説明

コーティング組成物、その塗膜、反射防止膜、及び画像表示装置

【課題】塗膜を形成した際に光触媒作用による塗膜の劣化を消失又は抑制することができ、塗膜とした場合に、ヘイズ値を小さくすることができ、塗工液の分散性、分散安定性に優れ、保存性に優れ、塗工適性にも優れたコーティング組成物を提供する。
【解決手段】コーティング組成物が、少なくとも、次の(1)〜(4)の成分を含むことを特徴とする。(1)自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つコバルトがドープされた二酸化チタン微粒子に対し、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛キレート化合物で表面処理することにより得られた、光触媒活性が消失又は抑制された二酸化チタン微粒子、(2)バインダー成分、(3)分散剤、(4)有機溶剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性、分散安定性、塗工適性に優れるコーティング組成物、及び、該コーティング組成物を用いて形成した塗膜に関する。具体的には、LCDやCRT等の表示面を被覆する反射防止膜を構成する層、特に、中〜高屈折率層を形成するのに適した、耐光性が向上したコーティング組成物、該コーティング組成物を用いて形成した塗膜の層を有する反射防止膜、及び該反射防止膜を適用した画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレー(LCD)や陰極管表示装置(CRT)等の画像表示装置の表示面は、その視認性を高めるために、蛍光灯などの外部光源から照射された光線の反射が少ないことが求められる。
【0003】
透明な物体の表面を屈折率の小さい透明皮膜で被覆することにより反射率が小さくなることが従来から知られており、このような現象を利用した反射防止膜を画像表示装置の表示面に設けて視認性を向上させることが可能である。反射防止膜の層構成は、反射防止が必要とされる面に、高屈折率層または中屈折率層を形成し、さらにその上に低屈折率層を形成することにより得られる。
【0004】
このような反射防止膜の高屈折率層または中屈折率層を形成する方法は、一般に気相法と塗布法に大別され、気相法には真空蒸着法、スパッタリング法等の物理的方法と、CVD法等の化学的方法とがあり、塗布法にはロールコート法、グラビアコート法、スライドコート法、スプレー法、浸漬法、及び、スクリーン印刷法等がある。
【0005】
気相法による場合には、高機能且つ高品質な薄膜の高屈折率層及び中屈折率層を形成することが可能だが、高真空系での精密な雰囲気の制御が必要であり、また、特殊な加熱装置又はイオン発生加速装置が必要であり、そのために製造装置が複雑で大型化するために必然的に製造コストが高くなるという問題がある。また、高屈折率層及び中屈折率層の薄膜を大面積化したり或いは複雑な形状を持つフィルム等の表面に薄膜を均一な膜厚に形成することが困難である。
【0006】
一方、塗布法のうちスプレー法による場合には、塗工液の利用効率が悪く、成膜条件の制御が困難である等の問題がある。ロールコート法、グラビアコート法、スライドコート法、浸漬法及びスクリーン印刷法等による場合には、成膜原料の利用効率が良く、大量生産や設備コスト面での有利さがあるが、一般的に、塗布法により得られる高屈折率層及び中屈折率層は、気相法により得られるものと比較して機能及び品質が劣るという問題点がある。
【0007】
近年、優れた品質を有する高屈折率層及び中屈折率層の薄膜を形成し得る塗布法として、有機物からなるバインダーの溶液中に酸化チタンや酸化スズ等の高屈折率微粒子を分散させた塗工液を基板上に塗布し、塗膜を形成する方法が提案されている。
【0008】
特許文献1には、屈折率の小さい塗膜を形成するのに、無機化合物で処理されたルチル型酸化チタンを含有するコーティング組成物が、分散性、分散安定性に優れ、塗工均一性に優れ、均一な大面積の薄膜を容易に形成することができることが示されている。しかしながら、特許文献1のコーティング組成物により形成した塗膜は、耐光性が十分なものではなかった。
【0009】
特許文献2には、大量生産に適した反射防止膜を提供するのに、無機化合物で処理されたルチル型酸化チタンを含有するコーティング組成物を用いることが示されている。しかしながら、特許文献2のコーティング組成物により形成した塗膜は、耐光性が十分なものではなかった。
【0010】
特許文献3には、耐光性を向上させる反射防止塗膜を形成するのに、コーティング組成物中に亜鉛キレート化合物処理を施した金属酸化物を含ませることが示されている。しかしながら、特許文献3のコーティング組成物により形成した塗膜においても、耐光性はいまだ十分なものではなかった。
【特許文献1】特開2002−275430号公報
【特許文献2】特開2001−166104号公報
【特許文献3】特開2002−371236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
中〜高屈折率層を形成するために使用される高屈折率の金属酸化微粒子は、一般的に光触媒作用を有するため、塗膜を劣化させるという問題がある。従って、高屈折率層及び中屈折率層の塗膜が光により劣化しないことが求められる。
【0012】
中〜高屈折率層を形成する塗膜は可視光領域において透明であることが必須であり、このような中〜高屈折率層を形成するために使用される高屈折率の金属酸化物微粒子としては、一次粒子径が可視光線の波長以下である所謂超微粒子を使用すると共に、該金属酸化物微粒子を塗工液中及び塗膜中に均一に分散する必要がある。
【0013】
しかしながら一般に、微粒子の粒径を小さくしていくと、微粒子の表面積が大きくなり、微粒子間に凝集力が増大する。そして、塗工液の固形成分が凝集すると、得られる塗膜のヘイズ値が大きくなる。従って、高屈折率層及び中屈折率層の薄膜を形成する塗工液には、ヘイズ値の小さい均一な塗膜を形成するために十分な分散性を有することが求められる。
【0014】
また、塗工液には、長期間に渡って容易に保存できるように十分な分散安定性を有することが求められる。
【0015】
さらに、塗工液には、大量生産の観点から大面積薄膜を容易に形成できるように、塗工時に均一に薄く塗布することができ、且つ、乾燥むらが生じないように塗工適性が求められる。
【0016】
