説明

グルタミン酸受容体を増強する化合物および医学におけるその使用

式(I):


[式中:Arは、フェニル、ピリジル、フラニルまたはチエニルから選択され、各々、1個または複数の基Yで所望により置換されていてもよく;各Y基は、独立して、ハロ、C1−4アルキル、ハロC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、シアノ、C(O)C1−4アルキル、NHSO1−4アルキル、NMeSO1−4アルキル、NHCOC1−4アルキル、NMeCOC1−4アルキル、SOC1−4アルキル、SO1−4アルキル、およびCO1−4アルキルからなる群より選択されるか、または2個のY基は一緒になって、環状基−O(CH)O−を形成する]
で示される化合物、その塩および溶媒和物が提供される。調製方法、および統合失調症または認識障害などのグルタミン酸受容体機能の低下または不均衡によって媒介される疾患または病態の治療におけるその使用もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルタミン酸受容体を増強する新規化合物に関する。本発明はまた、グルタミン酸受容体の増強によって媒介される疾患および病態の治療における化合物の使用、その誘導体を含有する組成物、およびそれらの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の中枢神経系(CNS)における迅速な興奮性神経伝達の大部分を介在するグルタミン酸受容体は、興奮性アミノ酸、L−グルタミン酸により活性化される(報文としては、Watkins JC,Krogsgaard−Larsen P,Honore T(1990)Trends Pharmacol Sci 11:25−33を参照のこと)。
【0003】
グルタミン酸受容体は2つの異なるファミリーに分類されうる。G−タンパク質または二次メッセンジャーに結合した「代謝調節型」グルタミン酸受容体ファミリーは配列相同性および細胞内伝達機序に基づいてさらに3群に分類されうる(I群、mGlu1およびmGlu5;II群、mGlu2およびmGlu3;III群、mGlu4、mGlu6、mGlu7、mGlu8)(報文としては、Conn PJ and Pinn JP(1997)Ann Rev Pharmacol Toxicol 37:205−237を参照のこと)。リガンド依存性陽イオンチャネルに直接結合する「イオンチャネル型」グルタミン酸受容体ファミリーは、選択的アゴニスト、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)、α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチルイソオキサゾール−4−プロピオン酸(AMPA)およびカイニン酸(KA)による脱分極活性化に基づいて、少なくとも3つのサブタイプにさらに分類されうる(報文としては、Dingledine R,Borges K,Bowie,Traynelis S(1999)51:7−61を参照のこと)。
【0004】
天然のAMPA受容体(AMPAR)は、4つの異なるタンパク質サブユニット(GluR1−4)の組み合わせからなるヘテロ4量体として存在する(報文としては、Bettler B and Muller C(1995)34:123−139を参照のこと)。受容体サブユニットの多様性は、各サブユニットが、4回膜貫通型ドメインM4の直前にある細胞外領域中の38個のアミノ酸配列の選択的スプライシングを受ける可能性があるために、さらに増大する。かかる編集は、動力学的および薬理学的特性が異なる、いわゆる「フリップ(flip)」および「フロップ(flop)」受容体アイソフォームをもたらす(Sommer B,Keinanen K,Verdoon TA,Wisden W,Burnashev N,Herb A,Kohler M,Takagi T,Sakmann B,Seeburg PH(1990)Science 249:1580−1585)。
【0005】
さらに、GluR2 mRNAの転写後校正は、M2内の中性グルタミンを正に帯電したアルギニンへ変化させる。正常なヒトにおいて、>99%のGluR2はこのように校正される。かかる校正されたGluR2サブユニットを含むAMPARは、低いカルシウム透過性を示す(Burnachev N,Monyer H,Seeburg PH,Sakmann B(1992)Neuron 8:189−198)。しかしながら、高いカルシウム透過性を有するAMPARの数が特定の疾患に付随する症状において高められるということが示唆されている(Weiss JH,and Sensi SL(2000)Trends in Neurosci 23:365−371)。
【0006】
AMPAR脱分極は、NMDA受容体の電位依存性Mg2+ブロックを除去し、順次、長期増強(「LTP」)の誘導において不可欠な段階であるNMDA受容体活性化をもたらす(Bliss TVP,Collingridge GL(1993)Nature 361:31−9)。LTPは、例えば、学習中に生じるような反復的な刺激または活性の後の、シナプス強度増大の生理学的尺度である。
【0007】
グルタミン酸受容体機能が低下している状態における、アゴニストによるグルタミン酸受容体の直接的な活性化が、興奮毒性およびさらなるニューロン損傷の危険性を増大すると報告されている。AMPARポジティブアロステリックモジュレーターは受容体を直接活性化しない。しかし、リガンド(L−グルタミン酸またはAMPA)が存在する場合、AMPARモジュレーターは受容体活性を増大する。したがって、グルタミン酸が放出されて、シナプス後受容体部位に結合可能な場合に、AMPA受容体モジュレーターはシナプス機能を高める。
【0008】
AMPARポジティブアロステリック調節因子として作用する化合物は、受容体に対するリガンド親和性を増大し(Arai A,Guidotti A,Costa E,Lynch G(1996)Neuroreport.7:2211−5.);受容体脱感作を軽減して、受容体脱活性化を軽減し(Arai AC,Kessler M,Rogers G,Lynch G(2000)58:802−813);インビトロ(Arai A,Guidotti A,Costa E,Lynch G(1996)7:2211−5.)およびインビボ(Staubli U,Perez Y,Xu F,Rogers G,Ingvar M,Stone−Elander S,Lynch G(1994)Proc Natl Acad Sci 91:11158−11162)両方におけるLTPの誘導を容易にすることが示されている。かかる化合物はまた、齧歯類(Zivkovic I,Thompson DM,Bertolino M,Uzunov D,DiBella M,Costa E,Guidotti A(1995)JPET 272:300−309,Lebrun C,Pilliere E,Lestage P(2000)Eu J Pharmacol 401:205−212)、類人猿(Thompson DM,Guidotti A,DiBella M,Costa E(1995)Proc Natl Acad Sci 92:7667−7671)およびヒト(Ingvar M,Ambros−Ingerson J,Davis M,Granger R,Kessler M,Rogers GA,Schehr RS,Lynch G(1997)Exp Neurol 146:553−559)において、様々な認知タスクの学習および行動を高める。
【非特許文献1】Watkins JC,Krogsgaard−Larsen P,Honore T(1990)Trends Pharmacol Sci 11:25−33
【非特許文献2】Conn PJ and Pinn JP(1997)Ann Rev Pharmacol Toxicol 37:205−237
【非特許文献3】Dingledine R,Borges K,Bowie,Traynelis S(1999)51:7−61
【非特許文献4】Bettler B and Muller C(1995)34:123−139
【非特許文献5】Sommer B,Keinanen K,Verdoon TA,Wisden W,Burnashev N,Herb A,Kohler M,Takagi T,Sakmann B,Seeburg PH(1990)Science 249:1580−1585
【非特許文献6】Burnachev N,Monyer H,Seeburg PH,Sakmann B(1992)Neuron 8:189−198
【非特許文献7】Weiss JH,and Sensi SL(2000)Trends in Neurosci 23:365−371
【非特許文献8】Bliss TVP,Collingridge GL(1993)Nature 361:31−9
【非特許文献9】Arai A,Guidotti A,Costa E,Lynch G(1996)Neuroreport.7:2211−5
【非特許文献10】Arai AC,Kessler M,Rogers G,Lynch G(2000)58:802−813
【非特許文献11】Arai A,Guidotti A,Costa E,Lynch G(1996)7:2211−5
【非特許文献12】Staubli U,Perez Y,Xu F,Rogers G,Ingvar M,Stone−Elander S,Lynch G(1994)Proc Natl Acad Sci 91:11158−11162
【非特許文献13】Zivkovic I,Thompson DM,Bertolino M,Uzunov D,DiBella M,Costa E,Guidotti A(1995)JPET 272:300−309
【非特許文献14】Lebrun C,Pilliere E,Lestage P(2000)Eu J Pharmacol 401:205−212
【非特許文献15】Thompson DM,Guidotti A,DiBella M,Costa E(1995)Proc Natl Acad Sci 92:7667−7671)
【非特許文献16】Ingvar M,Ambros−Ingerson J,Davis M,Granger R,Kessler M,Rogers GA,Schehr RS,Lynch G(1997)Exp Neurol 146:553−559
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
AMPARポジティブアロステリック調節因子として作用する化合物は、例えば、国際特許出願WO2006/015828において知られている。本発明者らは、AMPA受容体をも増強する一群の新規化合物を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
最初の態様によれば、本発明は、式(I):
【化1】

[式中:
Arは、フェニル、ピリジル、フラニルまたはチエニルから選択され、各々、1個または複数の基Yで所望により置換されていてもよく;
各Y基は、独立して、ハロ、C1−4アルキル、ハロC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、シアノ、C(O)C1−4アルキル、NHSO1−4アルキル、NMeSO1−4アルキル、NHCOC1−4アルキル、NMeCOC1−4アルキル、SOC1−4アルキル、SO1−4アルキル、およびCO1−4アルキルからなる群より選択されるか、または2個のY基が一緒になって、環状基−O(CH)O−を形成する]
で示される化合物または、その塩、もしくは溶媒和物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書で用いられるように、「ハロゲン」およびその略語「ハロ」なる語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素をいう。
【0012】
1−4アルキルは、直鎖または分岐アルキル基であってもよい。例えば、C1−4アルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチルまたはt−ブチルから選択されてもよい。例えば、C1−4アルキルは、メチル、または「Me」である。
【0013】
本明細書に用いられるように、「C1−4アルコキシ」なる語は、基−O−C1−4アルキルをいい、ここで、C−Cアルキルは上記と同義である。
【0014】
本明細書に用いられるように、「ハロC1−4アルキル」なる語は、いくつかのフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子で置換される上記のC1−4アルキル基をいう。ハロC1−4アルキル基は、例えば、1、2または3個のハロゲン原子を含有していてもよい。例えば、ハロC1−4アルキル基は、ハロゲン原子で置換される全水素原子を有していてもよい。ハロC1−4アルキル基の例として、フルオロメチル、ジフルオロメチルおよびトリフルオロメチルが挙げられる。
【0015】
一の実地態様において、式(I)で示される化合物の塩または溶媒和物は、医薬上許容される塩または溶媒和物である。一の実施態様において、本発明は、式(I)で示される化合物、またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0016】
一の実施態様において、Arは、1個または複数の基Yで置換されるフェニルまたはピリジル;あるいは1個または複数の基Yで所望により置換されていてもよいチエニルから選択される。
【0017】
一の実施態様において、Arは、フェニルまたはピリジルから選択される。さらなる実施態様において、Arはピリジルである。
【0018】
一の実施態様において、Arがピリジル基である場合、ピリジル基は、残りの分子に対する結合部に対して環窒素を有し、残りの分子に対する結合部に対してメタまたはパラ位に位置する。さらなる実施態様において、ピリジル窒素は、残りの分子に対する結合部に対してメタ位である。
【0019】
一の実施態様において、0、1、2または3個のY基が存在する。
【0020】
一の実施態様において、各Yは、独立して、ハロ、メチル、シアノおよびC(O)CHからなる群より選択される。さらなる実施態様において、各Yは、独立して、フルオロ、メチル、シアノおよびC(O)CHからなる群より選択される。一の実施態様において、分子は、1個のY基を有する。一の実施態様において、1個のY基は、フッ素またはメチルから選択される。一の実施態様において、1個のY基はフッ素である。
【0021】
各置換基Yは、残りの分子に対するAr基の結合部に対してオルト、メタまたはパラ位に位置してもよい。一の実施態様において、Y基は、分子の主要構造に対するAr基の結合部についてはパラまたはメタ位に位置する。さらなる実施態様において、Y基は、分子の主要構造に対するAr基の結合部についてはメタ位に位置する。
【0022】
テトラヒドロフラン環の存在のために、式(I)で示される化合物は、少なくとも2個のキラル中心、すなわち、テトラヒドロフラン環上のスルホンアミドおよびフェニル環の結合部を保有する。テトラヒドロフラン化合物は、4個の立体異性体−一対のジアステレオマー(シスおよびトランス)で存在してもよく、各々、テトラヒドロフラン中のキラル中心については一対のエナンチオマーを含む。
【0023】
一の実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ia):
【化2】

