説明

クッションパッドの製造方法及び発泡成形型

【課題】車両用、特には自動車用のシートクッションパッド2に、裏面に近接して耐力フレーム27を埋め込むにあたり、エアポケットや欠肉といった不具合の発生を低減でき、しかも、製造効率や作業性に優れたものを提供する。
【解決手段】耐力フレーム27の近傍におけるキャビティー16の天井面について、一部が中子型13によって形成されるようにする。すなわち、中子型13から、ひさし状の延在部51が耐力フレーム27の上方にまで延びるようにすることで、上型11と中子型13とのパーティングライン18が、耐力フレーム27の真上に来るようにする。また、さらには、ひさし状延在部51よりもさらに突き出すフレーム取り付け用延在部52を設けることで、中子型13に耐力フレームを取り付けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両用シートその他に用いるシート用クッションパッドの製造方法、及びこれに用いる発泡成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行時に振動を受ける車両用シートには、乗員への振動の伝達を軽減し、乗り心地を良好に保つべく、軟質ポリウレタンフォームなどの弾性樹脂発泡体からなるクッションパッドが座部及び背もたれ部に配されている。このようなクッションパッドは、一般に、上型と下型を備えてなる発泡成形型を用いて、該成形型内に発泡原料を注入し、型閉めして、発泡原料を成形型内で発泡充填させることにより成形されている。
【0003】
裏面側に湾入部を有するクッションパッドを成形する場合、中子(中子型)が用いられることがある。中子は、例えば、上型から上下動ないしは突出し動作が可能に支持され、発泡成形時に、クッションパッドの裏面における外周部以外の形状を決める。中子は、特には、クッションパッドの裏面に内フランジ状の内側へのせり出し部などを形成する場合に用いられる。
【0004】
上記のような車両シート用クッションパッドは、車両のシートのフレームに覆いかぶさる用に取り付けられ、該フレームにより支持されて固定されるのが一般的である。しかし、最近の車両用シートには、車体のコンパクト化や軽量化、または製造コストや部品を削減する観点から、耐力フレームが一体に埋め込まれたものがある。すなわち、クッションパッドの裏面側に、クッションパッドの過度の変形を規制する耐力構造をなすフレームが埋め込まれたものがある。このような耐力フレームは、一般に、断面円形の鋼の線材等からなり、クッションパッドの輪郭に沿った箇所などに埋め込まれる。この耐力フレームは、複数の所定個所にて、裏面側に露出させておくならば、クッションパッドの表皮を係止するための各係止部材を形成する。
【0005】
このように耐力フレームをクッションパッドの裏面側に埋め込むためには、通常、上型中に該耐力フレームをインサート部材として配置する必要がある。すなわち、上型の内壁面から、位置決めして吊り下げておく必要がある。この吊り下げのためには、上型の内壁面に磁石、及び、フレームズレ防止ガイドを設けておくことが提案されている(特許文献1)。
【0006】
一方、キャビティーの内面に、キャビティー内へと突き出す何らかの突起構造が存在する場合、発泡原料がキャビティーの内面に沿って広がっていく際に、障害物となる。そのため、障害物を回り込んだ合流部にて、空気や発泡によるガスが巻き込まれ、その結果、エアポケットと呼ばれる空洞や、欠肉部をクッションパッド製品中に形成することがある。そのため、金型同士の合わせ面を該障害物の近傍に設ける構造が採用される。また、これに代えて、上記の合流部の箇所に、全体の流れ方向に沿ったガイド構造を設けて置くことが提案されている(特許文献2)。
【0007】
他方、発泡成形型は、上記のように2つ以上の金型(通常は金属製)を接合することで発泡成形空間であるキャビティを形成するものであるため、多くの場合、金型同士の合わせ面間などの隙間に発泡原料が侵入する。そのため、得られたクッションパッドの周囲には、金型が開くライン(パーティングライン)に沿った箇所の一部に、バリが発生する。このバリは、通常、合わせ面の微小な隙間で形成されることから実質的に未発泡の緻密な構造になり、特にその根元部は、柔軟なパッド本体に比べて硬化芯と称されるように硬くなる。なお、発泡成形の際、発泡原料がキャビティー内を完全に満たすようにするためには、一般に、少量の発泡原料を、金型間の隙間に逃がすようにすることが有利であり、このようにする場合、バリが定常的に発生することとなる。
