説明

コンピュータシステム、プログラム、コンピュータシステムのシステム起動方法

【課題】コンピュータシステムのシステム起動時に、マスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動しないときにもブート処理を中止せずに継続させること。
【解決手段】制御マイコン21が、システム起動時にアナログマルチプレクサ15をE経路からB経路へ変更させてから、ハードディスク/CFカード13が正常に作動することを確認する。マスターとして機能するハードディスクが正常に作動していると確認されたときには、制御マイコン21が、そのままアナログマルチプレクサ15をB経路からE経路へ復帰させる。一方、ハードディスクが正常に作動すると確認されなかったときには、制御マイコン21が、ハードディスクをスレーブとして機能させるとともに、スレーブとして機能するCFカード13をマスターとして機能させるようにそれらの役割を切り替えてからアナログマルチプレクサ15をB経路からE経路へ復帰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステムのシステム起動時に、マスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動しないときにもブート処理を中止せずに継続させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、OS(Operating System)やアプリケーション等をインストールするための補助記憶装置であるハードディスクドライブが、周辺機器として接続されたコンピュータシステムが知られている。
【0003】
一般に、パーソナルコンピュータシステム(以下、コンピュータシステム)は、CPUや主記憶装置等が筐体に内蔵されたパーソナルコンピュータ本体と、入出力装置としてのキーボード、ディスプレイ、マウス等とから主に構成される。パーソナルコンピュータ本体の筐体内には、さらに、補助記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)や、CD−ROMドライブ等が、前記CPUからシステム全体を統括的に制御するために、いわゆるマザーボードに接続され搭載されている。よって前記マザーボードには、前記CPU、前記CPUから前記接続された装置を動作設定したり制御する処理プログラムであるBIOS(Basic Input-Output System)を組み込んだROM、及び、前記OSやアプリケーション等が動作するRAMが搭載されている。
【0004】
ハードディスクは、直接マザーボードに接続されるか又はインターフェースカードを通じてマザーボードの拡張バススロットに接続される。したがって、ハードディスクは、多種のインターフェイス構造で製造されており、インターフェイス構造の代表的なものとしては、IDE(Integrated Drive Electronics)接続並びにSCSI(Small Computer System Interface)接続等がある。
【0005】
SCSI接続対応のSCSI機器は、高密度で且つ高速なアクセスが可能であり、従来、高性能なパーソナルコンピュータではSCSI機器が使用されていた。なお、上述した説明は、例えば特許2554457号の段落(0002)〜(0010)にも詳細に解説されている。
【0006】
しかしながら、現在のIDE機器は、SCSI機器とほぼ同等のアクセス速度、記憶密度を達成し、しかも、ほとんどのマザーボードにIDE機器を接続可能なインターフェイスが予め具備されていること、SCSI機器に比べ安価であること等から、近年では急速に普及している。
【0007】
ここで、IDE機器のマザーボードへの接続構造としては、一般的なマザーボードには、プライマリIDE並びにセカンダリIDEと呼ばれる2つのインターフェイスがコネクタとして設けられており、この各インターフェイスに、さらに、マスター及びスレーブ用の2つのコネクタが設けられたフラットケーブルを装着することで、2台のマスター装置および2台のスレーブ装置の計4台のIDE機器を接続することができる。接続された各IDE機器には、別系統の電源ケーブルを通じて電源より電力が供給される。
【0008】
前記接続構造のマザーボードを具備するコンピュータシステムにおいて前記OSの起動に使用できるハードディスクドライブ、すなわちブート(予め記憶されたブートローダプログラムを読み出してブート処理を実行)可能なカレントドライブは、一般的なBIOS(例えば、IBM(商標)互換機のBIOS)の設定では、前記プライマリのマスター用のコネクタに接続されたハードディスクドライブに限定される。よって、前記ブートローダプログラム以外に、前記OSやアプリケーション等も、一般的にはカレントドライブに記憶されている。
【0009】
ところで、上述した従来のコンピュータシステムには、次のような課題があった。すなわち、前記カレントドライブに故障が発生した場合には、前記CPUは、ブートローダプログラムを前記カレントドライブから読み出せずに前記ブート処理を正常に実行できない。よって、前記ブート処理が行われなければ、前記OSは正常に初期起動できなくなるのでコンピュータシステムも正常に起動しなくなる。
【0010】
この場合、前記システムの復旧には、前記故障したハードディスクが収容された筐体の一部のキャビネットを取り去る作業、電気的な配線作業を含む新しいハードディスクとの交換作業、及び新しいハードディスクへのOSプログラムやアプリケーションプログラムのインストール作業等が必要である。したがって、特にコンピュータ関連の知識にあまり詳しくないユーザにとっては、ハードディスクの交換作業は、多大な時間を要する困難な作業であった。
【0011】
そこで、特許文献1には、実際にデータ処理が行われていたハードディスクに故障等が発生した場合でもシステムの復旧を容易に行うために、IDEデバイスのマスターとスレーブを切り替えてブートを実行する技術が開示されている。具体的には、特許文献1に記載のコンピュータシステムは、RAM、CPU、BIOS等が少なくとも実装されたマザーボードと、このマザーボードにIDEインターフェイスを通じて接続される2台のHDDと、これらHDDやCD−ROMに電力を電源ケーブルを通じて供給するための電源と、電源から2台のHDDへの電力供給の切替制御を行うための電源切替回路と、これらマザーボードや2台のHDDを収容できる筐体としてのケースと、ケースの外側に設けられているとともに、ケースの内部で電源切替回路に電気的に接続され、HDDへの電力供給の切替えをユーザが手動で行うためのトグルスイッチと、を具備する。
【特許文献1】特開2001−184148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、この種のコンピュータシステムでは、システム起動時にブート処理を実行する。具体的には、マスターとして機能する補助記憶装置には、OSをロードするためのブートローダが格納されており、CPUが、システム起動時に補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認する。そして、確認後に、CPUが、マスターとして機能する補助記憶装置からブートローダを読み出して実行することでオペレーティングシステムプログラムをマスターとして機能する補助記憶装置から読み出し、その読み出したオペレーティングシステムプログラムを実行する。
【0013】
