説明

コーティング方法およびコーティングされた物品

【課題】 ターボ機械のブレードやベーンなどにおける、砂塵に関連した疲労に耐久できるように設計されたサーマルバリアコーティングを提供する。
【解決手段】 ターボ機械の物品をコーティングする方法が、物品に任意選択的にボンディングコート層を適用し(ステップ10)、物品にサーマルバリアコーティング層を適用し(ステップ12)、コーティングされた物品を少なくとも一つの紫外線硬化性樹脂もしくは熱硬化性樹脂を含む溶液と接触させ(ステップ14)、このコーティングされた物品を硬化処理し(ステップ16)、乾燥処理する(ステップ18)ステップを備える。本発明のコーティング組成により、ターボ機械の運転時に砂塵が浸入してコーティング表面に溶融付着しても、この溶融砂粒のうち少なくとも一つの成分と反応して新たにシーラント層を形成し、磨耗や破損から物品を効果的に保護する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマルバリアコーティング組成、サーマルバリアコーティングの適用方法、およびサーマルバリアコーティングが被覆された物品に関する。さらに具体的には、本発明は、溶融砂粒の浸入に耐えるように設計されたサーマルバリアコーティング組成、このサーマルバリアコーティングの適用方法、およびこのサーマルバリアコーティングが被覆された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルバリアコーティング(TBC)における砂塵に関連した疲労に起因するターボ機械部品の劣化は、中東で使用される全てのターボ機械に関する懸念である。砂塵に関連した疲労はサーマルバリアコーティングの早すぎる剥離や、ターボ機械およびこれらの部品の酸化の原因となっている。こうした砂塵に関連する疲労のメカニズムは、溶融した砂粒のサーマルバリアコーティングへの浸入である。コーティングの有効期間中に砂塵がターボ機械に侵入し、サーマルバリアコーティング表面上で凝集して溶融状態となる。一般的にターボ機械の表面温度は砂粒の融点よりも高い。この結果、凝集した砂の粒子が幾分溶融状態となり、サーマルバリアコーティングに浸透してセラミック/金属界面に達する。サーマルバリアコーティングの破損は、砂粒が十分なほど浸入したサーマルバリアコーティングの熱サイクルに対する変形許容度の低下のみならず、セラミック/金属界面で熱成長酸化物に破壊的に作用する溶融砂粒が組み合わさることにより生じる。
【特許文献1】米国特許第3,542,530号明細書
【特許文献2】米国特許第3,528,861号明細書
【特許文献3】米国特許第3,649,225号明細書
【特許文献4】米国特許第3,754,903号明細書
【特許文献5】米国特許第3,676,085号明細書
【特許文献6】米国特許第4,078,922号明細書
【特許文献7】米国再発行特許発明第32,121号明細書
【特許文献8】米国特許第4,585,481号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
剥離によって生じる、サーマルバリアコーティングの破損は部品表面を自然環境に露出させ、これにより溶融砂粒の破壊的作用と同時にターボ機械部品の酸化を加速させる。
【0004】
したがって、砂塵に関連する疲労に耐えるように設計されたサーマルバリアコーティングが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明により、物品をコーティングする方法が、概ね、物品の少なくとも一つの外表面上に、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、およびこれらの混合物よりなるグループから選択された少なくとも一つの金属を概ね含有する少なくとも一つのセラミックベースの化合物の少なくとも一つの傾斜層(graded layer)を適用することを備える。
【0006】
本発明により、サーマルバリアコーティングが、概ね、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、およびこれらの混合物よりなるグループから選択された少なくとも一つの金属を概ね含有する少なくとも一つのセラミックベースの化合物を含んでなる漸変皮膜を備えるとともに、前記サーマルバリアコーティングが概ね約30%(体積%)以下の空隙率をもつ。
