説明

クライオスタットアセンブリ

【課題】磁界発生アセンブリを含む使用空間を冷却するクライオスタットアセンブリを提供する。
【解決手段】クライオスタットアセンブリは、使用空間の外側に配置された第1の熱シールド(1);及び第1の熱シールド(1)の外側に配置された第2の熱シールド(4)を含む。第1のクライオクーラー(6)は、He4で作動する少なくとも二つの冷却段を有し、第1のクライオクーラー(6)の第1の冷却段(8)が第2の熱シールド(4)に熱が伝わるように結合され、第1のクライオクーラー(6)の第2の冷却段(9)が第1の熱シールド(1)に熱が伝わるように結合される。第2のクライオクーラー(10)は、He3で作動し且つ少なくとも一つの冷却段(12)を有し、第2のクライオクーラーの冷却段よりも高温の第2のクライオクーラーの一部分が、第1のクライオクーラー(6)の第2の冷却段(9)に熱が伝わるように結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、磁界発生アセンブリを含む使用空間を冷却するクライオスタットアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
使用空間を2K以下程度の非常に低い温度まで冷却する必要がある多くのアプリケーションがある。これらは、典型的には、NMR、MRI、ICR、FTICR、及びDNPのようなアプリケーションでの高磁界超伝導マグネットの使用に関する。これは、マグネットが沈められる液体4Heの槽を用いて一般的に達成される。マグネット浴或いは容器は、4Heの超流動転移温度、或いはλ点、よりも少し高い、約2.2Kまで一般的に冷却される。
【0003】
2.2Kは、二つの理由で好ましい作動温度である。4Heの比熱容量は、λ(ラムダ)点でピークに達するので、システムの温度安定性を向上させるために可能な限りλ点の近くで作動するのが望ましい。しかしながら、λ点以下で作動することは、望ましくないと一般的に考えられている。これは、液体の割合が、粘性のない超流体になるからであり、それは、重力に対抗しても、より高い温度のクライオスタットの領域の方に最小の亀裂或いは穴を通って流れ、かくしてかなりの熱漏れをもたらし、ボイルオフ(いわゆる“スーパーリーク”現象)を増す。
【0004】
初期のサブクールシステムでは、液体Heを含んだマグネット収納容器をより低い圧力まで単にポンプで吸上げて、液体槽を徐々に蒸発させてマグネットを過冷する。この簡単な設計ではシステムを暖める必要があり、従って、浴が補充を必要とする場合、マグネットを遮断する。この主な費用及び不都合を回避するために、ラムダ(λ)点冷凍器がRoubeau、等によって発明された(“4.2K以下の温度での超伝導マグネットの作動”,Cryogenics, Feb 1972, pp.44-47, Biltcliffe, Hanley, McKinnon, Roubeau)。
【0005】
残念ながら、λ冷凍器による方法は、望ましくない大量のヘリウムを利用する。
【0006】
クライオクーラーは知られているが、いずれも実用的なシステムを約2Kの温度まで冷却することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
Jiabg、等による“1.3Kまで作動する3Heパルスチューブクーラー”,Cryogenics 44 (2004) 809-816は、その加温末端が単一段He4クライオクーラーのコールドプラットフォームに接続される、単一段He3クライオクーラーの設計を記述する実験報告である。このように、He4クライオクーラーは、He3クライオクーラーの冷却電力を支援する。これは、2.2Kで42mWの冷却電力を生成する。この構成及びそれが生成する冷却電力は、今のところ高磁界マグネットを冷却するためには十分ではないが、高出力He3コンプレッサを用いて冷却電力を増すことができる。しかしながら、これは、システムの作動及び資本コストをかなり増すであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、クライオスタットアセンブリは、使用空間の外側に配置された第1の熱シールドと、第1の熱シールドの外側に配置された第2の熱シールドと、He4で作動する少なくとも二つの冷却段を有し、第1の冷却段が第2の熱シールドに熱が伝わるように結合され、第2の冷却段が第1の熱シールドに熱が伝わるように結合される、第1のクライオクーラーと、He3で作動し且つ少なくとも一つ、好適には唯一の冷却段を有する第2のクライオクーラーであって、この第2のクライオクーラーの冷却段よりも高温の第2のクライオクーラーの部分が第1のクライオクーラーの第2の冷却段に熱が伝わるように結合される。