本発明の目的は、上記技術要求を鑑み、塗膜を形成した際に光触媒作用による塗膜の劣化を消失又は抑制することができ、塗膜とした場合に、ヘイズ値を小さくすることができ、塗工液の分散性、分散安定性に優れ、保存性に優れ、塗工適性にも優れたコーティング組成物を提供し、さらには、該コーティング組成物を用いて形成された塗膜、反射防止膜、反射防止フィルムを提供し、さらには、該反射防止膜で表示面を被覆した画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための本発明の1番目のコーティング組成物は、少なくとも、次の(1)〜(4)の成分を含むことを特徴とする。即ち、(1)自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つコバルトがドープされた二酸化チタン微粒子に対し、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理することにより得られた、光触媒活性が消失又は抑制された二酸化チタン微粒子と、(2)バインダー成分と、(3)分散剤と、(4)有機溶剤を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の2番目のコーティング組成物は、本発明の1番目のコーティング組成物において、前記(1)の光触媒活性が消失又は抑制された二酸化チタン微粒子に代えて、次の構成の金属酸化物微粒子を採用したものであり、バインダー成分、分散剤及び有機溶剤は本発明の1番目のコーティング組成物と同じである。即ち、本発明の2番目のコーティング組成物に使用する二酸化チタン微粒子は、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つコバルトがドープされた二酸化チタン微粒子に対し、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理し、さらにアニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングすることにより得られた、光触媒活性が消失又は抑制された二酸化チタン微粒子である。
【0019】
本発明の3番目のコーティング組成物は、本発明の1番目のコーティング組成物において、前記(1)の光触媒活性が消失又は抑制された二酸化チタン微粒子に代えて、次の構成の金属酸化物微粒子を採用したものであり、バインダー成分、分散剤及び有機溶剤は本発明の1番目のコーティング組成物と同じである。即ち、本発明の3番目のコーティング組成物に使用する二酸化チタン微粒子は、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つコバルトがドープされた二酸化チタン微粒子に対し、光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物をコーティングし、さらに、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理することにより得られた、光触媒活性が消失又は抑制された二酸化チタン微粒子である。
【0020】
本発明の4番目のコーティング組成物は、本発明の1番目のコーティング組成物において、前記(1)の光触媒活性が消失又は抑制された二酸化チタン微粒子に代えて、次の構成の金属酸化物微粒子を採用したものであり、バインダー成分、分散剤及び有機溶剤は本発明の1番目のコーティング組成物と同じである。即ち、本発明の4番目のコーティング組成物に使用する二酸化チタン微粒子は、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つコバルトがドープされた二酸化チタン微粒子に対し、光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物をコーティングし、さらに、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理し、さらにアニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングすることにより得られた、光触媒活性が消失又は抑制された二酸化チタン微粒子である。
【0021】
本発明の塗膜は、前記した本発明の1番目、2番目、3番目又は4番目のコーティング組成物を塗工体の表面に塗布し、硬化させることにより得られたものであり、硬化後膜厚が0.05〜10μmの時に、屈折率が1.55〜2.20で、且つ、JIS−K7361−1の規定に従って基材と一体の状態で測定したヘイズ値が、該基材だけのヘイズ値と変わらないか又は該基材だけのヘイズ値との差が1%以内であることを特徴とする。
【0022】
本発明の1番目の塗膜は、(1)自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つコバルトがドープされた二酸化チタン微粒子に対し、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理して得られた、光触媒活性が抑制された二酸化チタン微粒子、及び、(2)分散剤が、(3)硬化したバインダー中に均一に混合されてなる塗膜であり、該塗膜の膜厚が0.05〜10μmの時に、屈折率が1.55〜2.20で、且つ、JIS−K7361−1の規定に従って基材と一体の状態で測定したヘイズ値が、該基材だけのヘイズ値と変わらないか又は該基材だけのヘイズ値との差が1%以内であることを特徴とする。
【0023】
本発明の2番目の塗膜は、(1)自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つコバルトがドープされた二酸化チタン微粒子に対し、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理し、さらにアニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングすることにより得られた、光触媒活性が消失又は抑制された二酸化チタン微粒子、及び、(2)分散剤が、(3)硬化したバインダー中に均一に混合されてなる塗膜であり、該塗膜の膜厚が0.05〜10μmの時に、屈折率が1.55〜2.20で、且つ、JIS−K7361−1の規定に従って基材と一体の状態で測定したヘイズ値が、基材だけのヘイズ値と変わらないか又は該基材だけのヘイズ値との差が1%以内であることを特徴とする。
【0024】
本発明の3番目の塗膜は、(1)自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つコバルトがドープされた二酸化チタン微粒子に対し、光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物をコーティングし、さらに、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理することにより得られた、光触媒活性が消失又は抑制された二酸化チタン微粒子、及び、(2)分散剤が、(3)硬化したバインダー中に均一に混合されてなる塗膜であり、該塗膜の膜厚が0.05〜10μmの時に、屈折率が1.55〜2.20で、且つ、JIS−K7361−1の規定に従って基材と一体の状態で測定したヘイズ値が、該基材だけのヘイズ値と変わらないか又は該基材だけのヘイズ値との差が1%以内であることを特徴とする。
