説明

コネクタ

【課題】導電膜を有する積層体への給電に用いられ、防水性、耐久性および作業性を向上させるコネクタを提供する。
【解決手段】導電膜を中間層として有する板状の積層体2から導出された導電膜への給電線3に電気的に接続された端子部9と、端子部9を内部に収容して保持するコネクタハウジング21と、を有するコネクタ1であり、該コネクタ1は、コネクタハウジング21に連接し且つ積層体2の給電線導出箇所2Cから導出された給電線3をコネクタハウジング21内部に位置づけるように、積層体2の給電線導出箇所2Cを狭持して、コネクタハウジング21を積層体2に固定する固定手段22を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の積層体の中間層に位置づけられた導電膜への給電を行うためのコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のサンルーフなどの、採光に利用されるガラスには、透過光量の調節が可能な調光ガラスが用いられる場合がある。調光ガラスは、液晶物質を含む調光膜を一対の導電膜で挟み込んだ調光体と、該調光体を中間層として積層される複数のガラス板とで構成されている。調光膜に含まれる液晶物質は、電圧により透光率を変化させる性質を有しており、調光膜を挟む一対の導電膜に加える電圧を変化させることで、調光ガラスの透過光量を調整することができる。そのため、この調光ガラスには、導電膜に電圧を加えるための給電線が延設されている。
【0003】
例えば、特許文献1の合わせガラス100(即ち、調光ガラス)は、図10に示されるように、対向する一対の板ガラス101a、bと、該板ガラス101a、bの各々の対向面に配設された透明な中間膜102a、bと、該中間膜102a、bの間に狭持された調光体103と、を有している。調光体103は、液晶物質を含む液晶層108と、該液晶層108を狭持するPETフィルム109a、bと、該PETフィルム109a、bの各々の対向面に配設された透明導電膜110a、bと、を有している。
【0004】
透明導電膜110a、bには、銀ペースト111および銀ペースト111上に配された金属層112を介して、銅テープからなるコネクタ113、即ち、給電線113が電気的に接続されて配設されている。給電線113は、合わせガラス100の側部から外部に向かいテープ状に延びて取り出されている。また、給電線113の先端部は、図示しない外部電源より電力を給電するリード線114を収容するスリーブ115を内包するよう形成されており、該先端部は該スリーブ115に貼着されている。
【0005】
そして、合わせガラス100は、車両のウィンドウガラスなどの防水が必要な場所で利用されることから、ガラス接合面から水分が侵入することを防ぐために、合わせガラス100の側部および給電線113の基端部(即ち、合わせガラス100側端部)にシリコン樹脂などの防水部材による防水処置が施されている。
【特許文献1】特開2005−49417
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される合わせガラス100においては、銅テープからなる給電線113が、合わせガラス100の側部から外部に向かいテープ状に延びて取り出されており、特に、合わせガラス100が車両ドアウインドウなどの可動部分に配設されている場合には、給電線113は、合わせガラス100の可動(スライド)量の吸収等のために、固定されずに用いられることから、給電線113は、車両動作によって振動され、そのため、給電線113の基端部が劣化して破断し、調光動作に不具合を生じるおそれがあった。他にも、車両の振動により、給電線113の基端部と防水部材との間に隙間が生じ、そこから水分が侵入して調光体103が損傷するおそれがあった。
【0007】
また、給電線113が銅テープを基材として合わせガラス100から延出されており、その先端部に外部電源に接続されるスリーブ115が設けられているので、装置等への組み付け時の作業ミスなどにより、給電線113に強いテンションをかけてしまった場合や、不正な方向に折り曲げてしまった場合などに、給電線113が破断してしまうことがあった。そのため、取り扱いに慎重さが求められ、作業効率が悪くなるという問題があった。
【0008】
