説明

グロメットを用いた構造物の取付構造

【課題】異音発生を抑制しつつ、コンパクト且つ剛性が高く、さらに、優れた取付作業性を有するグロメットを用いた構造物の取付構造とする。
【解決手段】取付座3は、脚部3aと、取付孔3cを有する着座部3bとを備えている。突起部材5は、略球形状の膨出部51を有している。グロメット1は、環状係止溝13dを有する固定部13と、環状係止溝13dの一方の側壁を構成し、固定部13よりもエンジンカバーC側において突起部材5の膨出部51が嵌合する嵌合部11とを備えている。固定部13及び嵌合部11には嵌合孔1aが連続して形成され、突起部材5の膨出部51を圧入する際、外径方向に弾性変形し、且つ、圧入後に元の状態に復元して膨出部51の根元に係合する環状の係合突出部1bが内径方向に突設され、係合突出部1bは、突起部材5の圧入方向において、固定部13からずれた位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車に搭載されるエンジンにエンジンカバーを取り付ける取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンにエンジンカバーを取り付ける取付構造として、例えば、特許文献1、2では、エンジンカバーの裏面に形成された取付座の取付孔の周縁に、弾性体からなるグロメットの固定部における環状係止溝を係止して、エンジンの上面から突出する突起部材を上記グロメットの嵌合部内方に形成された嵌合孔に圧入することによりエンジンにエンジンカバーを取り付けて、エンジンからエンジンカバーに伝わる振動を上記グロメットで吸収減衰させるようにしている。
【0003】
上記突起部材は、上記嵌合孔に嵌合する略球形状の膨出部が軸部先端に形成されている。上記嵌合孔内面のエンジン側には、環状の係合突出部が設けられており、上記突起部材の膨出部を嵌合孔に圧入すると、係合突出部は外径方向に弾性変形し、圧入後に元の状態に復元して上記膨出部の根元に係合突出部が係合することにより、嵌合孔に突起部材の膨出部が嵌合する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP 0902198 A2(図9、図12)
【特許文献2】特開2006−336743号公報(段落0018欄、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、コスト低下や重量低減等の要求から、エンジンに取り付けるエンジンカバーの取付構造におけるグロメットをコンパクトにしたいという要求がある。このとき、取付構造の剛性を確保するためには、突起部材及びグロメットの嵌合部の大きさを変えずにグロメットをコンパクトにする必要がある。
【0006】
これに対し、特許文献1では、嵌合部の周りに固定部の壁が設けられており、グロメット全体をコンパクトにするために嵌合部と固定部の壁とを接近させると、エンジンの振動により嵌合部と固定部とが接触して異音発生を引き起こす懸念がある。また、嵌合部が環状係止溝の一方の側壁から離れた位置に設けられているので、弾性変形し易くなっており、突起部材の膨出部を嵌合孔に圧入した際に過剰な力が加わると、嵌合部と固定部との間で弾性変形し過ぎてしまい、グロメットが破断してしまう懸念がある。これを回避しながら全体としてコンパクトな構造とするために、特許文献2のように、嵌合部の周りを囲う固定部の壁を取り除くとともに、環状係止溝の一方の側壁と嵌合部とを繋げるようにして、異音発生を抑制しつつ、コンパクト且つ剛性の高いグロメットとすることが考えられる。しかし、特許文献2では、係合突出部の外径方向に固定部が設けられているので、グロメットを取付座に取り付けると、係合突出部は外方向に弾性変形し難くなってしまい、突起部材の圧入作業が困難なものとなってしまう。