【0025】
本発明の4番目の塗膜は、(1)自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つコバルトがドープされた二酸化チタン微粒子に対し、光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物をコーティングし、さらに、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理し、さらにアニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングすることにより得られた、光触媒活性が抑制された二酸化チタン微粒子、及び、(2)分散剤が、(3)硬化したバインダー中に均一に混合されてなる塗膜であり、該塗膜の膜厚が0.05〜10μmの時に、屈折率が1.55〜2.20で、且つ、JIS−K7361−1の規定に従って基材と一体の状態で測定したヘイズ値が、該基材だけのヘイズ値と変わらないか又は該基材だけのヘイズ値との差が1%以内であることを特徴とする。
【0026】
本発明の塗膜は反射防止膜の少なくとも1層を構成することができ、反射防止膜は、光透過性を有し且つ互いに屈折率が異なる光透過性層を二層以上積層したものであり、前記光透過性層のうちの少なくとも一層を本発明の塗膜とすることができる。
【0027】
本発明の反射防止膜は、光透過性を有する基材フィルムの少なくとも一面側に、光透過性を有し且つ互いに屈折率が異なる光透過性層を二層以上積層してなり、前記光透過性層のうちの少なくとも一層が、前記本発明の塗膜であることを特徴とする。
【0028】
本発明の画像表示装置は、反射防止膜により表示面を被覆した画像表示装置であって、前記反射防止膜は、光透過性を有し且つ互いに屈折率が異なる光透過性層を二層以上積層してなり、前記光透過性層のうちの少なくとも一層が、前記本発明の塗膜であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明の1番目、2番目、3番目又は4番目のコーティング組成物は、光触媒活性を持つ二酸化チタン微粒子が、コバルトでドープされることにより、コバルトの自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質により、二酸化チタン微粒子は、光触媒活性が消失又は抑制される。さらに、該二酸化チタン微粒子は、亜鉛の有機金属化合物で表面処理されているので、該亜鉛の有機金属化合物の自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質により、該二酸化チタン微粒子の光触媒活性が消失又は抑制される。したがって、本発明の1番目〜4番目のコーティング組成物を用いて塗膜を作製した場合に、光触媒作用が原因のバインダー成分の塗膜の劣化に伴う塗膜の強度低下や、黄変現象等が消失又は抑制されたものとなる。
【0030】
さらに、本発明の1番目〜4番目のコーティング組成物においては、分散剤が含まれているため、二酸化チタン微粒子は塗工液中、及び該塗工液により形成した塗膜中に均一に分散することができ、長期間にわたる分散安定性にも優れているので塗工液のポットライフが長く、塗工適性にも優れ、長期間保存した後に使用する場合でもヘイズ値の小さい透明な薄膜を、大面積の均一な厚みで容易に形成することができる。
【0031】
上記本発明の1番目の特徴に加え、本発明の2番目のコーティング組成物は、含有されるコバルトでドープされた二酸化チタン微粒子が、アニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングされているので、該二酸化チタン微粒子は、1番目のコーティング組成物の二酸化チタン微粒子に比べて、コーティング組成物中、及び該コーティング組成物により形成した塗膜中にさらに均一に分散することができ、したがって、塗膜のヘイズ値がさらに低くなる。
【0032】
上記本発明の1番目の特徴に加え、本発明の3番目のコーティング組成物は、含有されるコバルトでドープされた二酸化チタン微粒子が、さらに光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物でコーティングされているので、該二酸化チタン微粒子は、1番目のコーティング組成物の二酸化チタン微粒子に比べて、光触媒活性が低いものとなっている。
【0033】
上記本発明の1番目の特徴に加え、本発明の4番目のコーティング組成物は、含有されるコバルトでドープされた二酸化チタン微粒子が、さらに光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物でコーティングされ、さらに、アニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングされているので、該二酸化チタン微粒子は、1番目のコーティング組成物の二酸化チタン微粒子に比べて、光触媒活性が低いものとなっており、且つ、コーティング組成物中、及び該コーティング組成物により形成した塗膜中にさらに均一に分散することができ、したがって、塗膜のヘイズ値がさらに低くなる。
【0034】
本発明の塗膜は、二酸化チタン微粒子の配合量をコントロールして屈折率を調節できるので、反射防止膜を構成する一層又は二層以上の光透過性層として好適に利用できる。
【0035】
本発明の1番目及び2番目のコーティング組成物においては、二酸化チタン微粒子は、一般的に高屈折率微粒子に属するので、本発明の1番目及び2番目のコーティング組成物を用いて形成された塗膜は、二酸化チタン微粒子の配合量により、中屈折率乃至高屈折率塗膜となる。
【0036】
本発明によれば、硬化後膜厚が0.05〜10μmの塗膜を形成した時に、屈折率を1.55〜2.20の範囲に調節し、且つ、JIS−K7361−1の規定に従って基材と一体の状態で測定したヘイズ値を、前記基材だけのヘイズ値と変わらないか又は前記基材だけのヘイズ値との差が1%以内に抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下において本発明を詳しく説明する。
【0038】
二酸化チタン微粒子
本発明のコーティング組成物に使用される二酸化チタン微粒子は、屈折率が高く、且つ、無色であるか又はほとんど着色していないので、屈折率を調節するための成分として適している。酸化チタンには、ルチル型、アナターゼ型、アモルファス型があるが、アナターゼ型やアモルファス型に比べてルチル型が屈折率が高いので好ましい。
【0039】
