クリップ
【課題】被固定部材の移動許容ストロークを長くする。
【解決手段】クリップ30は、ピラーガーニッシュPGをフロントピラー10に対して装着するクリップ本体32と、このクリップ本体32に貫通形成された挿通孔34に挿通して該挿通孔34の貫通方向に沿って移動可能に保持された支持部材60とを備えている。支持部材60は、クリップ本体32における挿通孔34の両側から延出するように形成され、該延出する部分の夫々にストッパ70,80が設けられている。クリップ30は、ピラーガーニッシュPGが移動した際に、支持部材60の一方のストッパ70がピラーガーニッシュPGに引っ掛かると共に、他方のストッパ80がクリップ本体32に引っ掛かって、クリップ本体32から外れたピラーガーニッシュPGの所定ストロークだけの移動を許容して抜け止めする。
【解決手段】クリップ30は、ピラーガーニッシュPGをフロントピラー10に対して装着するクリップ本体32と、このクリップ本体32に貫通形成された挿通孔34に挿通して該挿通孔34の貫通方向に沿って移動可能に保持された支持部材60とを備えている。支持部材60は、クリップ本体32における挿通孔34の両側から延出するように形成され、該延出する部分の夫々にストッパ70,80が設けられている。クリップ30は、ピラーガーニッシュPGが移動した際に、支持部材60の一方のストッパ70がピラーガーニッシュPGに引っ掛かると共に、他方のストッパ80がクリップ本体32に引っ掛かって、クリップ本体32から外れたピラーガーニッシュPGの所定ストロークだけの移動を許容して抜け止めする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被固定部材を固定部材に対して装着し、被固定部材が外れた際に所定ストロークだけの移動を許容して抜け止めし得るクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年生産される自動車では、側面衝突事故等による衝撃から乗員を保護するため、シートバックの側面内部に搭載されて乗員の胸部を保護するサイドエアバッグ装置や、フロントピラーからルーフサイド(およびリアピラー)に亘る部位の内側に搭載されて頭部を保護するカーテンエアバッグ装置が実用化されている。例えば図12は、車体を構成するフロントピラー10からルーフサイド12に亘って配設されたカーテンエアバッグ装置AUを、エアバッグ14が乗員室内へ膨張展開した作動状態で示した説明断面図である。このカーテンエアバッグ装置AUは、フロントピラー10に取り付けたピラーガーニッシュ(車両内装部材)PGの裏側からルーフサイド12に取り付けたルーフサイドガーニッシュ(車両内装部材)RGの裏側に亘って画成された空間D内に折り畳んで収容されたエアバッグ14と、フロントピラー10の下部または図示しないリアピラー下部等に配設されたインフレータ(図示省略)とからなる。そして、例えばセンターピラー下部等に配設した衝突感知センサー(図示せず)が衝撃を感知すると、インフレータが作動して空間D内に収容されていたエアバッグ14が乗員室内へ瞬時に膨張展開し、サイドウィンドウガラス18を覆うようになる。
【0003】
前記エアバッグ14および該エアバッグ14を支持するエアバッグ支持部材16は、側面衝突事故の発生前(カーテンエアバッグ装置AUの作動前)には、ピラーガーニッシュPGおよびルーフサイドガーニッシュRGの内側へ収容されている。そして、ピラーガーニッシュPGには、図13に例示するように、フロントピラー10に沿って配設されたウェザーストリップ19が端縁部に密着しているが、カーテンエアバッグ装置AUが作動した場合に、ピラーガーニッシュPGが乗員室R側に移動することで、フロントピラー10とピラーガーニッシュPGとの境界部分にエアバッグ14またはエアバッグ支持部材16の通過を許容する隙間Sが画成されるように工夫されている(図14参照)。
【0004】
前記ピラーガーニッシュPGは、図13に例示するように、フロントピラー10を被覆し得る形状に形成された板状本体の裏側に1つまたは複数の支持台部22が設けられている。支持台部22は、ピラーガーニッシュPGにおける板状本体の裏面からフロントピラー10側に突出する脚部22aで支えられた架台状に形成され、該支持台部22におけるフロントピラー10に対向する天板面22bに第1装着孔24が貫通形成されている。ピラーガーニッシュPGは、第1装着孔24に相対してフロントピラー10に設けられた第2装着孔11および第1装着孔24に嵌め込まれた取付クリップ100によって、フロントピラー10に対して装着されている(図13参照)。取付クリップ100は、フランジ部102の一方の側に形成され、フロントピラー10の第2装着孔11に突入係止される係止固定部104と、該フランジ部102の他方の側に支持台部22の突出高さより長く形成された可撓支持部106と、該可撓支持部106の基端側に設けられた第1係着部108と、該可撓支持部106の先端側に設けられた第2係着部110とから構成されている。取付クリップ100は、第2係着部110および可撓支持部106を、支持台部22の第1装着孔24を介して該支持台部22の天板面22bと板状本体との間に画成された収容部26へ差し込んで収容し、第1係着部108を第1装着孔24に嵌合させることで、ピラーガーニッシュPGへ装着される。そして、取付クリップ100は、係止固定部104を第2装着孔11に嵌合させることで、ピラーガーニッシュPGとフロントピラー10との間の空間Dにエアバッグ14またはエアバッグ支持部材16を収容した状態で、該ピラーガーニッシュPG端縁部をウェザーストリップ19に突き当ててピラーガーニッシュPGをフロントピラー10に対して保持するようになっている。
【0005】
カーテンエアバッグ装置AUが作動した際には、エアバッグ14および/またはエアバッグ支持部材16がピラーガーニッシュPGを裏側から押圧し、この押圧力により第1装着孔24から取付クリップ100の第1係着部108が外れる。この際、ピラーガーニッシュPGは、図14に示すように、第2係着部110が第1装着孔24の開口縁に引っ掛かるまで、すなわち可撓支持部106の全長に略相当する距離だけ乗員室R側へ移動することが許容され、これによりピラーガーニッシュPGとフロントピラー10との間に、エアバッグ14およびエアバッグ支持部材16が延出するための隙間Sが画成される。このような取付クリップ100は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−95033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、カーテンエアバッグ装置AUが作動した際にピラーガーニッシュPGがフロントピラー10から離間できる移動許容ストロークは、可撓支持部106の長さで決まる(図13および図14参照)。しかしながら、乗員の妨害角を少なくするために、ピラーガーニッシュPGの乗員室R側への突出量を減らすよう要請があり、ピラーガーニッシュPGとフロントピラー10との間の空間Dを大きくとることができず、可撓支持部106の長さを確保することが難しくなっている。そこで、可撓支持部106を湾曲したり折り畳んで空間Dに収容する等の工夫がなされているが、可撓支持部106の湾曲構造が複雑になると、かえってエアバッグ14等の円滑な開放を妨げたり、可撓支持部106の先端に位置する第2係着部110が挿入時にピラーガーニッシュPGに強く押し当てられることで、合成樹脂からなるピラーガーニッシュPGの意匠面が白化する等の問題を引き起こす。
【0008】
すなわち本発明は、従来の技術に係るクリップに内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、被固定部材の移動許容ストロークを長くすることができるクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のクリップは、
被固定部材を固定部材に対して装着するクリップ本体と、このクリップ本体に貫通形成された挿通孔に挿通して該挿通孔の貫通方向に沿って移動可能に保持された支持部材とを備え、
前記支持部材は、前記クリップ本体における挿通孔の両側から延出するように形成され、該延出する部分の夫々にストッパが設けられ、
前記支持部材の一方のストッパが被固定部材に引っ掛かると共に、他方のストッパがクリップ本体に引っ掛かって、前記クリップ本体から外れた被固定部材の所定ストロークだけの移動を許容して抜け止めするよう構成したことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、クリップ本体の挿通孔に支持部材を移動可能に挿通して、クリップ本体の両側から支持部材を延出させることができる構成であるので、クリップ本体の被固定部材側および固定部材側の両方に、被固定部材の移動を許容するストロークを持たせることができる。すなわち、クリップ本体の被固定部材側および固定部材側の両方のスペースを利用できるので、被固定部材の移動許容ストローク量を長く設定することができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、前記クリップ本体は、
前記挿通孔の一方の開口周りに設けられ、前記被固定部材に設けられた第1装着孔に離脱可能に係合する第1係合部と、
前記挿通孔の他方の開口周りに設けられ、前記第1装着孔に相対して前記固定部材に設けられる第2装着孔に係合する第2係合部とを備え、前記第1係合部および前記第2係合部が、対応の装着孔への挿入始端を互いに反対に向けて形成され、
前記支持部材は、
前記挿通孔に対して該挿通孔の貫通方向に沿って移動可能に挿通され、第1係合部および第2係合部の挿入始端の夫々から延出する長さに設定された支持軸部と、
前記支持軸部における第1係合部の挿入始端から延出する部分に設けられ、該支持軸部の挿通孔の貫通方向に沿う移動により被固定部材の第1装着孔の開口縁に引っ掛かるよう形成された第1ストッパと、
前記支持軸部における第2係合部の挿入始端から延出する部分に設けられ、該支持軸部の挿通孔の貫通方向に沿う移動により第2係合部に引っ掛かるよう形成された第2ストッパとを備え、
前記支持部材の第1ストッパが被固定部材の第1装着孔の開口縁に引っ掛かると共に、第2ストッパが第2係合部に引っ掛かって、前記クリップ本体の第1係合部から外れた被固定部材の所定ストロークだけの移動を許容して抜け止めするよう構成したことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、クリップ本体の挿通孔に支持部材の支持軸部を移動可能に挿通して、クリップ本体の両側に設けられた係合部の挿入始端から支持部材を延出させることができる構成であるので、クリップ本体の被固定部材側および固定部材側の両方に、被固定部材の移動を許容するストロークを持たせることができる。すなわち、クリップ本体の被固定部材側および固定部材側の両方のスペースを利用できるので、被固定部材の移動許容ストローク量を長く設定することができる。
【0011】
請求項3に係る発明では、前記第1係合部および第2係合部は、前記挿通孔を挟んで該挿通孔の貫通方向に沿って突出するように設けられて、互いに近接する方向へ変形可能な一対の係合片を有し、
前記一対の係合片の夫々には、互いに対向する内側と反対の外側に突出する係合爪が設けられ、
前記クリップ本体は、一対の係合片を互いに近接するように変形させて対応の装着孔に挿入して、該装着孔の開口縁に引っ掛かった係合爪により抜け止めされることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、一対の係合片およびこの係合片に設けた係合爪からなる簡単な係合部の構成で、クリップ本体において被固定部材および固定部材に適切に装着し得る。
【0012】
請求項4に係る発明では、前記第2ストッパは、前記第2係合部側の部分が該第2係合部における両係合片の内側間の間隔より前記支持軸部の軸方向と交差する方向の延出寸法が小さく形成される一方、最大延出部分が第2係合部における両係合片の内側間の間隔より大きくなるよう形成され、
前記支持部材が前記固定部材から離間する被固定部材につれて移動した際に、前記第2ストッパの第2係合部側の部分が一対の係合片の内側間に挿入されて該係合片を押し広げるよう構成したことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、支持部材の移動時に第2係合部の一対の係合片間に挿入された第2ストッパで係合片を押し広げることで、係合片の外側に設けられた係合爪と第2装着孔の開口縁とが強く係合することになり、クリップ本体を固定部材から外れ難くすることができる。
【0013】