【0008】
上記のバリは、クッションパッド製品の表面から突き出るため、クッションパッド製品に外皮を被せた後も、外観に筋が現れたり触感に異物感が残る可能性がある。そのため、通常、発泡成形の終了後、バリを完全に取り除くための、バリ取りと呼ばれる作業が行われる。そこで、金型同士の合わせ面の一部に、垂直断面が細長い矩形状である間隙部を設けておき、かつ、これに隣接して、該間隙部の形状に対応する壇状の凸部を設けておくといったことも提案されている(特許文献3)。発泡用原料の一部がキャビティー内部から該矩形状の間隙部へと流れ込むことで、クッションパッド製品の外面に、断面において、細長く延びる突出片が形成される。しかし、この突出片が、倒されて、上記壇状の凸部により形成された、浅い凹部に収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−020735号公報
【特許文献2】特開2009−220359号公報
【特許文献3】特開2009−061678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
車両用クッションパッドの用途によっては、耐力フレームをクッションパッドの裏面に非常に近接した位置に埋め込むのが有利な場合が考えられる。例えば、5〜15mmだけ裏面から離間した位置に耐力フレームを埋め込むことで、車体に取り付けられたフレームを上記張り出し部で囲んだものと同様の全体的な剛性を持たせるといったことが考えられる。特には、背もたれ用のクッションパッドにおける使用時に下端に来る箇所(根元部)にて、裏面に近接して耐力フレームを埋め込むという一つの有利な設計仕様が想定される。
【0011】
耐力フレームをクッションパッドの裏面に近接して配置する場合、該耐力フレームがキャビティーの壁面付近にて発泡原料の流れを妨げることがあり得る。そして、そのために、上記特許文献2のように、エアポケットと呼ばれる空洞や、欠肉部が形成されるおそれがある。配合処方などにより対処しようとすると、製造効率が低下するなどの問題が生じ得る。
【0012】
一方、上述のように、車両用シートの背もたれ部などをなす目的で、内フランジ状の張り出し部を有するクッションパッドを成形するためには、中子を有する三つ割の発泡成形型を用いる。このようなクッションパッドの裏面側に、耐力フレームを、クッションパッドの輪郭に沿って配置する場合もありうる。このような場合、該耐力フレームは、当然に、周縁部の成形を行う上型の内面に取り付けられる。すなわち、キャビティーの天井面の近傍、特には、下型の周壁と、中子の外周面とに囲まれた、隆起部をなす箇所にて、キャビティーの天井面をなす上型の下面(内面)に取り付けられることとなる。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、裏面に近接して耐力フレームを埋め込んだクッションパッドを製造するにあたり、エアポケットや欠肉といった不具合の発生を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本件発明者らは、エアポケットなどの生成をさらに防止すべく鋭意検討する中で、耐力フレームの近傍におけるキャビティーの天井面について、一部が中子型によって形成されるようにするという突飛な発想を得た。すなわち、上型と中子型とのパーティングラインを、耐力フレームの近傍のキャビティー天井面に配置するということを試みた。この結果、エアポケットなどの不具合が、さらに防止できることを見出した。また、さらには、耐力フレームを中子型に取り付けるという、一見、非常識なことを試みた。この結果、上型及び下型がヒンジまわりに二枚貝状に開く構造であって、クッションパッドにおけるフランジ状張り出し部とは逆の端部に、裏面に近接した耐力フレームを配置する場合も、耐力フレームを取り付ける操作を困難なく行うことができた。
【0015】
すなわち、本発明に係るクッションパッドの製造方法及び発泡成形型は、一の好ましい態様において、クッションパッドの裏面に近接して耐力フレームを埋め込むにあたり、上型と中子型とのパーティングラインについて、該耐力フレームを上方から覆う位置、すなわち、平面図にて重なる位置に配置することを特徴とする。