また、他の従来の実施形態として、給電線113にFFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)などの被覆を有する部材を用いるケースもあるが、その実施形態においても、上記と同様の問題が生じるおそれがあった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、導電膜を有する積層体への給電に用いられ、防水性、耐久性および作業性を向上させるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明によりなされた請求項1に記載のコネクタは、導電膜を中間層として有する板状の積層体から導出された前記導電膜への給電線に電気的に接続された端子部と、前記端子部を内部に収容して保持するコネクタハウジングと、を有するコネクタであって、前記コネクタハウジングに連接し且つ前記積層体の給電線導出箇所から導出された前記給電線を前記コネクタハウジング内部に位置づけるように、前記積層体の前記給電線導出箇所を狭持して、前記コネクタハウジングを前記積層体に固定する固定手段を有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載のコネクタは、請求項1に記載のコネクタにおいて、前記固定手段は、前記積層体に設けられた凹部と嵌合して、前記コネクタハウジングを前記積層体に固定する凸部を有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載のコネクタは、請求項1または2に記載のコネクタにおいて、前記コネクタハウジングは、前記給電線の余長部が格納される空間を有することを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載のコネクタは、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコネクタにおいて、前記コネクタハウジングおよび前記固定手段と前記積層体との間に介在し、コネクタハウジングを防水する防水部材を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、本発明にかかるコネクタは、コネクタハウジングに連接し且つ積層体の給電線導出箇所から導出された給電線をコネクタハウジング内部に位置づけるように、積層体の給電線導出箇所を狭持して、コネクタハウジングを積層体に固定する固定手段を有することから、該固定手段によってコネクタハウジング、即ち、コネクタが積層体に固定されるとともに、コネクタハウジング内に保持される端子部に接続された給電線も固定され、また、給電線がコネクタハウジング内に位置づけられることから、給電線がコネクタハウジングに収容されて保護される。そのため、給電線、特に、給電線基端部の、振動などによる劣化や作業ミスなどによる損傷を防止でき、よって、給電線基端部における積層体接合面のすきまの発生を防ぎ、給電線および積層体の耐久性、防水性を向上させ、また、作業効率を向上させることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、固定手段が、積層体に設けられた凹部と嵌合して、コネクタハウジングを積層体に固定する凸部を有していることから、コネクタハウジングを固定する別部材が不要であり、部品点数の増加なく、コネクタハウジング、即ち、コネクタを積層体に固定することができる。そのため、コネクタのコストを抑えることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、コネクタハウジング内に、給電線の余長部が格納される空間を有することから、給電線の余長部の長さに余裕を持たせることができる。そのため、給電線に接続された端子部をコネクタに組み付けるとき、および、コネクタを積層体に固定するときの作業が容易になり、作業効率を高めることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、コネクタハウジングおよび固定手段と積層体との間に介在し、コネクタハウジングを防水する防水部材を有していることから、コネクタハウジング内に水分が侵入することを防ぐことができ、コネクタハウジング内に位置づけられた端子部に防水構造を設ける必要がなくなる。そのため、コネクタ形状をより簡易にでき、コネクタのコストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施例1)
次に、本発明の第1の実施形態に係るコネクタ1を、図1〜5を参照して説明する。
【0019】
本実施形態のコネクタ1は、図1〜4に示すように、導電膜6を中間層として有する板状の合わせガラス2から導出された導電膜6への給電線3に電気的に接続された端子部9と、端子部9を内部に収容して保持するコネクタハウジング21と、コネクタハウジング21に連接し且つコネクタハウジング21を合わせガラス2に固定する一対の固定部22と、で構成されている。また、コネクタハウジング21および固定部22と合わせガラス2との間には、シリコン樹脂などからなる防水部材30が塗布されており、コネクタハウジング21内部への浸水を防ぐ処置が施されている。
