説明

ギヤードモータ

【課題】 本発明は、モータと減速機を分離可能に構成し、ユーザが自由に減速機の交換を行うことができるギヤードモータを提供することにある。
【解決手段】 本発明は、モータの出力軸に歯切り加工を施し、この出力軸に歯車減速機の初段歯車を噛合させてなるギヤードモータにおいて、前記モータ1の出力軸10と、この出力軸10に噛み合う前記歯車減速機の初段歯車21A1(31A1)とに、互いに噛合する、はす歯21a(31a)加工を施し、減速比の異なる複数の歯車減速機を選択的に組み付け可能に設定したことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力軸に歯切りを施したモータと、複数の歯車の噛合によって回転速度を減速する歯車減速機からなるギヤードモータに関し、特に、モータの出力軸と、歯車減速機を分離可能に構成し、歯車減速機の初段歯車の支持軸が直交または平行となる種類の異なる減速機を選択的に組みつけ可能に構成したギヤードモータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータの出力軸と、歯車減速機の初段歯車の支持軸が直交するギヤードモータには、たとえば特許文献1がある。
特許文献1では、1つの歯車箱に対して2種以上のモータを組み合わせ可能としたハイポイドギヤードモータのシリーズが提案されている。
特許文献1の発明にあっては、モータの軸に形成されたハイポイドピニオンと、モータ軸と軸心をずらせて直交させた軸に取付けられ、ハイポイドピニオンと噛合するハイポイドギヤとからなるハイポイドギヤセットを内蔵したモータ付直交歯車減速機のシリーズにおいて、モータと、歯車箱とを分離可能とし、モータカバーと歯車箱との据え付け面をインロウ結合することによって組み合わせ可能に形成している。この組み合わせの条件として、モータカバーと歯車箱との取り合い寸法を一定にすること、ハイポイドピニオンと、ハイポイドギヤとの軸心のずれ量を一定とすること、ハイポイドギヤの外径をほぼ一定にすること、ハイポイドギヤの中心からモータカバーと歯車箱との据え付け面までの距離を一定とすることが必要となる。
【特許文献1】特開平5−240313
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術にあっては、たくさんの条件を同時に満たす必要があり、シリーズとしての自由度が低いという問題があった。また、特許文献1の技術にあっては、歯車減速機としてのギヤとモータとを組み付けるとき、歯車を精緻に位置決めする必要があるため、ユーザが自分で組み付けることができないという問題もあった。ギヤとモータを一旦分離してしまうと、再度組み付けることができないため、一度組み合わせた歯車減速機とモータとを分離することはできなかった。すなわち、特許文献1の発明にあっては、1の歯車箱に対して2種以上のモータを組み合わせることが可能ではあるが、ユーザがそれらを適宜交換することはできないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記課題を解決し、モータと減速機を分離可能に構成し、ユーザが自由に減速機の交換を行うことができるギヤードモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、モータの出力軸に歯切り加工を施し、この出力軸に歯車減速機の初段歯車を噛合させてなるギヤードモータにおいて、前記モータの出力軸と、この出力軸に噛み合う前記歯車減速機の初段歯車とに、互いに噛合する、はす歯加工を施し、減速比の異なる複数の歯車減速機を選択的に組み付け可能に設定したことにある。
また、本発明は、前記モータの出力軸と、この出力軸に噛み合う前記歯車減速機の初段歯車とに、互いに噛合する、はす歯加工を施し、前記モータの出力軸のはす歯のねじれ角をα、初段歯車のはす歯のねじれ角をβとしたとき、
前記初段歯車の軸が、前記モータの出力軸に対して、直交する方向で交叉するように配置された直交軸減速機の場合、α+β=90°の関係を満たすように、前記モータの出力軸のはす歯のねじれ角αに対して、初段歯車のはす歯のねじれ角βを設定し、
前記初段歯車の軸が、前記モータの出力軸に対して、平行に配置された平行軸減速機の場合、α=βの関係を満たすように、前記モータの出力軸のはす歯のねじれ角αに対して、初段歯車のはす歯のねじれ角βを設定し、前記直交軸減速機と前記平行軸減速機を選択的に前記モータに組み付け可能に設定したことにある。