【0016】
好ましくは、この耐力フレームを固定するための支持構造が、中子型からの延在部により設けられ、発泡成形前、中子型が上型から突き出された状態で、耐力フレームをこのような中子型の延在部に取り付ける。このようであると、耐力フレームを作業者から見て奥の側に取り付ける場合も、中子型を前方または下方に突き出させることができるので、取り付け作業が、より容易になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐力フレームをクッションパッドの裏面に近接して配置すべく、キャビティーの天井面に近接して耐力フレームを配置して発泡成形を行うにあたり、製造効率などに影響を与えることなく、エアポケットや欠肉の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態の発泡成形型、及び、この内部に形成されたクッションパッドについて、要部を、ヒンジに垂直な方向にて切断して示す、要部垂直断面図である。
【図2】図1の実施形態の発泡成形型及びクッションパッドについて、耐力フレーム支持構造の箇所にて切断した様子を示す、図1と同様の要部垂直断面図である。
【図3】図1の実施形態の発泡成形型及びクッションパッドについて、全体を模式的に示す、同様の、ヒンジに垂直な方向での垂直断面図である。
【図4】図1の実施形態のクッションパッドについて、裏面を示す平面図である。
【図5】図1の実施形態のクッションパッドについて、表側の面を示す平面図である。
【図6】図1の実施形態の発泡成形型に、耐力フレームを取り付ける操作を模式的に示す、模式的な側面図である。
【図7】比較例の発泡成形型及びクッションパッドについての、図2に対応する垂直断面図である。
【図8】図7の比較例の発泡成形型に、耐力フレームを取り付ける操作を模式的に示す、模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1〜3は、本発明の一実施形態に係る発泡成形型、及び、この内部に形成されたクッションパッドについての垂直方向の断面図である。いずれも、後述のヒンジ14に垂直な方向の断面図であり、かつ、クッションパッド及びキャビティーの長手方向に沿った垂直断面図である。図1〜2は要部を示し、図3は、クッションパッド及びキャビティー周辺についての全体を模式的に示す。図4及び5は、発泡成形により得られるクッションパッドの平面図であり、図4は裏面を、図5は表側の面を示す。
【0021】
具体例において、クッションパッド2は、自動車のシートにおける背もたれ部に使用されるバックパッドであり、軟質ポリウレタンフォームからなる。クッションパッド2は、背もたれ面を構成するパッド主体部22と、その上辺、または該上辺と左右両側辺との3方の辺部から裏面側と延びて内側へと折り返された折り返し部23とからなる。折り返し部23は、先端に内向きフランジ状の張り出し部21を有し、その内部に形成される凹部25には、クッションパッド2を車体に装着する際に、車体に取り付けられたフレームが嵌め込まれる。
【0022】
クッションパッド2を成形する発泡成形型1は、クッションパッド2の正面側を成形する凹状の下型12と、背面側の少なくとも周縁部を成形する上型11とからなる。上型11及び下型12は、これらの一辺に近接して水平に配されたヒンジ14のまわりを相互に回動することで、開閉を行う。発泡成形型1には、クッションパッド2の張り出し部21を成形により形成して脱型可能にするための、中子型13が備えられる。中子型13は、上型11に設けられたシリンダー駆動装置15を介して、上型11から突出し可能に支持されている。上型11を下型12に対して回動させて型開きした状態で、シリンダー駆動装置15を作動させると、中子型13が上型11から突き出されて、張り出し部21の箇所も開かれることとなる。
【0023】
