説明

ケトオキシムでキャップされたエラストマー強化剤を含む構造用エポキシ樹脂系接着剤

構造用接着剤は、ウレタンおよび/または尿素基を含み、ケトオキシム化合物でキャップされている末端イソシアネート基を有するエラストマー強化剤から調製される。この接着剤は、非常に良好な貯蔵安定性を備え、硬化することによって−40℃でさえも良好な重ね剪断強さおよび衝撃剥離強さを有する硬化接着剤を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年11月5日に出願された米国特許仮出願第61/258,280号の優先権を請求する。
【0002】
本発明は、ケトオキシム化合物でブロックされている末端イソシアネート基を有するエラストマー強化剤(elastomeric toughener)を含む構造用エポキシ系接着剤に関する。
【背景技術】
【0003】
エポキシ樹脂系接着剤は、多数の用途で使用されている。自動車産業では、エポキシ樹脂接着剤は、自動車のフレームおよび他の構造体の金属−金属結合を含む、多くの結合用途で使用されている。こうした接着剤の一部は、車両の衝突発生時の破壊に対して強い耐性を有する必要がある。こうした型の接着剤は、「衝突耐久性(crash durable)接着剤」または「CDA」と呼ばれる場合がある。
【0004】
厳しい自動車性能要件を満たすのに必要なバランスの良い特性を得るために、エポキシ接着剤は、種々のゴムおよび/または「強化剤」と配合されることが多い。こうした強化剤は、硬化反応の条件下で脱ブロックされてエポキシ樹脂と反応できるブロック化官能基を有する。こうした型の強化剤は、例えば、米国特許第5,202,390号、米国特許第5,278,257号、WO2005/118734、米国特許出願公開第2005/0070634号、米国特許出願公開第2005/0209401号、米国特許出願公開第2006/0276601号、EP−A−0308664、EP−A1728825、EP−A1896517、EP−A1916269、EP−A1916270、EP−A1916272およびEP−A1916285に記載されている。
【0005】
プレポリマーのイソシアネート基をブロックするために、種々の型の基が提案されている。ブロック基の中でも最も傑出しているのは、例えば、EP−A1728825およびEP−A1896517に記載されているアミン;例えば、WO00/20483およびWO01/94492に記載されているフェノール類;例えば、WO03/078163、US5,232,996、US6,660,805および米国特許出願公開第2004/0229990号に記載されているある種のアクリレート;ならびに例えば、EP1,431,325、EP1,498,441、EP1,648,950およびEP1,741,734に記載されているエポキシドである。また一方、他のブロック基も提案されている。EP−A1916269には、エポキシブロック基とフェノールブロック基の両方を含む強化剤が記載され、エポキシおよびフェノール型に加えてキシムを使用できることが述べられている。EP−A1916270も同様であり、他の型のキャッピング基をさらに含む強化剤にオキシム基をブロック基として使用できることが述べられている。EP−A1916272には、2種の別個の強化剤を含む接着剤が記載されており、一方はエポキシ官能性キャッピング基でブロックされ、他方はいくつかの型のキャッピング基のいずれかでブロックでき、そのうちの1つは、オキシムであってもよい。
【0006】
キャッピング剤は、構造用接着剤の硬化前と硬化後のいずれの特性にも非常に大きな影響を与えることが分かっている。特に一液型接着剤の場合、貯蔵安定性は、非常に重要な属性である。接着剤組成物の貯蔵安定性が十分でない場合、分子量の増加開始が早すぎる。このために、接着剤は増粘またはゲル化して、適切に施用できず、基材への良好な接着も強固な硬化接着剤層の形成もせず、またはもはや使用できないレベルにさえ達することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした接着剤は、通常、最終的に使用されるまでに最長数カ月パッケージされているので、貯蔵安定性の欠如によって非常に深刻な実用上の問題が発生することになる。加えて、こうした接着剤は、使用時に圧送装置中で40〜50℃で循環させることがあり、この場合にも、装置内での早すぎるゲル化の防止に良好な安定性が必要である。
【0008】
加えて、キャッピング基の選択は、硬化接着剤のある種の特性、とりわけ、低温における衝撃剥離強さ(impact peel strength)に対して大きな影響を及ぼすことが知られている。フェノール型のキャッピング剤は、この点で非常に優れた性能を示す傾向にあるが、エポキシド官能性キャッピング基などの他の型のものがもたらす衝撃剥離強さは、比較的不十分であることが多い。良好な構造用接着剤であれば、良好な貯蔵安定性および良好な衝撃剥離値を合わせ持つであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂と、
B)キャップされたイソシアネート基を含む1種または複数の反応性エラストマー強化剤と、
C)1種または複数のエポキシ硬化剤と
を含み、構造用接着剤中の反応性強化剤のキャップされたイソシアネート基の少なくとも90%が、ケトオキシム化合物でキャップされている構造用接着剤である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましくは反応性強化剤(複数可)上の少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%のイソシアネート基が、ケトオキシム化合物でキャップされている。これらのキャップされたイソシアネート基のうち、エポキシ官能性キャッピング基、すなわち、キャップされたプレポリマーにエポキシド官能基を与えると思われるエポキシド官能基含有キャッピング基でキャップされるものは、本質的にゼロ(例えば1%以下)であることが好ましい。
【0011】
構造用接着剤は、一液型または二液型接着剤中に配合できる。一液型接着剤では、エポキシ硬化剤が他の接着剤配合物とブレンドされ、接着剤は、通常は熱活性化硬化剤および/または触媒を用いることによって熱活性化硬化を示す。二液型接着剤では、エポキシ硬化剤が、エポキシ官能性材料と別個にパッケージされ、2つの成分は、適用時に(または適用直前に)一緒に混合される。二液型接着剤は典型的には、潜伏性硬化または熱活性化硬化を示さないが、そうするように配合することもできる。本発明の利点は、一液型接着剤系で最も明白に認められる。
【0012】
本発明はまた、前記構造用接着剤を2つの部材面に適用するステップと、構造用接着剤を硬化させることによって2つの部材間に接着結合を形成するステップとを含む方法である。少なくとも1つの、好ましくは両方の部材が金属である。
【0013】
ケトオキシムキャップ強化剤を含む硬化接着剤は、良好な重ね剪断強さ(lap shear strength)や衝撃剥離強さなど他の有用な特性を保持しつつ、驚くべき良好な貯蔵安定性を示す。この硬化接着剤は凝集破壊しない傾向があり、このことは、多くの衝突耐久性接着用途で望ましい。
【0014】
本発明の強化剤は、エラストマー性であり、ウレタンおよび/または尿素基を含み、末端イソシアネート基を備え、その末端イソシアネート基の少なくとも90%が、ケトオキシム化合物でキャップされている。ケトオキシム化合物は、ケトンとヒドロキシルアミンとの縮合生成物と理解でき、通常、対応するケトンのオキシムとして命名される。適切なケトオキシム化合物は、一般式I:
【0015】
【化1】