【0007】
本発明により、コーティングされた物品が、概ね、適用されたサーマルバリアコーティングを備えた少なくとも一つの外表面をもつ物品を備えるとともに、前記サーマルバリアコーティングが、概ね、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、およびこれらの混合物よりなるグループから選択された少なくとも一つの金属を概ね含有する少なくとも一つのセラミックベースの化合物を含んでなる漸変皮膜を備えるとともに、前記サーマルバリアコーティングが概ね約30%(体積%)以下の空隙率をもつ。
【0008】
本発明により、コーティングが、概ね、少なくとも一つのケイ酸塩とサーマルバリアコーティング組成との反応生成物を含み、前記サーマルバリアコーティング組成が、概ね、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、およびこれらの混合物よりなるグループから選択された少なくとも一つの金属を概ね含有する少なくとも一つのセラミックベースの化合物を含むとともに、前記反応生成物は、概ね、前記コーティングの約30%(体積%)以下の空隙率をもつ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いられるように、語句「サーマルバリア組成」は、少なくとも一つのセラミックベースの化合物と、ケイ酸塩と反応することが可能な少なくとも一つの金属とを含む組成を意味し、あらゆるターボ機械用途に適した熱膨張係数の値を示す。
【0010】
本発明で用いられるように、語句「少なくとも一つの金属」は、セラミックベースの化合物やあらゆるケイ酸塩ベースの物質などと結合もしくは接触したときに、少なくとも一つのケイ酸塩と反応して熱力学的平衡あるいは化学平衡を示す反応生成物を形成することが可能な、もともと金属、金属酸化物、金属塩などの形で存在する少なくとも一つの金属を意味する。
【0011】
本発明のサーマルバリアコーティングは、例えばカルシウムマグネシアアルミナシリケート(以下、「CMAS」と表記)などを含む(限定せず)、砂の構成成分などの少なくとも一つのケイ酸塩がサーマルバリアコーティングにおけるセラミックベースの化合物に浸透して物品が早く酸化してしまうのを防ぐように設計されており、サーマルバリアコーティングが剥離するのを防ぐ。砂粒は概ね、少なくともCMASを含むとともに、砂の地理的もしくは地質的条件に依存して、ナトリウム、鉄、カリウムなど(限定せず)、その他の成分を含む。またケイ酸塩とみなされる、鉄およびCMASを含有する砂(例えば、Fe‐CMAS)もまた、鉄とCMASの相互作用やコーティングされた物品における金属/セラミック界面への浸透により、上記と同様の問題を引き起こす。
【0012】
図1を参照すると、本発明の方法の一つを表すフローチャートが示される。物品が提供され、図1のステップ10でボンディングコート材料が任意選択的に被覆される。ボンディングコート材料はMCrAlYの化学組成をもつ。MCrAlYは、Mがニッケル、コバルト、鉄、これらの合金、およびこれらの混合物を表し、Crがクロムを表し、Alがアルミニウムを表し、Yがイットリウムを表す公知の金属コーティング系を示す。MCrAlY材料は所定の組成で適用され、堆積処理時に基体と著しく影響し合うことがないため、多くの場合オーバーレイコーティングとして知られる。MCrAlY材料のいくつかの例(限定せず)については、特許文献1に参照されているように、FeCrAlYコーティングを記載する特許文献2を参照されたい。さらに、特許文献3ではMCrAlYコーティングの堆積の前に、基体にクロム層を適用する複合コーティングが記載されている。特許文献4では著しく高い延性をもつNiCoCrAlYオーバーレイコーティングが記載されている一方、特許文献5ではCoCrAlYオーバーレイコーティングが記載されている。特許文献6では、ハフニウムとイットリウムとの組み合わせの存在により改良された抗酸化性を引き出すコバルトベースの構造の合金が記載されている。好ましいMCrAlYボンディングコート組成が特許文献7に記載されており、重量%で、5〜40%のCrと、8〜35%のAlと、0.1〜2.0%のYと、0.1〜7%のSiと、0.1〜2.0%のHfと、残部がNi、Co、およびこれらの混合物よりなるグループから選択されたものからなる重量百分率の組成範囲をもち、これは本出願人に譲渡され、本願の参照となる。また、本出願人に譲渡され、本願の参照となる特許文献8も参照されたい。
