クリップの取付構造
【課題】クリップを樹脂成形品に取り付ける際の作業性がよく、且つ、樹脂成形品に取り付けられたクリップの脱落を防止でき、しかも、車体の変形やクリップの破壊を防止しながらクリップを再利用するために樹脂成形品から取り外せるようにする。
【解決手段】クリップ2をクリップ取付座1に取り付ける時には、クリップ取付座1の着座部1bに形成された長孔状のクリップ係止孔10にクリップ2の挿入基部をサイドスポイラー側に向かって挿入する。挿入後、板部4と挿入基部とで着座部1bを挟んでクリップ2をクリップ取付座1に取り付ける。サイドスポイラーに取り付けられたクリップ2を取り外す時には、クリップ2をクリップ係止孔10の開放口10a側にスライドさせることにより首部5をクリップ係止孔10の開放口10aを通過させてクリップ2をクリップ係止孔10から抜き出すようにした。
【解決手段】クリップ2をクリップ取付座1に取り付ける時には、クリップ取付座1の着座部1bに形成された長孔状のクリップ係止孔10にクリップ2の挿入基部をサイドスポイラー側に向かって挿入する。挿入後、板部4と挿入基部とで着座部1bを挟んでクリップ2をクリップ取付座1に取り付ける。サイドスポイラーに取り付けられたクリップ2を取り外す時には、クリップ2をクリップ係止孔10の開放口10a側にスライドさせることにより首部5をクリップ係止孔10の開放口10aを通過させてクリップ2をクリップ係止孔10から抜き出すようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車における車体等にスポイラー等の樹脂成形品を取り付ける際に用いるクリップを樹脂成形品に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車における車体に取り付けられるスポイラー等の樹脂成形品は、該樹脂成形品に複数設けられた取付座にクリップを取り付け、該クリップを、自動車の車体に形成された取付孔に挿入係止することにより、車体に取り付けられるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1では、樹脂成形品の取付座は、樹脂成形品の裏面に一体に形成された脚部と、該脚部先端に上記樹脂成形品の裏面との間に空間部を有するように一体に形成され、クリップが取り付けられる着座部とを備えている。そして、上記着座部には両端が開放しないスリットが形成されている。クリップは、樹脂成形品が取り付けられる車体の取付孔に挿入係止するクリップ本体と、クリップ本体の基端側に一体に形成された板部と、該板部に首部を介して一体に形成された挿入基部と、上記板部に一体に形成された回転阻止部とを備えている。上記挿入基部は、短辺側の寸法がスリットの短辺側の寸法よりも小さく形成され、且つ、長辺側の寸法がスリットの短辺側の寸法よりも大きく形成されているとともに、スリットの長辺側の寸法よりも小さく形成されている。そして、上記クリップの挿入基部の短辺側をスリットの短辺側と一致させて、挿入基部を樹脂成形品側に向かってスリットに挿入し、この状態でクリップを首部回りに回転させて挿入基部の長辺側をスリットの長辺側と交差させて、挿入基部と板部とで着座部を挟む。このとき、回転阻止部がスリットに嵌るようになっており、これにより、クリップはその後スリット内で回転できないようになる。したがって、板部と基部とで着座部を挟んだ状態が保たれてクリップが取付座から脱落しなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−112512号公報(段落0017〜0019欄、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、樹脂成形品が破損したり傷付いたりして、車体から樹脂成形品を取り外して新しい樹脂成形品を車体に取り付ける場合がある。このとき、樹脂成形品を車体から無理矢理取り外そうとすると、車体が変形したり、クリップが破壊してしまう。また、クリップを有効活用するために、破損等した樹脂成形品からクリップを破壊せずに取り外して再利用したいという要望もある。しかし、特許文献1のクリップでは、回転阻止部がスリット内に嵌ってクリップを回転させることができないので、クリップをスリットから取り外すことができなくなってしまう。この状態で無理矢理スリットからクリップを取り外そうとすると、車体を変形させてしまったり、クリップの回転阻止部や挿入基部が折れてしまい、クリップを再利用できなくなってしまう。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、クリップを樹脂成形品に取り付ける際の作業性がよく、且つ、樹脂成形品に取り付けられたクリップの脱落を防止でき、しかも、車体の変形やクリップの破壊を防止しながらクリップを再利用するために樹脂成形品から取り外せるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、クリップを樹脂成形品に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造において、クリップ取付時には、クリップ取付座の着座部に形成された長孔状のクリップ係止孔にクリップの挿入基部を樹脂成形品側に向かって挿入するようにした。そして、クリップの挿入基部をクリップ係止孔に挿入後、板部と挿入基部とで着座部を挟んでクリップをクリップ取付座に取り付けるようにした。さらに、クリップ抜出時には、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより首部をクリップ係止孔の開放口を通過させてクリップをクリップ係止孔から抜き出すようにしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、第1の発明では、クリップを樹脂成形品の裏面に一体に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造であって、上記クリップ取付座は、上記樹脂成形品の裏面に一体に形成された脚部と、該脚部先端に上記樹脂成形品の裏面との間に空間部を有するように一体に形成され、クリップが取り付けられる板状の着座部とを備え、上記着座部には、クリップ抜出用の開放口を一端に有する長孔状のクリップ係止孔が形成されているとともに、上記着座部の裏面には、少なくとも一つの溝部が上記クリップ係止孔の長辺に沿うように、且つ、上記クリップ係止孔の開放口側に開口するように形成され、上記クリップは、上記樹脂成形品が取り付けられる相手材の取付孔に挿入係止されるクリップ本体と、該クリップ本体の基端側に一体に形成された板部と、該板部に首部を介して一体に形成され、且つ、該首部を挟んで両側に延びるとともに上記板部側の面に突出する少なくとも一つの係合部を有する挿入基部とを備え、上記挿入基部は、短辺側の寸法が上記クリップ係止孔の短辺側の寸法よりも小さく形成され、且つ、長辺側の寸法が上記クリップ係止孔の短辺側の寸法よりも大きく形成されているとともに上記クリップ係止孔の長辺側の寸法よりも小さく形成され、クリップ取付時には、クリップの挿入基部の短辺側をクリップ係止孔の短辺側と一致させて、上記挿入基部を上記樹脂成形品側に向かってクリップ係止孔に挿入し、この挿入状態で上記クリップを首部回りに回転させて挿入基部の長辺側をクリップ係止孔の長辺側と交差させることにより、該挿入基部と板部とで着座部を挟むとともに、上記係合部を上記溝部に係合させてクリップの回転を阻止し、一方、クリップ抜出時には、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより上記首部をクリップ係止孔の開放口を通過させるとともに上記係合部を上記溝部から離脱させ、クリップをクリップ係止孔から抜き出す構成とした。
【0009】
第2の発明では、クリップを樹脂成形品の裏面に一体に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造であって、上記クリップ取付座は、上記樹脂成形品の裏面に一体に形成された脚部と、該脚部先端に上記樹脂成形品の裏面との間に空間部を有するように一体に形成され、クリップが取り付けられる板状の着座部とを備え、上記着座部には、クリップ抜出用の開放口を一端に有する長孔状のクリップ係止孔が形成され、上記クリップは、上記樹脂成形品が取り付けられる相手材の取付孔に挿入係止されるクリップ本体と、該クリップ本体の基端側に一体に形成された板部と、該板部に首部を介して一体に形成された弾性変形可能な挿入基部とを備え、クリップ取付時には、上記挿入基部を上記樹脂成形品側に向かってクリップ係止孔内に圧縮変形させながら押し込み、挿入基部がクリップ係止孔を通過することで、上記挿入基部の圧縮状態が解放されて元の形状に復元し、該挿入基部と上記板部とで着座部を挟み、一方、クリップ抜出時には、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより上記首部をクリップ係止孔の開放口を通過させてクリップをクリップ係止孔から抜き出す構成とした。
【0010】
第3の発明では、第2の発明において、上記挿入基部には、少なくとも一つの弾性板部の一端が首部に一体に連続し、上記弾性板部の他端には、回転止め片部が一体に形成され、クリップ取付時には、上記回転止め片部を上記クリップ係止孔の長辺側の内側面に当接させる構成とした。
【0011】
