クローラ式走行装置
【課題】 走行モータからセンターフレームの中央側に配管される油圧ホースの破損を防止すると共に該油圧ホースの配管の容易化を図ったクローラ式走行装置を提供する。
【解決手段】 センターフレーム18の左右両側に配置されたトラックフレーム36に左右方向内方に突出する脚体42を設け、脚体42をセンターフレーム18に左右方向移動自在に支持し、トラックフレーム36の前後方向の端部側にクローラベルト40を駆動する走行モータMを設け、脚体42を左右方向の軸芯を有する筒状に形成すると共に、脚体42の左右方向外側方のトラックフレーム36内に、脚体42内に連通するホース挿通用空間56を形成し、油圧ホースHを、脚体42内及びホース挿通用空間56を通して配管し、トラックフレーム36内に、前記油圧ホースHを脚体42からホース挿通用空間56を通して走行モータM側へと案内するガイド面60を設ける。
【解決手段】 センターフレーム18の左右両側に配置されたトラックフレーム36に左右方向内方に突出する脚体42を設け、脚体42をセンターフレーム18に左右方向移動自在に支持し、トラックフレーム36の前後方向の端部側にクローラベルト40を駆動する走行モータMを設け、脚体42を左右方向の軸芯を有する筒状に形成すると共に、脚体42の左右方向外側方のトラックフレーム36内に、脚体42内に連通するホース挿通用空間56を形成し、油圧ホースHを、脚体42内及びホース挿通用空間56を通して配管し、トラックフレーム36内に、前記油圧ホースHを脚体42からホース挿通用空間56を通して走行モータM側へと案内するガイド面60を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホー等の作業機の走行部に採用されるクローラ式走行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バックホーは、走行装置上に旋回台を上下方向の旋回軸心廻りに回動自在に設けて構成され、このバックホーの走行装置としてクローラ式走行装置が採用されている。
前記クローラ式走行装置として、センターフレームの左右両側にクローラベルトを循環回走自在に支持するトラックフレームを配置し、各トラックフレームの前後に左右方向内方に突出する脚体を設け、前後の各脚体をセンターフレームの前後に設けた挿通部に左右方向移動自在に挿通して支持した可変脚型のクローラ式走行装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
前記各トラックフレームの後端側には、クローラベルトを回走方向に駆動する油圧駆動式の走行モータが設けられており、センターフレームの中央側にはクローラ式走行装置側の油圧機器と旋回台側のコントロールバルブとの圧油の流通をはかるためのスイベルジョイントが設けられ、走行モータ側とスイベルジョイント側との間に油圧ホースが配管されている。
【特許文献1】特開2002−294743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のクローラ式走行装置にあっては、走行モータ側とスイベルジョイントとの間に配管される油圧ホースは、トラックフレームの走行モータ取付部から左右方向内方側に向けて延出されると共にセンターフレームの背面を通って該センターフレームの上部側から該センターフレーム内に挿入されてスイベルジョイントに連結されており、油圧ホースの中途部はセンターフレーム及びトラックフレームから露出しているので、該油圧ホースの中途部が落下物や障害物、又は掘削装置等の他の部材に衝当・干渉する惧れがあり、油圧ホースが早期に破損してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みて、可変脚型のクローラ式走行装置において、走行モータ側とセンターフレームの中央側との間に配管される油圧ホースの破損を防止することができるクローラ式走行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、センターフレームの左右両側に、クローラベルトを循環回走自在に支持するトラックフレームを配置し、各トラックフレームに左右方向内方に突出する脚体を設け、この脚体をセンターフレームに左右方向移動自在に支持し、各トラックフレームの前後方向の端部側に、クローラベルトを駆動する油圧駆動式の走行モータを設け、この走行モータからセンターフレームの中央側へと油圧ホースを配管したクローラ式走行装置において、
前記脚体を左右方向の軸芯を有する筒状に形成すると共に、該脚体の左右方向外側方のトラックフレーム内に、該脚体内に連通するホース挿通用空間を形成し、前記油圧ホースを、脚体内及びホース挿通用空間を通して配管し、トラックフレーム内に、前記油圧ホースを脚体からホース挿通用空間を通して走行モータ側へと案内するガイド面を設けたことを特徴とする。
【0007】
また、前記ガイド面は左右方向外方へ行くに従って走行モータ側へと移行する傾斜状に形成されていてもよい。
また、前記ホース挿通用空間の上方のトラックフレーム上壁に、前記油圧ホースの配管の容易化を図るためのホース組付用穴を設けるのがよい。
また、トラックフレームの上部側にクローラベルトを支えて回走方向に案内するスベリ板を着脱自在に設け、このスベリ板に前記ホース組付用穴を塞ぐカバー部材を設けるのがよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、走行モータ側とセンターフレームの中央側との間に配管される油圧ホースは、脚体内及びホース挿通用空間を通して配管されているので、該油圧ホースの破損を防止することができると共に、外観も良好となる。
また、脚体内からホース挿通用空間を通して走行モータ側へと油圧ホースを配管する際、該油圧ホースはホース挿通用空間で走行モータ側へと屈曲させて配管しなければならないが、この油圧ホースを脚体内から走行モータ側へと配管するときにガイド面によって油圧ホースが案内されるので、屈曲した配管経路での油圧ホースの配管が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図3において、1は本発明に係るクローラ式走行装置2を採用した旋回作業機として例示するバックホーである。
このバックホー1は、図5にも示すように、クローラ式走行装置2上に、旋回ベアリング3を介して旋回台4を上下方向の旋回軸心回りに回動自在に設け、該旋回台4上に運転席5、操縦装置6、エンジン、ラジエータ、燃料タンク、作動油タンク、油圧ポンプ、油圧機器を制御するコントロールバルブ及びボンネット7等を設け、旋回台4の前部に、ブーム8、アーム9、バケット10等を備えた掘削作業装置11を備え、クローラ式走行装置2の前部にドーザ装置12を備えている。
【0010】
旋回台4の前部には、該旋回台4に設けられた支持ブラケット13に上下方向の軸心回りに左右揺動自在に支持された揺動ブラケット14が設けられ、この揺動ブラケット14にブーム8とブームシリンダ15の各基端部が枢支され、該ブーム8の先端側にアーム9が枢支されると共に該アーム9をアームシリンダ16で揺動可能とし、アーム9の先端側にバケット10が枢支されると共に該バケット10をバケットシリンダ17で掬い及びダンプ動作可能にしている。
なお、以下の説明において、左右方向外方とは、クローラ式走行装置2の左右方向の中心から左右方向の端部に向かう方向をいい、左右方向内方とは、クローラ式走行装置2の左右方向の端部から左右方向の中心に向かう方向をいう。
【0011】
前記クローラ式走行装置2は、図1〜図6に示すように、センターフレーム18と、このセンターフレーム18の左右両側にそれぞれ配置されたクローラ走行体19とから主構成されており、左右の各クローラ走行体19がセンターフレーム18に左右方向移動自在に支持されていて、左右クローラ走行体19の左右方向の間隔が拡縮自在とされた可変脚型に構成されている。
なお、本実施形態に係るバックホー1は、所謂後方小旋回型であり、旋回台4の後端が描く旋回軌跡が、クローラ走行体19の前後幅、及び収縮状態の左右クローラ走行体19の幅内に収まり、左右クローラ走行体19の間隔を収縮した状態で狭い路地等の走行を容易なものとすると共に、クローラ式走行装置2が通過できる場所であれば周囲との接触なく旋回台4を旋回できるようにしている。また、左右クローラ走行体19の左右方向の間隔を拡張した時には、走行や側溝掘り等の掘削作業をより安定した状態で行うことが可能となっている。
【0012】