【0013】
またボンディングコート材料が、Al、PtAlなどを含み、拡散被覆として公知である。さらに、ボンディングコート材料が、Al、PtAl、上記のMCrAlYなどを含み、カソードアークコーティングとして公知である。
【0014】
MCrAlYボンディングコートは、オーバーレイボンディングコート、拡散ボンディングコート、カソードアークボンディングコートなど(限定せず)の、所望の組成の高密度で、均一、接着性のあるコーティングを作り出すことが可能なあらゆる方法により適用されうる。この技術としては、拡散処理法(例えば、内側、外側など)、低圧プラズマ溶射、エアプラズマスプレー、スパッタリング、カソードアーク、電子ビーム物理蒸着法、高速プラズマ溶射法(例えば、HVOF、HVAF)、燃焼処理、線材溶射法、レーザービームクラッディング、電子ビームクラッディング、などを、これに限定せず含みうる。
【0015】
ボンディングコート用の粒子の大きさはあらゆる適切な大きさでよく、本実施例では約15ミクロン(0.015mm)から約60ミクロン(0.060mm)の間で、平均粒子サイズが約25ミクロン(0.025mm)である。ボンディングコート30はあらゆる適切な厚さで適用され、実施例では約5mil(0.127mm)から約10mil(0.254mm)の厚さである。ある実施例では、この厚さは約6mil(0.152mm)から約7mil(0.178mm)である。
【0016】
物品に任意選択的なボンディングコート層を適用した後、図1のステップ12で、物品がサーマルバリア組成で被覆されて、サーマルバリアコーティングを形成する。物品は通常サーマルバリア組成でコーティングされるあらゆる部品を含み、具体的には、例えばエーロフォイルをもつあらゆる部品、シールをもつあらゆる部品、エーロフォイル、シールなど(限定せず)の、ターボ機械用途で使用される部品を含む。
【0017】
サーマルバリア組成は、当業者に周知の任意の複数の処理を用いて物品に適用される。適切な適用法は、物理蒸着法(例えば、電子ビーム)、溶射(例えば、エアプラズマ、高速フレーム溶射)、スパッタリング、および前記の適用法の少なくとも一つを備えた組み合わせなど、これに限定せず含む。サーマルバリア組成は、少なくとも一つのセラミックベースの化合物、金属酸化物を含む少なくとも一つの金属、紫外線硬化性樹脂もしくは熱硬化性樹脂などを含みうる。当業者にとって認識されるように、電子ビーム物理蒸着法を介して被覆されたサーマルバリアコーティングは、隙間のある自由に直立した柱状構造を呈する柱間微小構造を形成し、隙間はすなわち柱状構造の間に形成された気孔や空隙などである。また当業者にとって認識されるように、溶射法を介して被覆されたサーマルバリアコーティングは、溶射法を介して形成された飛沫や微小割れにより、蛇行かつ相互連結した孔隙を呈する。
【0018】
少なくとも一つの金属がセラミックベースの化合物とともに堆積されて少なくとも一つの傾斜層(graded layer)が形成されるが、これは当業者に周知のように、物理蒸着法(例えば、電子ビーム)、溶射(例えば、エアプラズマ、高速フレーム溶射)、スパッタリング、およびこれらの方法の少なくとも一つを備えた組み合わせなど(限定せず)の、適切な適用法を用いて適用される。少なくとも一つのセラミックベースの化合物とサーマルバリアコーティングの少なくとも一つの金属とが同じ方法を用いて適用されるが、例えば、セラミックベースの化合物と少なくとも一つの金属との両方が物理蒸着法を用いて適用される。セラミックベースの化合物と少なくとも一つの金属との傾斜化により、傾斜化されたサーマルバリアコーティングの少なくとも表面においては少なくとも一つの金属がほぼ100%存在するコーティングが形成される。
【0019】
当業者に周知のようにサーマルバリア組成はターボ機械用途で使用される少なくとも一つのセラミックベースの化合物を含む。代表的なサーマルバリア組成は、任意の安定化ジルコン酸塩、任意の安定化ハフニウム酸塩、および前記の化合物のうち少なくとも一つを含む組み合わせなどで、これは例えば、イットリア安定化ジルコニア、カルシア安定化ジルコニア、マグネシア安定化ジルコニア、イットリア安定化ハフニア、カルシア安定化ハフニア、マグネシア安定化ハフニアなどである。イットリア安定化ジルコニアは7YSZ(登録商標)として市販されている。