で示されるようにシス配置を有する。
【0024】
最も生物学的に活性な分子と同様に、生物活性の濃度が、所定の分子のエナンチオマー間で変化しうることは明らかであろう。本発明の範囲には、両エナンチオマー、およびラセミ混合物に限定するものではないが、それを含む、その全ての混合物が含まれ、本明細書に記載の製法を基準にして適当な生物活性を証明することを意図とする。
【0025】
一の実施態様において、キラル型の本発明の化合物は、少なくとも0%eeを有する。別の実施態様において、キラル型の本発明の化合物は、少なくとも90%ee、例えば、95%eeを有する。別の実施態様において、異性体は、少なくとも98%ee、例えば、少なくとも99%eeに相当する。
【0026】
本発明が、前述の置換基の組み合わせを有する化合物を含むことを意図とすることは明らかであろう。
【0027】
必要に応じて、本発明の一部について上記される実施態様を、本発明の別の部分の実施態様と組み合わせてもよいことは分かるであろう。
【0028】
式(I)の化合物の例として、
N−{シス−2−[4−(6−フルオロ−3−ピリジニル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド
N−{シス−2−[4−(6−メチル−3−ピリジニル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド
N−{シス−2−[4−(5−フルオロ−2−ピリジニル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド
N−{シス−2−[4−(5−フルオロ−3−ピリジニル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド
N−{シス−2−[4−(5−メチル−3−ピリジニル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド
N−[シス−2−(4’−フルオロ−4−ビフェニルイル)テトラヒドロ−3−フラニル]−2−プロパンスルホンアミド
N−[シス−2−(4’−シアノ−4−ビフェニルイル)テトラヒドロ−3−フラニル]−2−プロパンスルホンアミド
N−[シス−2−(3’−アセチル−4−ビフェニルイル)テトラヒドロ−3−フラニル]−2−プロパンスルホンアミド
N−{シス−2−[4−(2−チエニル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド
ならびにその塩および溶媒和物が挙げられる。
【0029】
不明確とならないようにするために、特に明記しない限り、置換なる語は、1個または複数の所定の置換基で置換されることを意味する。置換基が多数の別の置換基から選択されうる場合において、選択された置換基は、同一または異なっていてもよい。不明確とならないようにするために、独立してなる語は、1個以上の置換基が多数の可能な置換基から選択される場合に、それらの置換基が同一または異なっていてもよいことを意味する。
【0030】
本明細書に用いられるように、「塩」なる語は、無機または有機酸または塩基から調製される本発明に記載の化合物のいくつかの塩、第四級アンモニウム塩および内部で形成された塩をいう。医薬上許容される塩は、親化合物と比べてその水溶解度がより高いために、医学的用途に特に適当である。かかる塩は、明らかに医薬上許容されるアニオンまたはカチオンを有する必要がある。適当には、本発明の化合物の医薬上許容される塩には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの無機酸、および酒石酸、酢酸トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、マレイン酸、コハク酸、(1S)−(−)−10−カンファー硫酸、(1S)−(+)−10−カンファー硫酸、イソチオン酸、粘液酸、ゲンチシン酸、イソニコチン酸、糖酸、グルクロン酸、フロ酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン(embonic)酸(パモ(pamoic)酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ステアリン酸、スルフィン酸、アルギン酸、ガラクツロン酸、およびアリールスルホン酸、例えば、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−1,3−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp−トルエンスルホン酸などの有機酸と形成される酸付加塩;アルカリ金属およびアルカリ土類金属および有機塩基、例えば、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)、リジンおよびプロカインと形成される塩基付加塩;および内部形成塩を包含する。医薬上許容されないアニオンまたはカチオンを有する塩は、医薬上許容される塩の調製に有用な中間体として、および/または非治療的、例えば、インビトロ状況で用いるために本発明の範囲内にある。塩は、いくつかの適当な化学量論を有していてもよい。例えば、塩は、1:1または2;1化学量論を有していてもよい。非整数化学量論比率はまた起こり得る。
【0031】
さらに、構造(I)の化合物のいくつかの結晶形は、多型として存在してもよく、本発明に包含される。いくつかの本発明の化合物を、水性および有機溶媒などの溶媒から結晶化または再結晶してもよい。かかる場合において、溶媒和物を形成してもよい。本発明は、化学量論的溶媒和物ならびに不定量の溶媒を含有する化合物をその範囲内に含み、ここで、非化学量論的溶媒を、凍結乾燥などの過程によって生産してもよい。一の実施態様において、本発明の化合物は、化学量論的および非化学量論的水和物の形態で得られる。
【0032】
最終脱保護段階前に製造されうる、式(I)の化合物の特定の保護誘導体は、それ自体薬理活性を有していなくてもよいが、特定の場合において、経口または非経口投与され、その後、体内で代謝され、薬理学的に活性な本発明の化合物を形成しうることは当業者であれば分かるであろう。したがって、かかる誘導体は、「プロドラッグ」として記載されうる。さらに、本発明の特定の化合物は、プロドラッグとして投与されてもよい。本発明の特定の化合物についてプロドラッグ形態の例として、Drugs of Today,Volume 19,11月9日,1983,pp499−538およびTopics in Chemistry,Chapter 31,pp306−316およびH.Bundgaard,Elsevierによる「Design of Prodrugs」、1985、Chapter 1に記載される(文献を出典明示により本明細書の一部とする開示)。さらに、「プロ部分(pro−moieties)」として当業者に既知な特定の部分が、例えば、H.Bundgaard in 「Design of Prodrugs」(文献を出典明示により本明細書の一部とする開示)に記載されるように、かかる官能基が本発明の化合物内に存在する場合、適当な官能基上に置かれていてもよいことは当業者には明らかであろう。本発明の特定の化合物についてのプロドラッグの例として、アミド、カルバメートおよびホスファミドが挙げられる。したがって、本発明はまた、式(I)で示される化合物またはその塩もしくは溶媒和物のプロドラッグを提供する。
【0033】
以下、本発明のいくつかの態様において定義される式(I)で示される化合物、その塩およびその溶媒和物(化学的方法における中間体化合物を除く)は、「本発明の化合物」として称される。
【0034】
本発明の化合物は、医薬組成物の使用について意図としているので、それらは、各々、実質上純粋な形態、例えば、少なくとも85%、または少なくとも98%純粋または少なくとも99%純粋(%は重量/重量に基づく)で提供されてもよいことは容易に理解されるであろう。化合物の不純な調製物は、医薬組成物に用いられるより純粋な形態を調製するために用いられてもよい。
【0035】
一般式(I)の化合物は、反応スキーム1基シアノ塩化イソプロピルスルホニルとの反応によって式(II)の化合物から調製されうる。典型的な反応条件は、冷却しながら塩化イソプロピルスルホニルを(II)および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス-7-エンの混合物に加えることを含む。
【化3】

【0036】
別法として、式(I)の化合物は、式(III)の化合物(式中:Xはハロゲン(例えば、塩素、臭素またはヨウ素)などの脱離基である)を反応スキーム2記載の式(IV)のボロン酸誘導体とカップリングさせることにより調製されうる。典型的なカップリング条件は、約140℃で乾テトラヒドロフラン中にて式(III)の化合物、式(IV)の化合物、塩基(またはフッ化カリウム、ここで、脱離基は塩素である)、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニルおよび酢酸パラジウム(II)を加熱することを含む。スキーム2の方法は、Arがピリジルである本発明の化合物に特に適当である。
【化4】

【0037】
別法として、式(I)の化合物は、スキーム3に示されるように、式(V)のボロン酸化合物を化合物Ar−X(VI)(式中:Xはハロゲン(例えば、臭素またはヨウ素)などの脱離基である)で処理することによって調製されうる。例えば、ボロン酸塩は、スキーム3に示されるように、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル化合物であってもよい。典型的な反応条件は、例えば、90℃で適当な溶媒(例えば、乾1,4−ジオキサン)中にてボロン酸化合物(V)を式(VI)の化合物、塩基(またはフッ化カリウム、ここで、脱離基は塩素である)および適当な触媒(例えば、ポリマー担持であってもよい、テトラキスパラジウムの酢酸パラジウム(II)などのパラジウム触媒)と加熱することを含む。適当な塩基には、炭酸ナトリウム溶液が含まれる。
【0038】
ボロン酸化合物(V)は、適当なジボロン化合物と式(III)の化合物の反応によって調製されうる。典型的なカップリング条件は、
適当な塩基(例えば、酢酸カリウム)の存在下において、適当な溶媒(例えば、ジオキサン)中でジボロン化合物(例えば、ビス(ピナコラト)ジボロン)と式(III)の化合物を(例えば、約90℃で)加熱し、式(V)の化合物を生産することを含む。
【0039】
スキーム3の方法は、Arがフェニル、ピリジル、チエニルまたはフラニルである本発明の化合物に特に適当である。
【化5】

【0040】
一般式(II)の化合物(スキーム1を参照)は、室温で式(VI)の化合物をインジウム金属と反応させることによって、反応スキーム4にしたがって式(VI)の化合物から調製されうる。
【化6】

【0041】
式(III)の化合物(スキーム2およびスキーム3を参照)は、反応スキーム5にしたがって式(VII)の化合物から調製されうる。典型的な反応条件は、順次、適当な酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸)およびN−ハロスクシンイミド(VIII)(例えば、N−ヨードスクシンイミド)を式(VII)の化合物の適当な溶媒中冷却溶液に加え、次いで、混合物を徐々に室温に加温することである。
【化7】