【0009】
マグネット及び他の構成部分を4K以下の可動温度に冷却するけれども、効率的且つ費用効果的な動作を達成する、実用的な方法が存在することを認識している。また、この新しい設計は、従来技術の4K以下の冷却システムのクライオスタット設計に容易に組み込まれ、大規模な再設計の必要性を減じ且つ係る費用を最小にする。特に、第1及び第2の熱シールドを冷却するためにHe4クライオクーラーを設定し且つHe4クライオクーラーの第2の段によって効果的に予冷される追加のHe3クライオクーラーを設定する。He3は、高価な冷却液であり且つこれがHe3クライオクーラーの大きさを最小にすることができ、可動費用を実用的レベルに保つけれどもマグネットのような物体を約1K以下の温度まで冷却するために必要な冷却電力をそれでも達成する。例えば、20T以上の磁界を発生する高磁界マグネットのような、超伝導マグネットを冷却するために適する、2.2Kで200mW程度の冷却電力を達成することができる。
【0010】
好適な例では、第2のクライオクーラーは、単一段のクライオクーラーであるが、一段以上を有する第2のクライオクーラーを利用することが実現可能である。
【0011】
第1のクライオクーラーは、典型的には、二つの冷却段だけを有するが、二段以上を有することもできる。例えば、NMRプローブのような、アセンブリが提供されるシステムの一つの部分を冷却するために第3の段を用いることができる。
【0012】
第2のクライオクーラーの一つの部分は、その目的のために提供される熱リンクを介して第1のクライオクーラーの第2の冷却段に熱が伝わるように結合されてもよい。しかしながら、好ましくは、結合が第1の熱シールドを介して達成され、従って熱シールドが構造の複雑さを減ずる。
【0013】
好ましくは、第2のクライオクーラーへの第1のクライオクーラーによって提供される支援を増すために、一部分よりも高温の第2のクライオクーラーの別の部分が第1のクライオクーラーの第1の冷却段に結合される。この場合もやはり、個別の熱リンクを介して、或いは、好ましくは第2の熱シールドを介して、これを達成することができる。
【0014】
第2のクライオクーラーの冷却段の場所及び機能は、アプリケーションによる。かくして、クライオスタットアセンブリは、第2のクライオクーラーの冷却段が液体ヘリウム含有容器内に配置される再凝縮システムで用いることができ、気化した液体ヘリウムを再凝縮して液体ヘリウムの中に沈められた超伝導マグネットのような品目を冷却する。変形例として、アセンブリは、凍結剤未使用のクライオスタットで用いることができる。この場合には、例えば、冷却される物体は、真空中に配置され且つ伝導によって冷却される。
【0015】
本発明の更なる利点は、第2のクライオクーラーを単に追加し且つ適当に連結することによって新しい冷却システムを導入するために既存のクライオスタット設計を容易に変更することができることである。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、磁界発生アセンブリは、超伝導マグネットと、マグネットをその作動温度まで冷却するように超伝導マグネットがその内部に配置される使用空間を有するクライオスタットと、を含み、クライオスタットは、使用空間の外側に配置された第1の熱シールドと、この第1の熱シールドの外側に配置された第2の熱シールドと、He4で作動する第1の単一冷却段のクライオクーラーであって、この単一冷却段が第2の熱シールドに熱が伝わるように結合されている、第1の単一冷却段のクライオクーラーと、He3で作動する第2の単一冷却段のクライオクーラーであって、第1の熱シールドに熱が伝わるように結合され且つより高温の部分が第1のクライオクーラーの単一冷却段に熱が伝わるように結合される、第2の単一冷却段のクライオクーラーと、を含む。
【0017】
本発明のこの態様は、高磁界マグネット(例えば>20T)を約2Kに冷却するための実用的なシステムを提供する。
【0018】
本発明によるクライオスタットアセンブリのアプリケーションは、MRI、NMR、ICR、FTICR、及びDNPを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明によるクライオスタットアセンブリの実施形態を、添付図面を参照していま説明する。
【0020】