第4の発明では、第2の発明において、上記挿入基部には、少なくとも一つの弾性板部の一端が首部に一体に連続し、上記着座部の裏面には、回転止め片部が一体に形成され、クリップ取付時には、上記弾性板部の他端が上記回転止め片部に当接する構成とした。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、挿入基部の短辺側の寸法が、クリップ係止孔の短辺側の寸法より小さいので、挿入基部を容易にクリップ係止孔へ挿入できる。そして、クリップを首部回りに回転させると、板部と挿入基部の長辺側とによって着座部を挟んでクリップが固定されるようになる。このとき、係合部が溝部と係合するので、クリップがクリップ係止孔内で回転しなくなり、板部と挿入基部とで着座部を挟んだ状態が保たれ、クリップをクリップ取付座から脱落させないようにできる。さらに、樹脂成形品を新しいものに取り替える場合、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより首部をクリップ係止孔の開放口を通過させるとともに係合部を溝部から離脱させることができる。したがって、車体を変形させたり、クリップを破壊せずにクリップ取付座からクリップを取り外すことができる。
【0013】
第2の発明によれば、挿入基部をクリップ係止孔に挿入すると、挿入基部の外形がクリップ係止孔の短辺側の寸法よりも大きい寸法である状態からクリップ係止孔の短辺側の寸法よりも小さい寸法の状態となるように圧縮変形して、挿入基部を容易にクリップ係止孔内へ押し込むことができる。そして、挿入基部がクリップ係止孔を通過すると、挿入基部の圧縮状態が解放されて元の形状に復元し、板部と挿入基部とで着座部を挟むようになるので、クリップをクリップ取付座から脱落させないようにできる。さらに、樹脂成形品を新しいものに取り替える場合、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより首部をクリップ係止孔のクリップ係止孔の開放口を通過させることができる。したがって、車体を変形させたり、クリップを破壊せずにクリップ取付座からクリップを取り外すことができる。
【0014】
第3の発明によれば、回転止め片部がクリップ係止孔の長辺側の内側面に当接するので、クリップがクリップ係止孔内で回転しなくなるとともにクリップ取付座にしっかりと固定されるようになり、クリップの脱落を防止することができる。さらに、回転止め片部がクリップ係止孔の長辺側の内側面に当接しているので、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせると、回転止め片部もクリップ係止孔の長辺側の内側面に沿ってスライドして、クリップ取付座からクリップを破壊せずに取り外すことができる。
【0015】
第4の発明によれば、クリップの挿入基部をクリップ係止孔に挿入すると、弾性板部が着座部に形成された回転止め片部に当接するので、クリップがクリップ係止孔内で回転しなくなるとともにクリップ取付座にしっかりと固定されるようになり、クリップの脱落を防止できるようになる。さらに、弾性板部が回転止め片部に当接しているので、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせると、弾性板部が回転止め片部に沿ってスライドして、クリップ取付座からクリップを破壊せずに取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】車体に取り付けられるサイドスポイラーのクリップ取付構造における断面図である。
【図2】クリップをクリップ取付座に取り付ける前の実施形態1に係るクリップ及びクリップ取付座の斜視図である。
【図3】クリップをクリップ取付座に取り付けた後の実施形態1に係るクリップ及びクリップ取付座の斜視図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である
【図5】クリップを取り付ける前の実施形態1に係るクリップ取付座を裏面側からみた斜視図である。
【図6】実施形態1の変形例1に係る図2相当図である。
【図7】実施形態1の変形例1に係る図4相当図である。
【図8】実施形態2に係る図2相当図である。
【図9】図9(a)は、図8におけるC−C線断面図であり、図9(b)は、図8におけるB−B線断面図である。
【図10】実施形態2の変形例1に係る図2相当図である。
【図11】図11(a)は、図10におけるE−E線断面図であり、図11(b)は、図10におけるD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
《発明の実施形態1》
図1は、クリップ2を用いて、車体(相手材)Bdの下部にサイドスポイラー(樹脂成形品)Sを取り付けた状態を示す図である。サイドスポイラーSは、車体Bdの側壁面を覆う側壁部S1と、底壁面を覆う底壁部S2とから構成されている。側壁部S1の車体Bd側には、クリップ取付座1が設けられ、このクリップ取付座1はサイドスポイラーSにおける車両の前後方向に複数設けられている。上記クリップ2をクリップ取付座1に取り付け、車体Bdに形成された挿入孔Hにクリップ2を挿入することで、サイドスポイラーSが車体Bdに取り付けられるようになっている。
【0018】
図2乃至図5に示すように、クリップ取付座1は、サイドスポイラーSにおける側壁部S1の車体Bd側に一体に形成された部分である。このクリップ取付座1は箱形の形状をなしており、サイドスポイラーSの裏面から突出して一体に形成された脚部1aと、該脚部1aの突出方向先端に上記サイドスポイラーSの裏面との間に空間部Rを有するように一体に形成された板状の着座部1bとを備えている。上記脚部1aの車両後方に位置する部分は開放している。
【0019】
上記着座部1bには、後述するクリップ2を取り付けるためのクリップ係止孔10が形成されている。該クリップ係止孔10は、車両前後方向に延びる長孔状をなしており、車両後方側にはクリップ2を抜き出すための開放口10aを有している。上記クリップ係止孔10の内側面には、開放口10aが首部5の径よりも幅狭となるように一対の突起10bが設けられている。突起10bは、先端側に行くにしたがって車両前後方向の幅が狭くなるような形状となっている。この突起10bにより、クリップ2をクリップ取付座1に取り付けたときに不意に開放口10aからクリップ2が脱落するのを防止することができる。
【0020】
図5に示すように、上記着座部1bの裏面には、該着座部1bの表面側に向かって断面凹状に窪むとともに上記クリップ係止孔10の長辺に沿うように延びる一対の溝部11が設けられている。該溝部11は、クリップ係止孔10の開放口10a側に開口する開放口11aを有している。
【0021】
図2乃至図4に示すように、クリップ2は、サイドスポイラーSを車体Bdに取り付けるためのものであり、樹脂製の射出成形品である。クリップ2は、サイドスポイラーSが取り付けられる車体Bdの取付孔Hに挿入係止されるクリップ本体3と、該クリップ本体3の基端側に一体に形成された板部4と、該板部4に首部5を介して一体に形成された挿入基部6とを備えている。
【0022】
クリップ本体3は、挿入方向に延びる角軸部3aと、該角軸部3aを中心として対称に配置された第1弾性板部3b、3cとから構成されている。
【0023】
第1弾性板部3b、3cは、角軸部3aに沿って形成されており、該角軸部3aの先端側に繋がっている。図2及び図3に示すように、第1弾性板部3b、3cは、角軸部3aに繋がる部分から基端側に向かって角軸部3aから離れる方向に傾斜して延び、そして、該第1弾性板部3b、3cの基端側半分は基端側に向かって真っ直ぐに伸びている。該第1弾性板部3b、3cの基端側半分は、先端側半分よりも挿入方向と交差する方向において幅広に形成されている。上記第1弾性板部3bと第1弾性板部3cとは、クリップ2の挿入方向先端側を支点として、挿入方向基端側が角軸部3aに向かって弾性変形可能となっている。
【0024】
板部4は円盤形状をなしており、内側板部41と外側板部42とから構成されている。内側板部41は、角軸部3aの基端側から外方に突出するとともに角軸部3aの周りに沿って延びる板状をなす部分であり、その外周形状は円形状となっている。また、外側板部42は、上記内側板部41の外周端のクリップ本体3側から外方に突出するとともに内側板部41の周りに沿って延びる板状をなす部分であり、その外周形状は円形状となっている。図4に示すように、上記外側板部42の板厚は内側板部41より薄く形成されている。また、図2又は図3に示すように、内側板部41の外形は上記クリップ係止孔10の短辺側寸法よりも大きくなるように形成されている。
【0025】
首部5は、上記板部4の基端側に位置し、中心軸がクリップ2の挿入方向に沿うような略円柱形状をなしている。この首部5の径は、クリップ取付座1におけるクリップ係止孔10の短辺側の寸法よりも若干小さく設計されている。
【0026】