[式中、Rは、それぞれ、アルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、いずれの場合にも、不活性的に置換されていてもよく、さらには、2つのR基は、介在炭素原子と一緒になって脂環式環構造を形成していてもよい]
によって表すことができる。好ましいR基として、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどのアルキル;シクロヘキシルまたはアルキル置換シクロヘキシルおよびフェニルまたはアルキル置換フェニルが挙げられる。2つのR基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0016】
「不活性的に置換された」とは、製造および貯蔵の条件下で、R基上の置換基が、R基を、構造用接着剤配合物の他の成分と反応させないことを意味する。
【0017】
適切なケトオキシム化合物としては、アセトンオキシム(各Rがメチルである構造Iに相当する);シクロヘキサノンオキシム(構造Iにおいて、2つのR基と介在炭素原子とがシクロヘキサン環を形成している);アセトフェノンオキシム(構造Iにおいて、R基のうちの1つがメチルであり、もう1つがフェニルである);ベンゾフェノンオキシム(構造Iにおいて、両方のR基がフェニルである);および2−ブタノンオキシム(構造Iにおいて、R基のうちの1つがエチルであり、もう1つがメチルである)が挙げられる。
【0018】
イソシアネート基のうち、エポキシド部分を含むものが1%以下、好ましくは本質的にゼロであるならば、最大10%のイソシアネート基を、ケトオキシム以外のキャッピング剤でキャップしてもよい。ケトオキシム以外のキャッピング基は、例えば、米国特許第5,202,390号、米国特許第5,278,257号、WO2005/118734、米国特許出願公開第2005/0070634号、米国特許出願公開第2005/0209401号、米国特許出願公開第2006/0276601号、EP−A0308664、EP−A1728825、EP−A1896517、EP−A1916269、EP−A1916270、EP−A1916272およびEP−A1916285に記載されているような、アミン、フェノール化合物、ある種のヒドロキシル含有アクリレートまたはメタクリレート化合物などであってもよい。
【0019】
強化剤は、適切には、平均で、分子当り約1.5個から、好ましくは約2.0から、約8個まで、好ましくは約6個まで、より好ましくは約4個までのキャップされたイソシアネート基を含む。
【0020】
強化剤は、エラストマー性を生じる少なくとも1つの内部セグメントを含む。強化剤は、2つ以上のこのようなセグメントを含んでいてもよい。このセグメントは、ポリエーテルセグメントであっても、ブタジエンホモポリマーもしくはコポリマーのセグメントであってもよい。両型のセグメントが強化剤中に存在していてもよい。各エラストマー性セグメントは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定した場合、好ましくは、800〜5000ダルトン、好ましくは、1500〜4000ダルトンの分子量を有する。
【0021】
強化剤は、適切には、1000以上の分子量を示すピークのみを考慮してGPCによって測定した場合、少なくとも3000から、好ましくは少なくとも5000から、約30,000まで、好ましくは約20,000まで、より好ましくは約15,000までの数平均分子量を有する。多分散度(数平均分子量に対する重量平均分子量の比)は、適切には約1〜約4、好ましくは約1.5〜2.5である。
【0022】
強化剤はまた、分枝剤、連鎖延長剤または両方の残基を含んでいてもよい。
【0023】
エラストマー強化剤は、理想構造(II)
【0024】
【化2】