しかし、特許文献1に記載のコンピュータシステムにおいては、ブート処理時にマスターとして機能するHDDが正常に作動しないときには、ブート処理を中止し、マスターおよびスレーブの役割設定を変更した後に、ブート処理を再び実行する必要があり、システム起動に時間がかかっていた。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、コンピュータシステムのシステム起動時に、マスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動しないときにもブート処理を中止せずに継続させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係るコンピュータシステム(1:この欄においては、発明に対する理解を容易にするため、必要に応じて「発明を実施するための最良の形態」欄で用いた符号を付すが、この符号によって請求の範囲を限定することを意味するものではない。)は、オペレーティングシステムプログラムおよび前記オペレーティングシステムプログラムをロードするためのブートローダがそれぞれ格納され、それぞれがマスターまたはスレーブとして機能可能な複数の補助記憶装置(13)と、前記複数の補助記憶装置と電気的に接続され、システム起動時に前記複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認した後に、前記複数の補助記憶装置のうちのマスターとして機能する補助記憶装置から前記ブートローダを読み出して実行することで前記オペレーティングシステムプログラムを読み出し、その読み出したオペレーティングシステムプログラムを実行するCPU(11)と、前記複数の補助記憶装置と電気的に接続される際に、前記複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認する確認処理、および前記複数の補助記憶装置のうちのマスターとして機能する補助記憶装置をスレーブとして機能させるとともに前記複数の補助記憶装置のうちスレーブとして機能する補助記憶装置のうちの何れかをマスターとして機能させるようにそれらの役割を切り替える切替処理を実行可能な確認切替回路(21)と、前記CPUと前記複数の補助記憶装置とを電気的に接続させる第一接続状態から前記確認切替回路と前記複数の補助記憶装置とを電気的に接続させる第二接続状態へ切り替え可能な第一アナログマルチプレクサ(15)と、を備え、前記確認切替回路は、前記システム起動時に前記第一アナログマルチプレクサを前記第一接続状態から前記第二接続状態へ変更させてから前記確認処理を実行し、前記複数の補助記憶装置のうち少なくともマスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動していると確認されたときには前記切替処理を実行せずに前記第一アナログマルチプレクサを前記第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させ、一方、前記複数の補助記憶装置のうち少なくともマスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動すると確認されなかったときには前記切替処理を実行してから前記第一アナログマルチプレクサを前記第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させることを特徴とする。
【0016】
このように構成された本発明のコンピュータシステムによれば、次のように作用する。すなわち、確認切替回路が、システム起動時に第一アナログマルチプレクサを第一接続状態から第二接続状態へ変更させてから、複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認する確認処理を実行する。複数の補助記憶装置のうち少なくともマスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動していると確認されたときには、確認切替回路が、そのまま第一アナログマルチプレクサを第二接続状態から第一接続状態へ復帰させる。一方、複数の補助記憶装置のうち少なくともマスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動すると確認されなかったときには、確認切替回路が、マスターとして機能する補助記憶装置をスレーブとして機能させるとともにスレーブとして機能する補助記憶装置のうちの何れかをマスターとして機能させるようにそれらの役割を切り替える切替処理を実行してから第一アナログマルチプレクサを第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させる。
【0017】
つまり、システム起動時に、CPUの代わりに確認切替回路を一時的に接続して複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動するか確認し、マスターが故障時には他の補助記憶装置をマスターに設定するのである。
【0018】
したがって、コンピュータシステムのシステム起動時に、マスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動しないときにもブート処理を中止せずに継続させることができる。
ところで、上述の確認処理においては、補助記憶装置に送信したコマンドへの応答に基づき正常・異常を判断することが考えられる。具体的には、請求項2のように、複数の補助記憶装置それぞれは、外部からの要求に応じて自らが正常であるか否かを診断してその診断結果を示す信号を送信可能であり、確認切替回路が、確認処理を実行する際には、複数の補助記憶装置それぞれに対して正常に作動することを確認するための確認コマンドを送信し、確認コマンドに対する応答に基づき複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動するか否かを判断することが考えられる。
【0019】
なおこの場合、正常である旨の応答を送信した補助記憶装置を正常と判断することが考えられる。具体的には、請求項3のように、確認切替回路が、確認コマンドを送信してから所定時間が経過するまでに確認コマンドに対して正常である旨を示す応答を送信した補助記憶装置を正常であると判断するといった具合である。
【0020】
また、正常でない旨の応答を送信した補助記憶装置を正常でないと判断することが考えられる。具体的には、請求項4のように、確認切替回路が、確認コマンドを送信してから所定時間が経過するまでに確認コマンドに対して正常ではない旨を示す応答を送信した補助記憶装置を正常ではないと判断するといった具合である。
【0021】
また、応答を送信しない補助記憶装置を正常でないと判断することが考えられる。具体的には、請求項5のように、確認切替回路が、確認コマンドを送信してから所定時間が経過しても確認コマンドに対する応答を送信しなかった補助記憶装置を正常ではないと判断するといった具合である。
【0022】
このように構成すれば、補助記憶装置が正常であることをより確実に確認することができる。
ところで、上述の切替処理においては、マスターやスレーブといった役割を変更する指示信号を送信(又は、出力)することが考えられる。具体的には、請求項6のように、確認切替回路が、切替処理を実行する際には、マスターとして機能する補助記憶装置に対してスレーブとして機能するよう指示する第一指示信号を送信するとともに、スレーブとして機能する補助記憶装置の何れか一つに対してマスターとして機能するよう指示する第二指示信号を送信することが考えられる。
【0023】
なおこの場合、補助記憶装置における役割変更およびリセットの終了を確認するようにするとよい。具体的には、請求項7のように、複数の補助記憶装置それぞれは、外部からの要求に応じて自らの役割を切り替えてリセットを実行したのちに役割の切り替えおよびリセットが終了したことを示す信号を送信可能であり、確認切替回路が、第一指示信号および第二指示信号それぞれに対する応答を受信したら確認処理を再び実行することといった具合である。
【0024】
このように構成すれば、補助記憶装置における役割変更およびリセットの終了をより確実に確認することができる。