さらに、本発明は、前記モータの出力軸に設けられたはす歯のねじれ角αを20°〜35°に設定した場合、α+β=90°の関係を満たすように、前記直交軸減速機の初段歯車に設けられたはす歯のねじれ角βを55°〜70°に設定し、かつ、α=βの関係を満たすように、平行軸減速機の初段歯車に設けられたはす歯のねじれ角βを20°〜35°に設定したことにある。
またさらに、前記初段歯車の軸が、前記モータの出力軸に対して、直交する方向で交叉するように配置され、かつ該初段歯車の軸および該初段歯車と噛合する他の歯車の軸を互いに平行に配置した直交軸減速機と、前記初段歯車の軸が、前記モータの出力軸に対して、平行に配置され、かつ該初段歯車の軸および該初段歯車と噛合する他の歯車の軸を互いに平行に配置した平行軸減速機とを選択的に前記モータの出力軸に組み付け可能にしたことにある。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、減速機とモータとを組み付けるとき、歯車を精緻に位置決めする必要がなく、ユーザが自分で組み付けることができる。ゆえに、ギヤードモータを、減速機とモータとを分離することも可能であり、分離した減速機に別のモータを再度組み付けることも可能である。また、ユーザが直交軸減速機と平行軸減速機を選択的に用いることができる。
請求項2の発明によれば、モータの出力軸および初段歯車に設けられたはす歯のねじれ角度を調整したので、ひとつのモータに対して、直交軸減速機に換えて平行軸減速機を組み付けることも可能という効果を奏する。
請求項3の発明によれば、モータの出力軸および初段歯車に設けられたはす歯のねじれ角度を具体的に調整したので、ひとつのモータに対して、直交軸減速機に換えて平行軸減速機を確実に組み付けることができる。
請求項4の発明によれば、直交軸減速機および、平行軸減速機の歯車軸をコンパクトに配置したので、減速機の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図示の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1および図2は、モータ1と歯車減速機2を組み付けた図面で、モータ1の出力軸10を歯車減速機2のハウジング20内に挿入して組み合わせたものである。ハウジング20の一側面には、モータ1の出力軸10が組みつけられる挿入口20aが設けられ、この挿入口20aと直交する方向の面には、後述する出力軸の動力取り出し穴20bが設けられている。
【0009】
歯車減速機2は、モータ1の出力軸10に噛合する初段歯車21A1の軸22A1が、出力軸10と直交する方向に交叉するように配置されている直交軸減速機2Aである。
この直交軸減速機2Aは、ハウジング20内に、複数の歯車21A1〜21A4が配置され、各歯車21A1〜21A4の歯車軸22A1〜22A4が互いに平行に配置されている。歯車軸22A1〜22A3には、各歯車21A2〜21A4に噛合する駆動歯車23B1〜23B3が装着されており、歯車21A1を支持する歯車軸22A1に駆動歯車23B1が装着されている。駆動歯車23B1には、従動歯車21A2が噛合しており、従動歯車21A2を支持する歯車軸22A2には駆動歯車23B2が装着されている。駆動歯車23B2は従動歯車21A3に噛合しており、従動歯車21A3を支持する歯車軸22A3には駆動歯車23B3が装着されている。この駆動歯車23B3は従動歯車21A4に噛合しており、この従動歯車21A4を支持している歯車軸22A4を出力軸として回転駆動するものである。
【0010】
前記歯車軸22A1〜22A4は、歯車軸22A1〜22A4の両端部をそれぞれ一対のベアリング241〜244を介してハウジング20内に互いに平行状態で装着されている。25は、出力軸となる歯車軸22A4を支持するベアリング244の開口端側をシールするシール部材である。
【0011】
前記モータ1の出力軸10には、周面に、はす歯加工が施されており、この出力軸10の周面のはす歯10aに噛合する、はす歯加工を歯車減速機2の初段歯車21A1に施して、所謂、ねじ歯車としている。前記モータ1の出力軸10のはす歯10aのねじれ角をα、初段歯車21A1のはす歯21aのねじれ角をβとしたとき、α+β=90°の関係を満たすように、前記モータ1の出力軸10のはす歯10aのねじれ角αと、初段歯車21A1のはす歯21aのねじれ角βを設定している。
【0012】
好ましくは、α+β=90°の関係を満たすように、前記モータ1の出力軸10に設けられたはす歯10aのねじれ角αを20°〜35°に設定し、前記初段歯車21A1に設けられたはす歯21aのねじれ角βを55°〜70°に設定する。
【0013】