挿入基部6は、上記板部4に首部5を介して一体に形成され、略長方形の板状をなしている。図2に示すように、上記挿入基部6は、該挿入基部6の幅方向の寸法(短辺側の寸法)D1がクリップ係止孔10の幅方向の寸法(短辺側の寸法)d1よりも小さく形成されているとともに、挿入基部6の長手方向の寸法(長辺側の寸法)D2が上記クリップ係止孔10の幅方向の寸法(短辺側の寸法)d1よりも大きく形成されている。また、上記挿入基部6の長手方向の寸法D2が上記クリップ係止孔10の長手方向の寸法(長辺側の寸法)d2よりも小さく形成されている。さらに、挿入基部6の長手方向両端寄りには、板部4側の面に突出する一対の係合部6aが一体に形成されている。したがって、挿入基部6の短辺側とクリップ係止孔10の短辺側とを一致させれば、図2の矢印Xに示すように、上記挿入基部6をサイドスポイラーS側に向かってクリップ係止孔10に挿入することができる。また、図3の矢印Yに示すように、上記挿入状態で、クリップ2を首部5回りに回転させて挿入基部6の長辺側をクリップ係止孔10の長辺側と交差させると、内側板部41の挿入基部6側の面が着座部1bの表面に接触するとともに挿入基部6の内側板部41側の面が着座部1bの裏面に接触し、挿入基部6と板部4とで着座部1bを挟んで、クリップ2を着座部1bに取り付けることができるようになっている。このとき、図4に示すように、係合部6aは溝部11に嵌るようになっており、その後、クリップ2を回転させることができないようになっている。尚、本実施形態では、挿入基部6が略長方形状の板状をなしているが、略楕円状の板状であってもよく、首部5を挟んで両側に延びる形状であればよい。
【0027】
次に、クリップ取付座1へのクリップ2の取り付けについて説明する。まず図2に示すように、クリップ取付座1の車体Bd側にクリップ2を配置する。そして、クリップ2の挿入基部6の短辺側をクリップ係止孔10の短辺側と一致させて、図2の矢印Xに示すように、上記挿入基部6をサイドスポイラーS側に向かってクリップ係止孔10に挿入する。このとき挿入基部6は、幅方向の寸法D1がクリップ係止孔10の幅方向の寸法d1よりも小さく形成され、また、長手方向の寸法D2がクリップ係止孔10の長手方向の寸法d2よりも小さく形成されているので、挿入基部6を着座部1bに接触させることなくクリップ係止孔10へ挿入できる。また、首部5の径はクリップ係止孔10の幅方向の寸法d1よりも若干小さく形成されているので、首部5を着座部1bに接触させることなくクリップ係止孔10へ挿入できる。
【0028】
そして、図3の矢印Yに示すように、挿入基部6をクリップ係止孔10へ挿入した状態でクリップ2を首部5回りに回転させる。これにより、挿入基部6の長辺側とクリップ係止孔10の長辺側とが交差して、挿入基部6と板部4とで着座部1bを挟み込むとともに、係合部6aが溝部11に嵌り込む。したがって、係合部6aが溝部11に嵌ることで、その後、クリップ2は首部5回りに回転しなくなり、挿入基部6と板部4とで着座部1bを挟み込んだ状態が保持され、クリップ2がクリップ取付座1から脱落しない。
【0029】
ここで、クリップ係止孔10は、サイドスポイラーSが延びる方向と同じ方向に延びるように形成されている。これにより、サイドスポイラーSを車体Bdに装着後、サイドスポイラーSが熱膨張により車両の前後方向に伸縮しても、クリップ2がクリップ係止孔10内を移動し、サイドスポイラーSを歪ませないようにできる。
【0030】
一方、車体Bdに取り付けられたサイドスポイラーSの修理等を行う必要が生じた場合において、サイドスポイラーS及び車体Bdに取り付けられたクリップ2を取り外すときには、サイドスポイラーSを手で持って、該サイドスポイラーSのクリップ取付座1を図3の矢印Z1方向に移動させ、クリップ係止孔10の開放口10a側へクリップ2をスライド移動させる。すると、矢印Z2方向にクリップ2の首部5がクリップ係止孔10に沿ってスライドするとともに、係合部6aが溝部11に沿ってスライドする。クリップ係止孔10の開放口10a周縁には突起10bが形成されているので、クリップ2の首部5がクリップ係止孔10の開放口10aを通過する際には、少し力を入れて首部5と突起10bとを競り合わせながら通過させる。これと同時に係合部6aを溝部11から離脱させ、クリップ2をクリップ係止孔10から抜き出す。これにより、車体BdにサイドスポイラーSが取り付けられている状態であっても、クリップ取付座1からクリップ2を破壊せずに取り外すことができる。
【0031】
尚、上記では車体Bdに取り付けられたサイドスポイラーSからクリップ2を取り外す場合について説明したが、サイドスポイラーSにクリップ2を取り付けて、車体BdにサイドスポイラーSを取り付ける前に、サイドスポイラーSからクリップ2を取り外す必要が生じた場合には、クリップ2のクリップ本体3を手で持って、クリップ係止孔10の開放口10a側へクリップ2をスライド移動させてクリップ2を取り外すようにしてもよい。
【0032】
以上より、この実施形態1によれば、挿入基部6の幅方向の寸法D1が、クリップ係止孔10の幅方向の寸法d1より小さいので、挿入基部6を容易にクリップ係止孔10へ挿入できる。そして、クリップ2を首部5回りに回転させると、板部4と挿入基部6とによって着座部1bを挟んでクリップ2が固定されるようになる。このとき、係合部6aが溝部11と係合するので、クリップ2がクリップ係止孔10内で回転しなくなり、板部4と挿入基部6とで着座部1bを挟んだ状態が保たれ、クリップ2をクリップ取付座1から脱落させないようにできる。さらに、車体Bdに取り付けられたサイドスポイラーSを新しいものに取り替える場合、サイドスポイラーSを手で持って移動させて、クリップ2をクリップ係止孔10の開放口10a側にスライドさせることにより首部5をクリップ係止孔10の開放口10aを通過させるとともに係合部6aを溝部11から離脱させることができる。したがって、車体Bdを変形させたり、クリップ2を破壊せずにクリップ取付座1からクリップ2を取り外すことができる。
【0033】
また、図6及び図7に示す実施形態1の変形例1のように、クリップ2の内側板部41と挿入基部6の板厚を厚く形成するようにしてもよい。図7に示すように、実施形態1の内側板部41の板厚より変形例1の板厚の方が略2倍の厚さとなっている。また、挿入基部6の長手方向両端縁寄りの位置までの板厚が、長手方向両端部の板厚より略2倍となっている。
【0034】
さらに、図6に示すように、クリップ係止孔10の開放口10a周縁には、開放口10aが首部5の径よりも幅狭となるように一対の突出部10cが設けられている。該突出部10cは、先端側に行くにしたがって車両前後方向の幅が狭くなるような形状となっており、先端は平面となっている。この突出部10cによりクリップ2をクリップ取付座1に取り付けたときに不意に開放口10aからクリップ2が脱落するのを防止することができる。
【0035】
また、着座部1bの表面のクリップ係止孔10周縁には二対の固定用突起1cが形成されている。この固定用突起1cは、車体Bdの前後方向において、クリップ2を任意の位置に固定するためのものであり、クリップ2の板部4と挿入基部6とで着座部1bを挟んだ時に、板部4の着座部1b側の面と競り合わせることにより、クリップ2をクリップ係止孔10内で任意の位置に固定できるようになっている。
【0036】
したがって、この実施形態1の変形例1によれば、クリップ2の挿入基部6の強度がより高くなるので、クリップ2に大きな衝撃が加わっても挿入基部6が簡単に壊れなくなり、サイドスポイラーSが車体Bdから外れてしまうといったことを防止することができる。
【0037】
尚、本実施形態1では、溝部11を一対設けているが、少なくとも一つ設けるようにすればよい。また、挿入基部6においても、突出部10cを一対設けているが、少なくとも一つ設けるようにすればよい。
《発明の実施形態2》
図8及び図9は、本発明の実施形態2に係るクリップ2のサイドスポイラーSへの取付構造を示すものである。この実施形態2では、上記クリップ取付座1の着座部1bに溝部11が設けられておらず、突起10dの形状とクリップ2の挿入基部7の形状が実施形態1と異なっているだけで、他の部分は同じであるため、実施形態1と同じ部分は、実施形態1で詳述した内容及び図面に譲ることとし、以下、異なる部分を詳細に説明する。
【0038】
図8は、本発明の実施形態2に係るクリップ取付座1とクリップ2との斜視図である。クリップ係止孔10の開放口10a周縁には、開放口10aが首部5の径よりも幅狭となるように一対の突起10dが形成されている。突起10dは、先端側に行くにしたがって車両前後方向の幅が狭くなるような形状となっている。また、図9(b)に示すように、突起10dの板厚は、着座部1bの板厚の略3分の1で着座部1bの表面側に設けられている。
【0039】
図8に示すように、クリップ2の挿入基部7には、一対の第2弾性板部(弾性板部)71、72が一端を首部5の端部に一体に連続させて断面V字状に形成されている。ここで、第2弾性板部71は第1弾性板部3b側に位置し、第2弾性板部72は第1弾性板部3c側に位置している。上記第2弾性板部71、72の他端には、板状の回転止め片部71a、72aが形成されている。そして、該回転止め片部71a、72aは、クリップ2をクリップ取付座1に取り付けたとき、クリップ係止孔10の内側面に当接するようになっている。
【0040】
次に、クリップ取付座1へのクリップ2の取り付けについて説明する。まず図8に示すように、クリップ取付座1の車体Bd側にクリップ2を配置する。このとき、挿入基部7の第2弾性板部71、72が、クリップ係止孔10の長辺側の内側面と対峙するような位置となるように、クリップ2を配置する。そして、図8の矢印Xに示すように、挿入基部7をサイドスポイラーS側に向かってクリップ係止孔10に挿入する。このとき、挿入基部7の外形は、クリップ係止孔10の幅方向の寸法(短辺側の寸法)d1よりも大きい寸法である状態なので第2弾性板部71、72はクリップ係止孔10の長辺側の内側面に接触する。更に挿入基部7をクリップ係止孔10に押し込むと、第2弾性板部71、72が圧縮変形して挿入基部7がクリップ係止孔10を通過する。そして、挿入基部7がクリップ係止孔10を通過すると、図9(a)に示すように、第2弾性板部71、72の圧縮状態が解放されて元の形状に復元し、第2弾性板部71、72と板部4とで着座部1bを挟み込む。また、回転止め片部71a、72aがクリップ係止孔10の長辺側の内側面に当接するようになる。これにより、挿入基部7と板部4とで着座部1bを挟み込んだ状態が保持され、クリップ2がクリップ取付座1から脱落しない。また、回転止め片部71a、72aがクリップ係止孔10の内側面に当接するので、クリップ2がクリップ係止孔10内で回転しなくなるとともにクリップ取付座1にしっかりと固定されるようになる。