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、異音発生を抑制しつつ、コンパクト且つ剛性が高く、さらに、優れた取付作業性を有するグロメットを用いた構造物の取付構造とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、グロメットの嵌合部を固定部よりも構造物側に位置するようにし、且つ、グロメットへの突起部材の圧入方向において、固定部と係合突出部とがずれるような位置関係となるようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、第1の発明では、嵌合孔を有する弾性体からなるグロメットを構造物の裏面に形成された取付座に取り付けて、被取付体から突出する突起部材を上記グロメットの嵌合孔に圧入することにより、上記構造物をグロメット及び取付座を介して被取付体に取り付けるグロメットを用いた構造物の取付構造であって、上記取付座は、上記構造物の裏面に形成された脚部と、該脚部先端に上記構造物の裏面との間に空間部を有するように形成され、上記グロメットが取り付けられる取付孔を有する着座部とを備え、上記突起部材は、略球形状の膨出部が軸部先端に形成されてなり、上記グロメットは、上記取付孔の周縁に該グロメットを係止して固定する環状係止溝を有する固定部と、上記環状係止溝の一方の側壁を構成し、上記固定部よりも構造物側において上記突起部材の膨出部が嵌合する嵌合部とを備え、これら固定部及び嵌合部には上記嵌合孔が連続して形成され、上記嵌合部に対応する嵌合孔内面には、被取付体側において、上記突起部材の膨出部を圧入する際、外径方向に弾性変形し、且つ、圧入後に元の状態に復元して上記膨出部の根元に係合する環状の係合突出部が内径方向に突設され、該係合突出部は、上記突起部材の圧入方向において、上記固定部からずれた位置に設けられている構成とした。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、上記嵌合部の外周には、上記突起部材の圧入方向に沿って延びる板状のリブが設けられている構成とした。
【0011】
第3の発明では、第2の発明において、上記嵌合部の被取付体側外周には、上記突起部材の圧入方向と交差するように延出し、固定部の環状係止溝の一方の側壁を構成する嵌合側鍔部が設けられ、上記リブは上記嵌合側鍔部と繋がっている構成とした。
【0012】
第4の発明では、第3の発明において、上記嵌合部の構造物側外周には、上記突起部材の圧入方向と交差するように延出する環状延出部が形成され、該環状延出部は上記リブと繋がっている構成とした。
【0013】
第5の発明では、第1から4のいずれか1つの発明において、上記取付座の脚部基端側には、突起部材の圧入方向と交差するように突出するストッパ部が形成され、上記ストッパ部は、突起部材の圧入方向における嵌合部の過剰変形を阻止するような構成とした。
【0014】
第6の発明では、第1から5のいずれか1つの発明において、上記嵌合部の内面は、上記突起部材の膨出部を上記嵌合部に嵌合させたときに、上記膨出部の表面と上記嵌合部の内面との間の一部に隙間が形成されるような形状である構成とした。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、特許文献1で形成されているような、嵌合部の周りの固定部の壁を取り除き、環状係止溝の一方の側壁と嵌合部とを繋げるようにしているので、異音発生を防止でき、コンパクト且つ剛性の高い取付構造とすることができる。さらに、嵌合部の係合突起部と固定部との位置関係が突起部材の圧入方向にずれているので、突起部材の膨出部を嵌合部に嵌合させる際に、係合突起部が弾性変形し易く、容易に突起部材の膨出部を嵌合部に嵌合させることができる。
【0016】
第2の発明によれば、嵌合部の外周に形成された板状のリブによって嵌合部は突起部材の圧入方向への弾性変形が適度に抑制される。したがって、嵌合部に突起部材の膨出部を圧入する際に、その押す力により嵌合部が突起部材の圧入方向に過剰に延びてしまう事態が回避され、嵌合部の破断を防止することができる。
【0017】
第3の発明によれば、嵌合部の外周に形成されたリブが、該嵌合部の被取付体側外周に設けられた固定部の環状係止溝の一方の側壁を構成する嵌合側鍔部に繋がっているので、固定部に対して嵌合部は、突起部材の圧入方向への弾性変形がさらに抑制される。これにより、突起部材にグロメットを介して取り付ける構造物の振動減衰をさらに早めることができる。
【0018】
第4の発明によれば、嵌合部の構造物側外周に環状延出部を設けたので嵌合部の剛性を上げることができる。また、上記環状延出部をリブと繋ぐようにしているので、突起部材の圧入方向において、嵌合部はさらに弾性変形が抑制され、嵌合部の破断をさらに抑えることができるとともに構造物の振動減衰をさらに早めることができる。
