説明

キャンバ角調整装置

【課題】小型でありながら連結部分の回転角度が大きく乗り心地の良いキャンバ角の調整を行うキャンバ角調整装置を提供する。
【解決手段】車体と車輪を連結し、車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置1において、車体に設置され駆動力を発生するモータ2a及びモータ2aの発生した駆動力を出力する出力軸2bを有する駆動部材2と、出力軸2bから出力される駆動力が伝達されるクランク軸4a1,4b2及びクランク軸4a1,4b2に対して偏心するクランクピン4a2,4b1を有するクランク部4と、クランクピン4a2,4b1とハブ30とを連結する連結部材51と、クランクピン4a2,4b1と連結部材51の間に設けられるメタルブッシュ12,13及びゴムブッシュ14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪のキャンバ角を調整する際に用いられる車両用キャンバ角調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アクチュエータで各輪個別にキャンバ及びトウを制御することができるようにするために、車輪を支持するアクスルを車体に対し1点で支持するボールジョイントと、アクスルにおけるボールジョイントによる支持点の上側又は下側であり且つ車両前後方向の2点を支持し、この2点の支持点を、車幅方向に個別に変位させる第1及び第2のアクチュエータと、前記2点の支持点を車幅方向において相対的に変位させることで車輪のトウを変化させ、及び/又は前記2点の支持点を車幅方向において同一方向に変位させることで車輪のキャンバを変化させるように、第1及び第2のアクチュエータを制御する制御手段と、を備えたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−122932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された発明では、アッパーアームとサスペンションメンバとの連結をブッシュで行っている。一般にダブルウィッシュボーン式のサスペンションの場合、アッパーアームとサスペンションメンバとの連結では、走行時に発生する外乱を吸収し、乗り心地を良くするためにゴムブッシュを用いる場合が多い。
【0005】
しかしながら、アッパーアームとサスペンションメンバとの連結部分にテコクランク機構等を用いることで回転移動する場合、アッパーアームとクランク軸との連結部分にゴムブッシュのみを用いると、ゴムの弾性域によって回転角度が決定し、ゴムの弾性域によって決定した回転角度以上回転させると、ゴムがねじ切れてしまう場合がある。
【0006】
また、回転角度を大きくしようとゴムの弾性域を大きくすると、ゴムブッシュの径方向の寸法が増大し、装置が大型化してしまう。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、小型でありながら連結部分の回転角度が大きく乗り心地の良いキャンバ角の調整を行うキャンバ角調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために本発明のキャンバ角調整装置は、車体と車輪を支持するハブとを連結し、前記車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置において、前記車体に設置され駆動力を発生するモータ及び前記モータの発生した駆動力を出力する出力軸を有する駆動部材と、前記出力軸から出力される駆動力が伝達されるクランク軸及び前記クランク軸に対して偏心したクランクピンを有するクランク部と、前記クランクピンと前記ハブとを連結する連結部材と、前記クランクピンと前記連結部材の間に設けられるメタルブッシュ及びゴムブッシュと、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記メタルブッシュは、前記ゴムブッシュの径方向内側に配置されることを特徴とする。
【0010】
また、前記メタルブッシュは、前記クランクピンの前記駆動部材側に配置される第1のメタルブッシュと、前記クランクピンの前記駆動部材とは反対側で前記第1のメタルブッシュに対して前記クランクピンの軸方向において空間をあけて配置される第2のメタルブッシュと、を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記クランク部と前記連結部材に当接し、前記メタルブッシュ及び前記ゴムブッシュを覆うカバー部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、車体と車輪を支持するハブとを連結し、前記車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置において、前記車体に設置され駆動力を発生するモータ及び前記モータの発生した駆動力を出力する出力軸を有する駆動部材と、前記出力軸から出力される駆動力が伝達されるクランク軸及び前記クランク軸に対して偏心したクランクピンを有するクランク部と、前記クランクピンに連結される第1連結部、前記ハブに連結される第2連結部、及び前記第1連結部と前記第2連結部を連結するアーム部を有する連結部材と、前記クランクピンと前記連結部材の間に設けられるメタルブッシュ及びゴムブッシュと、を備えるので、小型でありながら連結部分の回転角度が大きく乗り心地の良いキャンバ角調整装置を提供することが可能となる。
【0013】