好ましい実施形態において、上型11と下型12との合わせ面は密閉され、上型11と中子型13との間の合わせ面17には、わずかな隙間が形成されるようにする。すなわち、発泡成形の際、発泡成形型1のキャビティー(発泡成形空間)16内から、発生したガスの一部が、上型11の成形面と、中子型13の成形面との間のパーティングライン18から上記合わせ面17を通って抜け出るとともに、発泡成形原料のごく一部が該合わせ面17の隙間に侵入するようにする。このようにすることで、エアポケットや欠肉と呼ばれる、キャビティー17内の充填が不十分な箇所の生成を防止する。また、上型11と中子型13との間の合わせ面で逃がす構成とすることにより、バリ26は、全て、クッションパッド2の裏面の内側部分に現れる。そのため、上型11と下型12との間のパーティングライン19に沿って、クッションパッド2の端面にバリが現れる場合に比べて、バリ取り操作が容易となり、また、バリの根元の一部がわずかに残留した場合も製品への影響は最少限となる。
【0024】
図3の垂直断面図に示すように、クッションパッド2の裏面(成形時の上面)には、ヒンジ14の側の端部に、隆起部29が形成される。この隆起部29は、上型11の下面(キャビティーの天井面)と、下型12の周壁と、中子型13の外周面によって囲まれる領域であり、具体例において、車両用シートの背もたれ部の下端部(根元部)をなす。隆起部29の内部には、上型11の下面と、中子型13の外周面とがなす角部に近接して耐力フレーム27が埋め込まれる。ヒンジ14まわりに上型11と下型12とが相互に回動する発泡成形型にあっては、内向きフランジ状張り出し部21を有する折り返し部23を、ヒンジ14の側に設けると、脱型が困難となるため、隆起部29のみを設けることが多い。なお、隆起部29は、背もたれ部の左右の縁の部分に形成される同様の隆起部、または、折り返し部23と連続するものであっても良い。
【0025】
図1〜3中に示すように、隆起部29内に、裏面に近接して丸棒状の耐力フレーム27が埋め込まれる。特には、隆起部29の箇所でのキャビティー16の天井面と、中子型13の外周面とがなす角部の近傍に配置される。図示の例で、この天井面は概ね水平であり、中子型13の外周面は、ほぼ垂直である。この耐力フレーム27は、図4〜5に点線で示すように、直線状に伸びる。
【0026】
図1に示すように、中子型13の外周面からは、上記のキャビティー16の角部を覆うように、ひさし(庇)状の延在部51が突き出しており、図示の具体例で、耐力フレーム27を部分的に覆うか覆わないかというところまで突き出している。言い換えると、隆起部29に対応する箇所で、上型11と中子型13とのパーティングライン18が、キャビティー16の稜線の位置でなく、天井面中に、該稜線から少し離間した位置に設けられる。この箇所にパーティングライン17を設けることで、次のような効果が得られる。発泡成形の初期にキャビティー16内を樹脂原料が充填していく際、耐力フレーム27の上方に気泡が形成されることがある。このような場合、上記パーティングライン17に所要の隙間があれば、空気やガスを逃がすことで、クッションパッド2中に、エアポケットや欠肉が発生するのを防止することができる。
【0027】
図1に示す具体例では、上型11と中子型13との合わせ面17が、ヒンジ14の側から見て、上昇していくように傾斜している。このように傾斜することで、クッションパッド2に、表側の面から表皮をかぶせて裏面側へと折り返して引っ張る際、バリ26が倒れて表皮の外面に現れにくくすることができる。
【0028】
図1中に示すように、本実施形態では、合わせ面17の間隙が部分的に広げられて、パーティングライン18に沿って、キャビティー16の外側へと向かって先細のスリット18Aが設けられる。この先細のスリット18Aは、図示の例で、垂直方向断面がくさび(楔)状である。この先細のスリット18Aは、キャビティー16内の空気やガスが外へ逃げやすくするとともに、発泡樹脂原料の一部を受け入れてバリ26を形成することで、他の箇所でのバリ形成を防止する役割を果たす。この先細のスリット18A内に形成されたバリ26は、根元が太いため、脱型時にクッションパッド2に残りやすいので、型の掃除の手間を低減することができる。
【0029】
また、図1中に示すように、先細のスリット18Aは、主として、中子型13の壁面を削り取るようにすることで形成されている。すなわち、先細のスリット18Aに面した箇所において、上型11の壁面は、ほぼ合わせ面17に沿って延びているのに対し、中子型13の壁面は、合わせ面17より傾斜が急となっている。このように、先細のスリット18Aを形成するにあたり、上型11の壁面よりも、中子型13の壁面をより多く削り取ることで、次のような効果が得られる。すなわち、スリット18A内に発泡樹脂原料が入り込む際、中子型13の急峻な壁面に沿った箇所の方が、上型11のより緩い傾斜の壁面に沿った箇所よりも、わずかに流入しやすくなる。したがって、バリ26とならずに、金型に付着する場合、中子型13の方に、より付着しやすい。中子型13は、型を開いた際に、下方または下方及び前方に突き出されるので、より掃除がしやすい。