ところで、データ転送の遅延などが発生した場合、上述の確認処理や切換処理が終了する前に、システム起動時にCPUが複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認しようとするおそれがある。このような場合に、マスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動しないときには、CPUがそのマスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動しないと認識するためにシステムの再起動が必要となる。
【0025】
そこで、上述の確認処理や切換処理が終了する前に、システム起動時にCPUが複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認しようとした場合には、確認処理や切換処理が終了した後に、CPUに代わって、複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することの確認を行うように確認切替回路に要求することが考えられる。
【0026】
具体的には、上記課題を解決するためになされた請求項8に係るコンピュータシステムは、前記CPUは、システム起動時に前記複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認するために前記確認コマンドを送信可能であり、さらに、前記CPUと電気的に接続される際に、システム起動時に前記複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認するための確認コマンドを送信したか否かを監視する監視処理、および前記確認コマンドを送信したCPUに代わり、前記確認切替回路に対して前記確認コマンドを送信するよう要求する要求処理を実行可能な監視要求回路(19,21)と、前記CPUと前記第一アナログマルチプレクサとを電気的に接続させる第一接続状態から前記CPUと前記監視要求回路とを電気的に接続させる第二接続状態へ切り替え可能な第二アナログマルチプレクサ(17)と、を備え、前記監視要求回路は、システム起動時に前記第二アナログマルチプレクサを前記第一接続状態から前記第二接続状態へ変更させてから前記監視処理を実行し、前記確認切替回路による前記切替処理の実行が終了するまでに前記CPUが前記確認コマンドを送信しなかった場合には前記要求処理を実行せずに前記第二アナログマルチプレクサを前記第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させ、一方、前記確認切替回路による前記切替処理の実行が終了するまでに前記CPUが前記確認コマンドを送信した場合には前記切替処理の実行が終了した後に前記要求処理を実行してから前記第二アナログマルチプレクサを前記第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させることを特徴とする。
【0027】
このように構成された本発明のコンピュータシステムによれば、次のように作用する。すなわち、監視要求回路が、システム起動時に第二アナログマルチプレクサを第一接続状態から第二接続状態へ変更させてから、CPUが複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認するための確認コマンドを送信したか否かを監視する。確認切替回路による切替処理の実行が終了するまでにCPUが確認コマンドを送信しなかった場合には、監視要求回路が、そのまま第二アナログマルチプレクサを第二接続状態から第一接続状態へ復帰させる。一方、確認切替回路による切替処理の実行が終了するまでにCPUが確認コマンドを送信した場合には、監視要求回路が、切替処理の実行が終了した後に、CPUに代わって、確認切替回路に対して確認コマンドを送信するよう要求する要求処理を実行してから、第二アナログマルチプレクサを第二接続状態から第一接続状態へ復帰させる。
【0028】
つまり、上述の確認処理や切換処理が終了する前に、CPUが複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認しようとした場合には、確認処理や切換処理が終了した後に前記確認を行うように確認切替回路に要求するのである。
【0029】
したがって、上述の確認処理や切換処理が終了する前に、CPUが複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認しようとした場合において、マスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動しないときにも、ブート処理を中止せずに継続させることができる。
【0030】
なお、上述の補助記憶装置の具体例としては、HDDやCFカードが挙げられる。具体的には、請求項9のように、複数の補助記憶装置のうちの少なくとも何れか一つはハードディスクであり、当初はマスターとして機能するよう設定され、複数の補助記憶装置のうちの少なくとも何れか一つはCFカードであり、当初はスレーブとして機能するよう設定され、切替処理時には前記確認切替回路によって優先的にマスターとして機能するように設定されることが考えられる。
【0031】
このように構成すれば、コンピュータシステムのシステム起動時に、マスターとして機能する補助記憶装置としてのHDDが正常に作動しないときにも補助記憶装置としてのCFカードをマスターとして機能させることによりブート処理を中止せずに継続させることができる。
【0032】
なお、請求項10に示すように、請求項1〜請求項9の何れかに記載の確認切替回路として機能させるための各種処理手順は、コンピュータシステムに実行させるためのプログラムとして実現できる。また、請求項8または請求項9に記載の監視要求回路として機能させるための各種処理手順は、コンピュータシステムに実行させるためのプログラムとして実現できる。
【0033】
したがって、本発明は、プログラムの発明として実現できる。また、このようなプログラムの場合、例えば、FD、MO、DVD−ROM、CD−ROM、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、必要に応じてコンピュータにロードして起動することにより用いることができる。この他、ROMやバックアップRAMをコンピュータ読み取り可能な記録媒体として本プログラムを記録しておき、ROMあるいはバックアップRAMをコンピュータに組み込んで用いても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
[第一実施形態]
図1は、コンピュータシステム1の構成を示すハードブロック図である。
【0035】
[1.コンピュータシステム1の構成の説明]
図1に示すように、コンピュータシステム1は、パーソナルコンピュータ11(マザーボードに相当)と、ハードディスク/CFカード13と、アナログマルチプレクサ15と、アナログマルチプレクサ17と、Identify検知回路19と、制御マイコン21と、スイッチ回路23と、を備えている。なお、パーソナルコンピュータ11とアナログマルチプレクサ17とはA経路を介して電気的に接続され、アナログマルチプレクサ17とアナログマルチプレクサ15とはE経路を介して電気的に接続され、アナログマルチプレクサ15とハードディスク/CFカード13とはC経路を介して電気的に接続され、アナログマルチプレクサ15と制御マイコン21とはB経路を介して電気的に接続され、アナログマルチプレクサ17とIdentify検知回路19とはD経路を介して電気的に接続されている。また、これらA〜E経路すべてにはプルアップ抵抗が取り付けられている。
【0036】
[ハードディスク/CFカード13の構成の説明]
