説明

クラッド材製造設備の母材予熱装置

【課題】設備全長の長大化を抑えることができ、設備費削減を図り得るクラッド材製造設備の母材予熱装置を提供する。
【解決手段】母材コイル2から巻き戻された母材1の表面に金属粉末を圧着してロウ材層を形成するクラッド材製造設備において、母材1が巻き取られた母材コイル2を包囲して予熱する母材コイル予熱炉13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッド材製造設備の母材予熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、母材であるステンレス或は耐熱合金等の金属板の両面又は片面に、ニッケル等を主成分とする金属粉末を圧着してロウ材層を形成したクラッド材を製造することが行なわれるようになっており、このようなクラッド材を製造する際には、図2に示されるような設備を使用することが提案されている。
【0003】
図2に示されるクラッド材製造設備は、母材1が巻き取られた母材コイル2を巻き戻す母材巻戻機3と、該母材巻戻機3によって母材コイル2から巻き戻された母材1の表面に金属粉末を圧着する粉末圧着機4と、該粉末圧着機4で母材1に金属粉末が圧着されたクラッド材5を加熱して金属粉末を焼結させた後、冷却する加熱冷却炉6と、該加熱冷却炉6で金属粉末を焼結させたクラッド材5を圧延する圧延機7と、該圧延機7で圧延されたクラッド材5をクラッド材コイル8として巻き取るクラッド材巻取機9とを備えてなる構成を有している。
【0004】
前記粉末圧着機4は、回転自在となるよう水平配置された二本のロール10と、該各ロール10上に金属粉末を供給する粉末供給装置11とを備え、前記二本のロール10間に上方から下方へ向け母材1を導入しつつ、前記粉末供給装置11から各ロール10上に金属粉末を供給して、該各ロール10を回転させることにより、前記母材1の両面に金属粉末を圧着させるようになっている。
【0005】
前記加熱冷却炉6においては、金属粉末を溶かさずに焼結させる固相焼結と、金属粉末を溶かして(液相を出して)焼結させる液相焼結のいずれかで、金属粉末の焼結を行い、その後、冷却を行うようになっている。
【0006】
尚、前述の如きクラッド材製造設備と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開2005−186127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特に前記母材1としてステンレス系の金属板を用いた場合、該ステンレス系の金属板が硬い素材であることから、金属粉末が母材1につきにくいため、前記粉末圧着機4より上流側における水平部分に、母材巻戻機3によって母材コイル2から巻き戻された母材1を予熱(およそ600[℃]程度に予熱)して軟らかくする予熱炉12を設置する必要があった。
【0008】
しかしながら、前述の如く、粉末圧着機4より上流側における水平部分に予熱炉12を設けて、母材巻戻機3によって母材コイル2から巻き戻された母材1を予熱するのでは、予熱炉12の長さがおよそ10[m]程度必要となり、設備の全長が長くなって設備費も嵩むという欠点を有していた。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、設備全長の長大化を抑えることができ、設備費削減を図り得るクラッド材製造設備の母材予熱装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、母材コイルから巻き戻された母材の表面に金属粉末を圧着するクラッド材製造設備の母材予熱装置であって、
母材コイルを包囲して予熱する母材コイル予熱炉を備えたことを特徴とするクラッド材製造設備の母材予熱装置にかかるものである。
【0011】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0012】
前述の如く、母材コイルを包囲して予熱する母材コイル予熱炉を備えるようにすると、従来のように、粉末圧着機より上流側における水平部分に予熱炉を設けて、母材コイルから巻き戻された母材を予熱するのに比べ、予熱炉の長さが大幅に短縮され、設備の全長を短くして設備費を削減することが可能となる。
【0013】
前記クラッド材製造設備の母材予熱装置においては、母材コイル予熱炉を、炉本体内に導入される不活性ガスを発熱体で加熱し、該加熱された不活性ガスにより母材コイルの予熱を行う加熱雰囲気炉とすることができる。
【0014】