また、請求項2記載の発明によれば、前記メタルブッシュは、前記ゴムブッシュの径方向内側に配置されるので、最も摺動の激しい回転移動する部材と当接する部分にメタルブッシュを配置することで、滑り運動による摩耗を低減し、クランクピン及びメタルブッシュの寿命を延ばすことが可能となる。また、メタルブッシュの外周にゴムブッシュを配置することで、路面から車輪を通して連結部材にかかる衝撃力をゴムブッシュが吸収し低減することで、メタルブッシュに加わる外力を低減し、メタルブッシュの寿命を延ばすことが可能となる。
【0014】
また、請求項3記載の発明によれば、前記メタルブッシュは、前記クランクピンの前記駆動部材側に配置される第1のメタルブッシュと、前記クランクピンの前記駆動部材とは反対側で前記第1のメタルブッシュに対して前記クランクピンの軸方向において空間をあけて配置される第2のメタルブッシュと、を有するので、摩擦による熱の発生を低減し、クランクピン、第1のメタルブッシュ、第2のメタルブッシュ及びゴムブッシュの劣化を低減し、寿命を延ばすことが可能となる。
【0015】
また、請求項4記載の発明によれば、前記クランク部と前記連結部材に当接し、前記メタルブッシュ及び前記ゴムブッシュを覆うカバー部材を有するので、水や塵等をメタルブッシュ及びゴムブッシュ側に浸入させないようし、金属からなるメタルブッシュの防水及び防塵対策を確保し、錆を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態のキャンバ角調整装置の前方斜視図である。
【図2】実施形態のキャンバ角調整装置を前方から見た図である。
【図3】実施形態のキャンバ角調整装置を上方から見た図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】実施形態の作動状態のキャンバ角調整装置を前方から見た図である。
【図6】図5のE−E断面図である。
【図7】アッパーアームのユニットを組み立てる第1の工程を示す図である。
【図8】第1の工程で完成したアッパーアームユニットを示す図である。
【図9】ユニット支持部材に第2のクランク支持部材を挿入する第2の工程を示す図である。
【図10】第3の工程におけるアッパーアームユニットをユニット支持部材に組み付ける前の状態を示す図である。
【図11】第3の工程におけるアッパーアームユニットをユニット支持部材に挿入した状態を示す図である。
【図12】図11を下方から見た図である。
【図13】第3の工程におけるアッパーアームユニットを第2のクランク支持部材に挿入した状態を示す図である。
【図14】図13を下方から見た図である。
【図15】駆動部材、減速部及び第1のクランク支持部材をクランク部及びユニット支持部材に組み付ける第4の工程を示す図である。
【図16】ユニット支持メンバにキャンバ角調整ユニットを取り付ける第5の工程を示す図である。
【図17】ユニット支持メンバにキャンバ角調整ユニットを取り付けた状態を下方から見た斜視図である。
【図18】ユニット支持メンバにアッパーアームユニットを組み付けた後に駆動ユニットを組み付ける実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は実施形態のキャンバ角調整装置の前方斜視図、図2は実施形態のキャンバ角調整装置を前方から見た図、図3は実施形態のキャンバ角調整装置を上方から見た図、図4は図2のA−A断面図である。ただし、図2及び図3の車輪は前方半分をカットした図である。また、矢印Fは車両前方、矢印Wは車両前後方向に直交する車両の車体幅方向を示す。
【0019】
図1〜図4において、1はキャンバ角調整装置としてのキャンバ角調整ユニット、2は駆動部材、3は減速部、4はクランク部、5は第1のクランク支持部材、6は第1のクランク支持ブッシュ、7は第1のシール、8は第2のクランク支持部材、9は第2のクランク支持ブッシュ、10は第2のシール、11は角度取得部材としての角度検出センサ、12は第1のメタルブッシュ、13は第2のメタルブッシュ、14はゴムブッシュ、15は第1のカバー部材、16は第2のカバー部材、17はユニット支持ブラケット、20は車体、21は第1サスペンションメンバ、22は第2サスペンションメンバ、23はユニット支持メンバ、30はハブ、31はハブ部材、32はディスクブレーキ、33は回動部材としてのハブ支持部材、40は車輪、41はホイール、42はタイヤである。50は懸架装置、51は連結部材としてのアッパーアーム、52は第1ロアアーム、53はスプリング、54はショックアブソーバ、55はトレーリングアーム、56は第2ロアアーム、である。
【0020】
本実施形態のキャンバ角調整ユニット1を取り付ける車両について説明する。
【0021】
本実施形態の車両は、ダブルウィッシュボーン式サスペンションを用いた車両である。車両は、車体20と、車輪40と、車体20に対して車輪40を回転可能に支持するハブ30と、車輪40及びハブ30を車体20に対して懸架する懸架装置50とを有する。
【0022】
車体20は、第1サスペンションメンバ21と、第2サスペンションメンバ22と、第1サスペンションメンバ21及び第2サスペンションメンバ22に掛け渡して設けられたユニット支持メンバ23と、を有する。
【0023】
ハブ30は、図示しないドライブシャフトに連結されエンジンやモータ等の駆動力により回転する回転部31と、回転部31と共に回転するディスクブレーキをブレーキケースの内側に有するディスクブレーキ部32と、車体20と懸架装置50を介して連結され、回転部31を回転可能に支持するハブ支持部材33と、を有する。また、ハブ支持部材33は、鉛直方向の一方側で第2ロアアーム56の他端に回転可能に支持され、他方側でアッパーアーム51の他端に連結される。