【0019】
第5の発明によれば、取付座に設けられたストッパ部が、グロメットの嵌合部における突起部材の圧入方向の弾性変形を阻止する位置に形成されているので、突起部材の膨出部を嵌合部に圧入したときやエンジンの振動が嵌合部に加わったときに、ストッパ部によって嵌合部の過剰な変形を抑制できる。これにより、嵌合部に突起部材の膨出部を圧入するときに力を加え過ぎた場合やエンジンの振動が嵌合部に加わるときであっても嵌合部が破断してしまうといったことを防止することができる。
【0020】
第6の発明によれば、突起部材の膨出部を嵌合部に嵌合した時に、膨出部の表面と嵌合部の内面との間の一部に隙間が形成されるようになっているので、膨出部を嵌合部に嵌合する際に膨出部と嵌合部との間の空気が抜け易くなり、容易に突起部材を嵌合部に嵌合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】エンジンにグロメットを用いてエンジンカバーを取り付けたときの取付構造の斜視図である。
【図2】エンジンにグロメットを用いてエンジンカバーを取り付ける取付構造の分解斜視図である。
【図3】図1におけるA−A線の断面図である。
【図4】エンジンカバーの取付座の平面図である。
【図5】実施形態の変形例に係るグロメットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0023】
図1は、グロメット1を用いて、エンジン(被取付体)Eの上部に樹脂製のエンジンカバー(構造物)Cを取り付けた状態を示す図である。エンジンカバーCのエンジンE側には、取付座3が複数設けられている。上記グロメット1を上記取付座3に取り付け、エンジンEに設けられた突起部材5を上記グロメット1に形成された後述する嵌合孔1aに圧入して、該グロメット1と突起部材5とを嵌合させることによって、エンジンカバーCがエンジンEに取り付けられ、エンジンEからエンジンカバーCに伝わる振動をグロメット1で吸収減衰させるようにしている。
【0024】
図1乃至図3に示すように、グロメット1は、例えば、ゴム等の弾性体からなる略円錐状の部材であり、突起部材5が嵌合する嵌合部11と、該嵌合部11のエンジンE側に連なり、グロメット1を取付座3に取り付けるための固定部13とを備えている。
【0025】
上記嵌合部11は、略円形状の上壁部11aと、該上壁部11aの外周縁からエンジンE側に行くにしたがって直線的に拡径する第1傾斜壁部11bと、該第1傾斜壁部の外周縁からエンジンE側に行くにしたがって直線的に縮径する第2傾斜壁部11cと、該第2傾斜壁部11cの内周縁からエンジンE側に行くにしたがって直線的に拡径する第3傾斜壁部11dと、該第3傾斜壁部11dの外周縁から外方に延出する略円盤形状の嵌合側鍔部11hとを有している。上記嵌合側鍔部11hは、後述する固定部13の環状係止溝13dの一方の側壁を構成している。したがって、嵌合部11は突起部材5の圧入方向にコンパクトであり、且つ、嵌合側鍔部11hが固定部13の環状係止溝13dの一方の側壁を構成するので、嵌合部11と固定部13との間で弾性変形し難くなり、固定部13に対して突起部材5の圧入方向への弾性変形が適度に抑制されることとなる。また、嵌合側鍔部11hの外周縁は、環状延出部11eの外周縁より外方に位置している。
【0026】
第1傾斜壁部11bには、該第1傾斜壁部11bのエンジンカバーC側の外周面から外方に延出する板状の環状延出部11eが形成されている。該環状延出部11eの外周縁は、上記第1傾斜壁部11bの外周縁より外方に位置している。また、第2傾斜壁部11c及び第3傾斜壁部11dには、第2傾斜壁部11c及び第3傾斜壁部11dの外周面から外方に突出するとともに、突起部材5の圧入方向に沿って延びる板状のリブ11fが周方向において等間隔に4つ形成されている。また上記リブ11fの上端は、上記環状延出部11eと繋がっており、リブ11fの下端は、嵌合側鍔部11hと繋がっている。これらにより、固定部13に対して嵌合部11は、突起部材5の圧入方向への弾性変形がさらに抑制されるようになっている。
【0027】