【0020】
合わせガラス2は、請求項の積層体に相当し、液晶物質を含む調光膜を一対の導電膜6で挟み込んだ調光体(図示なし)と、該調光体を間に挟み込む一対の板ガラス(図示なし)とで構成されており、一対の導電膜6に接続された給電線3が、合わせガラス2の給電線導出箇所2Cから、帯状に延びて取り出されている。そして、給電線3から導電膜6を介して調光膜に印可される電圧を変化させることで、調光膜、即ち、合わせガラス2の透過光量が調整される。また、合わせガラス2の側部2Aと給電線3の基端部3bおよびその周囲とには、給電線3と合わせガラス2との接合面から水分が侵入しないように、シリコン樹脂などが塗布されて防水処理が施されている。また、合わせガラス2の相対する平面部2Bには、それぞれに、固定部22に設けられた凸部22aが嵌合して固定される凹部2a(請求項の凹部に相当)が設けられている。
【0021】
給電線3は、先端側(図4右側)がコネクタ端子の幅に合わせ細めて形成された一対の導体5と、導体5を被覆する絶縁体4とで構成されている、既存の長尺のFFCである。給電線3は、合わせガラス2の給電線導出箇所2Cからその一部が、即ち、余長部3aが導出されている。余長部3aの先端部3cは、絶縁体4が導体5の形状に沿って切り取られており、そこに端子部9が接続される。また、給電線3の余長部3aは、コネクタ1を合わせガラス2に固定したときに、給電線3が突っ張らない程度のたるみが生じるように、その長さが調整されている。このたるみを設けることにより、給電線3が接続された端子部9が、コネクタ1組立時にある程度自由に動かすことができるので、組立性が向上する。
【0022】
コネクタハウジング21は、略円筒形状をしており、その先端側には、対応する相手コネクタが挿入されて嵌合される空間である嵌合室28が設けられており、また、その反対側端部には、給電線3の余長部3aが格納される空間である余長部室29が設けられている。そして、嵌合室28と余長部室29の間には、コネクタハウジング21の内周面に沿って突設されたリブ21aが設けられており、嵌合室28と余長部室29とを隔てている。リブ21aには、その内面21bに沿って凹溝21cが形成されており、また、リブ21aは、その内面21bの内側に円筒状の空間を形成しており、該空間に挿入される端子部9を保持する。
【0023】
また、コネクタハウジング21の、嵌合室28を形成している内周面には、その内周面に沿って図示しない溝が設けられており、図示しない防水用ゴム製リングがその溝に配設されている。そして、防水用ゴム製リングは、その内周部側が前記溝からやや突出しており、コネクタ1と相手コネクタとの嵌合時に、該防水用ゴム製リングが相手コネクタの外周面と密着して、嵌合室28内部への水分の侵入を防いでいる。なお、嵌合室28の防水部材としては、上記以外にも、例えば円筒形状のコネクタにおいて、一方のコネクタの内周面と他方のコネクタの外周面とにネジ溝を切り、コネクタ同士を螺合するなど、他の構成でもよい。
【0024】
一対の固定部22は、請求項の固定手段に相当し、コネクタハウジング21の余長部室29側の端部から、コネクタハウジング21の円筒軸方向に沿って延長され且つ給電線3より幅広の長方形状の平板であり、合わせガラス2の厚みと同じ間隙を設けて互いに平行となるように、コネクタハウジング21と一体に形成されている。固定部22の先端部(即ち、コネクタハウジング21と反対側の端部。図3左側)には、固定部22と一体に形成された凸部22aが配設されている。
【0025】
凸部22aは、請求項の凸部に相当し、それぞれの固定部22先端部の内面に相対して突設されており、先端部側が斜めに切り欠かれ且つその反対側が垂直に形成されている。また、相対する凸部22aの間隙は、合わせガラス2の厚みよりも小さくなるように形成されている。
【0026】
また、一対の固定部22は、弾力性を有しており、それらを互いに離れる方向に撓ませて、その間隙に合わせガラス2を挿入して狭持し、その先端の凸部22aを合わせガラス2に設けられた凹部2aに嵌合させて、コネクタハウジング21、即ち、コネクタ1を合わせガラス2に固定する。
【0027】
コネクタハウジング21および固定部22は、ポリアミド樹脂など可撓性を有する合成樹脂を基材として一体形成されている。なお、コネクタハウジング21および固定部22を構成する基材については、これに限定されるものではなく、可撓性を有する材料であれば、どのようなものでもよい。
【0028】
端子部9は、一対の端子10と、端子10を狭持して固定する端子保持部材11と、で構成されている。
【0029】