【0024】
車輪40は、ハブ30の回転部31にボルト等により締着され、回転部31と共に回転するホイール41と、ホイール41の外周に組み付けられるタイヤ42と、を有する。
【0025】
懸架装置50は、アッパーアーム51と、第1ロアアーム52と、スプリング53と、ショックアブソーバ54と、トレーリングアーム55と、第2ロアアーム56とからなる。
【0026】
アッパーアーム51は、一端の第1連結部51aでクランク部材4のクランクピン部4a2に第1のアーム用メタルブッシュ12、第2のアーム用メタルブッシュ13、及びゴムブッシュ14を介して回転可能に連結され、他端の第2連結部51bでハブ30のハブ支持部材33にゴムブッシュやピロボール等の軸受を介して車両前後方向又は略前後方向の軸に対して回転可能に連結される。また、第1連結部51aと第2連結部51bはアーム部51cにより連結される。
【0027】
第1ロアアーム52は、図示しない一端の第1連結部で車体20の第2サスペンションメンバ22にゴムブッシュやピロボール等の軸受を介して車両前後方向又は略前後方向の軸に対して回転可能に連結され、他端の第2連結部52bでハブ30のハブ支持部材33にゴムブッシュやピロボール等の軸受を介して車両前後方向又は略前後方向の軸に対して回転可能に連結される。
【0028】
スプリング53は、上方で第1スプリング受け53aを介して車体20に連結され、下方で第2スプリング受け53bを介して第1ロアアーム52に連結される。
【0029】
ショックアブソーバ54は、図示しないが、上方で車体20に連結され、下方で第1ロアアーム52に連結される。
【0030】
トレーリングアーム55は、前方端の第1連結部で車体20にゴムブッシュやピロボール等の軸受を介して車両幅方向又は略幅方向の軸に対して回転可能に連結され、後方端上方の第2連結部55bでハブ30のハブ支持部材33にゴムブッシュやピロボール等の軸受を介して車両幅方向又は略幅方向の軸に対して回転可能に連結され、後方端下方の第3連結部55cでハブ30のハブ支持部材33にボルト等で締結される。
【0031】
第2ロアアーム56は、一端の第1連結部56aで車体20の第1サスペンションメンバ21にゴムブッシュやピロボール等の軸受を介して車両前後方向又は略前後方向の軸に対して回転可能に連結され、他端の第2連結部56bでハブ30のハブ支持部材33にゴムブッシュやピロボール等の軸受07を介して車両前後方向又は略前後方向の軸に対して回転可能に連結される。なお、本実施形態では、第2ロアアーム56は、アライメント時のトウ角を調整するトウコントロールリンクとしての機能を有する。
【0032】
次に、本実施形態のキャンバ角調整ユニット1について説明する。
【0033】
本実施形態のキャンバ角調整ユニット1は、車体20と車輪40を支持するハブ30とを連結し、車輪40のキャンバ角を調整するキャンバ角調整ユニット1において、車体20に設置され駆動力を発生するモータ2a及びモータ2aの発生した駆動力を出力する出力軸2bを有する駆動部材2と、出力軸2bに連結され駆動部材2の回転を減速する減速部3と、減速部3と連結されるクランク軸としての第1クランク軸部4a1及び第2クランク軸部4b2、並びに第1クランク軸部4a1及び第2クランク軸部4b2に対して偏心するクランクピンとしてのクランクピン部4a2及びクランクピン接合部4b1を有するクランク部4と、クランクピン部4a2又はクランクピン接合部4b1に連結される第1連結部51a、ハブ30に連結される第2連結部51b、及び第1連結部51aと第2連結部51bを連結するアーム部51cを有するアッパーアーム51と、クランクピン部4a2及びクランクピン接合部4b1とアッパーアーム51の間に設けられるメタルブッシュ12,13及びゴムブッシュ14と、を備える。
【0034】
駆動部材2は、DCモータ等からなるモータ2a、モータの駆動力を出力する出力軸2b等からなる。モータ2aは、懸架装置50に対してバネ上に取り付けられている。このように、モータ2aをバネ上に設置することにより、バネ下の軽量化が実現でき、乗り心地及び車両の運動性能が向上する。なお、ユニット支持メンバ23は、あらかじめ車体20に設けるのではなく、キャンバ角調整ユニット1の一部として設置してもよい。
【0035】
また、図4に示すように、モータ2aは、軸方向の長さが径方向の長さよりも短い扁平モータが好ましい。このように、モータ2aを扁平モータとすることにより、設置スペースを小さくすることが可能となる。
【0036】
減速部3は、駆動部材2の出力軸2bに取り付けられクランク部4にモータ2aの駆動力を減速して伝達するものである。図4に示すように、本実施形態の減速部3は、ケース3aと、ケース3aに固定されたリング状のアウターギヤ3bと、モータ2aの出力軸2bに連結されたサンギヤ3cと、サンギヤ3cとアウターギヤ3bとに噛み合いサンギヤ3cの駆動力によりサンギヤ3cの周囲を回転する複数の第1プラネタリギヤ3dと、第1プラネタリギヤ3dを支持する第1プラネタリ軸3eと、第1プラネタリ軸3eが固定され、第1プラネタリギヤ3dがサンギヤ3cの周囲を回転することにより回転軸3f1を中心に回転するプラネタリキャリアとしての第1プラネタリキャリア3fと、第1プラネタリキャリア3fの回転軸3f1とアウターギヤ3bとに噛み合い、第1プラネタリキャリア3fの回転軸3f1の周囲を回転する複数の第2プラネタリギヤ3gと、第2プラネタリギヤ3gを支持する第2プラネタリ軸3hと、第2プラネタリ軸3hに固定され、第2プラネタリギヤ3gが第1プラネタリキャリア3fの回転軸3f1の周囲を回転することにより回転するプラネタリキャリアとしての第2プラネタリキャリア3jと、を有する。
