キー入力装置および電子機器
【課題】 各キーの間に生じる無駄なスペースをなくしキーボードの小型化に寄与するキー入力装置およびそのキー入力装置を搭載した電子機器を提供する。
【解決手段】 キートップ(19)の下に文字プレート(21)を配置し、その文字プレート上のキー表記を前記キートップから透過視認できるように構成したキー入力装置において、前記文字プレートを上層文字プレート(26)と下層文字プレート(27)の2枚で構成すること、それら2枚の文字プレートを互いに面方向にスライド可能に組み合わせること、および、そのスライドに伴って、上層文字プレートのキー表記部分だけが前記キートップから透けて見える第一のキー表示状態と、下層文字プレートのキー表記部分だけが前記キートップから透けて見える第二のキー表示状態とを択一的に選択できるようにした。
【解決手段】 キートップ(19)の下に文字プレート(21)を配置し、その文字プレート上のキー表記を前記キートップから透過視認できるように構成したキー入力装置において、前記文字プレートを上層文字プレート(26)と下層文字プレート(27)の2枚で構成すること、それら2枚の文字プレートを互いに面方向にスライド可能に組み合わせること、および、そのスライドに伴って、上層文字プレートのキー表記部分だけが前記キートップから透けて見える第一のキー表示状態と、下層文字プレートのキー表記部分だけが前記キートップから透けて見える第二のキー表示状態とを択一的に選択できるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キー入力装置および電子機器に関し、詳細には、一つのキーに二つの機能を割り当ててその二つの機能を択一的に選択できるようにしたキー入力装置およびそのキー入力装置を搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ応用機器と人間とのインターフェース装置の代表は「キーボード」である。たとえば、身近な例をあげると、テレビのリモコンに設けられているチャンネル切り替えボタンや、携帯電話機のテンキーなどもキーボードの類である。
【0003】
一方、テレビや携帯電話機等の多機能化は著しく、それに伴い、「キーボード」のキー数が増える傾向にあるが、リモコンや携帯電話機の筐体サイズに制限があること、また、普段あまり使われない機能があることなどを理由に、一つのキーの重複利用、つまり、一つのキーに二つの機能を割り当てるようにしたキー入力装置が多用されている。
【0004】
図12は、従来のキー入力装置の概念図である。これは、たとえば、下記の特許文献1に記載されている技術の要点を示すものである。図において、不透明な薄板素材からなるマスクシート1には適当数(図では便宜的に3×3=9個)の矩形窓2が開けられており、このマスクシート1の裏面側に、図面に向かって上下にスライド可能な印字パネル3が併設されている。
【0005】
印字パネル3には二つの文字群が印字されている。図においては、たとえば、第一の文字群として“1”〜“9”の数字、第二の文字群として“A”〜“I”のアルファベットが印字されている。ここで、各々の文字群の行間距離をXとすると、第一の文字群の第一行(“1”〜“3”)、第二行(“4”〜“6”)および第三行(“7”〜“9”)は距離Xを隔てて等間隔に並び、同様に第二の文字群の第一行(“A”〜“C”)、第二行(“D”〜“F”)および第三行(“G”〜“I”)も距離Xを隔てて等間隔に並んでいる。
【0006】
他方、矩形窓2の上下間隔も上記の行間距離Xと同じ値に設定されている。そして、このように矩形窓2の上下間隔と第一および第二文字群の行間距離とを等しくすることにより、
(1)矩形窓2の各々から第一の文字群の各文字(“1”、“2”、“3”・・・・)が見えているときには、第二の文字群の各文字(“A”、“B”、“C”・・・・)がマスクシート1の裏に隠れて見えない(図12(a)の状態)、
(2)その逆に、矩形窓2の各々から第二の文字群の各文字(“A”、“B”、“C”・・・・)が見えているときには、第一の文字群の各文字(“1”、“2”、“3”・・・・)がマスクシート1の裏に隠れて見えない(図12(b)の状態)、
ようにすることができ、要するに、一つのキーの重複利用(例:一つのキーを“1”キーと“A”キーで択一利用すること)を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−71853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術(図12に示すもの)の欠点は、各キーの間に無駄なスペースが生まれることにある。すなわち、図12において、横方向3個、縦方向3個にマトリクス配列された合計9個の矩形窓2は、不図示のキートップとの組み合わせにより、それぞれキーとして機能するが、矩形窓2の上下間隔は距離Xだけ隔てて離されており、この距離Xは、不必要なキー表記(第一および第二文字群のいずれか一方)を隠しておくための必須の要件であるから、当該距離(X)に相当する無駄なスペースが各キーの間に必然的に生じてしまい、その結果、キーボードの小型化を阻害するという根本的な問題点を抱えている。この問題点は、当該キーボードを実装する電子機器、たとえば、リモコンや携帯電話機等を小さくできないことを意味し、今日の社会的要求に反するから、ぜひとも解決しなければならない技術課題である。
【0009】
そこで、本発明は、各キーの間に生じる無駄なスペースをなくしキーボードの小型化に寄与するキー入力装置およびそのキー入力装置を搭載した電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、キートップの下に文字プレートを配置し、その文字プレート上のキー表記を前記キートップから透過視認できるように構成したキー入力装置において、前記文字プレートを上層文字プレートと下層文字プレートの2枚で構成すること、それら2枚の文字プレートを互いに面方向にスライド可能に組み合わせること、および、そのスライドに伴って、上層文字プレートのキー表記部分だけが前記キートップから透けて見える第一のキー表示状態と、下層文字プレートのキー表記部分だけが前記キートップから透けて見える第二のキー表示状態とを択一的に選択できるようにしたことを特徴とするキー入力装置である。
請求項2記載の発明は、前記第一のキー表示状態は、前記下層文字プレートのキー表記部分が前記上層文字プレートのキー表記部分の裏に隠れている状態であり、前記第二のキー表示状態は、前記上層文字プレートのキー表記部分が前記下層文字プレートのキー表記部分の裏に隠れている状態であることを特徴とする請求項1に記載のキー入力装置である。
請求項3記載の発明は、前記第一のキー表示状態にあるとき、前記下層文字プレートのキー表記部分と前記上層文字プレートのキー表記部分とが所定量オーバラップしていることを特徴とする請求項2に記載のキー入力装置である。
請求項4記載の発明は、前記上層文字プレートまたは下層文字プレートもしくは上層および下層文字プレートは、そのキー表記部分ごとのパーツからなり、かつ、各パーツのキー表記部分を前記所定量だけ長くしたことを特徴とする請求項3に記載のキー入力装置である。
請求項5記載の発明は、前記上層文字プレートまたは下層文字プレートもしくは上層および下層文字プレートは、2枚のプレートを組み合わせたものであり、かつ、各プレートに形成したキー表記部分を前記所定量だけ長くしたことを特徴とする請求項3に記載のキー入力装置である。
請求項6記載の発明は、前記上層文字プレートまたは下層文字プレートもしくは上層および下層文字プレートは、1枚のプレートを折り曲げ加工して作られたものであり、かつ、そのプレートに形成したキー表記部分を前記所定量だけ長くするとともに、そのキー表記部分以外を折り曲げ加工したことを特徴とする請求項3に記載のキー入力装置である。
請求項7記載の発明は、請求項1〜6いずれかに記載のキー入力装置を搭載したことを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各キーの間に生じる無駄なスペースをなくしキーボードの小型化に寄与するキー入力装置およびそのキー入力装置を搭載した電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】携帯電話機の外観図である。
【図2】本実施形態におけるキーの重複利用を示す図である。
【図3】操作部13の内部構造を示す図である。
【図4】文字プレート組み立て体21の平面図である。
【図5】文字プレート組み立て体21の側面図である。
【図6】実施形態の改良点を示す図である。
【図7】“かじり”対策を講じた改良例を示す図である。
【図8】“かじり”対策を講じた文字プレートの第1の製作例を示す図である。
【図9】“かじり”対策を講じた文字プレートの第2の製作例を示す図である。
【図10】“かじり”対策を講じた文字プレートの第3の製作例を示す図である。
【図11】“かじり”対策を講じた文字プレートの第4の製作例を示す図である。
【図12】従来のキー入力装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、携帯電話機への適用を例にして、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、携帯電話機の外観図である。図示の携帯電話機10は、たとえば、液晶パネル等の表示部11を有する上蓋12と、複数のキーからなる操作部13を有する本体部14とをヒンジ機構15で連結して開閉可能にしたもの(いわゆる折りたたみ式の携帯電話機)であるが、これは一例に過ぎない。