端子10は、例えば金メッキを施した銅等の金属を基材とした長尺のコネクタ端子であり、一方の端部に先端部10aが、他方の端部にケーブル接続部10bが設けられ、そして、ケーブル接続部10b上には、複数のピアス端子10cが並列して配設されている。
【0030】
先端部10aは、相手コネクタ端子との接触部であり、略円柱形状に形成されている。先端部10aは、コネクタ1が相手コネクタと嵌合されたときに、相手コネクタに設けられている端子収容室に挿入され、相手コネクタの端子と接触して導通される。ケーブル接続部10bは、給電線3に接続されており、より詳細には、給電線3の先端部3cが、ピアス端子10cによって貫通されて取り付けられ、そして、ピアス端子10cが、先端部3cを抱え込むように折り曲げられて、ケーブル接続部10b、即ち、端子10が給電線3に電気的に接続され且つ固定されている。なお、上記は端子10の一例であり、給電線3に接続可能なものであればどのような形状でもよく、また、導電性を有するものであればどのような基材でもよい。
【0031】
端子保持部材11は、コネクタハウジング21と同じ基材からなり、上部11aと下部11bとに分割可能で且つ略円筒形状に形成されている。上部11aと下部11bとの内部には、給電線3と端子10の接続部(即ち、先端部3cとケーブル接続部10b)が格納される空間11dが設けられており、空間11dを取り囲むように、外周部11eがリブ状に突出して形成されている。また、端子保持部材11の上部11aおよび下部11bには、図示しない係止部が設けられており、該係止部によって上部11aと下部11bとが結合され、固定される。
【0032】
外周部11eには、端子10の先端部10aおよび給電線3の形状に合わせた切り欠き11fが設けられており、端子保持部材11が、給電線3および端子10を狭持したときに、切り欠き11fからそれらが突出するように形成されている。また、端子保持部材11は、コネクタ嵌合時の部品誤差を吸収するために、やや遊びを設けて先端部10aおよび給電線3を狭持している。
【0033】
端子保持部材11には、その給電線3側寄りの外面に、周方向に沿って突部11cが設けられており、端子保持部材11(即ち、端子部9)は、コネクタハウジング21の内面部21bが取り囲む円筒形の空間内に挿入され、内面部21bに設けられた凹溝21cと突部11cとが嵌合して、コネクタハウジング21に取り付けられて固定される。
【0034】
次に、コネクタ1を合わせガラス2に取り付けて固定する手順について、図5を参照して説明する。
【0035】
まず、合わせガラス2の側部2Aから導出されている給電線3(即ち、余長部3a)の先端部3cに、端子10を取り付ける。より詳細には、端子10のケーブル接続部10b上に配設されたピアス端子10cを、先端部3cに貫通させて、端子10と給電線3とを電気的に接続し、そして、ピアス端子10cを、先端部3cを抱え込むように内側に折り曲げて、端子10を給電線3に固定する。
【0036】
次に、端子保持部材11で、給電線3および端子10を狭持する。即ち、上部11aおよび下部11bに分割された端子保持部材11の間(即ち、空間11d)に、給電線3に固定された端子10のケーブル接続部10bが位置付くように、且つ、端子保持部材11の切り欠き11fに、給電線3および端子10の先端部10aが位置付くように、上部11aおよび下部11bで挟み込んで固定する。このとき、上部11aおよび下部11bは図示しない係止部によって互いに結合される。
【0037】
次に、端子保持部材11(即ち、端子部9)を、本体部21のリブ21aの内面部内側に形成される円筒空間内に挿入し、端子保持部材11の外周面に設けられた凸部11cと、リブ21aの内面に設けられた凹溝21cとを嵌合させて、端子部9を、コネクタハウジング21に取り付ける。この段階で、コネクタ1は、給電線3に接続されており、固定部22を合わせガラス2の側部2Aに向けて位置している。
【0038】
次に、コネクタ1を、給電線3の長手方向に沿って合わせガラス2に近づけ、コネクタ1の凸部22aを給電線導出箇所2Cに当接させる。続けて、コネクタ1を、合わせガラス2に対して押し込んでいくと、凸部22aの先端部が斜めに切りかかれているので、合わせガラス2によって、一対の固定部22が互いに離れる方向に撓まされ、一対の固定部22の間に合わせガラス2が挿入される。
【0039】