本発明のコーティング組成物は、これらの高屈折率の二酸化チタン微粒子を含有しているので、添加量を変化させることにより、該コーティング組成物を用いて形成した塗膜の屈折率を中屈折率乃至高屈折率の範囲で容易に調節することができる。
【0040】
二酸化チタン微粒子は、塗膜の透明性を低下させないために、いわゆる超微粒子サイズのものを用いる。ここで、「超微粒子」とは、一般的にサブミクロンオーダーの粒子のことであり、一般的に「微粒子」と呼ばれている数μmから数100μmの粒径を有する粒子よりも粒径の小さいものを意味している。すなわち本発明において二酸化チタン微粒子は、一次粒子径が0.01μm以上であり、且つ、0.1μm以下、好ましくは0.03μm以下のものを用いる。平均粒子径が0.01μm未満のものは、コーティング組成物中に均一に分散させることが困難であり、ひいては、二酸化チタン微粒子を均一に分散させた塗膜が得られなくなる。また、平均粒子径が0.1μm超のものは、塗膜の透明性を損なうので好ましくない。
【0041】
二酸化チタン微粒子の一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)等により目視計測してもよいし、動的光散乱法や静的光散乱法等を利用する粒度分布計等により機械計測してもよい。二酸化チタン微粒子の一次粒子径が上記範囲内であれば、その粒子形状が球状であっても針状であっても、その他どのような形状であっても本発明に用いることができる。
【0042】
二酸化チタン微粒子は光触媒活性を有しているので、該微粒子を単に含むコーティグ組成物を用いて塗膜を形成すると、光触媒作用によって塗膜を形成しているバインダー樹脂間の化学結合が切れて塗膜強度が低下したり、塗膜が黄変して塗膜の透明度が下がり、ヘイズ値が上昇しやすいという不都合がある。
【0043】
本発明の1番目のコーティング組成物においては、このような不都合を取り除くために二酸化チタン微粒子は、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ、コバルトがドープされたものが使用され、さらに、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛キレート化合物で表面処理されたものが使用されるので、二酸化チタン微粒子の光触媒活性は低下又は消失されている。
【0044】
本発明の2番目のコーティング組成物においては、このような不都合を取り除くために二酸化チタン微粒子は、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ、コバルトがドープされたものが使用され、さらに、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理され、さらにアニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングすることにより得られたものが使用される。本発明の2番目のコーティング組成物においては、二酸化チタン微粒子の光触媒活性は低下又は消失されていると共に、二酸化チタン微粒子がアニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングされているので、コーティング組成物中に二酸化チタン微粒子を効率よく分散させることができる。
【0045】
本発明の3番目のコーティング組成物においては、このような不都合を取り除くために二酸化チタン微粒子は、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ、コバルトがドープされたものが使用され、さらに光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物でコーティングされ、さらに、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理されているので、該二酸化チタン微粒子は、本発明の1番目のコーティング組成物の二酸化チタン微粒子に比べて、光触媒活性が低いものとなっている。
【0046】
本発明の4番目のコーティング組成物においては、このような不都合を取り除くために二酸化チタン微粒子は、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ、コバルトがドープされたものが使用され、さらに光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物でコーティングされ、さらに、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理し、さらにアニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングされているので、本発明の4番目のコーティング組成物においては、二酸化チタン微粒子の光触媒活性は低下又は消失されていると共に、二酸化チタン微粒子がアニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングされているので、コーティング組成物中に二酸化チタン微粒子を効率よく分散させることができる。
【0047】
さらに、1番目〜4番目の本発明のコーティング組成物においては、二酸化チタン微粒子をコーティング組成物中に分散させるために後述するようにアニオン性の極性基を有する分散剤を配合することにより、二酸化チタン微粒子を効率よく分散させることができる。
【0048】
コバルトドープ二酸化チタン微粒子の作製方法
本発明で使用するコバルトドープ二酸化チタン微粒子において、コバルトはCoO及び/又はCo2 O3 の状態で存在している。このようなコバルトドープ二酸化チタン微粒子の製造方法においては、チタン源、コバルト源の基剤成分を混合し、600〜1100℃の温度で焼成することにより顔料とすることができる。本発明においては、チタン源として超微粒子の含水酸化チタンを用いることができ、このものは、ルチル型の結晶構造を有する微小二酸化チタンゾルであり、X線回折法による測定でルチル型結晶のピークを示す微小含水酸化チタンのゾルであり、その平均結晶粒子径は通常50〜120Åのものである。このものは、例えば、四塩化チタン水溶液をアンモニア水でpH7〜8で中和して得られるコロイド状の非晶質含水酸化チタンを熟成したり、メタチタン酸或はオルトチタン酸などの非晶質含水酸化チタンを水酸化ナトリウム水溶液中で加熱処理した後、塩酸溶液中で加熱処理したり、硫酸チタン水溶液や四塩化チタン水溶液を加熱して加水分解することにより得ることができる。本発明においては、このようなルチル型の結晶構造を有する微小二酸化チタンゾルをそのまま或は乾燥後できるだけ細かく粉砕して使用することができる。
【0049】
