コンピュータユニットのシミュレーションシステム及びシミュレーション用外部回路
【課題】この発明は、排気ガスセンサの出力に基づいて内燃機関を制御するエンジンECUのデバッグに用いるシミュレーションシステムに関し、排気ガスセンサの実物を用いることなく正確なシミュレーションを実現することを目的とする。
【解決手段】エンジンECU10は、空燃比センサ端子から入力端子16へ、インピーダンス検出信号として交流電圧を供給する。入力端子16に定常的に表れる空燃比信号A/Fを電圧加算器24及び電圧減算器26に供給する。電圧加算器24及び電圧減算器26は、正側及び負側の判定値を生成する。第1比較器28及び第2比較器30は入力信号の変位からインピーダンス信号の発生を検知する。電圧切換器32はHILS14からA/F、Hi、Loの供給を受け、インピーダンス検出信号の発生を検知した場合に出力信号をA/FからHi及びLoに切り替える。
【解決手段】エンジンECU10は、空燃比センサ端子から入力端子16へ、インピーダンス検出信号として交流電圧を供給する。入力端子16に定常的に表れる空燃比信号A/Fを電圧加算器24及び電圧減算器26に供給する。電圧加算器24及び電圧減算器26は、正側及び負側の判定値を生成する。第1比較器28及び第2比較器30は入力信号の変位からインピーダンス信号の発生を検知する。電圧切換器32はHILS14からA/F、Hi、Loの供給を受け、インピーダンス検出信号の発生を検知した場合に出力信号をA/FからHi及びLoに切り替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンピュータユニットのシミュレーションシステム及びシミュレーション用外部回路に係り、特に、排気ガスセンサからの情報を得て内燃機関の状態を制御するコンピュータユニットのデバッグを容易化するうえで有効なシミュレーションシステム及びシミュレーション用外部回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2006−64411号公報に開示されているように、内燃機関を制御するためのECU(Electronic Control Unit)をHILS(Hardware In the Loop Simulator)に接続して動作させる手法が知られている。HILSは、ECUとの間で情報を授受しながら、内燃機関の動作を模擬することができる。このようなシミュレーションによれば、内燃機関の実機を用いずにECUの動作を確認することができるため、例えば、開発過程におけるECUのデバッグを容易化することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−64411号公報
【特許文献2】特開2004−93400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関の燃料噴射に関しては、空燃比フィードバック制御が一般的に行われている。空燃比フィードバック制御は、内燃機関の排気通路に配置した排気ガスセンサの出力に基づいて行われる。排気ガスセンサは、排気通路に流出してくる排気ガスの空燃比に応じた空燃比信号を出力する。空燃比フィードバック制御では、その空燃比信号に基づいて、内燃機関から排出されるガス中の空燃比が目標空燃比に近づくように燃料噴射量を微少に調整する。
【0005】
内燃機関を制御するためのECU(以下、「エンジンECU」と称す)に、排気ガスセンサが接続されている場合は、排気ガスセンサからエンジンECUに、空燃比信号が定常的に供給される。また、エンジンECUは、排気ガスセンサに対して、定期的に、インピーダンス検出信号を印加する。そして、エンジンECUは、その結果センサ出力に生じた変化に基づいて、排気ガスセンサのインピーダンスを推定する。
【0006】
実機に接続されたエンジンECUの動作を正しく模擬するためには、排気ガスセンサから発せられるべき信号を、シミュレーションの過程で、エンジンECUに正しく供給することが必要である。この要求を満たす一つの手法としては、排気ガスセンサの動作をHILS等のシミュレータで再現させることが考えられる。
【0007】
HILS等のシミュレータは、内燃機関の動作を模擬する過程で、排気ガス中の空燃比を算出することができる。従って、排気ガスセンサの機能のうち、空燃比信号を生成する機能は、シミュレータにより再現することができる。しかしながら、エンジンECUがエンジンECUにインピーダンス検出信号を印加した後、その影響がセンサ出力に表れるまでの時間は極めて短時間である。そして、HILS等のシミュレータは、そのような短時間でセンサ出力を変化させるだけの応答性を有していない。このため、排気ガスセンサを用いずに、その動作をシミュレーションにより模擬することは、必ずしも容易ではない。
【0008】
上記の要求の満たす手法としては、また、エンジンECUに、シミュレータと共に排気ガスセンサを接続してシミュレーションを行うことが考えられる。エンジンECUは、内燃機関の始動後、可能な限り速やかに排気ガスセンサを活性温度(700℃程度)に昇温させようとする。このため、排気ガスセンサを実際にエンジンECUに接続してシミュレーションを行う場合は、排気ガスセンサの温度を自由に設定して任意のシミュレーションを遂行することができない。また、この場合、700℃を超える排気ガスセンサの取り扱いに注意しながらシミュレーションを進めることが必要となる。更に、排気ガスセンサ自体が開発過程にあるような場合は、その開発が終わるまではエンジンECUのデバッグが進められないという事態も生ずる。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、排気ガスセンサの実物を用いることなく、エンジンECUの動作を正確に再現させることのできるコンピュータユニットのシミュレーションシステム及びシミュレーション用外部回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、コンピュータユニットのシミュレーションシステムであって、
内燃機関制御用のコンピュータユニットの排気ガスセンサ端子に接続される入力端子と、
前記入力端子に表れる定常信号を抽出する定常信号抽出器と、
前記定常信号から所定値だけシフトした判定信号を生成する判定信号生成器と、
前記入力端子の電位と前記判定信号とを比較する比較器と、
空燃比信号を生成する空燃比信号生成手段と、
インピーダンス対応信号を生成するインピーダンス対応信号生成手段と、
前記入力端子の電位が前記判定信号より前記定常信号側にある状況下では前記空燃比信号を前記入力端子に帰還させ、前記入力端子の電位が前記判定信号を挟んで前記定常信号の反対側にある状況下では前記インピーダンス対応信号を前記入力端子に帰還させる帰還電圧切換器と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記空燃比信号生成手段は前記空燃比信号として固定値を生成する信号生成器であり、
前記インピーダンス対応信号発生手段は前記インピーダンス対応信号として固定値を生成する信号生成器であることを特徴とする。
【0012】
また、第3の発明は、第1の発明において、前記空燃比信号生成手段は、前記コンピュータから発せられる信号に基づいて、当該信号を受けた場合に排気ガスセンサが発するべき空燃比信号を模擬する空燃比信号模擬手段を含むことを特徴とする。
【0013】
また、第4の発明は、第1又は第4の発明において、
前記コンピュータユニットから発せられる信号に基づいて、当該信号を受けた場合に実現されるべき排気ガスセンサのインピーダンスを模擬するインピーダンス模擬手段を備え、
前記インピーダンス対応信号生成手段は、模擬されたインピーダンスの値と、前記空燃比信号とに基づいて、前記インピーダンス対応信号を生成することを特徴とする。
【0014】
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記コンピュータユニットから発せられる信号に基づいて、当該信号を受けた場合に実現されるべき排気ガスセンサのインピーダンスを模擬するインピーダンス模擬手段と、
前記インピーダンスの模擬値に基づいて、前記判定信号の基礎となるインピーダンス反映信号を設定するインピーダンス反映信号設定手段とを備え、
前記判定信号生成器は、前記インピーダンス反映信号に基づいて前記判定信号を生成することを特徴とする。
【0015】
また、第6の発明は、コンピュータユニットのシミュレーション用外部回路であって、
内燃機関制御用のコンピュータユニットの排気ガスセンサ端子に接続される入力端子と、
前記入力端子に表れる定常信号を抽出する定常信号抽出器と、
前記定常信号からインピーダンス反映信号分だけシフトした判定信号を生成する判定信号生成器と、
前記入力端子の電位と前記判定信号とを比較する比較器と、
空燃比信号の提供を受けるための空燃比信号入力端子と、
インピーダンス対応信号の提供を受けるためのインピーダンス対応信号入力端子と、
前記入力端子の電位が前記判定信号より前記定常信号側にある状況下では前記空燃比信号入力端子の電位を前記入力端子に帰還させ、前記入力端子の電位が前記判定信号を挟んで前記定常信号の反対側にある状況下では前記インピーダンス対応信号入力端子の電位を前記入力端子に帰還させる帰還電圧切換器と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
また、第7の発明は、第6の発明において、前記インピーダンス反映信号の提供を受けるためのインピーダンス反映信号入力端子を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、通常の状況下では、帰還電圧切換器によって、空燃比信号が入力端子に戻される。内燃機関制御用のコンピュータユニット(エンジンECU)は、その信号、つまり、入力端子に定常的に表れている信号を取り込むことで空燃比を検知することができる。エンジンECUは、必要に応じて、上記の入力端子にインピーダンス検出信号を印加する。入力端子にインピーダンス検出信号が印加されると、そこに表れる電位は、判定信号と交差する程度に定常信号から乖離する。入力端子の電位が判定値と交差すると、帰還電圧切換器は、入力に戻す信号を、空燃比信号からインピーダンス対応信号に迅速に切り替える。インピーダンス検出信号の印加に応答して、入力端子の信号がこのように迅速に変化すると、エンジンECUは、正常にインピーダンスの検出処理を進めることができる。
【0018】
第2の発明によれば、入力端子に帰還させる空燃比信号とインピーダンス対応信号とが、何れも固定値とされる。この場合、シミュレーションシステムが実行する処理は、インピーダンス検出信号の入力を受けて、入力端子に戻す信号を空燃比信号(固定値)からインピーダンス対応信号(固定値)に切り替えることだけとなる。このため、本発明によれば、本格的なシミュレータ等を用いることなく、極めて簡単な構成で所望のシミュレーションシステムを実現することができる。
【0019】
第3の発明によれば、空燃比信号生成手段によって、排気ガスセンサが発するべき空燃比信号を模擬することができる。このため、本発明によれば、シミュレーションの過程において、エンジンECUを、正しい空燃比信号の供給を受けている状況下で動作させることができる。
【0020】
第4の発明によれば、エンジンECUから発せられる信号に基づいて排気ガスセンサのインピーダンスを模擬することができる。インピーダンス検出信号の印加時に、入力端子に表れる信号が、その定常値、つまり、空燃比信号からどの程度乖離するかは、排気ガスセンサのインピーダンスに応じても決定される。本発明によれば、インピーダンス対応信号を、空燃比信号と、インピーダンスの模擬値とに基づいて設定することができるため、シミュレーションの過程において、エンジンECUに対して、インピーダンスの模擬結果を正確に伝えることができる。
【0021】
第5の発明によれば、インピーダンス検出信号が印加されたか否かを判断するための判定信号に、インピーダンスの模擬結果を反映させることができる。入力端子に戻されるインピーダンス対応信号は、インピーダンスの模擬結果に応じて異なる値となる。その結果、シミュレーションの過程における入力端子の電位は、インピーダンスの模擬結果に応じて大きく変化する可能性がある。判定信号をインピーダンスの模擬結果に応じて変化させることとすれば、入力端子の電位変化に関わらず、インピーダンス検出信号が現実にエンジンECUから発せられている時期と比較器の比較結果とを正しく対応させることができる。このため、本発明によれば、エンジンECUの誤動作を生じさせることなく、インピーダンスの模擬範囲を大きく確保することができる。
【0022】
第6又は第7の発明によれば、空燃比信号の供給と、インピーダンス対応信号の供給とを外部から受けることにより、第1又は第5の発明と同様の機能を実現する外部回路を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1のシミュレーションシステムの構成を説明するための図である。図1に示すシステムは、エンジンECU(Electronic Control Unit)10を備えている。エンジンECU10は、内燃機関の制御、特に、内燃機関の燃料噴射量を制御するためのコンピュータユニットである。
【0024】
エンジンECU10は、現実には、内燃機関に搭載される種々のセンサ及びアクチュエータとの間で信号を授受しながら、燃料噴射量の制御を行う。具体的には、エンジンECU10には、例えば、エアフロメータ、回転数センサ、スロットルセンサ、アクセルセンサ、空燃比センサ等の種々のセンサ、及び、燃料噴射弁や電子スロットル等の種々のアクチュエータが接続される。
【0025】
図1に示すシステムは、エンジンECU10を、内燃機関の実機ではなく、シミュレータに接続して動作させるためのものである。このシステムは、シミュレーション用外部回路12と、HILS(Hardware In the Loop Simulator)14を備えている。シミュレーション用外部回路12は、エンジンECU10に接続される種々のセンサ及びアクチュエータのうち、特に空燃比センサの機能の一部を模擬するための回路である。また、HILS14は、エンジンECU10から発せられる種々の信号を受けて、内燃機関の動作を模擬するシミュレータである。
【0026】
シミュレーション用外部回路12は、入力端子16を備えている。入力端子16は、エンジンECU10の空燃比センサ端子に接続されている。空燃比センサ端子は、エンジンECU10が、空燃比センサとの接続のために備えている端子である。
【0027】
シミュレーション用外部回路12は、入力端子16と接続された第1及び第2のローパスフィルタ18,20を備えている。入力端子16には、後述するように、定常的には空燃比信号A/Fが表れる。エンジンECU10は、シミュレーションの過程において、その空燃比信号A/Fを、空燃比センサ端子から取り込むことができる。また、エンジンECU10は、必要に応じて、空燃比センサ端子から、インピーダンス検出信号を出力する。この信号が入力端子16に印加されると、入力端子16の電位は、一時的に定常値から乖離した値となる。
【0028】
第1ローパスフィルタ18は、インピーダンス検出信号の発生に起因して入力端子16に生ずる変動を通過させることができるように構成されたフィルタである。従って、第1ローパスフィルタ18の後段には、空燃比信号A/Fを定常値とし、インピーダンス検出信号の発生に合わせて一時的に変動する信号が表れる。以下、この信号を「入力信号」と称す。
【0029】
一方、第2ローパスフィルタ20は、インピーダンス検出信号の発生に起因する電位の変動をカットすることができるように構成されたフィルタである。従って、第2ローパスフィルタ20の後段には、インピーダンス検出信号の発生に関わらず、常に、ほぼ空燃比信号A/F信号と対応する電位が表れる。
【0030】
