折形成されて下方に凹むフロア凹部31と、キャブロック装置が固定されるとともにストライカ52を挿通するストライカ挿通孔が形成された底部61と、底部61の左右両側から上方へ延びてバックパネル14の後面に接合される側部とを有するキャブロックブラケット60と、バックパネル14の下端縁のうちフロア凹部31の後方部分から下方へ延びる縦板部41aと、縦板部41aの下端から前方へ曲折して延び、フロア凹部31に上下で重なって接合される横板部とを有するバックパネル延長部41と、を備え、底部61の底フランジ部62は縦板部41aの後面に、底部61の下面はフロア凹部31の上面に接合される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックパネルとフロアパネルとを有するキャブの後端下部を、車体フレームに設けられたキャブマウントに結合して支持するキャブの後端下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2007−223371号公報には、キャブの前端部側がシャシ側に対しチルト軸を中心としてチルト可能に支持されたキャブオーバートラックが記載されている。キャブの背面の車幅方向の左右両側には、非チルト状態のキャブの後端部側をシャシ側にロックするキャブロック装置がそれぞれ固定されている。また、各キャブロック装置に対応して、シャシ側の左右両側には、ストライカがそれぞれ固定されている。また、キャブの背面には、キャブロック装置が固定されるブラケットが設けられている。ブラケットは略枠形状を有し、キャブロック装置は、その主要部分がブラケットの内側に収容された状態でブラケットに締結固定される。ブラケットの下部には、キャブが非チルト状態のときにストライカが挿通されるストライカ挿通孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−223371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にキャブオーバー型車両のキャブの後端下部では、キャブの背面を形成するバックパネルの下端部とキャブの底面を形成するフロアパネルの後端部とが溶接などによって接合される。フロアパネルの下面には、左右両側で前後方向に延びる一対のメインシルが固着され、このメインシルによってフロアパネルの面剛性が確保される。
【0005】
このようなキャブの後端下部に上記従来のブラケットを固定する場合、ブラケットの上部(ブラケットの上端部から略中央部まで)をバックパネルの背面に接合し、ブラケットの下部(ブラケットの略中央部から下端部まで)をメインシルの後方で下方に延出し、ブラケットの下端部をメインシルの底部に接合する。
【0006】
キャブは、ブラケットに固定されたキャブロック装置とストライカとが係合することによって、車体フレームに下方から支持される。従って、車体フレーム(シャシ)からキャブの後端下部への振動等の入力は、キャブロック装置及びブラケットを介して、バックパネルとメインシルとに入力される。
【0007】
しかし、上記ブラケットの下部は、バックパネル及びメインシルのいずれにも接合されていない。このため、車体フレーム側からの振動等の入力に対して、キャブとブラケットとの接合部分の剛性を十分に確保するためには、両者の接合部分(ブラケットの上部、バックパネルの下部、ブラケットの下端部、及びメインシルの底部)の板厚を増大させなければならず、車両の重量化を招く。
【0008】
そこで、本発明は、車両の重量化を抑制しつつ、キャブロック装置が固定されるブラケットとキャブの後端下部との結合部分の剛性を十分に確保することができるキャブの後端下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は、バックパネルとフロアパネルとを有するキャブの後端下部に固定されたキャブロック装置を、車体フレームに設けられたキャブマウントのストライカに上方から係合することによって、キャブマウントを介して車体フレームに支持されるキャブの後端下部構造であって、フロア凹部と、ブラケットと、バックパネル延長部と、を備える。
【0010】
フロア凹部は、フロアパネルの後端部のうちキャブマウントの上方部分に曲折形成されて下方に凹む。ブラケットは、キャブロック装置が固定されるとともにストライカを挿通するストライカ挿通部が形成された板状のブラケット底部と、このブラケット底部の左右両側から上方へ延びてバックパネルの後面に接合される左右のブラケット上接合部とを有し、キャブマウントの上方に配置される。バックパネル延長部は、バックパネルの下端縁のうちフロア凹部の後方部分から下方へ延びる縦板部と、縦板部の下端から前方へ曲折して延び、フロア凹部に上下で重なって接合される横板部とを有する。また、ブラケット底部の前端縁部は、バックパネル延長部の縦板部の後面に接合され、ブラケット底部の下面は、フロア凹部の上面に接合される。
【0011】
上記構成では、フロア凹部は、フロアパネルの後端部のうちキャブマウントの上方部分に曲折形成されて下方に凹み、バックパネル延長部は、バックパネルの下端縁のうちフロア凹部の後方部分から下方へ延びる縦板部を有し、また、ブラケットは、板状のブラケット底部と、このブラケット底部の左右両側から上方へ延びてバックパネルの後面に接合される左右のブラケット上接合部とを有し、ブラケット底部の前端縁部は、バックパネル延長部の縦板部の後面に接合され、ブラケット底部の下面は、フロア凹部の上面に接合されるので、ブラケットとキャブとは、ブラケット側のブラケット上接合部、ブラケット底部の前端縁部及びブラケット底部の下面と、キャブ側のバックパネルの後面、縦板部の後面及びフロア凹部の上面とが、接合されることによって接合される。このため、車体フレームからキャブの後端下部への振動等の入力は、上記ブラケットとキャブとの接合部分に分担されて、キャブに入力されるので、上記両者の接合部分の板厚を増大することなく、すなわち車両の重量化を招くことなく、接合部分の剛性十分に確保することができる。
【0012】
また、上記バックパネル延長部の縦板部は、フロア凹部の後端に接合されてフロア凹部の後方を閉止してもよい。
【0013】
上記構成では、バックパネル延長部の縦板部は、フロア凹部の後方を閉止するので、キャブ外から水や泥がフロア凹部を介してキャブ内に浸入することを防止できる。また、キャブ外の騒音がフロア凹部を介してキャブに伝達することを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両の重量化を抑制しつつ、キャブロック装置が固定されるブラケットとキャブの後端下部との結合部分の剛性を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両の要部斜視図である。
【図2】図1の要部分解斜視図である。
【図3】図1のフロアパネルの斜視図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】図3のC−C線断面図である。