請求項5に係る発明では、前記支持部材は、前記クリップ本体の挿通孔に挿通した状態で前記支持軸部の軸周りに回転して姿勢変位可能な一方、少なくとも1つの姿勢で回転が制約され、この回転が制約される保持姿勢で、前記支持部材の第1ストッパが被固定部材の第1装着孔の開口縁に引っ掛かると共に、第2ストッパが第2係合部に引っ掛かる構成としたことを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、支持部材を所定の姿勢に保持することができるので、支持部材がクリップ本体を被固定部材や固定部材へ取り付ける際に邪魔にならず、クリップ本体の取り付けを行い易い。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るクリップによれば、被固定部材の移動許容ストロークを長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な実施例に係るクリップを示す断面図であって、図12のX−X線に相当する断面を示す。
【図2】実施例のクリップを分解して示す概略斜視図である。
【図3】実施例のクリップを示す概略斜視図である。
【図4】実施例のクリップとピラーガーニッシュとの取り付け前の関係を説明する斜視図である。
【図5】実施例のクリップをピラーガーニッシュに取り付けた状態を示す断面図であって、図8のA−A線で破断している。
【図6】実施例のクリップをピラーガーニッシュに取り付けた状態を示す断面図であって、図8のB−B線で破断している。
【図7】実施例のクリップのピラーガーニッシュへの取り付け状況を示す説明図であって、(a)は、第1装着孔に支持部材を挿入している状況を示し、(b)は、第1装着孔に支持部材を挿入した状態で回転して姿勢を変えた状況を示す。
【図8】実施例のクリップをピラーガーニッシュに取り付けた状態で、フロントピラーとの関係を示す概略斜視図である。
【図9】実施例のクリップにおいて、クリップ本体に対する支持部材の取り付け状況を示す説明図であって、(a)は支持部材における支持軸部の前端部側をクリップ本体の挿通孔に挿通した状況を示し、(b)は支持部材における支持軸部の前端部側をクリップ本体の挿通孔に挿通した状態で90°回転した状況を示し、(c)は支持部材における支持軸部の当接部を挿通孔に保持させた状況を示す。
【図10】実施例のクリップにおいて、クリップ本体の挿通孔と支持部材との関係を示す説明図であって、(a)は支持部材における支持軸部の当接部を挿通孔に保持させた状況を示し、(b)は支持軸部の前部側を挿通孔に整合させて回転している状況を示す。
【図11】実施例のクリップを示す断面図であって、エアバッグの作動時に支持部材でピラーガーニッシュを保持している状況を示す。
【図12】カーテンエアバッグ装置が作動して、エアバッグが膨張した状態を示す説明断面図である。
【図13】図12のX−X線断面図であって、従来の取付クリップを示す。
【図14】カーテンエアバッグ装置が作動して、従来の取付クリップの第2係着部に係着されるまでピラーガーニッシュがフロントピラーから離間移動した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係るクリップにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。本発明に係るクリップは、被固定部材である車両内装部材と固定部材である車体構成部材との装着に用いられるものであって、車両内装部材および車体構成部材の間に配設されたエアバッグ等により車両内装部材が車体構成部材から離間するように開放する等、車両内装部材が基本的な装着位置から変位するものに好適である。
【実施例】
【0017】
図1に示すように、実施例では、車体構成部材としてフロントピラー10、車両内装部材としてピラーガーニッシュPGを挙げ、フロントピラー10とピラーガーニッシュPGとの間に収容されたエアバッグ14の開放により、ピラーガーニッシュPGがフロントピラー10から離間移動するのを許容するクリップ30を以下に説明する。なお、説明の便宜上、図12〜図14に示したフロントピラー10、ピラーガーニッシュ20およびサイドエアバッグ装置AUの構成要素と同一の要素については、同一の符号を使用して詳細な説明は省略する。また、以下のクリップの説明では、図1に示すピラーガーニッシュPGをフロントピラー10に対してエアバッグ14を収容した基本的な装着位置を基準として方向を指称する。すなわち、図1のクリップ30において、特に断りがなければ、フロントピラー10とピラーガーニッシュPGが対向する方向を前後方向とし(フロントピラー10側を前とする)、フロントピラー10の立設方向(フロントピラー10とピラーガーニッシュPGが対向する方向に交差する縦方向)を上下方向とし、フロントピラー10とピラーガーニッシュPGが対向する方向に交差する横方向を左右方向という。
【0018】
図1〜図9に示すように、実施例に係るクリップ30は、ピラーガーニッシュPGをフロントピラー10に対して装着するクリップ本体32と、このクリップ本体32と別体に構成され、クリップ本体32に貫通形成された挿通孔34に挿通して該挿通孔34の貫通方向に移動可能に保持された支持部材60とから構成されている。クリップ30は、支持部材60がクリップ本体32における挿通孔34の両側から延出するように形成され、支持部材60のピラーガーニッシュPG側の端部が該ピラーガーニッシュPGに係合する一方、該支持部材60のフロントピラー10側の端部がクリップ本体32に係合するようになっている(図11参照)。そして、クリップ30は、クリップ本体32から外れたピラーガーニッシュPGに追随して支持部材60が挿通孔34の貫通方向に沿って移動し、該支持部材60がクリップ本体32に係合するまでの所定のストロークだけの移動を許容して抜け止めするよう構成されている。
【0019】
前記クリップ本体32は、合成樹脂の成形品である。図2に示すように、クリップ本体32は、基盤となる板状の台板部36を有し、この台板部36の厚み方向を貫通して挿通孔34が形成されている(図1または図9参照)。クリップ本体32は、台板部36の後面側(一方)における挿通孔34の開口周りに設けられ、ピラーガーニッシュPGに設けられた第1装着孔24に離脱可能に係合する第1係合部40と、台板部36の前面側(他方)における挿通孔34の開口周りに設けられ、第1装着孔24に相対してフロントピラー10に設けられた第2装着孔11に係合する第2係合部50とを備えている(図1または図2参照)。クリップ本体32には、第1係合部40および第2係合部50が台板部36の反対の面に設けられ、第1係合部40および第2係合部50が対応の装着孔24,11への挿入始端を互いに反対に向けて形成されている。更に、台板部36の前面には、第2係合部50の根元部分を囲むように延出形成された円盤状の袴片部38が設けられている(図2参照)。袴片部38は、台板部36より薄く形成されて弾性変形可能な可撓性を有し、クリップ本体32では、第2係合部50を第2装着孔11に取り付けた際にフロントピラー10における第2装着孔11の開口周りに袴片部38が弾力的に当接するようになっている(図1参照)。
【0020】
前記クリップ本体32の挿通孔34は、一方の開口寸法に比べてこの一方に直交する他方の開口寸法が大きくなる縦横で寸法が異なる開口形状に形成され、実施例では、上下方向に長手が延在する矩形状に形成されている(図10参照)。ここで、挿通孔34は、クリップ本体32のピラーガーニッシュPGおよびフロントピラー10への取り付け姿勢において、矩形状に形成された第1装着孔24および第2装着孔11の長手と該挿通孔34の長手が揃い、第1装着孔24および第2装着孔11の短手と該挿通孔34の短手が揃うようになっている(図4または図8参照)。また、挿通孔34は、第1装着孔24および第2装着孔11の短手方向の開口寸法より短手方向の開口寸法が狭くなっている。
【0021】
前記第1係合部40は、台板部36の後面に挿通孔34を挟んで該挿通孔34の貫通方向後方に沿って突出するように設けられて、互いに近接する方向へ変形可能な一対の第1係合片(係合片)42,42から構成されている(図1または図2参照)。実施例の第1係合部40は、第1係合片42が挿通孔34の長手辺に沿って夫々設けられ、一対の第1係合片42,42が挿通孔34の短手方向に離間して対向配置されている。一対の第1係合片42,42の夫々には、互いに対向する内側と反対の外側に台板部36と接合する根元部分より外方へ突出する第1係合爪(係合爪)42aが設けられる一方、内側が平坦に形成されている(図5参照)。なお、第1係合部40は、各第1係合片42の内側の平坦面42bが挿通孔34の開口面に連なっている(図1参照)。第1係合片42は、内側の平坦面42bに対して外側が先端部から根元部分に向かうつれて他方の第1係合片42から離れる外方(右側の第1係合片42であれば右側であり、左側の第1係合片42であれば左側である)へ斜めに延出して第1係合爪42aが構成されている(図1または図5参照)。また、第1係合片42は、第1係合爪42aにおける最も外方へ延出した部分から根元部分に向けて他方の第1係合片42に近づく内方へ斜めに延在するよう形成されている。一対の第1係合片42,42は、根元部分外側が互いに平行になるように平坦に形成されている。このように、第1係合部40は、一対の第1係合片42,42が挿通孔34を挟んで左右対称な関係で構成されている。
【0022】
前記第1係合部40は、対向する第1係合片42,42における根元部分外面間の寸法が、第1装着孔24の短手方向の開口寸法に合わせて(図1参照または図4参照)または該開口寸法より小さく設定されている。また、第1係合部40は、対向する第1係合片42,42における第1係合爪42a,42aの突出端間の寸法が第1装着孔24の短手方向の開口寸法より大きく設定されている。また、第1係合部40は、各第1係合片42の上下方向の寸法が第1装着孔24の長手方向の開口寸法に合わせて形成されている。そして、クリップ本体32は、一対の第1係合片42,42を互いに近接するように変形させて第1装着孔24に挿入して、第1装着孔24の開口縁に引っ掛かった第1係合爪42a,42aによりピラーガーニッシュPGの支持台部22に対して装着される(図1,図5および図6参照)。このように、第1係合部40は、根元部分の外形が第1装着孔24の開口形状に合わせて形成されており、第1装着孔24と第1係合部40とが係合したもとでピラーガーニッシュPGをガタツキなく保持し得るようになっている。
【0023】
前記第2係合部50は、台板部36の前面に挿通孔34を挟んで該挿通孔34の貫通方向前方に沿って突出するように設けられて、互いに近接する方向へ変形可能な一対の第2係合片(係合片)52,52から構成されている(図1または図2参照)。実施例の第2係合部50は、第2係合片52が挿通孔34の長手辺に沿って夫々設けられ、一対の第2係合片52,52が挿通孔34の短手方向に離間して対向配置されている。一対の第2係合片52,52の夫々には、互いに対向する内側と反対の外側に台板部36と接合する根元部分より外方(右側の第2係合片52であれば右側であり、左側の第2係合片52であれば左側である)へ突出する第2係合爪(係合爪)52aが設けられる一方、内側が平坦に形成されている(図1または図5参照)。第2係合片52では、平坦面52bが内側に形成された板状部分の外側に、根元部分側に偏倚して設けられた断面略三角形状の突起が第2係合爪52aを構成しており(図2参照)、第2係合片52の先端部が先端から根元部分に向かうにつれて内から外側に傾斜するテーパ形状になっている。このように、第2係合部50は、一対の第2係合片52,52が挿通孔34を挟んで左右対称な関係で構成されている。
【0024】
前記第2係合部50は、対向する第2係合片52,52における根元部分外面間の寸法が、第2装着孔11の短手方向の開口寸法に合わせて(図1参照)または該開口寸法より小さく設定されている。第2係合部50は、対向する第2係合片52,52における第2係合爪52a,52aの突出端間の寸法が第2装着孔11の短手方向の開口寸法より大きく設定されている(図1参照)。また、第2係合部50は、各第2係合片52の上下方向の寸法が第2装着孔11の長手方向の開口寸法に合わせて形成されている(図8参照)。そして、クリップ本体32は、一対の第2係合片52,52を互いに近接するように変形させて第2装着孔11に挿入して、第2装着孔11の開口縁に引っ掛かった第2係合爪52a,52aによりフロントピラー10に対して装着される(図1または図11参照)。第2係合部50は、根元部分の外形が第2装着孔11の開口形状に合わせて形成されており、第2装着孔11と第2係合部50とが係合したもとでフロントピラー10にガタツキなく保持されるようになっている。このように、実施例のクリップ本体32では、第1係合部40と第2係合部50とが、一対の係合片42,42,52,52の配置関係および係合片42,52における係合爪42a,52aの突出方向が同じになるように設定されている。
【0025】