第2ローパスフィルタ20の後段には、バッファ22を介して、電圧加算器24と電圧減算器26が並列に配置されている。電圧加算器24は、前段から入力された電位に所定値αを加算した電位を生成する回路である。図1に示すシステムによれば、電圧加算器24は、空燃比信号A/Fの供給を受けて、A/Fより僅かに大きなA/F+αの電位を発生することができる。以下、この電位を「正側判定信号」と称す。電圧減算器26は、前段から入力された電位から所定値αを減算するための回路である。図1に示すシステムによれば、電圧減算器26は、空燃比信号A/Fの供給を受けて、A/Fより僅かに小さなA/F−αの電位を発生することができる。以下、この信号を「負側判定信号」と称す。
【0031】
電圧加算器24により生成される正側判定信号(A/F+α)は、第1ローパスフィルタ18を通過した入力信号と共に、第1比較器28に供給される。第1比較器28は、入力信号が正側判定信号を超えている場合に限ってH出力を発生する。このため、第1比較器28からは、入力信号が正側判定信号より空燃比信号A/F側に位置している間はL出力が発せられ、入力信号が、空燃比信号A/Fを超えている間だけH出力が発せられる。
【0032】
電圧減算器26により生成される負側判定信号(A/F−α)は、第1ローパスフィルタ18を通過した入力信号と共に、第2比較器30に供給される。第2比較器30は、入力信号が負側判定信号を下回っている場合に限りH出力を発生する。このため、第2比較器30からは、入力信号が負側判定信号より空燃比信号A/F側に位置している間はL出力が発せられ、入力信号が、空燃比信号A/Fより低い間だけH出力が発せられる。
【0033】
第1比較器28の出力、及び第2比較器30の出力は、電圧切換器32に供給されている。電圧切換器32には、HILS14から、空燃比信号A/Fと、正側インピーダンス対応信号Hiと、負側インピーダンス対応信号Loとが供給されている。電圧切換器32は、第1比較器28の出力及び第2比較器30の出力に基づいて、それら3つの信号の何れかを出力信号として選択する切換回路である。
【0034】
電圧切換器32は、具体的には、出力信号を、以下の規則に従って切り替える。
1.第1比較器の出力L、第2比較器の出力L:A/Fを出力
2.第1比較器の出力H、第2比較器の出力L:Loを出力
3.第1比較器の出力L、第2比較器の出力H:Hiを出力
【0035】
電圧切換器32の出力切換規則は、換言すると、以下のように表すことができる。
1.入力信号がほぼ空燃比信号A/Fと一致しているとき:A/Fを出力
2.入力信号が空燃比信号A/Fの正側に有意に乖離しているとき:Loを出力
3.入力信号が空燃比信号A/Fの負側に有意に乖離しているとき:Hiを出力
【0036】
電圧切換器32の出力は、波形遅延器34、電流増幅器36及び電流調整器38を介して入力端子16に戻される。従って、入力端子16の電位は、電圧切換器32が、A/F、Hi及びLoのうち、何れの信号を出力しているかに応じて変動する。
【0037】
ECU10が空燃比センサに接続されている場合は、インピーダンス検出信号の発生を受けて、空燃比センサを流れるセンサ電流、つまり、空燃比センサ端子を流れる電流が変化する。ECU10は、その電流の変化を電圧に変換して検知し、その結果に基づいてインピーダンスの推定を行う。これに対して、ECU10が、図1に示すシステムに組み込まれている場合は、空燃比センサ端子を流れる電流に、インピーダンス検出信号の発生に対応する変化は殆ど生じない。上述したインピーダンス対応信号Hi及びLoは、このような状況下で、ECU10が、擬似的に正常な電流変化を認識することができるような電位に設定されている。
【0038】
エンジンECU10からHILS14に対しては、図1に示すヒータ駆動信号の他、燃料噴射弁や電子スロットル等を駆動するための種々の信号が供給される。HILS14は、それらの信号を受けて内燃機関の運転を模擬し、その結果として各種のセンサ出力の模擬値を生成する。
【0039】
HILS14によって生成された各種センサ出力の模擬値は、エンジンECU10に供給される。エンジンECU10は、それらの模擬値を受け取ることで、内燃機関の実機と接続されているのと同様の環境下で動作することができる。
【0040】
本実施形態のシステムは、特に、シミュレーション用外部回路12とHILS14とで、空燃比センサの機能を模擬する点に特徴を有している。空燃比センサは、内燃機関の排気通路に配置され、排気ガス中の空燃比に応じた出力を発するセンサである。空燃比センサは、700℃程度の活性温度に達することで正常に機能することができる。このため、空燃比センサには、センサ素子を加熱するためのヒータが内蔵されている。そして、エンジンECU10は、そのヒータを適当に発熱させるために、ヒータ駆動信号を出力する。シミュレーションの過程では、図1に示すように、ヒータ駆動信号は、空燃比センサではなくHILS14に供給される。
【0041】
[エンジンECUの動作]
(インピーダンスの検出)
次に、図2乃至図5を参照して、エンジンECU10の動作を説明する。図2は、エンジンECU10が、空燃比センサのインピーダンスを検出するために実行するルーチンのフローチャートである。エンジンECU10は、イグニッションスイッチがONとされている期間中、所定の間隔で図2に示すルーチンを繰り返し実行する。
【0042】
図2に示すルーチンが起動されると、エンジンECU10は、先ず、インピーダンス検出用信号を出力する(ステップ100)。所定の遅延時間の経過を待って(ステップ102)、エンジンECU10は、インピーダンス検出用電流又は電圧を回収する(ステップ104)。
【0043】
図3(A)は、エンジンECU10が発するインピーダンス検出信号の波形を示す。また、図3(B)は、エンジンECU10に空燃比センサが接続されている場合に、インピーダンス検出信号の発生に起因して、エンジンECU10に戻される正常な信号波形を示す。
【0044】
エンジンECU10は、図3(A)に示すように、インピーダンスを検出するべきタイミングにおいて、空燃比センサ端子の電位を、正側及び負側に掃引する。このようなインピーダンス検出信号が印加されると、空燃比センサには、そのインピーダンスに応じたセンサ電流が流れる。発生したセンサ電流の大きさ、つまり、空燃比センサのインピーダンスは、図3(B)に示す波形に反映される。従って、エンジンECU10は、インピーダンス検出信号を印加した結果として得られた信号の波形から、空燃比センサのインピーダンスを検知することができる。
【0045】
図2に示すルーチンでは、ステップ104の処理に続いて、回収したインピーダンス検出用電流又は電圧に基づいて、空燃比センサのインピーダンスが算出される(ステップ106)。次いで、算出されたインピーダンスが正常値の範囲内に収まっているかが判別される(ステップ108)。
【0046】
ステップ108では、より具体的には、インピーダンスの算出値が、活性領域に達しているか、及び、異常値でないかが判別される。空燃比センサの温度が活性領域(700℃程度)に達するまでは、空燃比センサは正しい出力を発しない。従って、この場合は、空燃比センサの出力を空燃比信号として取り込まないことが適切である。エンジンECU10は、この場合、空燃比信号A/Fを回収せず(ステップ110)、再びステップ100以降の処理を行う。
【0047】
ステップ104で回収されたインピーダンス検出用電流又は電圧が、センサの活性・不活性に関わらず異常な値であるような場合(例えば、全く変化が見られないような場合)は、ステップ106において、インピーダンスが異常値として算出される。この場合は、空燃比センサの異常が判定され、センサ異常を前提としたフェールセーフが開始される(ステップ110)。
【0048】
他方、空燃比センサが活性状態に達し、インピーダンスが十分に小さな値になっている状況下では、ステップ108において、インピーダンスの算出値が正常値であると判断される。この場合は、以後、空燃比信号A/Fの回収が許可される(ステップ112)。
【0049】
(空燃比フィードバック制御)
図4は、エンジンECU10が、空燃比信号A/Fに基づいて実行するA/Fフィードバック制御のルーチンのフローチャートである。図4に示すルーチンでは、先ず、空燃比信号A/Fの回収が許可されているか否かが判別される(ステップ120)。
【0050】
空燃比信号A/Fの回収が許可されていると判別された場合は、空燃比センサ端子に表れている定常的な値が空燃比信号A/Fとして取り込まれる(ステップ122)。次いで、空燃比信号A/Fに基づいて、空燃比フィードバック係数が算出される(ステップ124)。更に、算出した空燃比フィードバック係数に基づいて、個々の燃料噴射弁に与える燃料噴射時間が算出される(ステップ126)。上記の処理によれば、空燃比信号A/Fがリッチであるほど、燃料噴射時間は短縮され、また、空燃比信号A/Fがリーンであるほど燃料噴射時間が伸張される。
【0051】
個々の気筒の燃料噴射弁には、このようにして算出された燃料噴射時間が出力される(ステップ128)。その結果、上記の処理によれば、排気ガス中の空燃比が、精度良く目標空燃比近傍に維持される。
【0052】
上記ステップ120において、空燃比信号A/Fの回収が許可されていないと判断された場合は、空燃比がフィードバックされることなく、オープン制御の手法で燃料噴射時間が算出される(ステップ130)。この場合、エンジンECU10の内部では、当然に空燃比フィードバックのための処理は行われない。
【0053】
(ヒータ駆動制御)
空燃比センサは、上述した通り、活性温度に昇温されることにより適正に動作することができる。従って、空燃比センサを正しく動作させ続けるためには、その温度を活性温度に維持することが必要である。そこで、エンジンECU10は、空燃比センサの温度が活性温度に維持されるように、ヒータに対して適正な電力を供給する。
【0054】
図5は、上記の機能を実現するために、エンジンECU10が実行するヒータ駆動制御のためのフローチャートである。図5に示すルーチンでは、先ず、図2に示すルーチンにより算出したインピーダンスが読み込まれる(ステップ140)。
【0055】
次に、読み込んだインピーダンスに基づいて、ヒータの駆動デューティが算出される(ステップ142)。インピーダンス値は、空燃比センサの温度と相関を有しており、例えば、インピーダンスが高い場合は、空燃比センサが低温であると判断できる。ヒータには、空燃比センサが目標の活性温度に対して低温であるほど大きな熱を発生させることが望ましい。エンジンECU10には、このような観点から設定した駆動デューティのマップが記憶されている。ここでは、そのマップに従って、空燃比センサを迅速に加熱するためのデューティ比がインピーダンスに基づいて設定される。
【0056】
上記の処理が終わると、算出された駆動デューティが空燃比センサ端子から出力される(ステップ144)。図1に示すシステムでは、このようにして出力されるヒータ駆動信号が、HILS14に供給される。
【0057】
[HILSの動作]
次に、図6を参照して、HILS14の動作について説明する。図6は、本実施形態のシステムにおいて、HILS14の内部で実行される処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【0058】
図6に示すように、HILS14は、シミュレーションの過程において、先ず、内燃機関の運転状態に関わる各種のパラメータを取得する(ステップ150)。具体的には、ここでは、エンジンECU10から供給される各種アクチュエータへの駆動信号や、HILS14の内部で算出されている各種のセンサ出力等が読み込まれる。
【0059】
次に、取得したパラメータに基づいて、内燃機関の運転状態が模擬される(ステップ152)。HILS14は、この模擬の一部として、内燃機関から排出されるガス中の空燃比、つまり、空燃比センサの出力を模擬する。図1に示すシステムでは、その模擬値が、空燃比信号A/Fとしてシミュレーション用外部回路12に出力される。
【0060】
HILS14は、更に、エンジンECU10から供給されるヒータ駆動信号に基づいて、空燃比センサの温度を模擬する(ステップ154)。空燃比センサの温度は、主として排気ガス及びヒータから空燃比センサに与えられた熱量により決定される。HILS14は、内燃機関の状態を模擬することができるため、排気ガスから空燃比センサに与えられる熱量も模擬することができる。更に、ヒータの発する熱量は、駆動信号のデューティ比と、駆動信号の供給時間とに基づいて推定することができる。従って、HILS14は、それらの熱量に基づいて、空燃比センサの温度を模擬することができる。
【0061】
次に、HILS14は、空燃比信号A/F、正側インピーダンス対応信号Hi、及び負側インピーダンス対応信号Loを出力する(ステップ156)。空燃比信号A/Fは、上記ステップ152において生成された信号である。正側インピーダンス対応信号Hi及び負側インピーダンス対応信号Loは、それぞれ、図3(B)に示す波形の最大値及び最小値である。つまり、正側インピーダンス対応信号Hi及び負側インピーダンス対応信号Loは、エンジンECU10がインピーダンス検出信号を出力した際に、エンジンECU10の空燃比センサ端子に表れるべき信号の最大値及び最小値である。
【0062】
図3(B)に示す波形の定常値は、空燃比信号A/Fに対応している。また、その波形の定常値と最大値との差、及び、定常値と最小値との差は、何れも空燃比センサのインピーダンスに応じて決定される値である。このため、HILS14は、上記ステップ152で模擬した空燃比信号A/Fと、上記ステップ154で模擬したセンサ温度(インピーダンス)とに基づいて、正側インピーダンス対応信号Hi、及び負側インピーダンス対応信号Loを算出することができる。上記ステップ156では、そのようにして算出された値Hi、Loが、空燃比信号A/Fと共に、シミュレーション用外部回路12に供給される。
【0063】
[外部回路の動作]
次に、図7を参照してシミュレーション用外部回路12の動作について説明する。シミュレーション用外部回路12は、エンジンECU10がインピーダンス検出信号を出力した際に、適正な応答性をもって、エンジンECU10の空燃比センサ端子に、インピーダンス検出信号に対応する信号の変化を伝えるための回路である。
【0064】
図2を参照して説明した通り、エンジンECU10は、インピーダンス検出信号を出力した後、所定の遅延時間の経過を待って、インピーダンス検出用の電流又は電圧を回収する。エンジンECU10に空燃比センサが現実に接続されている場合は、回収するべき電流又は電圧の変化が、必然的に空燃比センサ端子に表れるため、その変化の応答性が問題になることはない。
【0065】
しかしながら、空燃比センサの現物を使用しないシミュレーションの場面では、回収するべき電流又は電圧の変化を、適切なタイミングで擬似的に発生させることが必要である。HILS14単体では、応答性上の問題から、インピーダンス検出信号の発生後に、上記のようなタイミングで電流、電圧に変化を生じさせることはできない。そこで、本実施形態では、その機能を、シミュレーション用外部回路12によって実現することとした。
【0066】
図7は、シミュレーション用外部回路12の内部で順次行われる処理の流れを説明するためのフローチャートである。図7に示すように、シミュレーション用外部回路12の内部では、先ず、エンジンECU10から入力端子16に供給されている信号が回収される(ステップ160)。
【0067】
次に、回収した信号中にインピーダンス検出信号が重畳しているかが判別される(ステップ162)。この処理は、具体的には、第1比較器28及び第2比較器30によって実行される。
【0068】
その結果、インピーダンス検出信号の重畳が認められた場合は、出力電圧が、正側インピーダンス対応信号Hi又は負側インピーダンス対応信号Loに切り替えられる(ステップ164)。他方、インピーダンス検出信号の重畳が認められなかった場合は、出力電圧が、空燃比信号A/Fとされる(ステップ166)。
【0069】