【図7】図1のバックパネルとキャブロックブラケットの斜視図である。
【図8】図1のバックパネルとフロアパネルとキャブロックブラケットとのD−D線矢視断面図である。
【図9】図1のキャブロックブラケットとキャブロック装置と後方キャブロックマウントの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図中矢印FRは車両前方を、矢印UPは上方を、矢印INは車幅方向内側をそれぞれ示している。また、以下の説明において、前後とは車両の前後を意味し、左右とは車両前方を向いた状態での左右を意味する。なお、本実施形態の車両は左右同様の構造であり、図7では車両左側のバックパネルとキャブロックブラケットを示し、また、図9では車両右側のキャブロックブラケットとキャブロック装置と後方キャブロックマウントを示している。
【0017】
図1に示すように、本実施形態にかかるキャブの後下部構造1は、バックパネル14とフロアパネル13とを有するキャブ3の後端下部に固定されたキャブロック装置70を、車体フレーム4に設けられた後方キャブマウント(キャブマウント)5のストライカ52(図2参照)に上方から係合することによって、後方キャブマウント5を介して車体フレーム4に支持されるキャブ3に設けられる。
【0018】
車両2は、キャブ3の下方にエンジンルーム9が位置するキャブオーバー型のトラックである。キャブ3は、車体フレーム4の前端部に取付けられている前方キャブマウント(図示省略)及び後方キャブマウント5によって前方へ傾斜可能に支持される。
【0019】
車体フレーム4は、前後方向に沿って並行に延びる左右のメインビーム6と、複数のクロスメンバ7と前方キャブマウント及び後方キャブマウント5とを有する。左右のメインビーム6は、直交する複数のクロスメンバ7によって相互に連結される。車体フレーム4の前端部付近及び後端部付近には、走行車軸(図示省略)が設けられる。走行車軸の車幅方向両端には、走行車輪8が回転自在に支持される。
【0020】
図1及び図2に示すように、後方キャブマウント5は、アーチ状体のリアアーチ51と、ストライカ52と、を備える。リアアーチ51は、メインビーム6の外側面部と結合し、上方へ延びる1対のリアアーチ鉛直部51aと、リアアーチ鉛直部51aの上端部から内側に折曲して延びる1対のリアアーチ折曲部51bと、1対のリアアーチ折曲部51bの上端部を連結するリアアーチ連結部51cとを一体的に備える。
【0021】
リアアーチ折曲部51bの下端側には、ゴム等の弾性材からなるラバー部53と、このラバー部53の下方とリアアーチ折曲部51bとを連結してラバー部53を下方から支持するラバー部支持ブラケット54と、ラバー部53の軸芯を貫通する連結軸(図資省略)と、ラバー部53の上方に配置され連結軸及びこれと螺合するナットによってラバー部53に固定されるストライカ支持ブラケット55と、が設けられている。
【0022】
ストライカ52は、車両前後方向に離間して相対向する支持プレート52aと、支持プレート52aの上端部同士を連結する棒体状の係合シャフト52bと、を備え、支持プレート52aの下端部はストライカ支持ブラケット55に固定されている。
【0023】
キャブ3は、略箱状体であり、内部に車室10を区画する。キャブ3は、ルーフパネル11と、サイドパネル12と、フロントフレーム部16と、ダッシュパネル15と、バックパネル14と、フロアパネル13と、を有する。これらのパネルは、例えば、鋼板などの高強度材料からなり、プレス成形によって成形される。また、これらのパネルは、スポット溶接などによって接合される。また、キャブ3は、キャブロックブラケット(ブラケット)60と、キャブロック装置70と、を有する。
【0024】
ルーフパネル11は、車室10の上部を区画する。サイドパネル12は、ルーフパネル11の車幅方向両端部に接合し、車室10の車幅方向両端部を区画する。フロントフレーム部16は、車室10の前方でサイドパネル12に接合する。ダッシュパネル15は、フロントフレーム部16とサイドパネル12とに接合し、車幅方向に沿って起立して車室10の前端を区画する。バックパネル14は、ルーフパネル11とサイドパネル12とに接合し、車室10の後部を区画する。フロアパネル13は、サイドパネル12、ダッシュパネル15及びバックパネル14に接合し、車室10の底部を区画する。
【0025】
ルーフパネル11は、略矩形状の平板である。ルーフパネル11の車幅方向両端部は、サイドパネル12の上端部と接合し、後端部は、バックパネル14の上端部と接合する。
【0026】
サイドパネル12は、図1に示すように、中央に略矩形状に形成されるドア開口20を有し、また、フロントピラー部21と、ロッカー部22と、フェンダー部23と、ルーフサイドレール部24と、リアピラー部25と、を有する。
【0027】
フロントピラー部21は、上端から前方へ傾斜して延びるフロントピラー傾斜部21aとフロントピラー傾斜部21aの下端から鉛直方向へ曲折して延びるフロントピラー鉛直部21bとを有し、ドア開口20の前縁を構成する。ロッカー部22は、フロントピラー部21の下端(フロントピラー鉛直部21bの下端)から後方へ曲折して延び、ドア開口20の下縁の一部を構成する。フェンダー部23は、ロッカー部22の後端からアーチ状に延びている。フェンダー部23の下端側は、前車輪を上方から覆うホィールハウスを構成する。また、フェンダー部23の上端側は、ドア開口20の下縁の一部を構成する。ルーフサイドレール部24は、フロントピラー部21の上端(フロントピラー傾斜部21aの上端)から車両後方へ曲折して延び、ドア開口20の上縁を区画する。リアピラー部25は、フェンダー部23の後端とルーフサイドレール部24の後端とを連結してドア開口20の後縁を区画する。
【0028】
フロアパネル13は、図3〜図6に示すように、略矩形板状体であり、センターフロアパネル部30と、一対のフロア凹部31と、一対のサイドフロアパネル部32とを有する。これらは、プレス加工などによって、一体的に形成される。なお、図4〜図6では、後述するサイドフロアパネル部の突出部36の図示を省略している。
【0029】
センターフロアパネル部30は、車室10の車幅方向中央に形成され、車室10の前端から後端、すなわちフロアパネル13の前端から後端まで延びる。また、センターフロアパネル部30は、フロアパネル13の前端から後方へ略水平に延びるセンターフロアパネル前方部30aと、センターフロアパネル前方部30aの後端から上方へ傾斜して延びるセンターフロアパネル傾斜部30bと、センターフロアパネル傾斜部30bの後端からセンターフロアパネル前方部30aに対して略平行に曲折してフロアパネル13の後端まで延びるセンターフロアパネル後方部30cと、を有する。車両2のセンターフロアパネル部30の下側には、エンジン(図示省略)を収容するエンジンルーム9が形成されている。
【0030】