【0037】
第1プラネタリキャリア3fの回転軸3f1は、一方をサンギヤ3cに回転可能に軸支持され、他方を第2プラネタリキャリア3jに回転可能に軸支持されている。また、第2プラネタリキャリア3jの軸のクランク部4に近い側は、外周に第1クランク軸部4a1と噛み合うスプラインが形成されている。このように、第1プラネタリキャリア3f及び第2プラネタリキャリア3jを支持することで、第1プラネタリキャリア3f及び第2プラネタリキャリア3jが的確に支持され、的確に動力を伝達することが可能となる。
【0038】
なお、本実施形態では、第1プラネタリギヤ3d及び第2プラネタリギヤ3gは、それぞれ3個使用しているが、これに限らず、可能であれば何個でもよい。また、本実施形態では、第1プラネタリギヤ3dと第2プラネタリギヤ3gを有する2段の構成となっているが、第1プラネタリキャリア3fと第2プラネタリギヤ3gを用いずに、一方をサンギヤ3cに回転可能に軸支持された第2プラネタリキャリア3jの第2プラネタリ軸3hに第1プラネタリギヤ3dを回転可能に軸支持させる1段の構成でもよい。
【0039】
このように、減速部3をプラネタリギヤで構成することにより、設置スペースを小さくすることが可能となる。
【0040】
また、本実施形態では、駆動部材2と減速部3とで駆動部を構成し、出力軸2bと減速部3とで駆動軸部を構成する。
【0041】
クランク部4は、減速部3の第2プラネタリキャリア3jのスプラインと噛み合うスプラインが内周に形成されて第2プラネタリキャリア3jと一体に回転する第1クランク軸部4a1及びアッパーアーム51の第1連結部51aに連結されるクランクピン部4a2を有する第1クランク部材4aと、第1クランク部材4aのクランクピン部4a2に一体的に回転可能となるように取り付けられるクランクピン接合部4b1、並びに第1クランク軸部4a1と同軸で、クランクピン部4a2及びクランクピン接合部4b1に対して偏心している第2クランク軸部4b2を有する第2クランク部材4bとからなる。
【0042】
なお、第1クランク軸部4a1及び第2クランク軸部4b2でクランク軸を構成し、クランクピン部4a2及びクランクピン接合部4b1でクランクピンを構成する。
【0043】
クランク部4は、第1クランク軸部4a1で第1のクランク支持部材5に第1のクランク支持ブッシュ6を介して回転可能に支持され、第2クランク軸部4b2で第2のクランク支持部材8に第2のクランク支持ブッシュ9を介して回転可能に支持されている。
【0044】
第1のクランク支持ブッシュ6及び第2のクランク支持ブッシュ9はメタルブッシュが好ましい。メタルブッシュの場合には防水が必要なため、第1クランク軸部4a1と第1のクランク支持部材5の間には、第1のクランク支持ブッシュ6を防水するための第1のシール7を配設するとよい。同様に、第2クランク軸部4b2と第2のクランク支持部材8の間には、第2のクランク支持ブッシュ9を防水するための第2のシール10を配設するとよい。
【0045】
また、クランク部4は、第1クランク部材4aのクランクピン部4a2でアッパーアーム51の第1連結部51aに連結する。クランクピン部4a2と第1連結部51aの間には、滑り軸受としての第1のメタルブッシュ12、第2のメタルブッシュ13、及びゴムブッシュ14が配設されている。
【0046】
第1のメタルブッシュ12は、減速部3に近い側、すなわち第1クランク軸部4a1に近い側でクランクピン部4a2の外周に当接する第1の円筒部12aと、第1の円筒部12aの第1クランク軸部4a1に近い側の端部から径方向の外側に突出した第1のフランジ部12bとを有する。また、第2のメタルブッシュ13は、減速部3とは反対側、すなわち第2クランク軸部4b2に近い側でクランクピン部4a2の外周に当接する第2の円筒部13aと、第2の円筒部13aの第2クランク軸部4b2に近い側の端部から径方向の外側に突出した第2のフランジ部13bとを有する。
【0047】
第1のメタルブッシュ12の第1の円筒部12aの軸方向の長さと第2のメタルブッシュ13の第2の円筒部13aの軸方向の長さを足した長さは、クランクピン部4a2の長さよりも短くする。また、第1のフランジ部12bと第2のフランジ部13bは、それぞれゴムブッシュ14に引っ掛かり、第1の円筒部12aと第2の円筒部13aは、それぞれ移動できないように配置される。その結果、第1のメタルブッシュ12の第1の円筒部12aと第2のメタルブッシュ13の第2の円筒部13aの間には、軸方向に空間Sが設けられる。空間Sを設けることにより、摩擦によって発生する熱を低減することができる。
【0048】
ゴムブッシュ14は、略円筒状に形成され、第1のメタルブッシュ12及び第2のメタルブッシュ13の径方向外周に当接し、アッパーアーム51の第1連結部51aの内周に当接して設けられる。
【0049】
このように、最も摺動の激しいクランクピン部4a2の径方向外周に第1のメタルブッシュ12及び第2のメタルブッシュ13を配置することで、滑り運動による摩耗を低減し、クランクピン部4a2、第1のメタルブッシュ12及び第2のメタルブッシュ13の寿命を延ばすことが可能となる。
【0050】
また、第1のメタルブッシュ12及び第2のメタルブッシュ13の径方向外周にゴムブッシュ14を配置することで、路面から車輪40を通してアッパーアーム51にかかる衝撃力をゴムブッシュ14が吸収し低減することで、第1のメタルブッシュ12及び第2のメタルブッシュ13に加わる外力を低減し、第1のメタルブッシュ12及び第2のメタルブッシュ13の寿命を延ばすことが可能となる。