[式中、pは、分子当りのキャップされたイソシアネート基の平均数を表す]
によって表すことができる。pは、適切には、少なくとも1.5から、好ましくは少なくとも2から8まで、好ましくは6まで、より好ましくは4までである。構造I中の各Aは、水素原子を除いた後のキャッピング基の残基を表す。A基の少なくとも90%は、前述したように、ケトオキシム化合物から水素原子を除いた後の残基を表す。A基の10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下は、ケトオキシムキャッピング基以外のキャッピング基であってもよい。A基の1%以下がエポキシド部分を含み、好ましくは、いずれのA基も本質的にエポキシド部分を含まない。A基の全てが、ケトオキシムキャッピング基であってもよい。
【0025】
構造IIにおいて、Yは、末端イソシアネート基を除去した後のイソシアネート末端プレポリマーの残基である。Yは、少なくとも1つのエラストマー性セグメントを含む。各エラストマー性セグメントは、好ましくは、比較的大きい重量、好ましくは、少なくとも800ダルトンの重量を有する。エラストマー性セグメントの重量は、いずれの場合にも、5000ダルトンであってもよく、好ましくは1500〜4000ダルトンである。このエラストマー性セグメントは、好ましくは、直鎖であるか、または分岐があったとしてもわずかである。エラストマー性セグメント(複数可)はいずれも、前述したように、ポリエーテルセグメントであっても、またはブタジエンホモポリマーもしくはコポリマーのセグメントであってもよい。Y基は、各型の1つまたは複数のセグメントを含むことができる。Y基は、ウレタンおよび/または尿素基を含むことができ、加えて、1つまたは複数の架橋剤または連鎖延長剤の残基(場合によっては、ヒドロキシルまたはアミノ基を除去した後の)を含むことができる。本発明の架橋剤は、750以下、好ましくは50〜500の分子量、ならびに分子当り少なくとも3個のヒドロキシル、第一級アミノおよび/または第二級アミノ基を有するポリオールまたはポリアミン化合物である。架橋剤は、Y基に分枝を与え、強化剤の官能基(すなわち、分子当りのキャップされたイソシアネート基の数)の増加に有用である。本発明の連鎖延長剤は、750以下、好ましくは50〜500の分子量、ならびに分子当り2個のヒドロキシル、第一級アミノおよび/または第二級アミノ基を有するポリオールまたはポリアミン化合物である。連鎖延長剤は、官能基を増加させずに強化剤の分子量を増加させるのに役立つ。
【0026】
反応性強化剤は、イソシアネート末端プレポリマーを形成し、次いで、ケトオキシム化合物(または1種もしくは複数のケトオキシム化合物と1種もしくは複数の他の型のキャッピング基の混合物)で末端イソシアネート基の一部をキャップすることによって調製できる。イソシアネート末端プレポリマーは、1種または複数のポリオールまたはポリアミン化合物を化学量論的過剰量のポリイソシアネート化合物、好ましくはジイソシアネート化合物と反応させることによって調製できる。前述したように、少なくとも1種のポリオールまたはポリアミン化合物は、強化剤にエラストマー性を与え、好ましくは、比較的高重量のエラストマー性セグメント、特に、ポリエーテルセグメントまたはブタジエンホモポリマーもしくはコポリマーのセグメントを含む。
【0027】
ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートであってもよいが、好ましくは脂肪族ポリイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化トルエンジイソシアネート、水素化メチレンジフェニルイソシアネート(H12MDI)などである。
【0028】
最も簡単な場合、1種のポリオールまたはポリアミンのみを、プレポリマーの製造に使用する。このような場合、ポリオールまたはポリアミンは、好ましくは、プレポリマーにエラストマー性を与えるために、前述したような少なくとも1種の比較的高重量のエラストマー性セグメントを含む。しかし、プレポリマーの製造にポリオールまたはポリアミンの混合物を使用することも可能である。プレポリマーの製造に使用するポリオールまたはポリアミン材料の重量の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%が、前述の比較的高重量のエラストマー性セグメントを含むことが好ましい。
【0029】
エラストマー性ポリオールまたはポリアミン(複数可)と組み合わせて使用できる他のポリオールまたはポリアミンは、約750以下の分子量を有する架橋剤および連鎖延長剤を含む。より好ましいのは、150以下の当量重量(equivalent weight)、ならびに2〜4個、特に2〜3個のヒドロキシルおよび/または第一級もしくは第二級アミノ基を有する脂肪族ポリオールおよびポリアミンである。こうした材料の例としては、ポリオール、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、トリメチロールエタン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、スクロース、ソルビトール、ペンタエリトリトール、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン、2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物、例えば、レソルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシルフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、ビスフェノールM、テトラメチルビフェノールおよびo,o’−ジアリル−ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0030】
ポリオール/またはポリアミンの混合物をプレポリマーの製造に使用する場合、ポリイソシアネート化合物は、混合物と一度に反応させることによって、単一ステップでプレポリマーを生成できる。あるいは、ポリイソシアネートは、各ポリオールまたはポリアミン化合物と順次、またはそれらの種々のサブセットと反応させてもよい。後者の手法は、より明確な分子構造を有するプレポリマーの生成に有用であることが多い。
【0031】
したがって、例えば、プレポリマーは、前述したような1種または複数のエラストマー性セグメント、および1種または複数の連鎖延長剤または架橋剤を有する1種または複数のより大きい当量重量のポリオールまたはポリアミンから形成できる。このような場合、プレポリマーは、連鎖延長剤および/または架橋剤を含む全てのポリオールおよび/またはポリアミンを一度にポリイソシアネートと反応させることによって製造できる。あるいは、架橋剤または連鎖延長剤を最初に、ポリイソシアネートと反応させ、その後により大きい当量重量のポリオールおよび/またはポリアミンと反応させてもよく、または逆も可能である。別の手法では、架橋剤を含むより大きい当量重量のポリオールおよび/もしくはポリアミン、またはその混合物を最初にポリイソシアネートと反応させ、次いで、得られた生成物を連鎖延長剤または追加の架橋剤と反応させて、分子量を増加させる。
【0032】
出発原料の割合は、適切には、プレポリマーが、0.5〜6重量%、より好ましくは1〜5重量%、さらに好ましくは1.5〜4重量%のイソシアネート含量を有するように選択される。イソシアネートの当量重量に換算すると、好ましい範囲は700〜8400、より好ましい範囲は840〜4200、さらに好ましい範囲は1050〜2800である。
【0033】
次いで、プレポリマー上のイソシアネート基をキャップ化合物または複数のキャップ化合物、すなわち、前述したような、少なくとも1種のケトオキシム、またはケトオキシムと1種もしくは複数の他の型のキャッピング剤との混合物と反応させることによって、プレポリマーからエラストマー強化剤を調製する。キャッピング段階での出発原料の割合は、プレポリマー上のイソシアネート基の当量(equivalent)当り、少なくとも1モルのキャッピング化合物が提供するように選択する。2種以上のキャッピング化合物を使用する場合、それらは、プレポリマーと同時にまたは順次反応させることができる。
【0034】
プレポリマー形成反応は一般に、場合によってはイソシアネート基をヒドロキシルおよび/またはアミノ基と反応させるための触媒の存在下で、出発原料を混合することによって実施する。イソシアネート基とアミンとの反応を触媒することは必ずしも必要ない。反応混合物は典型的には、60〜100℃などの高温に加熱し、反応は、イソシアネート含量が所望のレベル(キャッピング反応では約0%、上記のプレポリマーではそれより若干高いレベル)に減少するまで継続した。
【0035】
強化剤は、接着剤組成物の少なくとも5重量%を構成すべきである。典型的には、強化剤の量が、少なくとも8重量%または少なくとも10重量%である場合に、より良好な結果が得られる。強化剤は、接着剤組成物の45重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下を構成できる。任意の特定の接着剤組成物において良好な特性、詳細には良好な低温特性を生じるのに必要な強化剤の量は、組成物の他の成分によって若干左右されることがあり、また、強化剤の分子量よって若干左右されることもある。
【0036】
構造用接着剤は、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂の少なくとも一部分はゴムで改質されていないことが好ましい。これは具体的には、エポキシ樹脂がゴムに化学的に結合していないことを意味する。ゴムで改質されていないエポキシ樹脂は、別個の成分として、すなわち、ゴム改質エポキシ樹脂生成物の成分以外のものまたは下記のコアシェルゴムの分散液の一部分として、構造用接着剤に添加することができる。本発明の一部の実施形態では、コアシェルゴム生成物を使用し、それは若干量のエポキシ樹脂中に分散させてもよい。若干量の、ゴムで改質されていないエポキシ樹脂は、そのようにして構造用接着剤内に組み込むことができる。他の実施形態では、構造用接着剤の一成分として使用するゴム改質エポキシ樹脂生成物はまた、ゴムと反応していない(したがってゴムで改質されていない)一定量のエポキシ樹脂を含むこともできる。一部の、ゴムで改質されていないエポキシ樹脂は、同様にそのようにして接着剤内に組み込むことができる。
【0037】
参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,734,332号のカラム2の66行からカラム4の24行に記載されているものを含む、広範囲のエポキシ樹脂を、ゴムで改質されていないエポキシ樹脂として使用することができる。エポキシ樹脂は、分子当り平均少なくとも2.0個のエポキシド基を有するべきである。
【0038】
適切なエポキシ樹脂としては、レソルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1−ビス(4−ヒドロキシルフェニル)−1−フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールKおよびテトラメチルビフェノールなどの、多価フェノール化合物のジグリシジルエーテル;C2〜24アルキレングリコールおよびポリ(エチレンオキシド)またはポリ(プロピレンオキシド)グリコールのジグリシジルエーテルなどの、脂肪族グリコールおよびポリエーテルグリコールのジグリシジルエーテル;フェノール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂、アルキル置換フェノール−ホルムアルデヒド樹脂(エポキシノボラック樹脂)、フェノールヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾール−ヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエネフェノール樹脂およびジシクロペンタジエン−置換フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル;ならびにそれらの任意の2つ以上の任意の組合せが挙げられる。
【0039】
適切なエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA樹脂のジグリシジルエーテル、例えば、名称D.E.R.(登録商標)330、D.E.R.(登録商標)331、D.E.R.(登録商標)332、D.E.R.(登録商標)383、D,E.R.661およびD.E.R.(登録商標)662樹脂でDow Chemicalから販売されているものが挙げられる。
【0040】
有用である市販のポリグリコールのジグリシジルエーテルとしては、Dow ChemicalからD.E.R.(登録商標)732およびD.E.R.(登録商標)736として販売されているものが挙げられる。
【0041】
エポキシノボラック樹脂を使用してもよい。このような樹脂は、Dow ChemicalからD.E.N.(登録商標)354、D.E.N.(登録商標)431、D.E.N.(登録商標)438およびD.E.N.(登録商標)439として市販されている。
【0042】
他の適切な、ゴムで改質されていないエポキシ樹脂は、脂環式エポキシドである。脂環式エポキシドは、下記構造式III:
【0043】
【化3】