【0015】
この携帯電話機10を使用する際には、同図の正面図(a)や側面図(b)に示すように上蓋12を開き、操作部13の所望キーを選択して、たとえば、電話発信や着信などの操作を行うが、本実施形態における操作部13の各キーは、冒頭で説明した「重複利用」が可能なキー、すなわち、一つのキーに二つの機能を割り当ててその二つの機能を択一的に選択することができる仕組みになっており、以下でその仕組みの詳細を説明する。なお、図では、操作部13のキーレイアウトを縦3×横3としているが、これは一例に過ぎない。
【0016】
まず、本体部14の側面(図では特に限定しないが右側面下部付近)に、キー表示切替用の小さなノブ16が設けられている。このノブ16は、本体部14に形成された矩形穴17から若干頭を突き出しており、且つ、その矩形穴17の長手方向に沿って手動スライド可能になっている。矩形穴17の長手方向は、本体部14の側面の図面に向かって上下方向になっており、したがって、ノブ16は、図面に向かって上下方向に手動スライド可能になっている。
【0017】
図2は、本実施形態におけるキーの重複利用を示す図であり、(a)は第一のキー表示状態、(b)は第二のキー表示状態を示している。これらふたつのキー表示状態はノブ16のスライド操作によって択一的に選択可能になっている。具体的には、(a)に示すように、ノブ16が図面の下側に位置しているときには第一のキー表示状態となり、(b)に示すように、ノブ16が図面の上側に位置しているときには第二のキー表示状態となる。
【0018】
今、説明の都合上、第一のキー表示状態における操作部13の各キーの表示を“1”、“2”、“3”、“4”・・・・とし、第二のキー表示状態における操作部13の各キーの表示を“A”、“B”、“C”、“D”・・・・とすると、ノブ16が図面の下側に位置しているとき、操作部13の各キーは“1”、“2”、“3”、“4”・・・・の数字入力キーとして機能し、ノブ16が図面の上側に位置しているとき、操作部13の各キーは“A”、“B”、“C”、“D”・・・・のアルファベット入力キーとして機能する。
【0019】
図3は、操作部13の内部構造を示す図であり、図1のX−X矢視断面に相当する図である。この図において、操作部13は、本体部14の上面に形成されたn個(本実施形態では一例としてn=3×3とする)の穴18から各々頭を若干突き出した透明または半透明素材からなるn個のキートップ19を有するキープレート20と、このキープレート20の下面に併設された文字プレート組み立て体21と、この文字プレート組み立て体21の下面に併設された弾性シート22とを含んで構成されており、キープレート20の任意のキートップ19を指先等で押し下げ操作すると、その押し下げ力がキープレート20から文字プレート組み立て体21および弾性シート22へと伝えられ、この弾性シート22の下部に形成された突起23で、電子基板24の対応するスイッチ25が押されてオンオフするようになっている。
【0020】
文字プレート組み立て体21は、2枚の不透明かつフレキシブルなプレートで構成されている。以下、図面の上側に位置するものを上層文字プレート26(ハッチング付図形)、下側に位置するものを下層文字プレート27(黒塗りつぶし図形)ということにする。これら2枚のプレート(上層文字プレート26および下層文字プレート27)の詳細は後述するが、その特徴的事項を端的に表現すれば、第一に、上層文字プレート26と下層文字プレート27とを互いに面方向にスライド可能に組み合わせている点、第二に、そのスライドに伴って、上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)だけがキートップ19から透けて見える「第一のキー表示状態」(図2(a)に相当)と、下層文字プレート27のキー表記部分(同)だけがキートップ19から透けて見える「第二のキー表示状態」(図2(b)に相当)とを択一的に選択できるようにした点にある。
【0021】
ここで、図3の状態は「第二のキー表示状態」を示している。これは、上層文字プレート26のキー表記部分が下層文字プレート27のキー表記部分の下に潜り込んでおり、この状態では、下層文字プレート27のキー表記部分だけがキートップ19から透けて見える(上層文字プレート26のキー表記部分が見えない)からである。
【0022】
図4は、文字プレート組み立て体21の平面図である。この図において、(a)は上層文字プレート26を、(b)は下層文字プレート27を示し、また、(c)は第一のキー表示状態を、(d)は第二のキー表示状態を示している。
【0023】
まず、(a)に示すように、上層文字プレート26は、不透明なフレキシブル素材からなる薄厚プレートに任意のキー表示情報(ここでは“1”〜“9”の数字とするがこれは一例に過ぎない)を印字またはシール貼着等したものであり、かつ、その文字行下部と行両側端部に沿って連続するスリット28を打ち抜き加工等によって形成している点に構成上の特徴がある。なお、図示の例では、9個のキー表示情報(“1”〜“9”)を3個1組にし、各組を一行に並べて合計3行のキーレイアウトにしているが、これは一例に過ぎない。9個のキー表示情報の全部を1行に並べてもよく、あるいは、2行にしたり、3行以上の多行にしたりしてもよい。以下、説明の便宜上、3行のキーレイアウトで説明する。
【0024】
次に、(b)に示すように、下層文字プレート27も、不透明なフレキシブル素材からなる薄厚プレートに任意のキー表示情報(ここでは“A”〜“I”のアルファベットとするがこれは一例に過ぎない)を印字またはシール貼着等したものであり、かつ、その文字行上部と行両側端部に沿って連続するスリット29を打ち抜き加工等によって形成している点に構成上の特徴がある。
【0025】
ここで、上層文字プレート26のスリット28と下層文字プレート27のスリット29は、いずれもカタカナの“コ”の字に似た形をしているが、上層文字プレート26のスリット28が行方向に連続する直線状かつその両端部で図面上方に伸びる形状をなしているのに対して、下層文字プレート27のスリット29がその両端部で図面下方に伸びる形状をなしている点で相違する。つまり、上層文字プレート26のスリット28は、カタカナの“コ”の字を90度時計回り方向に回転させた形になっているが、下層文字プレート27のスリット29は、カタカナの“コ”の字を90度反時計回り方向に回転させた形になっている点で相違している。
【0026】
上層文字プレート26のスリット28の直線状部分の長さと、下層文字プレート27のスリット29の直線状部分の長さとは略一致しており、これにより、(c)や(d)に示すように、上層文字プレート26のスリット28に、下層文字プレート27のキー表記部分(“A”〜“I”の表記部分)を差し込んで突き出させることができるようになっている。
【0027】
すなわち、(c)においては、上層文字プレート26のスリット28から、下層文字プレート27のキー表記部分を“少しだけ”突き出しているが、この微小突き出し状態では、上層文字プレート26のキー表記部分(“1”〜“9”の表記部分)が見えているのに対して、下層文字プレート27のキー表記部分(“A”〜“I”の表記部分)が上層文字プレート26の下に隠れて見えていないので、前記の「第一のキー表示状態」、つまり、上層文字プレート26のキー表記部分だけがキートップ19から透けて見えるキー表示状態となる。
【0028】
一方、(d)においては、上層文字プレート26のスリット28から、下層文字プレート27のキー表記部分を“最大量”突き出しているので、この最大突き出し状態では、上層文字プレート26のキー表記部分が下層文字プレート27のキー表記部分の裏に隠れて見えなくなってその代わりに、下層文字プレート27のキー表記部分(“A”〜“I”の表記部分)が見えるようになるから、前記の「第二のキー表示状態」、つまり、下層文字プレート27のキー表記部分だけがキートップ19から透けて見えるキー表示状態となる。
【0029】
これらの「第一のキー表示状態」と「第二のキー表示状態」の択一的選択は、上層文字プレート26と下層文字プレート27の相対的な平面位置の移動操作によって行うことができる。たとえば、上層文字プレート26の位置を固定したうえ、下層文字プレート27の平面位置を図面の上方向に移動させれば、(d)の状態(第二のキー表示状態)となり、その逆に、下層文字プレート27の平面位置を図面の下方向に移動させれば、(c)の状態(第一のキー表示状態)となる。
【0030】
このような“位置移動操作”のための仕組みは様々考えられるが、たとえば、図1のノブ16の動きに合わせて、下層文字プレート27の平面位置を移動させるような構成にしてもよく、あるいは、他の仕組み(たとえば、上蓋12の開閉に連動する等)を採用してもよい。要は、上層文字プレート26と下層文字プレート27の相対的な平面位置移動の操作を行うことができるようになっていればよい。
【0031】
図5は、文字プレート組み立て体21の側面図であり、(a)は第一のキー表示状態を、(b)は第二のキー表示状態を示している。この図において、(a)の第一のキー表示状態では、上層文字プレート26の平面位置に対して下層文字プレート27の平面位置が図面の右方にずれているので、この状態では、上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)のほとんどの部分が露出することとなり、結局、図面上方に位置するキートップ19(図3参照)を透して、上層文字プレート26のキー表記部分だけが見えることとなる。
【0032】