前記センターフレーム18は、図1、図2、図4〜6に示すように、基板20と、この基板20上に固定されたベアリング支持台21と、基板20の前端側及び後端側のそれぞれの下面側に設けられた支持フレーム22と、前後の支持フレーム22の左端側及び右端側の下面同士を連結する下板23と、前後支持フレーム22間で且つ基板20の左右両側に配置されていて基板20と下板23と連結する補強板24とを有する。
ベアリング支持台21は、基板20の上面に固定した上下方向の軸芯を有する支持筒25と、この支持筒25の上端に固定された取付板26とを有し、前記取付板26上に支持筒25と同芯状に配置された前記旋回ベアリング3のインナーレースが取付固定され、この旋回ベアリング3のアウターレースは旋回台4の底部に固定されており、これによって、旋回台4がベアリング支持台21に上下方向の旋回軸回りに回転自在に支持されている。
【0013】
ベアリング支持台21の取付板26には旋回軸を中心とする円形状の開口27が形成され、この開口27の下方側の前記基板20にも開口28が形成されており、支持筒25の中心には、クローラ式走行装置2側に設けられた油圧機器(走行モータM、ドーザ装置12のブレードを上下動させる油圧シリンダ、左右クローラ走行体19を拡縮駆動させる油圧シリンダからなる拡縮駆動体29)と旋回台4側のコントロールバルブとの間の圧油の流通を図るためのスイベルジョイント30が設けられている。
スイベルジョイント30の底部は、基板20の開口28を挿通して、該基板20の下面側に取り付けられたステー31に取付固定され、スイベルジョイント30の上部は、ベアリング支持台21の取付板26の開口27を挿通すると共に、旋回台4の底部を貫通して旋回台4内に挿入されている。
【0014】
前記支持フレーム22は前後壁22a,22bと、該前後壁22a,22bの下端同士を連結する下壁22cとを備えていて、板材を折曲することによって側面視上方開口状のコ字形に形成されており、前後壁22a,22bの上端が基板20の下面に固着されている。
この支持フレーム22と前記基板20の前後方向の端部側とで左右方向の軸芯を有し且つ左右両端が開口状とされた筒状(四角筒状)の挿通部32が構成されている。
後側の挿通部32(支持フレーム22)の前壁22aの左右方向中央側には、センターフレーム18の左右方向の中心から左右に振り分け状に配置された左右一対のホース挿通穴33が貫通形成されている。
【0015】
左右の各ホース挿通穴33は、図10にも示すように、横長の長円状に形成され、開口縁部に沿って油圧ホースHを保護する保護部材34が設けられている。
前記左右の下板23の前部側及び後部側は補強板によって相互に連結されている。
前記左右の各クローラ走行体19は、トラックフレーム36に駆動輪37(スプロケット)、アイドラ38及び複数の転輪39を回転自在に支持すると共に該駆動輪37、アイドラ38及び転輪39にわたって巻き付けられていてトラックフレーム36を上下及び前後から取り囲むように設けられた無端帯状のクローラベルト40を備え、油圧駆動式の走行モータMによって駆動輪37を回転駆動することによりクローラベルト40を周方向に循環回走して前後に走行するように構成されている。
【0016】
本実施形態では、走行モータMはトラックフレーム36の後端側に設けられ、駆動輪37は走行モータMに左右方向の軸芯回りに回転駆動可能に取り付けられ、アイドラ38はトラックフレーム36の前端側に左右方向の軸芯回りに回転自在で且つ前後方向に移動可能に支持されており、該アイドラ38が図示省略の緊張装置の付勢力によって前方側に付勢されることでクローラベルト40に張りが付与されるよう構成されている。
転輪39は、駆動輪37とアイドラ38との間に前後方向に間隔をおいて3つ設けられ、トラックフレーム36の下部に左右方向の軸芯回りに回転自在に支持されている。
【0017】
なお、左右の各クローラ走行体19は、前後方向で向きが逆向きとなっていてもよい。
各トラックフレーム36には、左右方向内方に突出する前後一対の脚体41,42が設けられ、前側の脚体41が前側の挿通部32に左右方向外方から左右方向移動自在に挿入されていると共に、後側の脚体42が後側の挿通部32に左右方向外方から左右方向移動自在に挿入されていて、前側の左右脚体41同士が左右方向で対向状とされていると共に、後側の左右脚体42同士が左右方向で対向状とされている。
また、前後の挿通部32間で且つ左右のトラックフレーム36間には、スイベルジョイント30の下方に位置する前記拡縮駆動体29(油圧シリンダ)が左右方向に沿って設けられ、この拡縮駆動体29のシリンダチューブのボトム側が一方のトラックフレーム36に連結され、拡縮駆動体29のピストンロッドの先端側が他方のトラックフレーム36に連結されており、拡縮駆動体29を伸縮させることにより、トラックフレーム36が左右方向に移動して左右クローラ走行体19の間隔が拡縮されるよう構成されている。
【0018】
前記トラックフレーム36は、前部フレーム43と、該前部フレーム43の後端側に接続された後部フレーム44とから構成され、後部フレーム44はさらに、前部フレーム43の後端に接続された脚体ホルダ45と、この脚体ホルダ45の後端に接続されたモータホルダ46とから構成されている。
前部フレーム43にアイドラ38及び2つの転輪39並びに前側の脚体41が設けられていると共に拡縮駆動体29が連結されており、脚体ホルダ45に1つの転輪39及び後側の脚体42が固定され、モータホルダ46に走行モータMが取り付けられている。
【0019】
なお、脚体ホルダ45と、モータホルダ46とは一体形成されていてもよく、また、脚体ホルダ45は前部フレーム43と一体形成されていてもよく、さらにまた、前部フレーム43と後部フレーム44とを一体形成してもよい。
なお、本実施形態では、前部フレーム43は、板金によって形成され、脚体ホルダ45とモータホルダ46とは、それぞれ鋳物によって構成されている。
前側の脚体41は、前部フレーム43の前後方向中途部に設けられており、主脚部47と補助脚部48とから主構成され、前側の脚体41の左右一方は、前側の挿通部32に左右一方から挿入され、前側の脚体41の左右他方は、前側の挿通部32に左右他方から挿入されている。
【0020】
主脚部47は、図9(a)にも示すように、前後壁47a,47bと上下壁47c,47dとから左右方向の軸心を有する四角筒体(角パイプ)に形成され、左右方向外端側がトラックフレーム36の前部フレーム43に固定された取着板49に連結されている。
左側の前側脚体41の主脚部47と右側の前側脚体41の主脚部47とは、該主脚部47の左右方向内端側同士が前後方向に関して重ね合わせ可能なように、前後方向に関して位置ズレしていると共にこれら主脚部47同士が左右方向摺動自在に接当している。
本実施形態では、左側の主脚部47が右側の主脚部47より前側に位置している。
【0021】
補助脚部48は、上下壁48a,48bと、これら上下壁48a,48bの前後一端側同志を連結する連結壁48cとから側面視コ字形に形成されており、左右方向外端側がトラックフレーム36の前記取着板49に連結されている。
この補助脚部48の左右方向長さは主脚部47の左右方向長さよりも短い長さに形成されており、前後方向の開放側が主脚部47を向くようにして該主脚部47の基部側に溶接等によって固定されている。
本実施形態では、左側の前側脚体41の補助脚部48が主脚部47の後側に位置し、右側の前側脚体41の補助脚部48が主脚部47の前側に位置している(したがって、左側の前側脚体41の主脚部47が右側の前側脚体41の補助脚部48と左右方向で対向状とされ、左側の前側脚体41の補助脚部48が右側の前側脚体41の主脚部47と左右方向で対向状とされている)。
【0022】
前記左右の各主脚部47の上壁47cには、左右方向に長い長孔からなる係合溝51が形成されている
一方、センターフレーム18の基板20には、前記係合溝51に係合してクローラ走行体19の左右方向の移動を規制する規制部材52が、各係合溝51に対応して一対設けられている。
この規制部材52は、上部に工具係合用の六角柱部52aが設けられ、下部に係合ピン部52bが設けられ、中途部に雄ねじ部52cが形成されている。
【0023】
センターフレーム18の基板20上面には、該基板20に形成されたピン挿通孔53を介して前記係合溝51に連通するネジ孔54を備えた保持部材55が、各係合溝51に対応して設けられ、この保持部材55のネジ孔54に、規制部材52が上方から挿通されると共に該ネジ孔54に雄ねじ部52cが螺合されることで保持部材55に規制部材52が固定されている。
前記保持部材52はセンターフレーム18の基板20に溶接によって固定されている。
各規制部材52の係合ピン部52bは、ピン挿通孔53及び係合溝51に挿通状とされている。