【0051】
さらに、クランク部4の軸方向において第1のメタルブッシュ12と第2のメタルブッシュ13の間に空間Sを設けることにより、摩擦によって発生する熱を低減し、クランクピン部4a2、第1のメタルブッシュ12、第2のメタルブッシュ13及びゴムブッシュ14の劣化を低減し、寿命を延ばすことが可能となる。
【0052】
第1のメタルブッシュ12及び第2のメタルブッシュ13は、金属からなるので、錆を低減するため、防水及び防塵対策が必要である。そこで、本実施形態では、一端を第1クランク部材4aに当接し、他端をアッパーアーム51の第1連結部51aに当接して、第1のメタルブッシュ12、第2のメタルブッシュ13及びゴムブッシュ14を覆うカバー部材としての第1のカバー部材15を設ける。また、一端を第2クランク部材4bに当接し、他端をアッパーアーム51の第1連結部51aに当接して、第1のメタルブッシュ12、第2のメタルブッシュ13及びゴムブッシュ14を覆うカバー部材としての第2のカバー部材16を設ける。
【0053】
第1のカバー部材15及び第2のカバー部材16は、ゴム等の水密性の高い材料を使用し、外側から水や塵等を第1のメタルブッシュ12、第2のメタルブッシュ及びゴムブッシュ14側に浸入させないように設置される。
【0054】
さらに、図1に示すように、本実施形態では、キャンバ角調整ユニット1を車体20に設置するための支持ブラケットとしてのユニット支持ブラケット17を、クランク部4の少なくとも一部を覆うように形成する。
【0055】
ユニット支持ブラケット17は、図3に示すように、ボルト等によりユニット支持メンバ23に取り付けられる車体支持部17aと、円筒状に形成され、クランク部4の少なくとも一部を覆う側面部17bと、第1のクランク支持部材5を介して第1クランク軸部4a1を支持する第1の支持部17cと、第2のクランク支持部材8を介して第2クランク軸部4b2を支持する第2の支持部17dと、を有する。したがって、ユニット支持ブラケット17の強度が向上し、クランク部4をさらに安定して支持することが可能となる。なお、側面部17bは、第1の支持部17cと第2の支持部17dの間に設けられればよく、円筒状でなくてもよい。
【0056】
ユニット支持ブラケット17は、スチール材料をプレス加工することにより、一体的に形成されることが好ましい。このように形成することにより、短時間で安価に形成することが可能となる。また、一体成形することにより、クランク部4の軸位置のぶれが低減され、安定して支持することで回転精度が向上すると共に、強度が向上し、乗り心地良くキャンバ角の調整を行うことが可能となる。
【0057】
また、クランク部4にはクランク角度取得部材としての角度センサ11を設けることが好ましい。本実施形態では、角度センサ11は、第2クランク部材4bの第2クランク軸部4b2に隣接して設けられ、回転角を計測している。センサの構成については、既存のマーカー等を読み取る光センサ等でよい。そして、角度センサ11の計測した角度に応じて、キャンバ角が付与されていることを示す図示しない表示装置、モータ2a又は車両のアクセルやブレーキ等の操作系を制御するとよい。
【0058】
クランク部4に隣接してバネ上に角度センサ11を設けることで、バネ下に設ける場合と比較して、振動の影響を低減でき、高精度に検出することが可能となる。なお、クランク角度取得部材は、第1クランク部材4a側に取り付けてもよい。また、モータ2aや減速部3に設け回転数を計測する回転数センサとしてもよい。
【0059】
次に、本実施形態のキャンバ角調整ユニット1の作動について説明する。
【0060】
図5は実施形態の作動状態のキャンバ角調整装置を前方から見た図、図6は図5のE−E断面図である。
【0061】
まず、図示しない制御装置等によりキャンバ角を調整するよう指示があると、駆動部材2のモータ2aが駆動する。モータ2aの駆動力は、減速部3で減速される。
【0062】
減速部3では、まず、モータ2aの出力軸2bに連結されたサンギヤ3cが回転する。サンギヤ3cが回転すると、サンギヤ3cの周囲に配置された複数の第1プラネタリギヤ3dがサンギヤ3cとアウターギヤ3bとの間を回転しながら移動する。第1プラネタリギヤ3dが移動すると、第1プラネタリギヤ3dを支持する第1プラネタリ軸3eが移動し、第1プラネタリ軸3eに固定された第1プラネタリキャリア3fが、回転軸3f1を中心に回転する。第1プラネタリキャリア3fの回転軸3f1が回転すると、回転軸3f1とアウターギヤ3bとに噛み合う複数の第2プラネタリギヤ3gが回転軸3f1の周囲を回転しながら移動する。第2プラネタリギヤ3gが移動すると、第2プラネタリギヤ3gを支持する第2プラネタリ軸3hが移動し、第2プラネタリ軸3hに固定された第2プラネタリキャリア3jが回転する。
【0063】
減速部3の第2プラネタリキャリア3jの回転は、クランク部4に伝達され、第1クランク部材4a及び第2クランク部材4bが第1クランク軸部4a1及び第2クランク軸部4b2のクランク軸を中心に回転する。
【0064】
なお、本実施形態では、駆動部材2の駆動力を減速部3を介してクランク部4に伝達したが、減速部3を設けず、駆動部材2から駆動力をクランク部4に直接伝達する構成としてもよい。この場合、駆動部材2が駆動部を構成し、出力軸2bが駆動軸部を構成する。
【0065】
第1クランク部材4a及び第2クランク部材4bが回転すると、クランク軸と偏心して配置されたクランクピン部4a2がクランク軸を中心に図4に示す状態から、図6に示すように車幅方向に略180°回転した状態となる。