前記クリップ本体32は、第2係合部50と第2装着孔11(フロントピラー10)との係合関係より第1係合部40と第1装着孔24(ピラーガーニッシュPG)との係合関係が外れ易く構成されている。実施例のクリップ本体32では、第1係合部40の第1係合片42が第2係合部50の第2係合片52より上下寸法が小さく形成されて(図2または図6参照)、第2係合爪52aと第2装着孔11の開口縁とが引っ掛かる寸法より第1係合爪42aと第1装着孔24の開口縁とが引っ掛かる寸法が小さくなるように構成されている。また、クリップ本体32は、第2係合部50における第2係合爪52aの根元部分に対する突出量より第1係合部40における第1係合爪42aの根元部分に対する突出量が小さく形成されて、第2係合爪52aと第2装着孔11の開口縁とがラップする量より第1係合爪42aと第1装着孔24の開口縁とがラップする量が小さくなるように構成されている(図1参照)。このように、クリップ本体32は、係合部40,50におけるの係合爪42a,52aの引っ掛かり寸法、係合爪42a,52aのラップする量、係合片42,52の撓み易さ、係合爪42a,52aにおける対応の装着孔24,11に臨む面の傾斜の緩急等の係合爪42a,52aの形状などを調節して、ピラーガーニッシュPGに力が加わった際に、第2係合部50が第2装着孔11から外れないで第1係合部40が第1装着孔24から外れるよう構成される。
【0026】
前記支持部材60は、合成樹脂の成形品であって、クリップ本体32の挿通孔34に対して該挿通孔34の貫通方向である前後方向に沿って移動可能に挿通され、第1係合部40および第2係合部50の挿入始端の夫々から延出する長さに設定された支持軸部62を備えている(図2または図3参照)。また、支持部材60には、支持軸部62における係合部40,50の挿入始端から延出する部分に、該支持部材60の抜け止めをするストッパ70,80が夫々設けられている(図1または図11参照)。具体的には支持部材60は、支持軸部62における第1係合部40の挿入始端から延出する後端部に設けられ、支持軸部62の挿通孔34の貫通方向に沿う移動によりピラーガーニッシュPGの第1装着孔24の開口縁に引っ掛かるよう形成された第1ストッパ70を備えている(図11参照)。更に、支持部材60は、支持軸部62における第2係合部50の挿入始端から延出する前端部に設けられ、該支持軸部62の挿通孔34の貫通方向に沿う移動により第2係合部50に引っ掛かるよう形成された第2ストッパ80を備えている(図11参照)。
【0027】
前記支持部材60の支持軸部62は、長尺な棒状に形成されており、該支持軸部62の長手に沿う軸方向に沿って挿通孔34に挿通される(図2参照)。支持軸部62は、クリップ本体32における第1係合部40の挿入始端から第2係合部50の挿入始端までの寸法より長く設定され、軸方向の全体に亘って挿通孔34に挿通可能な断面形状で形成されている。支持部材60は、第1装着孔24から支持台部22における天板面22bの後側に突出した第1係合部40の挿入始端(後端)から支持軸部62の後端部が延出すると共に、第2装着孔11から筒状のフロントピラー10の内部に突出した第2係合部50の挿入始端から該支持軸部62の前端部が延出するようになっている(図1参照)。なお、実施例の支持軸部62は、軸方向と交差する方向に撓曲可能に構成されている。支持部材60は、クリップ本体32の挿通孔34に挿通した状態で支持軸部62の軸周りに回転して姿勢変位可能な一方、少なくとも1つの姿勢で回転が制約され、この回転が制約される保持姿勢で、第1ストッパ70が第1装着孔24の開口縁に引っ掛かると共に、第2ストッパ80が第2係合部50に引っ掛かるよう構成される。
【0028】
前記支持軸部62には、軸方向の中間部に挿通孔34の開口縁に該支持軸部62の軸周り方向に係合可能な当接部64が設けられ(図2参照)、支持部材60を挿通したクリップ本体32を装着位置やピラーガーニッシュPGやフロントピラー10に取り付ける際などに当接部64が挿通孔34に保持されるようになっている(図1または図10参照)。クリップ本体32の挿通孔34は、左右方向に平行に離間する一対の保持辺34a,34aを有すると共に、一対の保持辺34a,34aと交差する上下方向の寸法が該一対の保持辺34a,34a間より大きく設定された矩形状の開口形状に形成されている。そして、支持軸部62の当接部64は、挿通孔34の一対の保持辺34a,34a間の寸法に合わせた寸法で平行に延在する一対の当接辺64a,64aを有する断面形状に形成され、実施例の当接部64は、一対の当接辺64a,64aと異なる組(上下に対向する組)の辺間が一対の当接辺64a,64a間より長い矩形断面形状に形成されている。なお、当接部64において長手となる一対の当接辺64aと異なる組の辺間の上下寸法は、挿通孔34の長手となる上下の開口寸法より小さくなるよう設定されている(図10参照)。このように、当接部64は、平行な関係で延在する一対の当接辺64a,64a間の寸法が挿通孔34における短手方向の開口寸法に合わせて形成され、該当接部64における対角間の寸法が挿通孔34における短手方向の開口寸法より大きくなっている。すなわち、支持軸部62は、当接部64を挿通孔34に整合することで、当接部64の当接辺64a,64a間が挿通孔34の保持辺34a,34a間に挟まれて、該支持軸部62の軸周りの回転が保持姿勢で制約されるようになっている(図10(a)参照)。
【0029】
前記支持軸部62は、当接部64より後側部分を構成する挿通部66が、当接部64の一対の当接辺64a,64a間の左右寸法より狭く設定されると共に、当接部64における一対の当接辺64a,64aと異なる組の辺間と同じ上下寸法に設定された矩形断面形状に形成されている(図2参照)。すなわち、挿通部66は、断面の短手辺が第1装着孔24の短手辺より短く設定されている。そして、支持軸部62は、挿通孔34を前後方向に挿通する際に、当接部64と比べて挿通部66で移動し易くなっている。なお、支持部材60は、第1装着孔24に支持軸部62を挿通した際に、挿通部66と第1ストッパ70との繋ぎ部分で軸周りに回転し得るようになっている。支持軸部62は、当接部64より前側部分を構成する回転許容部68が挿通孔34より小さい断面形状になるように形成されている(図2または図10参照)。回転許容部68は、挿通孔34の長手側および短手側の開口寸法より小さく設定された矩形状の断面形状であって、当接部64より小さな断面形状で形成されている。また、回転許容部68は、断面における対角線に沿う寸法が、挿通孔34の短手側の開口寸法と同じまたは該開口寸法より小さく設定されている。このように、支持部材60は、前述の如く支持軸部62の当接部64または挿通部66を挿通孔34に整合することで該支持軸部62の軸周りの回転が制約される一方(図10(a)参照)、回転許容部68を該挿通孔34に整合することで該軸周りに回転する姿勢変位が許容されるようになっている(図10(b)参照)。
【0030】
前記支持部材60には、第1ストッパ70および第2ストッパ80が、保持姿勢において支持軸部62の軸方向と交差する左右方向に延出するように形成されており、第1ストッパ70および第2ストッパ80の支持軸部62からの延出方向が同じになっている。なお、挿通孔34は、少なくとも1組の対向する開口縁の間が、第1ストッパ70および第2ストッパ80の最大延出部分の寸法より小さく形成されている。そして、支持部材60は、保持姿勢において、フロントピラー10から離間するピラーガーニッシュPGに追随して移動した際に、第2ストッパ80が挿通孔34の開口縁に交差するようにクリップ本体32に保持されている。
【0031】
前記第1ストッパ70は、支持軸部62の後端部に設けられ、支持軸部62を挟んで互いに反対側に延出する延出片72,72で構成されている(図2または図5参照)。第1ストッパ70は、支持部材60の保持姿勢において挿通孔34の短手方向に沿って延出片72,72が延出するよう形成され、実施例では保持姿勢で延出片72,72が支持軸部62から左右に延出するよう構成されている。第1ストッパ70は、支持軸部62の軸方向に交差するように延出した延出片72,72の突出端の間を平面投影した水平距離である最大延出部分の寸法が、第1装着孔24の短手方向の開口寸法より大きく設定されて、保持姿勢において該第1ストッパ70と第1装着孔24の開口縁とが前後方向に交差する関係になるよう構成される(図1参照)。
【0032】
前記第1ストッパ70は、最大延出部分の寸法が第1装着孔24の長手方向の開口寸法と同じまたは該開口寸法より小さく設定されると共に、保持姿勢において支持軸部62の軸方向と交差する上下方向の寸法が第1装着孔24の短手方向の開口寸法より小さく設定されている(図4参照)。すなわち、第1ストッパ70は、該第1ストッパ70の延出方向を第1装着孔24の長手に沿わせることで、第1装着孔24に対して挿脱可能になっている。なお、第1ストッパ70は、最大延出部分の寸法が第1装着孔24の長手方向の開口寸法より僅かに大きくても、支持部材60を傾ける等によって第1装着孔24に挿入できれば採用可能である。第1ストッパ70は、最大延出部分の寸法が挿通孔34の短手方向の開口寸法より大きく設定されて、保持姿勢において該第1ストッパ70と挿通孔34の開口縁とが前後方向に交差する関係になるよう構成される。第1ストッパ70は、最大延出部分の寸法が挿通孔34の長手方向の開口寸法と同じ(実施例)または該開口寸法より小さく設定されると共に、保持姿勢において支持軸部62の軸方向と交差する上下方向の寸法が挿通孔34の短手方向の開口寸法より小さく設定されている。なお、第1ストッパ70は、最大延出部分の寸法が挿通孔34の長手方向の開口寸法より大きくてもよい。第1ストッパ70は、支持部材60の保持姿勢において後端面が左右方向に湾曲する円弧状に形成され、左右の延出片72,72の延出量が不揃いになっている(図5参照)。
【0033】
前記第2ストッパ80は、支持軸部62の前端部に設けられ、支持軸部62を挟んで互いに反対側に延出する係止片82,82で構成されている(図2または図5参照)。第2ストッパ80は、支持部材60の保持姿勢において挿通孔34の短手方向に沿って係止片82,82が延出するよう形成され、実施例では保持姿勢で係止片82,82が支持軸部62から左右に延出するよう構成されている。第2ストッパ80は、支持軸部62の軸方向に交差するように延出した係止片82,82の突出端の間を平面投影した水平距離である最大延出部分の寸法が、第2装着孔11の短手方向の開口寸法より小さく設定されて、第2ストッパ80が第2装着孔11を挿通可能に構成されている(図8参照)。第2ストッパ80は、最大延出部分の寸法が挿通孔34の短手方向の開口寸法より大きく設定されて、保持姿勢において該第2ストッパ80と挿通孔34の開口縁とが前後方向に交差する関係になるよう構成される。第2ストッパ80は、最大延出部分の寸法が挿通孔34の長手方向の開口寸法と同じまたは該開口寸法より小さく(実施例)設定されると共に、保持姿勢において支持軸部62の軸方向と交差する上下方向の寸法が挿通孔34の短手方向の開口寸法より小さく設定されている。
【0034】
前記第2ストッパ80についてより具体的に説明すると、第2ストッパ80の対をなす係止片82,82は、棒状であって、支持軸部62の前端部から対称な関係で分岐するように形成されている(図2または図5参照)。対をなす係止片82,82は、支持部材60の保持姿勢において、支持軸部62の後端部側(第2係合片52側)に向かうにつれて該支持軸部62の軸方向と交差する左右方向に互いに離れるように延出形成されている。対をなす係止片82,82は、最大延出部分で屈折して支持軸部62の後端部側(第2係合片52側)に向かうにつれて該支持軸部62の軸方向と交差する左右方向に互いに近づくように形成され、該係止片82における支持軸部62の後端部側の端部が支持軸部62の周面に臨むよう構成されている。このように、第2ストッパ80は、対をなす係止片82,82による最大延出部分より後側部分が後方に向かうにつれて先細りになるよう形成されて、対をなす係止片82,82による最大延出部分より前側部分が前方へ向かうにつれて先細りになるように形成されている。そして、第2ストッパ80は、 対をなす係止片82,82による後側部分の延出寸法が第2係合部50における両第2係合片52,52の内側間の間隔より小さく形成される一方、最大延出部分が両第2係合片52,52の内側間の間隔より大きくなるよう形成されている(図5参照)。すなわち、支持部材60は、フロントピラー10から離間するピラーガーニッシュPGに追随して移動した際に、第2ストッパ80の後側部分が一対の第2係合片52,52の内側間に挿入されて該第2係合片52,52を押し広げるよう構成されている(図11参照)。
【0035】