固定部13は、嵌合側鍔部11hのエンジンE側に繋がる小径部13bと、該小径部13bを介して嵌合側鍔部11hに一体に形成され、且つ、嵌合側鍔部11hと略平行に設けられた略円盤形状の挿入側鍔部13cとを有している。挿入側鍔部13cの外周縁は、上記嵌合側鍔部11hの外周縁より外方に位置している。また、小径部13bの外周縁は、嵌合側鍔部11h及び挿入側鍔部13cの外周縁より内方に位置している。
【0028】
固定部13の外周には、内径方向に窪むとともに外周に沿って延びる環状係止溝13dが形成されている。該環状係止溝13dは、嵌合側鍔部11h、小径部13b及び挿入側鍔部13cによって形作られている。
【0029】
上記挿入側鍔部13cの板厚は、嵌合側鍔部11hの板厚より厚く形成されている。また、小径部13bの外周縁は、後述する取付座3の着座部3bに形成された取付孔3cの内周縁より若干大きくなるように形成されている。そして、小径部13bの高さは、上記着座部3bの板厚と略同一となるように形成されている。
【0030】
上記嵌合部11及び固定部13の内部には、エンジンE側に開口する嵌合孔1aが連続して形成されている。上記嵌合部11に対応する嵌合孔1a内面には、エンジンE側において、第2傾斜壁部11cと第3傾斜壁部11dとで構成される環状の係合突出部1bが内径方向に突設されている。係合突出部1bは、内径が後述する突起部材5の膨出部51の外径よりも小さくなるように形成されている。また、該膨出部51を嵌合孔1a内に圧入する際、上記係合突出部1bは外径方向に弾性変形し、圧入後は元の状態に復元して膨出部51の根元に係合するようになっている。
【0031】
固定部13に対応する嵌合孔1a内径は、突起部材5の膨出部51の径よりも大きく形成されており、突起部材5の膨出部51を容易に通過させることが可能となっている。また、嵌合孔1a内周面のエンジンE側端寄りには、外径方向に拡径するテーパ形状の傾斜面1cが形成されており、突起部材5の膨出部51を嵌合孔1aに圧入する際に、嵌合孔1a内へ誘い込み易くなっている。
【0032】
図2乃至図4に示すように、取付座3は、エンジンカバーCの裏面側であるエンジンE側に一体に形成された部分である。この取付座3は、エンジンカバーCの裏面から突出して一体に形成された脚部3aと、該脚部3aの突出方向先端に上記エンジンカバーCの裏面との間に空間部Rを有するように一体に形成された板状の着座部3bとを有している。
【0033】
上記脚部3aは、断面U字状をなし、図4に示すように、側壁の開放側に向かうにつれて対向する壁の間隔が若干広くなるように形成されている。該脚部3aのエンジンカバーC側内面には、側壁の開放側に向かって突出するとともに、エンジンカバーCの裏面に繋がる板状のストッパ部3eが形成されている。図3に示すように、ストッパ部3eは、グロメット1を取付座3に取り付けたときに、上壁部11aと一定の間隔を開けるような位置に形成されている。このストッパ部3eは、嵌合部11における突起部材5の圧入方向の弾性変形を阻止する位置に形成されている。尚、本実施形態のストッパ部3eは、エンジンカバーCの裏面に繋がっているが、上壁部11aと一定の間隔を開けるような位置であればエンジンカバーCの裏面から離れた位置に形成してもよい。例えば、エンジンカバーCの裏面から離れた位置において、脚部3aの対向する壁を橋絡するような板形状であってもよく、嵌合部11における突起部材5の圧入方向の弾性変形を阻止する位置に形成されていればよい。
【0034】
着座部3bには、該着座部3bの板厚方向に貫通する略円形状の取付孔3cが形成され、取付孔3cにおける脚部3aの開放側に、開放口3dが形成されている。取付孔3cの径は、グロメット1の小径部13bの直径よりも若干小さく、且つ、嵌合側鍔部11h及び挿入側鍔部13cの直径よりも小さく設定されている。また、開放口3dの幅は小径部13bの直径よりも小さく設定されている。これにより、グロメット1の環状係止溝13dに取付座3の取付孔3cの周縁が嵌り込むように、着座部3bの開放口3dからグロメット1を取付座3に圧入すると、環状係止溝13dによりグロメット1を取付孔3cの周縁に係止して固定することができるようになっている。尚、開放口3dの幅は小径部13bの直径よりも小さいので、グロメット1を取付孔3cの周縁に取り付けた後、エンジンEの振動等でグロメット1が開放口3dから不意に抜け落ちるのを防止できる構造となっている。
【0035】
