説明

クリーンルーム内装置とクリーンルーム内システム

【構成】 処理装置4の物品搬出入用のシャッタ8の周囲3方に、出退自在な庇22を設ける。無人搬送車が到着すると、庇22を前進させて処理装置4と無人搬送車の間の隙間を塞ぎ、処理装置4や無人搬送車からの高クリーン度の空気で物品の搬出入経路を充たす。搬出入後のシャッタ8等を閉じると、庇22を後退させて無人搬送車の走行を容易にする。
【効果】 無人搬送車と処理装置との隙間から、低クリーン度の空気が物品側に侵入しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体や液晶基板などの処理装置や搬送車などのクリーンルーム内装置と、クリーンルームシステムに関し、特に物品の移載時の防塵に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームでは搬送車と処理装置などとの間で、半導体や液晶基板などのカセットの搬出入を行う。このため処理装置や搬送車の物品保管スペースにシャッタを設けて、シャッタの内側の物品保管スペースを高クリーン度に保つ。なお処理装置や搬送車の外部はクリーン度の低い空気で充たされ、搬送車内や処理装置内を局所的にクリーン度の高い環境に保っている。そして搬送車と処理装置の間で物品を搬出入する際に、処理装置や搬送車側からファンフィルタユニットで処理したクリーンエアを吹き付け、搬送車と処理装置間の搬出入経路をクリーンに保つ(特許文献1:特開2004−363207)。
【0003】
しかしながら搬送車を処理装置に隙間無しに停止させることは困難なので、搬送車と処理装置の間には隙間ができる。この隙間からクリーン度の低い空気が入り込未、搬出入する物品を汚染するおそれがある。そこで処理装置や搬送車に庇を設けて、搬出入経路を庇で囲み、クリーン度の低い環境と遮断できれば良い。しかしながら搬送車を庇に隙間無しに停止させることは困難なので、単に庇を設けるだけでは問題は解決しない。
【特許文献1】特開2004−363207
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、処理装置への搬送車等の接近を妨げずに、処理装置と搬送車などの間の物品の搬出入経路をクリーンに保つことにある。
請求項2の発明での追加の課題は、物品の搬出入経路をさらにクリーンに保つことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、物品の搬出入用の開口と該開口を覆うシャッタとを備えたクリーンルーム内装置であって、
前記開口の上部と左右双方とを囲むように設けたつばと、前記装置側に後退した状態と前記装置から進出した状態との間で、前記つばを出退させるための手段を設けたことを特徴とする。
好ましくは、前記開口の上部でつばを上方へ突出させる。
またこの発明では、処理装置もしくは搬送車の少なくともいずれかに上記の庇を設け、
搬送車が処理装置の近傍で停止すると前記つばを進出させて、搬送車と処理装置間の物品の搬出入経路の上部と左右とを囲むと共に、処理装置もしくは搬送車からの高クリーン度の空気で前記搬出入経路を充たした状態で、搬送車と処理装置のシャッタを開き、
搬送車と処理装置間での物品の搬出入を終えると、搬送車と処理装置のシャッタを閉じると共に、つばを後退させる。
【発明の効果】
【0006】
この発明のクリーンルーム内装置では、庇のつばを処理装置や搬送車から出退自在にする。そしてつばを進出させると、処理装置や搬送車の開口の上部と左右双方を囲むので、搬送車と処理装置間の物品の搬出入経路にクリーン度の低い空気が入り込むことを防止できる。またつばは出退自在なので、処理装置や搬送車内に後退させると、搬送車の停止や走行を妨げない。
【0007】
ここで開口の上部でつばの先端を上側に突出させると、庇の上部に接触した気流が、つばの先端から下向きに流れて物品の搬出入経路に進入することを防止できる。従って搬出入経路をさらにクリーンに保つことができる。
【0008】