次に、実施例に係るクリップ30の装着の仕方について説明する。先ず、支持部材60を、クリップ本体32の挿通孔34に対して該挿通孔34の第1係合部40側から第2ストッパ80側を先頭にして挿入する(図9(a)参照)。ここで、支持部材60は、保持姿勢から90°軸周りに回転させた挿通姿勢とし、挿通孔34の長手に沿って第2ストッパ80の延出方向を揃えることで、第2ストッパ80の挿通孔34への挿通が許容される。支持部材60は、挿通姿勢で挿通孔34に挿通し、第2係合部50の挿入始端より第2ストッパ80が突き出たら、回転許容部68を挿通孔34に整合させた状態で軸周りに90°回転する(図9(b)参照)。ここで、回転許容部68は、挿通孔34より小さく形成されているので、支持軸部62の軸周りの回転が許容され(図10(b)参照)、90°回転することで保持姿勢となる。そして、支持部材60は、挿通孔34に支持軸部62が更に挿入されて当接部64が挿通孔34に整合することで、当接部64が挿通孔34に挟持されて軸周りの回転が規制される(図9(c)参照)。
【0036】
次に、クリップ30をピラーガーニッシュPGの支持台部22の第1装着孔24に取り付ける。クリップ30における支持部材60を、第1装着孔24に対してフロントピラー10側から第1ストッパ70側を先頭にして挿入する(図4の2点鎖線または図7(a)参照)。ここで、支持部材60は、 クリップ30を本来の取り付け姿勢から90°回転した状態とし、第1装着孔24の長手に沿って第1ストッパ70の延出方向を揃えることで、第1ストッパ70の第1装着孔24への挿通が許容される。クリップ30は、第1装着孔24に挿通して支持台部22における天板面22bの乗員室R側に第1ストッパ70が突き出たら、支持軸部62における挿通部66と第1ストッパ70との繋ぎ部分を第1装着孔24に整合させた状態でクリップ30を支持軸部62の軸周りに90°回転する(図4の実線または図7(b)参照)。ここで、支持軸部62における挿通部66と第1ストッパ70との繋ぎ部分は、第1装着孔24より小さく形成されているので、支持軸部62の軸周りの回転が許容され、90°回転することで保持姿勢となって第1ストッパ70と第1装着孔24の開口縁が交差する関係となり抜け止めされる。そして、クリップ30は、第1係合部40を第1装着孔24に挿入することで、第1係合片42,42の第1係合爪42a,42aが第1装着孔24の開口縁に引っ掛かり、ピラーガーニッシュPGの支持台部22に対して装着される(図5,図6または図8参照)。
【0037】
次に、ピラーガーニッシュPGをクリップ30によってフロントピラー10に取り付ける。クリップ30を、第2装着孔11に対して乗員室R側から支持部材60の前端部(第2ストッパ80側)を先頭にして挿入する(図8参照)。ここで、クリップ30は、第2ストッパ80の最大延出部分の寸法が第2装着孔11より小さく設定されているので、 そのままの姿勢で第2ストッパ80の第2装着孔11への挿通が許容される。クリップ30は、第2装着孔11に挿通してフロントピラー10の内部に第2ストッパ80が突き出すと共に、第2係合部50を第2装着孔11に挿入することで、第2係合片52,52の第2係合爪52a,52aが第2装着孔11の開口縁に引っ掛かり、ピラーガーニッシュPGがクリップ30を介してフロントピラー10に装着される(図1参照)。
【0038】
前記クリップ30は、挿通姿勢で支持部材60が挿通孔34への挿通を許容されて、回転許容部68を挿通孔34に整合させて回転することで、両端のストッパ70,80により支持部材60がクリップ本体32から抜け止めされる。また、クリップ30は、当接部64を挿通孔34に整合することで支持部材60の回転変位を規制すると共に、挿通孔34の貫通方向に沿う支持部材60をピラーガーニッシュPGの開放移動を損なわない程度に制動することができる。すなわち、クリップ30をピラーガーニッシュPGまたはフロントピラー10に取り付ける際に、支持部材60がクリップ本体32から抜け落ちたり、ストッパ70,80の姿勢が変わったりする等を防止できるので、クリップ30を取り付け易い。
【0039】
次に、サイドエアバッグ装置AUの作動に際してのクリップ30の作用について説明する。サイドエアバッグ装置AUが作動すると、膨張するエアバッグ14にピラーガーニッシュPGが押されて、クリップ30は第1係合部40が第1装着孔24から外れる。これにより、ピラーガーニッシュPGは、乗員室R側への開放移動が許容される。ピラーガーニッシュPGが、支持台部22の天板面22bの乗員室R側に延出した支持部材60の長さ分だけ移動すると、支持部材60の第1ストッパ70が支持台部22における第1装着孔24の開口縁に引っ掛かる。ピラーガーニッシュPGが更に乗員室R側に移動すると、これに伴って支持部材60が挿通孔34に沿ってクリップ本体32に対して乗員室R側に移動する。ピラーガーニッシュPGがフロントピラー10の内部において第2係合部50の挿入始端から延出した支持部材60の長さ分だけ乗員室R側へ移動すると、支持部材60の第2ストッパ80が第2係合部50に引っ掛かることで、支持部材60の乗員室R側への移動が規制されて、支持部材60の第1ストッパ70で保持されたピラーガーニッシュPGの移動が止まる。すなわち、クリップ30によれば、支持部材60において第1係合部40(クリップ本体32)より乗員室R側に延出した長さと第2係合部50(クリップ本体32)よりフロントピラー10の内部に延出した長さとの合計が、ピラーガーニッシュPGの乗員室R側への移動を許容する移動許容ストローク量になる。
【0040】
このように、実施例のクリップ30では、支持台部22における天板面22bの乗員室R側に突き出した第1係合部40の挿入始端から乗員室R側に延出する支持部材60の長さが、ピラーガーニッシュPGの乗員室R側への移動を許容する移動許容ストロークとなる。また、クリップ30では、フロントピラー10の内部に突き出した第2係合部50の挿入始端から延出する支持部材60の長さも、ピラーガーニッシュPGの乗員室R側への移動を許容する移動許容ストロークとなる。クリップ30は、ピラーガーニッシュPG側において支持台部22の天板面22bと該ピラーガーニッシュPGの板状本体裏面との間のスペースを支持部材60におけるクリップ本体32からの延出部分の収容スペースとして用いることができる。同様に、クリップ30は、フロントピラー10側において中空筒状のフロントピラー10の内部スペースを支持部材60におけるクリップ本体32からの延出部分の収容スペースとして用いることができる。すなわち、クリップ30によれば、移動許容ストロークを生み出す支持部材60のクリップ本体32からの延出部分を、ピラーガーニッシュPG側またはフロントピラー10側の何れか一方に依存することなく、両方に分配して配置しているので、ピラーガーニッシュPGの移動許容ストロークを長くとることができる。例えば妨害角を小さくする等によりピラーガーニッシュPGを薄くしてピラーガーニッシュPG側のスペースが狭くなったり、フロントピラー10の内部に配設された補強部材等によってフロントピラー10側のスペースが狭くなっても、クリップ30による該ピラーガーニッシュPGの移動許容ストロークを全体として確保することができる。
【0041】
前述の如く、クリップ30は、ピラーガーニッシュPG側およびフロントピラー10側の両方のスペースを利用して移動許容ストロークを長くとることができる。すなわち、クリップ30は、支持部材60におけるクリップ本体32から延出する延出部分を無理をして多重に折り畳む必要がなく、ピラーガーニッシュPGの所定ストロークまでの開放移動を支持部材60の支持軸部62が引っ掛かって妨げることを回避でき、ピラーガーニッシュPGの円滑な開放移動を許容し得る。また、クリップ30は、支持部材60の延出部分を湾曲または折り畳みのためにピラーガーニッシュPGの裏面に強く押し当てることを回避できるので、支持部材60の強い押圧に伴う合成樹脂製のピラーガーニッシュPGの白化や変形等を防止することができる。
【0042】
前記クリップ30は、支持部材60の移動時に第2係合部50の一対の係合片52,52間に挿入された第2ストッパ80で両係合片52,52を押し広げることで、各係合片52の外側に設けられた係合爪52aと第2装着孔11の開口縁とが強く係合することになる。すなわち、支持部材60の前端部をフロントピラー10ではなくクリップ本体32で係止する構成としても、前端部の第2ストッパ80がクリップ本体32をフロントピラー10から外れ難くするように作用するので、ピラーガーニッシュPGの開放移動時にクリップ本体32が抜けず、ピラーガーニッシュPGを適切なストロークで開放規制し得る。
【0043】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、以下のように変更することも可能である。
(1)実施例では、車両内装部材として、車体のフロントピラーに対してクリップを利用して取り付けられるピラーガーニッシュを例示したが、本願が対象とする車両内装部材はこれに限定されるものではなく、ルーフサイドに対してクリップを利用して装着されるルーフサイドガーニッシュやリアピラーに取り付けられるピラーガーニッシュ等も対象とされる。
(2)実施例のクリップは、クリップ本体の係合部から延出する支持部材の延出部分を挿通孔の貫通方向に沿って直線的に延在させたが、湾曲させたり、折り畳んでもよい。この場合であっても、支持部材の延出部分の湾曲および折り畳み度合いを緩く設定することができる。
(3)実施例の係合部は、挿通孔を挟んで対向配置した一組の係合片で構成したが、当該係合片の組と交差する方向に挿通孔を挟んで対向する係合片の組を設けてもよい。
(4)可撓性を有する合成樹脂の支持部材でなく、金属のシャフトを支持部材として採用することも可能である。
(5)第1ストッパの構成を第2ストッパに適用しても、第2ストッパの構成を第1ストッパに適用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 フロントピラー(固定部材),11 第2装着孔,24 第1装着孔,
24a 保持辺,32 クリップ本体,34 挿通孔,40 第1係合部(係合部),
42 第1係合片(係合片),50 第2係合部(係合部),52 第2係合片(係合片),
60 支持部材,62 支持軸部,64 当接部,64a 当接辺,
66 回転許容部,70 第1ストッパ(ストッパ),80 第2ストッパ(ストッパ),
PG ピラーガーニッシュ(被固定部材)
【技術分野】
【0001】
この発明は、被固定部材を固定部材に対して装着し、被固定部材が外れた際に所定ストロークだけの移動を許容して抜け止めし得るクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年生産される自動車では、側面衝突事故等による衝撃から乗員を保護するため、シートバックの側面内部に搭載されて乗員の胸部を保護するサイドエアバッグ装置や、フロントピラーからルーフサイド(およびリアピラー)に亘る部位の内側に搭載されて頭部を保護するカーテンエアバッグ装置が実用化されている。例えば図12は、車体を構成するフロントピラー10からルーフサイド12に亘って配設されたカーテンエアバッグ装置AUを、エアバッグ14が乗員室内へ膨張展開した作動状態で示した説明断面図である。このカーテンエアバッグ装置AUは、フロントピラー10に取り付けたピラーガーニッシュ(車両内装部材)PGの裏側からルーフサイド12に取り付けたルーフサイドガーニッシュ(車両内装部材)RGの裏側に亘って画成された空間D内に折り畳んで収容されたエアバッグ14と、フロントピラー10の下部または図示しないリアピラー下部等に配設されたインフレータ(図示省略)とからなる。そして、例えばセンターピラー下部等に配設した衝突感知センサー(図示せず)が衝撃を感知すると、インフレータが作動して空間D内に収容されていたエアバッグ14が乗員室内へ瞬時に膨張展開し、サイドウィンドウガラス18を覆うようになる。
【0003】
前記エアバッグ14および該エアバッグ14を支持するエアバッグ支持部材16は、側面衝突事故の発生前(カーテンエアバッグ装置AUの作動前)には、ピラーガーニッシュPGおよびルーフサイドガーニッシュRGの内側へ収容されている。そして、ピラーガーニッシュPGには、図13に例示するように、フロントピラー10に沿って配設されたウェザーストリップ19が端縁部に密着しているが、カーテンエアバッグ装置AUが作動した場合に、ピラーガーニッシュPGが乗員室R側に移動することで、フロントピラー10とピラーガーニッシュPGとの境界部分にエアバッグ14またはエアバッグ支持部材16の通過を許容する隙間Sが画成されるように工夫されている(図14参照)。
【0004】