前記基剤成分としてのコバルト源としては、種々のものを使用できるが、塩化コバルト(II)、塩化コバルト(III )、硫酸コバルト(II)、硫酸コバルト(III )、炭酸コバルト(II)などを使用することができる。
【0050】
上記基剤二酸化チタン成分、コバルト成分の原料の混合は、種々の方法によって行なうことができるが、例えば、原料として粉末を使用する場合は、それらを単に混合すればよい。また、コバルト源の基剤成分の化合物溶液を使用する場合は、例えば、基剤成分の溶液を超微粒子含水酸化チタンに添加混合した後、乾燥させたり、或いは、超微粒子含水酸化チタンの水分散スラリーに化合物溶液を添加し、酸またはアルカリで中和して該含水酸化チタンの表面に各成分を沈殿させたり、若しくは、コバルト源の水分散体として使用する場合は、超微粒子含水酸化チタンのスラリーに該水分散体を添加混合処理した後このものを濾過、洗浄することにより行うことができる。
【0051】
超微粒子含水酸化チタンとコバルトの混合割合は、超微粒子含水酸化チタンのTiO100重量部に対し、コバルトはCoOもしくはCoとして1〜10重量部、好ましくは3〜7重量部である。コバルトが1重量部より少ないと耐光性に効果がなく、10重量部より多くなると、屈折率が低くなる、粒経制御が困難になる、他化合物(CoTiO等)ができる等の問題が発生する。
【0052】
以上のように混合して得られた原料混合物を600〜1100℃で焼成する。なお、該原料混合物は、スラリー状、ケーキ状、或は乾燥粉末状でもよい。焼成により各成分が固相反応し、本発明に使用できるコバルトドープ二酸化チタン微粒子が得られる。本発明においては、チタン源として超微粒子の含水酸化チタンを用いるので、焼成物をマイクロナイザー、ジェットミル、ローラーミル、バンタムミル、サンプルミルなどの乾式粉砕機で粉砕することにより、容易に平均単一粒子径が0.01〜0.1μmの二酸化チタン微粒子を得ることができる。焼成は種々の方法によって行うことができるが、例えば電気炉、トンネルキルンなどの静置炉または内燃式或は外燃式ロータリーキルンなどを使用して行うことができる。
【0053】
亜鉛の有機金属化合物による表面処理
本発明の1番目〜4番目のコーティング組成物においては、耐光性を向上させるために、亜鉛の有機金属化合物により、二酸化チタン微粒子の表面処理が行われる。本発明に使用される前記亜鉛キレート化合物は、亜鉛アセチルアセトナート Zn(CHCOCHCOCH)、安息香酸亜鉛 Zn(CCOO)、酢酸亜鉛 Zn(CHCOO)、2−エチルヘキシル酢酸亜鉛 Zn(CH(CH)CH(C)COO)から選ばれた1種又は2種以上であることが望ましい。亜鉛の有機金属化合物で表面処理された二酸化チタン微粒子は、光触媒活性が消失又は抑制される。
【0054】
亜鉛の有機金属化合物により、二酸化チタン微粒子の表面処理を行うには、粉砕後の二酸化チタン微粒子に、アルコール等の適性な溶剤に溶かした亜鉛の有機金属化合物を添加し、均一に被覆されるよう混合する。二酸化チタンをスラリー化し、湿式で行っても良い。表面処理量としては、TiO100重量部に対し、亜鉛キレート化合物が1〜10重量部、好ましく3〜7重量部を添加する。10重量部以上では、分散性・屈折率・膜強度に悪影響を及ぼす。
【0055】
光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物によるコーティング処理
本発明の3番目及び4番目のコーティング組成物においては、耐光性をさらに向上させるために、下記の無機化合物により、二酸化チタン微粒子が表面処理される。光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物には、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、及びインジウムドープ酸化スズより選ばれた1種又は2種以上の金属酸化物が使用可能である。
【0056】
無機化合物を表面処理する方法としては、上記二酸化チタン微粒子の水分散液に、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム、スズ、インジウム及びアンチモンの群から選ばれる少なくとも一種の元素の水溶性塩を添加した後、酸又はアルカリを加えて中和して、該二酸化チタン微粒子の表面に含水酸化物で沈澱させる。副生する水溶性塩類はデカンテーション、ろ過、洗浄により除去し、乾燥、粉砕する。表面処理量としては、TiO100重量部に対し、1〜15重量部、好ましく5〜10重量部である。15重量部以上では、屈折率の低下が見られる。
【0057】
アニオン性の極性を有する有機化合物及び/又は有機金属化合物によるコーティング処理
本発明の2番目及び4番目のコーティング組成物では、インキにする際の分散性を付与するために、亜鉛の有機金属化合物で表面処理後、さらにアニオン性の極性基を有する有機化合物、及び/又は、有機金属化合物にて表面処理を行う。表面処理方法は亜鉛の有機金属化合物と同様である。場合によっては、化学吸着を行うよう熱処理を行う。
【0058】
アニオン性の極性基を有する有機化合物には、有機カルボン酸が挙げられる。有機カルボン酸としては、カルボキシル基、リン酸基、又は、水酸基のようなアニオン性の極性基を有するものを用いることができ、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性リン酸トリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート等を例示することができる。
【0059】
アニオン性の極性基を有する有機金属化合物には、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤としては、具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を例示することができる。
【0060】
チタネートカップリング剤としては、具体的には、味の素(株)より市販されている、製品名プレンアクトKR−TTS、KR−46B、KR−55、KR−41B、KR−38S、KR138S、KR238S、338X、KR−44、KR9SA、KR−ET等が例示でき、更に、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラtert−ブトキシチタン等の金属アルコトシドも使用することができる。
【0061】
これらのアニオン性の極性を有する有機化合物及び/又は有機金属化合物は、1種又は2種以上を組合せて用いてもよい。二酸化チタン微粒子をアニオン性の極性を有する有機化合物及び/又は有機金属化合物により被覆して疎水性を付与するには、二酸化チタン微粒子をアニオン性の極性を有する有機化合物及び/又は有機金属化合物を有機溶剤中に溶解させておき、この溶液中に、前記した自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ金属がドープされた二酸化チタン微粒子を分散させた後に、有機溶剤を完全に蒸発させることにより被覆することができる。