また、グロメット1を取付座3に取り付けたとき、嵌合部11の環状延出部11e及び嵌合側鍔部11hの外周縁と取付座3の脚部3aの内周面との間には一定の距離が設けられており、エンジンEの振動により環状延出部11e及び嵌合側鍔部11hと脚部3aとが接触しないようになっている。これにより、異音発生を抑制することができる。
【0036】
図3又は図4に示すように、突起部材5は、軸部53の先端に形成された略球形状の膨出部51と、該軸部53のエンジンE側に連続して形成され、突起部材5をエンジンEに取り付ける際に図示しない工具で把持する部分となる正六角形状の回動操作部55と、該回動操作部55のエンジンE側に連続して形成された外径方向に延出する円形のフランジ部57と、該フランジ部57のエンジンE側に連続して形成されたエンジンEに突起部材5を取り付けるための螺合部59とを備えている。
【0037】
膨出部51は、図3に示すように、先端に行くにしたがって次第に直線的に縮径するテーパ形状の先細部51aが形成されている。該先細部51aの基端には、略円柱形状で外径が上記先細部51aの基端の外径と同じである中央部51bが連続して形成されている。上記中央部51bの基端には係合基部51cが連続して形成されており、該係合基部51cは、基端側に行くにしたがって次第に直線的に縮径するテーパ形状をなしている。膨出部51を嵌合孔1a内に圧入したとき、上記先細部51aの表面は、上壁部11a及び第1傾斜壁部11bの内面に沿う形状となっている。また、上記係合基部51cの表面は、第2傾斜壁部11cの内面に沿う形状となっている。一方、上記中央部51bの表面は、第1傾斜壁部11b及び第2傾斜壁部11cの内面から若干離れた位置となり、嵌合部11の内面と膨出部51の表面との間で隙間S(図3に示す)が形成されるようになっている。したがって、膨出部51を嵌合部11に嵌合する際に膨出部51と嵌合部11との間の空気が抜け易くなり、容易に突起部材5を嵌合部11に嵌合させることができる。
【0038】
尚、先細部51a及び係合基部51cは直線的に拡径又は縮径するテーパ形状であるが湾曲しながら拡径又は縮径する形状であってもよい。同様に、中央部51bの外周面を湾曲させてもよい。また、本実施形態では、第1傾斜壁部11b及び第2傾斜壁部11cの内面と膨出部51の中央部51bの表面との間に隙間Sが形成されるようになっているが、嵌合部11と膨出部51との間の一部に隙間Sが形成されるようにすればよい。
【0039】
次に、エンジンEへのエンジンカバーCの取り付けについて説明する。まず、エンジンカバーCの取付座3にグロメット1を取り付ける。グロメット1の環状係止溝13dに着座部3bの取付孔3cの周縁が嵌り込むように、着座部3bの開放口3dからグロメット1を取付座3に圧入し、取付座3内にグロメット1を収容する。このとき、嵌合部11は固定部13よりエンジンカバーC側に位置しているので、特許文献1で形成されているような、嵌合部11周りを固定部13の壁が取り囲むといったことがない。これにより、固定部13と嵌合部11との接触による異音発生を防止することができる。
【0040】
取付座3内にグロメット1を収容した後、エンジンカバーCをエンジンEの上方に配置して取付座3をエンジンEに取り付けられた突起部材5に対応させ、エンジンカバーCをエンジンEに対して押し付ける。これにより、突起部材5の膨出部51がグロメット1の嵌合孔1aに圧入される。このとき、まず、膨出部51の先細部51a及び中央部51bが係合突出部1bを外径方向に弾性変形させる。その後、先細部51a及び中央部51bが上記係合突出部1bを通過すると、係合突出部1bは元の状態に復元して膨出部51の根元に係合する。この状態で、上壁部11a及び第1傾斜壁部11bの内面と膨出部51の先細部51aの表面とが接触し、第2傾斜壁部11cの内面と係合基部51cの表面とが接触して嵌合孔1aに膨出部51が嵌合する。このとき、係合突出部1bと固定部13とが、突起部材5の圧入方向においてずれた位置関係となっているので、係合突出部1bは外径方向に弾性変形し易く、容易に膨出部51を嵌合部11に嵌合させることができる。また、嵌合孔1aの係合突出部1bよりエンジンE側の内径は、突起部材5の膨出部51の外径より大きく形成されており、さらに、嵌合孔1a内周面のエンジンE側端寄りには、傾斜面1cが形成されているので、突起部材5の膨出部51を嵌合孔1a内へ誘い込み易くなっている。