【0024】
したがって、クローラ走行体19を左右方向外方に移動させて規制部材52の係合ピン部52bが係合溝51の左右方向内端に接当することにより、クローラ走行体19の左右方向外方側への移動が規制されて該左右のクローラ走行体19が拡張状態(図1)とされ、クローラ走行体19を左右方向内方に移動させて規制部材52の係合ピン部52bが係合溝51の左右方向外端に接当することにより、クローラ走行体19の左右方向内方側への移動が規制されて左右のクローラ走行体19が収縮状態(図2)とされる。
なお、クローラ走行体19を拡張した状態では、各補助脚部48が挿通部32から抜け出ないと共に、主脚部47同士が摺動可能に接当しており、クローラ走行体19を収縮した状態では、左右一方の補助脚部48と他方の主脚部47とが若干の隙間をおいて近接される。
【0025】
トラックフレーム36の脚体ホルダ45は中空状に形成されていると共に、該脚体ホルダ45の内部空間は仕切り壁58(ガイド壁)によって前後に分割されており、後側の内部空間は油圧ホースHを挿通するためのホース挿通用空間56とされている。
この脚体ホルダ45の左右方向内側壁には後側の脚体42を接続するための脚体接続口57が左右方向内方に向けて開設されていると共に、該脚体接続口57はホース挿通用空間56に連通している。
また、脚体ホルダ45の後面にはホース挿通用空間56に連通する開口59が形成されている(したがって、ホース挿通用空間56は左右方向内方及び後方に開口状とされている)。
【0026】
このホース挿通用空間56の左右方向外側面、底面及び前面は閉塞状とされており、該ホース挿通用空間56の前面側を構成する前記仕切り壁58は、左右方向外方に行くに従って後方側(走行モータM側)に移行する傾斜状に形成されており、該仕切り壁58の後面は油圧ホースHを後側の脚体42内から走行モータ側へと案内する(又は、走行モータM側から後側の脚体42内へと案内する)ガイド面60とされている。
この仕切り壁58の左右方向内端側は前記脚体接続口57の前端側に接続され、該仕切り壁58の左右方向外端側は、脚体ホルダ45の外側壁45bの、脚体接続口57後端側の左右方向外側方に対応する位置に(脚体ホルダ45の外側壁45bの前後方向中間部)に接続されており、ガイド面60は、脚体接続口57の前端側から後方に行くに従って左右方向外方に移行する方向に延びていると共に、後側の脚体42の左右方向外側方に位置している。
【0027】
また、ホース挿通用空間56の上方の、脚体ホルダ45の上壁45aには、脚体42内から走行モータ側へと配管される(又は、走行モータM側から脚体42内へと配管される)油圧ホースHの配管の容易化を図るためのホース組付用穴61が貫通形成されている。
このホース組付用穴61は、対向縁が前後左右で対向する平面視矩形状の穴の左右方向外側前部を前記ガイド面60に沿ってカットした形状に形成され、開口縁部の一部がガイド面60に沿うように(一致するように)形成されている。
また、このホース組付用穴61は、ホース挿通用空間56内に手を挿入することができる大きさに形成されている。
【0028】
さらに、このホース組付用穴61は、その前後方向略中央部が脚体接続口57の後端に位置するように形成されていて、該ホース組付用穴61の前縁はガイド面60の前後方向中間部に位置していると共に、後縁は脚体ホルダの後面の開口59の近傍に位置している。
このホース組付用穴61の上方には、クローラベルト40を下から支えて該クローラベルト40を回走方向に案内するスベリ板62が配置されている。
このスベリ板62は、図11に示すように、前後方向中途部の壁部が水平状とされ、前壁が前方に行くに従って下方に移行する傾斜状に形成され、後壁が後方に行くに従って下方に移行する傾斜状に形成されている。
【0029】
このスベリ板62の中途部の壁部の左右方向外端側には、該壁部の左右方向外端側から下方に延出された取付壁63が一体形成され、この取付壁63は、脚体ホルダ45の左右方向外側面にボルトを介して着脱自在に取付固定されている。
また、脚体ホルダ45の上面には、ホース組付用穴61から土砂等がホース挿通用空間56に侵入するのを防止すべく該ホース組付用穴61を塞ぐカバー部材64が設けられている。
このカバー部材64は、板材によって形成されて前記スベリ板62の下方に配置され、該スベリ板62の前後端部に溶接によって固定されていて、スベリ板62と共に一体的に着脱自在とされている。
【0030】
これによって、カバー部材64の取付用の部材の削減が図れてコストダウンが図れると共に、組付時間の短縮を図ることができる。
なお、トラックフレーム36の前部側にも、カバー部材64を設けていない他は前記スベリ板62と略同様に形成され且つ略同様の構造でトラックフレーム36に取り付けられるスベリ板62が設けられている。
トラックフレーム36のモータホルダ46は、左右方向内側面が開口した中空状に形成され、該モータホルダ46の前面側には、脚体ホルダ45の後面側の開口59に連通する開口65が形成されており、該モータホルダ46の内部空間76はホース挿通用空間56に連通している。
【0031】
なお、モータホルダ46の左右方向内側面は、図示省略のカバー板によって閉塞される。
このモータホルダ46の左右方向外側壁の後部側は、左右方向内方側にオフセットして形成され、該左右方向外側壁の後部側が走行モータMが取り付けられるモータ取付部66とされ、このモータ取付部66に走行モータMが取り付けられている。
走行モータMの駆動部67はモータ取付部66の左右方向外側方に位置し、該駆動部67はプランジャ型の油圧モータと減速装置と該減速装置を介して油圧モータによって回転駆動される回転ドラムとを備えており、該回転ドラムに駆動輪37が一体回転自在に取付固定されている。
【0032】
また、走行モータMのバルブ部68はモータ取付部66に形成された開口を介してモータホルダ46の内部空間76内に挿入され、該バルブ部68に油圧ホースHが接続される。
該バルブ部68は、油圧ホースHの接続部、カウンタバランス弁、ショックレス弁、1速・2速切換え用のスプール等を備えている。
図7及び図9(b)に示すように、後側の脚体42は、前後壁42a,42bと上下壁42c,42dとから左右方向の軸心を有すると共に左右両端が開口した四角筒体(角パイプ)に形成され、左右方向外端側が脚体ホルダ45の脚体接続口57に挿入されて該脚体接続口57に溶接等によって固定されており、ホース挿通用空間56が後側の脚体42内に連通している。
【0033】
この後側の脚体42は、四角筒体のみで構成され、後側の脚体42の左右一方は後側の挿通部32に左右一方から挿入され、後側の脚体42の左右他方は後側の挿通部32に左右他方から挿入され、且つ左右の後側の脚体42が同芯状とされて後側の挿通部32内に挿通されている。
図10に示すように、この後側の脚体42の前壁42aの左右方向内方側には切欠開口69が貫通形成されており、該切欠開口69は左右方向内端から左右方向外方に向けて形成されていて、後側の脚体42の左右方向内端側の開口42eと連続状となっている。
【0034】
また、後側の脚体42の前壁42aの上部側は、後側の挿通部32のホース挿通穴33の上端側に前後方向においてオーバーラップしており、切欠開口69の上縁側の左右方向内端側は左右方向内方に行くに従って上方に移行する傾斜状とされている。
また、後側の脚体42内面の左右方向内端側には、上壁42cから後壁42bを経て下壁42dに至るC字形の補強部材70が固着されており、後側の脚体42の左右方向内端側の強度確保が図られている。
左右の各後側の脚体42の上壁42cには、左右方向に長い長孔からなる係合溝71が形成されている。
【0035】
一方、センターフレーム18の基板20には、前記係合溝71に係合してクローラ走行体19の左右方向の移動を規制する規制部材72が、各係合溝71に対応して一対設けられている。
この規制部材72は、上部に工具係合用の六角柱部72aが設けられ、下部に係合ピン部72bが設けられ、中途部に雄ねじ部72cが形成されている。
センターフレーム18の基板20上面には、基板20に形成されたピン挿通孔73を介して前記係合溝71に連通するネジ孔74を備えた保持部材75が、各係合溝71に対応して設けられ、この保持部材75のネジ孔74に、規制部材72が上方から挿通されると共に該ネジ孔74に雄ねじ部72cが螺合されることで保持部材75に規制部材72が固定されている。
【0036】
前記保持部材75はセンターフレーム18の基板20にボルトによって固定されている。
各規制部材72の係合ピン部72bは、ピン挿通孔73及び係合溝71に挿通状とされている。