さらに、コネクタ1を押し込んでいくと、コネクタハウジング21の固定部側端部と合わせガラス2の側部2Aが当接し、同時に凸部22aと凹部2aとが嵌合して、コネクタの撓みが元にもどり、合わせガラス2の平面部2Bと固定部22の内面とが当接して、コネクタ1が合わせガラス2(即ち、給電線導出箇所2C)に固定される。この状態においては、給電線3の余長部3aは、余長部室29に収容されており、また、コネクタハウジング21は合わせガラス2の側部2Aに当接され、且つ、固定部22は給電線3より幅広であるため、給電線3が、コネクタハウジング21内に完全に内包されて、外部から保護されている。なお、本実施形態においては、余長部3aは突っ張らない程度の長さに調整されているが、より長い場合においても、余長部3aを折りたたむことで、余長部室29に収容することが可能である。
【0040】
そして、凸部22aおよび凹部2aの合わせガラス2端部側は、互いに挿入方向に対して垂直に切り立って形成されており、コネクタ1を引き抜き方向(挿入方向と反対方向)に引っ張っても、上記凸部22aと凹部2aとの本体側端部が引っかかり、コネクタ1は合わせガラス2からはずれず、固定されたままとなる。
【0041】
最後に、コネクタ1と合わせガラス2の間に、防水部材30が塗布されて、コネクタ1の防水処理が施され、コネクタハウジング21内の給電線3および端子部9が、水分から保護される。
【0042】
その後、合わせガラス2が、車両等に組み付けられたとき、コネクタ1に、対応する相手コネクタが接続され、相手コネクタが接続されたケーブルの先に位置する図示しない給電部によって、コネクタ1および給電線3を経由して調光体の導電膜6が給電され、合わせガラス2の調光動作が行われる。
【0043】
本実施形態によれば、コネクタ1は、コネクタハウジング21に連接し且つ合わせガラス2の給電線導出箇所2Cから導出された給電線3をコネクタハウジング21内部に位置づけるように、合わせガラス2の給電線導出箇所2Cを狭持して、コネクタハウジング21を合わせガラス2に固定する固定部22を有することから、固定部22によってコネクタハウジング21、即ち、コネクタ1が合わせガラス2に固定されるとともに、コネクタハウジング21内に保持される端子部9に接続された給電線3も固定され、また、給電線3がコネクタハウジング21内に位置づけられることから、給電線3がコネクタハウジング21に収容されて保護される。そのため、給電線3、特に、給電線基端部3bの、振動などによる劣化や作業ミスなどによる損傷を防止でき、よって、給電線基端部3bにおける合わせガラス2の側部2Aの接合面のすきまの発生を防ぎ、給電線3および合わせガラス2の耐久性、防水性を向上させ、また、作業効率を向上させることができる。
【0044】
また、固定部22が、コネクタハウジング21と一体に形成されることから、別部品で形成される場合に比べてコネクタ1を固定したときの強度を得やすく、また、部品点数の増加がなく、コストを抑えることができる。
【0045】
また、固定部22に、合わせガラス2に設けられた凹部2aと嵌合して、コネクタハウジング21を合わせガラス2に固定する凸部22aが一体形成されていることから、コネクタハウジング21を固定する別部材が不要であり、部品点数の増加なく、コネクタハウジング21、即ち、コネクタ1を合わせガラス2に固定することができる。そのため、コネクタ1のコストを抑えることができる。
【0046】
また、コネクタハウジング21内に、給電線3の余長部3aが格納される空間である余長部室29を有することから、給電線3の長さに余裕を持たせることができる。そのため、給電線3に接続された端子部9をコネクタハウジング21に組み付けるとき、および、コネクタ1を合わせガラス2に固定するときの作業が容易になり、作業効率を高めることができる。
【0047】
また、端子部9は、嵌合時の誤差を吸収するために、端子10が遊びを設けて保持されており、該遊びによる端子10の動きが給電線3の余長部3aによって吸収されるので、給電線3の基端部3bにかかる負担が軽減され、給電線3の劣化を防ぐことができる。
【0048】
また、コネクタハウジング21および固定部22と合わせガラス2との間に介在し、コネクタハウジング21を防水する防水部材30を有していることから、コネクタハウジング21内に水分が侵入することを防ぐことができ、コネクタハウジング21内に保持される端子部9に防水構造を設ける必要がなくなる。そのため、コネクタ1の形状をより簡易にでき、コネクタ1のコストを抑えることができる。
【0049】
(実施例2)
次に、本発明の第2の実施形態に係るコネクタ41を、図6〜7を参照して説明する。
【0050】
本実施形態のコネクタ41は、導電膜6を中間層として有する板状の合わせガラス2から導出された導電膜6への給電線3に電気的に接続された端子部9と、端子部9を内部に収容して保持するコネクタハウジング21と、コネクタハウジング21に連接し且つコネクタハウジング21を合わせガラス2に固定する一対の固定部23と、で構成されている。また、コネクタハウジング21および固定部23と合わせガラス2との間には、シリコン樹脂などからなる防水部材30が塗布されており、コネクタハウジング21内部への浸水を防ぐ処置が施されている。なお、端子部9と、コネクタハウジング21と、防水部材30とについては、前述した第1の実施形態と同一であり、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