図1に示すクライオスタットアセンブリは、液体He4収容容器2を取り囲む第1の熱シールド1を含む。超伝導マグネット20が容器2に配置される。後述する他のシールドと一緒にこれらの構成部品は、室温で中央孔3のまわりに配置され、内側には検査されるべきサンプルが使用時に配置される。
【0021】
第2の熱シールド4が第1の熱シールド1を取り囲み且つ構成部品が全て外側真空チャンバ5の内側に配置される。
【0022】
第1のクライオクーラー6が外側真空チャンバ5の第1のタレット7に取付けられていて、第2の熱シールド4に熱が伝わるように結合された第1の冷却段8と、及び第1の熱シールド1に熱が伝わるように結合された第2の冷却段9とを含む。
【0023】
クライオクーラー6は、在来の構造であり且つHe4を利用するパルスチューブ冷凍器或いはジフォード−マクマホン冷凍器を含むことがある。クライオクーラー6は、室温で作動するHe4コンプレッサ(図示せず)によって動力を得る。
【0024】
動作を説明すると、クライオクーラー6の第1の冷却段8は、第2のシールド4を約50Kの温度に維持しながら、第2の冷却段9は、第1の熱シールド1を約5Kに維持する。
【0025】
第2の、単一段He3クライオクーラー10が、外側真空チャンバ5の第2のタレット11に取付けられる。このクライオクーラー10は、内部容器2の内側に配置された単一冷却段12を有する。単一冷却段12よりも高温のクライオクーラー10の第1の部分13が、第1の熱シールド1に熱が伝わるように結合されながら、第1の部分よりも高温の第2の部分14が、第2の熱シールド4に熱が伝わるように結合される。第1の部分13、第2の部分14へのリンクを、銅輪、等によって供給することがある。クライオクーラー10は、室温で作動するHe3コンプレッサ(図示せず)によって動力を得る。
【0026】
動作を説明すると、二段クライオクーラー6は、その第2の冷却段9で4.2Kで約1Wの冷却電力、及びその第1の冷却段8で45〜50Kの温度で約40Wの冷却電力をもたらす。次いで、第2の冷却段9は、クライオクーラー10を、クライオクーラー10の部分13への熱リンクを介してプレクールするために用いられる。追加のプレクーリングが、クライオクーラー6の第1の冷却段8とクライオクーラー10の第2の部分14との間で熱が伝わるような結合によって達成される。更に、勿論、クライオクーラー6の第1の冷却段8と第2の冷却段9は、第2の熱シールド4と第1の熱シールド1をそれぞれ冷却する。結果は、クライオクーラー10の冷却段が容器2の内側に約2.2Kでヘリウムを凝縮する。
【0027】
これは、4K以下の温度に対して先に記述した従来技術の冷却システムで必要である真空ポンプ、熱交換器、及び膨張弁のような構成部品の必要性を除去する。これは、クライオスタットアセンブリの設計を簡単にして、更に費用を減らす。
【0028】
He4PTR6は真空の中にありながら、凝縮He3PTR10は気体の中にある。
【0029】
図2に示す実施形態では、クライオスタットの基本的な設計は、図1に示すものに同じであり再説明を行わない。図1に示されたものと同一符号を付した構成要素は、同じ構造及び機能を有する。
【0030】
二つの実施形態の主な違いは、単一段He4クライオクーラー60がクライオクーラー6の代わりに用いられるだけであり、クライオクーラー60は、He4の使用にまだ基づいている。これは、十分な冷却電力を第2のHe3クライオクーラー10の冷却段12にもたらしてマグネット12をその超伝導状態に維持することができるであろう。強力なコンプレッサがHe3クライオクーラー10及びHe4クライオクーラー60の両方に用いられるならば、十分に高い冷却電力を達成されるので、小さなマグネットを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態の超伝導マグネットを冷却するクライオスタットアセンブリの概略断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態を示す図1に類似する図である。
【符号の説明】
【0032】
1 第1の熱シールド
2 液体He4含有容器
3 中央孔
4 第2の熱シールド
5 外側真空チャンバ
6 クライオクーラー
7 第1のタレット
8 第1の冷却段
9 第2の冷却段
10 単一段He3クライオクーラー
11 第2のタレット
12 単一冷却段
13 第1の部分
14 第2の部分
20 超伝導マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用空間の外側に配置された第1の熱シールドと、