一方、(b)の第二のキー表示状態では、上層文字プレート26の平面位置と下層文字プレート27の平面位置とがほぼ同じになっているので、この状態では、上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)が、下層文字プレート27のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の下に隠れることとなり、結局、図面上方に位置するキートップ19(図3参照)を透して、下層文字プレート27のキー表記部分だけが見えることとなる。
【0033】
以上、詳述したように、本実施形態においては、第一に、上層文字プレート26と下層文字プレート27とを互いに面方向にスライド可能に組み合わせたこと、第二に、そのスライドに伴って、上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)だけがキートップ19から透けて見える「第一のキー表示状態」(図2(a)に相当)と、下層文字プレート27のキー表記部分(同)だけがキートップ19から透けて見える「第二のキー表示状態」(図2(b)に相当)とを択一的に選択できるようにしたことを構成上の特徴としたので、以下の特有の効果を得ることができる。
【0034】
従来技術に比べてキー表示の行間距離を狭くすることができる。本実施形態におけるキー表示は、上層文字プレート26の“1”、“2”、“3”、“4”・・・・と、下層文字プレート27の“A”、“B”、“C”、“D”・・・・であり、これら2種類のキー表示を択一的に選択表示することができる。ここで、上層文字プレート26の“1”、“2”、“3”、“4”・・・・が選択されているとき、下層文字プレート27のキー表記部分(“A”、“B”、“C”、“D”・・・・)は、上層文字プレート26のキー表記部分(“1”、“2”、“3”、“4”・・・・)の裏に隠れて見えないようになっており、同様に、下層文字プレート27の “A”、“B”、“C”、“D”・・・・が選択されているとき、上層文字プレート26のキー表記部分(“1”、“2”、“3”、“4”・・・・)は、下層文字プレート27のキー表記部分(“A”、“B”、“C”、“D”・・・・)の裏に隠れて見えないようになっている。
【0035】
つまり、上層文字プレート26と下層文字プレート27の「一方のキー表記部分の裏に他方のキー表記部分を隠す」仕組みにしているため、従来技術のように、キー表記を隠すための特別な領域(図12の符号X参照)を確保する必要がない。したがって、それだけキー表示の行間距離を狭くすることができるという特有の効果を奏することができる。そして、この効果によって、キーボードの小型化の阻害要因を排除することができるようになり、結局、当該キーボードを実装する電子機器、たとえば、リモコンや携帯電話機等を極限まで小さくできるという今日の社会的要求に応えることができる有益な技術を提供することができるのである。
【0036】
以上、本実施形態の仕組みを詳しく説明したが、本件発明の技術思想はこれに限定されるものではなく、その思想の範囲内においてさまざまな変形例や発展例を包含することは当然である。たとえば、以下のように改良してもよい。
【0037】
図6は、実施形態の改良点を示す図であり、(a)は上記の実施形態の要部拡大図、(b)はその改良すべき点を示す図である。まず、(a)に示すように、上記の実施形態では、上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の図面左右方向の長さと同プレート26のスリット28の長さがほぼ同じになっており、同様に、下層文字プレート27のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の図面左右方向の長さと同プレート27のスリット29の長さもほぼ同じになっている。このため、(b)に示すように、上層文字プレート26と下層文字プレート27の相対的な位置関係によっては、両プレート26、27のキー表記部分の間に不本意な“かじり”が生じてしまう可能性がある。
【0038】
ここで、“かじり”とは、両プレート26、27のキー表記部分の先端同士がぶつかり合うことをいう。このような“かじり”が生じてしまった場合、第一のキー表示状態(図5(a)参照)から第二のキー表示状態(図5(b)参照)への切替が不可能になる。
【0039】
あるいは、“かじり”ではなく、上層文字プレート26のキー表記部分の下に、下層文字プレート27のキー表記部分がもぐりこんでしまうことも考えられる。このような場合も、やはり、第一のキー表示状態(図5(a)参照)から第二のキー表示状態(図5(b)参照)への切替が不可能になるので、このような不本意な「もぐり込み現象」も“かじり”に含めることにする。
【0040】
図7は、“かじり”対策を講じた改良例を示す図である。この改良例のポイントは、(a)に示すように、上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の図面左右方向の長さを、同プレート26のスリット28の長さよりも若干量だけ長くした点にあり、同様に、下層文字プレート27のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の図面左右方向の長さを、同プレート27のスリット29の長さよりも若干量だけ長くした点にある。以下、その若干量を便宜的にYとする。
【0041】
このようにすると、(b)に示すように、上層文字プレート26の水平位置を固定して、下層文字プレート27の水平位置を図面の右方にずらしていった場合に、上層文字プレート26のキー表記部分と下層文字プレート27のキー表記部分のオーバーラップ箇所に、上記の若干量Yに相当する余裕が生じるから、“かじり”はもちろん、上層文字プレート26のキー表記部分の下に下層文字プレート27のキー表記部分がもぐりこんでしまう恐れもなくなる。このため、図6の不都合、すなわち、第一のキー表示状態(図5(a)参照)から第二のキー表示状態(図5(b)参照)への切替が不可能になるという問題の解消を図ることができ、キー表示の切替信頼性向上を図ることができる。
【0042】
ここで、上記のかじり対策は、「上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の図面左右方向の長さを、同プレート26のスリット28の長さよりも若干量(Y)だけ長くするとともに、下層文字プレート27のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の図面左右方向の長さを、同プレート27のスリット29の長さよりも若干量(Y)だけ長くする」というものであるが、実施形態の上層および下層文字プレート26、27は、前記の図4(a)(b)に示すように、単純に、1枚のフレキシブル素材にスリット28、29を入れ、かつ、そのスリット28、29に包囲された部分をキー表記部分としたものであるため、そのままでは上記の対策に適さないから、以下に、“かじり”対策を講じた文字プレートのいくつかの好ましい製作例を提示する。
【0043】
図8は、“かじり”対策を講じた文字プレートの第1の製作例を示す図である。この第1の製作例では、まず、(a)に示すような文字プレートパーツ30をキー表記の行数分だけ用意する。この文字プレートパーツ30は、横長矩形状の不透明なフレキシブル素材の中ほどに任意の1行分のキー表記(図では“1”、“2”、“3”)を印刷等したキー表記部30aと、そのキー表記部30aの図面下側部分を若干量(たとえば、上記のY)だけ図面下方向に延長して形成されたオーバラップ部30bと、キー表記部30aの両側端部に形成されたスリット部30cと、そのスリット部30cの外側に形成された張り合わせ部30dとを有している。
【0044】
このような形状の文字プレートパーツ30をキー表記の行数分だけ用意すると、次に、(b)に示すように、各行の文字プレートパーツ30の張り合わせ部30dを重ね合わせ、各々の張り合わせ部30dを粘着テープ31等で接合して“かじり”対策を講じた上層文字プレート26を製作する。なお、図示は略すが、下層文字プレート27についても同様な手順で製作することが望ましい。
【0045】
この第1の製作例のようにすれば、上層文字プレート26のキー表記部分の長さ(イ)を、同プレート26のスリット28の長さ(ロ)よりも若干量(Y)だけ長くすることができ、同様に、図示を略すが、下層文字プレート27のキー表記部分の長さを、同プレート27のスリット29の長さよりも若干量(Y)だけ長くすることができるから、上記の“かじり”対策を講じた上層および下層文字プレート26、27とすることができる。
【0046】
図9は、“かじり”対策を講じた文字プレートの第2の製作例を示す図であり、この第2の製作例における上層文字プレート26は、2枚のプレート、すなわち、(a)に示す第1の上層文字プレート261と、(b)に示す第2の上層文字プレート262とを組み合わせて(c)に示すように構成したものである。
【0047】
第1の上層文字プレート261は、(a)に示すように、不透明なフレキシブル素材の上に印刷等によって形成された1行ないしは複数行(図では2行)のキー表記部32、33と、1行目のキー表記部32の周囲に形成された90度右回転コの字状のスリット34と、2行目のキー表記部33の周囲に形成された90度右回転コの字状のスリット35とを有しており、また、第2の上層文字プレート262は、(b)に示すように、不透明なフレキシブル素材の上に印刷等によって形成された1行ないしは複数行(図では2行)のキー表記部36、37と、1行目のキー表記部36の周囲に形成された90度右回転コの字状のスリット38と、2行目のキー表記部37の両側に形成された二つのスリット39、40と、プレート上部に形成された90度右回転コの字状のスリット41とを有している。