【0030】
なお、図示の例で、上型11と中子型13との合わせ面17において、先細のスリット18Aの外側には、平行面によるスリット17Aが設けられる。このスリット17Aは、もっぱらガス(空気を含む)抜き用であり、図示の例で、上記の先細のスリット18Aの根元よりも幅が広い。先細のスリット18Aの寸法は、樹脂原料を逃がすのに充分な程度に設計されているので、先細のスリット18Aの先端を越えて、樹脂原料が漏れ出すことはない。寸法構成の一具体例をあげると、耐力フレーム27の直径、及び、耐力フレーム27と天井面との間の間隔が、いずれも5〜15mmであり、耐力フレーム27と中子型13の外周垂直壁との間の距離が10〜30mmである。また、先細のスリット18Aは、根元(キャビティー16内部への開口部)の幅が0.3〜3mm、根元から先端までの寸法が、5mm〜50mmである。なお、上記の先細のスリット18A、及び、平行面によるスリット17Aは、折り返し端部23を形成する箇所に対応して、発泡成形型1におけるヒンジ14から遠い箇所、または、この箇所と左右両端に沿った箇所にも設けることができる。
【0031】
次に、図2を用いて、耐力フレーム27の取り付け構造について説明する。耐力フレーム27は、複数の箇所で、発泡形成型1の内面から支持されて固定されるようにする必要がある。本実施形態においては、図2に示すように、中子型13からの延在部52に、耐力フレーム27を支持固定するための取り付け部が設けられる。すなわち、天井面の一部をなすひさし状延在部51が部分的にさらにヒンジ14の側へと突き出されて、フレーム取り付け用延在部52をなし、この下面に、磁石53及び支持ガイド54が備え付けられる。磁石53及び支持ガイド54は、例えば、上記特許文献1に記載したような形態とすることができる。
【0032】
図4に示す、クッションパッド2の裏面には、ひげ線で囲む領域により、上型11により形成された成形面57を示す。また、上記のひさし状延在部51による成形面58、及び、フレーム取り付け用延在部52による成形面59も併せて示す。図4に示す具体例において、ひさし状延在部51は、耐力フレーム27の中心線を覆う位置にまで延びており、フレーム取り付け用延在部52は、クッションパッド2の輪郭よりも中心線に近い位置に、左右対称に、合わせて2つが設けられる。図示の例で、フレーム取り付け用延在部52は、先細の台形状、またはタブ状である。
【0033】
図5に示す、クッションパッド2の表側の面、及び、図3の全体垂直断面図に示されるように、本実施形態のクッションパッド2には、隆起部29の頂部よりも、表側の背もたれ面または座面に近い位置に、さらなる耐力フレーム28が埋め込まれている。図示の例で、このような耐力フレーム28が2つ備えられており、発泡成形時には、下型12に取り付けられる。例えば、下型12の底面に取り付けられたガイドのところに配置され、型閉めの際に、中子型13からの突起により、上方から押さえられて固定される。図5に示す具体例において、クッションパッド2の表側の面には、H字状の溝56が設けられる。また、このH字の所定の箇所にて、耐力フレーム28−1、28−2を表側に露出させることにより、表皮を取り付けるための係止部55が設けられている。係止部55は、ガイドが設けられた位置に対応しており、図4中に示すように、裏面側の耐力フレーム27における、フレーム取り付け延在部52に対応する箇所にも、同様の係止部55が設けられている。なお、表側の耐力フレーム28−1、28−2は、互いに、クッションパッド2の長手方向に埋め込まれたワイヤーやスプリングワイヤーなどによって連結しておくこともできる。
【0034】