一対の固定部23は、給電線3より幅広の長方形状であり、合わせガラス2の厚みと同じ間隙が設けられて互いに平行して配設されている。また、一対の固定部23は、コネクタハウジング21に連接して一体形成されており、その連接部分には、ヒンジ23bが設けられ、ヒンジ23bを中心として回動可能である。一対の固定部23の対向する内面には、複数の嵌合突起23aが配設されており、合わせガラス2に設けられた嵌合孔2bに嵌合され、合わせガラス2を噛むように一対の固定部23が狭持して、コネクタハウジング21、即ち、コネクタ41を、合わせガラス2に固定する。
【0052】
次に、コネクタ41を合わせガラス2に取り付けて固定する手順について説明する。なお、給電線3にコネクタ41を取り付けるまでの手順、および、固定部23に合わせガラス2を狭持させて、コネクタ41が固定されたあとの手順、については、第1の実施形態と同様のため説明を省略する。
【0053】
給電線3に接続されたコネクタ41は、一対の固定部23が、ヒンジ23bを中心として互いに離れる方向(図6W方向の反対)に回動されて、その間隙を広げられ、そして、該間隙に、合わせガラス2がコネクタハウジング21に当接するまで挿入される。合わせガラス2がコネクタハウジング21に当接したあと、一対の固定部23が、ヒンジ23bを中心として互いに近づく方向(図6W方向)に回動されて、その間隙を狭められ、嵌合突起23aと嵌合孔2bとが嵌合される。そして、一対の固定部23の内面と合わせガラス2の平面部2Bとが密着して、合わせガラス2を狭持し、コネクタハウジング21、即ち、コネクタ41が、合わせガラス2の給電線導出箇所2Cに固定される。なお、嵌合突起23aと嵌合孔2bとの嵌合時に、嵌合突起23aおよび固定部23の対向面に接着剤を塗布しておくことで、コネクタ41をより強固に固定することができる。
【0054】
本実施形態によれば、一対の固定部23は、ヒンジ部23bを有しているので、第1の実施形態に比べ、固定部23を容易に広げることができることから、一対の固定部23の間に合わせガラス2を容易に挿入でき、そのため、コネクタ41を合わせガラス2に容易に取り付けることが可能となり、組立性を向上させることができる。また、ヒンジ23bによって、一対の固定部23を大きく広げることができることから、嵌合突起23aをより長く形成することができ、そのため、固定部23と合わせガラス2をより強固に固定することができ、より強固に給電線3を保護できる。
【0055】
(実施例3)
次に、本発明の第3の実施形態に係るコネクタ42を、図8〜9を参照して説明する。
【0056】
本実施形態のコネクタ42は、導電膜6を中間層として有する板状の合わせガラス2から導出された導電膜6への給電線3に電気的に接続された端子部9と、端子部9を内部に収容して保持するコネクタハウジング21と、コネクタハウジング21に連接し且つコネクタハウジング21を合わせガラス2に固定する一対の固定部24と、合わせガラス2および一対の固定部24に設けられた穴に挿通されて、合わせガラス2および一対の固定部24を締め付ける一組のボルト31およびナット32と、で構成されている。また、コネクタハウジング21および固定部24と合わせガラス2との間には、シリコン樹脂などからなる防水部材30が塗布されており、コネクタハウジング21内部への浸水を防ぐ処置が施されている。なお、端子部9と、コネクタハウジング21と、防水部材30とについては、前述した第1の実施形態と同一であり、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
一対の固定部24は、給電線3より幅広の長方形状であり、合わせガラス2の厚みと同じ間隙が設けられて互いに平行して配設されている。また、一対の固定部23は、コネクタハウジング21に連接して一体形成されるとともに、その中央部分にボルト31を挿通させるボルト穴24aが設けられている。合わせガラス2および給電線3にも、コネクタ42が合わせガラス2に取り付けられたときに、ボルト穴24aと同径同心となる穴2c、3dがそれぞれ設けられている。一組のボルト31およびナット32は、上述のボルト穴24aおよび穴2c、3dに挿通される、既存のものである。
【0058】