[式中、Rは、脂肪族、脂環式および/または芳香族基であり、nは、1〜10、好ましくは、2〜4の数である]
で例示されるような、炭素環中の2つの隣接原子にエポキシ酸素が結合している飽和炭素環を含む。nが1である場合、脂環式エポキシドは、モノエポキシドである。nが2以上である場合、ジ−またはポリエポキシドが形成される。モノ−、ジ−および/またはポリエポキシドの混合物も使用することができる。参照により本明細書に組み込まれている米国特許第3,686,359号に記載されているのと同様な脂環式エポキシ樹脂は、本発明で使用することができる。特に重要な脂環式エポキシ樹脂は、(3,4−エポキシシクロヘキシル−メチル)−3,4−エポキシ−シクロヘキサンカルボキシレート、アジピン酸ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)、ビニルシクロヘキセンモノオキシドおよびそれらの混合物である。
【0044】
他の適切なエポキシ樹脂としては、米国特許第5,112,932号に記載されているオキサゾリドン含有化合物が挙げられる。加えて、D.E.R.592およびD.E.R.6508(Dow Chemical)として市販されているものなどの先進(advanced)エポキシイソシアネートコポリマーも使用できる。
【0045】
ゴムで改質されていないエポキシ樹脂は、好ましくは、10重量%以下の別の型のエポキシ樹脂を含む、ビスフェノール型エポキシ樹脂またはその混合物である。最も好ましいエポキシ樹脂は、ビスフェノールA系エポキシ樹脂およびビスフェノールF系エポキシ樹脂である。これらは、約170〜600以上、好ましくは、225〜400の平均エポキシ当量重量を有することができる。
【0046】
特に好ましい、ゴムで改質されていないエポキシ樹脂は、170〜299、特に、170〜225の平均エポキシ当量重量を有する多価フェノール、好ましくはビスフェノールAまたはビスフェノールFのジグリシジルエーテルと、少なくとも300、好ましくは310〜600の平均エポキシ当量重量を有する多価フェノール、やはり好ましくはビスフェノールAまたはビスフェノールFの第2のジグリシジルエーテルとの混合物である。2種の樹脂の割合は、好ましくは、2種の樹脂の混合物が225〜400の平均エポキシ当量重量を有するようなものである。混合物は、任意選択で、20%以下、好ましくは10%以下の1つまたは複数の他の、ゴムで改質されていないエポキシ樹脂を含むこともできる。
【0047】
ゴムで改質されていないエポキシ樹脂は、好ましくは構造用接着剤の少なくとも約25重量%、より好ましくは少なくとも約30重量%、さらに好ましくは少なくとも約35重量%を構成するであろう。ゴムで改質されていないエポキシ樹脂は、構造用接着剤の約60重量%以下、より好ましくは、約50重量%以下を構成できる。こうした量には、例えば、希釈剤や過剰の未反応試薬などのエポキシ樹脂を含む他の成分と共に組成物内に組み込める、任意の、ゴムで改質されていないエポキシ樹脂が含まれる。
【0048】
構造用接着剤はまた、硬化剤も含む。好ましい一液型接着剤では、接着剤が80℃以上、好ましくは140℃以上の温度まで加熱された場合に速やかに硬化するが、室温(約22℃)および少なくとも50℃までの温度では非常にゆっくりと硬化するように、硬化剤を任意の触媒と一緒に選択する。適切な硬化剤としては、三塩化ホウ素/アミンおよび三フッ化ホウ素/アミン錯体、ジシアンジアミド、メラミン、ジアリルメラミン、アセトグアナミンおよびベンゾグアナミンなどのグアナミン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾールなどのアミノトリアゾール、アジピン酸ジヒドラジド、ステアリン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのヒドラジド、セミカルバジド、シアノアセトアミド、ならびにジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ポリアミンのような材料が挙げられる。ジシアンジアミド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドおよび/または4,4’−ジアミノジフェニルスルホンの使用が、特に好ましい。
【0049】
接着剤を二液型接着剤として配合する場合、前記の熱活性化硬化剤を使用することは必要ではない。但し、特定の用途に潜伏性硬化剤または熱活性化硬化剤が望ましい場合、こうした硬化剤を使用することが可能であると思われる。接着剤を二液型接着剤として配合する場合、広範囲の液状ポリアミン化合物が硬化剤として有用である。
【0050】
硬化剤は、組成物を硬化させるのに十分な量で使用する。通常、組成物中に存在するエポキシド基の少なくとも80%を消費するのに十分な硬化剤を供給する。エポキシド基の全てを消費するのに必要な量を上回る大過剰は一般に必要ではない。好ましくは、硬化剤は、構造用接着剤の少なくとも約1.5重量%、より好ましくは少なくとも約2.5重量%、さらに好ましくは少なくとも3.0重量%を構成する。硬化剤は、好ましくは構造用接着剤組成物の約15重量%以下、より好ましくは約10重量%以下、最も好ましくは約8重量%以下を構成する。
【0051】
構造用接着剤は、大抵の場合、接着剤の硬化、すなわち、エポキシ基と硬化剤上のエポキシド−反応性基との反応を促進するための触媒と、接着剤の他の成分とを含むであろう。好ましいエポキシ触媒には、尿素類、例えば、p−クロロフェニル−N,N−ジメチル尿素(Monuron)、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(Phenuron)、3,4−ジクロロフェニル−N,N−ジメチル尿素(Diuron)、N−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−N’,N’−ジメチル尿素(Chlortoluron)、ベンジルジメチルアミンのようなtert−アクリル−もしくはアルキレンアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ピペリジンもしくはその誘導体、EP1916272に記載されているような種々の脂肪族尿素化合物;C〜C12アルキレンイミダゾールまたはN−アリールイミダゾール、例えば、2−エチル−2−メチルイミダゾール、またはN−ブチルイミダゾールおよび6−カプロラクタムがある。好ましい触媒は、ポリ(p−ビニルフェノール)マトリックス中に組み込まれている2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(欧州特許第0197892号に記載)である。触媒は、封入されていてもよく、あるいは高温への曝露時にのみ活性となる潜伏型であってもよい。
【0052】
好ましくは、触媒は、構造用接着剤の少なくとも約0.1重量%、より好ましくは少なくとも約0.5重量%の量で存在する。好ましくは、触媒は、構造用接着剤の約2重量%以下、より好ましくは約1.0重量%以下、最も好ましくは約0.7重量%以下を構成する。
【0053】
本発明の構造用接着剤は、少なくとも1種の液状ゴム改質エポキシ樹脂を含むことができる。本発明のゴム改質エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂と、アミノ基または好ましくはカルボキシル基などのエポキシド反応性基を有する少なくとも1種の液状ゴムとの反応生成物である。得られる付加物は反応性エポキシド基を有し、それが、構造用接着剤の硬化時に付加物をさらに反応させる。液状ゴムの少なくとも一部分は、−40℃以下、特に−50℃以下のガラス転移温度(T)を有するのが好ましい。好ましくは、各ゴム(2種以上が使用される場合)は、−25℃以下のガラス転移温度を有する。ゴムのTは、−100℃以下であってもよい。
【0054】
液状ゴムは、好ましくは、共役ジエンのホモポリマーまたはコポリマー、特に、ジエン/ニトリルコポリマーである。共役ジエンゴムは、好ましくはブタジエンまたはイソプレンであり、ブタジエンが特に好ましい。好ましいニトリルモノマーは、アクリロニトリルである。好ましいコポリマーは、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマーである。ゴムは、好ましくは、合計で30重量%以下の重合した不飽和ニトリルモノマー、好ましくは、約26重量%以下の重合したニトリルモノマーを含む。
【0055】
ゴムは、分子当り平均で、好ましくは約1.5から、より好ましくは約1.8から、約2.5まで、より好ましくは約2.2までのエポキシド反応性末端基を含む。カルボキシル末端ゴムが好ましい。ゴムの分子量(M)は、適切には、2000〜約6000、より好ましくは約3000〜約5000である。
【0056】
適切なカルボキシル官能性ブタジエンおよびブタジエン/アクリロニトリルゴムは、商品名Hycar(登録商標)2000X162カルボキシル−末端ブタジエンホモポリマー、Hycar(登録商標)1300X31、Hycar(登録商標)1300X8、Hycar(登録商標)1300X13、Hycar(登録商標)1300X9およびHycar(登録商標)1300X18カルボキシル−末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーでNoveonから市販されている。適切なアミン末端ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーは、商品名Hycar(登録商標)1300X21で販売されている。
【0057】
ゴムは、過剰のエポキシ樹脂と反応することによってエポキシ末端付加物に形成される。ゴム上の実質的に全てのエポキシド反応性基と反応して、付加物が高分子量種を形成することを著しく進行させることなく、生成付加物上に遊離エポキシド基を生じるのに十分なエポキシ樹脂を供給する。ゴム上のエポキシ反応性基の当量当り少なくとも2当量のエポキシ樹脂という比が好ましい。より好ましくは、得られる生成物が、付加物と若干の遊離エポキシ樹脂との混合物であるように十分なエポキシ樹脂を使用する;このような遊離エポキシ樹脂は全て、接着剤の、ゴムで改質されていないエポキシ樹脂含量に考慮される。通常、ゴムおよび過剰のポリエポキシドは、重合触媒と一緒に混合され、約100〜約250℃の温度まで加熱されることによって、付加物が形成される。適切な触媒としては、前記のものが挙げられる。ゴム改質エポキシ樹脂を形成するのに好ましい触媒としては、フェニルジメチル尿素およびトリフェニルホスフィンが挙げられる。
【0058】