又、前記クラッド材製造設備の母材予熱装置においては、母材をステンレスとし、金属粉末をニッケルとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のクラッド材製造設備の母材予熱装置によれば、設備全長の長大化を抑えることができ、設備費削減を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図2に示すものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図1に示す如く、ステンレス系の金属板からなる母材1が巻き取られた母材コイル2を包囲して予熱する母材コイル予熱炉13を備えた点にある。
【0018】
本図示例の場合、前記母材コイル予熱炉13は、コイル挿入蓋14の開閉により母材コイル2を出し入れ可能で且つ内面側に断熱材15が設けられた炉本体16と、該炉本体16内に窒素ガス等の不活性ガスを供給する不活性ガス導入口17と、該不活性ガス導入口17から炉本体16内に導入される不活性ガスを加熱する電熱線等の発熱体18とを備え、前記不活性ガス導入口17から炉本体16内に導入される不活性ガスを発熱体18で加熱し、該加熱された不活性ガスにより炉本体16内に収容された母材コイル2の予熱を行う加熱雰囲気炉としてある。
【0019】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0020】
ステンレス系の金属板からなる母材1が巻き取られた母材コイル2は、母材コイル予熱炉13内において、不活性ガス導入口17から炉本体16内に導入され発熱体18で加熱された不活性ガスにより、およそ600[℃]程度に予熱され、軟らかくなった母材1が母材巻戻機3によって母材コイル2から巻き戻され、粉末圧着機4において金属粉末が圧着され、母材1に金属粉末が圧着されたクラッド材5が、加熱冷却炉6で加熱されて金属粉末を焼結させた後、冷却され、該加熱冷却炉6で金属粉末を焼結させたクラッド材5が圧延機7で圧延され、該圧延機7で圧延されたクラッド材5がクラッド材コイル8としてクラッド材巻取機9に巻き取られる。
【0021】
そして、前述の如く、母材コイル2を包囲して予熱する母材コイル予熱炉13を備えるようにすると、従来のように、粉末圧着機4より上流側における水平部分に予熱炉12を設けて、母材巻戻機3によって母材コイル2から巻き戻された母材1を予熱するのに比べ、予熱炉の長さが大幅に短縮され、設備の全長を短くして設備費を削減することが可能となる。
【0022】
因みに、図2に示される予熱炉12の長さがおよそ10[m]程度必要であるのに対し、前記母材コイル予熱炉13の長さは、およそ2[m]程度で済む。
【0023】
又、前記母材コイル予熱炉13を、不活性ガス導入口17から炉本体16内に導入される不活性ガスを発熱体18で加熱し、該加熱された不活性ガスにより母材コイル2の予熱を行う加熱雰囲気炉とすることにより、母材1が巻き取られた母材コイル2を均一に且つ確実に予熱することができる。
【0024】
こうして、設備全長の長大化を抑えることができ、設備費削減を図り得る。
【0025】
尚、本発明のクラッド材製造設備の母材予熱装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す全体概要構成図である。
【図2】近年提案されているクラッド材製造設備の一例を示す全体概要構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1 母材
2 母材コイル
3 母材巻戻機
4 粉末圧着機
5 クラッド材
6 加熱冷却炉
8 クラッド材コイル
9 クラッド材巻取機
10 ロール
11 粉末供給装置
13 母材コイル予熱炉
14 コイル挿入蓋
15 断熱材
16 炉本体
17 不活性ガス導入口
18 発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材コイルから巻き戻された母材の表面に金属粉末を圧着するクラッド材製造設備の母材予熱装置であって、
母材コイルを包囲して予熱する母材コイル予熱炉を備えたことを特徴とするクラッド材製造設備の母材予熱装置。
【請求項2】
母材コイル予熱炉を、炉本体内に導入される不活性ガスを発熱体で加熱し、該加熱された不活性ガスにより母材コイルの予熱を行う加熱雰囲気炉とした請求項1記載のクラッド材製造設備の母材予熱装置。
【請求項3】
母材をステンレスとし、金属粉末をニッケルとした請求項1又は2記載のクラッド材製造設備の母材予熱装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−260713(P2007−260713A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87753(P2006−87753)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】