【0041】
一方、車体Bdに取り付けられたサイドスポイラーSの修理等を行う必要が生じた場合において、サイドスポイラーS及び車体Bdに取り付けられたクリップ2を取り外すときには、サイドスポイラーSを手で持って、クリップ係止孔10の開放口10a側へクリップ2をスライド移動させる。すると、クリップ2の首部5がクリップ係止孔10に沿ってスライドするとともに、回転止め片部71a、72aがクリップ係止孔10の内側面に沿ってスライドする。クリップ係止孔10の開放口10a周縁には突起10dが形成されているので、クリップ2の首部5がクリップ係止孔10の開放口10aを通過する際には、少し力を入れて首部5と突起10bとを競り合わせながら通過させる。また、図9(b)に示すように、突起10dは着座部1bの表面側に設けられておらず、回転止め片部71a、72aが突起10dと接触することがないのでクリップ2をクリップ係止孔10から抜き出す際に第2弾性板部71、72の弾性力がさらに加わることはなく、クリップ2を抜き出す際に無用な負荷がかかることはない。よって、クリップ取付座1からクリップ2を破壊せずに、しかも容易に取り外すことができる。
【0042】
以上より、この実施形態2によれば、実施形態1と同様に、クリップ2の取り付け作業性がよく、クリップ2をクリップ取付座1に取り付けた後、クリップ2がクリップ取付座1から脱落するのを確実に防止することができ、しかも、車体Bdを変形させたり、クリップ2を破壊せずにクリップ取付座1からクリップ2を取り外すことができるようになっている。
【0043】
また、図10及び図11に示す実施形態2の変形例1のように、回転止め片部1dを着座部1bに設けるようにしてもよい。図10及び図11に示すように、回転止め片部1dは、着座部1bの裏面において、サイドスポイラーS側に突出するとともにクリップ係止孔10の長辺に沿うように延びており、該クリップ係止孔10を挟んで一対形成されている。
【0044】
また、クリップ2の挿入基部7には、回転止め片部71a、72aは設けられておらず、第2弾性板部71、72には、他端側に開放する切り欠き部71b、72bが形成されている。
【0045】
次に、クリップ取付座1へのクリップ2の取り付けについて説明する。まず実施形態2と同様に、クリップ取付座1の車体Bd側にクリップ2を配置する。そして、図10の矢印Xに示すように、挿入基部7をサイドスポイラーS側に向かってクリップ係止孔10に圧縮変形させながら押し込む。その後、挿入基部7がクリップ係止孔10を通過すると、図11(a)に示すように、第2弾性板部71、72の圧縮状態が解放されて元の形状に復元し、第2弾性板部71、72と板部4とで着座部1bを挟み込む。また、第2弾性板部71、72の他端が回転止め片部1dに当接するようになる。これにより、挿入基部7と板部4とで着座部1bを挟み込んだ状態が保持され、クリップ2がクリップ取付座1から脱落しない。また、第2弾性板部71、72の他端が回転止め片部1dに当接するので、クリップ2がクリップ係止孔10内で回転しなくなるとともにクリップ取付座1にしっかりと固定され、クリップ2の脱落を防止できるようになる。
【0046】
一方、サイドスポイラーS及び車体Bdに取り付けられたクリップ2を取り外すときには、サイドスポイラーSを手で持って移動させることにより、クリップ係止孔10の開放口10a側へクリップ2をスライド移動させると、第2弾性板部71、72が回転止め片部1dに沿ってスライドするので、クリップ取付座1からクリップ2を破壊せずに取り外すことができるようになっている。
【0047】
尚、実施形態2では、第2弾性板部71、72を設けているが、少なくとも一つ設ける構成であればよい。
【0048】
また、実施形態2では、回転止め片部1dを一対設けているが少なくとも一つ設ける構成であればよい。
【0049】
また、実施形態2では、着座部1bの板部4と対向する面において、位置決め用の固定用突起1cを設けているが、板部4の着座部1bに対向する面において形成するようにしてもよい。この実施形態2の構造は、実施形態1にも適用することができる。
【0050】
また、実施形態1、2では、開放口10aの周縁に突起10b、10d及び突出部10cを設けて開放口10aからのクリップ2の不意の脱落を防止しているが、着座部1bの表裏面に板部4や挿入基部6が引っ掛かるような突起を設けるような構成としてもよい。
【0051】
また、本実施形態1、2では、突起10b、10d及び突出部10cをそれぞれ一対設けているが、少なくとも一方に設ける構成であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のクリップ取付構造は、例えば、自動車における車体等にスポイラー等の樹脂成形品を取り付ける際に用いるクリップを樹脂成形品に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0053】
1 クリップ取付座
1a 脚部
1b 着座部
1c 固定用突起
1d 回転止め片部
2 クリップ
3 クリップ本体
4 板部
5 首部
6 挿入基部
6a 係合部
7 挿入基部
10 クリップ係止孔
10a 開放口
10b 突起
10c 突出部
10d 突起
11 溝部
11a 開放口
71 第2弾性板部(弾性板部)
72 第2弾性板部(弾性板部)
71a 回転止め片部
71b 回転止め片部
S サイドスポイラー(樹脂成形品)
Bd 車体(相手材)
R 空間部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車における車体等にスポイラー等の樹脂成形品を取り付ける際に用いるクリップを樹脂成形品に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車における車体に取り付けられるスポイラー等の樹脂成形品は、該樹脂成形品に複数設けられた取付座にクリップを取り付け、該クリップを、自動車の車体に形成された取付孔に挿入係止することにより、車体に取り付けられるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1では、樹脂成形品の取付座は、樹脂成形品の裏面に一体に形成された脚部と、該脚部先端に上記樹脂成形品の裏面との間に空間部を有するように一体に形成され、クリップが取り付けられる着座部とを備えている。そして、上記着座部には両端が開放しないスリットが形成されている。クリップは、樹脂成形品が取り付けられる車体の取付孔に挿入係止するクリップ本体と、クリップ本体の基端側に一体に形成された板部と、該板部に首部を介して一体に形成された挿入基部と、上記板部に一体に形成された回転阻止部とを備えている。上記挿入基部は、短辺側の寸法がスリットの短辺側の寸法よりも小さく形成され、且つ、長辺側の寸法がスリットの短辺側の寸法よりも大きく形成されているとともに、スリットの長辺側の寸法よりも小さく形成されている。そして、上記クリップの挿入基部の短辺側をスリットの短辺側と一致させて、挿入基部を樹脂成形品側に向かってスリットに挿入し、この状態でクリップを首部回りに回転させて挿入基部の長辺側をスリットの長辺側と交差させて、挿入基部と板部とで着座部を挟む。このとき、回転阻止部がスリットに嵌るようになっており、これにより、クリップはその後スリット内で回転できないようになる。したがって、板部と基部とで着座部を挟んだ状態が保たれてクリップが取付座から脱落しなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−112512号公報(段落0017〜0019欄、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、樹脂成形品が破損したり傷付いたりして、車体から樹脂成形品を取り外して新しい樹脂成形品を車体に取り付ける場合がある。このとき、樹脂成形品を車体から無理矢理取り外そうとすると、車体が変形したり、クリップが破壊してしまう。また、クリップを有効活用するために、破損等した樹脂成形品からクリップを破壊せずに取り外して再利用したいという要望もある。しかし、特許文献1のクリップでは、回転阻止部がスリット内に嵌ってクリップを回転させることができないので、クリップをスリットから取り外すことができなくなってしまう。この状態で無理矢理スリットからクリップを取り外そうとすると、車体を変形させてしまったり、クリップの回転阻止部や挿入基部が折れてしまい、クリップを再利用できなくなってしまう。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、クリップを樹脂成形品に取り付ける際の作業性がよく、且つ、樹脂成形品に取り付けられたクリップの脱落を防止でき、しかも、車体の変形やクリップの破壊を防止しながらクリップを再利用するために樹脂成形品から取り外せるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、クリップを樹脂成形品に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造において、クリップ取付時には、クリップ取付座の着座部に形成された長孔状のクリップ係止孔にクリップの挿入基部を樹脂成形品側に向かって挿入するようにした。