フロア凹部31は、車体フレーム4のキャブマウント5の上方で、センターフロアパネル部30を挟んで、一対に形成される。フロア凹部31は、立下り部33と、平面部34と、立上り部35と、を一体的に有し、断面U字状で、下方に凹むように形成される。立下り部33は、センターフロアパネル部30の車幅方向の端部から曲折して車幅方向外側へ斜め下方に傾斜して延びる。平面部34は、立下り部33の下端から車幅方向外側へ曲折して、車幅方向に略水平に延びる。立上り部35は、平面部34の車幅方向外側の端部から曲折して車幅方向外側へ斜め上方に傾斜して延びる。また、フロア凹部31は、車室10の前端から後端まで、すなわちフロアパネル13の前端から後端まで延びる。
【0031】
フロア凹部31は、フロアパネル13の前端から後方へ延びるフロア凹部前方部31aと、フロア凹部前方部31aの後端から上方へ傾斜して延びるフロア凹部傾斜部31bと、フロア凹部傾斜部31bの後端からフロア凹部前方部31aに対して略平行に曲折してフロアパネル13の後端まで延びるフロア凹部後方部31cと、を有する。
【0032】
フロア凹部傾斜部31bにおける立下り部33は、センターフロアパネル部30のセンターフロアパネル後方部30cの車幅方向の端部から斜め下方へ傾斜して延びる第1立下り部33aと第1立下り部33aの下端部から斜め下方へ傾斜して延びる第2立下り部33bとを有する(図5参照)。第1立下り部33aは、第2立下り部33bよりも比較的緩やかに傾斜する。
【0033】
フロア凹部後方部31cの平面部34の後端部には、矩形状に切欠けられた切欠部31dが設けられている。
【0034】
サイドフロアパネル部32は、センターフロアパネル部30と一対のフロア凹部31とを挟んで、車室10の底部の車幅方向両端に一対に形成される。サイドフロアパネル部32は、フロア凹部31の立上り部35の上端から車幅方向外側へ曲折して延びる。サイドフロアパネル部32は、フロアパネル13の前端から後方へ略水平に延びるサイドフロアパネル前方部32aと、サイドフロアパネル前方部32aの後端から上方へ傾斜して延びるサイドフロアパネル傾斜部32bとサイドフロアパネル傾斜部32bの後端から曲折してサイドフロアパネル前方部32aに対して略平行にフロアパネル13の後端まで延びるサイドフロアパネル後方部32cとを有する。また、サイドフロアパネル部32は、サイドフロアパネル前方部32aとサイドフロアパネル傾斜部32bとに亘って延びる畝条の突出部36が所定の間隔を隔てて3本設けられている。
【0035】
図3に示すように、センターフロアパネル傾斜部30bの下端部は、フロア凹部傾斜部31b及びサイドフロアパネル傾斜部32bの下端部よりも前方に配置される。また、センターフロアパネル傾斜部30bの上端部は、フロア凹部傾斜部31b及びサイドフロアパネル傾斜部32bの上端部よりも前方で、且つフロア凹部傾斜部31b及びサイドフロアパネル傾斜部32bの下端部と車両前後方向の略同一位置に配置される。
【0036】
図4に示すように、センターフロアパネル前方部30aとサイドフロアパネル前方部32aとは、等しい高さとなるように形成される。また、図6に示すように、センターフロアパネル後方部30cとサイドフロアパネル後方部32cとは、等しい高さとなるように形成される。
【0037】
バックパネル14は、図2に示すように、略矩形板状体である。バックパネル14は、後部窓ガラスが嵌合されるバックパネル開口部40を略中央部に有し、また、前方に突出する段部42を下方に有する。また、バックパネル14は、下端部のうち、フロア凹部31のフロア凹部後方部31cの後方部分から下方へ延びるバックパネル延長部41を一体的に有する。
【0038】
バックパネル延長部41は、図7及び図8に示すように、バックパネル14の下端部から前方へ傾斜しながら下方へ延びる縦板部41aと、縦板部41aの下端部から前方へ曲折して延びる横板部41bとを有する。縦板部41aは、後方から視たときに下端部ほど幅狭となる略台形状である。
【0039】
キャブロックブラケット60は、図7及び図9に示すように、U字状体であり、U字状に湾曲する板状の底部(ブラケット底部)61と底部61の左右両側(車幅方向の両端)から上方へ延びる板状の側部(ブラケット上接合部)63とを有する。底部61は、中央に後方キャブマウントのストライカ52が挿通される挿通孔(ストライカ挿通部)61cを有する底平面部61aと、底平面部61aの車幅方向の両端から外側に向かって斜め上方へ折曲して伸びる底傾斜部61bとを有する。また、底平面部61a及び底傾斜部61bの前端には、上方へ折曲して延びる底面フランジ部62が形成されている。
【0040】
側部63は、鉛直方向に延びる側部鉛直部63aと、側部鉛直部63aの上端部から車幅方向に沿って外側に折曲して延びる側部折曲部63bを有する。また、側部鉛直部63aの前端には車幅方向に沿って内側に折曲して延びる内側フランジ部63cが形成されている。また、側部63の後端には、車幅方向に沿って外側に延びる外側フランジ部63dが形成されている。外側フランジ部63dの略中央には、ボルトが挿通するボルト孔63eが形成されている。
【0041】
キャブロック装置70は、図9に示すように、ベース71と、リンク72と、キャブロックフック73と、バネ部材74と、を備えている。リンク72は、ベース71に対し第1回転軸75を中心としてロック方向及びロック解除方向へ回転自在に支持される。キャブロックフック73は、リンク72に対し第2回転軸76を中心として回転自在に支持され、ベース71に対してロック方向及びロック解除方向へ移動自在となる。リンク72がロック方向へ回転するとキャブロックフック73もロック方向へ移動し、リンク72がロック解除方向へ回転するとキャブロックフック73もロック解除方向へ移動する。
【0042】
キャブロック装置70のベース71は、相対向して離間する前後のプレート部(前プレート部71aと後プレート部71b)を有する。後プレート部71bの車幅方向両端部には、キャブロックブラケット60の外側フランジ部63dに形成されたボルト孔63eと連通するボルト孔71cが形成されている。
【0043】
次に、フロアパネル13と、バックパネル14と、キャブロックブラケット60と、キャブロック装置70との接合態様について説明する。
【0044】
図1及び図8に示すように、フロアパネル13とバックパネル14とは、フロアパネル13の後端縁とバックパネル14の下端縁とがスポット溶接などによって溶接され、バックパネル延長部41の縦板部41aの側面部が、フロア凹部31のフロア凹部後方部31cの後端の内周面にスポット溶接などで溶接され、また、バックパネル延長部41の横板部41bの下面が、フロア凹部後方部31cの後端部の上面と当接し、スポット溶接などで溶接されることによって接合される。
【0045】
フロアパネル13とバックパネル14とが接合されると、バックパネル延長部41の縦板部41aは、フロア凹部31の後方を閉止する。
【0046】
バックパネル14とキャブロックブラケット60とは、キャブロックブラケット60の底面フランジ部62の前面がバックパネル延長部41の縦板部41aの後面と、また、内側フランジ部63cの前面がバックパネル14の後面と、また、側部折曲部63bの上面が段部42と、スポット溶接などで溶接されることによって接合される。