【0020】
またサーマルバリア化合物は少なくとも一つの金属を含む。この金属は、少なくとも一つのケイ酸塩と反応して反応生成物を形成する能力に基づき選択される。反応生成物は、セラミックベースの化合物や任意のケイ酸塩ベースの物質などと結合もしくは接触したときに熱力学的平衡および化学平衡の両方を示す。本発明で用いられるのに適した金属は、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、およびこれらの混合物など(限定せず)を含みうる。少なくとも一つの金属は、例えば、共析(co‐deposited)など、処理の実施条件によって要求されるあらゆる形で被覆される。少なくとも一つの金属は、金属(例えば、微粒子、固体ターゲット、粉末など)、金属酸化物(例えば、単体、2元系(binary)、多元系金属(polymetal))、金属塩(例えば、単体、2元系(binary)、多元系金属(polymetal))などとして存在しうる。共析処理中、当業者に周知のように少なくとも一つの金属がセラミックベースの化合物と反応して安定化セラミックベース化合物を形成する。例えば、ガドリニウムが7YSZ(登録商標)とともに堆積されてガドリニア安定化ジルコニアサーマルバリアコーティングを形成する。
【0021】
いったんサーマルバリアコーティングが適用されると、図1のステップ14で物品が少なくとも一つの紫外線硬化性樹脂もしくは熱硬化性樹脂を含む溶液と接触される。サーマルバリアコーティングが隙間のある柱状構造をもつ場合、物品を約68°F(20℃)〜約150°F(66℃)で、はじめ約10torr(0.19psi)〜約100torr(1.9psi)の減圧下で約2分〜約5分間溶液に浸漬し、そしてこの段階で大気圧、すなわち760torr(14.7psi)に調節する。サーマルバリアコーティングが蛇行、相互連結した孔隙をもつ場合、物品を約68°F(20℃)〜約150°F(66℃)で、はじめ約10torr(0.19psi)〜約100torr(1.9psi)の減圧下で約2分〜約10分間溶液に浸漬し、そしてこの段階で大気圧に調節する。溶液に用いられるのに適した溶媒は、水、アルコール、および前記の溶媒のうち少なくとも一つを備えた組み合わせなどを、これに限定せず含む。
【0022】
紫外線硬化性樹脂は、開始剤、添加剤、条件剤、モノマー、およびオリゴマーの各々を少なくとも一つずつ含む樹脂である。樹脂は、例えば二重硬化樹脂などの、一つもしくは複数の硬化ステップを要するウレタンベースの樹脂を含む。少なくとも一つの開始剤は、適合する波長の紫外光エネルギーに露出されたときに樹脂の重合を開始する物質を含む。二重硬化樹脂では、2つの開始剤が必要であり、樹脂の重合を促進するために第2の開始剤が加熱を要する。コーティングを硬化させる際、当業者に周知のように例えばコーティングの柱状構造もしくは微小柱状構造の間や、あるいはコーティング内の特定の深みなどの、樹脂材料に紫外光エネルギーが到達しない部位には二重硬化樹脂が効果的である。少なくとも一つの添加剤は、例えば流動度、湿潤度、色、蛍光、および不粘着性表面の達成といった(限定せず)、一つもしくは複数の樹脂特性を促進させることが可能な充填化学物質を含む。少なくとも一つの条件剤は、例えば樹脂の耐衝撃性や亀裂耐性といった耐久性を向上させることが可能な物質を含む。少なくとも一つのモノマーは、例えばコーティングされた物品表面への樹脂の付着などの、表面物質への付着を提供し向上させることが可能な、少なくとも一つのポリマーの一単位を含む。少なくとも一つのオリゴマーは、樹脂のバックボーンとして認識されるとともに、例えば硬度、伸び率、耐化学性などの(限定せず)、紫外線硬化性樹脂の基本的特性を与える約6個〜約40個のモノマーユニットのポリマーユニットを含む。別の方法では、当業者に周知のように紫外線硬化性樹脂が少なくとも一つの熱硬化性樹脂に置き換えられうる。
【0023】