前記ピラーガーニッシュPGは、図13に例示するように、フロントピラー10を被覆し得る形状に形成された板状本体の裏側に1つまたは複数の支持台部22が設けられている。支持台部22は、ピラーガーニッシュPGにおける板状本体の裏面からフロントピラー10側に突出する脚部22aで支えられた架台状に形成され、該支持台部22におけるフロントピラー10に対向する天板面22bに第1装着孔24が貫通形成されている。ピラーガーニッシュPGは、第1装着孔24に相対してフロントピラー10に設けられた第2装着孔11および第1装着孔24に嵌め込まれた取付クリップ100によって、フロントピラー10に対して装着されている(図13参照)。取付クリップ100は、フランジ部102の一方の側に形成され、フロントピラー10の第2装着孔11に突入係止される係止固定部104と、該フランジ部102の他方の側に支持台部22の突出高さより長く形成された可撓支持部106と、該可撓支持部106の基端側に設けられた第1係着部108と、該可撓支持部106の先端側に設けられた第2係着部110とから構成されている。取付クリップ100は、第2係着部110および可撓支持部106を、支持台部22の第1装着孔24を介して該支持台部22の天板面22bと板状本体との間に画成された収容部26へ差し込んで収容し、第1係着部108を第1装着孔24に嵌合させることで、ピラーガーニッシュPGへ装着される。そして、取付クリップ100は、係止固定部104を第2装着孔11に嵌合させることで、ピラーガーニッシュPGとフロントピラー10との間の空間Dにエアバッグ14またはエアバッグ支持部材16を収容した状態で、該ピラーガーニッシュPG端縁部をウェザーストリップ19に突き当ててピラーガーニッシュPGをフロントピラー10に対して保持するようになっている。
【0005】
カーテンエアバッグ装置AUが作動した際には、エアバッグ14および/またはエアバッグ支持部材16がピラーガーニッシュPGを裏側から押圧し、この押圧力により第1装着孔24から取付クリップ100の第1係着部108が外れる。この際、ピラーガーニッシュPGは、図14に示すように、第2係着部110が第1装着孔24の開口縁に引っ掛かるまで、すなわち可撓支持部106の全長に略相当する距離だけ乗員室R側へ移動することが許容され、これによりピラーガーニッシュPGとフロントピラー10との間に、エアバッグ14およびエアバッグ支持部材16が延出するための隙間Sが画成される。このような取付クリップ100は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−95033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、カーテンエアバッグ装置AUが作動した際にピラーガーニッシュPGがフロントピラー10から離間できる移動許容ストロークは、可撓支持部106の長さで決まる(図13および図14参照)。しかしながら、乗員の妨害角を少なくするために、ピラーガーニッシュPGの乗員室R側への突出量を減らすよう要請があり、ピラーガーニッシュPGとフロントピラー10との間の空間Dを大きくとることができず、可撓支持部106の長さを確保することが難しくなっている。そこで、可撓支持部106を湾曲したり折り畳んで空間Dに収容する等の工夫がなされているが、可撓支持部106の湾曲構造が複雑になると、かえってエアバッグ14等の円滑な開放を妨げたり、可撓支持部106の先端に位置する第2係着部110が挿入時にピラーガーニッシュPGに強く押し当てられることで、合成樹脂からなるピラーガーニッシュPGの意匠面が白化する等の問題を引き起こす。
【0008】
すなわち本発明は、従来の技術に係るクリップに内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、被固定部材の移動許容ストロークを長くすることができるクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のクリップは、
被固定部材を固定部材に対して装着するクリップ本体と、このクリップ本体に貫通形成された挿通孔に挿通して該挿通孔の貫通方向に沿って移動可能に保持された支持部材とを備え、
前記支持部材は、前記クリップ本体における挿通孔の両側から延出するように形成され、該延出する部分の夫々にストッパが設けられ、
前記支持部材の一方のストッパが被固定部材に引っ掛かると共に、他方のストッパがクリップ本体に引っ掛かって、前記クリップ本体から外れた被固定部材の所定ストロークだけの移動を許容して抜け止めするよう構成したことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、クリップ本体の挿通孔に支持部材を移動可能に挿通して、クリップ本体の両側から支持部材を延出させることができる構成であるので、クリップ本体の被固定部材側および固定部材側の両方に、被固定部材の移動を許容するストロークを持たせることができる。すなわち、クリップ本体の被固定部材側および固定部材側の両方のスペースを利用できるので、被固定部材の移動許容ストローク量を長く設定することができる。
【0010】
請求項2に係る発明では、前記クリップ本体は、
前記挿通孔の一方の開口周りに設けられ、前記被固定部材に設けられた第1装着孔に離脱可能に係合する第1係合部と、
前記挿通孔の他方の開口周りに設けられ、前記第1装着孔に相対して前記固定部材に設けられる第2装着孔に係合する第2係合部とを備え、前記第1係合部および前記第2係合部が、対応の装着孔への挿入始端を互いに反対に向けて形成され、
前記支持部材は、
前記挿通孔に対して該挿通孔の貫通方向に沿って移動可能に挿通され、第1係合部および第2係合部の挿入始端の夫々から延出する長さに設定された支持軸部と、
前記支持軸部における第1係合部の挿入始端から延出する部分に設けられ、該支持軸部の挿通孔の貫通方向に沿う移動により被固定部材の第1装着孔の開口縁に引っ掛かるよう形成された第1ストッパと、
前記支持軸部における第2係合部の挿入始端から延出する部分に設けられ、該支持軸部の挿通孔の貫通方向に沿う移動により第2係合部に引っ掛かるよう形成された第2ストッパとを備え、
前記支持部材の第1ストッパが被固定部材の第1装着孔の開口縁に引っ掛かると共に、第2ストッパが第2係合部に引っ掛かって、前記クリップ本体の第1係合部から外れた被固定部材の所定ストロークだけの移動を許容して抜け止めするよう構成したことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、クリップ本体の挿通孔に支持部材の支持軸部を移動可能に挿通して、クリップ本体の両側に設けられた係合部の挿入始端から支持部材を延出させることができる構成であるので、クリップ本体の被固定部材側および固定部材側の両方に、被固定部材の移動を許容するストロークを持たせることができる。すなわち、クリップ本体の被固定部材側および固定部材側の両方のスペースを利用できるので、被固定部材の移動許容ストローク量を長く設定することができる。
【0011】
請求項3に係る発明では、前記第1係合部および第2係合部は、前記挿通孔を挟んで該挿通孔の貫通方向に沿って突出するように設けられて、互いに近接する方向へ変形可能な一対の係合片を有し、
前記一対の係合片の夫々には、互いに対向する内側と反対の外側に突出する係合爪が設けられ、
前記クリップ本体は、一対の係合片を互いに近接するように変形させて対応の装着孔に挿入して、該装着孔の開口縁に引っ掛かった係合爪により抜け止めされることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、一対の係合片およびこの係合片に設けた係合爪からなる簡単な係合部の構成で、クリップ本体において被固定部材および固定部材に適切に装着し得る。
【0012】
請求項4に係る発明では、前記第2ストッパは、前記第2係合部側の部分が該第2係合部における両係合片の内側間の間隔より前記支持軸部の軸方向と交差する方向の延出寸法が小さく形成される一方、最大延出部分が第2係合部における両係合片の内側間の間隔より大きくなるよう形成され、
前記支持部材が前記固定部材から離間する被固定部材につれて移動した際に、前記第2ストッパの第2係合部側の部分が一対の係合片の内側間に挿入されて該係合片を押し広げるよう構成したことを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、支持部材の移動時に第2係合部の一対の係合片間に挿入された第2ストッパで係合片を押し広げることで、係合片の外側に設けられた係合爪と第2装着孔の開口縁とが強く係合することになり、クリップ本体を固定部材から外れ難くすることができる。
【0013】
請求項5に係る発明では、前記支持部材は、前記クリップ本体の挿通孔に挿通した状態で前記支持軸部の軸周りに回転して姿勢変位可能な一方、少なくとも1つの姿勢で回転が制約され、この回転が制約される保持姿勢で、前記支持部材の第1ストッパが被固定部材の第1装着孔の開口縁に引っ掛かると共に、第2ストッパが第2係合部に引っ掛かる構成としたことを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、支持部材を所定の姿勢に保持することができるので、支持部材がクリップ本体を被固定部材や固定部材へ取り付ける際に邪魔にならず、クリップ本体の取り付けを行い易い。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るクリップによれば、被固定部材の移動許容ストロークを長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な実施例に係るクリップを示す断面図であって、図12のX−X線に相当する断面を示す。
【図2】実施例のクリップを分解して示す概略斜視図である。
【図3】実施例のクリップを示す概略斜視図である。
【図4】実施例のクリップとピラーガーニッシュとの取り付け前の関係を説明する斜視図である。
【図5】実施例のクリップをピラーガーニッシュに取り付けた状態を示す断面図であって、図8のA−A線で破断している。
【図6】実施例のクリップをピラーガーニッシュに取り付けた状態を示す断面図であって、図8のB−B線で破断している。
【図7】実施例のクリップのピラーガーニッシュへの取り付け状況を示す説明図であって、(a)は、第1装着孔に支持部材を挿入している状況を示し、(b)は、第1装着孔に支持部材を挿入した状態で回転して姿勢を変えた状況を示す。
【図8】実施例のクリップをピラーガーニッシュに取り付けた状態で、フロントピラーとの関係を示す概略斜視図である。
【図9】実施例のクリップにおいて、クリップ本体に対する支持部材の取り付け状況を示す説明図であって、(a)は支持部材における支持軸部の前端部側をクリップ本体の挿通孔に挿通した状況を示し、(b)は支持部材における支持軸部の前端部側をクリップ本体の挿通孔に挿通した状態で90°回転した状況を示し、(c)は支持部材における支持軸部の当接部を挿通孔に保持させた状況を示す。
【図10】実施例のクリップにおいて、クリップ本体の挿通孔と支持部材との関係を示す説明図であって、(a)は支持部材における支持軸部の当接部を挿通孔に保持させた状況を示し、(b)は支持軸部の前部側を挿通孔に整合させて回転している状況を示す。
【図11】実施例のクリップを示す断面図であって、エアバッグの作動時に支持部材でピラーガーニッシュを保持している状況を示す。
【図12】カーテンエアバッグ装置が作動して、エアバッグが膨張した状態を示す説明断面図である。
【図13】図12のX−X線断面図であって、従来の取付クリップを示す。
【図14】カーテンエアバッグ装置が作動して、従来の取付クリップの第2係着部に係着されるまでピラーガーニッシュがフロントピラーから離間移動した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係るクリップにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。本発明に係るクリップは、被固定部材である車両内装部材と固定部材である車体構成部材との装着に用いられるものであって、車両内装部材および車体構成部材の間に配設されたエアバッグ等により車両内装部材が車体構成部材から離間するように開放する等、車両内装部材が基本的な装着位置から変位するものに好適である。
【実施例】
【0017】
図1に示すように、実施例では、車体構成部材としてフロントピラー10、車両内装部材としてピラーガーニッシュPGを挙げ、フロントピラー10とピラーガーニッシュPGとの間に収容されたエアバッグ14の開放により、ピラーガーニッシュPGがフロントピラー10から離間移動するのを許容するクリップ30を以下に説明する。なお、説明の便宜上、図12〜図14に示したフロントピラー10、ピラーガーニッシュ20およびサイドエアバッグ装置AUの構成要素と同一の要素については、同一の符号を使用して詳細な説明は省略する。また、以下のクリップの説明では、図1に示すピラーガーニッシュPGをフロントピラー10に対してエアバッグ14を収容した基本的な装着位置を基準として方向を指称する。すなわち、図1のクリップ30において、特に断りがなければ、フロントピラー10とピラーガーニッシュPGが対向する方向を前後方向とし(フロントピラー10側を前とする)、フロントピラー10の立設方向(フロントピラー10とピラーガーニッシュPGが対向する方向に交差する縦方向)を上下方向とし、フロントピラー10とピラーガーニッシュPGが対向する方向に交差する横方向を左右方向という。