前記のものを全て含む、ゴム改質エポキシ樹脂の製造には、広範なエポキシ樹脂を使用できる。エポキシ樹脂は、ゴム改質エポキシ樹脂を調製に使用するものと同じであっても、異なっていてもよい。好ましいポリエポキシドは、ビスフェノールAやビスフェノールBなどのビスフェノールの液状または固体のジグリシジルエーテルである。所望ならば、ハロゲン化樹脂、特に臭素化樹脂を使用することによって、難燃性を与えることができる。液状エポキシ樹脂(The Dow Chemical Companyから市販されているビスフェノールAのジグリシジルエーテルであるDER(商標)330およびDER(商標)331樹脂などの)は、取扱いが容易であるために特に好ましい。
【0059】
ゴム改質エポキシ樹脂(複数可)は、存在する場合には、構造用接着剤の約1重量%以上、好ましくは少なくとも約2重量%を構成できる。ゴム改質エポキシ樹脂は、構造用接着剤の約25重量%以下、より好ましくは約20重量%以下、さらに好ましくは約15重量%以下を構成できる。
【0060】
本発明の構造用接着剤は、1種または複数のコアシェルゴムを含んでいてよい。コアシェルゴムは、ゴム状コアを有する粒状材料である。ゴム状コアは、好ましくは−20℃未満、より好ましくは−50℃未満、さらに好ましくは−70℃未満のTを有する。ゴム状コアのTは、−100℃よりかなり低くてもよい。コアシェルゴムはまた、好ましくは少なくとも50℃のTを有する少なくとも1つのシェル部分を有する。「コア」とは、コアシェルゴムの内側部分を意味する。コアは、コアシェル粒子の中心、またはコアシェルゴムの内部シェルもしくはドメインを形成する。シェルは、ゴム状コアの外側にあるコアシェルゴムの部分である。シェル部分(複数可)は、通常、コアシェルゴム粒子の最外部を形成する。シェル材料は、好ましくは、コアにグラフトされているか、もしくは架橋されているか、またはその両方である。ゴム状コアは、コアシェルゴム粒子の50〜95重量%、特に60〜90重量%を構成できる。
【0061】
コアシェルゴムのコアは、ブタジエンなどの共役ジエンのポリマーもしくはコポリマー、またはアクリル酸n−ブチル、エチル、イソブチルもしくは2−エチルヘキシルなどのアクリル酸低級アルキルであってもよい。コアポリマーは、20重量%以下の、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、メタクリル酸メチルなどの他の共重合モノ不飽和モノマーをさらに含むことができる。コアポリマーは、任意選択で、架橋されている。コアポリマーは、任意選択で、マレイン酸ジアリル、フマール酸モノアリル、メタクリル酸アリルなどの、反応性の等しくない2つ以上の不飽和部位を有する共重合グラフト結合モノマーを5%以下含み、反応部位の少なくとも1つは非共役である。
【0062】
コアポリマーはまた、シリコーンゴムであってもよい。こうした材料は、しばしば、−100℃未満のガラス転移温度を有する。シリコーンゴムコアを有するコアシェルゴムとしては、商品名Genioperl(商標)でWacker Chemie(Munich、ドイツ)から市販されているものが挙げられる。
【0063】
任意選択でゴムコアに化学的にグラフトまたは架橋されているシェルポリマーは、好ましくはメタクリル酸メチル、エチルまたはt−ブチルなどの少なくとも1つのメタクリル酸低級アルキルから重合される。かかるメタクリレートモノマーのホモポリマーを使用することができる。さらに、シェルポリマーの最大40重量%は、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどの他のモノビニリデンモノマーから形成できる。グラフトシェルポリマーの分子量は、一般に、20,000〜500,000である。
【0064】
好ましい型のコアシェルゴムは、エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂硬化剤と反応できる反応性基をシェルポリマー中に有する。メタクリル酸グリシジルなどのモノマーによって提供されるようなグリシジル基が適している。
【0065】
特に好ましい型のコアシェルゴムは、EP1632533A1に記載されている型のものである。EP1632533A1に記載されているコアシェルゴム粒子は、大抵の場合ブタジエンの架橋コポリマーである架橋ゴムコアと、好ましくは、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジルおよび場合によってはアクリロニトリルのコポリマーであるシェルとを含む。コアシェルゴムは、好ましくは、やはりEP1632533A1に記載されているポリマーまたはエポキシ樹脂中に分散されている。
【0066】
好ましいコアシェルゴムとしては、Kaneka Kane Ace MX 156およびKaneka Kane Ace MX120コアシェルゴム分散液を含む、名称Kaneka Kane AceでKaneka Corporationから販売されているものが挙げられる。この製品は、濃度約25%でエポキシ樹脂中に予め分散されているコアシェルゴム粒子を含む。こうした製品中に含まれているエポキシ樹脂は、本発明の構造用接着剤の、ゴムで改質されていないエポキシ樹脂成分の全てまたは一部分を形成するであろう。
【0067】
コアシェルゴム粒子は、構造用接着剤の0〜15重量%を構成できる。
【0068】
本発明の構造用接着剤の全ゴム含量は、0〜30重量%の範囲であることができる。衝突耐久性接着剤に好ましいゴム含量は、1〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、より好ましくは4〜15重量%である。
【0069】
全ゴム含量は、本発明のためには、コアシェルゴム(もし存在すれば)の重量+使用できる任意のゴム改質エポキシ樹脂の液状ゴム部分による重量を測定することによって計算する。全ゴム含量を計算する際には、エラストマー強化剤の部分は考慮しない。いずれの場合にも、コアシェルゴム生成物またはゴム改質エポキシ樹脂中に含まれることがある、未反応(ゴム改質されていない)エポキシ樹脂および/または他の担体、希釈剤、分散剤もしくは他の成分の重量は含めない。コアシェルゴムのシェル部分の重量は、本発明の全ゴム含量の一部とみなす。
【0070】
本発明の構造用接着剤は、種々の他の任意選択の成分を含むことができる。
【0071】
硬化の速度および選択性は、付加重合性エチレン性不飽和モノマーまたはオリゴマー材料を構造用接着剤内に組み込むことによって促進および調整できる。この材料は、約1500未満の分子量を有すべきである。この材料は、例えば、アクリレートもしくはメタクリレート化合物、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、または不飽和ポリエステル樹脂のエポキシ付加物であってもよい。この材料を重合させるための遊離基供給源を提供するために、遊離基開始剤を構造用接着剤にさらに含ませることもできる。この型のエチレン性不飽和材料を含ませることによって、エチレン性不飽和部分の選択的重合による構造用接着剤の部分硬化の可能性がもたらされる。
【0072】
構造用接着剤には、好ましくは、少なくとも1つの充填剤、レオロジー改良剤および/または顔料が存在する。これらは、(1)望ましい方法で接着剤のレオロジーを改良する、(2)単位重量当りの総コストを低減する、(3)接着剤、もしくは接着剤が適用される基材から水分もしくは油分を吸収する、および/または(4)接着破壊ではなく凝集破壊を促進するといった数種の機能を発揮できる。こうした材料の例としては、炭酸化カルシウム、酸化カルシウム、タルク、カーボンブラック、織物繊維、ガラス粒子もしくは繊維、アラミドパルプ、ホウ素繊維、炭素繊維、ケイ酸金属塩、雲母、粉末石英、酸化アルミニウム水和物、ベントナイト、ウォラストナイト、カオリン、フュームドシリカ、シリカエアロゲル、ポリ尿素化合物、ポリアミド化合物、またはアルミニウム粉末もしくは鉄粉末などの金属粉末が挙げられる。特に重要な別の充填剤は、200ミクロン以下の平均粒径および0.2g/cc以下の密度を有するマイクロバルーンである。粒径は、好ましくは約25〜150ミクロン、密度は、好ましくは約0.05〜約0.15g/ccである。密度を低減するのに適した熱膨張性マイクロバルーンとしては、商品名Dualite(商標)でDualite Corporationから市販されているものおよび商品名Expancel(商標)でAkzo Nobelから販売されているものが挙げられる。
【0073】
充填剤、顔料およびレオロジー改良剤は、合計で、好ましくは接着剤組成物100部当り約2部以上、より好ましくは接着剤組成物100部当り約5部以上の量で使用する。それらは、好ましくは構造用接着剤の約25重量%以下、より好ましくは約20重量%以下、最も好ましくは約15重量%以下の量で存在する。
【0074】
構造用接着剤は、二量体化脂肪酸、希釈剤、可塑剤、エクステンダー、顔料および染料、難燃剤、チキソトロピー剤、発泡剤、流動制御剤、接着促進剤および酸化防止剤など他の添加剤をさらに含むことができる。適切な発泡剤としては、物理型と化学型両方の発泡剤が挙げられる。接着剤はまた、WO2005/118734に記載されているポリビニルブチラールまたはポリエステルポリオールなどの熱可塑性粉末を含むこともできる。
【0075】
本発明の種々の好ましい接着剤は以下の通りである:
A.多価フェノールの少なくとも1つのジグリシジルエーテル;液状のゴム改質エポキシ樹脂、コアシェルゴムまたは液状のゴム改質エポキシ樹脂とコアシェルゴムの両方;本明細書に記載した約8〜30重量%の強化剤を含む接着剤。
B.多価フェノールのジグリシジルエーテルがビスフェノールAまたはビスフェノールFのジグリシジルエーテルであり、170〜299の当量重量を有する、Aと同様の接着剤。
C.170〜299、特に170〜225のエポキシ当量重量を有する多価フェノール、好ましくはビスフェノールAまたはビスフェノールFのジグリシジルエーテルと、少なくとも300、好ましくは310〜600のエポキシ当量重量を有する多価フェノール、やはり好ましくはビスフェノールAまたはビスフェノールFの第2のジグリシジルエーテルとの混合物を含む、AまたはBと同様の接着剤。2種の樹脂の割合は、好ましくは、2種の樹脂の混合物が、225〜400の平均エポキシ当量重量を有するようなものである。
D.強化剤が、それぞれ800〜5000ダルトンの1種または複数のポリマーセグメントを含む、A、B、またはCと同様な接着剤。
E.硬化剤と触媒とを含む一液型接着剤であり、140℃以上の温度で速やかに硬化するが、80℃以下の温度ではゆっくりと硬化する、A、B、CまたはDと同様な接着剤。
【0076】