上記構成によると、モータ1の出力軸10を、挿入口20aを通して直交軸減速機2Aのハウジング20内に挿入して、図示しないネジ等によってモータ1を直交軸減速機2Aに組みつける。こうして、モータ1の出力軸10の、はす歯10aに初段歯車21A1に設けられた、はす歯21aが噛合する。
次に、モータ1を駆動し出力軸10が回転すると、出力軸10のはす歯10aに、はす歯21aを介して噛合する初段歯車21A1が回転する。そして、初段歯車21A1の歯車軸22A1に回転が伝達され、この歯車軸22A1に装着された駆動歯車23B1が回転駆動される。駆動歯車23B1の回転は、この駆動歯車23B1に噛合する従動歯車21A2に伝達される。そして、従動歯車21A2の歯車軸22A2に回転が伝達される。歯車軸22A2の回転とともに駆動歯車23B2が回転し、この駆動歯車23B2に噛合する従動歯車21A3が回転駆動される。そして、従動歯車21A3の歯車軸22A3の回転とともに駆動歯車23B3が回転し、この駆動歯車23B3に噛合する従動歯車21A4が回転駆動される。従動歯車21A4の回転とともに、出力軸である歯車軸22A4が回転し、この歯車軸22A4を介して各歯車の歯数比によって減速された回転動力が取り出される。
【0014】
図3は、モータ1の出力軸10に組み付ける歯車減速機2として、直交軸減速機2Aに代えて平行軸減速機2Bを組み付けた構造である。図1と同一部分は同符号を付して説明する。
【0015】
平行軸減速機2Bは、モータ1の出力軸10に噛合する初段歯車31A1の軸32A1が、出力軸10と平行に配置されている。
【0016】
この平行軸減速機2Bは、ハウジング30内に、従動歯車となる複数の歯車31A1〜31A4が配置され、各歯車31A1〜31A4の歯車軸32A1〜32A4が互いに平行に配置されている。前記ハウジング30には、モータ1が組みつけられる片面に、モータ1の出力軸10が組みつけられる挿入口30aが設けられ、反対側の面には、後述する出力軸を導出する開口穴30bが設けられている。
歯車軸32A1〜32A3には、各歯車31A2〜31A4に噛合する駆動歯車33B1〜33B3が装着されており、歯車31A1を支持する歯車軸32A1に駆動歯車33B1が装着されている。駆動歯車33B1には、従動歯車31A2が噛合しており、従動歯車31A2を支持する歯車軸32A2には駆動歯車33B2が装着されている。駆動歯車33B2は従動歯車31A3に噛合しており、従動歯車31A3を支持する歯車軸32A3には駆動歯車33B3が装着されている。この駆動歯車33B3は従動歯車31A4に噛合しており、この従動歯車31A4を支持している歯車軸32A4を出力軸として回転駆動するものである。
【0017】
前記歯車軸32A1〜32A4は、歯車軸32A1〜32A4の両端部をそれぞれベアリング341〜344を介してハウジング30内に互いに平行状態で装着されている。35は、出力軸となる歯車軸32A4を支持するベアリング344の開口端側をシールするシール部材である。
【0018】
平行軸減速機2Bは、初段歯車31A1に出力軸10の周面のはす歯10aに噛合する、はす歯加工を施している。
前記モータ1の出力軸10のはす歯10aのねじれ角をα、初段歯車31A1のはす歯31aのねじれ角をβとしたとき、α=βの関係を満たすように、前記モータ1の出力軸10のはす歯10aのねじれ角αと、初段歯車31A1のはす歯31aのねじれ角βを設定している。
好ましくは、α=βの関係を満たすように、前記モータ1の出力軸10に設けられたはす歯10aのねじれ角αを20°〜35°に設定し、前記初段歯車31A1に設けられたはす歯31aのねじれ角βを20°〜35°に設定する。
【0019】
上記構成によると、モータ1の出力軸10を平行軸減速機2Bのハウジング30内に挿入して組みつける。こうして、モータ1の出力軸10の、はす歯10aに初段歯車31A1に設けられた、はす歯31aが噛合する。
次に、モータ1を駆動し出力軸10が回転すると、出力軸10のはす歯10aに、はす歯31aを介して噛合する初段歯車31A1が回転する。そして、初段歯車31A1の歯車軸32A1に回転が伝達され、この歯車軸32A1に装着された駆動歯車33B1が回転駆動される。駆動歯車33B1の回転は、この駆動歯車33B1に噛合する従動歯車31A2に伝達される。そして、従動歯車31A2の歯車軸32A2に回転が伝達される。歯車軸32A2の回転とともに駆動歯車33B2が回転し、この駆動歯車33B2に噛合する従動歯車31A3が回転駆動される。そして、従動歯車31A3の歯車軸32A3の回転とともに駆動歯車33B3が回転し、この駆動歯車33B3に噛合する従動歯車31A4が回転駆動される。従動歯車31A4の回転とともに、出力軸である歯車軸32A4が回転し、この歯車軸32A4を介して各歯車の歯数比によって減速された回転動力が取り出される。