【0047】
キャブロックブラケット60と、フロアパネル13とは、キャブロックブラケット60の底平面部61aの前端部の下面と、フロア凹部後方部31cの平面部34の後端部の上面と、が上下で重なって、スポット溶接などで溶接され、また、車幅方向内側(左側)に位置する底傾斜部61bの下面と、フロア凹部後方部31cの立下り部33の後端部の上面と、が上下で重なって、溶接され、また、車幅方向外側(右側)に位置する底傾斜部61bの下面と、フロア凹部後方部31cの立上り部35の後端部の上面とが、上下で重なって、溶接されることによって接合される。キャブロックブラケット60と、フロアパネル13とが接合されると、底平面部61aに設けられた挿通孔61cとフロア凹部後方部31cの平面部34に設けられた切欠部31dの開口とが連通する。
【0048】
キャブロックブラケット60とキャブロック装置70とは、キャブロック装置70のベース71体の後プレート部71bに形成されたボルト孔71cとキャブロックブラケット60の外側フランジ部63dに形成されたボルト孔63eとが連通し、連通したボルト孔63e,71cを挿通するボルトがナットと螺合することによって、接合される。
【0049】
次にキャブ3が後方キャブマウント5を介して車体フレーム4に支持される態様について、説明する。
【0050】
図9に示すように、キャブが非チルト位置にあるとき、車体フレーム4の後方キャブマウント5のストライカ52がキャブのキャブロックブラケット60部の底平面部61aの挿通孔61cを下方から挿通する。キャブロックブラケット60に接合されているキャブロック装置70のキャブロックフック73が、挿通孔61cを挿通したストライカ52に上方から係合する。これによって、キャブ3が後方キャブマウント5を介して車体フレーム4に支持される。
【0051】
本実施形態によれば、キャブロックブラケット60とキャブ2とは、キャブロックブラケット60側の内側フランジ部63cの前面及び底面フランジ部62の前面並びに底平面部61a及び底傾斜部61bが、キャブ2側のバックパネル14の後面及び縦板部41aの後面並びにフロア凹部後方部31cの平面部34、立下り部33及び立上り部35の上面に接合されることによって、接合される。このため、車体フレーム4からキャブ2の後端下部への振動等の入力は、上記キャブロックブラケット60側及びキャブ2側の接合部分に分担されて、キャブ2に入力されるので、上記両者の接合部分の板厚を増大することなく、すなわち車両2の重量化を招くことなく、接合部分の剛性十分に確保することができる。
【0052】
また、バックパネル延長部41が、フロア凹部後方部31cに接合されると、バックパネル延長部41の縦板部41aは、フロア凹部31の後方を閉止する。このため、キャブ2外から水や泥がフロア凹部31を介してキャブ2内に浸入することを防止でき、また、キャブ2外の騒音がフロア凹部31を介してキャブ2に伝達することを防止できる。
【0053】
また、フロアパネル13のフロア凹部31が曲折形成されていることから、フロアパネル13への入力によって、フロアパネル13の形状が変形しにくく、フロア凹部31によってフロアパネル13の剛性が確保される。このため、メインシルなどの補強部材をフロアパネル13の下面に固着する必要がなく、部品点数及び組立工数が削減される。したがって、車両重量を低減させることができ、且つ、組立作業性を向上させることができる。
【0054】
また、フロア凹部31の内面を、例えば、車載用の消火器やジャッキハンドルなどの車載用品の収容部などに利用することができ、車室10の床面のスペースを有効に活用することができる。
【0055】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。
【0056】
本実施形態では、側部63の内側フランジ部63cとバックパネル14の後面とが
接合される様態を説明したが、内側フランジ部63cを設けないで、側部63の前端縁をバックパネル14の後端下部に接合させてもよい。
【0057】
また、同様に底平面部61a及び底傾斜部61bの底面フランジ部62を設けないで、底平面部61a及び底傾斜部61bの前端縁を縦板部41aの後面と接合させてもよい。
【0058】
すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、キャブオーバー型車両のキャブの後端下部構造に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:後端下部構造
2:車両
3:キャブ
4:車体フレーム
5:後方キャブマウント(キャブマウント)
13:フロアパネル
14:バックパネル
30:センターフロアパネル部
31:フロア凹部
31a:フロア凹部前方部
31b:フロア凹部傾斜部
31c:フロア凹部後方部
31d:切欠部
32:サイドフロアパネル部
33:立下り部
34:平面部
35:立上り部
40:バックパネル開口部
41:バックパネル延長部
41a:縦板部
41b:横板部
42:段部
51:リアアーチ
52:ストライカ
60:キャブロックブラケット(ブラケット)
61:底部(ブラケット底部)
61a:底平面部
61b:底傾斜部
61c:挿通孔(ストライカ挿通部)
62:底フランジ部
63:側部(ブラケット上接合部)
63a:側部鉛直部
63b:側部折曲部
63c:内側フランジ部
63d:外側フランジ部
63e:ボルト孔
70:キャブロック装置
71:ベース
71a:前プレート部
71b:後プレート部
71c:ボルト孔
73:キャブロックフック
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックパネルとフロアパネルとを有するキャブの後端下部を、車体フレームに設けられたキャブマウントに結合して支持するキャブの後端下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2007−223371号公報には、キャブの前端部側がシャシ側に対しチルト軸を中心としてチルト可能に支持されたキャブオーバートラックが記載されている。キャブの背面の車幅方向の左右両側には、非チルト状態のキャブの後端部側をシャシ側にロックするキャブロック装置がそれぞれ固定されている。また、各キャブロック装置に対応して、シャシ側の左右両側には、ストライカがそれぞれ固定されている。また、キャブの背面には、キャブロック装置が固定されるブラケットが設けられている。ブラケットは略枠形状を有し、キャブロック装置は、その主要部分がブラケットの内側に収容された状態でブラケットに締結固定される。ブラケットの下部には、キャブが非チルト状態のときにストライカが挿通されるストライカ挿通孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−223371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にキャブオーバー型車両のキャブの後端下部では、キャブの背面を形成するバックパネルの下端部とキャブの底面を形成するフロアパネルの後端部とが溶接などによって接合される。フロアパネルの下面には、左右両側で前後方向に延びる一対のメインシルが固着され、このメインシルによってフロアパネルの面剛性が確保される。