したがって、クローラ走行体19を左右方向外方に移動させて規制部材72の係合ピン部72bが係合溝71の左右方向内端に接当することにより、クローラ走行体19の左右方向外方側への移動が規制されて該左右のクローラ走行体19が拡張状態とされ、クローラ走行体19を左右方向内方に移動させて規制部材72の係合ピン部72bが係合溝71の左右方向外端に接当することにより、クローラ走行体19の左右方向内方側への移動が規制されて左右のクローラ走行体19が収縮状態とされる。
【0037】
前記構成のクローラ式走行装置2にあっては、走行モータMとスイベルジョイント30との間に配管される油圧ホースHの一端側は、走行モータMのバルブ部68にエルボ継ぎ手を介して接続され、該走行モータM側から延出された油圧ホースHは、走行モータMのバルブ部68から左右方向外方に行くに従って前方に移行する傾斜方向へと延出されると共にモータホルダ46の前面側の開口65及び脚体ホルダ45の後面側の開口59を介してホース挿通用空間56に挿入され、該ホース挿通用空間56から後側の脚体42内に挿入されている。
【0038】
この脚体42内へと配管された油圧ホースHの他端側は、後側の脚体42の切欠開口69又は該脚体42の左右方向内端側の開口42eからホース挿通穴33を通してセンターフレーム18の中央側(センターフレーム18の後側の挿通部32の前側)へと配管され、該油圧ホースHの他端側がスイベルジョイント30に接続されている。
本実施形態において、前記油圧ホースHを配管する場合、例えば、以下の要領で行われる。
先ず、例えば、図1や図7に示すような、トラックフレーム36の左右間隔を十分に広げた状態で、走行モータMに接続される油圧ホースHの一端側をホース挿通穴33から挿通部32内に挿入すると共に後側の脚体42の左右方向内端側の開口42eを介して該脚体42内に挿入していく。
【0039】
次に、トラックフレーム36の左右間隔を縮めながら油圧ホースHの一端側を左右方向外方へもってくるように、該油圧ホースHを押し込む。
これにより、該油圧ホースHの一端側は、後側の脚体42の左右方向外端側の開口42fから送出されて脚体ホルダ45のホース挿通用空間56に挿入され、該ホース挿通用空間56に挿入された油圧ホースHの一端側はガイド面60に当たって該ガイド面60によって案内されて後方側(走行モータM側)へと向きが変更される。
このように油圧ホースHを後側の脚体42内からホース挿通用空間56を通して走行モータM側へと配管する場合に、該油圧ホースHはガイド面60によって後方側に湾曲状に折り曲げられて走行モータM側へと案内され、場所が狭く且つ屈曲した配管経路での油圧ホースHの配管がガイド面60によって容易に行える。
【0040】
また、その後、油圧ホースHの一端側をホース挿通用空間56からモータホルダ46の内部空間76内に挿入させて走行モータMのバルブ部68へと接続するが、ガイド面60によって案内されて後方側へと向きが変更された油圧ホースHの一端側は、ガイド面60と脚体ホルダ45の内面の左右方向外側の面との接続部分あたりでつっかえる場合がある。また、走行モータMのバルブ部68は、ホース挿通用空間56の真後ろから左右方向内方側に変位した位置にある。
そこで、ホース組付用穴61からホース挿通用空間56内に手を入れて、ガイド面60によって案内された油圧ホースHの一端側をつかんで走行モータMのバルブ部68側へと(後方に行くに従って左右方向内方側に移行する傾斜方向へと)該油圧ホースHの一端側の向きを変更させて、該油圧ホースHの一端側を走行モータMのバルブ部68へと送って該バルブ部68に接続する。
【0041】
このように、脚体ホルダ45の上壁45aにホース組付用穴61を形成しているので、ホース挿通用空間56から走行モータM側へと油圧ホースHを配管する際に、実際に油圧ホースHに触れて行うことができ、場所が狭く且つ屈曲した配管経路での油圧ホースHの配管がさらに容易となる。
なお、油圧ホースHの他端側のスイベルジョイント30への接続は、油圧ホースHの配管前又は配管後のいずれであってもよい。
また、油圧ホースHは、スイベルジョイント30側から走行モータM側へと配管する場合を例示したが、走行モータM側からスイベルジョイント30側へと配管してもよい。
【0042】
また、前記ガイド面60は、油圧ホースHの一端側がガイド面60と脚体ホルダ45の内面との接続部分あたりでつっかえないように傾斜の緩やかな(傾斜のなめらかな)面に形成することも考えられるが、そうすると、仕切り壁58が左右方向内方側に寄ってしまってホース組付用穴61の開口面積が小さくなる。
前述したように、走行モータMとスイベルジョイント30との間に配管される油圧ホースHは、モータホルダ46内、脚体ホルダ45のホース挿通用空間56及び後側の脚体42内に収納状とされているので、該油圧ホースHの破損を防止することができると共に、外観も良好となる。
【0043】
また、図2に示すように、左右クローラ走行体19が収縮した状態では、走行モータMとスイベルジョイント30との間に配管される油圧ホースHは、ホース挿通用空間56及び後側の脚体42内で湾曲状(S字状)に撓んだ状態で収納されていて、該油圧ホースHの他端側は後側の脚体42の切欠開口69を介して該脚体から導出されている。
この収縮状態から左右クローラ走行体19を拡張させると、油圧ホースHは後側の脚体42内で湾曲状態から伸びていって切欠開口69から該脚体42の左右方向内端側の開口に移り、左右クローラ走行体19が拡張した状態では、図1に示すように、油圧ホースHの他端側は後側の脚体42の左右方向内端側の開口を介して該脚体42から導出されるよう構成されており、油圧ホースHが脚体ホルダ45のホース挿通用空間56及び脚体42内に配管されていても、クローラ走行体19の拡縮を妨げることはなく、クローラ走行体19をスムーズに拡縮させることができる。
【0044】
なお、本発明のクローラ式走行装置2を採用する作業機としては、前述したバックホー1に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】左右クローラ走行体を拡張した状態のクローラ式走行装置の平面断面図である。
【図2】左右クローラ走行体を収縮した状態のクローラ式走行装置の平面断面図である。
【図3】バックホーの斜視図である。
【図4】クローラ式走行装置の平面図である。
【図5】クローラ式走行装置の側面図である。
【図6】クローラ式走行装置の側面断面図である。
【図7】クローラ走行体の拡張状態での要部の平面断面図である。
【図8】クローラ走行体の収縮状態での要部の平面断面図である。
【図9】(a)は前側の脚体を挿通部に支持した状態の側面断面図、(b)は後側の脚体を挿通部に支持した状態の側面断面図である。
【図10】後側の脚体を挿通部に支持した状態の背面断面図である。
【図11】(a)はトラックフレーム後部側の平面図、(b)はトラックフレーム後部側の側面図である。
【符号の説明】
【0046】
18 センターフレーム
36 トラックフレーム
40 クローラベルト
42 脚体
56 ホース挿通用空間
60 ガイド面
61 ホース組付用穴
62 スベリ板
64 カバー部材
H 油圧ホース
M 走行モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホー等の作業機の走行部に採用されるクローラ式走行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バックホーは、走行装置上に旋回台を上下方向の旋回軸心廻りに回動自在に設けて構成され、このバックホーの走行装置としてクローラ式走行装置が採用されている。
前記クローラ式走行装置として、センターフレームの左右両側にクローラベルトを循環回走自在に支持するトラックフレームを配置し、各トラックフレームの前後に左右方向内方に突出する脚体を設け、前後の各脚体をセンターフレームの前後に設けた挿通部に左右方向移動自在に挿通して支持した可変脚型のクローラ式走行装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
前記各トラックフレームの後端側には、クローラベルトを回走方向に駆動する油圧駆動式の走行モータが設けられており、センターフレームの中央側にはクローラ式走行装置側の油圧機器と旋回台側のコントロールバルブとの圧油の流通をはかるためのスイベルジョイントが設けられ、走行モータ側とスイベルジョイント側との間に油圧ホースが配管されている。