サーマルバリアコーティングでコーティングされた物品の接触処理後、図1のステップ16でサーマルバリアコーティング内に存在する紫外線硬化性樹脂を硬化させるようにコーティングされた物品が紫外光エネルギーで処理される。コーティングされた物品は、紫外線光エネルギーで約10秒〜約60秒間、当業者に周知の方法を用いて処理される。別の方法として、熱硬化性樹脂を利用する場合、コーティングされた物品は約300°Fの温度で約20分〜約60分間、当業者に周知のようにオーブンもしくは同様の適切な装置内で処理される。
【0024】
サーマルバリアコーティングでコーティングされた物品の硬化処理後、図1のステップ18で、余分な溶媒、分散剤や樹脂材料を除去、すなわち蒸発もしくはバーンオフ(燃焼除去)させるように物品を乾燥させる。物品は、本発明で使用されるのに適した当業者に周知の任意の方法を用いて乾燥される。適切な乾燥方法は、空気乾燥、圧力下での乾燥、発熱体の下での乾燥、および前記の方法のうち少なくとも一つを備えた組み合わせなどを、これに限定せず含む。物品を乾燥させるのに要する時間は幾つかの要因、特に懸濁液の溶媒に依存する。例えば、サーマルバリアコーティングが被覆された物品は、樹脂材料をバーンオフするために約750°F〜約1600°Fの温度で約10分〜約90分間乾燥処理される。しかしながら、任意の溶射法を用いてサーマルバリアコーティングを適用する場合、乾燥ステップは任意選択的となるか、もしくは処理過程から省略される場合がある。
【0025】
再び図1を参照すると、物品の任意選択的な乾燥処理後、所望のサーマルバリアコーティング特性を達成するように図1のステップ20で、ステップ14,16,18が必要なだけ繰り返される。コーティングされた物品の所望のサーマルバリアコーティング特性は、少なくともサーマルバリアコーティングの30%(体積%)以下、望ましくはサーマルバリアコーティングの20%以下の所望の孔隙率によって特徴づけられる。
【0026】
本発明のサーマルバリアコーティングは少なくとも一つのケイ酸塩と反応してサーマルバリアコーティング上もしくは内部に、例えば層などの、反応生成物を形成するように設計されている。この結果、本発明のサーマルバリアコーティングは運転時に少なくとも一つのケイ酸塩と本発明のサーマルバリアコーティング組成の構成成分との少なくとも一つの反応生成物を含みうる。
【0027】
サーマルバリアコーティング組成の構成成分は、本発明に記載の量を含有する前述の少なくとも一つのセラミックベースの化合物および少なくとも一つの金属である。少なくとも一つのケイ酸塩と本発明のサーマルバリアコーティングの少なくとも一つの金属との反応生成物は、本発明によりコーティングされた物品の有効期間中に複数の反応生成物が形成されうるので、さらに少なくとも一つの反応生成物を含む。例えば、ガドリニウム安定化ジルコン酸塩と7YSZ(登録商標)とを含有するサーマルバリアコーティングがCMASと反応して、例えばケイ酸オキシアパタイト(silicate oxyapatite)、ケイ酸塩、ガーネット、ガドリニア、カルシア、ジルコニア、シリカ、およびこれらの混合物などを含有する反応生成物を形成しうる。
【0028】
少なくとも一つの金属がサーマルバリアコーティングの全体を通して分散され、例えば溶融砂粒などの少なくとも一つのケイ酸塩がコーティングされた物品の金属/セラミック界面へと浸透するに従い、一つもしくは複数の反応生成物が本発明のサーマルバリアコーティングの全体を通して形成される。少なくとも一つの反応生成物がサーマルバリアコーティングを通してシーラント組成すなわち層を形成する。サーマルバリアコーティングが、例えば磨耗、腐食、剥離などの、一般的な使用に見合った通常の摩損や破損を受けながらも、結果的なシーラント組成物は依然として残る。したがって、サーマルバリアコーティングが有効期間中に磨耗していくと、シーラント層は再形成されて損傷を受けていない状態のまま残り、効果的にサーマルバリアコーティングに取って代わり、サーマルバリアコーティングとなる。また結果として得られるシーラント層はサーマルバリアコーティングの30%(体積%)以下の所望の孔隙率を示し、望ましくはサーマルバリアコーティングの20%以下の孔隙率を示す。
【0029】