以後、シミュレーション用外部回路12の内部では、上記の如く選択された信号(A/F、Hi又はLo)が、基準抵抗(波形遅延器34、電流増幅器36及び電流調整器38)に向けて出力される(ステップ168)。
【0070】
ステップ164〜168の処理は、具体的には、電圧切換器32によって行われる。すなわち、入力信号にインピーダンス検出信号が重畳していない場合は、第1比較器28の出力、及び第2比較器30の出力が何れもLとなる。この場合、電圧切換器32は、HILS14から供給されている空燃比信号A/Fを、波形遅延器34に向けて出力する。また、インピーダンス検出信号の重畳に起因して、入力信号が正側に振れている間は第1比較器28の出力がHとなる。この間、電圧切換器32は、HILS14から供給されている負側インピーダンス対応信号Loを波形遅延器34に向けて出力する。更に、インピーダンス検出信号の重畳に起因して、入力信号が負側に振れている間は第2比較器30の出力がHとなる。この間、電圧切換器32は、HILS14から供給されている正側インピーダンス対応信号Hiを波形遅延器34に向けて出力する。
【0071】
図8(A)は、インピーダンス検出信号の重畳した入力信号の波形を示す。また、図8(B)は、図8(A)に示す入力信号を受けて、電圧切換器32の出力に表れる電位の変化を示す。図8(A)及び図8(B)に示すように、シミュレーション用外部回路12によれば、インピーダンス検出信号の発生時に、入力端子16に帰還させるべき適正な電位変化を、十分な応答性をもって発生させることができる。このため、本実施形態のシステムによれば、空燃比センサの現物を用いることなく、エンジンECU10が実機に接続されているのと実質的に同じ環境下でシミュレーションを行うことができる。
【0072】
[本実施形態のシステムによる効果]
インピーダンス検出信号の印加に対する変化が適正な応答性をもって入力端子16に表れないと、エンジンECU10は、空燃比センサの異常を判定してフェールセーフ動作を開始する。シミュレーションの過程でこのような事態が生ずるとすれば、エンジンECU10のデバッグを完全に行うことができない。本実施形態のシステムによれば、このような事態の発生を防ぐことができるため、実機を使わないシミュレーションにより、エンジンECU10のデバッグを完全に行うことができる。
【0073】
また、本実施形態のシステムによれば、空燃比センサの実物を用いずにシミュレーションを進めることができる。つまり、このシステムによれば、700℃を超える温度に加熱される空燃比センサを排除した状態でシミュレーションを進めることができる。このため、本実施形態のシステムによれば、シミュレーションが行われる環境の安全性を高め、また、その環境内での機器の取り扱いを容易化することができる。
【0074】
また、本実施形態のシステムによれば、空燃比センサの実物が不要であるため、空燃比センサが未だ開発段階にあるような状況下でも、エンジンECU10のデバッグを、完全に行うことができる。このため、本実施形態のシステムは、エンジンECU10の開発期間の短縮化をも促進することができる。
【0075】
エンジンECU10に空燃比センサの実物が接続される場合は、ヒータにより空燃比センサが加熱される従って、空燃比センサのインピーダンスは必然的に低下する。そして、インピーダンス検出信号の発生時にエンジンECU10に戻される信号は、そのインピーダンスに応じたものに限定される。従って、この場合は、空燃比センサの温度を偽ってシミュレーションを行うことはできない。これに対して、本実施形態のシステムでは、インピーダンス検出信号の発生時に入力端子16に戻す信号を、HILS14において自由に決めることができる。このため、本実施形態の手法によれば、空燃比センサのインピーダンスを任意の値に設定してシミュレーションを行うことができる。このように、本実施形態のシステムによれば、シミュレーションの過程における、インピーダンスに関する自由度を大きく確保することができる。
【0076】
[本実施形態の変形例等]
ところで、上述した実施の形態1では、正側インピーダンス対応信号Hi及び負側インピーダンス対応信号Loを、インピーダンスの模擬値と空燃比信号A/Fとに基づいて、HILS14の内部で算出することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、それらのインピーダンス対応信号Hi,Loは、固定値としてシミュレーション用外部回路12の中で生成することとしてもよい。この場合、インピーダンスを変えてシミュレーションを進めることはできないが、少なくとも、エンジンECU10が、空燃比センサの異常を判定してフェールセーフを開始することは避けることができ、主要なデバッグは行うことができる。
【0077】
また、上述した実施の形態1では、空燃比信号A/FをHILS14の内部で生成することとしているが、この信号も、固定値としてシミュレーション用外部回路12の中で生成することとしてもよい。この場合、空燃比信号A/Fを変えてシミュレーションを進めることはできないが、A/Fが安定した状態でのシミュレーションは進めることができる。更に、Hi、Lo及びA/Fの全てをシミュレーション用外部回路12の中で生成することとすれば、HILS14を用いずに空燃比センサの機能を再現することが可能となり、シミュレーションの負荷を低減することができる。
【0078】
また、上述した実施の形態1では、HILS14が、正側インピーダンス対応信号Hi及び負側インピーダンス対応信号Loを算出したうえで外部回路12に提供することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、HILS14では、空燃比信号A/Fと、インピーダンス検出信号の印加に伴って生ずる振幅の幅ΔVのみを算出し、それらを外部回路12に供給することとしてもよい。外部回路12は、この場合、A/F+ΔVにより正側インピーダンス対応信号Hiを算出し、また、A/F−Vにより負側インピーダンス対応信号Loを算出することができる。
【0079】
尚、上述した実施の形態1においては、ローパスフィルタ20が前記第1の発明における「定常信号抽出器」に、電圧加算器24及び電圧減算器26が前記第1の発明における「判定信号生成器」に、第1比較器28及び第2比較器30が前記第1の発明における「比較器」に、電圧切換器32が前記第1の発明における「帰還電圧切換器」に、それぞれ相当している。また、ここでは、HILS14が空燃比信号A/Fを生成することにより前記第1の発明における「空燃比信号生成手段」が、Hi及びLoを生成することにより前記第1の発明における「インピーダンス対応信号生成手段」が、それぞれ実現されている。
【0080】
また、上述した実施の形態1においては、シミュレーション用外部回路12の中に、固定値の空燃比信号A/F、Hi及びLoを発生する生成器を設けることにより前記第2の発明における「信号生成器」を実現することができる。
【0081】
また、上述した実施の形態1においては、HILS14が、ステップ152の処理中で空燃比信号A/Fを模擬することにより前記第3の発明における「空燃比信号模擬手段」が、ステップ154の処理中でインピーダンスを模擬することにより前記第4の発明における「インピーダンス模擬手段」が、ステップ156の処理中でHi及びLoを算出することにより前記第4の発明における「インピーダンス対応信号生成手段」が、それぞれ実現されている。
【0082】
また、上述した実施の形態1においては、ローパスフィルタ20が前記第6の発明における「定常信号抽出器」に、電圧加算器24及び電圧減算器26が前記第6の発明における「判定信号生成器」に、第1比較器28及び第2比較器30が前記第6の発明における「比較器」に、HILS14が発する空燃比信号A/Fを受けるためにシミュレーション用外部回路12に設けられた端子が前記第6の発明における「空燃比信号入力端子」に、HILS14が発するHi及びLoを受けるためにシミュレーション用外部回路12に設けられた端子が前記第6の発明における「インピーダンス対応信号入力端子」に、電圧切換器32が前記第6の発明における「帰還電圧切換器」に、それぞれ相当している。
【0083】
実施の形態2.
[実施の形態2の特徴]
次に、図9乃至図11を参照して本発明の実施の形態2について説明する。図9は、本実施形態のシミュレーションシステムの構成を説明するための図である。図9において、図1に示す要素と実質的に同じものについては、共通する符号を付して、その説明を省略または簡略する。
【0084】
上述した実施の形態1は、空燃比センサの動作を模擬するためのシステムである。これに対して、本実施形態のシステムは、酸素センサの動作を模擬するシステムである。酸素センサは、内燃機関の排気通路に配置され、排気ガスがリッチであるかリーンであるかに応じて、リッチ信号或いはリーン信号を発生するセンサである。
【0085】
図9に示すシステムは、エンジンECU40を備えている。エンジンECU40は、酸素センサから発せられる空燃比信号A/F(リッチ信号又はリーン信号)に基づいて空燃比フィードバック制御を行うように構成されている。図9において、エンジンECU40の酸素センサ端子には、シミュレーション用外部回路42の入力端子16が接続されている。シミュレーション用外部回路42は、電圧減算器26及び第2比較器30が取り除かれている点を除き、実質的に実施の形態1の外部回路12と同様の構成を有している。
【0086】
シミュレーション用外部回路14には、HILS14から、空燃比信号A/Fとインピーダンス対応信号Vimpとが供給されている。本実施形態において、HILS14が発する空燃比信号A/Fは、排気ガスがリッチである場合に発せられるリッチ信号と、排気ガスがリーンである場合に発せられるリーン信号とで構成される。
【0087】
酸素センサは、空燃比センサと同様に、活性温度に達することで正常な出力を発生する。このため、エンジンECU40は、実施の形態1の場合と同様に、酸素センサの温度(インピーダンス)を検出し、その温度が目標温度に維持されるように酸素センサのヒータを制御する。
【0088】
図10は、エンジンECU40が、酸素センサの温度、つまり、インピーダンスを検出する原理を説明するための図である。具体的には、図10(A)は、エンジンECU40が、酸素センサに向けて出力するインピーダンス検出信号の波形である。また、図10(B)は、そのインピーダンス検出信号に応じて発生するべきインピーダンス対応信号Vimpの波形である。尚、図10(B)に示す波形、及び矢印は、酸素センサを模擬の対象とする場合は、インピーダンス対応信号Vimpが、インピーダンスの値に応じて、正側にも負側にも振れることを表している。
【0089】
図10(A)に示す定常値は、酸素センサから発せられる空燃比信号A/F、つまり、リッチ信号又はリーン信号である。エンジンECU40は、空燃比信号A/Fに重ねてインピーダンス検出信号を発生する。酸素センサに対するインピーダンス検出信号は、空燃比信号A/Fに対して、正側に掃引される信号である。インピーダンス検出信号が、正側に一度だけ掃引されるのに対応して、インピーダンス対応信号は、図10(B)に示すように、定常値に対して一度だけ正側又は負側に振れる信号となる。
【0090】
図11は、図9に示すシステムにおいて実現される動作を説明するための図である。より具体的には、図11(A)は、シミュレーションの過程でエンジンECU40から発せられるインピーダンス検出信号の波形を示す。また、図11(B)は、シミュレーションの過程において、外部回路42の電圧切換器32から出力される信号の波形である。
【0091】
図9に示すシステムにおいて、第1比較器28には、空燃比信号A/Fにインピーダンス検出信号が重畳した入力信号と、空燃比信号A/Fに所定値αが加算された判定信号とが供給される。第1比較器28は、入力信号が判定信号より小さい場合はL信号を発生し、入力信号が判定信号を超えている間はH信号を発生する。
【0092】
電圧切換器32は、第1比較器28がL信号を発している間は空燃比信号A/Fを出力し、第1比較器28がH信号を発している間はインピーダンス対応信号Vimpを出力する。その結果、図9に示すシステムによれば、インピーダンス検出信号の発生に対応して、図11(A)及び図11(B)に示すような動作が実現される。エンジンECU40は、図11(B)に示す信号の変化を検知すると、酸素センサが正常に機能しているものとして、通常の動作を進めることができる。
【0093】
以上説明した通り、図9に示すシミュレーションシステムによれば、酸素センサと共に用いられるエンジンECU40を対象として、酸素センサを用いないシミュレーションを実現することができる。このため、本実施形態のシステムによれば、エンジンECU40を対象として、実施の形態1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0094】
[本実施形態の変形例等]
ところで、上述した実施の形態2では、インピーダンス対応信号Vimpを、HILS14の内部で算出することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、インピーダンス対応信号Vimpは、固定値としてシミュレーション用外部回路12の中で生成することとしてもよい。この場合、エンジンECU40が、酸素センサの異常を判定してフェールセーフを開始することは避けることができ、主要なデバッグは行うことができる。
【0095】
また、上述した実施の形態2では、空燃比信号A/F(リッチ、リーン信号)をHILS14の内部で生成することとしているが、この信号は、シミュレーション用外部回路12の中で生成することとしてもよい。この場合、HILS14を用いずに空燃比センサの機能を再現することが可能となり、シミュレーションを簡易化することができる。
【0096】
また、上述した実施の形態2では、HILS14が、インピーダンス対応信号Vimpを算出したうえで外部回路42に提供することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、HILS14では、空燃比信号A/Fと、インピーダンス検出信号の印加に伴って生ずる振幅の幅ΔVのみを算出し、それらを外部回路42に供給することとしてもよい。外部回路42は、この場合、A/F−Vによりインピーダンス対応信号Vimpを算出することができる。
【0097】
尚、上述した実施の形態2においては、ローパスフィルタ20が前記第1の発明における「定常信号抽出器」に、電圧加算器24が前記第1の発明における「判定信号生成器」に、第1比較器28が前記第1の発明における「比較器」に、電圧切換器32が前記第1の発明における「帰還電圧切換器」に、それぞれ相当している。また、ここでは、HILS14が、空燃比信号A/Fを生成することにより前記第1の発明における「空燃比信号生成手段」が、Vimpを生成することにより前記第1の発明における「インピーダンス対応信号生成手段」が、それぞれ実現されている。
【0098】
また、上述した実施の形態2においては、シミュレーション用外部回路12の中に、空燃比信号A/F及びインピーダンス対応信号Vimpを発生する生成器を設けることにより前記第2の発明における「信号生成器」を実現することができる。
【0099】
また、上述した実施の形態2においては、ローパスフィルタ20が前記第6の発明における「定常信号抽出器」に、電圧加算器24が前記第6の発明における「判定信号生成器」に、第1比較器28が前記第6の発明における「比較器」に、HILS14が発する空燃比信号A/Fを受けるためにシミュレーション用外部回路42に設けられた端子が前記第6の発明における「空燃比信号入力端子」に、HILS14が発するVimpを受けるためにシミュレーション用外部回路42に設けられた端子が前記第6の発明における「インピーダンス対応信号入力端子」に、電圧切換器32が前記第6の発明における「帰還電圧切換器」に、それぞれ相当している。
【0100】
実施の形態3.