ハードディスク/CFカード13は、オペレーティングシステムプログラムおよびブートローダが格納され、それぞれがマスターまたはスレーブとして機能可能である。本実施形態では、初期状態として、ハードディスクがマスターに設定され、CFカード(コンパクトフラッシュ(登録商標))がスレーブに設定されている。なお、前記設定は、マスターとスレーブを自動設定するために、IDE装置におけるケーブルセレクト機能によって決められる。具体的には、ハードディスク/CFカード13は、入出力インターフェイスがIDE装置として機能し、ハードディスク側、及びCFカード側それぞれのCSEL(ケーブルセレクトとも言う)端子を約10KΩでプルアップし、パーソナルコンピュータ11又は制御マイコン21側で、前記ハードディスクのCSEL端子のレベルをローレベル(ショート)にすると、前記端子をローレベル(ショート)にされたハードディスクは、自身がマスターであると認識するので、前記ハードディスクがマスターとして設定され、一方、パーソナルコンピュータ11又は制御マイコン21側で、前記CFカードのCSEL端子のレベルをハイレベル(開放)にすると、前記端子をハイレベル(開放)にされたCFカードは、自身がスレーブであると認識するので、CFカードがスレーブとして設定される。
【0037】
なお、本実施例において、ハードディスク及びCFカードのケーブルセレクト端子をショートまたは開放にするスイッチ制御については、制御マイコン21から出力されるCS信号によって制御される。なお、このスイッチ制御については後述する。
【0038】
また、ハードディスク/CFカード13は、制御マイコン21からの要求(例えば、Identifyコマンド)に応じて自らが正常であるか否かを診断してその診断結果を示す返信信号(ステータス情報として、ステータス=50h:正常、ステータス51h:異常)を送信可能である。
【0039】
[パーソナルコンピュータ11の構成の説明]
パーソナルコンピュータ11は、図示しないCPUやROM、RAM、バスラインなどで構成され、各種処理を実行する機能を有する。また、パーソナルコンピュータ11は、A経路、E経路およびC経路を介してハードディスク/CFカード13と電気的に接続され、システム起動時にハードディスク/CFカード13それぞれが正常に作動することを確認した後に、マスターとして機能するハードディスクからブートローダを読み出して実行することでオペレーティングシステムプログラムをハードディスクから読み出し、その読み出したオペレーティングシステムプログラムを実行する。
【0040】
なお、パーソナルコンピュータ11は特許請求の範囲におけるCPUに該当する。
[アナログマルチプレクサ15の構成の説明]
アナログマルチプレクサ15は、C経路とE経路とを接続させてアナログマルチプレクサ17(パーソナルコンピュータ11)とハードディスク/CFカード13とを電気的に接続させる第一接続状態から、C経路とB経路とを接続させて制御マイコン21とハードディスク/CFカード13とを電気的に接続させる第二接続状態へ切り替え可能である。なお、アナログマルチプレクサ15は特許請求の範囲における第一アナログマルチプレクサに該当する。
【0041】
[アナログマルチプレクサ17の構成の説明]
アナログマルチプレクサ17は、A経路とE経路とを接続させてパーソナルコンピュータ11とアナログマルチプレクサ15(ハードディスク/CFカード13)を電気的に接続させる第一接続状態から、A経路とD経路とを接続させてパーソナルコンピュータ11とIdentify検知回路19とを電気的に接続させる第二接続状態へ切り替え可能である。なお、アナログマルチプレクサ17は特許請求の範囲における第二アナログマルチプレクサに該当する。
【0042】
[制御マイコン21の構成の説明]
図2は、制御マイコン21の構成を示すハードブロック図である。また、本実施形態における制御マイコン21の各端子の接続状態を図5に示す。
【0043】
なお、例えば、制御マイコン21としてマイクロチップ社PIC16F877(図2参照)なども利用できる。
図2に示すように、制御マイコン21は、ハードディスク/CFカード13と電気的に接続される際に、ハードディスク/CFカード13それぞれが正常に作動することを確認する確認処理を実行可能である。このとき、制御マイコン21は、ハードディスク/CFカード13に対して正常に作動することを確認するための確認コマンドを送信し、確認コマンドに対する応答に基づきハードディスク/CFカード13が正常に作動するか否かを判断する。より具体的には、制御マイコン21は、確認コマンドを送信してから所定時間が経過するまでに確認コマンドに対して正常である旨を示す応答を送信した補助記憶装置を正常であると判断し、確認コマンドを送信してから所定時間が経過するまでに確認コマンドに対して正常ではない旨を示す応答を送信した補助記憶装置を正常ではないと判断し、確認コマンドを送信してから所定時間が経過しても確認コマンドに対する応答を送信しなかった補助記憶装置を正常ではないと判断する。
【0044】
また、制御マイコン21は、マスターとして機能するハードディスクをスレーブとして機能させるとともにスレーブとして機能するCFカードをマスターとして機能させるようにそれらの役割を切り替える切替処理をスイッチ回路23(図8参照)に対して実行可能である。このとき、制御マイコン21は、マスターとして機能するハードディスクに対してスレーブとして機能するよう指示する第一指示信号(CSEL0をオープンにするためのCS)を送信するとともに、スレーブとして機能するCFカードに対してマスターとして機能するよう指示する第二指示信号(CSEL1をショートするために、スイッチ回路23を切り替えるためのCS)を送信する。
【0045】
なお、一般的なパーソナルコンピュータ11(例えば、IBM互換機のPC)などにおいては、CSEL(A経路のCSEL)は常にローレベルが送信(出力)されており、スイッチ回路23の入力側(図8(a)左側)は、A経路のCSELに接続されているため、出力側(図8(a)右側)においては、前記CSによってショートされた側のケーブルセレクト端子のIDE装置は、ケーブルセレクト端子がローレベルとなってマスターとして機能する。よって、CSによってCSEL0がショートされ、CSEL1がオープンのときは、ハードディスクはマスターとして機能し、CFカードはスレーブとして機能する。また、同様に、CSによってCSEL1がショートされ、CSEL0がオープンのときは、ハードディスクはスレーブとして機能し、CFカードはマスターとして機能する。
【0046】
また、制御マイコン21は、システム起動時などに、「コントロール1」の設定内容を変更することで、第一接続状態にあるアナログマルチプレクサ15を第二接続状態へ変更させたり第一接続状態に復帰させたりする。また、制御マイコン21は、「コントロール2」の設定内容を変更することで、第一接続状態にあるアナログマルチプレクサ17を第二接続状態へ変更させたり第一接続状態に復帰させたりする。
【0047】
また、制御マイコン21は、システム起動時にアナログマルチプレクサ15を第一接続状態から第二接続状態へ変更させてから(図中のコントロール1)、確認処理を実行する。このとき、マスターとして機能するハードディスクが正常に作動していると確認されたときには、制御マイコン21は、切替処理を実行せずにアナログマルチプレクサ15を第二接続状態から第一接続状態へ復帰させる(図中のコントロール1)。一方、マスターとして機能するハードディスクが正常に作動すると確認されなかったときには、制御マイコン21は、切替処理を実行してからアナログマルチプレクサ15を第二接続状態から第一接続状態へ復帰させる(図中のコントロール1)。
【0048】