接着剤組成物は、任意の好都合な方法によって適用できる。所望ならば、接着剤組成物は、冷却または加温して適用できる。接着剤組成物は、ロボットから基材上にビーズ形態に押し出すことによって適用でき、コーキングガンなどの機械的適用方法または任意の他の手動適用手段を使用することによって適用でき、流動法(streaming method)やスワール技術などのジェットスプレー方法を用いても適用できる。スワール技術は、ポンプ、制御システム、計量供給ガン(dosing gun)アセンブリ、遠隔計量供給装置および適用ガンなど、当業者に周知の装置を使用して適用する。好ましくは、接着剤は、ジェットスプレーまたは流動法を使用して基材に適用する。一般には、接着剤は、一方のまたは両方の基材に適用する。基材は接触させて、接着剤が、一緒に結合される基材間に配置されるようにする。
【0077】
適用後、構造用接着剤は、硬化剤がエポキシ樹脂組成物の硬化を開始する温度まで加熱することによって硬化させる。一般に、この温度は、一液型接着剤では、約80℃以上、好ましくは約140℃以上である。好ましくは、温度は、一液型接着剤では、約220℃以下、より好ましくは約180℃以下である。二液型接着剤は、はるかに低い温度で硬化することが多い。
【0078】
本発明の接着剤を使用することによって、木材、金属、被覆金属、アルミニウム、種々のプラスチック基材および充填プラスチック基材、ガラス繊維などを含む種々の基材を一緒に結合させることができる。好ましい一実施形態では、接着剤を使用することによって自動車部品が一緒に結合され、また自動車部品が自動車に結合される。このような部品は、鋼、被覆鋼、亜鉛メッキ鋼、アルミニウム、被覆アルミニウム、プラスチック基材および充填プラスチック基材であってもよい。
【0079】
特に重要な適用は、自動車フレーム部品の相互の結合または他の部品への結合である。フレーム部品は、冷延鋼板、亜鉛メッキ金属またはアルミニウムなどの金属であることが多い。フレーム部品に結合される部品はまた、直前に記載した金属であってもよいし、他の金属、プラスチック、複合材料などであってもよい。
【0080】
ガルバニールなど脆性金属への接着は、自動車産業では特に重要である。ガルバニールは、鉄含量が若干多く、そのために脆い亜鉛−鉄表面を有する傾向がある。本発明の特に有利な点は、硬化接着剤がガルバニールなどの脆性金属によく結合することである。特に重要な別の適用は、航空宇宙部品、詳細には、飛行中に周囲の大気圧条件に曝露される外部金属部品または他の金属部品の結合である。
【0081】
組み立てた自動車フレーム部材は、通常、焼成硬化を必要とするコーティング材料でコーティングする。コーティングは、通常、140℃〜200℃超の範囲であってもよい温度で焼成する。このような場合、構造用接着剤をフレーム部品に適用し、次いでコーティングを適用し、コーティングを焼成および硬化するのと同時に接着剤を硬化させるのが好都合であることが多い。
【0082】
いったん硬化した接着剤組成物は、好ましくは、DIN EN ISO527−1に従って測定した場合、23℃のヤング率が約1000MPaである。好ましくは、ヤング率は約1200MPa以上、より好ましくは少なくとも1500MPaである。好ましくは、硬化接着剤は、23℃の引張り強さが、約20MPa以上、より好ましくは約25MPa以上、最も好ましくは約35MPa以上である。好ましくは、23℃における、冷延鋼板(CRS)およびガルバニール上の厚さ1.5mmの硬化接着剤層の重ね剪断強さは、DIN EN1465に従って測定した場合、約15MPa以上、より好ましくは約20MPa以上、最も好ましくは約25MPa以上である。
【0083】
本発明の硬化接着剤は、−40℃以下までの温度範囲で優れた接着特性(重ね剪断強さや衝撃剥離強さなどの)を示す。
【0084】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供するが、本発明の範囲を限定するものではない。別段の指示のない限り、部数および百分率は全て、重量による。
【実施例】
【0085】
強化剤実施例1〜5ならびに比較強化剤AおよびB
プレポリマーを、分子量2000のポリテトラヒドロフラン80.8部、トリメチロールプロパン0.6部、およびスズ触媒0.1部を窒素下で混合し、均一な混合物が得られるまで85℃で加熱することによって調製する。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート13.5部を添加し、混合物を85℃で窒素下で1時間反応させる。酸化防止剤0.01部を加える。得られたプレポリマーは、イソシアネート含量が3.0%である。
【0086】
次いで、プレポリマーをアセトネオキシム5.0部と共に窒素下で混合する。混合物を85℃で60分間攪拌して、キャップ反応を完結される(すなわち、イソシアネート含量は減少してゼロになる)。得られた強化剤(実施例1)を真空下で脱気する。得られた強化剤は、数平均分子量5200、重量平均分子量12,900(いずれも、GPCで測定した場合の値、分子量1000以上を示すピークのみを考慮している)および多分散度指数2.4を有する。
【0087】
強化剤実施例2は、ポリテトラヒドロフラン78.8部、トリメチロールプロパン0.5部、および1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート13.2部を使用してプレポリマーを生成することによって、同じ一般方式で製造する。アセトネオキシムの代わりに、シクロヘキサネオネオキシム7.5部を使用することによってプレポリマーをキャップする。得られた強化剤実施例2は、数平均分子量4900、重量平均分子量12,600(前と同様に、いずれもGPCで測定した場合の値)および多分散度指数2.5を有する。
【0088】
強化剤実施例3を、ポリテトラヒドロフラン77.6部、トリメチロールプロパン0.5部、および1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート13.0部を使用してプレポリマーを生成することによって、実施例1と同じ一般方式で製造する。アセトネオキシムの代わりに、アセトフェノネオキシム8.9部を使用することによってプレポリマーをキャップする。強化剤実施例3は、数平均分子量5000、重量平均分子量12,200(前と同様に、両方をGPCで測定した場合の値)および多分散度指数2.4を有する。
【0089】
強化剤実施例4を、ポリテトラヒドロフラン74.6部、トリメチロールプロパン0.5部、および1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート12.5部を使用してプレポリマーを生成することによって、実施例1と同じ一般方式で製造する。アセトネオキシムの代わりに、ベンゾフェノネオキシム12.4部を使用することによってプレポリマーをキャップする。強化剤実施例4は、数平均分子量4700、重量平均分子量10,100(前と同様に、いずれもGPCで測定した場合)および多分散度指数2.2を有する。
【0090】
強化剤実施例5を、ポリテトラヒドロフラン80.1部、トリメチロールプロパン0.6部、および1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート13.4部を使用してプレポリマーを生成することによって、実施例1と同じ一般方式で製造する。アセトネオキシムの代わりに、2−ブタノネオキシム5.9部を使用することによってプレポリマーをキャップする。強化剤実施例5は、数平均分子量4700、重量平均分子量11,000(前と同様に、いずれもGPCで測定した場合の値)および多分散性指数2.3を有する。
【0091】
比較強化剤Aの製造を、分子量2000のポリテトラヒドロフラン77.6部、およびトリメチロールプロパン0.5部を窒素下85℃で均一になるまで混合し、次いで、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート13.0部およびスズ触媒0.06部を添加し、85℃で45分間加熱して2.6%NCOプレポリマーを生成することによって行う。次いで、2−アリルフェノール8.8部を添加し、混合物を85℃で20分間攪拌してキャップ反応を完結させる。比較強化剤Aを真空下で脱気する。
【0092】
比較強化剤Bの製造を、分子量2000のポリテトラヒドロフラン64.9部、およびトリメチロールプロパン0.3部を窒素下で均一になるまで混合し、次いで、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート10.0部およびスズ触媒0.05部を添加し、85℃で45分間加熱して2%NCOプレポリマーを生成することによって行う。次いで、o,o’−ジ−アリルビスフェノールA24.8部を添加し、混合物を85℃で20分間攪拌してキャップ反応を完結させる。比較強化剤Bを真空下で脱気する。この強化剤は、US5,278,257 実施例13に記載のものに類似している。
【0093】
比較強化剤Cの製造を、分子量2000のポリテトラヒドロフラン19.2部、ポリブタジエンジオール(SartomerからのPolyBD(商標)R−45HT)13.2部および分子量2000のポリプロピレンジオール15.6部を真空下105℃で30分間混合し、温度を90℃まで下げ、イソホロンジイソシアネート10.4部およびスズ触媒0.1部を添加することによって行う。混合物を60分間反応させて3.5%NCOプレポリマーを生成し、次いで、これを、トリメチロールプロパンのジ−およびトリ−グリシジルエーテル41.6部を添加し、90℃で60分間加熱することによってキャップする。
【0094】
比較強化剤Dの製造を、分子量2000のポリテトラヒドロフラン66.6部、ビスフェノール−A20.7部およびトリメチロールプロパン0.3部を窒素下120℃で均一になるまで混合し、85℃まで冷却することによって行う。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート12.3部およびスズ触媒0.1部を添加し、生成混合物を85℃で45分間加熱してビスフェノールAキャップイソシアネート基で末端化したプレポリマーを生成する。
【0095】
貯蔵安定性を、強化剤実施例1〜5および比較強化剤AおよびBのそれぞれの二重反復試料を約25℃〜90℃の多様な温度で4カ月間窒素下でシールされた容器内で貯蔵することによって評価する。エージング期間の最後にそれぞれの試料について重量平均分子量を決定し、貯蔵期間の最初の同じ材料と比較する。分子量の増加の程度は、材料の貯蔵安定性を示す。
【0096】
比較強化剤AおよびBは、40℃まではこの試験で良好な貯蔵安定性を示すが、40℃を超える温度で貯蔵した場合、分子量の顕著な増加を示す。
【0097】
強化剤実施例1、2および5は、この試験で80℃までの温度で貯蔵安定性である。強化剤実施例3および4は、この試験で55℃までの温度で貯蔵安定である。本発明の実施例の全てが、比較強化剤AおよびBより顕著に貯蔵安定性である。
【0098】
以下の配合を使用することによって、強化剤実施例1〜5、比較強化剤C、比較強化剤D、および重量比50/50の強化剤実施例2と比較強化剤Cのそれぞれから一液型熱活性化接着剤配合物を調製する。
【0099】
【表1】