【0005】
このようなキャブの後端下部に上記従来のブラケットを固定する場合、ブラケットの上部(ブラケットの上端部から略中央部まで)をバックパネルの背面に接合し、ブラケットの下部(ブラケットの略中央部から下端部まで)をメインシルの後方で下方に延出し、ブラケットの下端部をメインシルの底部に接合する。
【0006】
キャブは、ブラケットに固定されたキャブロック装置とストライカとが係合することによって、車体フレームに下方から支持される。従って、車体フレーム(シャシ)からキャブの後端下部への振動等の入力は、キャブロック装置及びブラケットを介して、バックパネルとメインシルとに入力される。
【0007】
しかし、上記ブラケットの下部は、バックパネル及びメインシルのいずれにも接合されていない。このため、車体フレーム側からの振動等の入力に対して、キャブとブラケットとの接合部分の剛性を十分に確保するためには、両者の接合部分(ブラケットの上部、バックパネルの下部、ブラケットの下端部、及びメインシルの底部)の板厚を増大させなければならず、車両の重量化を招く。
【0008】
そこで、本発明は、車両の重量化を抑制しつつ、キャブロック装置が固定されるブラケットとキャブの後端下部との結合部分の剛性を十分に確保することができるキャブの後端下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は、バックパネルとフロアパネルとを有するキャブの後端下部に固定されたキャブロック装置を、車体フレームに設けられたキャブマウントのストライカに上方から係合することによって、キャブマウントを介して車体フレームに支持されるキャブの後端下部構造であって、フロア凹部と、ブラケットと、バックパネル延長部と、を備える。
【0010】
フロア凹部は、フロアパネルの後端部のうちキャブマウントの上方部分に曲折形成されて下方に凹む。ブラケットは、キャブロック装置が固定されるとともにストライカを挿通するストライカ挿通部が形成された板状のブラケット底部と、このブラケット底部の左右両側から上方へ延びてバックパネルの後面に接合される左右のブラケット上接合部とを有し、キャブマウントの上方に配置される。バックパネル延長部は、バックパネルの下端縁のうちフロア凹部の後方部分から下方へ延びる縦板部と、縦板部の下端から前方へ曲折して延び、フロア凹部に上下で重なって接合される横板部とを有する。また、ブラケット底部の前端縁部は、バックパネル延長部の縦板部の後面に接合され、ブラケット底部の下面は、フロア凹部の上面に接合される。
【0011】
上記構成では、フロア凹部は、フロアパネルの後端部のうちキャブマウントの上方部分に曲折形成されて下方に凹み、バックパネル延長部は、バックパネルの下端縁のうちフロア凹部の後方部分から下方へ延びる縦板部を有し、また、ブラケットは、板状のブラケット底部と、このブラケット底部の左右両側から上方へ延びてバックパネルの後面に接合される左右のブラケット上接合部とを有し、ブラケット底部の前端縁部は、バックパネル延長部の縦板部の後面に接合され、ブラケット底部の下面は、フロア凹部の上面に接合されるので、ブラケットとキャブとは、ブラケット側のブラケット上接合部、ブラケット底部の前端縁部及びブラケット底部の下面と、キャブ側のバックパネルの後面、縦板部の後面及びフロア凹部の上面とが、接合されることによって接合される。このため、車体フレームからキャブの後端下部への振動等の入力は、上記ブラケットとキャブとの接合部分に分担されて、キャブに入力されるので、上記両者の接合部分の板厚を増大することなく、すなわち車両の重量化を招くことなく、接合部分の剛性十分に確保することができる。
【0012】
また、上記バックパネル延長部の縦板部は、フロア凹部の後端に接合されてフロア凹部の後方を閉止してもよい。
【0013】
上記構成では、バックパネル延長部の縦板部は、フロア凹部の後方を閉止するので、キャブ外から水や泥がフロア凹部を介してキャブ内に浸入することを防止できる。また、キャブ外の騒音がフロア凹部を介してキャブに伝達することを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両の重量化を抑制しつつ、キャブロック装置が固定されるブラケットとキャブの後端下部との結合部分の剛性を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態にかかる車両の要部斜視図である。
【図2】図1の要部分解斜視図である。
【図3】図1のフロアパネルの斜視図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】図3のC−C線断面図である。
【図7】図1のバックパネルとキャブロックブラケットの斜視図である。
【図8】図1のバックパネルとフロアパネルとキャブロックブラケットとのD−D線矢視断面図である。
【図9】図1のキャブロックブラケットとキャブロック装置と後方キャブロックマウントの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図中矢印FRは車両前方を、矢印UPは上方を、矢印INは車幅方向内側をそれぞれ示している。また、以下の説明において、前後とは車両の前後を意味し、左右とは車両前方を向いた状態での左右を意味する。なお、本実施形態の車両は左右同様の構造であり、図7では車両左側のバックパネルとキャブロックブラケットを示し、また、図9では車両右側のキャブロックブラケットとキャブロック装置と後方キャブロックマウントを示している。
【0017】
図1に示すように、本実施形態にかかるキャブの後下部構造1は、バックパネル14とフロアパネル13とを有するキャブ3の後端下部に固定されたキャブロック装置70を、車体フレーム4に設けられた後方キャブマウント(キャブマウント)5のストライカ52(図2参照)に上方から係合することによって、後方キャブマウント5を介して車体フレーム4に支持されるキャブ3に設けられる。
【0018】
車両2は、キャブ3の下方にエンジンルーム9が位置するキャブオーバー型のトラックである。キャブ3は、車体フレーム4の前端部に取付けられている前方キャブマウント(図示省略)及び後方キャブマウント5によって前方へ傾斜可能に支持される。
【0019】
車体フレーム4は、前後方向に沿って並行に延びる左右のメインビーム6と、複数のクロスメンバ7と前方キャブマウント及び後方キャブマウント5とを有する。左右のメインビーム6は、直交する複数のクロスメンバ7によって相互に連結される。車体フレーム4の前端部付近及び後端部付近には、走行車軸(図示省略)が設けられる。走行車軸の車幅方向両端には、走行車輪8が回転自在に支持される。
【0020】