【0042】
式(VII)の化合物は、反応スキーム6にしたがって式(IX)の化合物から調製されうる。典型的な反応条件は、塩化イソプロピルスルホニルを(IX)および塩基(例えば、ジイソプロピルアミン)の適当な溶媒(例えば、ジクロロメタン)中氷冷混合物に加え、次いで、混合物を徐々に室温に加温することである。
【化8】

【0043】
式(IX)の化合物は、スキーム7記載の、式(X)の化合物から一連の工程で調製されてもよい。
【0044】
式(IX)の化合物を調製する典型的な反応条件は、式(XIV)の化合物の溶媒(ジクロロメタンなど)中懸濁液への適当な塩基(水酸化ナトリウム溶液など)の添加を包含する。
【0045】
式(XIV)の化合物は、式(XIII)の化合物の適当な溶媒(ジクロロメタンなど)中溶液を約−60℃に冷却し、次いで、−60℃に冷却したアンモニアのメタノール中飽和溶液を加え、混合物を室温まで加温し、得られた結晶生成物を濾過によって回収することによって調製されてもよい。(XIV)のシスおよびトランス異性体の混合物は、該工程において得られると期待されている。1種または両方の異性体を、例えば、結晶化またはクロマトグラフィーによって単離することは一般的に可能である。ジクロロメタンおよびメタノールの反応混合物からの結晶化は、シス異性体の単離をもたらすことが見出されている。
【0046】
式(XIII)の化合物は、適当な塩基を式(XII)の化合物の適当な溶媒(ジクロロメタンなど)中冷却溶液に加え、次いで、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を加えることによって調製されてもよい。適当な塩基には、触媒量のジメチルアミノピリジンを有するピリジンが含まれる。
【0047】
式(XII)の化合物は、US 2005159607およびOrganic Preparations and Procedures International(1992),24(1),13−20に記載の方法によって調製されてもよい。
【0048】
別法として、式(XII)の化合物は、式(XI)の化合物およびヨウ化マグネシウムの適当な溶媒(テトラヒドロフランなど)中混合物を加熱することによって調製されてもよい。
【0049】
式(XI)の化合物は、メタ−クロロ過安息香酸の適当な溶媒(ジクロロメタンなど)中溶液を冷却し、次いで、式(X)の化合物の適当な溶媒(ジクロロメタンなど)中溶液を滴下し、次いで、混合物を徐々に室温に加温することによって調製されてもよい。
【0050】
出発物質、式(X)の化合物は、トランス−スチリル酢酸を適当な還元剤(水素化リチウムアルミニウムなど)で還元することによって調製されてもよい。
【0051】
典型的な反応条件は、トランス−スチリル酢酸の適当な溶媒(テトラヒドロフランなど)中溶液を、水素化リチウムアルミニウムの適当な溶媒(テトラヒドロフランなど)中溶液に滴下し、次いで、混合物を徐々に室温に加温することである。
【化9】

【0052】
したがって、本発明はまた、式(I)の化合物の調製方法であって、
a)式(II):
【化10】

[式中:Arは式(I)と同義である]
で示される化合物を塩化イソプロピルスルホニルと反応させるか;
または
b)式(III)の化合物(式中:Xはハロゲン(例えば、塩素、臭素またはヨウ素)などの脱離基である)を式(IV)のボロン酸誘導体とカップリングさせるか;
【化11】