【0048】
かかる第2の製作例における上層文字プレート26は、これら第1の上層文字プレート261と第2の上層文字プレート262とを下記の手順に従って組み合わせて構成される。
<手順1>
第1の上層文字プレート261の下面に沿わせて第2の上層文字プレート262を置く。
<手順2>
第1の上層文字プレート261の1行目のキー表記部32を第2の上層文字プレート262の上から1番目のスリット41に差し込む。
第1の上層文字プレート261の2行目のキー表記部33を第2の上層文字プレート262の上から2番目のスリット38に差し込む。
【0049】
なお、図示は略すが、下層文字プレート27についても同様な構成と組み合わせで製作することが望ましい。
【0050】
このような手順で組み合わされた上層文字プレート26は、(c)に示すように、図面の上から下に向かって第1の上層文字プレート261の1行目のキー表記部32、第2の上層文字プレート262の1行目のキー表記部36、第1の上層文字プレート261の2行目のキー表記部33、第2の上層文字プレート262の2行目のキー表記部37が順に並ぶこととなり、前記の実施形態における上層文字プレート26(図3(a)参照)と類似のキー配列にすることができる。
【0051】
加えて、そのように配列された各々のキー表記部32、36、33、37は、その下端部分が交互にオーバラップ(図中のハ、ニ、ホ参照)しているから、第1の製作例と同様に、上記の“かじり”対策を講じた上層および下層文字プレート26、27とすることができる。
【0052】
図10は、“かじり”対策を講じた文字プレートの第3の製作例を示す図であり、この第3の製作例における上層文字プレート26も前記の第2の製作例と同様に、2枚のプレート、すなわち、(a)に示す第1の上層文字プレート263と、(b)に示す第2の上層文字プレート264とを組み合わせて(c)に示すように構成したものである。
【0053】
第1の上層文字プレート263は、(a)に示すように、不透明なフレキシブル素材の上に印刷等によって形成された1行ないしは複数行(図では2行)のキー表記部42、43と、1行目のキー表記部42の両端部に形成されたスリット44、45と、2行目のキー表記部43の両端部に形成されたスリット46、47と、1行目のキー表記部42の下方に形成されるとともにその両端部のスリット44、45に連続する横長矩形状の開口部48と、2行目のキー表記部43の下方に形成されるとともにその両端部のスリット46、47に連続する横長矩形状の開口部49とを有している。
【0054】
また、第2の上層文字プレート264は、(b)に示すように、不透明なフレキシブル素材の上に印刷等によって形成された1行ないしは複数行(図では2行)のキー表記部50、51と、4つのスリット52〜55とを有している。4つのスリット52〜55は、いずれも、カタカナの“コ”の字を時計回り方向に90度回転させた形に類似しているとともに、図面の上から1番目と3番目のスリット52、54の図面上下方向の長さ(ヘ)は、第1の上層文字プレート263のキー表記部42、43の同方向の長さ(ト)よりも若干量だけ短くなっており、さらに、図面の上から2番目と4番目のスリット53、55の同長さ(チ)は、第1の上層文字プレート263のキー表記部42、43の同長さ(ト)と同等となっている。ここで、若干量は前記のYであるものとする。
【0055】
かかる第3の製作例における上層文字プレート26は、これら第1の上層文字プレート263と第2の上層文字プレート264とを下記の手順に従って組み合わせて構成される。
<手順1>
第1の上層文字プレート263の下面に沿わせて第2の上層文字プレート264を置く。
<手順2>
第1の上層文字プレート263の1行目のキー表記部42を第2の上層文字プレート264の上から1番目のスリット52に差し込む。
第1の上層文字プレート263の2行目のキー表記部43を第2の上層文字プレート264の上から3番目のスリット54に差し込む。
【0056】
なお、図示は略すが、下層文字プレート27についても同様な構成と組み合わせで製作することが望ましい。
【0057】
このような手順で組み合わされた上層文字プレート26は、(c)に示すように、図面の上から下に向かって第1の上層文字プレート263の1行目のキー表記部42、第2の上層文字プレート264の1行目のキー表記部50、第1の上層文字プレート263の2行目のキー表記部43、第2の上層文字プレート264の2行目のキー表記部51が順に並ぶこととなり、前記の実施形態における上層文字プレート26(図3(a)参照)と類似のキー配列にすることができる。
【0058】
加えて、そのように配列された各々のキー表記部42、50、43、51は、その下端部分が所定量(Y)だけオーバラップしているから、第1の製作例や第2の製作例と同様に、上記の“かじり”対策を講じた上層および下層文字プレート26、27とすることができる。
【0059】
図11は、“かじり”対策を講じた文字プレートの第4の製作例を示す図である。この第4の製作例では、まず、(a)に示すように、不透明なフレキシブル素材の上に印刷等によって形成された1行ないしは複数行(図では3行)のキー表記部56〜58と、各々のキー表記部56〜58に沿って形成された三つのスリット59〜61とを形成し、かつ、各々のキー表記部56〜58ごとに一対の折り曲げ線62、63を入れる。
【0060】
次いで、(b)に示すように、折り曲げ線62、63に沿ってフレキシブル素材を折り曲げ変形させた後、折り曲げ部分(破線円で囲む部分)を接着して上層文字プレート26を製作する。なお、下層文字プレート27についても同様の方法で製作することが望ましい。
【0061】
ここで、重要な点は、上記の折り曲げ変形の際に、キー表記部56〜58を変形させないことにある。つまり、折り曲げ線62、63に沿って行われる折り曲げ変形は、キー表記部56〜58を除くプレートの両サイド部分(チ、リ)だけであり、キー表記部56〜58についてはなんらの変形加工も行われないことがポイントである。
【0062】
これにより、折り曲げ変形後の1行目のキー表記部56の下端部分が2行目のキー表記部57の裏に潜り込み、同様に、2行目のキー表記部57の下端部分が3行目のキー表記部58の裏に潜り込み、さらに、3行目のキー表記部58の下端部分がフレキシブル素材の残余部分(ヌ)の裏に潜り込むこととなり、それらの潜り込み量は、図中の矢印線(ル)で示すように相当量になるから、第1の製作例から第3の製作例と同様に、上記の“かじり”対策を講じた上層および下層文字プレート26、27とすることができる。
【0063】
なお、以上の説明では、テレビ等のリモコンや携帯電話機を例にしたが、これに限定されない。一つのキーの重複利用、つまり、一つのキーに二つの機能を割り当てるようにしたキー入力装置を搭載するあらゆる電子機器(たとえば、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書、ゲーム機・・・・等)に適用可能なことはいうまでもない。また、当然ながら、その電子機器も携帯型に限らず、据え置き型であってもかまわない。さらに、以上の説明では、「小型化」をキーワードにしたが、一つのキーの重複利用は「小型化」のためだけではなく、たとえば、誤操作防止のために採用されることもある(たとえば、特定の動作モードのときだけに所要のキー表示を行うなど)から、本件発明の適用範囲は「小型化」を意図した分野だけに限定されない。
【符号の説明】
【0064】
10 携帯電話機(電子機器)
19 キートップ
21 文字プレート組み立て体(文字プレート)
26 上層文字プレート
27 下層文字プレート
30 文字プレートパーツ(パーツ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、キー入力装置および電子機器に関し、詳細には、一つのキーに二つの機能を割り当ててその二つの機能を択一的に選択できるようにしたキー入力装置およびそのキー入力装置を搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ応用機器と人間とのインターフェース装置の代表は「キーボード」である。たとえば、身近な例をあげると、テレビのリモコンに設けられているチャンネル切り替えボタンや、携帯電話機のテンキーなどもキーボードの類である。
【0003】
一方、テレビや携帯電話機等の多機能化は著しく、それに伴い、「キーボード」のキー数が増える傾向にあるが、リモコンや携帯電話機の筐体サイズに制限があること、また、普段あまり使われない機能があることなどを理由に、一つのキーの重複利用、つまり、一つのキーに二つの機能を割り当てるようにしたキー入力装置が多用されている。
【0004】
図12は、従来のキー入力装置の概念図である。これは、たとえば、下記の特許文献1に記載されている技術の要点を示すものである。図において、不透明な薄板素材からなるマスクシート1には適当数(図では便宜的に3×3=9個)の矩形窓2が開けられており、このマスクシート1の裏面側に、図面に向かって上下にスライド可能な印字パネル3が併設されている。
【0005】
印字パネル3には二つの文字群が印字されている。図においては、たとえば、第一の文字群として“1”〜“9”の数字、第二の文字群として“A”〜“I”のアルファベットが印字されている。ここで、各々の文字群の行間距離をXとすると、第一の文字群の第一行(“1”〜“3”)、第二行(“4”〜“6”)および第三行(“7”〜“9”)は距離Xを隔てて等間隔に並び、同様に第二の文字群の第一行(“A”〜“C”)、第二行(“D”〜“F”)および第三行(“G”〜“I”)も距離Xを隔てて等間隔に並んでいる。