【0020】
このように、上記実施の形態によると、モータ1の出力軸10に、直交軸減速機2Aあるいは、平行軸減速機2Bを選択的に組み付けて用いることができるので、ユーザが必要に応じて、組み付け機械あるいは、用途に応じて任意に組み替えて用いることができる。また、減速比の異なる直交軸減速機2Aあるいは、平行軸減速機2Bを用意しておくことによって、所望の減速比を選択することができる。
【0021】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、トルクの異なるモータ1あるいは、回転数の異なるモータ1を用意しておき、これらのモータ1を、減速比の異なる直交軸減速機2Aあるいは、平行軸減速機2Bを任意に組み替えて用いることにより、選択幅をより多くすることができる。など、その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更して実施し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるモータと直交軸減速機を組み合わせた実施の形態を示す断面図である。
【図2】モータの出力軸と直交軸減速機の初段歯車との噛合状態を示す図1の矢視X方向の部分断面図である。
【図3】本発明によるモータと平行軸減速機を組み合わせた実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 モータ
2 歯車減速機
2A 直交軸減速機
2B 平行軸減速機
10 出力軸
10a,21a,31a はす歯
20,30 ハウジング
21A1〜21A4、31A1〜31A4 従動歯車
22A1〜22A4、32A1〜32A4 歯車軸
23B1〜23B3、33B1〜33B3 駆動歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの出力軸に歯切り加工を施し、この出力軸に歯車減速機の初段歯車を噛合させてなるギヤードモータにおいて、前記モータの出力軸と、この出力軸に噛み合う前記歯車減速機の初段歯車とに、互いに噛合する、はす歯加工を施し、減速比の異なる複数の歯車減速機を選択的に組み付け可能に設定したことを特徴とするギヤードモータ。
【請求項2】
前記モータの出力軸と、この出力軸に噛み合う前記歯車減速機の初段歯車とに、互いに噛合する、はす歯加工を施し、前記モータの出力軸のはす歯のねじれ角をα、初段歯車のはす歯のねじれ角をβとしたとき、
前記初段歯車の軸が、前記モータの出力軸に対して、直交する方向で交叉するように配置された直交軸減速機の場合、α+β=90°の関係を満たすように、前記モータの出力軸のはす歯のねじれ角αに対して、初段歯車のはす歯のねじれ角βを設定し、
前記初段歯車の軸が、前記モータの出力軸に対して、平行に配置された平行軸減速機の場合、α=βの関係を満たすように、前記モータの出力軸のはす歯のねじれ角αに対して、初段歯車のはす歯のねじれ角βを設定し、前記直交軸減速機と前記平行軸減速機を選択的に前記モータに組み付け可能に設定したことを特徴とする請求項1に記載のギヤードモータ。
【請求項3】
前記モータの出力軸に設けられたはす歯のねじれ角αを20°〜35°に設定した場合、α+β=90°の関係を満たすように、前記直交軸減速機の初段歯車に設けられたはす歯のねじれ角βを55°〜70°に設定し、かつ、α=βの関係を満たすように、平行軸減速機の初段歯車に設けられたはす歯のねじれ角βを20°〜35°に設定したことを特徴とする請求項2に記載のギヤードモータ。
【請求項4】
前記初段歯車の軸が、前記モータの出力軸に対して、直交する方向で交叉するように配置され、かつ該初段歯車の軸および該初段歯車と噛合する他の歯車の軸を互いに平行に配置した直交軸減速機と、前記初段歯車の軸が、前記モータの出力軸に対して、平行に配置され、かつ該初段歯車の軸および該初段歯車と噛合する他の歯車の軸を互いに平行に配置した平行軸減速機とを選択的に前記モータの出力軸に組み付け可能にしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のギヤードモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−309172(P2008−309172A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154917(P2007−154917)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】