【0100】
接着剤実施例A1〜A5は、それぞれ、強化剤実施例1〜5を含む。
【0101】
比較接着剤Aは、比較強化剤Dを含み、比較接着剤Bは、比較強化剤Cを含む。比較接着剤Cでは、強化剤は、9.5部の強化剤2および9.5部の比較強化剤Cを含む。
【0102】
衝撃剥離試験をISO11343くさび衝撃法に従って実施する。試験を操作速度2m/secで実施する。衝撃剥離試験を23℃および−40℃で実施し、N/mmでの強度を測定する。
【0103】
衝撃剥離試験用の試験クーポンは90mm×20mmであり、結合する領域は30×20mmである。試料は、アセトンで拭うことによって調製する。0.15mm×幅10mmのテフロンテープをクーポンに適用することによって結合領域を限定する。次いで、後者のクーポンの結合領域に構造用接着剤を適用し、最初のクーポン上に押し付けることによって各試験片を調製する。接着剤層は、厚さ0.2mmである。二重反復試料を180℃で30分間硬化させる。基材は、1mmの脱脂冷延鋼板(CRS)14O3鋼クーポンである。
【0104】
二重反復試験クーポンを調製し、DIN EN1465に従って基材として1.5mmの脱脂冷延鋼板(CRS)14O3鋼クーポンを用いて、重ね剪断強さについて評価する。試験は、試験速度10mm/分で実施する。試験は、23℃で実施する。試験試料は、各接着剤を用いて調製する。結合する領域は、いずれの場合も、25×10mmである。接着剤層は、厚さ0.2mmである。二重反復試験片を180℃で30分間硬化させる。
【0105】
重ね剪断強さおよび衝撃剥離強さ試験の結果を表2に報告する。この実施例および以下の実施例において、破壊モードは、「AF」(「接着破壊」)または「CF」(凝集破壊)として記載する。混合破壊モードを示す試料は、認められた凝集破壊モードの百分率によって記載する。
【0106】
【表2】