【0062】
本発明の2番目及び4番目のコーティング組成物における、二酸化チタン微粒子は、アニオン性の極性を有する有機化合物及び/又は有機金属化合物が被覆されているので、該二酸化チタン微粒子は塗工液中、及び該塗工液により形成した塗膜中に均一に分散することができ、塗工適性もよく、したがって、塗膜のヘイズ値が低くなり、大面積の均一な薄膜の形成が可能となる。
【0063】
バインダー成分
本発明のコーティング組成物中のバインダー成分は、電離放射線硬化性が望ましく、本発明のコーティング組成物に成膜性や、基材や隣接する層に対する密着性を付与するために、必須成分として配合される。電離放射線硬化性のバインダー成分は、コーティング組成物中において重合していないモノマー又はオリゴマーの状態で存在しているので、コーティング組成物の塗工適性に優れ、均一な大面積薄膜を形成しやすい。また、塗膜中のバインダー成分を塗工後に重合、硬化させることにより十分な塗膜強度が得られる。
【0064】
電離放射線硬化性のバインダー成分としては、紫外線や電子線のような電離放射線の照射により直接、又は開始剤の作用を受けて間接的に重合反応を生じる官能基を有するモノマー又はオリゴマーを用いることができる。本発明においては、主に、エチレン性二重結合を有するラジカル重合性のモノマーやオリゴマーを用いることができ、必要に応じて光開始剤が組み合わせられる。しかしながら、その他の電離放射線硬化性のバインダー成分を用いることも可能であり、例えば、エポキシ基含有化合物のような光カチオン重合性のモノマーやオリゴマーを用いてもよい。光カチオン重合性のバインダー成分には、必要に応じて光カチオン重合開始剤が組み合わせて用いられる。バインダー成分の分子間で架橋結合が生じるように、バインダー成分であるモノマー又はオリゴマーは、重合性官能基を2 個以上有する多官能性のバインダー成分であることが好ましい。
【0065】
エチレン性二重結合を有するラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーとしては、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2 −ヒドロキシ−3−フエノキシプロピルアクリレート、カルボキシポリカプロラクトンアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド等の単官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート等のジアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート誘導体やジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、或いは、これらのラジカル重合性モノマーが重合したオリゴマーを例示することができる。ここで「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0066】
電離放射線硬化性のバインダー成分のうちでも、分子中に水酸基を残したバインダー成分を用いるのが好ましい。水酸基もアニオン性の極性基であることから、当該バインダー成分は二酸化チタン微粒子との親和性が高く、分散助剤として作用する。従って、該バインダー成分を用いると、コーティング組成物中および塗膜中での二酸化チタン微粒子の分散性が向上し、また、分散剤の使用量を減らす効果がある。分散剤はバインダーとしては機能しないので、分散剤の配合割合を減らすことによって塗膜強度の向上を図ることができる。また、バインダー中に含まれる水酸基は、水素結合によりハードコート層や低屈折率層等の隣接層に対する密着性を向上させることが可能となる。例えば、水酸基を有するバインダー成分を配合したコーティング組成物を用いて中〜高屈折率層を形成するには、いわゆるウエット法により塗工液から形成した、例えば、ハードコート層や低屈折率層に対しても、また、蒸着法等のいわゆるドライ法により形成した低屈折率層に対しても優れた密着性が得られる。
【0067】
分子中に水酸基を残したバインダー成分としては、具体的には、ペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレートまたはジペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレートをバインダー樹脂の骨格とし、該分子中に水酸基を残したものを用いることができる。すなわち、そのようなバインダー成分は、一分子のペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールに2分子以上の(メタ)アクリル酸がエステル結合しているが、ペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールの分子中にもともとある水酸基の一部はエステル化されないまま残っているものであり、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレートを例示することができる。ペンタエリスリトール多官能アクリレート及びジペンタエリスリトール多官能アクリレートは、一分子中にエチレン性二重結合を2個以上有するので、重合時に架橋反応を起こし、高い塗膜強度が得られる。
【0068】
分散剤
分散剤は、二酸化チタン微粒子を本発明のコーティング組成物(塗工液)中に均一に分散させ、該塗工液により形成した塗膜中に均一に分散することができ、塗工液のポットライフを長くさせ、ヘイズ値の小さい透明膜を形成することができる。
【0069】
分散剤は、アニオン性の極性基を有するものが望ましく、アニオン性の極性基を有する分散剤は、二酸化チタン微粒子に対して親和性が高く、本発明のコーティング組成物における二酸化チタン微粒子に対して分散性を付与するために配合されることに加えて、水素結合により、他の層、例えば、ハードコート層或いは低屈折率層などの隣接層に対する密着性を向上させることが可能となる。
【0070】
アニオン性の極性基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、水酸基などが該当する。
アニオン性の極性基を有する分散剤としては、具体的には、ビックケミー・ジャパン社がディスパービックの商品名で供給する製品群、すなわち、Disperbyk −1 11,Disperbyk −110 ,Disperbyk −116 ,Disperbyk −140 ,Disperbyk −161 ,Disperbyk −162 ,Disperbyk −163 ,Disperbyk −164 ,Disperbyk −170 ,Disperbyk −171 ,Disperbyk −174 ,Disperbyk −180 ,Disperbyk −182 等を例示することができる。