そして、クリップの挿入基部をクリップ係止孔に挿入後、板部と挿入基部とで着座部を挟んでクリップをクリップ取付座に取り付けるようにした。さらに、クリップ抜出時には、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより首部をクリップ係止孔の開放口を通過させてクリップをクリップ係止孔から抜き出すようにしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、第1の発明では、クリップを樹脂成形品の裏面に一体に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造であって、上記クリップ取付座は、上記樹脂成形品の裏面に一体に形成された脚部と、該脚部先端に上記樹脂成形品の裏面との間に空間部を有するように一体に形成され、クリップが取り付けられる板状の着座部とを備え、上記着座部には、クリップ抜出用の開放口を一端に有する長孔状のクリップ係止孔が形成されているとともに、上記着座部の裏面には、少なくとも一つの溝部が上記クリップ係止孔の長辺に沿うように、且つ、上記クリップ係止孔の開放口側に開口するように形成され、上記クリップは、上記樹脂成形品が取り付けられる相手材の取付孔に挿入係止されるクリップ本体と、該クリップ本体の基端側に一体に形成された板部と、該板部に首部を介して一体に形成され、且つ、該首部を挟んで両側に延びるとともに上記板部側の面に突出する少なくとも一つの係合部を有する挿入基部とを備え、上記挿入基部は、短辺側の寸法が上記クリップ係止孔の短辺側の寸法よりも小さく形成され、且つ、長辺側の寸法が上記クリップ係止孔の短辺側の寸法よりも大きく形成されているとともに上記クリップ係止孔の長辺側の寸法よりも小さく形成され、クリップ取付時には、クリップの挿入基部の短辺側をクリップ係止孔の短辺側と一致させて、上記挿入基部を上記樹脂成形品側に向かってクリップ係止孔に挿入し、この挿入状態で上記クリップを首部回りに回転させて挿入基部の長辺側をクリップ係止孔の長辺側と交差させることにより、該挿入基部と板部とで着座部を挟むとともに、上記係合部を上記溝部に係合させてクリップの回転を阻止し、一方、クリップ抜出時には、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより上記首部をクリップ係止孔の開放口を通過させるとともに上記係合部を上記溝部から離脱させ、クリップをクリップ係止孔から抜き出す構成とした。
【0009】
第2の発明では、クリップを樹脂成形品の裏面に一体に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造であって、上記クリップ取付座は、上記樹脂成形品の裏面に一体に形成された脚部と、該脚部先端に上記樹脂成形品の裏面との間に空間部を有するように一体に形成され、クリップが取り付けられる板状の着座部とを備え、上記着座部には、クリップ抜出用の開放口を一端に有する長孔状のクリップ係止孔が形成され、上記クリップは、上記樹脂成形品が取り付けられる相手材の取付孔に挿入係止されるクリップ本体と、該クリップ本体の基端側に一体に形成された板部と、該板部に首部を介して一体に形成された弾性変形可能な挿入基部とを備え、クリップ取付時には、上記挿入基部を上記樹脂成形品側に向かってクリップ係止孔内に圧縮変形させながら押し込み、挿入基部がクリップ係止孔を通過することで、上記挿入基部の圧縮状態が解放されて元の形状に復元し、該挿入基部と上記板部とで着座部を挟み、一方、クリップ抜出時には、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより上記首部をクリップ係止孔の開放口を通過させてクリップをクリップ係止孔から抜き出す構成とした。
【0010】
第3の発明では、第2の発明において、上記挿入基部には、少なくとも一つの弾性板部の一端が首部に一体に連続し、上記弾性板部の他端には、回転止め片部が一体に形成され、クリップ取付時には、上記回転止め片部を上記クリップ係止孔の長辺側の内側面に当接させる構成とした。
【0011】
第4の発明では、第2の発明において、上記挿入基部には、少なくとも一つの弾性板部の一端が首部に一体に連続し、上記着座部の裏面には、回転止め片部が一体に形成され、クリップ取付時には、上記弾性板部の他端が上記回転止め片部に当接する構成とした。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、挿入基部の短辺側の寸法が、クリップ係止孔の短辺側の寸法より小さいので、挿入基部を容易にクリップ係止孔へ挿入できる。そして、クリップを首部回りに回転させると、板部と挿入基部の長辺側とによって着座部を挟んでクリップが固定されるようになる。このとき、係合部が溝部と係合するので、クリップがクリップ係止孔内で回転しなくなり、板部と挿入基部とで着座部を挟んだ状態が保たれ、クリップをクリップ取付座から脱落させないようにできる。さらに、樹脂成形品を新しいものに取り替える場合、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより首部をクリップ係止孔の開放口を通過させるとともに係合部を溝部から離脱させることができる。したがって、車体を変形させたり、クリップを破壊せずにクリップ取付座からクリップを取り外すことができる。
【0013】
第2の発明によれば、挿入基部をクリップ係止孔に挿入すると、挿入基部の外形がクリップ係止孔の短辺側の寸法よりも大きい寸法である状態からクリップ係止孔の短辺側の寸法よりも小さい寸法の状態となるように圧縮変形して、挿入基部を容易にクリップ係止孔内へ押し込むことができる。そして、挿入基部がクリップ係止孔を通過すると、挿入基部の圧縮状態が解放されて元の形状に復元し、板部と挿入基部とで着座部を挟むようになるので、クリップをクリップ取付座から脱落させないようにできる。さらに、樹脂成形品を新しいものに取り替える場合、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより首部をクリップ係止孔のクリップ係止孔の開放口を通過させることができる。したがって、車体を変形させたり、クリップを破壊せずにクリップ取付座からクリップを取り外すことができる。
【0014】
第3の発明によれば、回転止め片部がクリップ係止孔の長辺側の内側面に当接するので、クリップがクリップ係止孔内で回転しなくなるとともにクリップ取付座にしっかりと固定されるようになり、クリップの脱落を防止することができる。さらに、回転止め片部がクリップ係止孔の長辺側の内側面に当接しているので、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせると、回転止め片部もクリップ係止孔の長辺側の内側面に沿ってスライドして、クリップ取付座からクリップを破壊せずに取り外すことができる。
【0015】
第4の発明によれば、クリップの挿入基部をクリップ係止孔に挿入すると、弾性板部が着座部に形成された回転止め片部に当接するので、クリップがクリップ係止孔内で回転しなくなるとともにクリップ取付座にしっかりと固定されるようになり、クリップの脱落を防止できるようになる。さらに、弾性板部が回転止め片部に当接しているので、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせると、弾性板部が回転止め片部に沿ってスライドして、クリップ取付座からクリップを破壊せずに取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】車体に取り付けられるサイドスポイラーのクリップ取付構造における断面図である。
【図2】クリップをクリップ取付座に取り付ける前の実施形態1に係るクリップ及びクリップ取付座の斜視図である。
【図3】クリップをクリップ取付座に取り付けた後の実施形態1に係るクリップ及びクリップ取付座の斜視図である。
【図4】図3におけるA−A線断面図である
【図5】クリップを取り付ける前の実施形態1に係るクリップ取付座を裏面側からみた斜視図である。
【図6】実施形態1の変形例1に係る図2相当図である。
【図7】実施形態1の変形例1に係る図4相当図である。
【図8】実施形態2に係る図2相当図である。
【図9】図9(a)は、図8におけるC−C線断面図であり、図9(b)は、図8におけるB−B線断面図である。
【図10】実施形態2の変形例1に係る図2相当図である。
【図11】図11(a)は、図10におけるE−E線断面図であり、図11(b)は、図10におけるD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
《発明の実施形態1》
図1は、クリップ2を用いて、車体(相手材)Bdの下部にサイドスポイラー(樹脂成形品)Sを取り付けた状態を示す図である。サイドスポイラーSは、車体Bdの側壁面を覆う側壁部S1と、底壁面を覆う底壁部S2とから構成されている。側壁部S1の車体Bd側には、クリップ取付座1が設けられ、このクリップ取付座1はサイドスポイラーSにおける車両の前後方向に複数設けられている。上記クリップ2をクリップ取付座1に取り付け、車体Bdに形成された挿入孔Hにクリップ2を挿入することで、サイドスポイラーSが車体Bdに取り付けられるようになっている。