または
c)式(V)のボロン酸化合物を化合物Ar−X(VI)(式中:Xはハロゲン(例えば、臭素またはヨウ素)などの脱離基である)とカップリングさせ、
【化12】

その後、所望により、
・いずれかの保護基(複数でも可)を除去してもよく;および/または
・塩または溶媒和物を形成してもよく;および/または
・式(I)の一の化合物を式(I)の別の化合物に変換してもよいことを含む方法を提供する。
【0053】
式(I)の化合物の調製についてのさらなる詳細は、以下の実施例項目で見出される。
【0054】
本発明の化合物は、単独で調製されてもよく、または少なくとも2個、例えば、5〜1,000個の化合物、例えば、10〜100個の化合物を含む化合物ライブラリーとして調製されうる。本発明の化合物のライブラリーは、コンビナトリアル「スプリットおよびミックス」アプローチによって、またはマルチプルパラレル合成によって、液相または固相化学のいずれかを用いて、当業者に既知の手法によって調製されうる。したがって、さらなる態様によれば、少なくとも2個の本発明の化合物を含む化合物ライブラリーが提供される。
【0055】
本発明の化合物はグルタミン酸受容体を増強し、したがって、グルタミン酸受容体の増強によって媒介される疾患および病態を治療するのに有用であると考えられる。
【0056】
本発明が、以下のさらなる態様を含むことは明らかであろう。最初の態様に関して記載される実施態様は、これらのさらなる態様のそれぞれに等しく適用する:
i)本発明の化合物および少なくとも1種の担体、希釈剤または賦形剤;
ii)哺乳動物におけるグルタミン酸受容体機能の低下または不均衡によって媒介される疾患または病態を治療するための医薬の製造における本発明の化合物の使用;
iii)哺乳動物におけるグルタミン酸受容体機能の低下または不均衡によって媒介される疾患または病態を治療するのに用いるための本発明の化合物;
iv)医薬として用いるための本発明の化合物;
v)哺乳動物におけるグルタミン酸受容体機能の低下または不均衡によって媒介される疾患または病態の治療方法であって、有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法;
vi)本発明の化合物と抗精神病薬の組み合わせ生産物;
vii)上記vi)に定義される組み合わせ生産物および少なくとも1種の担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物;
viii)哺乳動物におけるグルタミン酸受容体機能の低下または不均衡によって媒介される疾患または病態を治療するための医薬の製造における上記vi)に定義される組み合わせ生産物の使用;
ix)哺乳動物におけるグルタミン酸受容体機能の低下または不均衡によって媒介される疾患または病態を治療するのに用いるための上記vi)に定義される組み合わせ生産物;
x)医薬として用いるための上記vi)に定義される組み合わせ生産物;
xi)哺乳動物におけるグルタミン酸受容体機能の低下または不均衡によって媒介される疾患または病態の治療方法であって、有効量の上記vi)に定義される組み合わせ生産物を投与することを含む方法。
【0057】
態様ii)、iii)、v)、viii)、ix)およびxi)の場合、関連する疾患または病態は:精神病および精神障害(統合失調症、統合失調症性感情障害、統合失調症型疾患、短期反応精神病、小児発症統合失調症、「統合失調症スペクトル」障害、例えば、統合失調症性人格障害、急性精神病、アルコール性精神病、薬物誘導性精神病、自閉症、せん妄、躁病(急性躁を包含する)、躁鬱性精神病、幻覚、内因性精神病、器質性精神症候群、偏執および妄想障害、産褥期精神病、およびアルツハイマー病などの神経変性疾患に付随する精神病を包含する);認識障害(例えば、注意、順応、記憶を包含する認識機能の障害(すなわち、記憶障害、健忘症、健忘障害および加齢による記憶障害)および言語機能の障害の治療、ならびに卒中、アルツハイマー病、AIDSに関連する認知症または他の認知症ならびに、せん妄または鬱のような認識力低下を引き起こし得る他の急性または亜急性状態(偽認知症状態)、外傷、加齢、卒中、神経変性、薬物誘導性状態、神経毒性剤の結果としての認識障害を包含する)、軽度認識障害、加齢による認識障害、自閉症に関連する認識障害、ダウン症候群、精神病に関連する認識低下、電気ショック療法後の認識障害;不安障害(全般性不安障害、社会不安障害、興奮、緊張、精神病患者における社会的または感情的離脱、パニック障害、および強迫障害を包含する);神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、運動ニューロン疾患および他の運動障害、例えば、パーキンソン病(意図的動作におけるゆっくりと増加する能力障害、震え、動作緩慢、運動過剰症(中程度および重篤)、無運動、硬直、バランスおよび調整の障害、および姿勢の障害を包含する運動力欠損および/または運動不能の軽減を包含する)、パーキンソン病における認知症、ハンチントン病における認知症、神経遮断薬誘導性パーキンソンニズムおよび遅発性ジスキネジー、卒中、心臓停止、肺バイパス、外傷性脳損傷、脊髄損傷などの後の神経変性、および脱髄疾患、例えば、多発性硬化症および筋萎縮性側索硬化症);鬱病(該用語は、双極性(躁病)鬱病(I型およびII型を包含する)、単極性鬱病、または精神病的特徴、カタトニー特徴、メランコリー特徴、不定型特徴(例えば、無気力、過食/肥満、睡眠過剰)または産後発症を伴う、もしくは伴わない単発性もしくは再発性大鬱エピソード、季節性情動障害および気分変調、鬱病関連不安症、精神病的鬱、および限定するものではないが、心筋梗塞、糖尿病、流産または堕胎を包含する一般的な医学的状態からもたらされる抑鬱障害を包含する);外傷後ストレス症候群;注意欠陥障害;注意欠陥多動障害;薬物誘導性(フェンシクリジン、ケタミンおよび他の解離性麻酔薬、アンフェタミンおよび他の精神刺激薬およびコカイン)障害;ハンチントン舞踏病;遅発性ジスキネジー;ジストニア;ミオクローヌス;痙性;肥満;卒中;性機能不全;睡眠障害;ならびにある種のてんかんである。
【0058】
本発明中で、本明細書中で使用される適応症を記載する用語は、アメリカ精神病医学会(the American Psychiatric Association)によって出版された精神障害の診断および統計学的マニュアル(the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第4版(DSM−IV)および/または国際疾患分類(the International Classification of Diseases)第10版(ICD−10)において分類される。本明細書中に挙げられた障害の種々のサブタイプは、本発明の一部として意図される。下記に列挙した疾患の後ろの括弧内の数字は、DSM−IVにおける分類コードを示す。
【0059】
本発明中では、「精神障害」なる語は、
サブタイプ妄想型(295.30)、解体型(295.10)、緊張型(295.20)、鑑別不能(undifferentiated)型(295.90)および残遺型(295.60)を包含する統合失調症;統合失調症様障害(295.40);サブタイプ双極型および抑鬱型を包含する統合失調性感情障害(295.70);サブタイプ恋愛(Erotomanic)型、誇大(Gradiose)型、嫉妬(Jealous)型、迫害(Persecutory)型、身体(Somatic)型、混合(Mixed)型および不特定(Unspecified)型を包含する妄想障害(297.1);簡単な精神障害(298.8);共通の精神障害(297.3);妄想を伴うサブタイプおよび幻覚を伴うサブタイプを包含する一般的健康状態に起因する精神障害;妄想を伴う(293.81)および幻覚を伴う(293.82)サブタイプを包含する物質誘導性精神障害;および不特定の精神障害(298.9)を包含する。
【0060】
本発明の化合物はまた、下記の障害の治療において有用でありうる:
【0061】
大鬱病エピソード、躁病エピソード、混合エピソードおよび軽躁エピソードを包含する抑鬱および気分障害;大鬱病性障害、気分変調性障害(300.4)、不特定の抑鬱性障害(311)を包含する抑鬱性障害;I型双極性障害、II型双極性障害(軽躁エピソードを伴う再発性大鬱病エピソード)(296.89)、気分循環性障害(301.13)および不特定の双極性障害(296.80)を包含する双極性障害;鬱病性特徴、大鬱病様エピソード、躁病性特徴および混合性特徴を伴うサブタイプを包含する一般的健康状態に起因する気分障害(293.83)を包含する他の気分障害、物質誘導性気分障害(鬱病性特徴、躁病性特徴および混合性特徴を伴うサブタイプを包含する)および不特定の気分障害(296.90):
【0062】
パニック発作;広場恐怖症を伴わないパニック障害(300.01)および広場恐怖症を伴うパニック障害(300.21)を包含するパニック障害;広場恐怖症;パニック障害の病歴をもたない広場恐怖症(300.22)、動物型、自然環境型、血液注入傷害(Blood−Injection−Injury)型、状況型および他の型のサブタイプを包含する特定恐症(300.29、以前の単一恐怖症(Simple Phobia))、社会恐怖症(社会不安障害、300.23)、強迫障害(300.3)、外傷後ストレス障害(309.81)、急性ストレス障害(308.3)、全般性不安障害(300.02)、一般的健康状態に起因する不安障害(293.84)、物質誘導性不安障害、分離不安障害(309.21)、不安を伴う適応障害(309.24)および不特定の不安障害(300.00)を包含する不安障害:
【0063】
物質依存、物質渇望および物質濫用などの物質使用障害;物質中毒、物質離脱、物質誘導性せん妄、物質誘導性持続性認知症、物質誘導性持続性健忘障害、物質誘導性精神障害、物質誘導性気分障害、物質誘導性不安障害、物質誘導性性的機能不全、物質誘導性睡眠障害および幻覚剤持続性知覚障害(フラッシュバック)などの物質誘導性障害;アルコール依存(303.90)、アルコール濫用(305.00)、アルコール中毒(303.00)、アルコール離脱(291.81)、アルコール中毒せん妄、アルコール離脱せん妄、アルコール誘導性持続性認知症、アルコール誘導性持続性健忘障害、アルコール誘導性精神障害、アルコール誘導性気分障害、アルコール誘導性不安障害、アルコール誘導性性的機能不全、アルコール誘導性睡眠障害および不特定のアルコール関連障害(291.9)などのアルコール関連障害;アンフェタミン依存(304.40)、アンフェタミン濫用(305.70)、アンフェタミン中毒(292.89)、アンフェタミン離脱(292.0)、アンフェタミン中毒せん妄、アンフェタミン誘導性精神障害、アンフェタミン誘導性気分障害、アンフェタミン誘導性不安障害、アンフェタミン誘導性性的機能不全、アンフェタミン誘導性睡眠障害および不特定のアンフェタミン関連障害(292.9)などのアンフェタミン(またはアンフェタミン様)関連障害;カフェイン中毒(305.90)、カフェイン誘導性不安障害、カフェイン誘導性睡眠障害および不特定のカフェイン関連障害(292.9)などのカフェイン関連障害;大麻依存(304.30)、大麻濫用(305.20)、大麻中毒(292.89)、大麻中毒せん妄、大麻誘導性精神障害、大麻誘導性不安障害および不特定の大麻関連障害(292.9)などの大麻関連障害;コカイン依存(304.20)、コカイン濫用(305.60)、コカイン中毒(292.89)、コカイン離脱(292.0)、コカイン中毒せん妄、コカイン誘導性精神障害、コカイン誘導性気分障害、コカイン誘導性不安障害、コカイン誘導性性的機能不全、コカイン誘導性睡眠障害および不特定コカイン関連障害(292.9)などのコカイン関連障害;幻覚剤依存(304.50)、幻覚剤濫用(305.30)、幻覚剤中毒(292.89)、幻覚剤持続性知覚障害(フラッシュバック)(292.89)、幻覚剤中毒せん妄、幻覚剤誘導性精神障害、幻覚剤誘導性気分障害、幻覚剤誘導性不安障害および不特定の幻覚剤関連障害(292.9)などの幻覚剤関連障害;吸入剤依存(304.60)、吸入剤濫用(305.90)、吸入剤中毒(292.89)、吸入剤中毒せん妄、吸入剤誘導性持続性認知症、吸入剤誘導性精神障害、吸入剤誘導性気分障害、吸入剤誘導性不安障害および不特定吸入剤関連障害(292.9)などの吸入剤関連障害;ニコチン依存(305.1)、ニコチン離脱(292.0)および不特定のニコチン関連障害(292.9)などのニコチン関連障害;オピオイド依存(304.00)、オピオイド濫用(305.50)、オピオイド中毒(292.89)、オピオイド離脱(292.0)、オピオイド中毒せん妄、オピオイド誘導性精神障害、オピオイド誘導性気分障害、オピオイド誘導性性的機能不全、オピオイド誘導性睡眠障害および不特定オピオイド関連障害(292.9)などのオピオイド関連障害;フェンシクリジン依存(304.60)、フェンシクリジン濫用(305.90)、フェンシクリジン中毒(292.89)、フェンシクリジン中毒せん妄、フェンシクリジン誘導性精神障害、フェンシクリジン誘導性気分障害、フェンシクリジン誘導性不安障害および不特定のフェンシクリジン関連障害(292.9)などのフェンシクリジン(またはフェンシクリジン様)関連障害;鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤依存(304.10)、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤濫用(305.40)、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤中毒(292.89)、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤離脱(292.0)、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤中毒せん妄、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤離脱せん妄、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤持続性認知症、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤持続性健忘障害、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤誘導性精神障害、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤誘導性気分障害、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤誘導性不安障害、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤誘導性性的機能不全、鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤誘導性睡眠障害および不特定の鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤関連障害(292.9)などの鎮静剤、催眠剤または不安緩解剤関連障害;多物質依存(304.80)などの多物質関連障害;およびアナボリックステロイド、硝酸塩吸入剤および亜酸化窒素などの他の(または未知の)物質関連障害を包含する物質関連障害:
【0064】
睡眠異常(Dyssomnias)などの原発性睡眠障害、例えば、原発性不眠症(307.42)、原発性過眠症(307.44)、ナルコレプシー(347)、呼吸関連睡眠障害(780.59)、概日リズム睡眠障害(307.45)および不特定の睡眠異常(307.47);睡眠時異常行動などの原発性睡眠障害、例えば、悪夢障害(307.47)、睡眠恐怖障害(307.46)、夢中歩行障害(307.46)および不特定の睡眠時異常行動(307.47);別の精神障害に関連した睡眠障害、例えば、別の精神障害に関連した不眠症(307.42)および別の精神障害に関連した過眠症(307.44);一般的健康状態に起因する睡眠障害、特に、神経学的障害、ニューロパシー痛、下肢静止不能症候群、心臓および肺疾患のような疾患に関連する睡眠障害;および不眠型、過眠型、睡眠時異常行動型および混合型のサブタイプを包含する物質誘導性睡眠障害;睡眠時無呼吸および時差症候群を包含する睡眠障害:
【0065】
自閉障害(299.00)、アスペルガー障害(299.80)、レット障害(299.80)、小児期崩壊性障害(299.10)および不特定の広汎性障害(299.80、非定型自閉症を包含する)を包含する自閉症領域の障害:
【0066】
混合型の注意欠陥/多動性障害(314.01)、不注意型の注意欠陥/多動性障害(314.00)、多動−衝動型の注意欠陥/多動性障害(314.01)および不特定の注意欠陥/多動性障害(314.9)サブタイプを包含する注意欠陥/多動性障害;多動障害;破壊的行動障害、例えば、幼児期発症型(321.81)、青年期発症型(312.82)および不特定発症型(312.89)サブタイプを包含する行為障害、反抗的行動障害(313.81)および不特定の破壊的行動障害;およびトゥーレット障害(307.23)などのチック障害:
【0067】
妄想性人格障害(301.0)、統合失調症的人格障害(301.20)、統合失調症型人格障害(301,22)、非社会性人格障害(301.7)、境界性人格障害(301,83)、演技性人格障害(301.50)、自己愛性人格障害(301,81)、回避性人格障害(301.82)、依存性人格障害(301.6)、強迫性人格障害(301.4)および不特定の人格障害(301.9)サブタイプを包含する人格障害:
【0068】
統合失調症、双極性障害、鬱病、認識障害、他の精神障害おおび認識障害に付随する精神病的状態、例えば、アルツハイマー病などの他の疾患における認識障害の治療を包含する認識の強化:および
【0069】
性的欲求障害、例えば、性的欲求低下障害(302.71)および性的嫌悪障害(302.79);性的刺激障害、例えば、女性性的刺激障害(302.72)および男性勃起障害(302.72);オルガニスム障害、例えば、女性オルガニスム障害(302.73)、男性オルガニスム障害(302.74)および早漏(302.75);性的疼痛障害、例えば、性交疼痛症(302.76)および膣痙(306.51);不特定の性的機能不全(302.70);性的倒錯、例えば、露出症(302.4)、フェティシズム(302.81)、摩擦愛好症(302.89)、ペドフィリア(302.2)、性的マゾヒズム(302.83)、性的サディズム(302.84)、服装倒錯性フェティシズム(302.3)、窃視症(302.82)および不特定の性的倒錯(302.9);性的自己同一性障害、例えば、子供の性的自己同一性障害(302.6)および青年または成人における性的自己同一性障害(302.85);および不特定の性的障害(302.9)を包含する性的機能不全。