【0066】
クランク部4が回転することにより、クランクピン部4a2に連結されたアッパーアーム51の第1連結部51aがクランクピン部4a2と共に回転する。第1連結部51aが回転すると、アッパーアーム51が第1連結部51aに引っ張られ矢印C方向に移動する。アッパーアーム51は第2連結部51bを引っ張り、第2連結部51bに連結されたハブ支持部材33を引っ張る。
【0067】
アッパーアーム51に引っ張られたハブ支持部材33は、第1ロアアーム52の第2連結部52bを中心に矢印Gの方向に回転する。
【0068】
ハブ支持部材33が矢印Gの方向に回転すると、ハブ部材31及び車輪40も矢印Gの方向に回転し、車輪40にネガティブキャンバが付与される。
【0069】
なお、車輪40のネガティブキャンバを解除する際には、駆動部材2のモータ2aを付与時の回転と同じ方向又は反対の逆方向に回転させる。
【0070】
すると、付与時と同様に、減速部3を介してクランク部4が回転し、クランク軸と偏心して配置されたクランクピン部4a2がクランク軸を中心に図6に示す状態から、図4に示すように車幅方向に略180°回転した状態となる。そして、クランクピン部4a2に連結されたアッパーアーム51がハブ支持部材33を引っ張り、車輪40のネガティブキャンバが解除される。
【0071】
次に、このような本実施形態のキャンバ角調整ユニット1の車体20への組み付け方法について説明する。図7〜図17は、キャンバ角調整ユニット1の車体20への組み付け工程を示す図である。図7はアッパーアームユニット151を組み立てる第1の工程を示す図、図8は第1の工程で完成したアッパーアームユニット151を示す図である。図9は、ユニット支持部材17に第2のクランク支持部材8を挿入する第2の工程を示す図である。図10は第3の工程におけるアッパーアームユニット151をユニット支持部材17に組み付ける状態を示す図である。図11は第3の工程におけるアッパーアームユニット151をユニット支持部材17に挿入した状態を示す図、図12は図11を下方から見た図である。図13は第3の工程におけるアッパーアームユニット151を第2のクランク支持部材8に挿入した状態を示す図、図14は図13を下方から見た図である。図15は駆動部材2、減速部3及び第1のクランク支持部材5をクランク部4及びユニット支持部材17に組み付ける第4の工程を示す図である。図16は、ユニット支持メンバ23にキャンバ角調整ユニット1を取り付ける第5の工程を示す図である。図17は、ユニット支持メンバ23にキャンバ角調整ユニット1を取り付けた状態を下方から見た斜視図である。
【0072】
まず、第1の工程について説明する。図7に示すように、あらかじめゴムブッシュ14を挿入してあるアッパーアーム51の第1連結部51aの内側に第1のメタルブッシュ12及び第2のメタルブッシュ13を挿入する。続いて、第1のカバー部材15及び第2のカバー部材16を第1連結部51aに取り付ける。次に、第1のカバー部材15側から第1クランク部材4aのクランクピン部4a2を第1のカバー部材15及び第1のメタルブッシュ12、第2のメタルブッシュ13及び第2のカバー部材16の内側に挿入する。次に、第2のカバー部材16を挿通したクランクピン部4a2を第2クランク部材4bのクランクピン接合部4b1に接合する。このように、組み立てることにより、図8に示すように、アッパーアームユニット151が完成する。
【0073】
続いて、第2の工程について説明する。第2の工程では、図9に示すように、第2のクランク支持部材8をユニット支持部材17に取り付ける。まず、第2のクランク支持部材81を矢印aのようにユニット支持部材17の側面部17b、第1の支持部17c及び第2の支持部17dに囲まれた空間の内側に挿入し、第2のクランク支持部材82の状態とする。次に、第2のクランク支持部材82を矢印bのようにユニット支持部材17の第2の支持部17dに設けられた孔17d1に挿通し、第2のクランク支持部材83の状態とする。
【0074】
第2のクランク支持部材8とユニット支持部材17とは、着脱自在に嵌め込む構造であり、ボルト等により固着する必要はない。このように、ボルト等を用いることなく取り付けるため、部品点数が少なく、軽量化できると共に、安価に製造することが可能となる。
【0075】
例えば、ユニット支持部材17の第2の支持部17dに設けられた孔17d1の周囲の一部にキー溝等の凹部を設け、第2のクランク支持部材8に凹部に嵌るキー等の凸部を設けて回転しないように取り付ければよい。また、簡単な構造でクランク部4を的確に支持することが可能となる。
【0076】
次に、第3の工程について説明する。第3の工程は、図10に示すように、第1の工程で組み立てたアッパーアームユニット151を、第2の工程で組み立てた第2のクランク支持部材8を取り付けたユニット支持部材17に組み付ける工程である。
【0077】
まず、図11に示すように、アッパーアームユニット151をユニット支持部材17の側面部17b、第1の支持部17c及び第2の支持部17dに囲まれた収納部17eの内側に挿入する。なお、図11は、理解を容易にするためにユニット支持部材17を透過して示している。
【0078】
具体的には、図12に示すように、アッパーアームユニット151の第1のカバー部材15及び第2のカバー部材16もしくは第1連結部51aのうち一番長い外径L1は、ユニット支持部材17の空間の入口を形成するクランク軸4a2に直交する方向における側面部17bの第1の端部17b1から第2の端部17b2までの直線距離L2よりも短く形成されている。したがって、アッパーアームユニット151をユニット支持部材17の側面部2内側の収納部17eに挿入する際に、円滑に挿入することが可能となる。