【0018】
図1〜図9に示すように、実施例に係るクリップ30は、ピラーガーニッシュPGをフロントピラー10に対して装着するクリップ本体32と、このクリップ本体32と別体に構成され、クリップ本体32に貫通形成された挿通孔34に挿通して該挿通孔34の貫通方向に移動可能に保持された支持部材60とから構成されている。クリップ30は、支持部材60がクリップ本体32における挿通孔34の両側から延出するように形成され、支持部材60のピラーガーニッシュPG側の端部が該ピラーガーニッシュPGに係合する一方、該支持部材60のフロントピラー10側の端部がクリップ本体32に係合するようになっている(図11参照)。そして、クリップ30は、クリップ本体32から外れたピラーガーニッシュPGに追随して支持部材60が挿通孔34の貫通方向に沿って移動し、該支持部材60がクリップ本体32に係合するまでの所定のストロークだけの移動を許容して抜け止めするよう構成されている。
【0019】
前記クリップ本体32は、合成樹脂の成形品である。図2に示すように、クリップ本体32は、基盤となる板状の台板部36を有し、この台板部36の厚み方向を貫通して挿通孔34が形成されている(図1または図9参照)。クリップ本体32は、台板部36の後面側(一方)における挿通孔34の開口周りに設けられ、ピラーガーニッシュPGに設けられた第1装着孔24に離脱可能に係合する第1係合部40と、台板部36の前面側(他方)における挿通孔34の開口周りに設けられ、第1装着孔24に相対してフロントピラー10に設けられた第2装着孔11に係合する第2係合部50とを備えている(図1または図2参照)。クリップ本体32には、第1係合部40および第2係合部50が台板部36の反対の面に設けられ、第1係合部40および第2係合部50が対応の装着孔24,11への挿入始端を互いに反対に向けて形成されている。更に、台板部36の前面には、第2係合部50の根元部分を囲むように延出形成された円盤状の袴片部38が設けられている(図2参照)。袴片部38は、台板部36より薄く形成されて弾性変形可能な可撓性を有し、クリップ本体32では、第2係合部50を第2装着孔11に取り付けた際にフロントピラー10における第2装着孔11の開口周りに袴片部38が弾力的に当接するようになっている(図1参照)。
【0020】
前記クリップ本体32の挿通孔34は、一方の開口寸法に比べてこの一方に直交する他方の開口寸法が大きくなる縦横で寸法が異なる開口形状に形成され、実施例では、上下方向に長手が延在する矩形状に形成されている(図10参照)。ここで、挿通孔34は、クリップ本体32のピラーガーニッシュPGおよびフロントピラー10への取り付け姿勢において、矩形状に形成された第1装着孔24および第2装着孔11の長手と該挿通孔34の長手が揃い、第1装着孔24および第2装着孔11の短手と該挿通孔34の短手が揃うようになっている(図4または図8参照)。また、挿通孔34は、第1装着孔24および第2装着孔11の短手方向の開口寸法より短手方向の開口寸法が狭くなっている。
【0021】
前記第1係合部40は、台板部36の後面に挿通孔34を挟んで該挿通孔34の貫通方向後方に沿って突出するように設けられて、互いに近接する方向へ変形可能な一対の第1係合片(係合片)42,42から構成されている(図1または図2参照)。実施例の第1係合部40は、第1係合片42が挿通孔34の長手辺に沿って夫々設けられ、一対の第1係合片42,42が挿通孔34の短手方向に離間して対向配置されている。一対の第1係合片42,42の夫々には、互いに対向する内側と反対の外側に台板部36と接合する根元部分より外方へ突出する第1係合爪(係合爪)42aが設けられる一方、内側が平坦に形成されている(図5参照)。なお、第1係合部40は、各第1係合片42の内側の平坦面42bが挿通孔34の開口面に連なっている(図1参照)。第1係合片42は、内側の平坦面42bに対して外側が先端部から根元部分に向かうつれて他方の第1係合片42から離れる外方(右側の第1係合片42であれば右側であり、左側の第1係合片42であれば左側である)へ斜めに延出して第1係合爪42aが構成されている(図1または図5参照)。また、第1係合片42は、第1係合爪42aにおける最も外方へ延出した部分から根元部分に向けて他方の第1係合片42に近づく内方へ斜めに延在するよう形成されている。一対の第1係合片42,42は、根元部分外側が互いに平行になるように平坦に形成されている。このように、第1係合部40は、一対の第1係合片42,42が挿通孔34を挟んで左右対称な関係で構成されている。
【0022】
前記第1係合部40は、対向する第1係合片42,42における根元部分外面間の寸法が、第1装着孔24の短手方向の開口寸法に合わせて(図1参照または図4参照)または該開口寸法より小さく設定されている。また、第1係合部40は、対向する第1係合片42,42における第1係合爪42a,42aの突出端間の寸法が第1装着孔24の短手方向の開口寸法より大きく設定されている。また、第1係合部40は、各第1係合片42の上下方向の寸法が第1装着孔24の長手方向の開口寸法に合わせて形成されている。そして、クリップ本体32は、一対の第1係合片42,42を互いに近接するように変形させて第1装着孔24に挿入して、第1装着孔24の開口縁に引っ掛かった第1係合爪42a,42aによりピラーガーニッシュPGの支持台部22に対して装着される(図1,図5および図6参照)。このように、第1係合部40は、根元部分の外形が第1装着孔24の開口形状に合わせて形成されており、第1装着孔24と第1係合部40とが係合したもとでピラーガーニッシュPGをガタツキなく保持し得るようになっている。
【0023】
前記第2係合部50は、台板部36の前面に挿通孔34を挟んで該挿通孔34の貫通方向前方に沿って突出するように設けられて、互いに近接する方向へ変形可能な一対の第2係合片(係合片)52,52から構成されている(図1または図2参照)。実施例の第2係合部50は、第2係合片52が挿通孔34の長手辺に沿って夫々設けられ、一対の第2係合片52,52が挿通孔34の短手方向に離間して対向配置されている。一対の第2係合片52,52の夫々には、互いに対向する内側と反対の外側に台板部36と接合する根元部分より外方(右側の第2係合片52であれば右側であり、左側の第2係合片52であれば左側である)へ突出する第2係合爪(係合爪)52aが設けられる一方、内側が平坦に形成されている(図1または図5参照)。第2係合片52では、平坦面52bが内側に形成された板状部分の外側に、根元部分側に偏倚して設けられた断面略三角形状の突起が第2係合爪52aを構成しており(図2参照)、第2係合片52の先端部が先端から根元部分に向かうにつれて内から外側に傾斜するテーパ形状になっている。このように、第2係合部50は、一対の第2係合片52,52が挿通孔34を挟んで左右対称な関係で構成されている。
【0024】
前記第2係合部50は、対向する第2係合片52,52における根元部分外面間の寸法が、第2装着孔11の短手方向の開口寸法に合わせて(図1参照)または該開口寸法より小さく設定されている。第2係合部50は、対向する第2係合片52,52における第2係合爪52a,52aの突出端間の寸法が第2装着孔11の短手方向の開口寸法より大きく設定されている(図1参照)。また、第2係合部50は、各第2係合片52の上下方向の寸法が第2装着孔11の長手方向の開口寸法に合わせて形成されている(図8参照)。そして、クリップ本体32は、一対の第2係合片52,52を互いに近接するように変形させて第2装着孔11に挿入して、第2装着孔11の開口縁に引っ掛かった第2係合爪52a,52aによりフロントピラー10に対して装着される(図1または図11参照)。第2係合部50は、根元部分の外形が第2装着孔11の開口形状に合わせて形成されており、第2装着孔11と第2係合部50とが係合したもとでフロントピラー10にガタツキなく保持されるようになっている。このように、実施例のクリップ本体32では、第1係合部40と第2係合部50とが、一対の係合片42,42,52,52の配置関係および係合片42,52における係合爪42a,52aの突出方向が同じになるように設定されている。
【0025】
前記クリップ本体32は、第2係合部50と第2装着孔11(フロントピラー10)との係合関係より第1係合部40と第1装着孔24(ピラーガーニッシュPG)との係合関係が外れ易く構成されている。実施例のクリップ本体32では、第1係合部40の第1係合片42が第2係合部50の第2係合片52より上下寸法が小さく形成されて(図2または図6参照)、第2係合爪52aと第2装着孔11の開口縁とが引っ掛かる寸法より第1係合爪42aと第1装着孔24の開口縁とが引っ掛かる寸法が小さくなるように構成されている。また、クリップ本体32は、第2係合部50における第2係合爪52aの根元部分に対する突出量より第1係合部40における第1係合爪42aの根元部分に対する突出量が小さく形成されて、第2係合爪52aと第2装着孔11の開口縁とがラップする量より第1係合爪42aと第1装着孔24の開口縁とがラップする量が小さくなるように構成されている(図1参照)。このように、クリップ本体32は、係合部40,50におけるの係合爪42a,52aの引っ掛かり寸法、係合爪42a,52aのラップする量、係合片42,52の撓み易さ、係合爪42a,52aにおける対応の装着孔24,11に臨む面の傾斜の緩急等の係合爪42a,52aの形状などを調節して、ピラーガーニッシュPGに力が加わった際に、第2係合部50が第2装着孔11から外れないで第1係合部40が第1装着孔24から外れるよう構成される。
【0026】
前記支持部材60は、合成樹脂の成形品であって、クリップ本体32の挿通孔34に対して該挿通孔34の貫通方向である前後方向に沿って移動可能に挿通され、第1係合部40および第2係合部50の挿入始端の夫々から延出する長さに設定された支持軸部62を備えている(図2または図3参照)。また、支持部材60には、支持軸部62における係合部40,50の挿入始端から延出する部分に、該支持部材60の抜け止めをするストッパ70,80が夫々設けられている(図1または図11参照)。具体的には支持部材60は、支持軸部62における第1係合部40の挿入始端から延出する後端部に設けられ、支持軸部62の挿通孔34の貫通方向に沿う移動によりピラーガーニッシュPGの第1装着孔24の開口縁に引っ掛かるよう形成された第1ストッパ70を備えている(図11参照)。更に、支持部材60は、支持軸部62における第2係合部50の挿入始端から延出する前端部に設けられ、該支持軸部62の挿通孔34の貫通方向に沿う移動により第2係合部50に引っ掛かるよう形成された第2ストッパ80を備えている(図11参照)。
【0027】
前記支持部材60の支持軸部62は、長尺な棒状に形成されており、該支持軸部62の長手に沿う軸方向に沿って挿通孔34に挿通される(図2参照)。支持軸部62は、クリップ本体32における第1係合部40の挿入始端から第2係合部50の挿入始端までの寸法より長く設定され、軸方向の全体に亘って挿通孔34に挿通可能な断面形状で形成されている。支持部材60は、第1装着孔24から支持台部22における天板面22bの後側に突出した第1係合部40の挿入始端(後端)から支持軸部62の後端部が延出すると共に、第2装着孔11から筒状のフロントピラー10の内部に突出した第2係合部50の挿入始端から該支持軸部62の前端部が延出するようになっている(図1参照)。なお、実施例の支持軸部62は、軸方向と交差する方向に撓曲可能に構成されている。支持部材60は、クリップ本体32の挿通孔34に挿通した状態で支持軸部62の軸周りに回転して姿勢変位可能な一方、少なくとも1つの姿勢で回転が制約され、この回転が制約される保持姿勢で、第1ストッパ70が第1装着孔24の開口縁に引っ掛かると共に、第2ストッパ80が第2係合部50に引っ掛かるよう構成される。
【0028】
前記支持軸部62には、軸方向の中間部に挿通孔34の開口縁に該支持軸部62の軸周り方向に係合可能な当接部64が設けられ(図2参照)、支持部材60を挿通したクリップ本体32を装着位置やピラーガーニッシュPGやフロントピラー10に取り付ける際などに当接部64が挿通孔34に保持されるようになっている(図1または図10参照)。クリップ本体32の挿通孔34は、左右方向に平行に離間する一対の保持辺34a,34aを有すると共に、一対の保持辺34a,34aと交差する上下方向の寸法が該一対の保持辺34a,34a間より大きく設定された矩形状の開口形状に形成されている。そして、支持軸部62の当接部64は、挿通孔34の一対の保持辺34a,34a間の寸法に合わせた寸法で平行に延在する一対の当接辺64a,64aを有する断面形状に形成され、実施例の当接部64は、一対の当接辺64a,64aと異なる組(上下に対向する組)の辺間が一対の当接辺64a,64a間より長い矩形断面形状に形成されている。なお、当接部64において長手となる一対の当接辺64aと異なる組の辺間の上下寸法は、挿通孔34の長手となる上下の開口寸法より小さくなるよう設定されている(図10参照)。このように、当接部64は、平行な関係で延在する一対の当接辺64a,64a間の寸法が挿通孔34における短手方向の開口寸法に合わせて形成され、該当接部64における対角間の寸法が挿通孔34における短手方向の開口寸法より大きくなっている。すなわち、支持軸部62は、当接部64を挿通孔34に整合することで、当接部64の当接辺64a,64a間が挿通孔34の保持辺34a,34a間に挟まれて、該支持軸部62の軸周りの回転が保持姿勢で制約されるようになっている(図10(a)参照)。