【0006】
他方、矩形窓2の上下間隔も上記の行間距離Xと同じ値に設定されている。そして、このように矩形窓2の上下間隔と第一および第二文字群の行間距離とを等しくすることにより、
(1)矩形窓2の各々から第一の文字群の各文字(“1”、“2”、“3”・・・・)が見えているときには、第二の文字群の各文字(“A”、“B”、“C”・・・・)がマスクシート1の裏に隠れて見えない(図12(a)の状態)、
(2)その逆に、矩形窓2の各々から第二の文字群の各文字(“A”、“B”、“C”・・・・)が見えているときには、第一の文字群の各文字(“1”、“2”、“3”・・・・)がマスクシート1の裏に隠れて見えない(図12(b)の状態)、
ようにすることができ、要するに、一つのキーの重複利用(例:一つのキーを“1”キーと“A”キーで択一利用すること)を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−71853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術(図12に示すもの)の欠点は、各キーの間に無駄なスペースが生まれることにある。すなわち、図12において、横方向3個、縦方向3個にマトリクス配列された合計9個の矩形窓2は、不図示のキートップとの組み合わせにより、それぞれキーとして機能するが、矩形窓2の上下間隔は距離Xだけ隔てて離されており、この距離Xは、不必要なキー表記(第一および第二文字群のいずれか一方)を隠しておくための必須の要件であるから、当該距離(X)に相当する無駄なスペースが各キーの間に必然的に生じてしまい、その結果、キーボードの小型化を阻害するという根本的な問題点を抱えている。この問題点は、当該キーボードを実装する電子機器、たとえば、リモコンや携帯電話機等を小さくできないことを意味し、今日の社会的要求に反するから、ぜひとも解決しなければならない技術課題である。
【0009】
そこで、本発明は、各キーの間に生じる無駄なスペースをなくしキーボードの小型化に寄与するキー入力装置およびそのキー入力装置を搭載した電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、キートップの下に文字プレートを配置し、その文字プレート上のキー表記を前記キートップから透過視認できるように構成したキー入力装置において、前記文字プレートを上層文字プレートと下層文字プレートの2枚で構成すること、それら2枚の文字プレートを互いに面方向にスライド可能に組み合わせること、および、そのスライドに伴って、上層文字プレートのキー表記部分だけが前記キートップから透けて見える第一のキー表示状態と、下層文字プレートのキー表記部分だけが前記キートップから透けて見える第二のキー表示状態とを択一的に選択できるようにしたことを特徴とするキー入力装置である。
請求項2記載の発明は、前記第一のキー表示状態は、前記下層文字プレートのキー表記部分が前記上層文字プレートのキー表記部分の裏に隠れている状態であり、前記第二のキー表示状態は、前記上層文字プレートのキー表記部分が前記下層文字プレートのキー表記部分の裏に隠れている状態であることを特徴とする請求項1に記載のキー入力装置である。
請求項3記載の発明は、前記第一のキー表示状態にあるとき、前記下層文字プレートのキー表記部分と前記上層文字プレートのキー表記部分とが所定量オーバラップしていることを特徴とする請求項2に記載のキー入力装置である。
請求項4記載の発明は、前記上層文字プレートまたは下層文字プレートもしくは上層および下層文字プレートは、そのキー表記部分ごとのパーツからなり、かつ、各パーツのキー表記部分を前記所定量だけ長くしたことを特徴とする請求項3に記載のキー入力装置である。
請求項5記載の発明は、前記上層文字プレートまたは下層文字プレートもしくは上層および下層文字プレートは、2枚のプレートを組み合わせたものであり、かつ、各プレートに形成したキー表記部分を前記所定量だけ長くしたことを特徴とする請求項3に記載のキー入力装置である。
請求項6記載の発明は、前記上層文字プレートまたは下層文字プレートもしくは上層および下層文字プレートは、1枚のプレートを折り曲げ加工して作られたものであり、かつ、そのプレートに形成したキー表記部分を前記所定量だけ長くするとともに、そのキー表記部分以外を折り曲げ加工したことを特徴とする請求項3に記載のキー入力装置である。
請求項7記載の発明は、請求項1〜6いずれかに記載のキー入力装置を搭載したことを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各キーの間に生じる無駄なスペースをなくしキーボードの小型化に寄与するキー入力装置およびそのキー入力装置を搭載した電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】携帯電話機の外観図である。
【図2】本実施形態におけるキーの重複利用を示す図である。
【図3】操作部13の内部構造を示す図である。
【図4】文字プレート組み立て体21の平面図である。
【図5】文字プレート組み立て体21の側面図である。
【図6】実施形態の改良点を示す図である。
【図7】“かじり”対策を講じた改良例を示す図である。
【図8】“かじり”対策を講じた文字プレートの第1の製作例を示す図である。
【図9】“かじり”対策を講じた文字プレートの第2の製作例を示す図である。
【図10】“かじり”対策を講じた文字プレートの第3の製作例を示す図である。
【図11】“かじり”対策を講じた文字プレートの第4の製作例を示す図である。
【図12】従来のキー入力装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、携帯電話機への適用を例にして、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、携帯電話機の外観図である。図示の携帯電話機10は、たとえば、液晶パネル等の表示部11を有する上蓋12と、複数のキーからなる操作部13を有する本体部14とをヒンジ機構15で連結して開閉可能にしたもの(いわゆる折りたたみ式の携帯電話機)であるが、これは一例に過ぎない。
【0015】
この携帯電話機10を使用する際には、同図の正面図(a)や側面図(b)に示すように上蓋12を開き、操作部13の所望キーを選択して、たとえば、電話発信や着信などの操作を行うが、本実施形態における操作部13の各キーは、冒頭で説明した「重複利用」が可能なキー、すなわち、一つのキーに二つの機能を割り当ててその二つの機能を択一的に選択することができる仕組みになっており、以下でその仕組みの詳細を説明する。なお、図では、操作部13のキーレイアウトを縦3×横3としているが、これは一例に過ぎない。
【0016】
まず、本体部14の側面(図では特に限定しないが右側面下部付近)に、キー表示切替用の小さなノブ16が設けられている。このノブ16は、本体部14に形成された矩形穴17から若干頭を突き出しており、且つ、その矩形穴17の長手方向に沿って手動スライド可能になっている。矩形穴17の長手方向は、本体部14の側面の図面に向かって上下方向になっており、したがって、ノブ16は、図面に向かって上下方向に手動スライド可能になっている。
【0017】
図2は、本実施形態におけるキーの重複利用を示す図であり、(a)は第一のキー表示状態、(b)は第二のキー表示状態を示している。これらふたつのキー表示状態はノブ16のスライド操作によって択一的に選択可能になっている。具体的には、(a)に示すように、ノブ16が図面の下側に位置しているときには第一のキー表示状態となり、(b)に示すように、ノブ16が図面の上側に位置しているときには第二のキー表示状態となる。
【0018】
今、説明の都合上、第一のキー表示状態における操作部13の各キーの表示を“1”、“2”、“3”、“4”・・・・とし、第二のキー表示状態における操作部13の各キーの表示を“A”、“B”、“C”、“D”・・・・とすると、ノブ16が図面の下側に位置しているとき、操作部13の各キーは“1”、“2”、“3”、“4”・・・・の数字入力キーとして機能し、ノブ16が図面の上側に位置しているとき、操作部13の各キーは“A”、“B”、“C”、“D”・・・・のアルファベット入力キーとして機能する。
【0019】
図3は、操作部13の内部構造を示す図であり、図1のX−X矢視断面に相当する図である。この図において、操作部13は、本体部14の上面に形成されたn個(本実施形態では一例としてn=3×3とする)の穴18から各々頭を若干突き出した透明または半透明素材からなるn個のキートップ19を有するキープレート20と、このキープレート20の下面に併設された文字プレート組み立て体21と、この文字プレート組み立て体21の下面に併設された弾性シート22とを含んで構成されており、キープレート20の任意のキートップ19を指先等で押し下げ操作すると、その押し下げ力がキープレート20から文字プレート組み立て体21および弾性シート22へと伝えられ、この弾性シート22の下部に形成された突起23で、電子基板24の対応するスイッチ25が押されてオンオフするようになっている。
【0020】