【0079】
なお、側面部17bには、アッパーアーム51の可動域に対応して開口17b3が設けられているので、アッパーアームユニット151をユニット支持部材17の収納部17eに挿入する際には、アッパーアーム51が開口17b3に挿入されるように位置を対応させて挿入してもよい。
【0080】
また、アッパーアームユニット151の第1クランク部材4aと第2クランク部材4bからなるクランク部4のクランク軸方向の長さL3がユニット支持部材17の第1の支持部17cと第2のクランク支持部材8の間の距離L4よりも長い場合には、アッパーアームユニット151をユニット支持部材17の収納部17eに挿入する際に、アッパーアームユニット151を傾斜させて、第1クランク部材4a側を第1の支持部17cの孔17c1に挿入するとよい。したがって、第1の支持部17cの孔17c1の直径を、アッパーアームユニット151の第1のカバー部材15及び第2のカバー部材16もしくは第1連結部51aのうち長い方の直径L1よりも長くすると、第1の支持部17cを通過するアッパーアームユニット151の割合が増加するので、一度クランク部4を孔17c1に通過させた後、第2の支持部17dの方向に移動させることができ、ユニット支持部材17のクランク軸方向の長さを短くすることが可能となる。
【0081】
次に、図13に示すように、アッパーアームユニット151の第2クランク部材4bを第2のクランク支持部材8に挿入する。具体的には、図4に示した第2のクランク支持ブッシュ9を防水するための第2のシール10をクランク支持部材8に配設して、その後、第2クランク軸部4b2を第2のクランク支持部材8に挿入する。なお、図4に示した第2のクランク支持ブッシュ9を防水するための第2のシール10はあらかじめクランク支持部材8に設けておいてもよい。この時点では、図14に示すように、アッパーアームユニット151の第1クランク部材4aは、まだ支持されていない。
【0082】
次に、第4の工程について説明する。第4の工程では、図15に示すように、あらかじめ組み立てておいた駆動部材2、減速部3及び第1のクランク支持部材5からなる駆動ユニット102をアッパーアームユニット151及びユニット支持部材17に組み付ける。
【0083】
第1のクランク支持部材5は、減速部3の蓋となる機能を備えている。したがって、あらかじめ別の場所で組み立てておくことが可能である。このように、第1のクランク支持部材5が減速部3の蓋となる機能を備えているので、部品点数が少なく、軽量化できると共に、安価に製造することが可能となる。また、簡単な構造でクランク部4を的確に支持することが可能となる。
【0084】
この駆動ユニット102をアッパーアームユニット151及びユニット支持部材17に組み付ける際には、図4で示したように、減速部3の第2プラネタリキャリア3jが、クランク部4の端部と当接することによって、位置決めされる。したがって、第1のクランク支持部材5に干渉せず、第1クランク部材4aの第1クランク軸部4a1と一体で回転するように組み付けられる。例えば、減速部3の第2プラネタリキャリア3jの外周に形成したスプラインと、第1クランク部材4aの第1クランク軸部4a1の内周に形成したスプラインとを嵌め込めばよい。
【0085】
その後、減速部3のケース3aと第1のクランク支持部材5をボルト等でユニット支持部材17に取り付ける。
【0086】
次に、第5の工程について説明する。第5の工程では、図16に示すように、アッパーアームユニット151及び駆動ユニット102が組み付けられたユニット支持部材17を車体20の第1サスペンションメンバ21及びユニット支持メンバ23に取り付ける。
【0087】
このように、ユニット支持ブラケット17に駆動部材2、減速部3、クランク部4、及び連結部材51を組み付けてユニットを形成するので、車体への組付けが容易となり、組み付け時間を短縮することが可能となる。
【0088】
ユニット支持部材17を車体20の第1サスペンションメンバ21及びユニット支持メンバ23に取り付けると、図17に示しように、クランク軸に直交する方向におけるユニット支持部材17の側面部17bの第1の端部17b1と車体20のユニット支持メンバ23との間には、直線距離L5の隙間が存在する。この直線距離L5は、図12に示したアッパーアームユニット151の第1のカバー部材15及び第2のカバー部材16もしくは第1連結部51aのうち一番長い外径L1よりも短い。
【0089】
このように、ユニット支持部材17を車体20の第1サスペンションメンバ21及びユニット支持メンバ23に取り付けて、ユニット支持部材17の側面部17bの第1の端部17b1と車体20のユニット支持メンバ23との間の距離L5を短くすることで、石や泥等の異物の侵入を低減することができ、キャンバ角調整ユニット1の作動時の信頼性を向上することが可能となる。
【0090】
なお、図18に示すように、アッパーアームユニット151を組み付けたユニット支持部材17を、先に車体20のユニット支持メンバ23に取り付けて、その後、駆動ユニット102を組み付けて、キャンバ角調整ユニット1を組み立ててもよい。
【0091】