【0041】
以上より、この実施形態によれば、特許文献1で形成されているような、嵌合部11周りの固定部13の壁を取り除き、環状係止溝13dの一方の側壁を構成する嵌合側鍔部11hと嵌合部11とを繋げるようにしているので、異音発生を抑制でき、コンパクト且つ剛性の高い取付構造とすることができる。さらに、嵌合部11の係合突出部1bと固定部13との位置関係が突起部材5の圧入方向にずれているので、突起部材5の膨出部51を嵌合部11に嵌合させる際に、係合突出部1bが弾性変形し易く、容易に突起部材5の膨出部51を嵌合部11に嵌合させることができる。
【0042】
また、嵌合部11の外周に形成された板状のリブ11fによって嵌合部11は突起部材5の圧入方向への弾性変形が適度に抑制される。したがって、嵌合部11に突起部材5の膨出部51を圧入する際に、その押す力により嵌合部11が突起部材5の圧入方向に過剰に延びてしまう事態が回避され、嵌合部11の破断を防止することができる。
【0043】
また、嵌合部11の外周に形成されたリブ11fが固定部13に繋がっているので、固定部13に対して嵌合部11は、突起部材5の圧入方向への弾性変形がさらに抑制される。これにより、突起部材5にグロメット1を介して取り付けるエンジンカバーCの振動減衰を早めることができる。
【0044】
また、嵌合部11のエンジンカバーC側外周に環状延出部11eを設けたので嵌合部11の剛性を上げることができる。また、環状延出部11eをリブ11fと繋ぐようにしているので、突起部材5の圧入方向において、嵌合部11は弾性変形がさらに抑制され、嵌合部11の破断を抑えることができるとともにエンジンカバーCの振動減衰をさらに早めることができる。
【0045】
また、取付座3に設けられたストッパ部3eが、グロメット1の嵌合部11における突起部材5の圧入方向の弾性変形を阻止する位置に形成されているので、突起部材5の膨出部51を嵌合部11に圧入したときやエンジンEの振動が嵌合部11に加わったときに、ストッパ部3eによって嵌合部11の過剰な変形を抑制できる。これにより、嵌合部11に突起部材5の膨出部51を圧入するときに力を加え過ぎた場合やエンジンEの振動が嵌合部11に加わったときであっても嵌合部11が破断してしまうといったことを防止することができる。
【0046】
また、突起部材5の膨出部51を嵌合部11に嵌合した時に、膨出部51の表面と嵌合部11の内面との間の一部に隙間Sが形成されるようになっているので、膨出部51を嵌合部11に嵌合する際に膨出部51と嵌合部11との間の空気が抜け易くなり、容易に突起部材5を嵌合部11に嵌合させることができる。
【0047】
また、図5に示す実施形態の変形例のように、嵌合部11に環状延出部11eを設けないグロメット1としてもよい。図5に示すように、4つの板状のリブ11gは突起部材5の圧入方向に沿って嵌合部11の外周面の周方向に等間隔に形成されている。そして、4つのリブ11gは嵌合部11の先端側で一つに繋がっている。
【0048】
したがって、この実施形態の変形例によれば、環状延出部11eが設けられていないので、嵌合部11と取付座3の脚部3aとの間の距離が広くなり、嵌合部11と脚部3aとの接触による異音発生をさらに抑制することができる。
【0049】
また、この変形例では、グロメット1を取付座3に取り付けたときに、ストッパ部3eと嵌合部11の上壁部11aとの間にリブ11gが位置するようになる。これにより、例えば、エンジンEの大きな振動が嵌合部11に加わって該嵌合部11が過剰に変形し、嵌合部11とストッパ部3eとが接触してしまうような場合であっても、上壁部11aが直接ストッパ部3eと接触せずにリブ11gとストッパ部3eとが接触して、該リブ11gが接触時の衝撃を吸収するようになる。したがって、この変形例のグロメット1では、上記のような場合であっても、異音発生を極力抑えることができる。
【0050】
尚、本実施形態では、嵌合孔1aがエンジンE側のみ開放しているが、エンジンカバーC側も開放する貫通孔であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば、自動車に搭載されるエンジンにエンジンカバーを取り付ける取付構造に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0052】