文字プレート組み立て体21は、2枚の不透明かつフレキシブルなプレートで構成されている。以下、図面の上側に位置するものを上層文字プレート26(ハッチング付図形)、下側に位置するものを下層文字プレート27(黒塗りつぶし図形)ということにする。これら2枚のプレート(上層文字プレート26および下層文字プレート27)の詳細は後述するが、その特徴的事項を端的に表現すれば、第一に、上層文字プレート26と下層文字プレート27とを互いに面方向にスライド可能に組み合わせている点、第二に、そのスライドに伴って、上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)だけがキートップ19から透けて見える「第一のキー表示状態」(図2(a)に相当)と、下層文字プレート27のキー表記部分(同)だけがキートップ19から透けて見える「第二のキー表示状態」(図2(b)に相当)とを択一的に選択できるようにした点にある。
【0021】
ここで、図3の状態は「第二のキー表示状態」を示している。これは、上層文字プレート26のキー表記部分が下層文字プレート27のキー表記部分の下に潜り込んでおり、この状態では、下層文字プレート27のキー表記部分だけがキートップ19から透けて見える(上層文字プレート26のキー表記部分が見えない)からである。
【0022】
図4は、文字プレート組み立て体21の平面図である。この図において、(a)は上層文字プレート26を、(b)は下層文字プレート27を示し、また、(c)は第一のキー表示状態を、(d)は第二のキー表示状態を示している。
【0023】
まず、(a)に示すように、上層文字プレート26は、不透明なフレキシブル素材からなる薄厚プレートに任意のキー表示情報(ここでは“1”〜“9”の数字とするがこれは一例に過ぎない)を印字またはシール貼着等したものであり、かつ、その文字行下部と行両側端部に沿って連続するスリット28を打ち抜き加工等によって形成している点に構成上の特徴がある。なお、図示の例では、9個のキー表示情報(“1”〜“9”)を3個1組にし、各組を一行に並べて合計3行のキーレイアウトにしているが、これは一例に過ぎない。9個のキー表示情報の全部を1行に並べてもよく、あるいは、2行にしたり、3行以上の多行にしたりしてもよい。以下、説明の便宜上、3行のキーレイアウトで説明する。
【0024】
次に、(b)に示すように、下層文字プレート27も、不透明なフレキシブル素材からなる薄厚プレートに任意のキー表示情報(ここでは“A”〜“I”のアルファベットとするがこれは一例に過ぎない)を印字またはシール貼着等したものであり、かつ、その文字行上部と行両側端部に沿って連続するスリット29を打ち抜き加工等によって形成している点に構成上の特徴がある。
【0025】
ここで、上層文字プレート26のスリット28と下層文字プレート27のスリット29は、いずれもカタカナの“コ”の字に似た形をしているが、上層文字プレート26のスリット28が行方向に連続する直線状かつその両端部で図面上方に伸びる形状をなしているのに対して、下層文字プレート27のスリット29がその両端部で図面下方に伸びる形状をなしている点で相違する。つまり、上層文字プレート26のスリット28は、カタカナの“コ”の字を90度時計回り方向に回転させた形になっているが、下層文字プレート27のスリット29は、カタカナの“コ”の字を90度反時計回り方向に回転させた形になっている点で相違している。
【0026】
上層文字プレート26のスリット28の直線状部分の長さと、下層文字プレート27のスリット29の直線状部分の長さとは略一致しており、これにより、(c)や(d)に示すように、上層文字プレート26のスリット28に、下層文字プレート27のキー表記部分(“A”〜“I”の表記部分)を差し込んで突き出させることができるようになっている。
【0027】
すなわち、(c)においては、上層文字プレート26のスリット28から、下層文字プレート27のキー表記部分を“少しだけ”突き出しているが、この微小突き出し状態では、上層文字プレート26のキー表記部分(“1”〜“9”の表記部分)が見えているのに対して、下層文字プレート27のキー表記部分(“A”〜“I”の表記部分)が上層文字プレート26の下に隠れて見えていないので、前記の「第一のキー表示状態」、つまり、上層文字プレート26のキー表記部分だけがキートップ19から透けて見えるキー表示状態となる。
【0028】
一方、(d)においては、上層文字プレート26のスリット28から、下層文字プレート27のキー表記部分を“最大量”突き出しているので、この最大突き出し状態では、上層文字プレート26のキー表記部分が下層文字プレート27のキー表記部分の裏に隠れて見えなくなってその代わりに、下層文字プレート27のキー表記部分(“A”〜“I”の表記部分)が見えるようになるから、前記の「第二のキー表示状態」、つまり、下層文字プレート27のキー表記部分だけがキートップ19から透けて見えるキー表示状態となる。
【0029】
これらの「第一のキー表示状態」と「第二のキー表示状態」の択一的選択は、上層文字プレート26と下層文字プレート27の相対的な平面位置の移動操作によって行うことができる。たとえば、上層文字プレート26の位置を固定したうえ、下層文字プレート27の平面位置を図面の上方向に移動させれば、(d)の状態(第二のキー表示状態)となり、その逆に、下層文字プレート27の平面位置を図面の下方向に移動させれば、(c)の状態(第一のキー表示状態)となる。
【0030】
このような“位置移動操作”のための仕組みは様々考えられるが、たとえば、図1のノブ16の動きに合わせて、下層文字プレート27の平面位置を移動させるような構成にしてもよく、あるいは、他の仕組み(たとえば、上蓋12の開閉に連動する等)を採用してもよい。要は、上層文字プレート26と下層文字プレート27の相対的な平面位置移動の操作を行うことができるようになっていればよい。
【0031】
図5は、文字プレート組み立て体21の側面図であり、(a)は第一のキー表示状態を、(b)は第二のキー表示状態を示している。この図において、(a)の第一のキー表示状態では、上層文字プレート26の平面位置に対して下層文字プレート27の平面位置が図面の右方にずれているので、この状態では、上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)のほとんどの部分が露出することとなり、結局、図面上方に位置するキートップ19(図3参照)を透して、上層文字プレート26のキー表記部分だけが見えることとなる。
【0032】
一方、(b)の第二のキー表示状態では、上層文字プレート26の平面位置と下層文字プレート27の平面位置とがほぼ同じになっているので、この状態では、上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)が、下層文字プレート27のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の下に隠れることとなり、結局、図面上方に位置するキートップ19(図3参照)を透して、下層文字プレート27のキー表記部分だけが見えることとなる。
【0033】
以上、詳述したように、本実施形態においては、第一に、上層文字プレート26と下層文字プレート27とを互いに面方向にスライド可能に組み合わせたこと、第二に、そのスライドに伴って、上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)だけがキートップ19から透けて見える「第一のキー表示状態」(図2(a)に相当)と、下層文字プレート27のキー表記部分(同)だけがキートップ19から透けて見える「第二のキー表示状態」(図2(b)に相当)とを択一的に選択できるようにしたことを構成上の特徴としたので、以下の特有の効果を得ることができる。
【0034】
従来技術に比べてキー表示の行間距離を狭くすることができる。本実施形態におけるキー表示は、上層文字プレート26の“1”、“2”、“3”、“4”・・・・と、下層文字プレート27の“A”、“B”、“C”、“D”・・・・であり、これら2種類のキー表示を択一的に選択表示することができる。ここで、上層文字プレート26の“1”、“2”、“3”、“4”・・・・が選択されているとき、下層文字プレート27のキー表記部分(“A”、“B”、“C”、“D”・・・・)は、上層文字プレート26のキー表記部分(“1”、“2”、“3”、“4”・・・・)の裏に隠れて見えないようになっており、同様に、下層文字プレート27の “A”、“B”、“C”、“D”・・・・が選択されているとき、上層文字プレート26のキー表記部分(“1”、“2”、“3”、“4”・・・・)は、下層文字プレート27のキー表記部分(“A”、“B”、“C”、“D”・・・・)の裏に隠れて見えないようになっている。
【0035】
つまり、上層文字プレート26と下層文字プレート27の「一方のキー表記部分の裏に他方のキー表記部分を隠す」仕組みにしているため、従来技術のように、キー表記を隠すための特別な領域(図12の符号X参照)を確保する必要がない。したがって、それだけキー表示の行間距離を狭くすることができるという特有の効果を奏することができる。そして、この効果によって、キーボードの小型化の阻害要因を排除することができるようになり、結局、当該キーボードを実装する電子機器、たとえば、リモコンや携帯電話機等を極限まで小さくできるという今日の社会的要求に応えることができる有益な技術を提供することができるのである。
【0036】
以上、本実施形態の仕組みを詳しく説明したが、本件発明の技術思想はこれに限定されるものではなく、その思想の範囲内においてさまざまな変形例や発展例を包含することは当然である。たとえば、以下のように改良してもよい。
【0037】