【0107】
表2のデータから、本発明の構造用接着剤が、比較試料(A)の最良の試料と同様な重ね剪断強さおよび衝撃剥離強さを有し、特に−40℃では、比較試料BおよびCのいずれよりも著しく良好な衝撃剥離強さ値を示すことが分かる。
【0108】
一液型熱活性化接着剤実施例6、比較接着剤Dおよび比較接着剤Eは、以下の配合を用いて、強化剤実施例1ならびに比較強化剤Bおよび比較強化剤Aからそれぞれ調製する。
【0109】
【表3】

【0110】
接着剤実施例6、比較接着剤Dおよび比較接着剤Eの貯蔵安定性は全て、それぞれの二重反復試料を23℃、40℃および50℃でエージングさせることによって評価する。粘度は、Bohlin CS−50レオメーターおよびプレート/コーンシステムCP4°/20mmを用いて温度45℃、剪断速度1s−1および10s−1で4週間間隔で測定する。さらなる比較のために、市販の接着剤(Sika Power492、比較接着剤F)を同様にして評価する。結果は表4〜9に示す通りである。表4〜9中の「ND」は、測定を行わなかったことを示す。
【0111】
【表4】

【0112】
【表5】

【0113】
23℃では、接着剤実施例6は、少なくとも20週間のエージング時に粘度増加を示さない。しかし、比較接着剤はいずれも、20週間のエージング期間を通じて顕著な粘度増加を示す。この増加は、表5中の剪断速度10s−1でより明確に見られる。
【0114】
【表6】

【0115】
【表7】

【0116】
【表8】

【0117】
【表9】

【0118】
40℃および50℃は、接着剤パッケージが、夏季における非冷却倉庫での貯蔵中または輸送中に曝露される可能性がある温度に相当する。加えて、接着剤は、工業環境でこれらの接着剤の適用にしばしば使用される加熱圧送装置中でこうした温度に曝露されることが多く、その装置中での早すぎる増粘またはゲル化が、問題になる恐れがある。したがって、40℃および50℃における貯蔵安定性は、実際問題として非常に重要と考えられる。40℃および50℃の結果は、23℃の結果よりもより際立っている。これらの貯蔵条件下では、接着剤実施例6は、比較接着剤のいずれよりも著しく安定である。接着剤実施例6は、他の接着剤より粘度増加が遅く、40℃および50℃では、他の接着剤よりゲル化に時間が長くかかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂と、
B)キャップされたイソシアネート基を含む1種または複数の反応性エラストマー強化剤と、
C)1種または複数のエポキシ硬化剤と
を含み、構造用接着剤中の反応性強化剤のキャップされたイソシアネート基の少なくとも90%が、ケトオキシム化合物でキャップされている構造用接着剤。
【請求項2】
構造用接着剤中の全反応性強化剤のキャップされたイソシアネート基の少なくとも95%が、ケトオキシム化合物でキャップされ、キャップされたイソシアネート基の1%以下が、エポキシ官能性キャッピング基でキャップされている、請求項1に記載の構造用接着剤。
【請求項3】
前記反応性強化剤(複数可)が、ポリエーテルまたはブタジエンホモポリマーもしくはコポリマーの少なくとも1つのセグメントを含み、前記セグメントが少なくとも800ダルトンの分子量を有する、請求項1または2に記載の構造用接着剤。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂が多価フェノールの少なくとも1種のジグリシジルエーテルを含み、前記接着剤が液状ゴム改質エポキシ樹脂、コアシェルゴム、または液状ゴム改質エポキシ樹脂とコアシェルゴムの両方をさらに含み、前記接着剤が約8〜30重量%の反応性強化剤を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の構造用接着剤。
【請求項5】
硬化剤および触媒を含む一液型接着剤であり、140℃以上の温度では速やかに硬化するが、80℃以下の温度でもゆっくりと硬化する、請求項1〜4のいずれかに記載の構造用接着剤。
【請求項6】
約1500未満の分子量を有する、少なくとも1種の付加重合性エチレン性不飽和モノマーまたはオリゴマー材料をさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の構造用接着剤。
【請求項7】
少なくとも1種の液状エポキシド末端ゴムを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の構造用接着剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の構造用接着剤を2つの金属部材の表面に適用するステップと、前記構造用接着剤を硬化させることによって前記2つの金属部材間に接着結合を形成するステップとを含む方法。

【公表番号】特表2013−510225(P2013−510225A)
【公表日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537891(P2012−537891)
【出願日】平成22年10月11日(2010.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/052136
【国際公開番号】WO2011/056357
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】