図1及び図2に示すように、後方キャブマウント5は、アーチ状体のリアアーチ51と、ストライカ52と、を備える。リアアーチ51は、メインビーム6の外側面部と結合し、上方へ延びる1対のリアアーチ鉛直部51aと、リアアーチ鉛直部51aの上端部から内側に折曲して延びる1対のリアアーチ折曲部51bと、1対のリアアーチ折曲部51bの上端部を連結するリアアーチ連結部51cとを一体的に備える。
【0021】
リアアーチ折曲部51bの下端側には、ゴム等の弾性材からなるラバー部53と、このラバー部53の下方とリアアーチ折曲部51bとを連結してラバー部53を下方から支持するラバー部支持ブラケット54と、ラバー部53の軸芯を貫通する連結軸(図資省略)と、ラバー部53の上方に配置され連結軸及びこれと螺合するナットによってラバー部53に固定されるストライカ支持ブラケット55と、が設けられている。
【0022】
ストライカ52は、車両前後方向に離間して相対向する支持プレート52aと、支持プレート52aの上端部同士を連結する棒体状の係合シャフト52bと、を備え、支持プレート52aの下端部はストライカ支持ブラケット55に固定されている。
【0023】
キャブ3は、略箱状体であり、内部に車室10を区画する。キャブ3は、ルーフパネル11と、サイドパネル12と、フロントフレーム部16と、ダッシュパネル15と、バックパネル14と、フロアパネル13と、を有する。これらのパネルは、例えば、鋼板などの高強度材料からなり、プレス成形によって成形される。また、これらのパネルは、スポット溶接などによって接合される。また、キャブ3は、キャブロックブラケット(ブラケット)60と、キャブロック装置70と、を有する。
【0024】
ルーフパネル11は、車室10の上部を区画する。サイドパネル12は、ルーフパネル11の車幅方向両端部に接合し、車室10の車幅方向両端部を区画する。フロントフレーム部16は、車室10の前方でサイドパネル12に接合する。ダッシュパネル15は、フロントフレーム部16とサイドパネル12とに接合し、車幅方向に沿って起立して車室10の前端を区画する。バックパネル14は、ルーフパネル11とサイドパネル12とに接合し、車室10の後部を区画する。フロアパネル13は、サイドパネル12、ダッシュパネル15及びバックパネル14に接合し、車室10の底部を区画する。
【0025】
ルーフパネル11は、略矩形状の平板である。ルーフパネル11の車幅方向両端部は、サイドパネル12の上端部と接合し、後端部は、バックパネル14の上端部と接合する。
【0026】
サイドパネル12は、図1に示すように、中央に略矩形状に形成されるドア開口20を有し、また、フロントピラー部21と、ロッカー部22と、フェンダー部23と、ルーフサイドレール部24と、リアピラー部25と、を有する。
【0027】
フロントピラー部21は、上端から前方へ傾斜して延びるフロントピラー傾斜部21aとフロントピラー傾斜部21aの下端から鉛直方向へ曲折して延びるフロントピラー鉛直部21bとを有し、ドア開口20の前縁を構成する。ロッカー部22は、フロントピラー部21の下端(フロントピラー鉛直部21bの下端)から後方へ曲折して延び、ドア開口20の下縁の一部を構成する。フェンダー部23は、ロッカー部22の後端からアーチ状に延びている。フェンダー部23の下端側は、前車輪を上方から覆うホィールハウスを構成する。また、フェンダー部23の上端側は、ドア開口20の下縁の一部を構成する。ルーフサイドレール部24は、フロントピラー部21の上端(フロントピラー傾斜部21aの上端)から車両後方へ曲折して延び、ドア開口20の上縁を区画する。リアピラー部25は、フェンダー部23の後端とルーフサイドレール部24の後端とを連結してドア開口20の後縁を区画する。
【0028】
フロアパネル13は、図3〜図6に示すように、略矩形板状体であり、センターフロアパネル部30と、一対のフロア凹部31と、一対のサイドフロアパネル部32とを有する。これらは、プレス加工などによって、一体的に形成される。なお、図4〜図6では、後述するサイドフロアパネル部の突出部36の図示を省略している。
【0029】
センターフロアパネル部30は、車室10の車幅方向中央に形成され、車室10の前端から後端、すなわちフロアパネル13の前端から後端まで延びる。また、センターフロアパネル部30は、フロアパネル13の前端から後方へ略水平に延びるセンターフロアパネル前方部30aと、センターフロアパネル前方部30aの後端から上方へ傾斜して延びるセンターフロアパネル傾斜部30bと、センターフロアパネル傾斜部30bの後端からセンターフロアパネル前方部30aに対して略平行に曲折してフロアパネル13の後端まで延びるセンターフロアパネル後方部30cと、を有する。車両2のセンターフロアパネル部30の下側には、エンジン(図示省略)を収容するエンジンルーム9が形成されている。
【0030】
フロア凹部31は、車体フレーム4のキャブマウント5の上方で、センターフロアパネル部30を挟んで、一対に形成される。フロア凹部31は、立下り部33と、平面部34と、立上り部35と、を一体的に有し、断面U字状で、下方に凹むように形成される。立下り部33は、センターフロアパネル部30の車幅方向の端部から曲折して車幅方向外側へ斜め下方に傾斜して延びる。平面部34は、立下り部33の下端から車幅方向外側へ曲折して、車幅方向に略水平に延びる。立上り部35は、平面部34の車幅方向外側の端部から曲折して車幅方向外側へ斜め上方に傾斜して延びる。また、フロア凹部31は、車室10の前端から後端まで、すなわちフロアパネル13の前端から後端まで延びる。
【0031】
フロア凹部31は、フロアパネル13の前端から後方へ延びるフロア凹部前方部31aと、フロア凹部前方部31aの後端から上方へ傾斜して延びるフロア凹部傾斜部31bと、フロア凹部傾斜部31bの後端からフロア凹部前方部31aに対して略平行に曲折してフロアパネル13の後端まで延びるフロア凹部後方部31cと、を有する。
【0032】
フロア凹部傾斜部31bにおける立下り部33は、センターフロアパネル部30のセンターフロアパネル後方部30cの車幅方向の端部から斜め下方へ傾斜して延びる第1立下り部33aと第1立下り部33aの下端部から斜め下方へ傾斜して延びる第2立下り部33bとを有する(図5参照)。第1立下り部33aは、第2立下り部33bよりも比較的緩やかに傾斜する。
【0033】
フロア凹部後方部31cの平面部34の後端部には、矩形状に切欠けられた切欠部31dが設けられている。
【0034】
サイドフロアパネル部32は、センターフロアパネル部30と一対のフロア凹部31とを挟んで、車室10の底部の車幅方向両端に一対に形成される。サイドフロアパネル部32は、フロア凹部31の立上り部35の上端から車幅方向外側へ曲折して延びる。サイドフロアパネル部32は、フロアパネル13の前端から後方へ略水平に延びるサイドフロアパネル前方部32aと、サイドフロアパネル前方部32aの後端から上方へ傾斜して延びるサイドフロアパネル傾斜部32bとサイドフロアパネル傾斜部32bの後端から曲折してサイドフロアパネル前方部32aに対して略平行にフロアパネル13の後端まで延びるサイドフロアパネル後方部32cとを有する。また、サイドフロアパネル部32は、サイドフロアパネル前方部32aとサイドフロアパネル傾斜部32bとに亘って延びる畝条の突出部36が所定の間隔を隔てて3本設けられている。