【特許文献1】特開2002−294743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来のクローラ式走行装置にあっては、走行モータ側とスイベルジョイントとの間に配管される油圧ホースは、トラックフレームの走行モータ取付部から左右方向内方側に向けて延出されると共にセンターフレームの背面を通って該センターフレームの上部側から該センターフレーム内に挿入されてスイベルジョイントに連結されており、油圧ホースの中途部はセンターフレーム及びトラックフレームから露出しているので、該油圧ホースの中途部が落下物や障害物、又は掘削装置等の他の部材に衝当・干渉する惧れがあり、油圧ホースが早期に破損してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑みて、可変脚型のクローラ式走行装置において、走行モータ側とセンターフレームの中央側との間に配管される油圧ホースの破損を防止することができるクローラ式走行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、センターフレームの左右両側に、クローラベルトを循環回走自在に支持するトラックフレームを配置し、各トラックフレームに左右方向内方に突出する脚体を設け、この脚体をセンターフレームに左右方向移動自在に支持し、各トラックフレームの前後方向の端部側に、クローラベルトを駆動する油圧駆動式の走行モータを設け、この走行モータからセンターフレームの中央側へと油圧ホースを配管したクローラ式走行装置において、
前記脚体を左右方向の軸芯を有する筒状に形成すると共に、該脚体の左右方向外側方のトラックフレーム内に、該脚体内に連通するホース挿通用空間を形成し、前記油圧ホースを、脚体内及びホース挿通用空間を通して配管し、トラックフレーム内に、前記油圧ホースを脚体からホース挿通用空間を通して走行モータ側へと案内するガイド面を設けたことを特徴とする。
【0007】
また、前記ガイド面は左右方向外方へ行くに従って走行モータ側へと移行する傾斜状に形成されていてもよい。
また、前記ホース挿通用空間の上方のトラックフレーム上壁に、前記油圧ホースの配管の容易化を図るためのホース組付用穴を設けるのがよい。
また、トラックフレームの上部側にクローラベルトを支えて回走方向に案内するスベリ板を着脱自在に設け、このスベリ板に前記ホース組付用穴を塞ぐカバー部材を設けるのがよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、走行モータ側とセンターフレームの中央側との間に配管される油圧ホースは、脚体内及びホース挿通用空間を通して配管されているので、該油圧ホースの破損を防止することができると共に、外観も良好となる。
また、脚体内からホース挿通用空間を通して走行モータ側へと油圧ホースを配管する際、該油圧ホースはホース挿通用空間で走行モータ側へと屈曲させて配管しなければならないが、この油圧ホースを脚体内から走行モータ側へと配管するときにガイド面によって油圧ホースが案内されるので、屈曲した配管経路での油圧ホースの配管が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図3において、1は本発明に係るクローラ式走行装置2を採用した旋回作業機として例示するバックホーである。
このバックホー1は、図5にも示すように、クローラ式走行装置2上に、旋回ベアリング3を介して旋回台4を上下方向の旋回軸心回りに回動自在に設け、該旋回台4上に運転席5、操縦装置6、エンジン、ラジエータ、燃料タンク、作動油タンク、油圧ポンプ、油圧機器を制御するコントロールバルブ及びボンネット7等を設け、旋回台4の前部に、ブーム8、アーム9、バケット10等を備えた掘削作業装置11を備え、クローラ式走行装置2の前部にドーザ装置12を備えている。
【0010】
旋回台4の前部には、該旋回台4に設けられた支持ブラケット13に上下方向の軸心回りに左右揺動自在に支持された揺動ブラケット14が設けられ、この揺動ブラケット14にブーム8とブームシリンダ15の各基端部が枢支され、該ブーム8の先端側にアーム9が枢支されると共に該アーム9をアームシリンダ16で揺動可能とし、アーム9の先端側にバケット10が枢支されると共に該バケット10をバケットシリンダ17で掬い及びダンプ動作可能にしている。
なお、以下の説明において、左右方向外方とは、クローラ式走行装置2の左右方向の中心から左右方向の端部に向かう方向をいい、左右方向内方とは、クローラ式走行装置2の左右方向の端部から左右方向の中心に向かう方向をいう。
【0011】
前記クローラ式走行装置2は、図1〜図6に示すように、センターフレーム18と、このセンターフレーム18の左右両側にそれぞれ配置されたクローラ走行体19とから主構成されており、左右の各クローラ走行体19がセンターフレーム18に左右方向移動自在に支持されていて、左右クローラ走行体19の左右方向の間隔が拡縮自在とされた可変脚型に構成されている。
なお、本実施形態に係るバックホー1は、所謂後方小旋回型であり、旋回台4の後端が描く旋回軌跡が、クローラ走行体19の前後幅、及び収縮状態の左右クローラ走行体19の幅内に収まり、左右クローラ走行体19の間隔を収縮した状態で狭い路地等の走行を容易なものとすると共に、クローラ式走行装置2が通過できる場所であれば周囲との接触なく旋回台4を旋回できるようにしている。また、左右クローラ走行体19の左右方向の間隔を拡張した時には、走行や側溝掘り等の掘削作業をより安定した状態で行うことが可能となっている。
【0012】
前記センターフレーム18は、図1、図2、図4〜6に示すように、基板20と、この基板20上に固定されたベアリング支持台21と、基板20の前端側及び後端側のそれぞれの下面側に設けられた支持フレーム22と、前後の支持フレーム22の左端側及び右端側の下面同士を連結する下板23と、前後支持フレーム22間で且つ基板20の左右両側に配置されていて基板20と下板23と連結する補強板24とを有する。
ベアリング支持台21は、基板20の上面に固定した上下方向の軸芯を有する支持筒25と、この支持筒25の上端に固定された取付板26とを有し、前記取付板26上に支持筒25と同芯状に配置された前記旋回ベアリング3のインナーレースが取付固定され、この旋回ベアリング3のアウターレースは旋回台4の底部に固定されており、これによって、旋回台4がベアリング支持台21に上下方向の旋回軸回りに回転自在に支持されている。
【0013】
ベアリング支持台21の取付板26には旋回軸を中心とする円形状の開口27が形成され、この開口27の下方側の前記基板20にも開口28が形成されており、支持筒25の中心には、クローラ式走行装置2側に設けられた油圧機器(走行モータM、ドーザ装置12のブレードを上下動させる油圧シリンダ、左右クローラ走行体19を拡縮駆動させる油圧シリンダからなる拡縮駆動体29)と旋回台4側のコントロールバルブとの間の圧油の流通を図るためのスイベルジョイント30が設けられている。
スイベルジョイント30の底部は、基板20の開口28を挿通して、該基板20の下面側に取り付けられたステー31に取付固定され、スイベルジョイント30の上部は、ベアリング支持台21の取付板26の開口27を挿通すると共に、旋回台4の底部を貫通して旋回台4内に挿入されている。
【0014】
前記支持フレーム22は前後壁22a,22bと、該前後壁22a,22bの下端同士を連結する下壁22cとを備えていて、板材を折曲することによって側面視上方開口状のコ字形に形成されており、前後壁22a,22bの上端が基板20の下面に固着されている。
この支持フレーム22と前記基板20の前後方向の端部側とで左右方向の軸芯を有し且つ左右両端が開口状とされた筒状(四角筒状)の挿通部32が構成されている。
後側の挿通部32(支持フレーム22)の前壁22aの左右方向中央側には、センターフレーム18の左右方向の中心から左右に振り分け状に配置された左右一対のホース挿通穴33が貫通形成されている。
【0015】
左右の各ホース挿通穴33は、図10にも示すように、横長の長円状に形成され、開口縁部に沿って油圧ホースHを保護する保護部材34が設けられている。
前記左右の下板23の前部側及び後部側は補強板によって相互に連結されている。
前記左右の各クローラ走行体19は、トラックフレーム36に駆動輪37(スプロケット)、アイドラ38及び複数の転輪39を回転自在に支持すると共に該駆動輪37、アイドラ38及び転輪39にわたって巻き付けられていてトラックフレーム36を上下及び前後から取り囲むように設けられた無端帯状のクローラベルト40を備え、油圧駆動式の走行モータMによって駆動輪37を回転駆動することによりクローラベルト40を周方向に循環回走して前後に走行するように構成されている。
【0016】