【0018】
図2乃至図5に示すように、クリップ取付座1は、サイドスポイラーSにおける側壁部S1の車体Bd側に一体に形成された部分である。このクリップ取付座1は箱形の形状をなしており、サイドスポイラーSの裏面から突出して一体に形成された脚部1aと、該脚部1aの突出方向先端に上記サイドスポイラーSの裏面との間に空間部Rを有するように一体に形成された板状の着座部1bとを備えている。上記脚部1aの車両後方に位置する部分は開放している。
【0019】
上記着座部1bには、後述するクリップ2を取り付けるためのクリップ係止孔10が形成されている。該クリップ係止孔10は、車両前後方向に延びる長孔状をなしており、車両後方側にはクリップ2を抜き出すための開放口10aを有している。上記クリップ係止孔10の内側面には、開放口10aが首部5の径よりも幅狭となるように一対の突起10bが設けられている。突起10bは、先端側に行くにしたがって車両前後方向の幅が狭くなるような形状となっている。この突起10bにより、クリップ2をクリップ取付座1に取り付けたときに不意に開放口10aからクリップ2が脱落するのを防止することができる。
【0020】
図5に示すように、上記着座部1bの裏面には、該着座部1bの表面側に向かって断面凹状に窪むとともに上記クリップ係止孔10の長辺に沿うように延びる一対の溝部11が設けられている。該溝部11は、クリップ係止孔10の開放口10a側に開口する開放口11aを有している。
【0021】
図2乃至図4に示すように、クリップ2は、サイドスポイラーSを車体Bdに取り付けるためのものであり、樹脂製の射出成形品である。クリップ2は、サイドスポイラーSが取り付けられる車体Bdの取付孔Hに挿入係止されるクリップ本体3と、該クリップ本体3の基端側に一体に形成された板部4と、該板部4に首部5を介して一体に形成された挿入基部6とを備えている。
【0022】
クリップ本体3は、挿入方向に延びる角軸部3aと、該角軸部3aを中心として対称に配置された第1弾性板部3b、3cとから構成されている。
【0023】
第1弾性板部3b、3cは、角軸部3aに沿って形成されており、該角軸部3aの先端側に繋がっている。図2及び図3に示すように、第1弾性板部3b、3cは、角軸部3aに繋がる部分から基端側に向かって角軸部3aから離れる方向に傾斜して延び、そして、該第1弾性板部3b、3cの基端側半分は基端側に向かって真っ直ぐに伸びている。該第1弾性板部3b、3cの基端側半分は、先端側半分よりも挿入方向と交差する方向において幅広に形成されている。上記第1弾性板部3bと第1弾性板部3cとは、クリップ2の挿入方向先端側を支点として、挿入方向基端側が角軸部3aに向かって弾性変形可能となっている。
【0024】
板部4は円盤形状をなしており、内側板部41と外側板部42とから構成されている。内側板部41は、角軸部3aの基端側から外方に突出するとともに角軸部3aの周りに沿って延びる板状をなす部分であり、その外周形状は円形状となっている。また、外側板部42は、上記内側板部41の外周端のクリップ本体3側から外方に突出するとともに内側板部41の周りに沿って延びる板状をなす部分であり、その外周形状は円形状となっている。図4に示すように、上記外側板部42の板厚は内側板部41より薄く形成されている。また、図2又は図3に示すように、内側板部41の外形は上記クリップ係止孔10の短辺側寸法よりも大きくなるように形成されている。
【0025】
首部5は、上記板部4の基端側に位置し、中心軸がクリップ2の挿入方向に沿うような略円柱形状をなしている。この首部5の径は、クリップ取付座1におけるクリップ係止孔10の短辺側の寸法よりも若干小さく設計されている。
【0026】
挿入基部6は、上記板部4に首部5を介して一体に形成され、略長方形の板状をなしている。図2に示すように、上記挿入基部6は、該挿入基部6の幅方向の寸法(短辺側の寸法)D1がクリップ係止孔10の幅方向の寸法(短辺側の寸法)d1よりも小さく形成されているとともに、挿入基部6の長手方向の寸法(長辺側の寸法)D2が上記クリップ係止孔10の幅方向の寸法(短辺側の寸法)d1よりも大きく形成されている。また、上記挿入基部6の長手方向の寸法D2が上記クリップ係止孔10の長手方向の寸法(長辺側の寸法)d2よりも小さく形成されている。さらに、挿入基部6の長手方向両端寄りには、板部4側の面に突出する一対の係合部6aが一体に形成されている。したがって、挿入基部6の短辺側とクリップ係止孔10の短辺側とを一致させれば、図2の矢印Xに示すように、上記挿入基部6をサイドスポイラーS側に向かってクリップ係止孔10に挿入することができる。また、図3の矢印Yに示すように、上記挿入状態で、クリップ2を首部5回りに回転させて挿入基部6の長辺側をクリップ係止孔10の長辺側と交差させると、内側板部41の挿入基部6側の面が着座部1bの表面に接触するとともに挿入基部6の内側板部41側の面が着座部1bの裏面に接触し、挿入基部6と板部4とで着座部1bを挟んで、クリップ2を着座部1bに取り付けることができるようになっている。このとき、図4に示すように、係合部6aは溝部11に嵌るようになっており、その後、クリップ2を回転させることができないようになっている。尚、本実施形態では、挿入基部6が略長方形状の板状をなしているが、略楕円状の板状であってもよく、首部5を挟んで両側に延びる形状であればよい。
【0027】
次に、クリップ取付座1へのクリップ2の取り付けについて説明する。まず図2に示すように、クリップ取付座1の車体Bd側にクリップ2を配置する。そして、クリップ2の挿入基部6の短辺側をクリップ係止孔10の短辺側と一致させて、図2の矢印Xに示すように、上記挿入基部6をサイドスポイラーS側に向かってクリップ係止孔10に挿入する。このとき挿入基部6は、幅方向の寸法D1がクリップ係止孔10の幅方向の寸法d1よりも小さく形成され、また、長手方向の寸法D2がクリップ係止孔10の長手方向の寸法d2よりも小さく形成されているので、挿入基部6を着座部1bに接触させることなくクリップ係止孔10へ挿入できる。また、首部5の径はクリップ係止孔10の幅方向の寸法d1よりも若干小さく形成されているので、首部5を着座部1bに接触させることなくクリップ係止孔10へ挿入できる。
【0028】
そして、図3の矢印Yに示すように、挿入基部6をクリップ係止孔10へ挿入した状態でクリップ2を首部5回りに回転させる。これにより、挿入基部6の長辺側とクリップ係止孔10の長辺側とが交差して、挿入基部6と板部4とで着座部1bを挟み込むとともに、係合部6aが溝部11に嵌り込む。したがって、係合部6aが溝部11に嵌ることで、その後、クリップ2は首部5回りに回転しなくなり、挿入基部6と板部4とで着座部1bを挟み込んだ状態が保持され、クリップ2がクリップ取付座1から脱落しない。
【0029】
ここで、クリップ係止孔10は、サイドスポイラーSが延びる方向と同じ方向に延びるように形成されている。これにより、サイドスポイラーSを車体Bdに装着後、サイドスポイラーSが熱膨張により車両の前後方向に伸縮しても、クリップ2がクリップ係止孔10内を移動し、サイドスポイラーSを歪ませないようにできる。
【0030】
一方、車体Bdに取り付けられたサイドスポイラーSの修理等を行う必要が生じた場合において、サイドスポイラーS及び車体Bdに取り付けられたクリップ2を取り外すときには、サイドスポイラーSを手で持って、該サイドスポイラーSのクリップ取付座1を図3の矢印Z1方向に移動させ、クリップ係止孔10の開放口10a側へクリップ2をスライド移動させる。すると、矢印Z2方向にクリップ2の首部5がクリップ係止孔10に沿ってスライドするとともに、係合部6aが溝部11に沿ってスライドする。クリップ係止孔10の開放口10a周縁には突起10bが形成されているので、クリップ2の首部5がクリップ係止孔10の開放口10aを通過する際には、少し力を入れて首部5と突起10bとを競り合わせながら通過させる。これと同時に係合部6aを溝部11から離脱させ、クリップ2をクリップ係止孔10から抜き出す。これにより、車体BdにサイドスポイラーSが取り付けられている状態であっても、クリップ取付座1からクリップ2を破壊せずに取り外すことができる。
【0031】
尚、上記では車体Bdに取り付けられたサイドスポイラーSからクリップ2を取り外す場合について説明したが、サイドスポイラーSにクリップ2を取り付けて、車体BdにサイドスポイラーSを取り付ける前に、サイドスポイラーSからクリップ2を取り外す必要が生じた場合には、クリップ2のクリップ本体3を手で持って、クリップ係止孔10の開放口10a側へクリップ2をスライド移動させてクリップ2を取り外すようにしてもよい。
【0032】
以上より、この実施形態1によれば、挿入基部6の幅方向の寸法D1が、クリップ係止孔10の幅方向の寸法d1より小さいので、挿入基部6を容易にクリップ係止孔10へ挿入できる。そして、クリップ2を首部5回りに回転させると、板部4と挿入基部6とによって着座部1bを挟んでクリップ2が固定されるようになる。このとき、係合部6aが溝部11と係合するので、クリップ2がクリップ係止孔10内で回転しなくなり、板部4と挿入基部6とで着座部1bを挟んだ状態が保たれ、クリップ2をクリップ取付座1から脱落させないようにできる。さらに、車体Bdに取り付けられたサイドスポイラーSを新しいものに取り替える場合、サイドスポイラーSを手で持って移動させて、クリップ2をクリップ係止孔10の開放口10a側にスライドさせることにより首部5をクリップ係止孔10の開放口10aを通過させるとともに係合部6aを溝部11から離脱させることができる。したがって、車体Bdを変形させたり、クリップ2を破壊せずにクリップ取付座1からクリップ2を取り外すことができる。