次に、図12乃至図16を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。図12は、本実施形態のシミュレーションシステムの構成を説明するための図である。図12において、図9に示す要素と実質的に同じものについては、共通する符号を付して、その説明を省略または簡略する。
【0101】
図12に示すシステムは、シミュレーション用外部回路50の電圧加算器52が、空燃比信号A/Fにインピーダンス反映信号CVを加えて判定信号(A/F+CV)を生成する点に特徴を有している。インピーダンス反映信号CVは、酸素センサのインピーダンスと相関をもつ信号であり、HILS14の内部で生成される。
【0102】
エンジンECU40が、酸素センサに接続されている場合は、インピーダンス検出信号の印加に伴って、酸素センサに電流が流れる。その結果、酸素センサの端子電位、つまり、エンジンECU40の酸素センサ端子の電位に大きな変化は生じない。これに対して、エンジンECU40の酸素センサ端子が、シミュレーション用外部回路50に接続されている場合は、センサ電流が流れないため、インピーダンス検出信号の印加に伴って、その酸素センサ端子の電位が大きく変化し易い。
【0103】
HILS14は、酸素センサのインピーダンスに応じてインピーダンス対応信号Vimpを生成する。インピーダンス対応信号Vimpは、酸素センサを流れるセンサ電流に対応する電位が、エンジンECU40に正しく伝達されるように算出される。従って、インピーダンスが低く、大きなセンサ電流が流れ易いほど、インピーダンス対応信号Vimpは絶対値の大きな値となる。
【0104】
エンジンECU40の酸素センサ端子の電位は、インピーダンス対応信号Vimpの絶対値が大きいほど高いピークを示す。従って、酸素センサ端子の電位、つまり、シミュレーション用外部回路50の入力端子16の電位は、酸素センサのインピーダンス模擬値が低いほど、高いピーク値に到達する。
【0105】
図13は、入力端子16の電位のピークが、電位の波形に与える影響を説明するための図である。より具体的には、図13(A)は、インピーダンスの模擬値が低く、入力端子16の電位ピークが高い場合の波形を示す。また、図13(B)は、インピーダンスの模擬値が高く、入力端子16の電位ピークが低い場合の波形を示す。
【0106】
エンジンECU50は、インピーダンス検出信号を発生した後、既定の時間は、酸素センサ端子を流れる電流を計測する状態を保つ。この間、酸素センサ端子の電位は下がることができる。上記の時間が経過すると、エンジンECU50は、電流計測のための状態を解除する。その結果、酸素センサ端子は、ハイインピーダンス状態となり、その電位は低下できない状態となる。
【0107】
図13(A)は、ピークに達した電位が、定常値レベルまで低下してくる過程で電流計測の状態が解除された状態を示す。この場合、インピーダンス検出信号の印加が修了した後、十分に長い時間に渡って、酸素センサ端子の電位が空燃比信号A/Fから大きく乖離する事態が生ずる。
【0108】
また、図13(B)は、電流計測状態が解除される前に電位が十分に低下した状態を示す。酸素センサはインピーダンスの変化幅が大きいため、ECU50を図12に示すシステムに組み込んだ場合、高インピーダンス時に図13(B)に示す動作を実現しようとすれば、低インピーダンス時には、図13(A)に示すように、酸素センサ端子の電位が定常値まで戻り切れない事態が発生する。
【0109】
図14は、上述した実施の形態2のシステムにおいて、低インピーダンス時に生じ得る動作を説明するための図である。上述した実施の形態2においては、電圧加算器24が、空燃比信号A/Fに既定値αを加えた値を判定信号として算出する。この場合、図14(A)に示すように、入力信号が定常値まで戻り切らない状況下では、インピーダンス検出信号の印加が終わった後も、入力信号が判定信号を上回る事態が継続する。
【0110】
電圧切換器32は、入力信号が判定信号を上回っている間は、インピーダンス対応信号Vimpを出力し続ける。このため、入力信号と判定信号が図14(A)に示すような関係をとるとすれば、電圧切換器32の出力は、図14(B)に示すように、インピーダンス検出信号の発生後、継続的にインピーダンス対応信号Vimpに維持されることになる。この場合、入力端子16の電位が正常に変化しないことから、エンジンECU40では、酸素センサの異常が判定され、フェールセーフ処理が開始される。
【0111】
図15は、低インピーダンス時における上記の誤動作を防ぐために、本実施形態において用いられるインピーダンス反映信号CVのマップを示す。本実施形態において、HILS14は、酸素センサのインピーダンス模擬値に基づいて、図15に示すマップを参照してインピーダンス反映信号CVを算出する。
【0112】
シミュレーション用外部回路50の電圧加算器52は、そのインピーダンス反映信号CVを空燃比信号A/Fに加えて判定信号を生成する。このため、本実施形態では、酸素センサのインピーダンスが低いほど、判定信号(A/F+CV)は大きな値となる。
【0113】
図16(A)は、低インピーダンス環境下で実現される入力信号の波形である。また、図16(B)は、図16(A)に示す波形に対応して電圧切換器32の出力に表れる変化の波形である。低インピーダンス環境下では、判定信号(A/F+CV)が大きな値とされるため、入力信号は、定常値付近まで下がらなくても、判定信号を下回ることができる。このため、本実施形態のシステムによれば、低インピーダンスの環境下で、電圧切換器32の出力がインピーダンス対応信号Vimpのまま維持されるのを防ぎ、その結果、エンジンECU40が不必要なフェールセーフ動作を行うのを回避することができる。
【0114】
図16(C)は、高インピーダンス環境下で実現される入力信号の波形である。また、図16(D)は、図16(C)に示す波形に対応して電圧切換器32の出力に表れる変化の波形である。高インピーダンス環境下では、判定信号(A/F+CV)が小さな値とされるため、入力信号は、その立ち上がり後即座に判定信号を上回り、ピークを通過した後、適正に判定信号を下回る。この場合、電圧切換器32の出力は、入力信号の変化に合わせて適切に変化する。従って、本実施形態のシステムによれば、高インピーダンスの環境下でも、ECU40による不必要なフェールセーフ動作を回避することができる。
【0115】
以上説明した通り、本実施形態のシミュレーションシステムによれば、酸素センサが高いインピーダンスを示す環境下でも、低いインピーダンスを示す環境下でも、エンジンECU40に、インピーダンス検出信号に対する応答を正しく戻すことができる。このため、本実施形態のシステムによれば、広いインピーダンスの変化幅の全域で、正しいシミュレーションの実行を保証することができる。
【0116】
尚、上述した実施の形態3においては、HILS14が、酸素センサのインピーダンスを模擬することにより前記第5の発明における「インピーダンス模擬手段」が、インピーダンス反映信号CVを算出することにより前記第5の発明における「インピーダンス反映信号設定手段」が、それぞれ実現されている。更に、ここでは、シミュレーション用外部回路50が、インピーダンス反映信号を受け取るために備えている端子が、前記第7の発明における「インピーダンス反映信号入力端子」に相当している。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の実施の形態1のシミュレーションシステムの構成を説明するための図である。
【図2】図1に示すエンジンECUが、空燃比センサのインピーダンスを検出するために実行するルーチンのフローチャートである。
【図3】図1に示すエンジンECUが発するインピーダンス検出信号の波形(図3(A))と、インピーダンス検出信号の発生に起因してエンジンECUに戻される正常な信号波形と(図3(B))を示す。
【図4】図1に示すエンジンECUが、空燃比信号A/Fに基づいて実行するA/Fフィードバック制御のルーチンのフローチャートである。
【図5】図1に示すエンジンECUが実行するヒータ駆動制御のためのフローチャートである。
【図6】図1に示すシステムにおいて、HILSの内部で実行される処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【図7】図1に示すシステムにおいて、シミュレーション用外部回路の内部で順次行われる処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】図1に示すシステムにおいて、シミュレーション用外部回路に供給される入力信号の波形(図8(A))と、その入力信号に応えて電圧切換器32の出力に表れる電位の変化(図8(B))とを示す。
【図9】本発明の実施の形態2のシミュレーションシステムの構成を説明するための図である。
【図10】図9に示すエンジンECUが、酸素センサの温度(インピーダンス)を検出する原理を説明するための図である。
【図11】図9に示すシステムにおいて実現される動作を説明するための図である。
【図12】本発明の実施の形態3のシミュレーションシステムの構成を説明するための図である。
【図13】図9に示すシステムにおいて、入力端子の電位のピークが電位の波形に与える影響を説明するための図である。
【図14】本発明の実施の形態2のシステムにおいて、低インピーダンス時に生じ得る動作を説明するための図である。
【図15】低インピーダンス時におけるエンジンECUの誤動作を防ぐために、本発明の実施の形態3において用いられるインピーダンス反映信号CVのマップを示す。
【図16】図12に示すシステムにおいて実現される動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0118】
10;40 エンジンECU(Electronic Control Unit)
12;42;50 シミュレーション用外部回路
14 HILS(Hardware In the Loop Simulator)
16 入力端子
18,20 ローパスフィルタ
24;52 電圧加算器
26 電圧減算器
28 第1比較器
30 第2比較器
32 電圧切換器
A/F 空燃比信号
Hi 正側インピーダンス対応信号
Lo 負側インピーダンス対応信号
Vimp インピーダンス対応信号
CV インピーダンス反映信号
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンピュータユニットのシミュレーションシステム及びシミュレーション用外部回路に係り、特に、排気ガスセンサからの情報を得て内燃機関の状態を制御するコンピュータユニットのデバッグを容易化するうえで有効なシミュレーションシステム及びシミュレーション用外部回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2006−64411号公報に開示されているように、内燃機関を制御するためのECU(Electronic Control Unit)をHILS(Hardware In the Loop Simulator)に接続して動作させる手法が知られている。HILSは、ECUとの間で情報を授受しながら、内燃機関の動作を模擬することができる。このようなシミュレーションによれば、内燃機関の実機を用いずにECUの動作を確認することができるため、例えば、開発過程におけるECUのデバッグを容易化することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−64411号公報
【特許文献2】特開2004−93400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関の燃料噴射に関しては、空燃比フィードバック制御が一般的に行われている。空燃比フィードバック制御は、内燃機関の排気通路に配置した排気ガスセンサの出力に基づいて行われる。排気ガスセンサは、排気通路に流出してくる排気ガスの空燃比に応じた空燃比信号を出力する。空燃比フィードバック制御では、その空燃比信号に基づいて、内燃機関から排出されるガス中の空燃比が目標空燃比に近づくように燃料噴射量を微少に調整する。
【0005】
内燃機関を制御するためのECU(以下、「エンジンECU」と称す)に、排気ガスセンサが接続されている場合は、排気ガスセンサからエンジンECUに、空燃比信号が定常的に供給される。また、エンジンECUは、排気ガスセンサに対して、定期的に、インピーダンス検出信号を印加する。そして、エンジンECUは、その結果センサ出力に生じた変化に基づいて、排気ガスセンサのインピーダンスを推定する。
【0006】
実機に接続されたエンジンECUの動作を正しく模擬するためには、排気ガスセンサから発せられるべき信号を、シミュレーションの過程で、エンジンECUに正しく供給することが必要である。この要求を満たす一つの手法としては、排気ガスセンサの動作をHILS等のシミュレータで再現させることが考えられる。
【0007】
HILS等のシミュレータは、内燃機関の動作を模擬する過程で、排気ガス中の空燃比を算出することができる。従って、排気ガスセンサの機能のうち、空燃比信号を生成する機能は、シミュレータにより再現することができる。しかしながら、エンジンECUがエンジンECUにインピーダンス検出信号を印加した後、その影響がセンサ出力に表れるまでの時間は極めて短時間である。そして、HILS等のシミュレータは、そのような短時間でセンサ出力を変化させるだけの応答性を有していない。このため、排気ガスセンサを用いずに、その動作をシミュレーションにより模擬することは、必ずしも容易ではない。
【0008】
上記の要求の満たす手法としては、また、エンジンECUに、シミュレータと共に排気ガスセンサを接続してシミュレーションを行うことが考えられる。エンジンECUは、内燃機関の始動後、可能な限り速やかに排気ガスセンサを活性温度(700℃程度)に昇温させようとする。このため、排気ガスセンサを実際にエンジンECUに接続してシミュレーションを行う場合は、排気ガスセンサの温度を自由に設定して任意のシミュレーションを遂行することができない。また、この場合、700℃を超える排気ガスセンサの取り扱いに注意しながらシミュレーションを進めることが必要となる。更に、排気ガスセンサ自体が開発過程にあるような場合は、その開発が終わるまではエンジンECUのデバッグが進められないという事態も生ずる。