この第1の熱シールドの外側に配置された第2の熱シールドと、
He4で作動する少なくとも二つの冷却段である第1の冷却段と第2の冷却段を備えた第1のクライオクーラーであって、上記第1の冷却段が上記第2の熱シールドに熱が伝わるように結合され、上記第2の冷却段が上記第1の熱シールドに熱が伝わるように結合された上記第1のクライオクーラーと、
He3で作動し且つ少なくとも一つの冷却段を有する第2のクライオクーラーであって、この第2のクライオクーラーの冷却段よりも高温の上記第2のクライオクーラーの一部分が上記第1のクライオクーラーの上記第2の冷却段に熱が伝わるように結合された上記第2のオイルクーラーと、
を有することを特徴とするクライオスタットアセンブリ。
【請求項2】
上記第2のクライオクーラーの上記一部分は、上記第1の熱シールドを介して上記第1のクライオクーラーの上記第2の冷却段に熱が伝わるように結合されている請求項1に記載のクライオスタットアセンブリ。
【請求項3】
上記一部分よりも高温の上記第2のクライオクーラーの別の部分が、上記第1のクライオクーラーの上記第1の冷却段と結合されている請求項1又は請求項2に記載のクライオスタットアセンブリ。
【請求項4】
上記第2のクライオクーラーの上記別の部分は、上記第2の熱シールドを介して上記第1のクライオクーラーの上記第1の冷却段に結合されている請求項3に記載のクライオスタットアセンブリ。
【請求項5】
上記第1及び第2のクライオクーラーの一方又は両方は、パルスチューブ冷凍機又はジフォード−マクマホン冷凍機を備えている請求項1乃至4の何れか1項に記載のクライオスタットアセンブリ。
【請求項6】
更に、上記使用空間に配置された超伝導マグネットを有する請求項1乃至5の何れか1項に記載のクライオスタットアセンブリ。
【請求項7】
超伝導マグネットと、
この超伝導マグネットをその作動温度まで冷却するように上記超伝導マグネットがその内部に配置される使用空間を有するクライオスタットと、を有し、
上記クライオスタットは、
上記使用空間の外側に配置された第1の熱シールドと、
この第1の熱シールドの外側に配置された第2の熱シールドと、
He4で作動する第1の単一冷却段のクライオクーラーであって、この単一冷却段が上記第2の熱シールドに熱が伝わるように結合されている上記第1の単一冷却段のクライオクーラーと、
He3で作動する第2の単一冷却段のクライオクーラーであって、上記第1の熱シールドに熱が伝わるように結合され且つより高温の部分が上記第1のクライオクーラーの上記単一冷却段に熱的に結合される上記第2の単一冷却段のクライオクーラーと、
を有することを特徴とする磁界発生アセンブリ。
【請求項8】
上記第2のクライオクーラーの上記より高温の部分は、上記第2の熱シールドを介して上記第1のクライオクーラーの上記冷却段に熱が伝わるように結合されている請求項7に記載の磁界発生アセンブリ。
【請求項9】
上記使用空間は、4.2K以上には冷却されない請求項7又は請求項に記載の磁界発生アセンブリ。
【請求項10】
上記使用空間は、約2Kに冷却される請求項9に記載の磁界発生アセンブリ。
【請求項11】
上記第1の熱シールドは、ほぼ5Kに冷却される請求項7乃至10の何れか1項に記載の磁界発生アセンブリ。
【請求項12】
上記第2の熱シールドは、ほぼ50Kに冷却される請求項7乃至11の何れか1項に記載の磁界発生アセンブリ。
【請求項13】
上記第2のクライオクーラーの上記冷却段は、上記使用空間が配置される冷却液収納容器に配置される請求項7乃至12の何れか1項に記載の磁界発生アセンブリ。
【請求項14】
上記冷却液収納容器の上記冷却液はヘリウムを含む請求項13に記載の磁界発生アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−538856(P2008−538856A)
【公表日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557567(P2007−557567)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000629
【国際公開番号】WO2006/092558
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(501447694)オックスフォード インストルメンツ スーパーコンダクティヴィティ リミテッド (5)
【Fターム(参考)】