【0029】
前記支持軸部62は、当接部64より後側部分を構成する挿通部66が、当接部64の一対の当接辺64a,64a間の左右寸法より狭く設定されると共に、当接部64における一対の当接辺64a,64aと異なる組の辺間と同じ上下寸法に設定された矩形断面形状に形成されている(図2参照)。すなわち、挿通部66は、断面の短手辺が第1装着孔24の短手辺より短く設定されている。そして、支持軸部62は、挿通孔34を前後方向に挿通する際に、当接部64と比べて挿通部66で移動し易くなっている。なお、支持部材60は、第1装着孔24に支持軸部62を挿通した際に、挿通部66と第1ストッパ70との繋ぎ部分で軸周りに回転し得るようになっている。支持軸部62は、当接部64より前側部分を構成する回転許容部68が挿通孔34より小さい断面形状になるように形成されている(図2または図10参照)。回転許容部68は、挿通孔34の長手側および短手側の開口寸法より小さく設定された矩形状の断面形状であって、当接部64より小さな断面形状で形成されている。また、回転許容部68は、断面における対角線に沿う寸法が、挿通孔34の短手側の開口寸法と同じまたは該開口寸法より小さく設定されている。このように、支持部材60は、前述の如く支持軸部62の当接部64または挿通部66を挿通孔34に整合することで該支持軸部62の軸周りの回転が制約される一方(図10(a)参照)、回転許容部68を該挿通孔34に整合することで該軸周りに回転する姿勢変位が許容されるようになっている(図10(b)参照)。
【0030】
前記支持部材60には、第1ストッパ70および第2ストッパ80が、保持姿勢において支持軸部62の軸方向と交差する左右方向に延出するように形成されており、第1ストッパ70および第2ストッパ80の支持軸部62からの延出方向が同じになっている。なお、挿通孔34は、少なくとも1組の対向する開口縁の間が、第1ストッパ70および第2ストッパ80の最大延出部分の寸法より小さく形成されている。そして、支持部材60は、保持姿勢において、フロントピラー10から離間するピラーガーニッシュPGに追随して移動した際に、第2ストッパ80が挿通孔34の開口縁に交差するようにクリップ本体32に保持されている。
【0031】
前記第1ストッパ70は、支持軸部62の後端部に設けられ、支持軸部62を挟んで互いに反対側に延出する延出片72,72で構成されている(図2または図5参照)。第1ストッパ70は、支持部材60の保持姿勢において挿通孔34の短手方向に沿って延出片72,72が延出するよう形成され、実施例では保持姿勢で延出片72,72が支持軸部62から左右に延出するよう構成されている。第1ストッパ70は、支持軸部62の軸方向に交差するように延出した延出片72,72の突出端の間を平面投影した水平距離である最大延出部分の寸法が、第1装着孔24の短手方向の開口寸法より大きく設定されて、保持姿勢において該第1ストッパ70と第1装着孔24の開口縁とが前後方向に交差する関係になるよう構成される(図1参照)。
【0032】
前記第1ストッパ70は、最大延出部分の寸法が第1装着孔24の長手方向の開口寸法と同じまたは該開口寸法より小さく設定されると共に、保持姿勢において支持軸部62の軸方向と交差する上下方向の寸法が第1装着孔24の短手方向の開口寸法より小さく設定されている(図4参照)。すなわち、第1ストッパ70は、該第1ストッパ70の延出方向を第1装着孔24の長手に沿わせることで、第1装着孔24に対して挿脱可能になっている。なお、第1ストッパ70は、最大延出部分の寸法が第1装着孔24の長手方向の開口寸法より僅かに大きくても、支持部材60を傾ける等によって第1装着孔24に挿入できれば採用可能である。第1ストッパ70は、最大延出部分の寸法が挿通孔34の短手方向の開口寸法より大きく設定されて、保持姿勢において該第1ストッパ70と挿通孔34の開口縁とが前後方向に交差する関係になるよう構成される。第1ストッパ70は、最大延出部分の寸法が挿通孔34の長手方向の開口寸法と同じ(実施例)または該開口寸法より小さく設定されると共に、保持姿勢において支持軸部62の軸方向と交差する上下方向の寸法が挿通孔34の短手方向の開口寸法より小さく設定されている。なお、第1ストッパ70は、最大延出部分の寸法が挿通孔34の長手方向の開口寸法より大きくてもよい。第1ストッパ70は、支持部材60の保持姿勢において後端面が左右方向に湾曲する円弧状に形成され、左右の延出片72,72の延出量が不揃いになっている(図5参照)。
【0033】
前記第2ストッパ80は、支持軸部62の前端部に設けられ、支持軸部62を挟んで互いに反対側に延出する係止片82,82で構成されている(図2または図5参照)。第2ストッパ80は、支持部材60の保持姿勢において挿通孔34の短手方向に沿って係止片82,82が延出するよう形成され、実施例では保持姿勢で係止片82,82が支持軸部62から左右に延出するよう構成されている。第2ストッパ80は、支持軸部62の軸方向に交差するように延出した係止片82,82の突出端の間を平面投影した水平距離である最大延出部分の寸法が、第2装着孔11の短手方向の開口寸法より小さく設定されて、第2ストッパ80が第2装着孔11を挿通可能に構成されている(図8参照)。第2ストッパ80は、最大延出部分の寸法が挿通孔34の短手方向の開口寸法より大きく設定されて、保持姿勢において該第2ストッパ80と挿通孔34の開口縁とが前後方向に交差する関係になるよう構成される。第2ストッパ80は、最大延出部分の寸法が挿通孔34の長手方向の開口寸法と同じまたは該開口寸法より小さく(実施例)設定されると共に、保持姿勢において支持軸部62の軸方向と交差する上下方向の寸法が挿通孔34の短手方向の開口寸法より小さく設定されている。
【0034】
前記第2ストッパ80についてより具体的に説明すると、第2ストッパ80の対をなす係止片82,82は、棒状であって、支持軸部62の前端部から対称な関係で分岐するように形成されている(図2または図5参照)。対をなす係止片82,82は、支持部材60の保持姿勢において、支持軸部62の後端部側(第2係合片52側)に向かうにつれて該支持軸部62の軸方向と交差する左右方向に互いに離れるように延出形成されている。対をなす係止片82,82は、最大延出部分で屈折して支持軸部62の後端部側(第2係合片52側)に向かうにつれて該支持軸部62の軸方向と交差する左右方向に互いに近づくように形成され、該係止片82における支持軸部62の後端部側の端部が支持軸部62の周面に臨むよう構成されている。このように、第2ストッパ80は、対をなす係止片82,82による最大延出部分より後側部分が後方に向かうにつれて先細りになるよう形成されて、対をなす係止片82,82による最大延出部分より前側部分が前方へ向かうにつれて先細りになるように形成されている。そして、第2ストッパ80は、 対をなす係止片82,82による後側部分の延出寸法が第2係合部50における両第2係合片52,52の内側間の間隔より小さく形成される一方、最大延出部分が両第2係合片52,52の内側間の間隔より大きくなるよう形成されている(図5参照)。すなわち、支持部材60は、フロントピラー10から離間するピラーガーニッシュPGに追随して移動した際に、第2ストッパ80の後側部分が一対の第2係合片52,52の内側間に挿入されて該第2係合片52,52を押し広げるよう構成されている(図11参照)。
【0035】
次に、実施例に係るクリップ30の装着の仕方について説明する。先ず、支持部材60を、クリップ本体32の挿通孔34に対して該挿通孔34の第1係合部40側から第2ストッパ80側を先頭にして挿入する(図9(a)参照)。ここで、支持部材60は、保持姿勢から90°軸周りに回転させた挿通姿勢とし、挿通孔34の長手に沿って第2ストッパ80の延出方向を揃えることで、第2ストッパ80の挿通孔34への挿通が許容される。支持部材60は、挿通姿勢で挿通孔34に挿通し、第2係合部50の挿入始端より第2ストッパ80が突き出たら、回転許容部68を挿通孔34に整合させた状態で軸周りに90°回転する(図9(b)参照)。ここで、回転許容部68は、挿通孔34より小さく形成されているので、支持軸部62の軸周りの回転が許容され(図10(b)参照)、90°回転することで保持姿勢となる。そして、支持部材60は、挿通孔34に支持軸部62が更に挿入されて当接部64が挿通孔34に整合することで、当接部64が挿通孔34に挟持されて軸周りの回転が規制される(図9(c)参照)。
【0036】
次に、クリップ30をピラーガーニッシュPGの支持台部22の第1装着孔24に取り付ける。クリップ30における支持部材60を、第1装着孔24に対してフロントピラー10側から第1ストッパ70側を先頭にして挿入する(図4の2点鎖線または図7(a)参照)。ここで、支持部材60は、 クリップ30を本来の取り付け姿勢から90°回転した状態とし、第1装着孔24の長手に沿って第1ストッパ70の延出方向を揃えることで、第1ストッパ70の第1装着孔24への挿通が許容される。クリップ30は、第1装着孔24に挿通して支持台部22における天板面22bの乗員室R側に第1ストッパ70が突き出たら、支持軸部62における挿通部66と第1ストッパ70との繋ぎ部分を第1装着孔24に整合させた状態でクリップ30を支持軸部62の軸周りに90°回転する(図4の実線または図7(b)参照)。ここで、支持軸部62における挿通部66と第1ストッパ70との繋ぎ部分は、第1装着孔24より小さく形成されているので、支持軸部62の軸周りの回転が許容され、90°回転することで保持姿勢となって第1ストッパ70と第1装着孔24の開口縁が交差する関係となり抜け止めされる。そして、クリップ30は、第1係合部40を第1装着孔24に挿入することで、第1係合片42,42の第1係合爪42a,42aが第1装着孔24の開口縁に引っ掛かり、ピラーガーニッシュPGの支持台部22に対して装着される(図5,図6または図8参照)。
【0037】
次に、ピラーガーニッシュPGをクリップ30によってフロントピラー10に取り付ける。クリップ30を、第2装着孔11に対して乗員室R側から支持部材60の前端部(第2ストッパ80側)を先頭にして挿入する(図8参照)。ここで、クリップ30は、第2ストッパ80の最大延出部分の寸法が第2装着孔11より小さく設定されているので、 そのままの姿勢で第2ストッパ80の第2装着孔11への挿通が許容される。クリップ30は、第2装着孔11に挿通してフロントピラー10の内部に第2ストッパ80が突き出すと共に、第2係合部50を第2装着孔11に挿入することで、第2係合片52,52の第2係合爪52a,52aが第2装着孔11の開口縁に引っ掛かり、ピラーガーニッシュPGがクリップ30を介してフロントピラー10に装着される(図1参照)。
【0038】
前記クリップ30は、挿通姿勢で支持部材60が挿通孔34への挿通を許容されて、回転許容部68を挿通孔34に整合させて回転することで、両端のストッパ70,80により支持部材60がクリップ本体32から抜け止めされる。また、クリップ30は、当接部64を挿通孔34に整合することで支持部材60の回転変位を規制すると共に、挿通孔34の貫通方向に沿う支持部材60をピラーガーニッシュPGの開放移動を損なわない程度に制動することができる。すなわち、クリップ30をピラーガーニッシュPGまたはフロントピラー10に取り付ける際に、支持部材60がクリップ本体32から抜け落ちたり、ストッパ70,80の姿勢が変わったりする等を防止できるので、クリップ30を取り付け易い。
【0039】
次に、サイドエアバッグ装置AUの作動に際してのクリップ30の作用について説明する。サイドエアバッグ装置AUが作動すると、膨張するエアバッグ14にピラーガーニッシュPGが押されて、クリップ30は第1係合部40が第1装着孔24から外れる。これにより、ピラーガーニッシュPGは、乗員室R側への開放移動が許容される。ピラーガーニッシュPGが、支持台部22の天板面22bの乗員室R側に延出した支持部材60の長さ分だけ移動すると、支持部材60の第1ストッパ70が支持台部22における第1装着孔24の開口縁に引っ掛かる。ピラーガーニッシュPGが更に乗員室R側に移動すると、これに伴って支持部材60が挿通孔34に沿ってクリップ本体32に対して乗員室R側に移動する。ピラーガーニッシュPGがフロントピラー10の内部において第2係合部50の挿入始端から延出した支持部材60の長さ分だけ乗員室R側へ移動すると、支持部材60の第2ストッパ80が第2係合部50に引っ掛かることで、支持部材60の乗員室R側への移動が規制されて、支持部材60の第1ストッパ70で保持されたピラーガーニッシュPGの移動が止まる。すなわち、クリップ30によれば、支持部材60において第1係合部40(クリップ本体32)より乗員室R側に延出した長さと第2係合部50(クリップ本体32)よりフロントピラー10の内部に延出した長さとの合計が、ピラーガーニッシュPGの乗員室R側への移動を許容する移動許容ストローク量になる。