本実施形態では、走行モータMはトラックフレーム36の後端側に設けられ、駆動輪37は走行モータMに左右方向の軸芯回りに回転駆動可能に取り付けられ、アイドラ38はトラックフレーム36の前端側に左右方向の軸芯回りに回転自在で且つ前後方向に移動可能に支持されており、該アイドラ38が図示省略の緊張装置の付勢力によって前方側に付勢されることでクローラベルト40に張りが付与されるよう構成されている。
転輪39は、駆動輪37とアイドラ38との間に前後方向に間隔をおいて3つ設けられ、トラックフレーム36の下部に左右方向の軸芯回りに回転自在に支持されている。
【0017】
なお、左右の各クローラ走行体19は、前後方向で向きが逆向きとなっていてもよい。
各トラックフレーム36には、左右方向内方に突出する前後一対の脚体41,42が設けられ、前側の脚体41が前側の挿通部32に左右方向外方から左右方向移動自在に挿入されていると共に、後側の脚体42が後側の挿通部32に左右方向外方から左右方向移動自在に挿入されていて、前側の左右脚体41同士が左右方向で対向状とされていると共に、後側の左右脚体42同士が左右方向で対向状とされている。
また、前後の挿通部32間で且つ左右のトラックフレーム36間には、スイベルジョイント30の下方に位置する前記拡縮駆動体29(油圧シリンダ)が左右方向に沿って設けられ、この拡縮駆動体29のシリンダチューブのボトム側が一方のトラックフレーム36に連結され、拡縮駆動体29のピストンロッドの先端側が他方のトラックフレーム36に連結されており、拡縮駆動体29を伸縮させることにより、トラックフレーム36が左右方向に移動して左右クローラ走行体19の間隔が拡縮されるよう構成されている。
【0018】
前記トラックフレーム36は、前部フレーム43と、該前部フレーム43の後端側に接続された後部フレーム44とから構成され、後部フレーム44はさらに、前部フレーム43の後端に接続された脚体ホルダ45と、この脚体ホルダ45の後端に接続されたモータホルダ46とから構成されている。
前部フレーム43にアイドラ38及び2つの転輪39並びに前側の脚体41が設けられていると共に拡縮駆動体29が連結されており、脚体ホルダ45に1つの転輪39及び後側の脚体42が固定され、モータホルダ46に走行モータMが取り付けられている。
【0019】
なお、脚体ホルダ45と、モータホルダ46とは一体形成されていてもよく、また、脚体ホルダ45は前部フレーム43と一体形成されていてもよく、さらにまた、前部フレーム43と後部フレーム44とを一体形成してもよい。
なお、本実施形態では、前部フレーム43は、板金によって形成され、脚体ホルダ45とモータホルダ46とは、それぞれ鋳物によって構成されている。
前側の脚体41は、前部フレーム43の前後方向中途部に設けられており、主脚部47と補助脚部48とから主構成され、前側の脚体41の左右一方は、前側の挿通部32に左右一方から挿入され、前側の脚体41の左右他方は、前側の挿通部32に左右他方から挿入されている。
【0020】
主脚部47は、図9(a)にも示すように、前後壁47a,47bと上下壁47c,47dとから左右方向の軸心を有する四角筒体(角パイプ)に形成され、左右方向外端側がトラックフレーム36の前部フレーム43に固定された取着板49に連結されている。
左側の前側脚体41の主脚部47と右側の前側脚体41の主脚部47とは、該主脚部47の左右方向内端側同士が前後方向に関して重ね合わせ可能なように、前後方向に関して位置ズレしていると共にこれら主脚部47同士が左右方向摺動自在に接当している。
本実施形態では、左側の主脚部47が右側の主脚部47より前側に位置している。
【0021】
補助脚部48は、上下壁48a,48bと、これら上下壁48a,48bの前後一端側同志を連結する連結壁48cとから側面視コ字形に形成されており、左右方向外端側がトラックフレーム36の前記取着板49に連結されている。
この補助脚部48の左右方向長さは主脚部47の左右方向長さよりも短い長さに形成されており、前後方向の開放側が主脚部47を向くようにして該主脚部47の基部側に溶接等によって固定されている。
本実施形態では、左側の前側脚体41の補助脚部48が主脚部47の後側に位置し、右側の前側脚体41の補助脚部48が主脚部47の前側に位置している(したがって、左側の前側脚体41の主脚部47が右側の前側脚体41の補助脚部48と左右方向で対向状とされ、左側の前側脚体41の補助脚部48が右側の前側脚体41の主脚部47と左右方向で対向状とされている)。
【0022】
前記左右の各主脚部47の上壁47cには、左右方向に長い長孔からなる係合溝51が形成されている
一方、センターフレーム18の基板20には、前記係合溝51に係合してクローラ走行体19の左右方向の移動を規制する規制部材52が、各係合溝51に対応して一対設けられている。
この規制部材52は、上部に工具係合用の六角柱部52aが設けられ、下部に係合ピン部52bが設けられ、中途部に雄ねじ部52cが形成されている。
【0023】
センターフレーム18の基板20上面には、該基板20に形成されたピン挿通孔53を介して前記係合溝51に連通するネジ孔54を備えた保持部材55が、各係合溝51に対応して設けられ、この保持部材55のネジ孔54に、規制部材52が上方から挿通されると共に該ネジ孔54に雄ねじ部52cが螺合されることで保持部材55に規制部材52が固定されている。
前記保持部材52はセンターフレーム18の基板20に溶接によって固定されている。
各規制部材52の係合ピン部52bは、ピン挿通孔53及び係合溝51に挿通状とされている。
【0024】
したがって、クローラ走行体19を左右方向外方に移動させて規制部材52の係合ピン部52bが係合溝51の左右方向内端に接当することにより、クローラ走行体19の左右方向外方側への移動が規制されて該左右のクローラ走行体19が拡張状態(図1)とされ、クローラ走行体19を左右方向内方に移動させて規制部材52の係合ピン部52bが係合溝51の左右方向外端に接当することにより、クローラ走行体19の左右方向内方側への移動が規制されて左右のクローラ走行体19が収縮状態(図2)とされる。
なお、クローラ走行体19を拡張した状態では、各補助脚部48が挿通部32から抜け出ないと共に、主脚部47同士が摺動可能に接当しており、クローラ走行体19を収縮した状態では、左右一方の補助脚部48と他方の主脚部47とが若干の隙間をおいて近接される。
【0025】
トラックフレーム36の脚体ホルダ45は中空状に形成されていると共に、該脚体ホルダ45の内部空間は仕切り壁58(ガイド壁)によって前後に分割されており、後側の内部空間は油圧ホースHを挿通するためのホース挿通用空間56とされている。
この脚体ホルダ45の左右方向内側壁には後側の脚体42を接続するための脚体接続口57が左右方向内方に向けて開設されていると共に、該脚体接続口57はホース挿通用空間56に連通している。
また、脚体ホルダ45の後面にはホース挿通用空間56に連通する開口59が形成されている(したがって、ホース挿通用空間56は左右方向内方及び後方に開口状とされている)。
【0026】
このホース挿通用空間56の左右方向外側面、底面及び前面は閉塞状とされており、該ホース挿通用空間56の前面側を構成する前記仕切り壁58は、左右方向外方に行くに従って後方側(走行モータM側)に移行する傾斜状に形成されており、該仕切り壁58の後面は油圧ホースHを後側の脚体42内から走行モータ側へと案内する(又は、走行モータM側から後側の脚体42内へと案内する)ガイド面60とされている。
この仕切り壁58の左右方向内端側は前記脚体接続口57の前端側に接続され、該仕切り壁58の左右方向外端側は、脚体ホルダ45の外側壁45bの、脚体接続口57後端側の左右方向外側方に対応する位置に(脚体ホルダ45の外側壁45bの前後方向中間部)に接続されており、ガイド面60は、脚体接続口57の前端側から後方に行くに従って左右方向外方に移行する方向に延びていると共に、後側の脚体42の左右方向外側方に位置している。
【0027】
また、ホース挿通用空間56の上方の、脚体ホルダ45の上壁45aには、脚体42内から走行モータ側へと配管される(又は、走行モータM側から脚体42内へと配管される)油圧ホースHの配管の容易化を図るためのホース組付用穴61が貫通形成されている。
このホース組付用穴61は、対向縁が前後左右で対向する平面視矩形状の穴の左右方向外側前部を前記ガイド面60に沿ってカットした形状に形成され、開口縁部の一部がガイド面60に沿うように(一致するように)形成されている。
また、このホース組付用穴61は、ホース挿通用空間56内に手を挿入することができる大きさに形成されている。
【0028】