また、制御マイコン21は、システム起動時にアナログマルチプレクサ17を第一接続状態から第二接続状態へ変更させてから(図中のコントロール2)、監視処理を実行する。このとき、当該制御マイコン21による切替処理の実行が終了するまでにパーソナルコンピュータ11が確認コマンドを送信しなかった場合には、制御マイコン21が、要求処理を実行しない。なおこのとき、制御マイコン21がアナログマルチプレクサ17を第二接続状態から第一接続状態へ復帰させる(図中のコントロール2)。一方、制御マイコン21による切替処理の実行が終了するまでにパーソナルコンピュータ11が確認コマンドを送信した場合には、制御マイコン21が、切替処理を実行する。なおこのとき、要求処理の終了後に、制御マイコン21が、アナログマルチプレクサ17を第二接続状態から第一接続状態へ復帰させる(図中のコントロール2)。
【0049】
なお、制御マイコン21は特許請求の範囲における確認切替回路および監視要求回路に該当する。
[Identify検知回路19の構成の説明]
図3は、Identify検知回路19の構成を示すハードブロック図である。 Identify検知回路19は、パーソナルコンピュータ11と電気的に接続される際に、システム起動時にハードディスク/CFカード13それぞれが正常に作動することを確認するための確認コマンド(Iedentifyコマンド)をパーソナルコンピュータ11が送信したか否かを監視する監視処理を実行可能である。また、Identify検知回路19は、制御マイコン21に対して前記確認コマンドをCPUに代わって再度送信するよう要求する要求処理を実行可能である。
【0050】
なお、本実施例においては、特許請求の範囲における「監視要求回路」のうち、確認コマンド(Identify)の検知までの処理を上記Identify検知回路19(図3参照)で行い、前記検知した確認コマンドをIdentify検知信号として制御マイコン21の5番ピン(図2参照)に通知する。そして、監視処理(図5:S145相当)と、要求処理(S150相当)については、制御マイコン21が実行する。
【0051】
[2.確認切替処理の説明]
以下に、制御マイコン21により実行される確認切替処理の処理手順を図5のフローチャートおよび図4(a)に基づいて説明する。なお、図4(a)は確認切替処理を説明する説明図(1)である。
【0052】
この確認切替処理は、コンピュータシステム1が起動する際に実行される。
まず、S105では、制御マイコン21の初期設定を行う。具体的には、制御マイコン21の各ポートを目的に応じて入出力設定を行う。
【0053】
続くS110では、「コントロール1」をB経路に設定するとともに、「コントロール2」をD経路に設定する。また、ハードディスクをマスターに設定するために、CSによって、スイッチ回路23のCSEL0のレベルをローレベル(ショート)に設定するとともに、CFカードをスレーブに設定するために、CSによって、CSEL1のレベルをハイレベル(オープン)に設定する。
【0054】
続くS115では、ハードディスク/CFカード13にリセットを指示する。このことにより、RESETが「L」から「H」となる。
続くS120では、Identifyコマンド送信サブルーチンを実行する。なお、Identifyコマンド送信サブルーチンについては後述する。
【0055】
続くS125では、初期化完了検知サブルーチンを実行する。なお、初期化完了検知サブルーチンについては後述する。
続くS130では、初期化完了フラグの値が数値「1」であるか否かを判断する。初期化完了フラグの値が数値「1」である場合には(S130:YES)、マスターが正常に作動すると判断して、後述するS145に移行する。一方、初期化完了フラグの値が数値「1」ではない場合には(S130:NO)、マスターが正常に作動しないと判断して、S135に移行する。
【0056】
S135では、マスターとスレーブとを入れ替える切替処理を実行し、ハードディスクをスレーブに設定するとともにCFカードをマスターに設定する。
続くS140では、ハードディスク/CFカード13にリセットを指示する。このことにより、RESETが「L」から「H」となる。そして、S145に移行する。
【0057】
S145では、Identify検知フラグの値が数値「1」であるか否かを判断する。Identify検知フラグの値が数値「1」である場合には(S145:YES)、パーソナルコンピュータ11が確認コマンドを既に送信したと判断し、S150に移行する。一方、Identify検知フラグの値が数値「1」ではない場合には(S145:NO)、パーソナルコンピュータ11が確認コマンドを未だ送信していないと判断し、S150を実行せずに、後述するS155に移行する。
【0058】
S150では、Identify送信サブルーチンを実行する。なお、Identifyコマンド送信サブルーチンについては後述する。そして、S155に移行する。
S155では、「コントロール1」をC経路に設定するとともに、「コントロール2」をE経路に設定する。
【0059】
続くS160では、パーソナルコンピュータ11の電源状態がオフであるか否かを判断する。パーソナルコンピュータ11の電源状態がオフではなくオンである場合には(S160:NO)、S160を繰り返し実行することでパーソナルコンピュータ11の電源状態がオフとなるまで待機する。一方、パーソナルコンピュータ11の電源状態がオフである場合には(S160:YES)、本処理を終了する。
【0060】
[2.1.Identify送信サブルーチンの説明]
以下に、制御マイコン21により実行されるIdentify送信サブルーチンの処理手順を図6のフローチャートおよび図4(b)に基づいて説明する。なお、図4(b)は確認切替処理を説明する説明図(2)である。
【0061】
このIdentify送信サブルーチンは確認切替処理のサブルーチンであり、確認切替処理のS120またはS150に移行した際に実行される。
まず、S205では、デバイスヘッドレジスタにこれから送信するコマンドがマスターが対象であることを、通知するための値として「00」を書き込む。このとき、CS:10b、DA:110b、DD0−DD7:00hを出力する。なお、この「00h」によって、ハードディスクやCFカードなどの各IDE装置は、この後に続くコマンドはマスターが対象であることを認識することとなる。
【0062】
続くS210では、デバイスヘッドレジスタに「00」を書き込んでから、アドレスセットアップ時間としての70nsが経過するまで待機し(S210:NO)、経過したら(S210:YES)、S215に移行する。
【0063】
S215では、Writeストローブ(DIOW−)に「L」を出力する。
続くS220では、Writeストローブ(DIOW−)に「L」を出力してから、Writeストローブパルス幅としての165nsが経過するまで待機し(S220:NO)、経過したら(S220:YES)、S225に移行する。
【0064】
S225では、Writeストローブ(DIOW−)に「H」を出力する。
続くS230では、Identifyコマンド(ECh)を書き込む。このとき、CS:10b、DA:111b、DD0−DD7:EChを出力する。なお、00hに続くEChによって、マスターはIdentifyコマンドに対する応答を要求されていることを認識する。
【0065】
続くS235では、Identifyコマンドを書き込んでから、アドレスセットアップ時間としての70nsが経過するまで待機し(S235:NO)、経過したら(S235:YES)、S240に移行する。
【0066】
S240では、Writeストローブ(DIOW−)に「L」を出力する。
続くS245では、Writeストローブ(DIOW−)に「L」を出力してから、Writeストローブパルス幅としての165nsが経過するまで待機し(S245:NO)、経過したら(S245:YES)、S250に移行する。
【0067】
S250では、Writeストローブ(DIOW−)に「H」を出力する。