図2および図3を参照すると、本発明の全ての処理により結果として得られた製品は、任意選択的なボンディングコート層32とサーマルバリアコーティングの少なくとも一つの傾斜層34とでコーティングされた物品30(図2参照)、もしくはサーマルバリアコーティングの少なくとも一つの傾斜層42でコーティングされた物品40(図3参照)である。前述のように、物品は、エーロフォイルをもつあらゆる部品、シールをもつあらゆる部品、エーロフォイル、シールなど(限定せず)の、ターボ機械用途で用いられる部品を含む。当業者に周知のように、一般にシールをもつターボ機械部品もしくはシールにおけるサーマルバリアコーティングは、一般にエーロフォイルをもつターボ機械部品もしくはエーロフォイルにおけるサーマルバリアコーティングよりも、その厚さが一般に厚い。同様に、本発明のコーティングされた物品は、当業者に周知のように工業基準に準拠する。
【0030】
例えば物品は、ブレード、ベーン、ステータ、および中間タービンフレームをこれに限定せず含む。さらに別の例として物品は、シール、燃焼器パネル、燃焼室、燃焼器隔壁シールド、ディスク側プレート、燃焼ノズルガイドなどを含む(限定せず)。
【0031】
一般的に、本発明のエーロフォイルを有するコーティングされた物品、もしくはコーティングされたエーロフォイルは、約0.25mil〜約15milの厚さをもつ本発明の漸変皮膜を備える。また、一般的に、本発明のシールを有するコーティングされた物品、もしくはコーティングされたシールは、約0.25mil〜約50milの厚さをもつ本発明の漸変皮膜を備える。これら本発明のコーティングされた物品におけるコーティングの厚さの幅は、当業者に将来的に認識され理解されるように物品の特定の用途に依り、拡大もしくは縮小されうる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一方法を示すフローチャート。
【図2】ボンディングコートおよび本発明のサーマルバリアコーティングの少なくとも一つの傾斜層がコーティングされた物品を示す図。
【図3】本発明のサーマルバリアコーティングの少なくとも一つの傾斜層がコーティングされた物品を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)物品の少なくとも一つの外表面上に、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、およびこれらの混合物よりなるグループから選択された少なくとも一つの金属を含んだ少なくとも一つのセラミックベースの化合物の少なくとも一つの傾斜層を適用することを備える物品のコーティング方法。
【請求項2】
(2)任意選択的に前記物品を乾燥処理することをさらに備える請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項3】
(3)任意選択的にステップ(1)、(2)を繰り返すことをさらに備える請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つのセラミックベースの化合物の適用が、傾斜層をなすように少なくとも第1のセラミックベースの化合物と第2のセラミックベースの化合物とを共析させることを備える請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項5】
前記適用ステップが、物理蒸着法、溶射法、およびスパッタリングよりなるグループから選択された方法を備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項6】
前記物理蒸着法が、電子ビーム物理蒸着法であることを特徴とする請求項5に記載のコーティング方法。
【請求項7】
前記溶射法が、高速フレーム溶射法もしくはエアプラズマ溶射法であることを特徴とする請求項5に記載のコーティング方法。
【請求項8】
前記乾燥処理が、前記セラミックベースの化合物層を約750°F〜約1600°Fの温度で約10分〜約90分間加熱することを備える請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項9】
前記セラミックベースの化合物の層を形成する前に、前記物品の前記少なくとも一つの外表面上に任意選択的にボンディングコート材料の層を形成するステップと、
前記ボンディングコート層の上に前記セラミックベースの化合物層を形成するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項10】