【0071】
これらのうちでも、エチレンオキサイド鎖の骨格を有する主鎖に上記したようなアニオン性の極性基からなる側鎖又はアニオン性の極性基を有する側鎖が結合した分子構造を有し、数平均分子量が2,000から20,000の化合物を用いると、特に良好な分散性が得られ好ましい。数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定することができる。このような条件に合うものとして、上記ディスパービックシリーズの中ではディスパービック163 (Disperbyk-163 )が挙げられる。
【0072】
分散剤の配合割合は、二酸化チタン微粒子10重量部に対して、2〜4重量部、またバインダー成分を4〜20重量部の割合で配合することができる。
【0073】
有機溶剤
本発明のコーティング組成物の固形成分を溶解分散するための有機溶剤は特に制限されず、種々のもの、例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;或いはこれらの混合物を用いることができる。
【0074】
本発明のコーティング組成物をケトン系溶剤を用いて調製すると、基材表面に容易に薄く均一に塗布することができ、且つ、塗工後において溶剤の蒸発速度が適度で乾燥むらを起こし難いので、均一な薄さの大面積塗膜を容易に得ることができ、好ましい。ケトン系溶剤としては、1種のケトンからなる単独溶剤、2種以上のケトンからなる混合溶剤、及び、1種又は2種以上のケトンと共に他の溶剤を含有しケトン溶剤としての性質を失っていないものを用いることができる。好ましくは、溶剤の70重量%以上、特に80重量%以上を1種又は2種以上のケトンで占められているケトン系溶剤が用いられる。
【0075】
有機溶剤としてケトン系溶剤を用い、二酸化チタン微粒子の表面を上記したような有機化合物及び/又は有機金属化合物で被覆することにより、特に塗工適性に優れたコーティング組成物が得られ、均一な大面積薄膜を容易に形成できるようになる。この場合でも、アニオン性の極性基を有する分散剤として上記したようなエチレンオキサイド系の分散剤、すなわち、エチレンオキサイド鎖の骨格を有する主鎖にアニオン性の極性基からなる側鎖又はアニオン性の極性基を有する側鎖が結合した分子構造を有し、数平均分子量が2,000から20,000の化合物を用いると、さらに好ましい。
【0076】
有機溶剤の割合は、本発明に係るコーティング組成物中の固形分と有機溶剤の合計量を100重量部とした時に、本発明に係るコーティング組成物の全固形分0.5〜50重量部に対して、有機溶剤を50〜99.5重量部の割合で配合するのが好ましい。有機溶剤の使用量がこの範囲にあると、特に分散安定性に優れ、長期保存に適したコーティング組成物が得られる。
【0077】
光開始剤
バインダー成分に電離放射線硬化性樹脂が用いられる場合には、光開始剤がラジカル重合を開始させるためにバインダー中に添加することが好ましい。光開始剤には、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、ジスルフィド化合物類、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物類などを用いることができる。より具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフオリノプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2 −ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ペンゾフエノン等を例示できる。これらのうちでも、1−ヒドロキシーシクロヘキシル−フェニル−ケトン、及び、2 −メチル−1 [4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフオリノプロパン−1−オンは、少量でも電離放射線の照射による重合反応を開始し促進するので、本発明において好ましく用いられる。これらは、いずれか一方を単独で、又は、両方を組み合わせて用いることができる。これらは市販品にも存在し、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンはイルガキュアー 184(Irgacure 184)の商品名でチバスペシャリティーケミカルズ(株)から入手できる。
【0078】
その他の成分
本発明のコーティング組成物は、上記の必須成分以外に、必要に応じて電離放射線硬化性のバインダー成分の重合開始剤を含有するが、さらに、その他の成分を配合してもよい。例えば、必要に応じて紫外線遮蔽剤、紫外線吸収剤、表面調整剤(レベリング剤)などを用いることができる。
【0079】
各成分の配合割合
各成分の配合割合は適宜調節可能であるが、一般的には、二酸化チタン微粒子10重量部に対して、前記バインダー成分を4〜20重量部、及びアニオン性の極性基を有する分散剤を2〜4重量部の割合で配合する。特に、バインダー成分として分子中に水酸基を残しているものを用いる場合には、当該バインダー成分が分散助剤として作用するので、アニオン性の極性基を有する分散剤の使用量を大幅に減らすことができる。アニオン性の極性基を有する分散剤を2〜4重量部迄割合を低くして配合することができる。分散剤はバインダーとしては機能しないので、分散剤の配合割合を減らすことによって塗膜強度の向上を図ることができる。
【0080】
光開始剤を本発明のコーティング組成物に含ませる場合には、バインダー成分100重量部に対して光開始剤を通常は3〜8重量部の割合で配合することができる。
【0081】
また、有機溶剤の量は、各成分を均一に溶解、分散することができ、調製後の保存時に凝集を来たさず、且つ、塗工時に希薄すぎない濃度となるように適宜調節する。この条件が満たされる範囲内で溶剤の使用量を少なくして高濃度のコーティング組成物を調製し、容量をとらない状態で保存し、使用時に必要分を取り出して塗工作業に適した濃度に希釈するのが好ましい。
【0082】
有機溶剤の割合は、本発明のコーティング組成物中の固形分と有機溶剤の合計量を100重量部とした時に、本発明のコーティング組成物の全固形分0.5〜50重量部に対して、前記有機溶剤を50〜99.5重量部の割合で配合するのが好ましく、さらに好ましくは、本発明のコーティング組成物の全固形分10〜30重量部に対して、有機溶剤を70〜90重量部の割合で用いることにより、分散安定性に優れ、長期保存に適したコーティング組成物が得られる。