1 グロメット
1a 嵌合孔
1b 係合突出部
3 取付座
3a 脚部
3b 着座部
3c 取付孔
3d 開放口
3e ストッパ部
5 突起部材
11 嵌合部
11e 環状延出部
11f リブ
11g リブ
11h 嵌合側鍔部
13 固定部
13b 首部
13c 挿入側鍔部
13d 環状係止溝
51 膨出部
51a 先細部
51b 中央部
51c 係合基部
53 軸部
R 空間部
S 隙間
E エンジン(被取付体)
C エンジンカバー(構造物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合孔を有する弾性体からなるグロメットを構造物の裏面に形成された取付座に取り付けて、被取付体から突出する突起部材を上記グロメットの嵌合孔に圧入することにより、上記構造物をグロメット及び取付座を介して被取付体に取り付けるグロメットを用いた構造物の取付構造であって、
上記取付座は、上記構造物の裏面に形成された脚部と、該脚部先端に上記構造物の裏面との間に空間部を有するように形成され、上記グロメットが取り付けられる取付孔を有する着座部とを備え、
上記突起部材は、略球形状の膨出部が軸部先端に形成されてなり、
上記グロメットは、上記取付孔の周縁に該グロメットを係止して固定する環状係止溝を有する固定部と、上記環状係止溝の一方の側壁を構成し、上記固定部よりも構造物側において上記突起部材の膨出部が嵌合する嵌合部とを備え、
これら固定部及び嵌合部には上記嵌合孔が連続して形成され、
上記嵌合部に対応する嵌合孔内面には、被取付体側において、上記突起部材の膨出部を圧入する際、外径方向に弾性変形し、且つ、圧入後に元の状態に復元して上記膨出部の根元に係合する環状の係合突出部が内径方向に突設され、
該係合突出部は、上記突起部材の圧入方向において、上記固定部からずれた位置に設けられていることを特徴とするグロメットを用いた構造物の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のグロメットを用いた構造物の取付構造であって、
上記嵌合部の外周には、上記突起部材の圧入方向に沿って延びる板状のリブが設けられていることを特徴とするグロメットを用いた構造物の取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載のグロメットを用いた構造物の取付構造であって、
上記嵌合部の被取付体側外周には、上記突起部材の圧入方向と交差するように延出し、固定部の環状係止溝の一方の側壁を構成する嵌合側鍔部が設けられ、
上記リブは上記嵌合側鍔部と繋がっていることを特徴とするグロメットを用いた構造物の取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載のグロメットを用いた構造物の取付構造であって、
上記嵌合部の構造物側外周には、上記突起部材の圧入方向と交差するように延出する環状延出部が形成され、
該環状延出部は上記リブと繋がっていることを特徴とするグロメットを用いた構造物の取付構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のグロメットを用いた構造物の取付構造であって、
上記取付座の脚部基端側には、突起部材の圧入方向と交差するように突出するストッパ部が形成され、
上記ストッパ部は、突起部材の圧入方向における嵌合部の過剰変形を阻止するように構成されていることを特徴とするグロメットを用いた構造物の取付構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載のグロメットを用いた構造物の取付構造であって、
上記嵌合部の内面は、上記突起部材の膨出部を上記嵌合部に嵌合させたときに、上記膨出部の表面と上記嵌合部の内面との間の一部に隙間が形成されるような形状であることを特徴とするグロメットを用いた構造物の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−47497(P2011−47497A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198405(P2009−198405)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】