【0070】
本明細書中に挙げられる障害の種々の型および亜型の全ては、本発明の一部を構成する。
【0071】
本発明中で、「認識障害」なる語は、例えば、注意、順応、学習障害、記憶を包含する認識機能の障害(すなわち、記憶障害、健忘症、健忘障害、一過性全健忘症症候群および加齢による記憶障害)および言語機能の障害;卒中、アルツハイマー病、ハンチントン病、ピック病、エイズ関連認知症または多重梗塞性認知症、アルコール性認知症、甲状腺機能低下関連認知症、ならびに小脳萎縮症および筋萎縮性側索硬化症などの他の変性障害に関連する認知症などの他の認知症状態の結果としての認識障害;せん妄または鬱のような認識力低下を引き起こし得る他の急性または亜急性状態(偽認知症状態)、外傷、頭部外傷、加齢に関連する認識低下、卒中、神経変性、薬物誘導性状態、神経毒性剤の結果としての認識障害、軽度認識障害、加齢による認識障害、自閉症に関連する認識障害、ダウン症候群、精神病に関連する認識低下、および電気ショック療法後の認識障害;およびパーキンソン病、神経遮断薬誘導性パーキンソンニズムおよび遅発性ジスキネジーなどの運動障害の治療を包含する。
【0072】
本発明の化合物は、本発明の化合物を標準的な医薬担体または希釈剤と組み合わせることによって、当該分野で周知の従来の手法にしたがって調製される従来の剤形で投与してもよ。これらの手法は、成分を適宜、混合、造粒および圧縮、または溶解して所望の製剤を得ることを含みうる。
【0073】
本発明の医薬組成物は、いずれかの経路によって投与するために処方されてもよく、ヒトを包含する哺乳動物への経口、局所、非経口投与に適応させた形態におけるものを含む。
【0074】
組成物は、いずれかの経路による投与のために処方されうる。組成物は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、ロゼンジ、クリームまたは液体製剤、例えば、経口または滅菌非経口液剤または懸濁液の形態であってもよい。
【0075】
本発明の局所的処方は、例えば、軟膏、クリームまたはローション、眼用軟膏および点眼剤または点耳剤、含浸した包帯およびエーロゾルとして提供されてもよく、適当な従来の添加剤、例えば、保存料、薬物浸透を助けるための溶剤、ならびに軟膏およびクリーム中における皮膚軟化剤を含有していてもよい。
【0076】
処方はまた、適合性の従来の担体、例えば、クリームまたは軟膏基剤およびローション用のエタノールまたはオレイルアルコールを含有していてもよい。かかる担体は、該処方の約1%〜約98%の割合で配合されうる。より普通には、それらは、処方の約80%までを構成する。
【0077】
経口投与のための錠剤およびカプセルは、単位投与形態であってもよく、従来の賦形剤、例えば、結合剤、例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントゴム、またはポリビニルピロリドン;増量剤、例えば、ラクトース、糖類、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールまたはグリシン;錠剤滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールまたはシリカ;崩壊剤、例えば、ジャガイモデンプン;または許容される湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムを含有していてもよい。錠剤は、通常の製薬習慣においてよく知られた方法にしたがって、被覆してもよい。経口液体製剤は、例えば、水性または油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップまたはエリキシルの形態であってもよく、または使用前に水または他の適当なビヒクルで復元するための乾燥製品として提供されてもよい。かかる液体製剤は、従来の添加剤、例えば、懸濁化剤、例えば、ソルビトール、メチルセルロース、グルコースシロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルまたは水素添加食用油脂、乳化剤、例えば、レシチン、ソルビタンモノオレエート、またはアラビアゴム;非水性ビヒクル(食用油を包含しうる)、例えば、アーモンド油、油性エステル、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、またはエチルアルコール;保存料、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピルあるいはソルビン酸、および必要ならば、従来のフレーバーまたは着色料を含有していてもよい。
【0078】
坐剤は、従来の坐剤基剤、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドを含有する。
【0079】
非経口投与の場合、流体単位剤形は、化合物および滅菌ビヒクル(好ましくは、水)を用いて調製される。化合物は、使用されるビヒクルおよび濃度にもよるが、ビヒクル中に懸濁または溶解することができる。溶液の調製において、化合物を注射用水に溶解し、次いで、フィルター滅菌後、適当なバイアルまたはアンプル中に充填し、密封することができる。
【0080】
局所麻酔剤、保存料および緩衝化剤などの薬剤はまた、ビヒクル中で溶解されうる。安定性を高めるために、組成物をバイアル充填後に凍結させ、真空下で水分除去することができる。次いで、凍結乾燥粉末をバイアルに密封し、使用前に液体を復元するために注射用水の添付バイアルを提供してもよい。非経口懸濁液は、化合物をビヒクルで溶解する代わりに懸濁し、ろ過滅菌できないことを除き、実質的に同様の方法で調製される。化合物は、滅菌ビヒクルで懸濁する前にエチレンオキシドに曝露することによって滅菌されうる。界面活性剤または湿潤剤はまた、化合物の均一な分布を促進するために組成物中に含まれうる。
【0081】
本発明の組成物は、投与方法にもよるが、活性物質の0.1重量%、例えば、10〜60重量%から含有しうる。組成物が投与単位量を含む場合、各単位量は、例えば、活性成分の0.1〜20mgを含有しうる。例えば、かかる単位量は、1〜10mgを含有しうる。(いくつかの場合において、1日当たり50mg〜100mgの投与量が適当であり得るけれども)成人治療に用いられる投与量は、投与経路および頻度によるが、例えば、1日当たり2〜50mg、例えば、1日当たり5〜20mgに及んでもよい75kg個体に基づく、かかる投与量は、1日当たり0.027〜0.667mg/kgに相当する。適当には、投与量は、1日当たり0.05〜0.3mg/kgである。
【0082】
本発明の化合物の個々の投与量の最適な量および投与間隔が治療される病態の性質および程度、投与形態、経路および部位、ならびに治療される特定の哺乳動物によって決定されること、かかる最適条件は通常の技術によって決定できることが、当業者によって理解されるであろう。また、最適な治療方針、すなわち、所定の日数、1日に与えられる本発明の化合物の投与回数は、治療決定試験の通常の方針を用いて当業者が確定できることは、当業者に明らかであろう。
【0083】
本発明の化合物は、1種または複数の精神障害を治療するための以下の薬剤:i)抗精神病薬(オランザピン、リスペリドン、クロザピン、ジプラジドン、タルネトランなど);ii)錐体外路副作用治療薬、例えば、抗コリン薬(ベンズトロピン、ビペリデン、プロシクリジン、トリヘキシフェニジルなど)、抗ヒスチジン薬(ジフェンヒドラミン)、ドーパミン作動薬(アマンタジンなど);iii)抗うつ薬;iv)抗不安薬;v)向知性薬、例えば、コリンエステラーゼ阻害薬(タクリン、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンなど)と組み合わせて用いられてもよい。
【0084】
本発明の化合物は、うつ病および気分障害を治療するための抗うつ薬と組み合わせて用いられてもよい。
【0085】
本発明の化合物は、1種または複数の双極性疾患を治療するための以下の薬剤:i)気分安定化剤;ii)抗精神病薬;iii)抗うつ薬と組み合わせて用いられてもよい。
【0086】
本発明の化合物は、1種または複数の不安障害を治療するための以下の薬剤:i)抗不安薬;ii)抗うつ薬と組み合わせて用いられてもよい。
【0087】
本発明の化合物は、1種または複数のニコチン離脱を改善し、ニコチン渇望を減少させるための以下の薬剤:i)ニコチン補充療法、例えば、ニコチンβ−シクロデキストリンの舌下処方およびニコチンパッチ;ii)ニコチン中毒治療薬、例えば、ブプロピオンと組み合わせて用いられてもよい。
【0088】
本発明の化合物は、1種または複数のアルコール離脱を改善し、アルコール渇望を減少させるための以下の薬剤:i)NMDA受容体アンタゴニスト、例えば、アカンプロセート;ii)GABA受容体アゴニスト、例えば、テトラバメート(tetrabamate);iii)オピオイド受容体アンタゴニスト、例えば、ナルトレキソンと組み合わせて用いられてもよい。
【0089】
本発明の化合物は、1種または複数のアヘン離脱を改善し、アヘン渇望を減少させるための以下の薬剤:i)オピオイドμ受容体アゴニスト/オピオイドκ受容体アンタゴニスト、例えば、ブプレノルフィン;ii)オピオイド受容体アンタゴニスト、例えば、ナルトレキソン;iii)血管拡張降圧薬、例えば、ロフェキジンと組み合わせて用いられてもよい。
【0090】
本発明の化合物は、1種または複数の睡眠障害を治療するための以下の薬剤:i)ベンゾジアゼピン、例えば、テマゼパム、ロルメタゼパム、エスタゾラム、トリアゾラム;ii)非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、例えば、ゾルピデム、ゾピクロン、ザレピオン、インディプロン;iii)バルビツール酸系催眠薬、例えば、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、フェノバルビタール;iv)抗うつ薬;v)他の催眠鎮静薬、例えば、抱水クロラール、クロルメチアゾールと組み合わせて用いられてもよい。
【0091】
本発明の化合物は、1種または複数の拒食症を治療するための以下の薬剤:i)食欲刺激薬、例えば、シプロヘプチジン;ii)抗うつ薬;iii)抗精神病薬;iv)亜鉛;v)月経前薬剤、例えば、ピリドキシンおよびプロゲステロンと組み合わせて用いられてもよい。
【0092】
本発明の化合物は、1種または複数の過食症を治療するための以下の薬剤:i)抗うつ薬;ii)オピオイド受容体アンタゴニスト;iii)制吐薬、例えば、オンダンセトロン;iv)テストステロン受容体アンタゴニスト、例えば、フルタミド;v)気分安定化剤;vi)亜鉛;vii)月経前薬剤と組み合わせて用いられてもよい。
【0093】
本発明の化合物は、1種または複数の自閉症を治療するための以下の薬剤:i)抗精神病薬;ii)抗うつ薬;iii)抗不安薬;iv)興奮剤、例えば、メチルフェニデート、アンフェタミン処方、ペモリンと組み合わせて用いられてもよい。
【0094】
本発明の化合物は、1種または複数の注意欠陥過活動性障害を治療するための以下の薬剤:i)興奮剤、例えば、メチルフェニデート、アンフェタミン処方、ペモリン;ii)非興奮剤、例えば、ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(アトモキセチンなど)、α2アドレナリン受容体アゴニスト(クロニジンなど)、抗うつ薬、モダフィニル、コリンエステラーゼ阻害薬(ガランタミンおよびドネペジル)と組み合わせて用いられてもよい。
【0095】
本発明の化合物は、1種または複数の人格障害を治療するための以下の薬剤:i)抗精神病薬;ii)抗うつ薬;iii)気分安定化剤;iv)抗不安薬と組み合わせて用いられてもよい。
【0096】
本発明の化合物は、1種または複数の男性の性的機能不全を治療するための以下の薬剤:i)ホスホジエステラーゼV阻害薬、例えば、バルデナフィル、シルデナフィル;ii)ドーパミンアゴニスト/ドーパミン輸送阻害薬、例えば、アポモルヒネ、ブプロプリオン;iii)αアドレナリン受容体アンタゴニスト、例えば、フェントラミン;iv)プロスタグランジンアゴニスト、例えば、アルプロスタジル;v)テストステロンアゴニスト、例えば、テストステロン;vi)セロトニン輸送阻害薬、例えば、セロトニン再取り込み阻害薬;v)ノルアドレナリン輸送阻害薬、例えば、レボキセチン;vii)5−HT1Aアゴニスト、例えば、フィリバンセリンと組み合わせて用いられてもよい。
【0097】
本発明の化合物は、1種または複数の女性の性的機能不全を治療するための以下の薬剤:i)男性の性的機能不全で規定される同一の薬剤、ii)エストラジオールなどのエストロゲンアゴニストと組み合わせて用いられてもよい。
【0098】
抗精神病薬は、典型的な抗精神病薬(例えば、クロルプロマジン(chlorpromazine)、チオリダジン(thioridazine)、メソリダジン(mesoridazine)、フルフェナジン(fluphenazine)、ペルフェナジン(perphenazine)、プロクロルペラジン(prochlorperazine)、トリフルオペラジン(trifluoperazine)、チオチキシン(thiothixine)、ハロペリドール(ハロperidol)、モリンドン(molindone)およびロキサピン(loxapine));および非典型的な抗精神病薬(例えば、クロザピン(clozapine)、オランザピン(olanzapine)、リスペリドン(risperidone)、ケチアピン(quetiapine)、アリピラゾール(aripirazole)、ジプラシドン(ziprasidone)、アミスルプリド(amisulpride)、ジプラジドン(ziprazidone)およびタルネタント(talnetant))を包含する。
【0099】
抗うつ薬は、セロトニン再取込阻害剤(例えば、シタロプラム(citalopram)、エスシタロプラム(escitalopram)、フルオキセチン(fluoxetine)、パロキセチンおよびセルトラリン(sertraline));二元的セロトニン/ノルアドレナリン再取込阻害剤(例えば、ベンラファキシン(venlafaxine)、ドゥロキセチン(duloxetine)およびミルナシプラン(milnacipran));ノルアドレナリン再取込阻害剤(例えば、レボキセチン(reboxetine));三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、クロミプラミン(clomipramine)、イミプラミン(imipramine)、マプロチリン(maprotiline)、ノルトリプチリンン、およびトリミプラミン);モノアミンオキシダーゼ阻害剤(例えば、イソカルボキサジド、モクロベミド(moclobemide)、フェネルジン(phenelzine)およびトラニルシプロミン);およびその他(例えば、ブプロピオン、ミアンセリン(mianserin)、ミルタザピン(mirtazapine)、ネファゾドン(nefazodone)およびトラゾドン(trazodone))を包含する。
【0100】
気分安定剤は、リチウム、ナトリウムバルプロエート/バルプロ酸/ジバルプロエクス(divalproex)、カルバムアゼピン、ラモトリジン(lamotrigine)、ガバペンチン(gabapentin)、トピラマート(topiramate)およびチアガビン(tiagabine)を包含する。
【0101】
抗不安薬は、ベンゾジアゼピン類、例えば、アルプラゾラム(alprazolam)およびロラゼパム(lorazepam)を包含する。
【0102】
本明細書に用いられる「治療」には、既存の症状の予防ならびに軽減が含まれることが分かるであろう。
【実施例】
【0103】
本発明は、下記の実施例によって説明される。
【0104】
出発物質は、特に明記しない限り、商業上の供給元から入手され、さらに精製することなく用いた。フラッシュクロマトグラフィーは、静止相としてプレパックIsolute FlashTMまたはBiotageTMシリカゲルカラム、および溶出液として分析等級溶媒を用いて実施した。キャッチ・アンド・リリース精製は、スルホン酸官能基を有する結合相シリカからなるSCX(強カチオン交換)カートリッジを用いて実施した。マス・ディレクテッド分取HPLCは、19mm x 100mmまたは30mm x 100mm、5μm逆相Waters Atlantisカラムを静止相として用い、水+0.1%ギ酸からアセトニトリル+0.1%ギ酸の勾配を溶出液として用いて実施した。該溶出液は、Waters 996フォトダイオードアレイおよびMicromass ZQ質量分光計によってモニターした。報告される全ての収量は、精製して単離した物質についてである。NMRスペクトルは、別記しない限り、298Kにて、BrukerTM DPX400またはOxford InstrumentsTM 250MHz機のいずれかを用いて記載の周波数にて得られ、CDClの希釈溶液として実施した。全NMRスペクトルは、テトラメチルシラン(TMS δ 0, δ 0)を基準とした。全カップリング定数は、ヘルツ(Hz)で報告され、多重度は、s(シングレット)、bs(幅広シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、q(カルテット)、dd(ダブレットのダブレット)、dt(トリプレットのダブレット)およびm(マルチプレット)で標識する。
【0105】
全イオン電流トレースは、エレクトロスプレー陽および陰イオン化(ES+/ES−)および大気圧化学陽および陰イオン化(AP+/AP−)について得られた。
【0106】
略語
THF テトラヒドロフラン
【0107】
製法では、中間体または実施例について、後の番号によって典型的には提供される。これは、用いられる出発物質を特定するためにただ単に技術のある化学者に対し力添えをするのみである。出発物質は、必ずしも称される一群から調製されていなくてもよい。
【0108】
中間体
中間体1:(3E)−4−フェニル−3−ブテン−1−オール
【化13】