なお、本実施形態においては、合わせガラス2と固定部24とを、一組のボルト31およびナット32で締め付けているが、複数組のボルトおよびナットを用いることにより、さらに強固に締め付けて固定することができる。また、コネクタハウジング21および固定部24の基材として、可撓性を有しないものを用いることも可能である。
【0059】
次に、コネクタ42を合わせガラス2に取り付けて固定する手順について説明する。なお、給電線3にコネクタ42を取り付けるまでの手順、および、固定部23に合わせガラス2を狭持させて、コネクタ42が固定されたあとの手順、については、第1の実施形態と同様のため説明を省略する。
【0060】
給電線3に接続されたコネクタ42は、一対の固定部24の間隙に、合わせガラス2がコネクタハウジング21に当接するまで挿入される。そして、その状態において、同心となるボルト穴24aと穴2c、3dとにボルト31が挿通され、合わせガラス2と固定部24とが、ボルト31のネジ溝が切られている端部に取り付けられたナット32で締め付けられて、コネクタ1が合わせガラス2の給電線導出箇所2Cに固定される。
【0061】
本実施形態によれば、コネクタ42が、ボルト31およびナット32で締め付けられて固定されることから、他の実施形態に比べ、より強固にコネクタ42を合わせガラス2に固定することができ、より強固に給電線3を保護できる。また、固定部を撓ませたり、回動させたりする必要がないため、合わせガラス2へのコネクタ42の取り付けが容易である。
【0062】
なお、本実施形態においては、固定部24には嵌合部を設けていないが、例えば、第1の実施形態の凸部22aや第2の実施形態の嵌合突起23aなどと、本実施形態のボルトおよびナットとを組み合わせてもよい。その場合、さらに強固にコネクタを合わせガラスに固定できる。
【0063】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明にかかるコネクタの実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示すコネクタの正面図である。
【図3】図1に示すコネクタの、X−Xに沿う断面図である。
【図4】図2に示すコネクタの、Y−Yに沿う断面図である。
【図5】図1に示すコネクタの分解立体図である。
【図6】本発明にかかるコネクタの第2の実施形態における、図1のX−Xに沿う断面図である。
【図7】同じく第2の実施形態における、図2のY−Yに沿う断面図である。
【図8】本発明にかかるコネクタの第3の実施形態における、図1のX−Xに沿う断面図である。
【図9】同じく第3の実施形態における、図2のY−Yに沿う断面図である。
【図10】従来の積層体における給電線の接続を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 コネクタ
2 合わせガラス(積層体)
2C 給電線導出箇所
2a 凹部
3 給電線
3a 余長部
9 端子部
21 コネクタハウジング
22 固定部(固定手段)
22a 凸部
29 余長部室(余長部が格納される空間)
30 防水部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電膜を中間層として有する板状の積層体から導出された前記導電膜への給電線に電気的に接続された端子部と、前記端子部を内部に収容して保持するコネクタハウジングと、を有するコネクタであって、
前記コネクタハウジングに連接し且つ前記積層体の給電線導出箇所から導出された給電線を前記コネクタハウジング内部に位置づけるように、前記積層体の前記給電線導出箇所を狭持して、前記コネクタハウジングを前記積層体に固定する固定手段を有する
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記固定手段は、前記積層体に設けられた凹部と嵌合して、前記コネクタハウジングを前記積層体に固定する凸部を有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記コネクタハウジングは、前記給電線の余長部が格納される空間を有することを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記コネクタハウジングおよび前記固定手段と前記積層体との間に介在し、コネクタハウジングを防水する防水部材を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−218108(P2008−218108A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51922(P2007−51922)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】