この発明のクリーンルーム内システムでは、搬送車が処理装置の近傍で停止すると、つばを進出させて搬送車と処理装置間の物品の搬出入経路の上部と左右とを囲う。そして処理装置もしくは搬送車から高クリーン度の空気を吹き出させて搬出入経路を充たし、処理装置と搬送車のシャッタを開いて、クリーンな環境下で物品を搬出入する。物品の搬出入を終えると、シャッタを閉じて開口を塞ぎ、つばを後退させて、搬送車を走行させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0010】
図1〜図6に実施例とその変形とを示す。各図において、2はクリーンルームで、4は半導体処理装置や液晶表示パネルの製造装置などの処理装置で、検査装置を含むものとする。6は無人搬送車で、床面を無軌道で走行するが、有軌道台車や天井走行車等でも良く、またシャッタ付きの物品保管スペースを備えた手押し車でも良い。8は処理装置4側のシャッタ、10は無人搬送車側のシャッタで、12は処理装置4内のクリーンスペースで、物品16を保管し、13は無人搬送車6内のクリーンスペースで、同様に物品16を保管する。14は台で、物品16を支持する。無人搬送車6にはスカラアーム17などの移載装置を設け、処理装置4のクリーンスペース12との間で物品16の搬出入する。
【0011】
処理装置4にはファンフィルタユニット18を設けて、クリーンスペース12に高クリーン度の空気を供給する。無人搬送車6にも同様のファンフィルタユニットを設けても良い。20は無人搬送車6の車輪で、21は駆動部であり、各車輪20を独立に駆動することにより、無人搬送車6を走行させる。
【0012】
処理装置4には、シャッタ8の上方及び左右双方を囲むように庇22を設け、庇22にはナット25を設けて、ボールネジ24とモータ26とにより、処理装置4内に少なくとも部分的に収納された状態と、外側に進出した状態との間で進退させる。ボールネジ24〜モータ26により庇22の出退手段を構成し、出退機構の種類は任意である。さらにシャッタ8の周囲で、処理装置4に庇22の収納スペース28を設ける。
【0013】
庇22はシャッタ8の周囲の3つのつば36〜38を備え、つば36はシャッタ8の上側に、つば37,38はシャッタ8の左右にあり、これらは一体でつば36〜38の間に隙間は無い。そして上側のつば36は、上方に突き出した突出部30を備えている。つば36〜38は中間部31に取り付けられ、中間部31は基部32に対して進退動できる。中間部31には弾性体34を設けて、つば36〜38が無人搬送車6のシャッタ10に弾性的に接触し、基部32に対して進退動できる。さらにつば36〜38の先端にウレタンゴムなどのフランジ35を設けて、弾性体34からの押圧力により、無人搬送車6のシャッタ10の周囲に気密に接し、かつ無人搬送車6と接触しても発塵しないようにしてある。なおフランジ35は、ウレタンゴムなどの弾性体に代えて、ポリテトラフルオラエチレンなどの合成樹脂で構成しても良い。庇22には、つば36〜38以外に、シャッタ8の下部に排気口41を残して、下部のつば40を設けても良い。
【0014】
実施例では、庇22が無人搬送車6に衝突することを防止するため、弾性体34を用いる。しかし処理装置4に、無人搬送車6との間隔を測定するためのセンサを設けて、庇22の出退を制御しても良い。
【0015】
実施例の動作を示す。無人搬送車6が処理装置4に向けて走行し停止するまでは、庇22は収納スペース28に収納されて、処理装置4から突き出していない。次に無人搬送車6が処理装置4に対して停止すると、ボールネジ24やモータ26により庇22を無人搬送車6側へ前進させる。無人搬送車6の停止位置にはある程度の誤差が伴うが、この誤差分を弾性体34で吸収し、庇22と無人搬送車6との間に過大な力が働かないようにする。そしてつば36〜38は弾性体34からの押圧力で、無人搬送車6のシャッタ10の周囲に接触させて、無人搬送車6との隙間をシールする。
【0016】
次いで例えば処理装置4側のシャッタ8を開いて、ファンフィルタユニット18からの高クリーン度の空気を処理装置4と無人搬送車6との間のスペースに流し込む。この時、処理装置4と無人搬送車6との間の物品の搬出入経路では、上部がつば36で覆われ、左右がつば37,38で覆われているので、周囲のクリーン度の低い空気が流れ込みにくい。そしてファンフィルタユニット18から供給された空気は、つば36〜38で囲われた搬出入経路の下側から排気される。
【0017】