さらに、このホース組付用穴61は、その前後方向略中央部が脚体接続口57の後端に位置するように形成されていて、該ホース組付用穴61の前縁はガイド面60の前後方向中間部に位置していると共に、後縁は脚体ホルダの後面の開口59の近傍に位置している。
このホース組付用穴61の上方には、クローラベルト40を下から支えて該クローラベルト40を回走方向に案内するスベリ板62が配置されている。
このスベリ板62は、図11に示すように、前後方向中途部の壁部が水平状とされ、前壁が前方に行くに従って下方に移行する傾斜状に形成され、後壁が後方に行くに従って下方に移行する傾斜状に形成されている。
【0029】
このスベリ板62の中途部の壁部の左右方向外端側には、該壁部の左右方向外端側から下方に延出された取付壁63が一体形成され、この取付壁63は、脚体ホルダ45の左右方向外側面にボルトを介して着脱自在に取付固定されている。
また、脚体ホルダ45の上面には、ホース組付用穴61から土砂等がホース挿通用空間56に侵入するのを防止すべく該ホース組付用穴61を塞ぐカバー部材64が設けられている。
このカバー部材64は、板材によって形成されて前記スベリ板62の下方に配置され、該スベリ板62の前後端部に溶接によって固定されていて、スベリ板62と共に一体的に着脱自在とされている。
【0030】
これによって、カバー部材64の取付用の部材の削減が図れてコストダウンが図れると共に、組付時間の短縮を図ることができる。
なお、トラックフレーム36の前部側にも、カバー部材64を設けていない他は前記スベリ板62と略同様に形成され且つ略同様の構造でトラックフレーム36に取り付けられるスベリ板62が設けられている。
トラックフレーム36のモータホルダ46は、左右方向内側面が開口した中空状に形成され、該モータホルダ46の前面側には、脚体ホルダ45の後面側の開口59に連通する開口65が形成されており、該モータホルダ46の内部空間76はホース挿通用空間56に連通している。
【0031】
なお、モータホルダ46の左右方向内側面は、図示省略のカバー板によって閉塞される。
このモータホルダ46の左右方向外側壁の後部側は、左右方向内方側にオフセットして形成され、該左右方向外側壁の後部側が走行モータMが取り付けられるモータ取付部66とされ、このモータ取付部66に走行モータMが取り付けられている。
走行モータMの駆動部67はモータ取付部66の左右方向外側方に位置し、該駆動部67はプランジャ型の油圧モータと減速装置と該減速装置を介して油圧モータによって回転駆動される回転ドラムとを備えており、該回転ドラムに駆動輪37が一体回転自在に取付固定されている。
【0032】
また、走行モータMのバルブ部68はモータ取付部66に形成された開口を介してモータホルダ46の内部空間76内に挿入され、該バルブ部68に油圧ホースHが接続される。
該バルブ部68は、油圧ホースHの接続部、カウンタバランス弁、ショックレス弁、1速・2速切換え用のスプール等を備えている。
図7及び図9(b)に示すように、後側の脚体42は、前後壁42a,42bと上下壁42c,42dとから左右方向の軸心を有すると共に左右両端が開口した四角筒体(角パイプ)に形成され、左右方向外端側が脚体ホルダ45の脚体接続口57に挿入されて該脚体接続口57に溶接等によって固定されており、ホース挿通用空間56が後側の脚体42内に連通している。
【0033】
この後側の脚体42は、四角筒体のみで構成され、後側の脚体42の左右一方は後側の挿通部32に左右一方から挿入され、後側の脚体42の左右他方は後側の挿通部32に左右他方から挿入され、且つ左右の後側の脚体42が同芯状とされて後側の挿通部32内に挿通されている。
図10に示すように、この後側の脚体42の前壁42aの左右方向内方側には切欠開口69が貫通形成されており、該切欠開口69は左右方向内端から左右方向外方に向けて形成されていて、後側の脚体42の左右方向内端側の開口42eと連続状となっている。
【0034】
また、後側の脚体42の前壁42aの上部側は、後側の挿通部32のホース挿通穴33の上端側に前後方向においてオーバーラップしており、切欠開口69の上縁側の左右方向内端側は左右方向内方に行くに従って上方に移行する傾斜状とされている。
また、後側の脚体42内面の左右方向内端側には、上壁42cから後壁42bを経て下壁42dに至るC字形の補強部材70が固着されており、後側の脚体42の左右方向内端側の強度確保が図られている。
左右の各後側の脚体42の上壁42cには、左右方向に長い長孔からなる係合溝71が形成されている。
【0035】
一方、センターフレーム18の基板20には、前記係合溝71に係合してクローラ走行体19の左右方向の移動を規制する規制部材72が、各係合溝71に対応して一対設けられている。
この規制部材72は、上部に工具係合用の六角柱部72aが設けられ、下部に係合ピン部72bが設けられ、中途部に雄ねじ部72cが形成されている。
センターフレーム18の基板20上面には、基板20に形成されたピン挿通孔73を介して前記係合溝71に連通するネジ孔74を備えた保持部材75が、各係合溝71に対応して設けられ、この保持部材75のネジ孔74に、規制部材72が上方から挿通されると共に該ネジ孔74に雄ねじ部72cが螺合されることで保持部材75に規制部材72が固定されている。
【0036】
前記保持部材75はセンターフレーム18の基板20にボルトによって固定されている。
各規制部材72の係合ピン部72bは、ピン挿通孔73及び係合溝71に挿通状とされている。
したがって、クローラ走行体19を左右方向外方に移動させて規制部材72の係合ピン部72bが係合溝71の左右方向内端に接当することにより、クローラ走行体19の左右方向外方側への移動が規制されて該左右のクローラ走行体19が拡張状態とされ、クローラ走行体19を左右方向内方に移動させて規制部材72の係合ピン部72bが係合溝71の左右方向外端に接当することにより、クローラ走行体19の左右方向内方側への移動が規制されて左右のクローラ走行体19が収縮状態とされる。
【0037】
前記構成のクローラ式走行装置2にあっては、走行モータMとスイベルジョイント30との間に配管される油圧ホースHの一端側は、走行モータMのバルブ部68にエルボ継ぎ手を介して接続され、該走行モータM側から延出された油圧ホースHは、走行モータMのバルブ部68から左右方向外方に行くに従って前方に移行する傾斜方向へと延出されると共にモータホルダ46の前面側の開口65及び脚体ホルダ45の後面側の開口59を介してホース挿通用空間56に挿入され、該ホース挿通用空間56から後側の脚体42内に挿入されている。
【0038】
この脚体42内へと配管された油圧ホースHの他端側は、後側の脚体42の切欠開口69又は該脚体42の左右方向内端側の開口42eからホース挿通穴33を通してセンターフレーム18の中央側(センターフレーム18の後側の挿通部32の前側)へと配管され、該油圧ホースHの他端側がスイベルジョイント30に接続されている。
本実施形態において、前記油圧ホースHを配管する場合、例えば、以下の要領で行われる。
先ず、例えば、図1や図7に示すような、トラックフレーム36の左右間隔を十分に広げた状態で、走行モータMに接続される油圧ホースHの一端側をホース挿通穴33から挿通部32内に挿入すると共に後側の脚体42の左右方向内端側の開口42eを介して該脚体42内に挿入していく。
【0039】
次に、トラックフレーム36の左右間隔を縮めながら油圧ホースHの一端側を左右方向外方へもってくるように、該油圧ホースHを押し込む。
これにより、該油圧ホースHの一端側は、後側の脚体42の左右方向外端側の開口42fから送出されて脚体ホルダ45のホース挿通用空間56に挿入され、該ホース挿通用空間56に挿入された油圧ホースHの一端側はガイド面60に当たって該ガイド面60によって案内されて後方側(走行モータM側)へと向きが変更される。
このように油圧ホースHを後側の脚体42内からホース挿通用空間56を通して走行モータM側へと配管する場合に、該油圧ホースHはガイド面60によって後方側に湾曲状に折り曲げられて走行モータM側へと案内され、場所が狭く且つ屈曲した配管経路での油圧ホースHの配管がガイド面60によって容易に行える。
【0040】
また、その後、油圧ホースHの一端側をホース挿通用空間56からモータホルダ46の内部空間76内に挿入させて走行モータMのバルブ部68へと接続するが、ガイド面60によって案内されて後方側へと向きが変更された油圧ホースHの一端側は、ガイド面60と脚体ホルダ45の内面の左右方向外側の面との接続部分あたりでつっかえる場合がある。また、走行モータMのバルブ部68は、ホース挿通用空間56の真後ろから左右方向内方側に変位した位置にある。