【0009】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、排気ガスセンサの実物を用いることなく、エンジンECUの動作を正確に再現させることのできるコンピュータユニットのシミュレーションシステム及びシミュレーション用外部回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、コンピュータユニットのシミュレーションシステムであって、
内燃機関制御用のコンピュータユニットの排気ガスセンサ端子に接続される入力端子と、
前記入力端子に表れる定常信号を抽出する定常信号抽出器と、
前記定常信号から所定値だけシフトした判定信号を生成する判定信号生成器と、
前記入力端子の電位と前記判定信号とを比較する比較器と、
空燃比信号を生成する空燃比信号生成手段と、
インピーダンス対応信号を生成するインピーダンス対応信号生成手段と、
前記入力端子の電位が前記判定信号より前記定常信号側にある状況下では前記空燃比信号を前記入力端子に帰還させ、前記入力端子の電位が前記判定信号を挟んで前記定常信号の反対側にある状況下では前記インピーダンス対応信号を前記入力端子に帰還させる帰還電圧切換器と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記空燃比信号生成手段は前記空燃比信号として固定値を生成する信号生成器であり、
前記インピーダンス対応信号発生手段は前記インピーダンス対応信号として固定値を生成する信号生成器であることを特徴とする。
【0012】
また、第3の発明は、第1の発明において、前記空燃比信号生成手段は、前記コンピュータから発せられる信号に基づいて、当該信号を受けた場合に排気ガスセンサが発するべき空燃比信号を模擬する空燃比信号模擬手段を含むことを特徴とする。
【0013】
また、第4の発明は、第1又は第4の発明において、
前記コンピュータユニットから発せられる信号に基づいて、当該信号を受けた場合に実現されるべき排気ガスセンサのインピーダンスを模擬するインピーダンス模擬手段を備え、
前記インピーダンス対応信号生成手段は、模擬されたインピーダンスの値と、前記空燃比信号とに基づいて、前記インピーダンス対応信号を生成することを特徴とする。
【0014】
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記コンピュータユニットから発せられる信号に基づいて、当該信号を受けた場合に実現されるべき排気ガスセンサのインピーダンスを模擬するインピーダンス模擬手段と、
前記インピーダンスの模擬値に基づいて、前記判定信号の基礎となるインピーダンス反映信号を設定するインピーダンス反映信号設定手段とを備え、
前記判定信号生成器は、前記インピーダンス反映信号に基づいて前記判定信号を生成することを特徴とする。
【0015】
また、第6の発明は、コンピュータユニットのシミュレーション用外部回路であって、
内燃機関制御用のコンピュータユニットの排気ガスセンサ端子に接続される入力端子と、
前記入力端子に表れる定常信号を抽出する定常信号抽出器と、
前記定常信号からインピーダンス反映信号分だけシフトした判定信号を生成する判定信号生成器と、
前記入力端子の電位と前記判定信号とを比較する比較器と、
空燃比信号の提供を受けるための空燃比信号入力端子と、
インピーダンス対応信号の提供を受けるためのインピーダンス対応信号入力端子と、
前記入力端子の電位が前記判定信号より前記定常信号側にある状況下では前記空燃比信号入力端子の電位を前記入力端子に帰還させ、前記入力端子の電位が前記判定信号を挟んで前記定常信号の反対側にある状況下では前記インピーダンス対応信号入力端子の電位を前記入力端子に帰還させる帰還電圧切換器と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
また、第7の発明は、第6の発明において、前記インピーダンス反映信号の提供を受けるためのインピーダンス反映信号入力端子を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、通常の状況下では、帰還電圧切換器によって、空燃比信号が入力端子に戻される。内燃機関制御用のコンピュータユニット(エンジンECU)は、その信号、つまり、入力端子に定常的に表れている信号を取り込むことで空燃比を検知することができる。エンジンECUは、必要に応じて、上記の入力端子にインピーダンス検出信号を印加する。入力端子にインピーダンス検出信号が印加されると、そこに表れる電位は、判定信号と交差する程度に定常信号から乖離する。入力端子の電位が判定値と交差すると、帰還電圧切換器は、入力に戻す信号を、空燃比信号からインピーダンス対応信号に迅速に切り替える。インピーダンス検出信号の印加に応答して、入力端子の信号がこのように迅速に変化すると、エンジンECUは、正常にインピーダンスの検出処理を進めることができる。
【0018】
第2の発明によれば、入力端子に帰還させる空燃比信号とインピーダンス対応信号とが、何れも固定値とされる。この場合、シミュレーションシステムが実行する処理は、インピーダンス検出信号の入力を受けて、入力端子に戻す信号を空燃比信号(固定値)からインピーダンス対応信号(固定値)に切り替えることだけとなる。このため、本発明によれば、本格的なシミュレータ等を用いることなく、極めて簡単な構成で所望のシミュレーションシステムを実現することができる。
【0019】
第3の発明によれば、空燃比信号生成手段によって、排気ガスセンサが発するべき空燃比信号を模擬することができる。このため、本発明によれば、シミュレーションの過程において、エンジンECUを、正しい空燃比信号の供給を受けている状況下で動作させることができる。
【0020】
第4の発明によれば、エンジンECUから発せられる信号に基づいて排気ガスセンサのインピーダンスを模擬することができる。インピーダンス検出信号の印加時に、入力端子に表れる信号が、その定常値、つまり、空燃比信号からどの程度乖離するかは、排気ガスセンサのインピーダンスに応じても決定される。本発明によれば、インピーダンス対応信号を、空燃比信号と、インピーダンスの模擬値とに基づいて設定することができるため、シミュレーションの過程において、エンジンECUに対して、インピーダンスの模擬結果を正確に伝えることができる。
【0021】
第5の発明によれば、インピーダンス検出信号が印加されたか否かを判断するための判定信号に、インピーダンスの模擬結果を反映させることができる。入力端子に戻されるインピーダンス対応信号は、インピーダンスの模擬結果に応じて異なる値となる。その結果、シミュレーションの過程における入力端子の電位は、インピーダンスの模擬結果に応じて大きく変化する可能性がある。判定信号をインピーダンスの模擬結果に応じて変化させることとすれば、入力端子の電位変化に関わらず、インピーダンス検出信号が現実にエンジンECUから発せられている時期と比較器の比較結果とを正しく対応させることができる。このため、本発明によれば、エンジンECUの誤動作を生じさせることなく、インピーダンスの模擬範囲を大きく確保することができる。
【0022】
第6又は第7の発明によれば、空燃比信号の供給と、インピーダンス対応信号の供給とを外部から受けることにより、第1又は第5の発明と同様の機能を実現する外部回路を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1のシミュレーションシステムの構成を説明するための図である。図1に示すシステムは、エンジンECU(Electronic Control Unit)10を備えている。エンジンECU10は、内燃機関の制御、特に、内燃機関の燃料噴射量を制御するためのコンピュータユニットである。
【0024】
エンジンECU10は、現実には、内燃機関に搭載される種々のセンサ及びアクチュエータとの間で信号を授受しながら、燃料噴射量の制御を行う。具体的には、エンジンECU10には、例えば、エアフロメータ、回転数センサ、スロットルセンサ、アクセルセンサ、空燃比センサ等の種々のセンサ、及び、燃料噴射弁や電子スロットル等の種々のアクチュエータが接続される。
【0025】
図1に示すシステムは、エンジンECU10を、内燃機関の実機ではなく、シミュレータに接続して動作させるためのものである。このシステムは、シミュレーション用外部回路12と、HILS(Hardware In the Loop Simulator)14を備えている。シミュレーション用外部回路12は、エンジンECU10に接続される種々のセンサ及びアクチュエータのうち、特に空燃比センサの機能の一部を模擬するための回路である。また、HILS14は、エンジンECU10から発せられる種々の信号を受けて、内燃機関の動作を模擬するシミュレータである。
【0026】
シミュレーション用外部回路12は、入力端子16を備えている。入力端子16は、エンジンECU10の空燃比センサ端子に接続されている。空燃比センサ端子は、エンジンECU10が、空燃比センサとの接続のために備えている端子である。
【0027】
シミュレーション用外部回路12は、入力端子16と接続された第1及び第2のローパスフィルタ18,20を備えている。入力端子16には、後述するように、定常的には空燃比信号A/Fが表れる。エンジンECU10は、シミュレーションの過程において、その空燃比信号A/Fを、空燃比センサ端子から取り込むことができる。また、エンジンECU10は、必要に応じて、空燃比センサ端子から、インピーダンス検出信号を出力する。この信号が入力端子16に印加されると、入力端子16の電位は、一時的に定常値から乖離した値となる。
【0028】
第1ローパスフィルタ18は、インピーダンス検出信号の発生に起因して入力端子16に生ずる変動を通過させることができるように構成されたフィルタである。従って、第1ローパスフィルタ18の後段には、空燃比信号A/Fを定常値とし、インピーダンス検出信号の発生に合わせて一時的に変動する信号が表れる。以下、この信号を「入力信号」と称す。
【0029】
一方、第2ローパスフィルタ20は、インピーダンス検出信号の発生に起因する電位の変動をカットすることができるように構成されたフィルタである。従って、第2ローパスフィルタ20の後段には、インピーダンス検出信号の発生に関わらず、常に、ほぼ空燃比信号A/F信号と対応する電位が表れる。
【0030】
第2ローパスフィルタ20の後段には、バッファ22を介して、電圧加算器24と電圧減算器26が並列に配置されている。電圧加算器24は、前段から入力された電位に所定値αを加算した電位を生成する回路である。図1に示すシステムによれば、電圧加算器24は、空燃比信号A/Fの供給を受けて、A/Fより僅かに大きなA/F+αの電位を発生することができる。以下、この電位を「正側判定信号」と称す。電圧減算器26は、前段から入力された電位から所定値αを減算するための回路である。図1に示すシステムによれば、電圧減算器26は、空燃比信号A/Fの供給を受けて、A/Fより僅かに小さなA/F−αの電位を発生することができる。以下、この信号を「負側判定信号」と称す。
【0031】
電圧加算器24により生成される正側判定信号(A/F+α)は、第1ローパスフィルタ18を通過した入力信号と共に、第1比較器28に供給される。第1比較器28は、入力信号が正側判定信号を超えている場合に限ってH出力を発生する。このため、第1比較器28からは、入力信号が正側判定信号より空燃比信号A/F側に位置している間はL出力が発せられ、入力信号が、空燃比信号A/Fを超えている間だけH出力が発せられる。
【0032】
電圧減算器26により生成される負側判定信号(A/F−α)は、第1ローパスフィルタ18を通過した入力信号と共に、第2比較器30に供給される。第2比較器30は、入力信号が負側判定信号を下回っている場合に限りH出力を発生する。このため、第2比較器30からは、入力信号が負側判定信号より空燃比信号A/F側に位置している間はL出力が発せられ、入力信号が、空燃比信号A/Fより低い間だけH出力が発せられる。
【0033】
第1比較器28の出力、及び第2比較器30の出力は、電圧切換器32に供給されている。電圧切換器32には、HILS14から、空燃比信号A/Fと、正側インピーダンス対応信号Hiと、負側インピーダンス対応信号Loとが供給されている。電圧切換器32は、第1比較器28の出力及び第2比較器30の出力に基づいて、それら3つの信号の何れかを出力信号として選択する切換回路である。
【0034】
電圧切換器32は、具体的には、出力信号を、以下の規則に従って切り替える。
1.第1比較器の出力L、第2比較器の出力L:A/Fを出力
2.第1比較器の出力H、第2比較器の出力L:Loを出力
3.第1比較器の出力L、第2比較器の出力H:Hiを出力
【0035】
電圧切換器32の出力切換規則は、換言すると、以下のように表すことができる。
1.入力信号がほぼ空燃比信号A/Fと一致しているとき:A/Fを出力
2.入力信号が空燃比信号A/Fの正側に有意に乖離しているとき:Loを出力
3.入力信号が空燃比信号A/Fの負側に有意に乖離しているとき:Hiを出力
【0036】
電圧切換器32の出力は、波形遅延器34、電流増幅器36及び電流調整器38を介して入力端子16に戻される。従って、入力端子16の電位は、電圧切換器32が、A/F、Hi及びLoのうち、何れの信号を出力しているかに応じて変動する。
【0037】
ECU10が空燃比センサに接続されている場合は、インピーダンス検出信号の発生を受けて、空燃比センサを流れるセンサ電流、つまり、空燃比センサ端子を流れる電流が変化する。ECU10は、その電流の変化を電圧に変換して検知し、その結果に基づいてインピーダンスの推定を行う。これに対して、ECU10が、図1に示すシステムに組み込まれている場合は、空燃比センサ端子を流れる電流に、インピーダンス検出信号の発生に対応する変化は殆ど生じない。上述したインピーダンス対応信号Hi及びLoは、このような状況下で、ECU10が、擬似的に正常な電流変化を認識することができるような電位に設定されている。