ここで突出部30は、庇22の上部に衝突した低クリーン度の気流が、搬出入経路に入り込むのを防止する。なお無人搬送車6の天井面側から突出部30へ衝突した気流も、突出部30で向きを変えるため、搬出入経路へ進入しにくくなる。搬出入経路を高クリーン度の空気で置換すると、無人搬送車6側のシャッタ10も開き、物品を移載する。物品の移載を完了するとシャッタ8,10を閉じ、庇22を収納スペース28に格納し、無人搬送車6を発車させる。
【0018】
実施例では処理装置4側に庇22を設けたが、無人搬送車6側に設けても良い。この場合無人搬送車6にもファンフィルタユニットを設けることが好ましい。さらに庇22を処理装置4と無人搬送車6の双方に設けても良く、このような変形例を図6に示す。図6の変形例は、庇22を処理装置4と無人搬送車6の双方に設けた点以外は、図1〜図5の実施例と同様である。
【0019】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 庇22が出退自在なので、無人搬送車6が処理装置4の付近に停止あるいは発進することを妨げない。
(2) つば36〜38で、処理装置4と無人搬送車6間の物品の搬出入経路を囲むので、クリーン度の低い空気が搬出入経路に進入しない。特につば36〜38に設けたフランジ35を弾性体34の押圧力で無人搬送車側に接触させるので、クリーン度の低い空気が入り込む隙間が塞がれる。
(3) 突出部30により、庇22の上部に衝突した低クリーン度の気流が、搬出入経路に入り込むのを防止できる。
(4) つば36〜38は弾性体34により支持されているので、処理装置4に対する無人搬送車6の停止位置のばらつきを吸収できる。このため距離センサなどを用いずに、庇22と無人搬送車6との衝突を防止できる。

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例の処理装置に無人搬送車が横付けした状態を示す要部平面図
【図2】実施例の処理装置に無人搬送車が横付けした状態を示す要部側面図
【図3】実施例の処理装置の要部正面図
【図4】実施例の作用を示す図
【図5】実施例の庇の構造を示す図
【図6】無人搬送車と処理装置の双方に、実施例の庇を設けた状態を模式的に示す図
【符号の説明】
【0021】
2 クリーンルーム
4 処理装置
6 無人搬送車
8,10 シャッタ
12,13 クリーンスペース
14 台
16 物品
18 ファンフィルタユニット
20 車輪
21 駆動部
22 庇
24 ボールネジ
25 ナット
26 モータ
28 収納スペース
30 突出部
31 中間部
32 基部
34 弾性体
35 フランジ
36〜38 つば
40 つば
41 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の搬出入用の開口と該開口を覆うシャッタとを備えたクリーンルーム内装置であって、
前記開口の上部と左右双方とを囲むように設けたつばと、前記装置側に後退した状態と前記装置から進出した状態との間で、前記つばを出退させるための手段を設けたことを特徴とする、クリーンルーム内装置。
【請求項2】
前記開口の上部でつばを上方へ突出させたことを特徴とする、請求項1のクリーンルーム内装置。
【請求項3】
処理装置もしくは搬送車の少なくともいずれかに請求項1または2の庇を設け、
搬送車が処理装置の近傍で停止すると前記つばを進出させて、搬送車と処理装置間の物品の搬出入経路の上部と左右とを囲むと共に、処理装置もしくは搬送車からの高クリーン度の空気で前記搬出入経路を充たした状態で、搬送車と処理装置のシャッタを開き、
搬送車と処理装置間での物品の搬出入を終えると、搬送車と処理装置のシャッタを閉じると共に、つばを後退させるようにした、クリーンルーム内システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−254897(P2008−254897A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100258(P2007−100258)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】