図6は、実施形態の改良点を示す図であり、(a)は上記の実施形態の要部拡大図、(b)はその改良すべき点を示す図である。まず、(a)に示すように、上記の実施形態では、上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の図面左右方向の長さと同プレート26のスリット28の長さがほぼ同じになっており、同様に、下層文字プレート27のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の図面左右方向の長さと同プレート27のスリット29の長さもほぼ同じになっている。このため、(b)に示すように、上層文字プレート26と下層文字プレート27の相対的な位置関係によっては、両プレート26、27のキー表記部分の間に不本意な“かじり”が生じてしまう可能性がある。
【0038】
ここで、“かじり”とは、両プレート26、27のキー表記部分の先端同士がぶつかり合うことをいう。このような“かじり”が生じてしまった場合、第一のキー表示状態(図5(a)参照)から第二のキー表示状態(図5(b)参照)への切替が不可能になる。
【0039】
あるいは、“かじり”ではなく、上層文字プレート26のキー表記部分の下に、下層文字プレート27のキー表記部分がもぐりこんでしまうことも考えられる。このような場合も、やはり、第一のキー表示状態(図5(a)参照)から第二のキー表示状態(図5(b)参照)への切替が不可能になるので、このような不本意な「もぐり込み現象」も“かじり”に含めることにする。
【0040】
図7は、“かじり”対策を講じた改良例を示す図である。この改良例のポイントは、(a)に示すように、上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の図面左右方向の長さを、同プレート26のスリット28の長さよりも若干量だけ長くした点にあり、同様に、下層文字プレート27のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の図面左右方向の長さを、同プレート27のスリット29の長さよりも若干量だけ長くした点にある。以下、その若干量を便宜的にYとする。
【0041】
このようにすると、(b)に示すように、上層文字プレート26の水平位置を固定して、下層文字プレート27の水平位置を図面の右方にずらしていった場合に、上層文字プレート26のキー表記部分と下層文字プレート27のキー表記部分のオーバーラップ箇所に、上記の若干量Yに相当する余裕が生じるから、“かじり”はもちろん、上層文字プレート26のキー表記部分の下に下層文字プレート27のキー表記部分がもぐりこんでしまう恐れもなくなる。このため、図6の不都合、すなわち、第一のキー表示状態(図5(a)参照)から第二のキー表示状態(図5(b)参照)への切替が不可能になるという問題の解消を図ることができ、キー表示の切替信頼性向上を図ることができる。
【0042】
ここで、上記のかじり対策は、「上層文字プレート26のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の図面左右方向の長さを、同プレート26のスリット28の長さよりも若干量(Y)だけ長くするとともに、下層文字プレート27のキー表記部分(図面上で若干斜めになっている部分)の図面左右方向の長さを、同プレート27のスリット29の長さよりも若干量(Y)だけ長くする」というものであるが、実施形態の上層および下層文字プレート26、27は、前記の図4(a)(b)に示すように、単純に、1枚のフレキシブル素材にスリット28、29を入れ、かつ、そのスリット28、29に包囲された部分をキー表記部分としたものであるため、そのままでは上記の対策に適さないから、以下に、“かじり”対策を講じた文字プレートのいくつかの好ましい製作例を提示する。
【0043】
図8は、“かじり”対策を講じた文字プレートの第1の製作例を示す図である。この第1の製作例では、まず、(a)に示すような文字プレートパーツ30をキー表記の行数分だけ用意する。この文字プレートパーツ30は、横長矩形状の不透明なフレキシブル素材の中ほどに任意の1行分のキー表記(図では“1”、“2”、“3”)を印刷等したキー表記部30aと、そのキー表記部30aの図面下側部分を若干量(たとえば、上記のY)だけ図面下方向に延長して形成されたオーバラップ部30bと、キー表記部30aの両側端部に形成されたスリット部30cと、そのスリット部30cの外側に形成された張り合わせ部30dとを有している。
【0044】
このような形状の文字プレートパーツ30をキー表記の行数分だけ用意すると、次に、(b)に示すように、各行の文字プレートパーツ30の張り合わせ部30dを重ね合わせ、各々の張り合わせ部30dを粘着テープ31等で接合して“かじり”対策を講じた上層文字プレート26を製作する。なお、図示は略すが、下層文字プレート27についても同様な手順で製作することが望ましい。
【0045】
この第1の製作例のようにすれば、上層文字プレート26のキー表記部分の長さ(イ)を、同プレート26のスリット28の長さ(ロ)よりも若干量(Y)だけ長くすることができ、同様に、図示を略すが、下層文字プレート27のキー表記部分の長さを、同プレート27のスリット29の長さよりも若干量(Y)だけ長くすることができるから、上記の“かじり”対策を講じた上層および下層文字プレート26、27とすることができる。
【0046】
図9は、“かじり”対策を講じた文字プレートの第2の製作例を示す図であり、この第2の製作例における上層文字プレート26は、2枚のプレート、すなわち、(a)に示す第1の上層文字プレート261と、(b)に示す第2の上層文字プレート262とを組み合わせて(c)に示すように構成したものである。
【0047】
第1の上層文字プレート261は、(a)に示すように、不透明なフレキシブル素材の上に印刷等によって形成された1行ないしは複数行(図では2行)のキー表記部32、33と、1行目のキー表記部32の周囲に形成された90度右回転コの字状のスリット34と、2行目のキー表記部33の周囲に形成された90度右回転コの字状のスリット35とを有しており、また、第2の上層文字プレート262は、(b)に示すように、不透明なフレキシブル素材の上に印刷等によって形成された1行ないしは複数行(図では2行)のキー表記部36、37と、1行目のキー表記部36の周囲に形成された90度右回転コの字状のスリット38と、2行目のキー表記部37の両側に形成された二つのスリット39、40と、プレート上部に形成された90度右回転コの字状のスリット41とを有している。
【0048】
かかる第2の製作例における上層文字プレート26は、これら第1の上層文字プレート261と第2の上層文字プレート262とを下記の手順に従って組み合わせて構成される。
<手順1>
第1の上層文字プレート261の下面に沿わせて第2の上層文字プレート262を置く。
<手順2>
第1の上層文字プレート261の1行目のキー表記部32を第2の上層文字プレート262の上から1番目のスリット41に差し込む。
第1の上層文字プレート261の2行目のキー表記部33を第2の上層文字プレート262の上から2番目のスリット38に差し込む。
【0049】
なお、図示は略すが、下層文字プレート27についても同様な構成と組み合わせで製作することが望ましい。
【0050】
このような手順で組み合わされた上層文字プレート26は、(c)に示すように、図面の上から下に向かって第1の上層文字プレート261の1行目のキー表記部32、第2の上層文字プレート262の1行目のキー表記部36、第1の上層文字プレート261の2行目のキー表記部33、第2の上層文字プレート262の2行目のキー表記部37が順に並ぶこととなり、前記の実施形態における上層文字プレート26(図3(a)参照)と類似のキー配列にすることができる。
【0051】
加えて、そのように配列された各々のキー表記部32、36、33、37は、その下端部分が交互にオーバラップ(図中のハ、ニ、ホ参照)しているから、第1の製作例と同様に、上記の“かじり”対策を講じた上層および下層文字プレート26、27とすることができる。
【0052】
図10は、“かじり”対策を講じた文字プレートの第3の製作例を示す図であり、この第3の製作例における上層文字プレート26も前記の第2の製作例と同様に、2枚のプレート、すなわち、(a)に示す第1の上層文字プレート263と、(b)に示す第2の上層文字プレート264とを組み合わせて(c)に示すように構成したものである。
【0053】
第1の上層文字プレート263は、(a)に示すように、不透明なフレキシブル素材の上に印刷等によって形成された1行ないしは複数行(図では2行)のキー表記部42、43と、1行目のキー表記部42の両端部に形成されたスリット44、45と、2行目のキー表記部43の両端部に形成されたスリット46、47と、1行目のキー表記部42の下方に形成されるとともにその両端部のスリット44、45に連続する横長矩形状の開口部48と、2行目のキー表記部43の下方に形成されるとともにその両端部のスリット46、47に連続する横長矩形状の開口部49とを有している。
【0054】
また、第2の上層文字プレート264は、(b)に示すように、不透明なフレキシブル素材の上に印刷等によって形成された1行ないしは複数行(図では2行)のキー表記部50、51と、4つのスリット52〜55とを有している。4つのスリット52〜55は、いずれも、カタカナの“コ”の字を時計回り方向に90度回転させた形に類似しているとともに、図面の上から1番目と3番目のスリット52、54の図面上下方向の長さ(ヘ)は、第1の上層文字プレート263のキー表記部42、43の同方向の長さ(ト)よりも若干量だけ短くなっており、さらに、図面の上から2番目と4番目のスリット53、55の同長さ(チ)は、第1の上層文字プレート263のキー表記部42、43の同長さ(ト)と同等となっている。ここで、若干量は前記のYであるものとする。