【0038】
エンジンECU10からHILS14に対しては、図1に示すヒータ駆動信号の他、燃料噴射弁や電子スロットル等を駆動するための種々の信号が供給される。HILS14は、それらの信号を受けて内燃機関の運転を模擬し、その結果として各種のセンサ出力の模擬値を生成する。
【0039】
HILS14によって生成された各種センサ出力の模擬値は、エンジンECU10に供給される。エンジンECU10は、それらの模擬値を受け取ることで、内燃機関の実機と接続されているのと同様の環境下で動作することができる。
【0040】
本実施形態のシステムは、特に、シミュレーション用外部回路12とHILS14とで、空燃比センサの機能を模擬する点に特徴を有している。空燃比センサは、内燃機関の排気通路に配置され、排気ガス中の空燃比に応じた出力を発するセンサである。空燃比センサは、700℃程度の活性温度に達することで正常に機能することができる。このため、空燃比センサには、センサ素子を加熱するためのヒータが内蔵されている。そして、エンジンECU10は、そのヒータを適当に発熱させるために、ヒータ駆動信号を出力する。シミュレーションの過程では、図1に示すように、ヒータ駆動信号は、空燃比センサではなくHILS14に供給される。
【0041】
[エンジンECUの動作]
(インピーダンスの検出)
次に、図2乃至図5を参照して、エンジンECU10の動作を説明する。図2は、エンジンECU10が、空燃比センサのインピーダンスを検出するために実行するルーチンのフローチャートである。エンジンECU10は、イグニッションスイッチがONとされている期間中、所定の間隔で図2に示すルーチンを繰り返し実行する。
【0042】
図2に示すルーチンが起動されると、エンジンECU10は、先ず、インピーダンス検出用信号を出力する(ステップ100)。所定の遅延時間の経過を待って(ステップ102)、エンジンECU10は、インピーダンス検出用電流又は電圧を回収する(ステップ104)。
【0043】
図3(A)は、エンジンECU10が発するインピーダンス検出信号の波形を示す。また、図3(B)は、エンジンECU10に空燃比センサが接続されている場合に、インピーダンス検出信号の発生に起因して、エンジンECU10に戻される正常な信号波形を示す。
【0044】
エンジンECU10は、図3(A)に示すように、インピーダンスを検出するべきタイミングにおいて、空燃比センサ端子の電位を、正側及び負側に掃引する。このようなインピーダンス検出信号が印加されると、空燃比センサには、そのインピーダンスに応じたセンサ電流が流れる。発生したセンサ電流の大きさ、つまり、空燃比センサのインピーダンスは、図3(B)に示す波形に反映される。従って、エンジンECU10は、インピーダンス検出信号を印加した結果として得られた信号の波形から、空燃比センサのインピーダンスを検知することができる。
【0045】
図2に示すルーチンでは、ステップ104の処理に続いて、回収したインピーダンス検出用電流又は電圧に基づいて、空燃比センサのインピーダンスが算出される(ステップ106)。次いで、算出されたインピーダンスが正常値の範囲内に収まっているかが判別される(ステップ108)。
【0046】
ステップ108では、より具体的には、インピーダンスの算出値が、活性領域に達しているか、及び、異常値でないかが判別される。空燃比センサの温度が活性領域(700℃程度)に達するまでは、空燃比センサは正しい出力を発しない。従って、この場合は、空燃比センサの出力を空燃比信号として取り込まないことが適切である。エンジンECU10は、この場合、空燃比信号A/Fを回収せず(ステップ110)、再びステップ100以降の処理を行う。
【0047】
ステップ104で回収されたインピーダンス検出用電流又は電圧が、センサの活性・不活性に関わらず異常な値であるような場合(例えば、全く変化が見られないような場合)は、ステップ106において、インピーダンスが異常値として算出される。この場合は、空燃比センサの異常が判定され、センサ異常を前提としたフェールセーフが開始される(ステップ110)。
【0048】
他方、空燃比センサが活性状態に達し、インピーダンスが十分に小さな値になっている状況下では、ステップ108において、インピーダンスの算出値が正常値であると判断される。この場合は、以後、空燃比信号A/Fの回収が許可される(ステップ112)。
【0049】
(空燃比フィードバック制御)
図4は、エンジンECU10が、空燃比信号A/Fに基づいて実行するA/Fフィードバック制御のルーチンのフローチャートである。図4に示すルーチンでは、先ず、空燃比信号A/Fの回収が許可されているか否かが判別される(ステップ120)。
【0050】
空燃比信号A/Fの回収が許可されていると判別された場合は、空燃比センサ端子に表れている定常的な値が空燃比信号A/Fとして取り込まれる(ステップ122)。次いで、空燃比信号A/Fに基づいて、空燃比フィードバック係数が算出される(ステップ124)。更に、算出した空燃比フィードバック係数に基づいて、個々の燃料噴射弁に与える燃料噴射時間が算出される(ステップ126)。上記の処理によれば、空燃比信号A/Fがリッチであるほど、燃料噴射時間は短縮され、また、空燃比信号A/Fがリーンであるほど燃料噴射時間が伸張される。
【0051】
個々の気筒の燃料噴射弁には、このようにして算出された燃料噴射時間が出力される(ステップ128)。その結果、上記の処理によれば、排気ガス中の空燃比が、精度良く目標空燃比近傍に維持される。
【0052】
上記ステップ120において、空燃比信号A/Fの回収が許可されていないと判断された場合は、空燃比がフィードバックされることなく、オープン制御の手法で燃料噴射時間が算出される(ステップ130)。この場合、エンジンECU10の内部では、当然に空燃比フィードバックのための処理は行われない。
【0053】
(ヒータ駆動制御)
空燃比センサは、上述した通り、活性温度に昇温されることにより適正に動作することができる。従って、空燃比センサを正しく動作させ続けるためには、その温度を活性温度に維持することが必要である。そこで、エンジンECU10は、空燃比センサの温度が活性温度に維持されるように、ヒータに対して適正な電力を供給する。
【0054】
図5は、上記の機能を実現するために、エンジンECU10が実行するヒータ駆動制御のためのフローチャートである。図5に示すルーチンでは、先ず、図2に示すルーチンにより算出したインピーダンスが読み込まれる(ステップ140)。
【0055】
次に、読み込んだインピーダンスに基づいて、ヒータの駆動デューティが算出される(ステップ142)。インピーダンス値は、空燃比センサの温度と相関を有しており、例えば、インピーダンスが高い場合は、空燃比センサが低温であると判断できる。ヒータには、空燃比センサが目標の活性温度に対して低温であるほど大きな熱を発生させることが望ましい。エンジンECU10には、このような観点から設定した駆動デューティのマップが記憶されている。ここでは、そのマップに従って、空燃比センサを迅速に加熱するためのデューティ比がインピーダンスに基づいて設定される。
【0056】
上記の処理が終わると、算出された駆動デューティが空燃比センサ端子から出力される(ステップ144)。図1に示すシステムでは、このようにして出力されるヒータ駆動信号が、HILS14に供給される。
【0057】
[HILSの動作]
次に、図6を参照して、HILS14の動作について説明する。図6は、本実施形態のシステムにおいて、HILS14の内部で実行される処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【0058】
図6に示すように、HILS14は、シミュレーションの過程において、先ず、内燃機関の運転状態に関わる各種のパラメータを取得する(ステップ150)。具体的には、ここでは、エンジンECU10から供給される各種アクチュエータへの駆動信号や、HILS14の内部で算出されている各種のセンサ出力等が読み込まれる。
【0059】
次に、取得したパラメータに基づいて、内燃機関の運転状態が模擬される(ステップ152)。HILS14は、この模擬の一部として、内燃機関から排出されるガス中の空燃比、つまり、空燃比センサの出力を模擬する。図1に示すシステムでは、その模擬値が、空燃比信号A/Fとしてシミュレーション用外部回路12に出力される。
【0060】
HILS14は、更に、エンジンECU10から供給されるヒータ駆動信号に基づいて、空燃比センサの温度を模擬する(ステップ154)。空燃比センサの温度は、主として排気ガス及びヒータから空燃比センサに与えられた熱量により決定される。HILS14は、内燃機関の状態を模擬することができるため、排気ガスから空燃比センサに与えられる熱量も模擬することができる。更に、ヒータの発する熱量は、駆動信号のデューティ比と、駆動信号の供給時間とに基づいて推定することができる。従って、HILS14は、それらの熱量に基づいて、空燃比センサの温度を模擬することができる。
【0061】
次に、HILS14は、空燃比信号A/F、正側インピーダンス対応信号Hi、及び負側インピーダンス対応信号Loを出力する(ステップ156)。空燃比信号A/Fは、上記ステップ152において生成された信号である。正側インピーダンス対応信号Hi及び負側インピーダンス対応信号Loは、それぞれ、図3(B)に示す波形の最大値及び最小値である。つまり、正側インピーダンス対応信号Hi及び負側インピーダンス対応信号Loは、エンジンECU10がインピーダンス検出信号を出力した際に、エンジンECU10の空燃比センサ端子に表れるべき信号の最大値及び最小値である。
【0062】
図3(B)に示す波形の定常値は、空燃比信号A/Fに対応している。また、その波形の定常値と最大値との差、及び、定常値と最小値との差は、何れも空燃比センサのインピーダンスに応じて決定される値である。このため、HILS14は、上記ステップ152で模擬した空燃比信号A/Fと、上記ステップ154で模擬したセンサ温度(インピーダンス)とに基づいて、正側インピーダンス対応信号Hi、及び負側インピーダンス対応信号Loを算出することができる。上記ステップ156では、そのようにして算出された値Hi、Loが、空燃比信号A/Fと共に、シミュレーション用外部回路12に供給される。
【0063】
[外部回路の動作]
次に、図7を参照してシミュレーション用外部回路12の動作について説明する。シミュレーション用外部回路12は、エンジンECU10がインピーダンス検出信号を出力した際に、適正な応答性をもって、エンジンECU10の空燃比センサ端子に、インピーダンス検出信号に対応する信号の変化を伝えるための回路である。
【0064】
図2を参照して説明した通り、エンジンECU10は、インピーダンス検出信号を出力した後、所定の遅延時間の経過を待って、インピーダンス検出用の電流又は電圧を回収する。エンジンECU10に空燃比センサが現実に接続されている場合は、回収するべき電流又は電圧の変化が、必然的に空燃比センサ端子に表れるため、その変化の応答性が問題になることはない。
【0065】
しかしながら、空燃比センサの現物を使用しないシミュレーションの場面では、回収するべき電流又は電圧の変化を、適切なタイミングで擬似的に発生させることが必要である。HILS14単体では、応答性上の問題から、インピーダンス検出信号の発生後に、上記のようなタイミングで電流、電圧に変化を生じさせることはできない。そこで、本実施形態では、その機能を、シミュレーション用外部回路12によって実現することとした。
【0066】
図7は、シミュレーション用外部回路12の内部で順次行われる処理の流れを説明するためのフローチャートである。図7に示すように、シミュレーション用外部回路12の内部では、先ず、エンジンECU10から入力端子16に供給されている信号が回収される(ステップ160)。
【0067】
次に、回収した信号中にインピーダンス検出信号が重畳しているかが判別される(ステップ162)。この処理は、具体的には、第1比較器28及び第2比較器30によって実行される。
【0068】
その結果、インピーダンス検出信号の重畳が認められた場合は、出力電圧が、正側インピーダンス対応信号Hi又は負側インピーダンス対応信号Loに切り替えられる(ステップ164)。他方、インピーダンス検出信号の重畳が認められなかった場合は、出力電圧が、空燃比信号A/Fとされる(ステップ166)。
【0069】
以後、シミュレーション用外部回路12の内部では、上記の如く選択された信号(A/F、Hi又はLo)が、基準抵抗(波形遅延器34、電流増幅器36及び電流調整器38)に向けて出力される(ステップ168)。
【0070】
ステップ164〜168の処理は、具体的には、電圧切換器32によって行われる。すなわち、入力信号にインピーダンス検出信号が重畳していない場合は、第1比較器28の出力、及び第2比較器30の出力が何れもLとなる。この場合、電圧切換器32は、HILS14から供給されている空燃比信号A/Fを、波形遅延器34に向けて出力する。また、インピーダンス検出信号の重畳に起因して、入力信号が正側に振れている間は第1比較器28の出力がHとなる。この間、電圧切換器32は、HILS14から供給されている負側インピーダンス対応信号Loを波形遅延器34に向けて出力する。更に、インピーダンス検出信号の重畳に起因して、入力信号が負側に振れている間は第2比較器30の出力がHとなる。この間、電圧切換器32は、HILS14から供給されている正側インピーダンス対応信号Hiを波形遅延器34に向けて出力する。
【0071】
図8(A)は、インピーダンス検出信号の重畳した入力信号の波形を示す。また、図8(B)は、図8(A)に示す入力信号を受けて、電圧切換器32の出力に表れる電位の変化を示す。図8(A)及び図8(B)に示すように、シミュレーション用外部回路12によれば、インピーダンス検出信号の発生時に、入力端子16に帰還させるべき適正な電位変化を、十分な応答性をもって発生させることができる。このため、本実施形態のシステムによれば、空燃比センサの現物を用いることなく、エンジンECU10が実機に接続されているのと実質的に同じ環境下でシミュレーションを行うことができる。