そこで、ホース組付用穴61からホース挿通用空間56内に手を入れて、ガイド面60によって案内された油圧ホースHの一端側をつかんで走行モータMのバルブ部68側へと(後方に行くに従って左右方向内方側に移行する傾斜方向へと)該油圧ホースHの一端側の向きを変更させて、該油圧ホースHの一端側を走行モータMのバルブ部68へと送って該バルブ部68に接続する。
【0041】
このように、脚体ホルダ45の上壁45aにホース組付用穴61を形成しているので、ホース挿通用空間56から走行モータM側へと油圧ホースHを配管する際に、実際に油圧ホースHに触れて行うことができ、場所が狭く且つ屈曲した配管経路での油圧ホースHの配管がさらに容易となる。
なお、油圧ホースHの他端側のスイベルジョイント30への接続は、油圧ホースHの配管前又は配管後のいずれであってもよい。
また、油圧ホースHは、スイベルジョイント30側から走行モータM側へと配管する場合を例示したが、走行モータM側からスイベルジョイント30側へと配管してもよい。
【0042】
また、前記ガイド面60は、油圧ホースHの一端側がガイド面60と脚体ホルダ45の内面との接続部分あたりでつっかえないように傾斜の緩やかな(傾斜のなめらかな)面に形成することも考えられるが、そうすると、仕切り壁58が左右方向内方側に寄ってしまってホース組付用穴61の開口面積が小さくなる。
前述したように、走行モータMとスイベルジョイント30との間に配管される油圧ホースHは、モータホルダ46内、脚体ホルダ45のホース挿通用空間56及び後側の脚体42内に収納状とされているので、該油圧ホースHの破損を防止することができると共に、外観も良好となる。
【0043】
また、図2に示すように、左右クローラ走行体19が収縮した状態では、走行モータMとスイベルジョイント30との間に配管される油圧ホースHは、ホース挿通用空間56及び後側の脚体42内で湾曲状(S字状)に撓んだ状態で収納されていて、該油圧ホースHの他端側は後側の脚体42の切欠開口69を介して該脚体から導出されている。
この収縮状態から左右クローラ走行体19を拡張させると、油圧ホースHは後側の脚体42内で湾曲状態から伸びていって切欠開口69から該脚体42の左右方向内端側の開口に移り、左右クローラ走行体19が拡張した状態では、図1に示すように、油圧ホースHの他端側は後側の脚体42の左右方向内端側の開口を介して該脚体42から導出されるよう構成されており、油圧ホースHが脚体ホルダ45のホース挿通用空間56及び脚体42内に配管されていても、クローラ走行体19の拡縮を妨げることはなく、クローラ走行体19をスムーズに拡縮させることができる。
【0044】
なお、本発明のクローラ式走行装置2を採用する作業機としては、前述したバックホー1に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】左右クローラ走行体を拡張した状態のクローラ式走行装置の平面断面図である。
【図2】左右クローラ走行体を収縮した状態のクローラ式走行装置の平面断面図である。
【図3】バックホーの斜視図である。
【図4】クローラ式走行装置の平面図である。
【図5】クローラ式走行装置の側面図である。
【図6】クローラ式走行装置の側面断面図である。
【図7】クローラ走行体の拡張状態での要部の平面断面図である。
【図8】クローラ走行体の収縮状態での要部の平面断面図である。
【図9】(a)は前側の脚体を挿通部に支持した状態の側面断面図、(b)は後側の脚体を挿通部に支持した状態の側面断面図である。
【図10】後側の脚体を挿通部に支持した状態の背面断面図である。
【図11】(a)はトラックフレーム後部側の平面図、(b)はトラックフレーム後部側の側面図である。
【符号の説明】
【0046】
18 センターフレーム
36 トラックフレーム
40 クローラベルト
42 脚体
56 ホース挿通用空間
60 ガイド面
61 ホース組付用穴
62 スベリ板
64 カバー部材
H 油圧ホース
M 走行モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターフレーム(18)の左右両側に、クローラベルト(40)を循環回走自在に支持するトラックフレーム(36)を配置し、各トラックフレーム(36)に左右方向内方に突出する脚体(42)を設け、この脚体(42)をセンターフレーム(18)に左右方向移動自在に支持し、各トラックフレーム(36)の前後方向の端部側に、クローラベルト(40)を駆動する油圧駆動式の走行モータ(M)を設け、この走行モータ(M)とセンターフレーム(18)の中央側との間に油圧ホース(H)を配管したクローラ式走行装置において、
前記脚体(42)を左右方向の軸芯を有する筒状に形成すると共に、該脚体(42)の左右方向外側方のトラックフレーム(36)内に、該脚体(42)内に連通するホース挿通用空間(56)を形成し、前記油圧ホース(H)を、脚体(42)内及びホース挿通用空間(56)を通して配管し、トラックフレーム(36)内に、前記油圧ホース(H)を脚体(42)からホース挿通用空間(56)を通して走行モータ(M)側へと案内するガイド面(60)を設けたことを特徴とするクローラ式走行装置。
【請求項2】
前記ガイド面(60)は左右方向外方へ行くに従って走行モータ(M)側へと移行する傾斜状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のクローラ式走行装置。
【請求項3】
前記ホース挿通用空間(56)の上方のトラックフレーム(36)上壁に、前記油圧ホース(H)の配管の容易化を図るためのホース組付用穴(61)を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のクローラ式走行装置。
【請求項4】
トラックフレーム(36)の上部側に、クローラベルト(40)を支えて回走方向に案内するスベリ板(62)を着脱自在に設け、このスベリ板(62)に前記ホース組付用穴(61)を塞ぐカバー部材(64)を設けたことを特徴とする請求項3に記載のクローラ式走行装置。
【請求項1】
センターフレーム(18)の左右両側に、クローラベルト(40)を循環回走自在に支持するトラックフレーム(36)を配置し、各トラックフレーム(36)に左右方向内方に突出する脚体(42)を設け、この脚体(42)をセンターフレーム(18)に左右方向移動自在に支持し、各トラックフレーム(36)の前後方向の端部側に、クローラベルト(40)を駆動する油圧駆動式の走行モータ(M)を設け、この走行モータ(M)とセンターフレーム(18)の中央側との間に油圧ホース(H)を配管したクローラ式走行装置において、
前記脚体(42)を左右方向の軸芯を有する筒状に形成すると共に、該脚体(42)の左右方向外側方のトラックフレーム(36)内に、該脚体(42)内に連通するホース挿通用空間(56)を形成し、前記油圧ホース(H)を、脚体(42)内及びホース挿通用空間(56)を通して配管し、トラックフレーム(36)内に、前記油圧ホース(H)を脚体(42)からホース挿通用空間(56)を通して走行モータ(M)側へと案内するガイド面(60)を設けたことを特徴とするクローラ式走行装置。
【請求項2】
前記ガイド面(60)は左右方向外方へ行くに従って走行モータ(M)側へと移行する傾斜状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のクローラ式走行装置。
【請求項3】
前記ホース挿通用空間(56)の上方のトラックフレーム(36)上壁に、前記油圧ホース(H)の配管の容易化を図るためのホース組付用穴(61)を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のクローラ式走行装置。
【請求項4】
トラックフレーム(36)の上部側に、クローラベルト(40)を支えて回走方向に案内するスベリ板(62)を着脱自在に設け、このスベリ板(62)に前記ホース組付用穴(61)を塞ぐカバー部材(64)を設けたことを特徴とする請求項3に記載のクローラ式走行装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−191555(P2009−191555A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34889(P2008−34889)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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