なお、上述のS205〜S240によって、マスターに対してIdetifyコマンドが、IDEバスC上に送信される。
【0068】
続くS255では、RB0−7(DD0−DD7):FFhを出力する。なお、FFhはポートを以後Hレベルに固定するためである。
そして、本サブルーチンを終了する。
【0069】
[2.2.初期化完了検知サブルーチンの説明]
以下に、制御マイコン21により実行される初期化完了検知サブルーチンの処理手順を図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0070】
この初期化完了検知サブルーチンは確認切替処理のサブルーチンであり、確認切替処理のS125に移行した際に実行される。
まず、S305では、変数「L」の値を数値「0」に設定する。
【0071】
続くS310では、ステータスレジスタを、CS:10b、DA:111b、RB0−7(DD0−DD7):FFhに設定する。なお、FFhはポートを最初はHレベルに固定するためである。
【0072】
続くS315では、ステータスレジスタを設定してから、アドレスセットアップ時間としての70nsが経過するまで待機し(S315:NO)、経過したら(S315:YES)、S320に移行する。
【0073】
S320では、Readストローブ(DIOR−)に「L」を出力する。
続くS325では、IORDYが「L」になったか否かを判断する。IORDYが「L」になるまで待機し(S325:NO)、IORDYが「L」になったら(S325:YES)、S330に移行する。なお、IORDYが「L」になる前にタイムアウトした場合には後述するS335に移行する。なお、タイムアウト時間については、Identify検知回路19による処理時間よりも長く設定されている。
【0074】
S330では、Identifyコマンドに対するマスターから応答であるステータス情報のデータ(RD0−7)をリードし、後述するS340に移行する。
S335では、データをFFhとし、S340に移行する。なお、FFhとするのは、S345での数値を正常に読み取るため、論理を全てHレベルとするためである。
【0075】
S340では、Readストローブ(DIOR−)に「H」を出力する。
続くS345では、データ(RD0−7)の値が「5*h」(*は0か1)であるか否かを判断する。ここでは、データ(RD0−7)の値が「50h」である場合にはマスターが自身の初期化処理が終了したと判断して(S345:YES)、S350へ移行する。一方、データ(RD0−7)の値が「51h」である場合には、マスターが自身の初期化処理を終了しなかったとして(S345:NO)、後述するS360に移行する。
【0076】
S350では、データエラービットD0の値が数値「0」であるか否かを判断する。データエラービットD0の値が数値「0」である場合には(S350:YES)、マスター(ハードディスク/CFカード13)の初期化が正常に完了したと判断して、S355に移行する。一方、データエラービットD0の値が数値「0」ではない場合には(S350:NO)、マスター(ハードディスク/CFカード13)の初期化は行われたが、正常に完了しなかった、つまり故障している可能性があると判断して、後述するS375に移行する。
【0077】
S355では、初期化完了フラグに数値「1」を設定する。なお、数値「1」は完了を意味する。そして、本サブルーチンを終了する。
S360では、100ms経過するまで待機し(S360:NO)、100ms経過したら(S360:YES)、S365に移行する。
【0078】
S365では、繰り返し回数「L」の値をインクリメントする。
続くS370では、繰り返し回数「L」の値が数値「150」であるか否かを判断する。なお、繰り返し回数「L」の値がインクリメントされるごとに100msが経過するので、150回で15秒が経過することになる。繰り返し回数「L」の値が数値「150」ではない場合には(S370:NO)、上述のS320に移行する。一方、繰り返し回数「L」の値が数値「150」である場合には(S370:YES)、S375に移行する。
【0079】
S375では、初期化完了フラグに数値「0」を設定する。なお、数値「0」は失敗を意味する。そして、本サブルーチンを終了する。
[3.効果]
(1)このように第一実施形態のコンピュータシステム1によれば、次のように作用する。すなわち、制御マイコン21が、システム起動時にアナログマルチプレクサ15を第一接続状態から第二接続状態へ変更させてから、ハードディスク/CFカード13が正常に作動することを確認する確認処理を実行する。マスターとして機能するハードディスクが正常に作動していると確認されたときには、制御マイコン21が、そのままアナログマルチプレクサ15を第二接続状態から第一接続状態へ復帰させる。一方、ハードディスクが正常に作動すると確認されなかったときには、制御マイコン21が、ハードディスクをスレーブとして機能させるとともに、スレーブとして機能するCFカード13をマスターとして機能させるようにそれらの役割を切り替える切替処理を実行してからアナログマルチプレクサ15を第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させる。
【0080】
つまり、システム起動時に、パーソナルコンピュータ11の代わりに制御マイコン21を一時的に接続してハードディスク/CFカード13が正常に作動するか確認し、マスターが故障時には他の補助記憶装置をマスターに設定するのである。
【0081】
したがって、コンピュータシステム1のシステム起動時に、マスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動しないときにもブート処理を中止せずに継続させることができる。
【0082】
(2)また、第一実施形態のコンピュータシステム1によれば、次のように作用する。すなわち、制御マイコン21が、システム起動時にアナログマルチプレクサ17を第一接続状態から第二接続状態へ変更させてから、パーソナルコンピュータ11がハードディスク/CFカード13が正常に作動することを確認するための確認コマンドを送信したか否かを監視する。制御マイコン21による切替処理の実行が終了するまでにパーソナルコンピュータ11が確認コマンドを送信しなかった場合には、制御マイコン21が、要求処理を実行しない。なおこのとき、制御マイコン21がそのままアナログマルチプレクサ17を第二接続状態から第一接続状態へ復帰させる。一方、制御マイコン21による切替処理の実行が終了するまでにパーソナルコンピュータ11が確認コマンドを送信した場合には、制御マイコン21が切替処理の実行が終了した後に、制御マイコン21が、ハードディスク/CFカード13に対して正常に作動することを確認するコマンド(Identify)を送信する。その後、制御マイコン21が、アナログマルチプレクサ17を第二接続状態から第一接続状態へ復帰させる。
【0083】
つまり、上述の確認処理や切換処理が終了する前に、パーソナルコンピュータ11がマスターが正常に作動することを確認しようとした場合には、確認処理や切換処理が終了した後に、マスターに対して、制御マイコン21がパーソナルコンピュータ11に代わって、正常に作動することを確認するコマンド(Identify)を送信し、正常に機能するマスターが、パーソナルコンピュータ11に対してマスターが正常に動作することを返信することで、前記確認が行えるようにするのである。
【0084】
したがって、上述の確認処理や切換処理が終了する前に、パーソナルコンピュータ11がハードディスク/CFカード13が正常に作動することを確認しようとした場合において、マスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動しないときにも、ブート処理を中止せずに継続させることができる。