次に、図6の模式図を用いて、裏側の耐力フレーム27を取り付ける操作の例について、説明する。図示の例において、上型11及び下型12は、ヒンジ14のまわりに互いに回動して開ききった状態では、いずれも、水平面に対し、約30〜40度傾斜している。そして、中子型13は、シリンダー駆動装置15により、例えば300〜400mmだけ、上型11に対して、成形時の位置から突き出される。そのため、作業員から見て中子型13の後方に取り付けるのであっても、発泡成形型1の前方に立って手が届くとともに、フレーム取り付け延在部52を見通すことができる。したがって、格別の困難なしに、取り付け作業を行うことができる。
【0035】
次に、図7〜8を用いて、比較例の発泡成形型1’について説明する。図7に示すように、上型11と中子型13とのパーティングライン18は、隆起部29の稜線に対応する箇所に設けられ、裏面側の耐力フレーム27を支持固定する磁石53及びガイド54は、上型11に備え付けられる。すると、図8に示すように、耐力フレーム27を取り付ける位置が、発泡成形型1の前方に立つ作業員から、かなり遠く、上型11と下型12との間に入り込んで作業を行う必要がある。特に、中子型13が突き出された状態では、中子型13の下にもぐり込んで作業を行う必要がある。また、比較例の発泡成形型1’であると、耐力フレーム27の真上にパーティングライン18がないため、エアポケットや欠肉が、上記の実施形態の発泡成形型1に比べて発生しやすくなる。
【符号の説明】
【0036】
1…発泡成形型 11…上型 12…下型 13…中子型 14…ヒンジ
15…シリンダー駆動装置 16…キャビティー 17…合わせ面
17A…ガス抜き用の平行面間スリット 18,19…パーティングライン
18A…先細のスリット部 2…クッションパッド 21…張り出し部
22…パッド本体 23…折り返し部 25…凹部 26…バリ
27…裏面に近接した耐力フレーム 28…パッド中心層付近の耐力フレーム
29…ヒンジ側の端部の隆起部 51…中子型からのひさし(庇)状延在部
52…中子型からのフレーム取り付け用延在部 53…フレーム取り付け用磁石
54…フレームガイド部材 55…表皮係止部 56…表側の面の溝
57…上型11による成形面 58…ひさし状延在部51による成形面
59…フレーム取り付け用延在部52による成形面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に近接した箇所に耐力フレームが埋め込まれたクッションパッドを製造すべく、上型、下型及び中子型よりなる発泡成形型を用いて発泡成形を行うにあたり、
発泡成形時の発泡成形型において、前記耐力フレームを上方から部分的に覆う位置にまで、中子型を延在させることにより、前記耐力フレームに沿って延びる上型と中子型とのパーティングラインを、平面図にて前記耐力フレームと重なる領域中に配置させることを特徴とするクッションパッドの製造方法。
【請求項2】
前記延在部をさらに延在させてフレーム取り付け用延在部を設け、この延在部を介して、前記耐力フレームが中子型に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のクッションパッドの製造方法。
【請求項3】
前記パーティングラインに沿って先細のスリットを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のクッションパッドの製造方法、
【請求項4】
前記先細のスリットは、中子型の中心へと向かって上昇するように傾斜して設けられ、このスリットを挟む壁面は、中子型の側で、上型の側よりも傾斜が大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のクッションパッドの製造方法。
【請求項5】
クッションパッドを製造するための、上型、下型及び中子型よりなる発泡成形型であって、耐力フレームをキャビティーの天井面に近接して配置するものにおいて、
上型と中子型とのパーティングラインが、前記天井面にて前記耐力フレームに沿って延びるとともに、平面図にて前記耐力フレームと重なる領域中に配置されたことを特徴とする発泡成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86394(P2013−86394A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229959(P2011−229959)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】