【0072】
[本実施形態のシステムによる効果]
インピーダンス検出信号の印加に対する変化が適正な応答性をもって入力端子16に表れないと、エンジンECU10は、空燃比センサの異常を判定してフェールセーフ動作を開始する。シミュレーションの過程でこのような事態が生ずるとすれば、エンジンECU10のデバッグを完全に行うことができない。本実施形態のシステムによれば、このような事態の発生を防ぐことができるため、実機を使わないシミュレーションにより、エンジンECU10のデバッグを完全に行うことができる。
【0073】
また、本実施形態のシステムによれば、空燃比センサの実物を用いずにシミュレーションを進めることができる。つまり、このシステムによれば、700℃を超える温度に加熱される空燃比センサを排除した状態でシミュレーションを進めることができる。このため、本実施形態のシステムによれば、シミュレーションが行われる環境の安全性を高め、また、その環境内での機器の取り扱いを容易化することができる。
【0074】
また、本実施形態のシステムによれば、空燃比センサの実物が不要であるため、空燃比センサが未だ開発段階にあるような状況下でも、エンジンECU10のデバッグを、完全に行うことができる。このため、本実施形態のシステムは、エンジンECU10の開発期間の短縮化をも促進することができる。
【0075】
エンジンECU10に空燃比センサの実物が接続される場合は、ヒータにより空燃比センサが加熱される従って、空燃比センサのインピーダンスは必然的に低下する。そして、インピーダンス検出信号の発生時にエンジンECU10に戻される信号は、そのインピーダンスに応じたものに限定される。従って、この場合は、空燃比センサの温度を偽ってシミュレーションを行うことはできない。これに対して、本実施形態のシステムでは、インピーダンス検出信号の発生時に入力端子16に戻す信号を、HILS14において自由に決めることができる。このため、本実施形態の手法によれば、空燃比センサのインピーダンスを任意の値に設定してシミュレーションを行うことができる。このように、本実施形態のシステムによれば、シミュレーションの過程における、インピーダンスに関する自由度を大きく確保することができる。
【0076】
[本実施形態の変形例等]
ところで、上述した実施の形態1では、正側インピーダンス対応信号Hi及び負側インピーダンス対応信号Loを、インピーダンスの模擬値と空燃比信号A/Fとに基づいて、HILS14の内部で算出することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、それらのインピーダンス対応信号Hi,Loは、固定値としてシミュレーション用外部回路12の中で生成することとしてもよい。この場合、インピーダンスを変えてシミュレーションを進めることはできないが、少なくとも、エンジンECU10が、空燃比センサの異常を判定してフェールセーフを開始することは避けることができ、主要なデバッグは行うことができる。
【0077】
また、上述した実施の形態1では、空燃比信号A/FをHILS14の内部で生成することとしているが、この信号も、固定値としてシミュレーション用外部回路12の中で生成することとしてもよい。この場合、空燃比信号A/Fを変えてシミュレーションを進めることはできないが、A/Fが安定した状態でのシミュレーションは進めることができる。更に、Hi、Lo及びA/Fの全てをシミュレーション用外部回路12の中で生成することとすれば、HILS14を用いずに空燃比センサの機能を再現することが可能となり、シミュレーションの負荷を低減することができる。
【0078】
また、上述した実施の形態1では、HILS14が、正側インピーダンス対応信号Hi及び負側インピーダンス対応信号Loを算出したうえで外部回路12に提供することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、HILS14では、空燃比信号A/Fと、インピーダンス検出信号の印加に伴って生ずる振幅の幅ΔVのみを算出し、それらを外部回路12に供給することとしてもよい。外部回路12は、この場合、A/F+ΔVにより正側インピーダンス対応信号Hiを算出し、また、A/F−Vにより負側インピーダンス対応信号Loを算出することができる。
【0079】
尚、上述した実施の形態1においては、ローパスフィルタ20が前記第1の発明における「定常信号抽出器」に、電圧加算器24及び電圧減算器26が前記第1の発明における「判定信号生成器」に、第1比較器28及び第2比較器30が前記第1の発明における「比較器」に、電圧切換器32が前記第1の発明における「帰還電圧切換器」に、それぞれ相当している。また、ここでは、HILS14が空燃比信号A/Fを生成することにより前記第1の発明における「空燃比信号生成手段」が、Hi及びLoを生成することにより前記第1の発明における「インピーダンス対応信号生成手段」が、それぞれ実現されている。
【0080】
また、上述した実施の形態1においては、シミュレーション用外部回路12の中に、固定値の空燃比信号A/F、Hi及びLoを発生する生成器を設けることにより前記第2の発明における「信号生成器」を実現することができる。
【0081】
また、上述した実施の形態1においては、HILS14が、ステップ152の処理中で空燃比信号A/Fを模擬することにより前記第3の発明における「空燃比信号模擬手段」が、ステップ154の処理中でインピーダンスを模擬することにより前記第4の発明における「インピーダンス模擬手段」が、ステップ156の処理中でHi及びLoを算出することにより前記第4の発明における「インピーダンス対応信号生成手段」が、それぞれ実現されている。
【0082】
また、上述した実施の形態1においては、ローパスフィルタ20が前記第6の発明における「定常信号抽出器」に、電圧加算器24及び電圧減算器26が前記第6の発明における「判定信号生成器」に、第1比較器28及び第2比較器30が前記第6の発明における「比較器」に、HILS14が発する空燃比信号A/Fを受けるためにシミュレーション用外部回路12に設けられた端子が前記第6の発明における「空燃比信号入力端子」に、HILS14が発するHi及びLoを受けるためにシミュレーション用外部回路12に設けられた端子が前記第6の発明における「インピーダンス対応信号入力端子」に、電圧切換器32が前記第6の発明における「帰還電圧切換器」に、それぞれ相当している。
【0083】
実施の形態2.
[実施の形態2の特徴]
次に、図9乃至図11を参照して本発明の実施の形態2について説明する。図9は、本実施形態のシミュレーションシステムの構成を説明するための図である。図9において、図1に示す要素と実質的に同じものについては、共通する符号を付して、その説明を省略または簡略する。
【0084】
上述した実施の形態1は、空燃比センサの動作を模擬するためのシステムである。これに対して、本実施形態のシステムは、酸素センサの動作を模擬するシステムである。酸素センサは、内燃機関の排気通路に配置され、排気ガスがリッチであるかリーンであるかに応じて、リッチ信号或いはリーン信号を発生するセンサである。
【0085】
図9に示すシステムは、エンジンECU40を備えている。エンジンECU40は、酸素センサから発せられる空燃比信号A/F(リッチ信号又はリーン信号)に基づいて空燃比フィードバック制御を行うように構成されている。図9において、エンジンECU40の酸素センサ端子には、シミュレーション用外部回路42の入力端子16が接続されている。シミュレーション用外部回路42は、電圧減算器26及び第2比較器30が取り除かれている点を除き、実質的に実施の形態1の外部回路12と同様の構成を有している。
【0086】
シミュレーション用外部回路14には、HILS14から、空燃比信号A/Fとインピーダンス対応信号Vimpとが供給されている。本実施形態において、HILS14が発する空燃比信号A/Fは、排気ガスがリッチである場合に発せられるリッチ信号と、排気ガスがリーンである場合に発せられるリーン信号とで構成される。
【0087】
酸素センサは、空燃比センサと同様に、活性温度に達することで正常な出力を発生する。このため、エンジンECU40は、実施の形態1の場合と同様に、酸素センサの温度(インピーダンス)を検出し、その温度が目標温度に維持されるように酸素センサのヒータを制御する。
【0088】
図10は、エンジンECU40が、酸素センサの温度、つまり、インピーダンスを検出する原理を説明するための図である。具体的には、図10(A)は、エンジンECU40が、酸素センサに向けて出力するインピーダンス検出信号の波形である。また、図10(B)は、そのインピーダンス検出信号に応じて発生するべきインピーダンス対応信号Vimpの波形である。尚、図10(B)に示す波形、及び矢印は、酸素センサを模擬の対象とする場合は、インピーダンス対応信号Vimpが、インピーダンスの値に応じて、正側にも負側にも振れることを表している。
【0089】
図10(A)に示す定常値は、酸素センサから発せられる空燃比信号A/F、つまり、リッチ信号又はリーン信号である。エンジンECU40は、空燃比信号A/Fに重ねてインピーダンス検出信号を発生する。酸素センサに対するインピーダンス検出信号は、空燃比信号A/Fに対して、正側に掃引される信号である。インピーダンス検出信号が、正側に一度だけ掃引されるのに対応して、インピーダンス対応信号は、図10(B)に示すように、定常値に対して一度だけ正側又は負側に振れる信号となる。
【0090】
図11は、図9に示すシステムにおいて実現される動作を説明するための図である。より具体的には、図11(A)は、シミュレーションの過程でエンジンECU40から発せられるインピーダンス検出信号の波形を示す。また、図11(B)は、シミュレーションの過程において、外部回路42の電圧切換器32から出力される信号の波形である。
【0091】
図9に示すシステムにおいて、第1比較器28には、空燃比信号A/Fにインピーダンス検出信号が重畳した入力信号と、空燃比信号A/Fに所定値αが加算された判定信号とが供給される。第1比較器28は、入力信号が判定信号より小さい場合はL信号を発生し、入力信号が判定信号を超えている間はH信号を発生する。
【0092】
電圧切換器32は、第1比較器28がL信号を発している間は空燃比信号A/Fを出力し、第1比較器28がH信号を発している間はインピーダンス対応信号Vimpを出力する。その結果、図9に示すシステムによれば、インピーダンス検出信号の発生に対応して、図11(A)及び図11(B)に示すような動作が実現される。エンジンECU40は、図11(B)に示す信号の変化を検知すると、酸素センサが正常に機能しているものとして、通常の動作を進めることができる。
【0093】
以上説明した通り、図9に示すシミュレーションシステムによれば、酸素センサと共に用いられるエンジンECU40を対象として、酸素センサを用いないシミュレーションを実現することができる。このため、本実施形態のシステムによれば、エンジンECU40を対象として、実施の形態1の場合と同様の効果を得ることができる。
【0094】
[本実施形態の変形例等]
ところで、上述した実施の形態2では、インピーダンス対応信号Vimpを、HILS14の内部で算出することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、インピーダンス対応信号Vimpは、固定値としてシミュレーション用外部回路12の中で生成することとしてもよい。この場合、エンジンECU40が、酸素センサの異常を判定してフェールセーフを開始することは避けることができ、主要なデバッグは行うことができる。
【0095】
また、上述した実施の形態2では、空燃比信号A/F(リッチ、リーン信号)をHILS14の内部で生成することとしているが、この信号は、シミュレーション用外部回路12の中で生成することとしてもよい。この場合、HILS14を用いずに空燃比センサの機能を再現することが可能となり、シミュレーションを簡易化することができる。
【0096】
また、上述した実施の形態2では、HILS14が、インピーダンス対応信号Vimpを算出したうえで外部回路42に提供することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、HILS14では、空燃比信号A/Fと、インピーダンス検出信号の印加に伴って生ずる振幅の幅ΔVのみを算出し、それらを外部回路42に供給することとしてもよい。外部回路42は、この場合、A/F−Vによりインピーダンス対応信号Vimpを算出することができる。
【0097】
尚、上述した実施の形態2においては、ローパスフィルタ20が前記第1の発明における「定常信号抽出器」に、電圧加算器24が前記第1の発明における「判定信号生成器」に、第1比較器28が前記第1の発明における「比較器」に、電圧切換器32が前記第1の発明における「帰還電圧切換器」に、それぞれ相当している。また、ここでは、HILS14が、空燃比信号A/Fを生成することにより前記第1の発明における「空燃比信号生成手段」が、Vimpを生成することにより前記第1の発明における「インピーダンス対応信号生成手段」が、それぞれ実現されている。
【0098】
また、上述した実施の形態2においては、シミュレーション用外部回路12の中に、空燃比信号A/F及びインピーダンス対応信号Vimpを発生する生成器を設けることにより前記第2の発明における「信号生成器」を実現することができる。
【0099】
また、上述した実施の形態2においては、ローパスフィルタ20が前記第6の発明における「定常信号抽出器」に、電圧加算器24が前記第6の発明における「判定信号生成器」に、第1比較器28が前記第6の発明における「比較器」に、HILS14が発する空燃比信号A/Fを受けるためにシミュレーション用外部回路42に設けられた端子が前記第6の発明における「空燃比信号入力端子」に、HILS14が発するVimpを受けるためにシミュレーション用外部回路42に設けられた端子が前記第6の発明における「インピーダンス対応信号入力端子」に、電圧切換器32が前記第6の発明における「帰還電圧切換器」に、それぞれ相当している。
【0100】
実施の形態3.