水素化リチウムアルミニウム(28.0g、0.75mol、1.05当量)を、マグネチックスターラー、滴下漏斗およびアルゴン吸気口を取り付けた5Lフランジリッドフラスコに加えた。次いで、THF(500ml)を加え、混合物を氷浴で冷却した。トランス−スチリル酢酸(120.0g、0.74mol、1.0当量)の溶液をTHF(1.5L)で溶解し、1.5時間かけて滴下した。添加が終了した後、反応混合物を室温まで加温した。反応液を45分後処理した。1M NaOH(1.5L)をゆっくりと加え、ゲル状混合物となった。過剰の水(300ml)および酢酸エチル(500ml)を加え、分離を補助した。水層は乳液状であるが、有機層は分離されうる。次いで、水層をさらに酢酸エチル(3x1L)で抽出した。合した有機層をNaSOで乾燥し、減圧下で濃縮し、オレンジ色油として標記化合物を得た(84g、77%)。
【0109】
中間体2:2−(3−フェニル−2−オキシラニル)エタノール
【化14】

メタ−クロロ過安息香酸(標記約70%、169.0g、0.69mol、1.2当量)を、滴下漏斗を取り付けた5Lフランジフラスコに加えた。ジクロロメタン(1.5L)を加え、白色懸濁液を氷浴で冷却した。(3E)−4−フェニル−3−ブテン−1−オール(中間体1)(85.0g、0.57mol、1.0当量)のジクロロメタン(700ml)中溶液を滴下した。添加が終了した後、氷浴を取り除き、室温まで加温した。反応が1時間後に終了することをTLC(Rf 0.3、7:3 石油エーテル40−60/酢酸エチル)は示した。ヨウ素・デンプン試験が陰性と分かるまで反応混合物を10%NaSOで慎重に洗浄した。次いで、有機層を分離し、重炭酸ナトリウム(3x1L)で洗浄し、MgSOで乾燥し、減圧下で濃縮し、オレンジ色油として標記化合物を得た(84g、89%)。
【0110】
中間体3:2−フェニルテトラヒドロ−3−フラノール
【化15】

2−(3−フェニル−2−オキシラニル)エタノール(中間体2)(72.0g、0.43mol、1.0当量)を、アルゴン吸気口およびコンデンサーを有する、2Lの3口丸底フラスコ中にてTHF(900ml)で溶解した。ヨウ化マグネシウム(2.40g、0.0086mol、0.02当量)を一部加え、混合物を(75℃の油浴で)54時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、次いで、有機層を水(2x300ml)で洗浄した。水層を酢酸エチル(2x500ml)で抽出した。合した有機層をブライン(300ml)で洗浄し、MgSOで乾燥し、減圧下で濃縮し、オレンジ色油として標記化合物を得た(72.0g、100%、1:1.8、シス:トランス混合物)。
【0111】
中間体3は、US 2005159607およびOrganic Preparations and Procedures International (1992),24(1),13−20から知られている。
【0112】
中間体4:トリフルオロメタンスルホン酸2−フェニルテトラヒドロ−3−フラニル
【化16】

2−フェニルテトラヒドロ−3−フラノール(中間体3)(10.0g、0.06mol、1.0当量)を、滴下漏斗およびアルゴン吸気口を有する500mlフラスコ中にてジクロロメタン(70ml)で溶解した。これを、ドライアイス/アセトン浴を用いて−10〜−20℃に冷却した。次いで、ピリジン(14.5g、0.18mol、3.0当量)を、次いで、触媒量のジメチルアミノピリジン(0.4g、0.003mol、0.05当量)を加えた。次いで、−10〜−20℃の温度を維持しながら、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(25.8g、0.09mol、1.5当量)を15分かけて滴下した。反応液を該温度で15分間攪拌し、水(30ml)を加えた。層を分離した。水層をさらにジクロロメタン(3x60ml)を加えた。次いで、合した有機層を、5%水性HCl(70ml)、5%水性NaHCO(70ml)、水(70ml)およびブライン(70ml)で洗浄した。次いで、有機層をNaSOで乾燥し、ジクロロメタン溶液中標記化合物を得、すぐに次の工程で用いた。
【0113】
中間体5:トリフルオロメタンスルホン酸シス−2−フェニルテトラヒドロ−3−フランアミニウム
【化17】

上記のように調製されたトリフルオロメタンスルホン酸2−フェニルテトラヒドロ−3−フラニル(中間体4)(250ml)のジクロロメタン溶液を1Lフラスコに加えた。次いで、これを、−60℃に冷却した。その一方、メタノール(100ml)を、冷却フィンガー、熱電プローブおよびアンモニアシリンダーに連結するディップ管(dip tube)を取り付けた3口丸底フラスコに加えた。次いで、メタノールを、ドライアイス/アセトン浴を用いて<−60℃に冷却し、アンモニアで飽和するまでアンモニアを溶液に通して発泡させた。次いで、該溶液を1Lフラスコに加えた。さらなるアンモニアを、−60℃でティップ管を介して溶液中に加えた。次いで、溶液を室温に加温し、一晩攪拌した。
【0114】
4工程の上記調製は組み合わされ、減圧下で濃縮し、暗赤色スラリーを得た。次いで、クロロホルム(75ml)で磨砕し、得られた固体を濾過によって単離した。これを、最小量のクロロホルムで洗浄し、黄褐色固体として標記化合物を得た(28.5g)。第2の群を、濾液を濃縮し、クロロホルムで処理することによって得た(7.5g、総量36g、中間体4から47%)。
【0115】
H−NMR(400MHz,DMSO d) δ :7.35(m,5H)、7.10(m,3H)、4.84(d,1H)、4.10(m,1H)、3.95(m,1H)、3.81(m,1H)、2.38(m,1H)、1.99(m,1H)
【0116】
中間体6:シス−2−フェニルテトラヒドロ−3−フランアミン
【化18】