【0033】
また、図6及び図7に示す実施形態1の変形例1のように、クリップ2の内側板部41と挿入基部6の板厚を厚く形成するようにしてもよい。図7に示すように、実施形態1の内側板部41の板厚より変形例1の板厚の方が略2倍の厚さとなっている。また、挿入基部6の長手方向両端縁寄りの位置までの板厚が、長手方向両端部の板厚より略2倍となっている。
【0034】
さらに、図6に示すように、クリップ係止孔10の開放口10a周縁には、開放口10aが首部5の径よりも幅狭となるように一対の突出部10cが設けられている。該突出部10cは、先端側に行くにしたがって車両前後方向の幅が狭くなるような形状となっており、先端は平面となっている。この突出部10cによりクリップ2をクリップ取付座1に取り付けたときに不意に開放口10aからクリップ2が脱落するのを防止することができる。
【0035】
また、着座部1bの表面のクリップ係止孔10周縁には二対の固定用突起1cが形成されている。この固定用突起1cは、車体Bdの前後方向において、クリップ2を任意の位置に固定するためのものであり、クリップ2の板部4と挿入基部6とで着座部1bを挟んだ時に、板部4の着座部1b側の面と競り合わせることにより、クリップ2をクリップ係止孔10内で任意の位置に固定できるようになっている。
【0036】
したがって、この実施形態1の変形例1によれば、クリップ2の挿入基部6の強度がより高くなるので、クリップ2に大きな衝撃が加わっても挿入基部6が簡単に壊れなくなり、サイドスポイラーSが車体Bdから外れてしまうといったことを防止することができる。
【0037】
尚、本実施形態1では、溝部11を一対設けているが、少なくとも一つ設けるようにすればよい。また、挿入基部6においても、突出部10cを一対設けているが、少なくとも一つ設けるようにすればよい。
《発明の実施形態2》
図8及び図9は、本発明の実施形態2に係るクリップ2のサイドスポイラーSへの取付構造を示すものである。この実施形態2では、上記クリップ取付座1の着座部1bに溝部11が設けられておらず、突起10dの形状とクリップ2の挿入基部7の形状が実施形態1と異なっているだけで、他の部分は同じであるため、実施形態1と同じ部分は、実施形態1で詳述した内容及び図面に譲ることとし、以下、異なる部分を詳細に説明する。
【0038】
図8は、本発明の実施形態2に係るクリップ取付座1とクリップ2との斜視図である。クリップ係止孔10の開放口10a周縁には、開放口10aが首部5の径よりも幅狭となるように一対の突起10dが形成されている。突起10dは、先端側に行くにしたがって車両前後方向の幅が狭くなるような形状となっている。また、図9(b)に示すように、突起10dの板厚は、着座部1bの板厚の略3分の1で着座部1bの表面側に設けられている。
【0039】
図8に示すように、クリップ2の挿入基部7には、一対の第2弾性板部(弾性板部)71、72が一端を首部5の端部に一体に連続させて断面V字状に形成されている。ここで、第2弾性板部71は第1弾性板部3b側に位置し、第2弾性板部72は第1弾性板部3c側に位置している。上記第2弾性板部71、72の他端には、板状の回転止め片部71a、72aが形成されている。そして、該回転止め片部71a、72aは、クリップ2をクリップ取付座1に取り付けたとき、クリップ係止孔10の内側面に当接するようになっている。
【0040】
次に、クリップ取付座1へのクリップ2の取り付けについて説明する。まず図8に示すように、クリップ取付座1の車体Bd側にクリップ2を配置する。このとき、挿入基部7の第2弾性板部71、72が、クリップ係止孔10の長辺側の内側面と対峙するような位置となるように、クリップ2を配置する。そして、図8の矢印Xに示すように、挿入基部7をサイドスポイラーS側に向かってクリップ係止孔10に挿入する。このとき、挿入基部7の外形は、クリップ係止孔10の幅方向の寸法(短辺側の寸法)d1よりも大きい寸法である状態なので第2弾性板部71、72はクリップ係止孔10の長辺側の内側面に接触する。更に挿入基部7をクリップ係止孔10に押し込むと、第2弾性板部71、72が圧縮変形して挿入基部7がクリップ係止孔10を通過する。そして、挿入基部7がクリップ係止孔10を通過すると、図9(a)に示すように、第2弾性板部71、72の圧縮状態が解放されて元の形状に復元し、第2弾性板部71、72と板部4とで着座部1bを挟み込む。また、回転止め片部71a、72aがクリップ係止孔10の長辺側の内側面に当接するようになる。これにより、挿入基部7と板部4とで着座部1bを挟み込んだ状態が保持され、クリップ2がクリップ取付座1から脱落しない。また、回転止め片部71a、72aがクリップ係止孔10の内側面に当接するので、クリップ2がクリップ係止孔10内で回転しなくなるとともにクリップ取付座1にしっかりと固定されるようになる。
【0041】
一方、車体Bdに取り付けられたサイドスポイラーSの修理等を行う必要が生じた場合において、サイドスポイラーS及び車体Bdに取り付けられたクリップ2を取り外すときには、サイドスポイラーSを手で持って、クリップ係止孔10の開放口10a側へクリップ2をスライド移動させる。すると、クリップ2の首部5がクリップ係止孔10に沿ってスライドするとともに、回転止め片部71a、72aがクリップ係止孔10の内側面に沿ってスライドする。クリップ係止孔10の開放口10a周縁には突起10dが形成されているので、クリップ2の首部5がクリップ係止孔10の開放口10aを通過する際には、少し力を入れて首部5と突起10bとを競り合わせながら通過させる。また、図9(b)に示すように、突起10dは着座部1bの表面側に設けられておらず、回転止め片部71a、72aが突起10dと接触することがないのでクリップ2をクリップ係止孔10から抜き出す際に第2弾性板部71、72の弾性力がさらに加わることはなく、クリップ2を抜き出す際に無用な負荷がかかることはない。よって、クリップ取付座1からクリップ2を破壊せずに、しかも容易に取り外すことができる。
【0042】
以上より、この実施形態2によれば、実施形態1と同様に、クリップ2の取り付け作業性がよく、クリップ2をクリップ取付座1に取り付けた後、クリップ2がクリップ取付座1から脱落するのを確実に防止することができ、しかも、車体Bdを変形させたり、クリップ2を破壊せずにクリップ取付座1からクリップ2を取り外すことができるようになっている。
【0043】
また、図10及び図11に示す実施形態2の変形例1のように、回転止め片部1dを着座部1bに設けるようにしてもよい。図10及び図11に示すように、回転止め片部1dは、着座部1bの裏面において、サイドスポイラーS側に突出するとともにクリップ係止孔10の長辺に沿うように延びており、該クリップ係止孔10を挟んで一対形成されている。
【0044】
また、クリップ2の挿入基部7には、回転止め片部71a、72aは設けられておらず、第2弾性板部71、72には、他端側に開放する切り欠き部71b、72bが形成されている。
【0045】
次に、クリップ取付座1へのクリップ2の取り付けについて説明する。まず実施形態2と同様に、クリップ取付座1の車体Bd側にクリップ2を配置する。そして、図10の矢印Xに示すように、挿入基部7をサイドスポイラーS側に向かってクリップ係止孔10に圧縮変形させながら押し込む。その後、挿入基部7がクリップ係止孔10を通過すると、図11(a)に示すように、第2弾性板部71、72の圧縮状態が解放されて元の形状に復元し、第2弾性板部71、72と板部4とで着座部1bを挟み込む。また、第2弾性板部71、72の他端が回転止め片部1dに当接するようになる。これにより、挿入基部7と板部4とで着座部1bを挟み込んだ状態が保持され、クリップ2がクリップ取付座1から脱落しない。また、第2弾性板部71、72の他端が回転止め片部1dに当接するので、クリップ2がクリップ係止孔10内で回転しなくなるとともにクリップ取付座1にしっかりと固定され、クリップ2の脱落を防止できるようになる。
【0046】
一方、サイドスポイラーS及び車体Bdに取り付けられたクリップ2を取り外すときには、サイドスポイラーSを手で持って移動させることにより、クリップ係止孔10の開放口10a側へクリップ2をスライド移動させると、第2弾性板部71、72が回転止め片部1dに沿ってスライドするので、クリップ取付座1からクリップ2を破壊せずに取り外すことができるようになっている。
【0047】
尚、実施形態2では、第2弾性板部71、72を設けているが、少なくとも一つ設ける構成であればよい。
【0048】
また、実施形態2では、回転止め片部1dを一対設けているが少なくとも一つ設ける構成であればよい。
【0049】
また、実施形態2では、着座部1bの板部4と対向する面において、位置決め用の固定用突起1cを設けているが、板部4の着座部1bに対向する面において形成するようにしてもよい。この実施形態2の構造は、実施形態1にも適用することができる。
【0050】
また、実施形態1、2では、開放口10aの周縁に突起10b、10d及び突出部10cを設けて開放口10aからのクリップ2の不意の脱落を防止しているが、着座部1bの表裏面に板部4や挿入基部6が引っ掛かるような突起を設けるような構成としてもよい。
【0051】