以上説明したように、本実施形態によれば、車体20と車輪40を支持するハブ30とを連結し、車輪40のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置1において、車体20に設置され駆動力を発生するモータ2a及びモータ2aの発生した駆動力を出力する出力軸2bを有する駆動部材2と、出力軸2bから出力される駆動力が伝達されるクランク軸4a1,4b2、並びにクランク軸4a1,4b2に対して偏心したクランクピン4a2,4b1を有するクランク部4と、クランクピン4a2,4b1とハブ30とを連結するアッパーアーム51と、クランクピン4a2,4b1とアッパーアーム51の間に設けられるメタルブッシュ12,13及びゴムブッシュ14と、を備えるので、小型でありながら連結部分の回転角度が大きく乗り心地の良いキャンバ角調整装置を提供することが可能となる。
【0092】
また、メタルブッシュ12,13は、ゴムブッシュ14の径方向内側に配置されるので、最も摺動の激しい回転移動する部材と当接する部分にメタルブッシュ12,13を配置することで、滑り運動による摩耗を低減し、クランクピン部4a2及びクランクピン接合部4b1、並びにメタルブッシュ12,13の寿命を延ばすことが可能となる。また、メタルブッシュ12,13の外周にゴムブッシュ14を配置することで、路面から車輪を通してアッパーアーム51にかかる衝撃力をゴムブッシュ14が吸収し低減することで、メタルブッシュに加わる外力を低減し、メタルブッシュ12,13の寿命を延ばすことが可能となる。
【0093】
また、メタルブッシュ12,13は、クランクピン4a2,4b1の駆動部材2側に配置される第1のメタルブッシュ12と、クランクピン4a2,4b1の駆動部材2とは反対側で第1のメタルブッシ12ュに対してクランク部4の軸方向において空間をあけて配置される第2のメタルブッシュ13と、を有するので、摩擦による熱の発生を低減し、クランクピン部4a2及びクランクピン接合部4b1、第1のメタルブッシュ12、第2のメタルブッシュ13、並びにゴムブッシュ14の劣化を低減し、寿命を延ばすことが可能となる。
【0094】
また、クランク部4とアッパーアーム51に当接し、メタルブッシュ12,13及びゴムブッシュ14を覆うカバー15,16を有するので、水や塵等をメタルブッシュ12,13及びゴムブッシュ14側に浸入させないようし、金属からなるメタルブッシュ12,13の防水及び防塵対策を確保し、錆を低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0095】
1…キャンバ角調整ユニット(キャンバ角調整装置)、2…駆動部材(駆動部)、2a…モータ、2b…出力軸(駆動軸部)、3…減速部(駆動部、駆動軸部)、4…クランク部、4a1…第1クランク軸部(クランク軸)、4a2…クランクピン部(クランクピン)、4b1…クランクピン接合部(クランクピン)、4b2…第2クランク軸部(クランク軸)、5…第1のクランク支持部材、6…第1のクランク支持ブッシュ、7…第1のシール、8…第2のクランク支持部材、9…第2のクランク支持ブッシュ、10…第2のシール、11…角度センサ(クランク角度取得部材)、12…第1のメタルブッシュ(メタルブッシュ)、13…第2のメタルブッシュ(メタルブッシュ)、14…ゴムブッシュ、15…第1のカバー部材(カバー部材)、16…第2のカバー部材(カバー部材)、17…ユニット支持ブラケット(支持ブラケット)、20…車体、21…第1サスペンションメンバ、22…第2サスペンションメンバ、23…ユニット支持メンバ、30…ハブ、31…ハブ部材、32…ディスクブレーキ、33…ハブ支持部材(回動部材)、40…車輪、41…ホイール、42…タイヤ、50…懸架装置、51…アッパーアーム(連結部材)、52…第1ロアアーム、53…スプリング、54…ショックアブソーバ、55…トレーリングアーム、56…第2ロアアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と車輪を支持するハブとを連結し、前記車輪のキャンバ角を調整するキャンバ角調整装置において、
前記車体に設置され駆動力を発生するモータ及び前記モータの発生した駆動力を出力する出力軸を有する駆動部材と、
前記出力軸から出力される駆動力が伝達されるクランク軸及び前記クランク軸に対して偏心したクランクピンを有するクランク部と、
前記クランクピンと前記ハブとを連結する連結部材と、
前記クランクピンと前記連結部材の間に設けられるメタルブッシュ及びゴムブッシュと、
を備えることを特徴とするキャンバ角調整装置。
【請求項2】
前記メタルブッシュは、前記ゴムブッシュの径方向内側に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載のキャンバ角調整装置。
【請求項3】
前記メタルブッシュは、
前記クランクピンの前記駆動部材側に配置される第1のメタルブッシュと、
前記クランクピンの前記駆動部材とは反対側で前記第1のメタルブッシュに対して前記クランクピンの軸方向において空間をあけて配置される第2のメタルブッシュと、
を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキャンバ角調整装置。
【請求項4】
前記クランク部と前記連結部材に当接し、前記メタルブッシュ及び前記ゴムブッシュを覆うカバー部材を有する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のキャンバ角調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−116250(P2012−116250A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265991(P2010−265991)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】