トリフルオロメタンスルホン酸シス−2−フェニルテトラヒドロ−3−フランアミニウム(中間体5)(10g、0.32mol)をジクロロメタン(100ml)で懸濁した。次いで、0.5M NaOH(100ml)を加え、固体が溶解するまで混合物を攪拌した。次いで、層を分離し、有機層をジクロロメタン(4x100ml)で抽出した。20%水性NaOH(数滴)を加え、pHを14で保持した。合した有機層をNaSOで乾燥し、減圧下で乾燥するまで濃縮した。標記化合物の量をH NMRで計算した(約3.6g、69%)。PhおよびNH基のシス配置は、NMR NOE実験によって確認された。
【0117】
中間体7:シス−プロパン−2−スルホン酸(2−フェニルテトラヒドロフラン−3−イル)アミド
【化19】

シス−2−フェニルテトラヒドロ−3−フランアミン(中間体6)(4.6g、0.028mol、1.0当量)を、コンデンサーおよびアルゴン吸気口を取り付けた、フラスコ中にてジクロロメタンで溶解した。これを氷浴で冷却した。次いで、トリエチルアミン(5.7g、0.056mol、2.0当量)およびジメチルアミノピリジン(0.35g、0.0028mol、0.1当量)を、次いで、塩化イソプロピルスルホニル(8.0g、0.056mol、2.0当量)を加えた。氷浴を取り除き、混合物を室温に加温した。約5分後沈殿を形成した。ジクロロメタン(25ml)を加え、固体を再溶解した。次いで、これを34℃に加熱し、一晩攪拌した。反応混合物を室温に冷却した。次いで、溶媒を2/3容量まで減少させ、固体が沈殿した。これを濾過によって単離し、最小量のCHClで洗浄した。次いで、濾液を水(2x15ml)で洗浄した。合した水性部分をジクロロメタン(4x100ml)で抽出した。合した有機層を、ブライン(15ml)で洗浄し、MgSOで乾燥し、減圧下で濃縮した。吸引カラムは、9:1 石油エーテル40−60/EtOAc、1:1 石油エーテル40−60/酢酸エチル中生成物Rf=0.3を用いて行われた。
【0118】
フラッシュカラムは、溶出液として90:10 石油エーテル40−60/酢酸エチルを用いて、全ての前工程から合したカラムに付された生成物で行い、黄色固体として標記化合物を得た(2.2g、9%)。
【0119】
H−NMR(400MHz,DMSO d)δ:7.27(m,4H)、7.18(m,1H)、6.81(d,1H)、4.73(d,1H)、4.08(m,2H)、3.74(m,1H)、2.61(m,1H)、2.28(m,1H)、1.88(m,1H)、0.92(d,3H)、0.77(d,3H)。PhおよびNHSOiPr基のシス配置は、NMR NOE実験によって確認された。
【0120】
中間体8:シス−N−[2−(4−ヨードフェニル)テトラヒドロ−3−フラニル]−2−プロパンスルホンアミド
【化20】

シス−プロパン−2−スルホン酸(2−フェニルテトラヒドロフラン−3−イル)アミド(中間体7)(2.1g、7.8mmol)を乾アセトニトリル(40ml)で溶解し、次いで、N−ヨードスクシンイミド(1.6g、7.1mmol、0.9当量)を加え、溶液を0℃に冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸(2.0ml、21.8mmol、2.8当量)の添加後、氷浴を取り除き、混合物を室温で一晩攪拌した。さらに一部のN−ヨードスクシンイミド(0.8g、3.55mmol、0.45当量)およびトリフルオロメタンスルホン酸(1.0ml、10.9mmol、1.4当量)を加え、混合物を室温で22時間攪拌した。反応混合物を、酢酸エチル/飽和水性NaHCO中で希釈した。有機層を分離し、水層をさらに酢酸エチルで抽出した。合した有機層を乾燥し、濃縮した。
【0121】
粗生成物を、シクロヘキサン中30%酢酸エチルで溶出しながら、フラッシュクロマトグラフィーに付して精製し、帯黄色固体として標記化合物を得た(868mg、収率28%)。
【0122】
HNMR(DMSO)δ:7.7(2H,d)、7.15(2H,d)、6.95(1H,d)、4.75(1H,s)、4.15(2H,m)、3.8(1H,m)、2.8(1H,m)、2.3(1H,m)、1.9(1H,m)、1.05(3H,d)、0.9(3H,m)。
【0123】
生成物の混合物は、キラルHPLCによって分析された:
【0124】
キラルクロマトグラフィー条件
カラム: Chiralpak AS−H、25x4.6mm
移動相: n−ヘキサン30%、エタノール70%
流速: 0.8ml/分
CD 235nm
DAD 220nm
【0125】
Rt(エナンチオマー1)9.750分、面積%52.47。Rt(エナンチオマー2)41.213分、面積%45.13。
【0126】
中間体9:シス−N−{2−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド
【化21】

シス−N−[2−(4−ヨードフェニル)テトラヒドロ−3−フラニル]−2−プロパンスルホンアミド(中間体8)(810mg、2.05mmol)を、乾ジメチルスルホキシド(10ml)で溶解した。酢酸カリウム(604mg、6.15mmol、3当量)、二塩化1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)(82mg、0.10mmol、0.05当量)およびビス(ピナコラト)ジボロラン(625mg、2.46mmol、1.2当量)を溶液に加えた。反応混合物を、攪拌しながら80℃で4時間加熱し、次いで、室温で一晩静置した。
【0127】
さらに一部の酢酸カリウム(604mg、6.15mmol、3当量)、二塩化1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)(82mg、0.10mmol、0.05当量)およびビス(ピナコラト)ジボロン(625mg、2.46mmol、1.2当量)を加えた。混合物を90℃で3時間攪拌し、室温で一晩静置した。
【0128】
反応液を濾過し、固体残渣を酢酸エチルで洗浄した。得られた溶液を濃縮し、水/酢酸エチルで再溶解した。有機層を分離し、水層をさらに酢酸エチル(2x)で抽出した。合した有機層を乾燥し、濃縮した。
【0129】
粗生成物を、シクロヘキサン中30%酢酸エチルで溶出しながら、フラッシュクロマトグラフィーに付して精製し、黄色油として標記化合物を得た(664mg、収率82%)。
【0130】
HNMR(DMSO)δ:7.7(2H,d)、7.3(2H,d)、6.9(1H,d)、4.8(1H,s)、4.15(2H,m)、3.8(1H,m)、2.8(1H,m)、2.3(1H,m)、1.95(1H,m)、1.3(6H,s)、1.15(6H,s)、1.05(3H,d)、0.9(3H,m)。
【0131】
実施例1〜9の一般的製法
【化22】

実施例1〜9の化合物を順番に調製した。
【0132】
8mlバイアル中に、ブロモアリール試薬(0.36mmol、2当量)を加え、シス−N−{2−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド(中間体9)(73mg、0.18mmol、1.0当量)の乾1,4−ジオキサン(1.0ml)中溶液、ポリマー担持テトラキス触媒(49mg、0.0054mmol、0.03当量、添加0.11mmol/g)、および水性2M NaCO(225uL、0.45mmol、2.5当量)を加えた。反応混合物を90℃で4.5時間振盪した。樹脂を濾去し、ジクロロメタン、メタノール、および水で洗浄した。得られた溶液を、ブローダウン装置で蒸発乾固し、残渣をジクロロメタン(3ml)と3N水性HClの間に分配した。有機層を疎水性フリットカートリッジ上で分離し、水層を水性2M NaOHで塩基性化し、ジクロロメタン(2x3ml)で抽出した。合した有機抽出液を、ブローダウン装置を用いて濃縮し、粗化合物を得、マス・ディレクテッド逆相HPLCに付して精製し、実施例1〜9について各場合における標記化合物を得た。HPLC条件は、上記「分取クロマトグラフィー」で得られるとおりであった。
【0133】
該経路によって合成される実施例1〜9は、表1で要約される:
【表1−1】