【0035】
図3に示すように、センターフロアパネル傾斜部30bの下端部は、フロア凹部傾斜部31b及びサイドフロアパネル傾斜部32bの下端部よりも前方に配置される。また、センターフロアパネル傾斜部30bの上端部は、フロア凹部傾斜部31b及びサイドフロアパネル傾斜部32bの上端部よりも前方で、且つフロア凹部傾斜部31b及びサイドフロアパネル傾斜部32bの下端部と車両前後方向の略同一位置に配置される。
【0036】
図4に示すように、センターフロアパネル前方部30aとサイドフロアパネル前方部32aとは、等しい高さとなるように形成される。また、図6に示すように、センターフロアパネル後方部30cとサイドフロアパネル後方部32cとは、等しい高さとなるように形成される。
【0037】
バックパネル14は、図2に示すように、略矩形板状体である。バックパネル14は、後部窓ガラスが嵌合されるバックパネル開口部40を略中央部に有し、また、前方に突出する段部42を下方に有する。また、バックパネル14は、下端部のうち、フロア凹部31のフロア凹部後方部31cの後方部分から下方へ延びるバックパネル延長部41を一体的に有する。
【0038】
バックパネル延長部41は、図7及び図8に示すように、バックパネル14の下端部から前方へ傾斜しながら下方へ延びる縦板部41aと、縦板部41aの下端部から前方へ曲折して延びる横板部41bとを有する。縦板部41aは、後方から視たときに下端部ほど幅狭となる略台形状である。
【0039】
キャブロックブラケット60は、図7及び図9に示すように、U字状体であり、U字状に湾曲する板状の底部(ブラケット底部)61と底部61の左右両側(車幅方向の両端)から上方へ延びる板状の側部(ブラケット上接合部)63とを有する。底部61は、中央に後方キャブマウントのストライカ52が挿通される挿通孔(ストライカ挿通部)61cを有する底平面部61aと、底平面部61aの車幅方向の両端から外側に向かって斜め上方へ折曲して伸びる底傾斜部61bとを有する。また、底平面部61a及び底傾斜部61bの前端には、上方へ折曲して延びる底面フランジ部62が形成されている。
【0040】
側部63は、鉛直方向に延びる側部鉛直部63aと、側部鉛直部63aの上端部から車幅方向に沿って外側に折曲して延びる側部折曲部63bを有する。また、側部鉛直部63aの前端には車幅方向に沿って内側に折曲して延びる内側フランジ部63cが形成されている。また、側部63の後端には、車幅方向に沿って外側に延びる外側フランジ部63dが形成されている。外側フランジ部63dの略中央には、ボルトが挿通するボルト孔63eが形成されている。
【0041】
キャブロック装置70は、図9に示すように、ベース71と、リンク72と、キャブロックフック73と、バネ部材74と、を備えている。リンク72は、ベース71に対し第1回転軸75を中心としてロック方向及びロック解除方向へ回転自在に支持される。キャブロックフック73は、リンク72に対し第2回転軸76を中心として回転自在に支持され、ベース71に対してロック方向及びロック解除方向へ移動自在となる。リンク72がロック方向へ回転するとキャブロックフック73もロック方向へ移動し、リンク72がロック解除方向へ回転するとキャブロックフック73もロック解除方向へ移動する。
【0042】
キャブロック装置70のベース71は、相対向して離間する前後のプレート部(前プレート部71aと後プレート部71b)を有する。後プレート部71bの車幅方向両端部には、キャブロックブラケット60の外側フランジ部63dに形成されたボルト孔63eと連通するボルト孔71cが形成されている。
【0043】
次に、フロアパネル13と、バックパネル14と、キャブロックブラケット60と、キャブロック装置70との接合態様について説明する。
【0044】
図1及び図8に示すように、フロアパネル13とバックパネル14とは、フロアパネル13の後端縁とバックパネル14の下端縁とがスポット溶接などによって溶接され、バックパネル延長部41の縦板部41aの側面部が、フロア凹部31のフロア凹部後方部31cの後端の内周面にスポット溶接などで溶接され、また、バックパネル延長部41の横板部41bの下面が、フロア凹部後方部31cの後端部の上面と当接し、スポット溶接などで溶接されることによって接合される。
【0045】
フロアパネル13とバックパネル14とが接合されると、バックパネル延長部41の縦板部41aは、フロア凹部31の後方を閉止する。
【0046】
バックパネル14とキャブロックブラケット60とは、キャブロックブラケット60の底面フランジ部62の前面がバックパネル延長部41の縦板部41aの後面と、また、内側フランジ部63cの前面がバックパネル14の後面と、また、側部折曲部63bの上面が段部42と、スポット溶接などで溶接されることによって接合される。
【0047】
キャブロックブラケット60と、フロアパネル13とは、キャブロックブラケット60の底平面部61aの前端部の下面と、フロア凹部後方部31cの平面部34の後端部の上面と、が上下で重なって、スポット溶接などで溶接され、また、車幅方向内側(左側)に位置する底傾斜部61bの下面と、フロア凹部後方部31cの立下り部33の後端部の上面と、が上下で重なって、溶接され、また、車幅方向外側(右側)に位置する底傾斜部61bの下面と、フロア凹部後方部31cの立上り部35の後端部の上面とが、上下で重なって、溶接されることによって接合される。キャブロックブラケット60と、フロアパネル13とが接合されると、底平面部61aに設けられた挿通孔61cとフロア凹部後方部31cの平面部34に設けられた切欠部31dの開口とが連通する。
【0048】
キャブロックブラケット60とキャブロック装置70とは、キャブロック装置70のベース71体の後プレート部71bに形成されたボルト孔71cとキャブロックブラケット60の外側フランジ部63dに形成されたボルト孔63eとが連通し、連通したボルト孔63e,71cを挿通するボルトがナットと螺合することによって、接合される。
【0049】
次にキャブ3が後方キャブマウント5を介して車体フレーム4に支持される態様について、説明する。
【0050】
図9に示すように、キャブが非チルト位置にあるとき、車体フレーム4の後方キャブマウント5のストライカ52がキャブのキャブロックブラケット60部の底平面部61aの挿通孔61cを下方から挿通する。キャブロックブラケット60に接合されているキャブロック装置70のキャブロックフック73が、挿通孔61cを挿通したストライカ52に上方から係合する。これによって、キャブ3が後方キャブマウント5を介して車体フレーム4に支持される。
【0051】