【0085】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
【0086】
(1)上記実施形態では、補助記憶装置が二つ存在し、一方が当初マスターとして機能するハードディスクであり、他方が当初スレーブとして機能するCFカードであるが、これには限られず、例えば、ハードディスクが当初スレーブとして機能し、CFカードが当初マスターとして機能するように設定してもよい。また、3つ以上の補助記憶装置を備え、そのうちの一つがマスターとして機能し、他の補助記憶装置がスレーブとして機能するようにしてもよい。
【0087】
(2)上記実施形態では、制御マイコン21が特許請求の範囲における確認切替回路の機能および監視要求回路の機能を実現するよう構成されているが、これには限られず、確認切替回路の機能を実現する構成と監視要求回路の機能を実現する構成とを別々に備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】コンピュータシステムの構成を示すハードブロック図である。
【図2】制御マイコンの構成を示すハードブロック図である。
【図3】Identify検知回路の構成を示すハードブロック図である。
【図4】(a)は確認切替処理を説明する説明図(1)であり、(b)は確認切替処理を説明する説明図(2)である。
【図5】確認切替処理を示すフローチャートである。
【図6】Identifyコマンド送信サブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】初期化完了検知サブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】スイッチ回路の構成を示すハードブロック図である。
【符号の説明】
【0089】
1…コンピュータシステム、11…パーソナルコンピュータ、13…ハードディスク/CFカード、15,17…アナログマルチプレクサ、19…Identify検知回路、21…制御マイコン、23…スイッチ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレーティングシステムプログラムおよび前記オペレーティングシステムプログラムをロードするためのブートローダがそれぞれ格納され、それぞれがマスターまたはスレーブとして機能可能な複数の補助記憶装置と、
前記複数の補助記憶装置と電気的に接続され、システム起動時に前記複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認した後に、前記複数の補助記憶装置のうちのマスターとして機能する補助記憶装置から前記ブートローダを読み出して実行することで前記オペレーティングシステムプログラムを読み出し、その読み出したオペレーティングシステムプログラムを実行するCPUと、
前記複数の補助記憶装置と電気的に接続される際に、前記複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認する確認処理、および前記複数の補助記憶装置のうちのマスターとして機能する補助記憶装置をスレーブとして機能させるとともに前記複数の補助記憶装置のうちスレーブとして機能する補助記憶装置のうちの何れかをマスターとして機能させるようにそれらの役割を切り替える切替処理を実行可能な確認切替回路と、
前記CPUと前記複数の補助記憶装置とを電気的に接続させる第一接続状態から前記確認切替回路と前記複数の補助記憶装置とを電気的に接続させる第二接続状態へ切り替え可能な第一アナログマルチプレクサと、
を備え、
前記確認切替回路は、システム起動時に前記第一アナログマルチプレクサを前記第一接続状態から前記第二接続状態へ変更させてから前記確認処理を実行し、前記複数の補助記憶装置のうち少なくともマスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動していると確認されたときには前記切替処理を実行せずに前記第一アナログマルチプレクサを前記第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させ、一方、前記複数の補助記憶装置のうち少なくともマスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動すると確認されなかったときには前記切替処理を実行してから前記第一アナログマルチプレクサを前記第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させること
を特徴とするコンピュータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のコンピュータシステムにおいて、
前記複数の補助記憶装置それぞれは、外部からの要求に応じて自らが正常であるか否かを診断してその診断結果を示す信号を送信可能であり、
前記確認切替回路は、前記確認処理を実行する際には、前記複数の補助記憶装置それぞれに対して正常に作動することを確認するための確認コマンドを送信し、前記確認コマンドに対する応答に基づき前記複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動するか否かを判断することを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のコンピュータシステムにおいて、
前記確認切替回路は、前記確認コマンドを送信してから所定時間が経過するまでに前記確認コマンドに対して正常である旨を示す応答を送信した補助記憶装置を正常であると判断することを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のコンピュータシステムにおいて、
前記確認切替回路は、前記確認コマンドを送信してから所定時間が経過するまでに前記確認コマンドに対して正常ではない旨を示す応答を送信した補助記憶装置を正常ではないと判断することを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項5】
請求項2〜請求項4の何れかに記載のコンピュータシステムにおいて、
前記確認切替回路は、前記確認コマンドを送信してから所定時間が経過しても前記確認コマンドに対する応答を送信しなかった補助記憶装置を正常ではないと判断することを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載のコンピュータシステムにおいて、
前記確認切替回路は、前記切替処理を実行する際には、マスターとして機能する補助記憶装置に対してスレーブとして機能するよう指示する第一指示信号を送信するとともに、スレーブとして機能する補助記憶装置の何れか一つに対してマスターとして機能するよう指示する第二指示信号を送信することを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のコンピュータシステムにおいて、
前記複数の補助記憶装置それぞれは、外部からの要求に応じて自らの役割を切り替えてリセットを実行したのちに役割の切り替えおよびリセットが終了したことを示す信号を送信可能であり、
前記確認切替回路は、前記第一指示信号および前記第二指示信号それぞれに対する応答を受信したら前記確認処理を再び実行すること
を特徴とするコンピュータシステム。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載のコンピュータシステムにおいて、
前記CPUは、システム起動時に前記複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認するために前記確認コマンドを送信可能であり、
さらに、