また、本実施形態1、2では、突起10b、10d及び突出部10cをそれぞれ一対設けているが、少なくとも一方に設ける構成であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のクリップ取付構造は、例えば、自動車における車体等にスポイラー等の樹脂成形品を取り付ける際に用いるクリップを樹脂成形品に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0053】
1 クリップ取付座
1a 脚部
1b 着座部
1c 固定用突起
1d 回転止め片部
2 クリップ
3 クリップ本体
4 板部
5 首部
6 挿入基部
6a 係合部
7 挿入基部
10 クリップ係止孔
10a 開放口
10b 突起
10c 突出部
10d 突起
11 溝部
11a 開放口
71 第2弾性板部(弾性板部)
72 第2弾性板部(弾性板部)
71a 回転止め片部
71b 回転止め片部
S サイドスポイラー(樹脂成形品)
Bd 車体(相手材)
R 空間部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップを樹脂成形品の裏面に一体に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造であって、
上記クリップ取付座は、上記樹脂成形品の裏面に一体に形成された脚部と、該脚部先端に上記樹脂成形品の裏面との間に空間部を有するように一体に形成され、クリップが取り付けられる板状の着座部とを備え、
上記着座部には、クリップ抜出用の開放口を一端に有する長孔状のクリップ係止孔が形成されているとともに、上記着座部の裏面には、少なくとも一つの溝部が上記クリップ係止孔の長辺に沿うように、且つ、上記クリップ係止孔の開放口側に開口するように形成され、
上記クリップは、上記樹脂成形品が取り付けられる相手材の取付孔に挿入係止されるクリップ本体と、該クリップ本体の基端側に一体に形成された板部と、該板部に首部を介して一体に形成され、且つ、該首部を挟んで両側に延びるとともに上記板部側の面に突出する少なくとも一つの係合部を有する挿入基部とを備え、
上記挿入基部は、短辺側の寸法が上記クリップ係止孔の短辺側の寸法よりも小さく形成され、且つ、長辺側の寸法が上記クリップ係止孔の短辺側の寸法よりも大きく形成されているとともに上記クリップ係止孔の長辺側の寸法よりも小さく形成され、
クリップ取付時には、クリップの挿入基部の短辺側をクリップ係止孔の短辺側と一致させて、上記挿入基部を上記樹脂成形品側に向かってクリップ係止孔に挿入し、この挿入状態で上記クリップを首部回りに回転させて挿入基部の長辺側をクリップ係止孔の長辺側と交差させることにより、該挿入基部と板部とで着座部を挟むとともに、上記係合部を上記溝部に係合させてクリップの回転を阻止し、
一方、クリップ抜出時には、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより上記首部をクリップ係止孔の開放口を通過させるとともに上記係合部を上記溝部から離脱させ、クリップをクリップ係止孔から抜き出すように構成されていることを特徴とするクリップの取付構造。
【請求項2】
クリップを樹脂成形品の裏面に一体に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造であって、
上記クリップ取付座は、上記樹脂成形品の裏面に一体に形成された脚部と、該脚部先端に上記樹脂成形品の裏面との間に空間部を有するように一体に形成され、クリップが取り付けられる板状の着座部とを備え、
上記着座部には、クリップ抜出用の開放口を一端に有する長孔状のクリップ係止孔が形成され、
上記クリップは、上記樹脂成形品が取り付けられる相手材の取付孔に挿入係止されるクリップ本体と、該クリップ本体の基端側に一体に形成された板部と、該板部に首部を介して一体に形成された弾性変形可能な挿入基部とを備え、
クリップ取付時には、上記挿入基部を上記樹脂成形品側に向かってクリップ係止孔内に圧縮変形させながら押し込み、挿入基部がクリップ係止孔を通過することで、上記挿入基部の圧縮状態が解放されて元の形状に復元し、該挿入基部と上記板部とで着座部を挟み、
一方、クリップ抜出時には、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより上記首部をクリップ係止孔の開放口を通過させてクリップをクリップ係止孔から抜き出すように構成されていることを特徴とするクリップの取付構造。
【請求項3】
請求項2のクリップの取付構造であって、
上記挿入基部には、少なくとも一つの弾性板部の一端が首部に一体に連続し、
上記弾性板部の他端には、回転止め片部が一体に形成され、
クリップ取付時には、上記回転止め片部を上記クリップ係止孔の長辺側の内側面に当接させるように構成されているクリップの取付構造。
【請求項4】
請求項2のクリップの取付構造であって、
上記挿入基部には、少なくとも一つの弾性板部の一端が首部に一体に連続し、
上記着座部の裏面には、回転止め片部が一体に形成され、
クリップ取付時には、上記弾性板部の他端が上記回転止め片部に当接するように構成されているクリップの取付構造。
【請求項1】
クリップを樹脂成形品の裏面に一体に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造であって、
上記クリップ取付座は、上記樹脂成形品の裏面に一体に形成された脚部と、該脚部先端に上記樹脂成形品の裏面との間に空間部を有するように一体に形成され、クリップが取り付けられる板状の着座部とを備え、
上記着座部には、クリップ抜出用の開放口を一端に有する長孔状のクリップ係止孔が形成されているとともに、上記着座部の裏面には、少なくとも一つの溝部が上記クリップ係止孔の長辺に沿うように、且つ、上記クリップ係止孔の開放口側に開口するように形成され、
上記クリップは、上記樹脂成形品が取り付けられる相手材の取付孔に挿入係止されるクリップ本体と、該クリップ本体の基端側に一体に形成された板部と、該板部に首部を介して一体に形成され、且つ、該首部を挟んで両側に延びるとともに上記板部側の面に突出する少なくとも一つの係合部を有する挿入基部とを備え、
上記挿入基部は、短辺側の寸法が上記クリップ係止孔の短辺側の寸法よりも小さく形成され、且つ、長辺側の寸法が上記クリップ係止孔の短辺側の寸法よりも大きく形成されているとともに上記クリップ係止孔の長辺側の寸法よりも小さく形成され、
クリップ取付時には、クリップの挿入基部の短辺側をクリップ係止孔の短辺側と一致させて、上記挿入基部を上記樹脂成形品側に向かってクリップ係止孔に挿入し、この挿入状態で上記クリップを首部回りに回転させて挿入基部の長辺側をクリップ係止孔の長辺側と交差させることにより、該挿入基部と板部とで着座部を挟むとともに、上記係合部を上記溝部に係合させてクリップの回転を阻止し、
一方、クリップ抜出時には、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより上記首部をクリップ係止孔の開放口を通過させるとともに上記係合部を上記溝部から離脱させ、クリップをクリップ係止孔から抜き出すように構成されていることを特徴とするクリップの取付構造。
【請求項2】
クリップを樹脂成形品の裏面に一体に形成されたクリップ取付座に取り付ける取付構造であって、
上記クリップ取付座は、上記樹脂成形品の裏面に一体に形成された脚部と、該脚部先端に上記樹脂成形品の裏面との間に空間部を有するように一体に形成され、クリップが取り付けられる板状の着座部とを備え、
上記着座部には、クリップ抜出用の開放口を一端に有する長孔状のクリップ係止孔が形成され、
上記クリップは、上記樹脂成形品が取り付けられる相手材の取付孔に挿入係止されるクリップ本体と、該クリップ本体の基端側に一体に形成された板部と、該板部に首部を介して一体に形成された弾性変形可能な挿入基部とを備え、
クリップ取付時には、上記挿入基部を上記樹脂成形品側に向かってクリップ係止孔内に圧縮変形させながら押し込み、挿入基部がクリップ係止孔を通過することで、上記挿入基部の圧縮状態が解放されて元の形状に復元し、該挿入基部と上記板部とで着座部を挟み、
一方、クリップ抜出時には、クリップをクリップ係止孔の開放口側にスライドさせることにより上記首部をクリップ係止孔の開放口を通過させてクリップをクリップ係止孔から抜き出すように構成されていることを特徴とするクリップの取付構造。
【請求項3】
請求項2のクリップの取付構造であって、
上記挿入基部には、少なくとも一つの弾性板部の一端が首部に一体に連続し、
上記弾性板部の他端には、回転止め片部が一体に形成され、
クリップ取付時には、上記回転止め片部を上記クリップ係止孔の長辺側の内側面に当接させるように構成されているクリップの取付構造。
【請求項4】
請求項2のクリップの取付構造であって、
上記挿入基部には、少なくとも一つの弾性板部の一端が首部に一体に連続し、
上記着座部の裏面には、回転止め片部が一体に形成され、
クリップ取付時には、上記弾性板部の他端が上記回転止め片部に当接するように構成されているクリップの取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−43230(P2011−43230A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193436(P2009−193436)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】
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