【0055】
かかる第3の製作例における上層文字プレート26は、これら第1の上層文字プレート263と第2の上層文字プレート264とを下記の手順に従って組み合わせて構成される。
<手順1>
第1の上層文字プレート263の下面に沿わせて第2の上層文字プレート264を置く。
<手順2>
第1の上層文字プレート263の1行目のキー表記部42を第2の上層文字プレート264の上から1番目のスリット52に差し込む。
第1の上層文字プレート263の2行目のキー表記部43を第2の上層文字プレート264の上から3番目のスリット54に差し込む。
【0056】
なお、図示は略すが、下層文字プレート27についても同様な構成と組み合わせで製作することが望ましい。
【0057】
このような手順で組み合わされた上層文字プレート26は、(c)に示すように、図面の上から下に向かって第1の上層文字プレート263の1行目のキー表記部42、第2の上層文字プレート264の1行目のキー表記部50、第1の上層文字プレート263の2行目のキー表記部43、第2の上層文字プレート264の2行目のキー表記部51が順に並ぶこととなり、前記の実施形態における上層文字プレート26(図3(a)参照)と類似のキー配列にすることができる。
【0058】
加えて、そのように配列された各々のキー表記部42、50、43、51は、その下端部分が所定量(Y)だけオーバラップしているから、第1の製作例や第2の製作例と同様に、上記の“かじり”対策を講じた上層および下層文字プレート26、27とすることができる。
【0059】
図11は、“かじり”対策を講じた文字プレートの第4の製作例を示す図である。この第4の製作例では、まず、(a)に示すように、不透明なフレキシブル素材の上に印刷等によって形成された1行ないしは複数行(図では3行)のキー表記部56〜58と、各々のキー表記部56〜58に沿って形成された三つのスリット59〜61とを形成し、かつ、各々のキー表記部56〜58ごとに一対の折り曲げ線62、63を入れる。
【0060】
次いで、(b)に示すように、折り曲げ線62、63に沿ってフレキシブル素材を折り曲げ変形させた後、折り曲げ部分(破線円で囲む部分)を接着して上層文字プレート26を製作する。なお、下層文字プレート27についても同様の方法で製作することが望ましい。
【0061】
ここで、重要な点は、上記の折り曲げ変形の際に、キー表記部56〜58を変形させないことにある。つまり、折り曲げ線62、63に沿って行われる折り曲げ変形は、キー表記部56〜58を除くプレートの両サイド部分(チ、リ)だけであり、キー表記部56〜58についてはなんらの変形加工も行われないことがポイントである。
【0062】
これにより、折り曲げ変形後の1行目のキー表記部56の下端部分が2行目のキー表記部57の裏に潜り込み、同様に、2行目のキー表記部57の下端部分が3行目のキー表記部58の裏に潜り込み、さらに、3行目のキー表記部58の下端部分がフレキシブル素材の残余部分(ヌ)の裏に潜り込むこととなり、それらの潜り込み量は、図中の矢印線(ル)で示すように相当量になるから、第1の製作例から第3の製作例と同様に、上記の“かじり”対策を講じた上層および下層文字プレート26、27とすることができる。
【0063】
なお、以上の説明では、テレビ等のリモコンや携帯電話機を例にしたが、これに限定されない。一つのキーの重複利用、つまり、一つのキーに二つの機能を割り当てるようにしたキー入力装置を搭載するあらゆる電子機器(たとえば、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書、ゲーム機・・・・等)に適用可能なことはいうまでもない。また、当然ながら、その電子機器も携帯型に限らず、据え置き型であってもかまわない。さらに、以上の説明では、「小型化」をキーワードにしたが、一つのキーの重複利用は「小型化」のためだけではなく、たとえば、誤操作防止のために採用されることもある(たとえば、特定の動作モードのときだけに所要のキー表示を行うなど)から、本件発明の適用範囲は「小型化」を意図した分野だけに限定されない。
【符号の説明】
【0064】
10 携帯電話機(電子機器)
19 キートップ
21 文字プレート組み立て体(文字プレート)
26 上層文字プレート
27 下層文字プレート
30 文字プレートパーツ(パーツ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップの下に文字プレートを配置し、その文字プレート上のキー表記を前記キートップから透過視認できるように構成したキー入力装置において、
前記文字プレートを上層文字プレートと下層文字プレートの2枚で構成すること、
それら2枚の文字プレートを互いに面方向にスライド可能に組み合わせること、
および、そのスライドに伴って、上層文字プレートのキー表記部分だけが前記キートップから透けて見える第一のキー表示状態と、下層文字プレートのキー表記部分だけが前記キートップから透けて見える第二のキー表示状態とを択一的に選択できるようにしたこと
を特徴とするキー入力装置。
【請求項2】
前記第一のキー表示状態は、前記下層文字プレートのキー表記部分が前記上層文字プレートのキー表記部分の裏に隠れている状態であり、
前記第二のキー表示状態は、前記上層文字プレートのキー表記部分が前記下層文字プレートのキー表記部分の裏に隠れている状態であることを特徴とする請求項1に記載のキー入力装置。
【請求項3】
前記第一のキー表示状態にあるとき、前記下層文字プレートのキー表記部分と前記上層文字プレートのキー表記部分とが所定量オーバラップしていることを特徴とする請求項2に記載のキー入力装置。
【請求項4】
前記上層文字プレートまたは下層文字プレートもしくは上層および下層文字プレートは、そのキー表記部分ごとのパーツからなり、かつ、各パーツのキー表記部分を前記所定量だけ長くしたことを特徴とする請求項3に記載のキー入力装置。
【請求項5】
前記上層文字プレートまたは下層文字プレートもしくは上層および下層文字プレートは、2枚のプレートを組み合わせたものであり、かつ、各プレートに形成したキー表記部分を前記所定量だけ長くしたことを特徴とする請求項3に記載のキー入力装置。
【請求項6】
前記上層文字プレートまたは下層文字プレートもしくは上層および下層文字プレートは、1枚のプレートを折り曲げ加工して作られたものであり、かつ、そのプレートに形成したキー表記部分を前記所定量だけ長くするとともに、そのキー表記部分以外を折り曲げ加工したことを特徴とする請求項3に記載のキー入力装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載のキー入力装置を搭載したことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
キートップの下に文字プレートを配置し、その文字プレート上のキー表記を前記キートップから透過視認できるように構成したキー入力装置において、
前記文字プレートを上層文字プレートと下層文字プレートの2枚で構成すること、
それら2枚の文字プレートを互いに面方向にスライド可能に組み合わせること、
および、そのスライドに伴って、上層文字プレートのキー表記部分だけが前記キートップから透けて見える第一のキー表示状態と、下層文字プレートのキー表記部分だけが前記キートップから透けて見える第二のキー表示状態とを択一的に選択できるようにしたこと
を特徴とするキー入力装置。
【請求項2】
前記第一のキー表示状態は、前記下層文字プレートのキー表記部分が前記上層文字プレートのキー表記部分の裏に隠れている状態であり、
前記第二のキー表示状態は、前記上層文字プレートのキー表記部分が前記下層文字プレートのキー表記部分の裏に隠れている状態であることを特徴とする請求項1に記載のキー入力装置。
【請求項3】
前記第一のキー表示状態にあるとき、前記下層文字プレートのキー表記部分と前記上層文字プレートのキー表記部分とが所定量オーバラップしていることを特徴とする請求項2に記載のキー入力装置。
【請求項4】
前記上層文字プレートまたは下層文字プレートもしくは上層および下層文字プレートは、そのキー表記部分ごとのパーツからなり、かつ、各パーツのキー表記部分を前記所定量だけ長くしたことを特徴とする請求項3に記載のキー入力装置。
【請求項5】
前記上層文字プレートまたは下層文字プレートもしくは上層および下層文字プレートは、2枚のプレートを組み合わせたものであり、かつ、各プレートに形成したキー表記部分を前記所定量だけ長くしたことを特徴とする請求項3に記載のキー入力装置。
【請求項6】
前記上層文字プレートまたは下層文字プレートもしくは上層および下層文字プレートは、1枚のプレートを折り曲げ加工して作られたものであり、かつ、そのプレートに形成したキー表記部分を前記所定量だけ長くするとともに、そのキー表記部分以外を折り曲げ加工したことを特徴とする請求項3に記載のキー入力装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載のキー入力装置を搭載したことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−150809(P2011−150809A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9066(P2010−9066)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]