前記CPUと電気的に接続される際に、システム起動時に前記複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認するための確認コマンドを送信したか否かを監視する監視処理、および前記確認コマンドを送信したCPUに代わり、前記確認切替回路に対して前記確認コマンドを送信するよう要求する要求処理を実行可能な監視要求回路と、
前記CPUと前記第一アナログマルチプレクサとを電気的に接続させる第一接続状態から前記CPUと前記監視要求回路とを電気的に接続させる第二接続状態へ切り替え可能な第二アナログマルチプレクサと、を備え、
前記監視要求回路は、システム起動時に前記第二アナログマルチプレクサを前記第一接続状態から前記第二接続状態へ変更させてから前記監視処理を実行し、前記確認切替回路による前記切替処理の実行が終了するまでに前記CPUが前記確認コマンドを送信しなかった場合には前記要求処理を実行せずに前記第二アナログマルチプレクサを前記第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させ、一方、前記確認切替回路による前記切替処理の実行が終了するまでに前記CPUが前記確認コマンドを送信した場合には前記切替処理の実行が終了した後に前記要求処理を実行してから前記第二アナログマルチプレクサを前記第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させること
を特徴とするコンピュータシステム。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れかに記載のコンピュータシステムにおいて、
前記複数の補助記憶装置のうちの少なくとも何れか一つはハードディスクであり、当初はマスターとして機能するよう設定され、
前記複数の補助記憶装置のうちの少なくとも何れか一つはCFカードであり、当初はスレーブとして機能するよう設定され、前記切替処理時には前記確認切替回路によって優先的にマスターとして機能するように設定されること
を特徴とするコンピュータシステム。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れかに記載の確認切替回路として機能させるための各種処理手順、または請求項8または請求項9に記載の監視要求回路として機能させるための各種処理手順をコンピュータシステムに実行させるためのプログラム。
【請求項11】
システム起動時に、オペレーティングシステムプログラムおよび前記オペレーティングシステムプログラムをロードするためのブートローダがそれぞれ格納され、それぞれがマスターまたはスレーブとして機能可能な複数の補助記憶装置と、システム起動時に前記複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認した後に、前記複数の補助記憶装置のうちのマスターとして機能する補助記憶装置から前記ブートローダを読み出して実行することで前記オペレーティングシステムプログラムを読み出し、その読み出したオペレーティングシステムプログラムを実行するCPUとが電気的に接続する第一接続状態から、前記複数の補助記憶装置と前記CPUとが電気的に接続しない第二接続状態へ変更させてから、前記複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認する確認処理を実行し、
前記複数の補助記憶装置のうち少なくともマスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動していると確認されたときには前記第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させ、一方、前記複数の補助記憶装置のうち少なくともマスターとして機能する補助記憶装置が正常に作動すると確認されなかったときには、前記複数の補助記憶装置のうちのマスターとして機能する補助記憶装置をスレーブとして機能させるとともに前記複数の補助記憶装置のうちスレーブとして機能する補助記憶装置のうちの何れかをマスターとして機能させるようにそれらの役割を切り替える切替処理を実行してから、前記第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させること
を特徴とするコンピュータシステムのシステム起動方法。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータシステムのシステム起動方法において、
前記確認処理を実行する際には、前記複数の補助記憶装置それぞれに対して正常に作動することを確認するための確認コマンドを送信し、前記確認コマンドに対する応答に基づき前記複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動するか否かを判断することを特徴とするコンピュータシステムのシステム起動方法。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータシステムのシステム起動方法において、
前記確認コマンドを送信してから所定時間が経過するまでに前記確認コマンドに対して正常である旨を示す応答を送信した補助記憶装置を正常であると判断することを特徴とするコンピュータシステムのシステム起動方法。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載のコンピュータシステムのシステム起動方法において、
前記確認コマンドを送信してから所定時間が経過するまでに前記確認コマンドに対して正常ではない旨を示す応答を送信した補助記憶装置を正常ではないと判断することを特徴とするコンピュータシステムのシステム起動方法。
【請求項15】
請求項12〜請求項14の何れかに記載のコンピュータシステムのシステム起動方法において、
前記確認コマンドを送信してから所定時間が経過しても前記確認コマンドに対する応答を送信しなかった補助記憶装置を正常ではないと判断することを特徴とするコンピュータシステムのシステム起動方法。
【請求項16】
請求項11〜請求項15の何れかに記載のコンピュータシステムのシステム起動方法において、
前記切替処理を実行する際には、マスターとして機能する補助記憶装置に対してスレーブとして機能するよう指示する第一指示信号を送信するとともに、スレーブとして機能する補助記憶装置の何れか一つに対してマスターとして機能するよう指示する第二指示信号を送信することを特徴とするコンピュータシステムのシステム起動方法。
【請求項17】
請求項11〜請求項16の何れかに記載のコンピュータシステムのシステム起動方法において、
前記第一接続状態から前記第二接続状態に変更した際に、前記CPUが前記複数の補助記憶装置それぞれが正常に作動することを確認するための確認コマンドを送信したか否かを監視する監視処理を実行し、
前記切替処理の実行が終了するまでに前記CPUが前記確認コマンドを送信しなかった場合にはそのまま前記第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させ、一方、前記切替処理の実行が終了するまでに前記CPUが前記確認コマンドを送信した場合には、前記切替処理の実行が終了した後に、前記CPUに代わり、前記確認コマンドを送信するよう要求する要求処理を実行してから、前記第二接続状態から前記第一接続状態へ復帰させること
を特徴とするコンピュータシステムのシステム起動方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【公開番号】特開2009−271582(P2009−271582A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118752(P2008−118752)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】