次に、図12乃至図16を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。図12は、本実施形態のシミュレーションシステムの構成を説明するための図である。図12において、図9に示す要素と実質的に同じものについては、共通する符号を付して、その説明を省略または簡略する。
【0101】
図12に示すシステムは、シミュレーション用外部回路50の電圧加算器52が、空燃比信号A/Fにインピーダンス反映信号CVを加えて判定信号(A/F+CV)を生成する点に特徴を有している。インピーダンス反映信号CVは、酸素センサのインピーダンスと相関をもつ信号であり、HILS14の内部で生成される。
【0102】
エンジンECU40が、酸素センサに接続されている場合は、インピーダンス検出信号の印加に伴って、酸素センサに電流が流れる。その結果、酸素センサの端子電位、つまり、エンジンECU40の酸素センサ端子の電位に大きな変化は生じない。これに対して、エンジンECU40の酸素センサ端子が、シミュレーション用外部回路50に接続されている場合は、センサ電流が流れないため、インピーダンス検出信号の印加に伴って、その酸素センサ端子の電位が大きく変化し易い。
【0103】
HILS14は、酸素センサのインピーダンスに応じてインピーダンス対応信号Vimpを生成する。インピーダンス対応信号Vimpは、酸素センサを流れるセンサ電流に対応する電位が、エンジンECU40に正しく伝達されるように算出される。従って、インピーダンスが低く、大きなセンサ電流が流れ易いほど、インピーダンス対応信号Vimpは絶対値の大きな値となる。
【0104】
エンジンECU40の酸素センサ端子の電位は、インピーダンス対応信号Vimpの絶対値が大きいほど高いピークを示す。従って、酸素センサ端子の電位、つまり、シミュレーション用外部回路50の入力端子16の電位は、酸素センサのインピーダンス模擬値が低いほど、高いピーク値に到達する。
【0105】
図13は、入力端子16の電位のピークが、電位の波形に与える影響を説明するための図である。より具体的には、図13(A)は、インピーダンスの模擬値が低く、入力端子16の電位ピークが高い場合の波形を示す。また、図13(B)は、インピーダンスの模擬値が高く、入力端子16の電位ピークが低い場合の波形を示す。
【0106】
エンジンECU50は、インピーダンス検出信号を発生した後、既定の時間は、酸素センサ端子を流れる電流を計測する状態を保つ。この間、酸素センサ端子の電位は下がることができる。上記の時間が経過すると、エンジンECU50は、電流計測のための状態を解除する。その結果、酸素センサ端子は、ハイインピーダンス状態となり、その電位は低下できない状態となる。
【0107】
図13(A)は、ピークに達した電位が、定常値レベルまで低下してくる過程で電流計測の状態が解除された状態を示す。この場合、インピーダンス検出信号の印加が修了した後、十分に長い時間に渡って、酸素センサ端子の電位が空燃比信号A/Fから大きく乖離する事態が生ずる。
【0108】
また、図13(B)は、電流計測状態が解除される前に電位が十分に低下した状態を示す。酸素センサはインピーダンスの変化幅が大きいため、ECU50を図12に示すシステムに組み込んだ場合、高インピーダンス時に図13(B)に示す動作を実現しようとすれば、低インピーダンス時には、図13(A)に示すように、酸素センサ端子の電位が定常値まで戻り切れない事態が発生する。
【0109】
図14は、上述した実施の形態2のシステムにおいて、低インピーダンス時に生じ得る動作を説明するための図である。上述した実施の形態2においては、電圧加算器24が、空燃比信号A/Fに既定値αを加えた値を判定信号として算出する。この場合、図14(A)に示すように、入力信号が定常値まで戻り切らない状況下では、インピーダンス検出信号の印加が終わった後も、入力信号が判定信号を上回る事態が継続する。
【0110】
電圧切換器32は、入力信号が判定信号を上回っている間は、インピーダンス対応信号Vimpを出力し続ける。このため、入力信号と判定信号が図14(A)に示すような関係をとるとすれば、電圧切換器32の出力は、図14(B)に示すように、インピーダンス検出信号の発生後、継続的にインピーダンス対応信号Vimpに維持されることになる。この場合、入力端子16の電位が正常に変化しないことから、エンジンECU40では、酸素センサの異常が判定され、フェールセーフ処理が開始される。
【0111】
図15は、低インピーダンス時における上記の誤動作を防ぐために、本実施形態において用いられるインピーダンス反映信号CVのマップを示す。本実施形態において、HILS14は、酸素センサのインピーダンス模擬値に基づいて、図15に示すマップを参照してインピーダンス反映信号CVを算出する。
【0112】
シミュレーション用外部回路50の電圧加算器52は、そのインピーダンス反映信号CVを空燃比信号A/Fに加えて判定信号を生成する。このため、本実施形態では、酸素センサのインピーダンスが低いほど、判定信号(A/F+CV)は大きな値となる。
【0113】
図16(A)は、低インピーダンス環境下で実現される入力信号の波形である。また、図16(B)は、図16(A)に示す波形に対応して電圧切換器32の出力に表れる変化の波形である。低インピーダンス環境下では、判定信号(A/F+CV)が大きな値とされるため、入力信号は、定常値付近まで下がらなくても、判定信号を下回ることができる。このため、本実施形態のシステムによれば、低インピーダンスの環境下で、電圧切換器32の出力がインピーダンス対応信号Vimpのまま維持されるのを防ぎ、その結果、エンジンECU40が不必要なフェールセーフ動作を行うのを回避することができる。
【0114】
図16(C)は、高インピーダンス環境下で実現される入力信号の波形である。また、図16(D)は、図16(C)に示す波形に対応して電圧切換器32の出力に表れる変化の波形である。高インピーダンス環境下では、判定信号(A/F+CV)が小さな値とされるため、入力信号は、その立ち上がり後即座に判定信号を上回り、ピークを通過した後、適正に判定信号を下回る。この場合、電圧切換器32の出力は、入力信号の変化に合わせて適切に変化する。従って、本実施形態のシステムによれば、高インピーダンスの環境下でも、ECU40による不必要なフェールセーフ動作を回避することができる。
【0115】
以上説明した通り、本実施形態のシミュレーションシステムによれば、酸素センサが高いインピーダンスを示す環境下でも、低いインピーダンスを示す環境下でも、エンジンECU40に、インピーダンス検出信号に対する応答を正しく戻すことができる。このため、本実施形態のシステムによれば、広いインピーダンスの変化幅の全域で、正しいシミュレーションの実行を保証することができる。
【0116】
尚、上述した実施の形態3においては、HILS14が、酸素センサのインピーダンスを模擬することにより前記第5の発明における「インピーダンス模擬手段」が、インピーダンス反映信号CVを算出することにより前記第5の発明における「インピーダンス反映信号設定手段」が、それぞれ実現されている。更に、ここでは、シミュレーション用外部回路50が、インピーダンス反映信号を受け取るために備えている端子が、前記第7の発明における「インピーダンス反映信号入力端子」に相当している。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の実施の形態1のシミュレーションシステムの構成を説明するための図である。
【図2】図1に示すエンジンECUが、空燃比センサのインピーダンスを検出するために実行するルーチンのフローチャートである。
【図3】図1に示すエンジンECUが発するインピーダンス検出信号の波形(図3(A))と、インピーダンス検出信号の発生に起因してエンジンECUに戻される正常な信号波形と(図3(B))を示す。
【図4】図1に示すエンジンECUが、空燃比信号A/Fに基づいて実行するA/Fフィードバック制御のルーチンのフローチャートである。
【図5】図1に示すエンジンECUが実行するヒータ駆動制御のためのフローチャートである。
【図6】図1に示すシステムにおいて、HILSの内部で実行される処理の概要を説明するためのフローチャートである。
【図7】図1に示すシステムにおいて、シミュレーション用外部回路の内部で順次行われる処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】図1に示すシステムにおいて、シミュレーション用外部回路に供給される入力信号の波形(図8(A))と、その入力信号に応えて電圧切換器32の出力に表れる電位の変化(図8(B))とを示す。
【図9】本発明の実施の形態2のシミュレーションシステムの構成を説明するための図である。
【図10】図9に示すエンジンECUが、酸素センサの温度(インピーダンス)を検出する原理を説明するための図である。
【図11】図9に示すシステムにおいて実現される動作を説明するための図である。
【図12】本発明の実施の形態3のシミュレーションシステムの構成を説明するための図である。
【図13】図9に示すシステムにおいて、入力端子の電位のピークが電位の波形に与える影響を説明するための図である。
【図14】本発明の実施の形態2のシステムにおいて、低インピーダンス時に生じ得る動作を説明するための図である。
【図15】低インピーダンス時におけるエンジンECUの誤動作を防ぐために、本発明の実施の形態3において用いられるインピーダンス反映信号CVのマップを示す。
【図16】図12に示すシステムにおいて実現される動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0118】
10;40 エンジンECU(Electronic Control Unit)
12;42;50 シミュレーション用外部回路
14 HILS(Hardware In the Loop Simulator)
16 入力端子
18,20 ローパスフィルタ
24;52 電圧加算器
26 電圧減算器
28 第1比較器
30 第2比較器
32 電圧切換器
A/F 空燃比信号
Hi 正側インピーダンス対応信号
Lo 負側インピーダンス対応信号
Vimp インピーダンス対応信号
CV インピーダンス反映信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関制御用のコンピュータユニットの排気ガスセンサ端子に接続される入力端子と、
前記入力端子に表れる定常信号を抽出する定常信号抽出器と、
前記定常信号から所定値だけシフトした判定信号を生成する判定信号生成器と、
前記入力端子の電位と前記判定信号とを比較する比較器と、
空燃比信号を生成する空燃比信号生成手段と、
インピーダンス対応信号を生成するインピーダンス対応信号生成手段と、
前記入力端子の電位が前記判定信号より前記定常信号側にある状況下では前記空燃比信号を前記入力端子に帰還させ、前記入力端子の電位が前記判定信号を挟んで前記定常信号の反対側にある状況下では前記インピーダンス対応信号を前記入力端子に帰還させる帰還電圧切換器と、
を備えることを特徴とするコンピュータユニットのシミュレーションシステム。
【請求項2】
前記空燃比信号生成手段は前記空燃比信号として固定値を生成する信号生成器であり、
前記インピーダンス対応信号発生手段は前記インピーダンス対応信号として固定値を生成する信号生成器であることを特徴とする請求項1記載のコンピュータユニットのシミュレーションシステム。
【請求項3】
前記空燃比信号生成手段は、前記コンピュータから発せられる信号に基づいて、当該信号を受けた場合に排気ガスセンサが発するべき空燃比信号を模擬する空燃比信号模擬手段を含むことを特徴とする請求項1記載のコンピュータユニットのシミュレーションシステム。
【請求項4】
前記コンピュータユニットから発せられる信号に基づいて、当該信号を受けた場合に実現されるべき排気ガスセンサのインピーダンスを模擬するインピーダンス模擬手段を備え、
前記インピーダンス対応信号生成手段は、模擬されたインピーダンスの値と、前記空燃比信号とに基づいて、前記インピーダンス対応信号を生成することを特徴とする請求項1又は3記載のコンピュータユニットのシミュレーションシステム。
【請求項5】
前記コンピュータユニットから発せられる信号に基づいて、当該信号を受けた場合に実現されるべき排気ガスセンサのインピーダンスを模擬するインピーダンス模擬手段と、
前記インピーダンスの模擬値に基づいて、前記判定信号の基礎となるインピーダンス反映信号を設定するインピーダンス反映信号設定手段とを備え、
前記判定信号生成器は、前記インピーダンス反映信号に基づいて前記判定信号を生成することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載のコンピュータユニットのシミュレーションシステム。
【請求項6】
内燃機関制御用のコンピュータユニットの排気ガスセンサ端子に接続される入力端子と、
前記入力端子に表れる定常信号を抽出する定常信号抽出器と、
前記定常信号からインピーダンス反映信号分だけシフトした判定信号を生成する判定信号生成器と、
前記入力端子の電位と前記判定信号とを比較する比較器と、
空燃比信号の提供を受けるための空燃比信号入力端子と、
インピーダンス対応信号の提供を受けるためのインピーダンス対応信号入力端子と、
前記入力端子の電位が前記判定信号より前記定常信号側にある状況下では前記空燃比信号入力端子の電位を前記入力端子に帰還させ、前記入力端子の電位が前記判定信号を挟んで前記定常信号の反対側にある状況下では前記インピーダンス対応信号入力端子の電位を前記入力端子に帰還させる帰還電圧切換器と、
を備えることを特徴とするコンピュータユニットのシミュレーション用外部回路。
【請求項7】
前記インピーダンス反映信号の提供を受けるためのインピーダンス反映信号入力端子を備えることを特徴とする請求項6記載のコンピュータユニットのシミュレーション用外部回路。
【請求項1】
内燃機関制御用のコンピュータユニットの排気ガスセンサ端子に接続される入力端子と、
前記入力端子に表れる定常信号を抽出する定常信号抽出器と、
前記定常信号から所定値だけシフトした判定信号を生成する判定信号生成器と、
前記入力端子の電位と前記判定信号とを比較する比較器と、
空燃比信号を生成する空燃比信号生成手段と、
インピーダンス対応信号を生成するインピーダンス対応信号生成手段と、
前記入力端子の電位が前記判定信号より前記定常信号側にある状況下では前記空燃比信号を前記入力端子に帰還させ、前記入力端子の電位が前記判定信号を挟んで前記定常信号の反対側にある状況下では前記インピーダンス対応信号を前記入力端子に帰還させる帰還電圧切換器と、
を備えることを特徴とするコンピュータユニットのシミュレーションシステム。
【請求項2】
前記空燃比信号生成手段は前記空燃比信号として固定値を生成する信号生成器であり、
前記インピーダンス対応信号発生手段は前記インピーダンス対応信号として固定値を生成する信号生成器であることを特徴とする請求項1記載のコンピュータユニットのシミュレーションシステム。
【請求項3】
前記空燃比信号生成手段は、前記コンピュータから発せられる信号に基づいて、当該信号を受けた場合に排気ガスセンサが発するべき空燃比信号を模擬する空燃比信号模擬手段を含むことを特徴とする請求項1記載のコンピュータユニットのシミュレーションシステム。
【請求項4】
前記コンピュータユニットから発せられる信号に基づいて、当該信号を受けた場合に実現されるべき排気ガスセンサのインピーダンスを模擬するインピーダンス模擬手段を備え、
前記インピーダンス対応信号生成手段は、模擬されたインピーダンスの値と、前記空燃比信号とに基づいて、前記インピーダンス対応信号を生成することを特徴とする請求項1又は3記載のコンピュータユニットのシミュレーションシステム。
【請求項5】
前記コンピュータユニットから発せられる信号に基づいて、当該信号を受けた場合に実現されるべき排気ガスセンサのインピーダンスを模擬するインピーダンス模擬手段と、
前記インピーダンスの模擬値に基づいて、前記判定信号の基礎となるインピーダンス反映信号を設定するインピーダンス反映信号設定手段とを備え、
前記判定信号生成器は、前記インピーダンス反映信号に基づいて前記判定信号を生成することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載のコンピュータユニットのシミュレーションシステム。
【請求項6】
内燃機関制御用のコンピュータユニットの排気ガスセンサ端子に接続される入力端子と、
前記入力端子に表れる定常信号を抽出する定常信号抽出器と、
前記定常信号からインピーダンス反映信号分だけシフトした判定信号を生成する判定信号生成器と、
前記入力端子の電位と前記判定信号とを比較する比較器と、
空燃比信号の提供を受けるための空燃比信号入力端子と、
インピーダンス対応信号の提供を受けるためのインピーダンス対応信号入力端子と、
前記入力端子の電位が前記判定信号より前記定常信号側にある状況下では前記空燃比信号入力端子の電位を前記入力端子に帰還させ、前記入力端子の電位が前記判定信号を挟んで前記定常信号の反対側にある状況下では前記インピーダンス対応信号入力端子の電位を前記入力端子に帰還させる帰還電圧切換器と、
を備えることを特徴とするコンピュータユニットのシミュレーション用外部回路。
【請求項7】
前記インピーダンス反映信号の提供を受けるためのインピーダンス反映信号入力端子を備えることを特徴とする請求項6記載のコンピュータユニットのシミュレーション用外部回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−45469(P2008−45469A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221077(P2006−221077)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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