【表1−2】

【0134】
実施例6および9は、H−NMRで分析され、以下のスペクトルデータが得られた:
【0135】
実施例6
HNMR(DMSO)δ:7.70(2H,m)、7.60(2H,d)、7.41(2H,d)、7.26(2H,t)、6.96(1H,d)、4.84(1H,d)、4.18(2H,m)、3.80(1H,m)、2.74(1H,m)、2.35(1H,m)、1.91(1H,m)、1.00(3H,d)、0.82(3H,d)。
【0136】
実施例9
HNMR(DMSO)δ:7.60(2H,d)、7.51(2H,m)、7.35(2H,d)、7.12(1H,dd)、6.94(1H,d)、4.79(1H,d)、4.16(2H,m)、3.78(1H,m)、2.76(1H,m)、2.32(1H,m)、1.95(1H,m)、1.03(3H,d)、0.88(3H,d)。テトラヒドロフラン環のシス配置は、NOE NMR実験によって確認された。
【0137】
(表1で引用される分析について用いられる)分析HPLC条件
カラム1: GEMINI C18 5μm、50x4.6mm
移動相 A:NHHCO溶液10mM、pH10;B:CHCN
勾配: 35%(B)0.5分間、35%(B)〜95%(B)4.5分、95%
(B)1.5分
流速: 2ml/分
UV波長範囲:210−350nm
質量範囲: 100−900amu
イオン化: ES+
【0138】
分取クロマトグラフィー条件
カラム: GEMINI C18 5μm、100x21mm
移動相: A:NHHCO溶液10mM、pH10;B:CHCN
勾配1: 35%(B)1分間、35%(B)〜60%(B)9分、100%
(B)5分間
勾配2**: 50%(B)1分間、50%(B)〜85%(B)9分、100%
(B)6分間
流速: 17ml/分
UV波長範囲: 210−350nm
質量範囲: 100−900amu
イオン化: ES+
実施例1、2、3、4、5について用いられる
**実施例6、7、8、9について用いられる
【0139】
生物学的アッセイ
グルタミン酸受容体介在反応を増強する本発明の化合物の能力は、a)FLUO4などの蛍光カルシウムインジケーター色素を用いることによって、さらにb)ヒトGluR2フリップがエディティングされていないHEK293細胞からグルタミン酸誘発性電流を測定することによって決定されうる。
【0140】
a)カルシウム流入蛍光アッセイ
安定に発現するかまたは一時的にヒトGluR2フリップ(エディティングされていない)AMPA受容体サブユニットでインフェクトされたHEK293細胞の誘導性単層を含有する384ウェルプレートを調製する。これらの細胞は、機能的ホモ四量体AMPA受容体を形成する。ウェル中の組織培養培地を廃棄し、ウェルを各々、安定な細胞株について標準緩衝液(80μL)(145mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl、2mM CaCl、20mM N−[2−ヒドロキシエチル]−ピペラジン−N−[2−エタンスルホン酸(HEPES)、5.5mMグルコース、pH 7.3)または一過性にトランスフェクトした細胞についてNa遊離緩衝液(NaClの代わりに145mM N−メチル−グルカミン)で3回洗浄した。次いで、プレートを、暗所にて2μM FLUO4−AM色素(20μL)(分子プローブ、Netherlands)と共に、室温で60分間インキュベートし、FLUO−4AMの細胞取り込みを可能にし、次いで、細胞から遊離することはできない細胞内エステラーゼでFLUO−4に変換する。培養後、各ウェルを、緩衝液(80μL)で3回洗浄する(洗浄後、30μLの緩衝液が各ウェル中に残った)。
【0141】
本発明の化合物(またはシクロチアジドなどの目的化合物)を、10mMのストック濃度のジメチルスルホキシド(DMSO)で溶解する。これらの溶液を、384化合物プレート中でBiomek FX(Beckman Coulter)を用いてDMSOでさらに希釈する。各希釈液(1μL)を、別の化合物プレートにトランスフェクトし、緩衝液(50μL)を加える。アゴニスト刺激(グルタミン酸)プレートを、水でグルタミン酸ナトリウムを溶解することによって調製し、100mMの濃度を得る。該溶液を緩衝液で希釈し、500μMの最終濃度を得、Multidrop(Thermolabsystems)を用いて別の384ウェルプレート(50μL/ウェル)に分注する。
【0142】
次いで、細胞プレートを、蛍光イメージングプレートに基づく読み取り機[例えば、FLIPR384(Molecular Devices)]中に移す。ベースライン蛍光読み取りは、10〜240秒間にわたって行い、次いで、標準緩衝溶液中で作成された本発明の化合物を含有する各プレート(濃度範囲100μM〜10pM)由来の10μLを加える(最終濃度範囲が30μM〜3pMになる)。蛍光を5分かけて読み取る。500μMグルタミン酸溶液(10μL)を加える(最終濃度が100μMになる)。次いで、蛍光を4分かけて読み取る。本発明の化合物および目的化合物の活性は、最終添加後のピーク蛍光を測定することによって決定される。活性はまた、その最大反応(すなわち、30μM以上)のシクロチアジドによって誘導される蛍光増加に相対的に表される。
【0143】
上記アッセイは、化合物の溶解度の限界によって、有効限度の3.5−4.0付近のpEC50を検出すると考えられる。pEC50結果は、一般に、正確には+/−0.3であると考えられる。したがって、かかるアッセイ由来の該範囲内のpEC50値を示している化合物は実に、受容体に対して適当な親和性を有しうるが、同様に相当低い親和性を含む、低親和性を有しうる。
【0144】
実施例化合物は、上記アッセイを用いてスクリーンされ、実施例1〜12は、4.0以上のpEC50を得、(その最大反応の)シクロチアジドの活性の少なくとも50%の活性を証明した。
【0145】
b)全細胞電圧固定電気生理学アッセイ
AMPA−サブタイプグルタミン酸受容体媒介反応を増強する本発明の化合物の能力は、ラット培養海馬ニューロンから保存されたAMPA−誘発性電流を測定することによって決定される。
【0146】
該アッセイは、ラット培養海馬ニューロンを用いてAMPA受容体陽性モジュレーターの電気生理学的特性化に関与する。細胞外保存溶液は、145mM NaCl、2.5mM KCl、1.2mM MgCl、1.5mM CaCl、10mM N−[2−ヒドロキシエチル]−ピペラジン−N−[2−エタンスルホン酸(HEPES)、10mM D−グルコース、NaOHでpH 7.3を含有する。細胞内溶液は、80mM CsCl、80mM CsF、10mM N−[2−ヒドロキシエチル]−ピペラジン−N−[2−エタンスルホン酸(HEPES)、10mMエチレングリコール−ビス(g−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N,−テトラ−酢酸(EGTA)、14mM MgATP、14mMジトリス・クレアチン・ホスホキナーゼ、50U/mlクレアチン・ホスホキナーゼ、CsOHでpH 7.3を含有する。記録電極は、Zeitz Instruments DMZ Universal Puller, プログラム09を用いて2個の等しい長さに引っ張られるガラス毛管(Clark Electromedical GC120−F10)から調製され、細胞外溶液中で測定される場合約3−6MΩの抵抗を有する電極をもたらす。電極は、内部記録溶液で満たしてバックさせる。陽圧は、内部および外部溶液の混合物を抑制し、電極が細胞膜と接触する場合に高抵抗シールの形成を補助する電極に適用される。ラット培養海馬ニューロンを有する、ガラスカバースリップフラグメントは、倒立顕微鏡の台上に位置する記録チャンバーに置かれる。チャンバーの端の管は、細胞外溶液を浴槽に適用するために用いられる。急速な溶液交換は、高速ステップ灌流システム(Biologic RSC160)を使用する。その長さに沿って一緒に結合する2個の排出管は、1個の管のみからの流出が、細胞表面を直接通過することができるように選択された細胞付近に位置する。電動式ステッパーは、第2の排出管からの流出が、細胞膜表面での溶液交換を10−20ms以内に生じさせる細胞を通過できるように管に再配置しうる。過剰な浴槽溶液は、真空ラインに連結するチャンバーの端に位置する管を介して除去される。
【0147】
予測細胞は、顕微鏡の視界領域の中心に位置する。細胞記録電極は、膜表面上に直接置かれる。優れたマニピュレーターコントロール(Luigs and Neumann、SM−6)を用いて、高抵抗性シール(ギガシール)を達成するまで5mV脱分極パルスの送達中電極抵抗の変化をモニターしながら、電極を低くする。記録電極チップの真下で小断片の細胞膜の吸引による除去によって全細胞構造を達成する。細胞膜ポテンシャルは、電極(Axopatch 200B積分パッチクランプ増幅器、pClampソフトウェア、Axon機器)を介して−70mV(電圧固定)で維持される。試験溶液は、以下のプロトコルを用いて高速適用システムを用いて適用され、内向き電流の変化は、オフライン分析のために記録され、保存される。
1)対照電流測定が安定するまで、細胞外溶液から細胞外溶液+30μM AMPA(適用時間2秒、適用間隔30秒)の交換を繰り返した。
2)試験電流−測定が安定するまで細胞外溶液+10nMの本発明の化合物から細胞外溶液+10nMの本発明の化合物+30μM AMPA(適用時間2秒、適用間隔30秒)の交換を繰り返した。
【0148】
全ての実験は、常温(20〜22℃)で行われる。
【0149】
本発明の化合物の活性は、本発明の化合物の存在下での30μM AMPA反応についての(2秒の適用時間中の)曲線下の面積を測定することによって決定され、30μM AMPA単独の反応(本発明の化合物の非存在下での30μM AMPA)の相乗作用の%として表される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中:
Arは、フェニル、ピリジル、フラニルまたはチエニルから選択され、各々、1個または複数の基Yで置換されていてもよく;
各Y基は、独立して、ハロ、C1−4アルキル、ハロC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、シアノ、C(O)C1−4アルキル、NHSO1−4アルキル、NMeSO1−4アルキル、NHCOC1−4アルキル、NMeCOC1−4アルキル、SOC1−4アルキル、SO1−4アルキル、およびCO1−4アルキルからなる群より選択されるか、またはY基が一緒になって、環状基−O(CH)O−を形成する]
で示される化合物、またはその塩、もしくは溶媒和物。
【請求項2】
式(Ia):
【化2】

[式中:
Arは、フェニル、ピリジル、フラニルまたはチエニルから選択され、各々、1個または複数の基Yで置換されていてもよく;
各Y基は、独立して、ハロ、C1−4アルキル、ハロC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、シアノ、C(O)C1−4アルキル、NHSO1−4アルキル、NMeSO1−4アルキル、NHCOC1−4アルキル、NMeCOC1−4アルキル、SOC1−4アルキル、SO1−4アルキル、およびCO1−4アルキルからなる群より選択されるか、または2個のY基が一緒になって、環状基−O(CH)O−を形成する]
で示される化合物、またはその塩もしくは溶媒和物である、請求項1記載の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項3】
化合物が、
N−{シス−2−[4−(6−フルオロ−3−ピリジニル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド
N−{シス−2−[4−(6−メチル−3−ピリジニル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド
N−{シス−2−[4−(5−フルオロ−2−ピリジニル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド
N−{シス−2−[4−(5−フルオロ−3−ピリジニル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド
N−{シス−2−[4−(5−メチル−3−ピリジニル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド
N−[シス−2−(4’−フルオロ−4−ビフェニルイル)テトラヒドロ−3−フラニル]−2−プロパンスルホンアミド
N−[シス−2−(4’−シアノ−4−ビフェニルイル)テトラヒドロ−3−フラニル]−2−プロパンスルホンアミド
N−[シス−2−(3’−アセチル−4−ビフェニルイル)テトラヒドロ−3−フラニル]−2−プロパンスルホンアミド
N−{シス−2−[4−(2−チエニル)フェニル]テトラヒドロ−3−フラニル}−2−プロパンスルホンアミド
ならびにその塩および溶媒和物から選択される、請求項1または請求項2記載の化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物および少なくとも1種の医薬上許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項5】
哺乳動物におけるグルタミン酸受容体機能の低下または不均衡によって媒介される疾患または病態を治療または予防するのに用いるための請求項1〜3のいずれか1項記載の式(I)の化合物、またはその塩もしくは溶媒和物。
【請求項6】
疾患が統合失調症である、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
疾患が認識障害である、請求項5記載の化合物。
【請求項8】
グルタミン酸受容体機能の低下または不均衡によって媒介される疾患または病態を治療または予防するための医薬の製造における請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項9】
疾患が統合失調症である、請求項8記載の使用。
【請求項10】
疾患が認識障害である、請求項8記載の使用。
【請求項11】
哺乳動物におけるグルタミン酸受容体機能の低下または不均衡によって媒介される疾患または病態の治療または予防方法であって、有効量の請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項12】
疾患が統合失調症である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
疾患が認識障害である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
抗精神病薬と、請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物を含む組み合わせ生産物。
【請求項15】
請求項1〜3のいずれか1項記載の化合物の調製方法であって、
a)式(II):
【化3】

[Arは式(I)と同義である]
で示される化合物を塩化イソプロピルスルホニルと反応させるか;
または
b)式(III)で示される化合物(式中:Xはハロゲン(例えば、塩素、臭素またはヨウ素)などの脱離基である)を式(IV)のボロン酸誘導体とカップリングさせるか;
【化4】

または
c)式(V)のボロン酸化合物を化合物Ar−X(VI)(式中:Xはハロゲン(例えば、臭素またはヨウ素)などの脱離基である)とカップリングさせ、
【化5】

その後、
・いずれかの保護基(複数でも可)を除去してもよく;および/または
・塩または溶媒和物を形成してもよく;および/または
・式(I)の一の化合物を式(I)の異なる化合物に変換してもよいことを含む方法。

【公表番号】特表2010−517927(P2010−517927A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553751(P2008−553751)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051136
【国際公開番号】WO2007/090841
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】