前記コーティングされた物品を、紫外線硬化性樹脂を含む溶液に約68°F〜約150°Fの温度、約10torr〜約100torrの圧力で約2分〜約5分間接触させるステップと、
前記コーティングされた物品を、紫外光エネルギーを用いて約10秒〜約60秒間硬化処理するステップと、
前記コーティングされた物品を、約750°F〜約1600°Fの温度で約10分〜約90分間熱処理するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項11】
前記物品を、紫外線硬化性樹脂を含む溶液に約68°F〜約150°Fの温度、約10torr〜約100torrの圧力で約2分〜約10分間接触させるステップと、
前記物品を、紫外光エネルギーを用いて約10秒〜約60秒間硬化処理するステップと、
前記物品を、約750°F〜約1600°Fの温度で約10分〜約90分間熱処理するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項12】
前記物品を、熱硬化性樹脂を含む溶液に約68°F〜約150°Fの温度、約10torr〜約100torrの圧力で約2分〜約5分間接触させるステップと、
前記物品を、約300°Fの温度で約20分〜約60分間硬化処理するステップと、
前記物品を、約750°F〜約1600°Fの温度で約10分〜約90分間熱処理するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のコーティング方法。
【請求項13】
サーマルバリアコーティングが設けられた少なくとも一つの外表面をもつ物品からなるコーティングされた物品であって、
前記サーマルバリアコーティングが、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、インジウム、スカンジウム、イットリウム、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、およびこれらの混合物よりなるグループから選択された少なくとも一つの金属を含んだ少なくとも一つのセラミックベースの化合物を含有する漸変皮膜を含むとともに、前記サーマルバリアコーティングの約30%(体積%)以下の孔隙率をもつことを特徴とするコーティングされた物品。
【請求項14】
前記少なくとも一つのセラミックベースの化合物のうち少なくとも一つが、イットリア安定化ジルコニア、カルシア安定化ジルコニア、マグネシア安定化ジルコニア、イットリア安定化ハフニア、カルシア安定化ハフニア、およびマグネシア安定化ハフニアよりなるグループから選択されることを特徴とする請求項13に記載のコーティングされた物品。
【請求項15】
前記少なくとも一つのセラミックベースの化合物が、ガドリニア安定化ジルコン酸塩およびイットリア安定化ジルコン酸塩を含むことを特徴とする請求項13に記載のコーティングされた物品。
【請求項16】
前記サーマルバリアコーティングが20%(体積%)以下の孔隙率をもつことを特徴とする請求項13に記載のコーティングされた物品。
【請求項17】
前記物品が、ブレード、ベーン、ステータ、および中間タービンフレームよりなるグループから選択されることを特徴とする請求項13に記載のコーティングされた物品。
【請求項18】
前記サーマルバリアコーティングが、約5mil〜約15milの厚さをもつことを特徴とする請求項17に記載のコーティングされた物品。
【請求項19】
前記物品が、シール、燃焼器パネル、燃焼室、燃焼器隔壁シールド、ディスク側プレート、および燃料ノズルガイドよりなるグループから選択されることを特徴とする請求項13に記載のコーティングされた物品。
【請求項20】
前記サーマルバリアコーティングが、約0.5mil〜約50milの厚さをもつことを特徴とする請求項19に記載のコーティングされた物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−211342(P2007−211342A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−909(P2007−909)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】