【0040】
このように、実施例のクリップ30では、支持台部22における天板面22bの乗員室R側に突き出した第1係合部40の挿入始端から乗員室R側に延出する支持部材60の長さが、ピラーガーニッシュPGの乗員室R側への移動を許容する移動許容ストロークとなる。また、クリップ30では、フロントピラー10の内部に突き出した第2係合部50の挿入始端から延出する支持部材60の長さも、ピラーガーニッシュPGの乗員室R側への移動を許容する移動許容ストロークとなる。クリップ30は、ピラーガーニッシュPG側において支持台部22の天板面22bと該ピラーガーニッシュPGの板状本体裏面との間のスペースを支持部材60におけるクリップ本体32からの延出部分の収容スペースとして用いることができる。同様に、クリップ30は、フロントピラー10側において中空筒状のフロントピラー10の内部スペースを支持部材60におけるクリップ本体32からの延出部分の収容スペースとして用いることができる。すなわち、クリップ30によれば、移動許容ストロークを生み出す支持部材60のクリップ本体32からの延出部分を、ピラーガーニッシュPG側またはフロントピラー10側の何れか一方に依存することなく、両方に分配して配置しているので、ピラーガーニッシュPGの移動許容ストロークを長くとることができる。例えば妨害角を小さくする等によりピラーガーニッシュPGを薄くしてピラーガーニッシュPG側のスペースが狭くなったり、フロントピラー10の内部に配設された補強部材等によってフロントピラー10側のスペースが狭くなっても、クリップ30による該ピラーガーニッシュPGの移動許容ストロークを全体として確保することができる。
【0041】
前述の如く、クリップ30は、ピラーガーニッシュPG側およびフロントピラー10側の両方のスペースを利用して移動許容ストロークを長くとることができる。すなわち、クリップ30は、支持部材60におけるクリップ本体32から延出する延出部分を無理をして多重に折り畳む必要がなく、ピラーガーニッシュPGの所定ストロークまでの開放移動を支持部材60の支持軸部62が引っ掛かって妨げることを回避でき、ピラーガーニッシュPGの円滑な開放移動を許容し得る。また、クリップ30は、支持部材60の延出部分を湾曲または折り畳みのためにピラーガーニッシュPGの裏面に強く押し当てることを回避できるので、支持部材60の強い押圧に伴う合成樹脂製のピラーガーニッシュPGの白化や変形等を防止することができる。
【0042】
前記クリップ30は、支持部材60の移動時に第2係合部50の一対の係合片52,52間に挿入された第2ストッパ80で両係合片52,52を押し広げることで、各係合片52の外側に設けられた係合爪52aと第2装着孔11の開口縁とが強く係合することになる。すなわち、支持部材60の前端部をフロントピラー10ではなくクリップ本体32で係止する構成としても、前端部の第2ストッパ80がクリップ本体32をフロントピラー10から外れ難くするように作用するので、ピラーガーニッシュPGの開放移動時にクリップ本体32が抜けず、ピラーガーニッシュPGを適切なストロークで開放規制し得る。
【0043】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、以下のように変更することも可能である。
(1)実施例では、車両内装部材として、車体のフロントピラーに対してクリップを利用して取り付けられるピラーガーニッシュを例示したが、本願が対象とする車両内装部材はこれに限定されるものではなく、ルーフサイドに対してクリップを利用して装着されるルーフサイドガーニッシュやリアピラーに取り付けられるピラーガーニッシュ等も対象とされる。
(2)実施例のクリップは、クリップ本体の係合部から延出する支持部材の延出部分を挿通孔の貫通方向に沿って直線的に延在させたが、湾曲させたり、折り畳んでもよい。この場合であっても、支持部材の延出部分の湾曲および折り畳み度合いを緩く設定することができる。
(3)実施例の係合部は、挿通孔を挟んで対向配置した一組の係合片で構成したが、当該係合片の組と交差する方向に挿通孔を挟んで対向する係合片の組を設けてもよい。
(4)可撓性を有する合成樹脂の支持部材でなく、金属のシャフトを支持部材として採用することも可能である。
(5)第1ストッパの構成を第2ストッパに適用しても、第2ストッパの構成を第1ストッパに適用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 フロントピラー(固定部材),11 第2装着孔,24 第1装着孔,
24a 保持辺,32 クリップ本体,34 挿通孔,40 第1係合部(係合部),
42 第1係合片(係合片),50 第2係合部(係合部),52 第2係合片(係合片),
60 支持部材,62 支持軸部,64 当接部,64a 当接辺,
66 回転許容部,70 第1ストッパ(ストッパ),80 第2ストッパ(ストッパ),
PG ピラーガーニッシュ(被固定部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定部材を固定部材に対して装着するクリップ本体と、このクリップ本体に貫通形成された挿通孔に挿通して該挿通孔の貫通方向に沿って移動可能に保持された支持部材とを備え、
前記支持部材は、前記クリップ本体における挿通孔の両側から延出するように形成され、該延出する部分の夫々にストッパが設けられ、
前記支持部材の一方のストッパが被固定部材に引っ掛かると共に、他方のストッパがクリップ本体に引っ掛かって、前記クリップ本体から外れた被固定部材の所定ストロークだけの移動を許容して抜け止めするよう構成した
ことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記クリップ本体は、
前記挿通孔の一方の開口周りに設けられ、前記被固定部材に設けられた第1装着孔に離脱可能に係合する第1係合部と、
前記挿通孔の他方の開口周りに設けられ、前記第1装着孔に相対して前記固定部材に設けられる第2装着孔に係合する第2係合部とを備え、前記第1係合部および前記第2係合部が、対応の装着孔への挿入始端を互いに反対に向けて形成され、
前記支持部材は、
前記挿通孔に対して該挿通孔の貫通方向に沿って移動可能に挿通され、第1係合部および第2係合部の挿入始端の夫々から延出する長さに設定された支持軸部と、
前記支持軸部における第1係合部の挿入始端から延出する部分に設けられ、該支持軸部の挿通孔の貫通方向に沿う移動により被固定部材の第1装着孔の開口縁に引っ掛かるよう形成された第1ストッパと、
前記支持軸部における第2係合部の挿入始端から延出する部分に設けられ、該支持軸部の挿通孔の貫通方向に沿う移動により第2係合部に引っ掛かるよう形成された第2ストッパとを備え、
前記支持部材の第1ストッパが被固定部材の第1装着孔の開口縁に引っ掛かると共に、第2ストッパが第2係合部に引っ掛かって、前記クリップ本体の第1係合部から外れた被固定部材の所定ストロークだけの移動を許容して抜け止めするよう構成した請求項1記載のクリップ。
【請求項3】
前記第1係合部および第2係合部は、前記挿通孔を挟んで該挿通孔の貫通方向に沿って突出するように設けられて、互いに近接する方向へ変形可能な一対の係合片を有し、
前記一対の係合片の夫々には、互いに対向する内側と反対の外側に突出する係合爪が設けられ、
前記クリップ本体は、一対の係合片を互いに近接するように変形させて対応の装着孔に挿入して、該装着孔の開口縁に引っ掛かった係合爪により抜け止めされる請求項2記載のクリップ。
【請求項4】
前記第2ストッパは、前記第2係合部側の部分が該第2係合部における両係合片の内側間の間隔より前記支持軸部の軸方向と交差する方向の延出寸法が小さく形成される一方、最大延出部分が第2係合部における両係合片の内側間の間隔より大きくなるよう形成され、
前記支持部材が前記固定部材から離間する被固定部材につれて移動した際に、前記第2ストッパの第2係合部側の部分が一対の係合片の内側間に挿入されて該係合片を押し広げるよう構成した請求項3記載のクリップ。
【請求項5】
前記支持部材は、前記クリップ本体の挿通孔に挿通した状態で前記支持軸部の軸周りに回転して姿勢変位可能な一方、少なくとも1つの姿勢で回転が制約され、この回転が制約される保持姿勢で、前記支持部材の第1ストッパが被固定部材の第1装着孔の開口縁に引っ掛かると共に、第2ストッパが第2係合部に引っ掛かる構成とした請求項2〜4の何れか一項に記載のクリップ。
【請求項1】
被固定部材を固定部材に対して装着するクリップ本体と、このクリップ本体に貫通形成された挿通孔に挿通して該挿通孔の貫通方向に沿って移動可能に保持された支持部材とを備え、
前記支持部材は、前記クリップ本体における挿通孔の両側から延出するように形成され、該延出する部分の夫々にストッパが設けられ、
前記支持部材の一方のストッパが被固定部材に引っ掛かると共に、他方のストッパがクリップ本体に引っ掛かって、前記クリップ本体から外れた被固定部材の所定ストロークだけの移動を許容して抜け止めするよう構成した
ことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記クリップ本体は、
前記挿通孔の一方の開口周りに設けられ、前記被固定部材に設けられた第1装着孔に離脱可能に係合する第1係合部と、
前記挿通孔の他方の開口周りに設けられ、前記第1装着孔に相対して前記固定部材に設けられる第2装着孔に係合する第2係合部とを備え、前記第1係合部および前記第2係合部が、対応の装着孔への挿入始端を互いに反対に向けて形成され、
前記支持部材は、
前記挿通孔に対して該挿通孔の貫通方向に沿って移動可能に挿通され、第1係合部および第2係合部の挿入始端の夫々から延出する長さに設定された支持軸部と、
前記支持軸部における第1係合部の挿入始端から延出する部分に設けられ、該支持軸部の挿通孔の貫通方向に沿う移動により被固定部材の第1装着孔の開口縁に引っ掛かるよう形成された第1ストッパと、
前記支持軸部における第2係合部の挿入始端から延出する部分に設けられ、該支持軸部の挿通孔の貫通方向に沿う移動により第2係合部に引っ掛かるよう形成された第2ストッパとを備え、
前記支持部材の第1ストッパが被固定部材の第1装着孔の開口縁に引っ掛かると共に、第2ストッパが第2係合部に引っ掛かって、前記クリップ本体の第1係合部から外れた被固定部材の所定ストロークだけの移動を許容して抜け止めするよう構成した請求項1記載のクリップ。
【請求項3】
前記第1係合部および第2係合部は、前記挿通孔を挟んで該挿通孔の貫通方向に沿って突出するように設けられて、互いに近接する方向へ変形可能な一対の係合片を有し、
前記一対の係合片の夫々には、互いに対向する内側と反対の外側に突出する係合爪が設けられ、
前記クリップ本体は、一対の係合片を互いに近接するように変形させて対応の装着孔に挿入して、該装着孔の開口縁に引っ掛かった係合爪により抜け止めされる請求項2記載のクリップ。
【請求項4】
前記第2ストッパは、前記第2係合部側の部分が該第2係合部における両係合片の内側間の間隔より前記支持軸部の軸方向と交差する方向の延出寸法が小さく形成される一方、最大延出部分が第2係合部における両係合片の内側間の間隔より大きくなるよう形成され、
前記支持部材が前記固定部材から離間する被固定部材につれて移動した際に、前記第2ストッパの第2係合部側の部分が一対の係合片の内側間に挿入されて該係合片を押し広げるよう構成した請求項3記載のクリップ。
【請求項5】
前記支持部材は、前記クリップ本体の挿通孔に挿通した状態で前記支持軸部の軸周りに回転して姿勢変位可能な一方、少なくとも1つの姿勢で回転が制約され、この回転が制約される保持姿勢で、前記支持部材の第1ストッパが被固定部材の第1装着孔の開口縁に引っ掛かると共に、第2ストッパが第2係合部に引っ掛かる構成とした請求項2〜4の何れか一項に記載のクリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−132533(P2012−132533A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286615(P2010−286615)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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