本実施形態によれば、キャブロックブラケット60とキャブ2とは、キャブロックブラケット60側の内側フランジ部63cの前面及び底面フランジ部62の前面並びに底平面部61a及び底傾斜部61bが、キャブ2側のバックパネル14の後面及び縦板部41aの後面並びにフロア凹部後方部31cの平面部34、立下り部33及び立上り部35の上面に接合されることによって、接合される。このため、車体フレーム4からキャブ2の後端下部への振動等の入力は、上記キャブロックブラケット60側及びキャブ2側の接合部分に分担されて、キャブ2に入力されるので、上記両者の接合部分の板厚を増大することなく、すなわち車両2の重量化を招くことなく、接合部分の剛性十分に確保することができる。
【0052】
また、バックパネル延長部41が、フロア凹部後方部31cに接合されると、バックパネル延長部41の縦板部41aは、フロア凹部31の後方を閉止する。このため、キャブ2外から水や泥がフロア凹部31を介してキャブ2内に浸入することを防止でき、また、キャブ2外の騒音がフロア凹部31を介してキャブ2に伝達することを防止できる。
【0053】
また、フロアパネル13のフロア凹部31が曲折形成されていることから、フロアパネル13への入力によって、フロアパネル13の形状が変形しにくく、フロア凹部31によってフロアパネル13の剛性が確保される。このため、メインシルなどの補強部材をフロアパネル13の下面に固着する必要がなく、部品点数及び組立工数が削減される。したがって、車両重量を低減させることができ、且つ、組立作業性を向上させることができる。
【0054】
また、フロア凹部31の内面を、例えば、車載用の消火器やジャッキハンドルなどの車載用品の収容部などに利用することができ、車室10の床面のスペースを有効に活用することができる。
【0055】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。
【0056】
本実施形態では、側部63の内側フランジ部63cとバックパネル14の後面とが
接合される様態を説明したが、内側フランジ部63cを設けないで、側部63の前端縁をバックパネル14の後端下部に接合させてもよい。
【0057】
また、同様に底平面部61a及び底傾斜部61bの底面フランジ部62を設けないで、底平面部61a及び底傾斜部61bの前端縁を縦板部41aの後面と接合させてもよい。
【0058】
すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、キャブオーバー型車両のキャブの後端下部構造に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:後端下部構造
2:車両
3:キャブ
4:車体フレーム
5:後方キャブマウント(キャブマウント)
13:フロアパネル
14:バックパネル
30:センターフロアパネル部
31:フロア凹部
31a:フロア凹部前方部
31b:フロア凹部傾斜部
31c:フロア凹部後方部
31d:切欠部
32:サイドフロアパネル部
33:立下り部
34:平面部
35:立上り部
40:バックパネル開口部
41:バックパネル延長部
41a:縦板部
41b:横板部
42:段部
51:リアアーチ
52:ストライカ
60:キャブロックブラケット(ブラケット)
61:底部(ブラケット底部)
61a:底平面部
61b:底傾斜部
61c:挿通孔(ストライカ挿通部)
62:底フランジ部
63:側部(ブラケット上接合部)
63a:側部鉛直部
63b:側部折曲部
63c:内側フランジ部
63d:外側フランジ部
63e:ボルト孔
70:キャブロック装置
71:ベース
71a:前プレート部
71b:後プレート部
71c:ボルト孔
73:キャブロックフック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックパネルとフロアパネルとを有するキャブの後端下部に固定されたキャブロック装置を、車体フレームに設けられたキャブマウントのストライカに上方から係合することによって、前記キャブマウントを介して前記車体フレームに支持されるキャブの後端下部構造であって、
前記フロアパネルの後端部のうち前記キャブマウントの上方部分に曲折形成されて下方に凹むフロア凹部と、
前記キャブロック装置が固定されるとともに前記ストライカを挿通するストライカ挿通部が形成された板状のブラケット底部と、このブラケット底部の左右両側から上方へ延びて前記バックパネルの後面に接合される左右のブラケット上接合部とを有し、前記キャブマウントの上方に配置されるブラケットと、
前記バックパネルの下端縁のうち前記フロア凹部の後方部分から下方へ延びる縦板部と、該縦板部の下端から前方へ曲折して延び、前記フロア凹部に上下で重なって接合される横板部とを有するバックパネル延長部と、を備え、
前記ブラケット底部の前端縁部は、前記バックパネル延長部の縦板部の後面に接合され、
前記ブラケット底部の下面は、前記フロア凹部の上面に接合される
ことを特徴とするキャブの前端下部構造。
【請求項2】
請求項1に記載のキャブの後端下部構造であって、
前記バックパネル延長部の縦板部は、前記フロア凹部の後端に接合されて該フロア凹部の後方を閉止する
ことを特徴とするキャブの前端下部構造。
【請求項1】
バックパネルとフロアパネルとを有するキャブの後端下部に固定されたキャブロック装置を、車体フレームに設けられたキャブマウントのストライカに上方から係合することによって、前記キャブマウントを介して前記車体フレームに支持されるキャブの後端下部構造であって、
前記フロアパネルの後端部のうち前記キャブマウントの上方部分に曲折形成されて下方に凹むフロア凹部と、
前記キャブロック装置が固定されるとともに前記ストライカを挿通するストライカ挿通部が形成された板状のブラケット底部と、このブラケット底部の左右両側から上方へ延びて前記バックパネルの後面に接合される左右のブラケット上接合部とを有し、前記キャブマウントの上方に配置されるブラケットと、
前記バックパネルの下端縁のうち前記フロア凹部の後方部分から下方へ延びる縦板部と、該縦板部の下端から前方へ曲折して延び、前記フロア凹部に上下で重なって接合される横板部とを有するバックパネル延長部と、を備え、
前記ブラケット底部の前端縁部は、前記バックパネル延長部の縦板部の後面に接合され、
前記ブラケット底部の下面は、前記フロア凹部の上面に接合される
ことを特徴とするキャブの前端下部構造。
【請求項2】
請求項1に記載のキャブの後端下部構造であって、
前記バックパネル延長部の縦板部は、前記フロア凹部の後端に接合されて該フロア凹部の後方を閉止する
ことを特徴とするキャブの前端下部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−232609(P2012−232609A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100470(P2011−100470)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
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