【0083】
コーティング組成物の調製
上記各成分を用いて本発明のコーティング組成物を調製するには、塗工液の一般的な調製法に従って分散処理すればよい。例えば、各必須成分及び各所望成分を任意の順序で混合し、得られた混合物にビーズ等の媒体を投入し、ペイントシェーカーやビーズミル等で適切に分散処理することにより、コーティング組成物が得られる。
【0084】
被塗物
本発明のコーティング組成物を塗布する基材は特に制限されない。好ましい基材としては、例えば、ガラス板、トリアセテートセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、ポリエーテルサルホン、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、トリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、(メタ)アクリロニトリル等の各種樹脂で形成したフィルム等を例示することができる。基材の厚さは、通常25μm〜1000μm程度である。
【0085】
塗膜形成方法
本発明のコーティング組成物は、例えば、スピンコート法、デイップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等の各種方法で基材上に塗布することができる。
【0086】
本発明のコーティング組成物を基材等の被塗工体の表面に所望の塗工量で塗布した後、通常は、オーブン等の加熱手段で加熱乾燥し、その後、紫外線や電子線等の電離放射線を放射して硬化させることにより塗膜が形成される。
【0087】
コーティング組成物の特徴
本発明の1番目〜4番目のコーティング組成物は、光触媒活性を持つ二酸化チタン微粒子が、コバルトでドープされることにより、該コバルトの自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質により、該二酸化チタン微粒子は、光触媒活性が消失又は抑制される。さらに、該二酸化チタン微粒子は、亜鉛キレート化合物で表面処理されているので、該亜鉛の有機金属化合物の自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質により、該二酸化チタン微粒子は、光触媒活性が消失又は抑制される。したがって、本発明の1番目〜4番目のコーティング組成物を用いて塗膜を作製した場合に、光触媒作用が原因のバインダー成分の塗膜の劣化に伴う塗膜の強度低下や、黄変現象等が消失又は抑制されたものとなる。
【0088】
さらに、本発明の1番目〜4番目のコーティング組成物においては、分散剤が含まれているため、二酸化チタン微粒子は塗工液中、及び該塗工液により形成した塗膜中に均一に分散することができ、長期間に渡る分散安定性にも優れているので塗工液のポットライフが長く、塗工適性にも優れ、長期間保存した後に使用する場合でもヘイズ値の小さい透明な薄膜を、大面積の均一な厚みで容易に形成することができる。
【0089】
上記性質に加え、本発明の2番目及び4番目のコーティング組成物は、二酸化チタン微粒子が亜鉛の有機金属化合物で表面処理される前に、アニオン性の極性を有する有機化合物及び/又は有機金属化合物が被覆されているので、該二酸化チタン微粒子は、1番目のコーティング組成物の二酸化チタン微粒子に比べて、塗工液中、及び該塗工液により形成した塗膜中にさらに均一に分散することができ、したがって、塗膜のヘイズ値がさらに低くなる。
【0090】
上記性質に加え、本発明の3番目及び4番目のコーティング組成物は、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つコバルトがドープされた二酸化チタン微粒子に対し、光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物をコーティングされているので、1番目の発明のコーティング組成物に比べ、塗膜にした場合に耐光性が更に向上する。
【0091】
塗膜の特徴
上記の本発明の1番目のコーティング組成物は、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つコバルトがドープされた二酸化チタン微粒子に対し、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理することにより得られた、光触媒活性が消失又は抑制された二酸化チタン微粒子が、分散剤により分散されているので、該コーティング組成物を用いて形成した本発明の1番目の塗膜は、二酸化チタン微粒子が、塗膜中に均一に分散している。そのために塗膜のヘイズ値の上昇を抑制することができる。
【0092】
本発明の2番目のコーティング組成物を用いた形成した本発明の2番目の塗膜は、二酸化チタン微粒子が亜鉛の有機金属化合物で表面処理された後に、さらに、アニオン性の極性を有する有機化合物及び/又は有機金属化合物が被覆されている二酸化チタン微粒子が使用されているので、本発明の2番目の塗膜は、前記1番目の塗膜の特徴に加え、二酸化チタン微粒子は1番目の塗膜に比べ塗膜中にさらに均一に分散している。したがって、本発明の2番目の塗膜はヘイズ値がさらに低くなる。
【0093】
本発明の3番目のコーティング組成物を用いた形成した本発明の3番目の塗膜は、二酸化チタン微粒子が亜鉛の有機金属化合物で表面処理される前に、さらに、光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物でコーティング処理されている二酸化チタン微粒子が使用されているので、本発明の3番目の塗膜は、前記1番目の塗膜の特徴に加え、二酸化チタン微粒子による光触媒活性が低下又は消失されているため、本発明の3番目の塗膜は、耐光性がさらに向上する。
【0094】
本発明の4番目のコーティング組成物を用いた形成した本発明の4番目の塗膜は、二酸化チタン微粒子が亜鉛の有機金属化合物で表面処理される前に、さらに、光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物でコーティング処理され、二酸化チタン微粒子が亜鉛の有機金属化合物で表面処理された後に、さらに、アニオン性の極性を有する有機化合物及び/又は有機金属化合物が被覆されている二酸化チタン微粒子が使用されているので、本発明の4番目の塗膜は、前記1番目の塗膜の特徴に加え、二酸化チタン微粒子は1番目の塗膜に比べ塗膜中にさらに均一に分散しているため、塗膜のヘイズ値が低く、且つ、前記1番目の塗膜の特徴に加え、二酸化チタン微粒子による光触媒活性が低下又は消失されているため、本発明の4番目の塗膜は、耐光性がさらに向上する。
【0095】
本発明の塗膜は、反射防止膜を構成する1又は2以上の層として好適に利用することができ、中屈折率層乃至高屈折率層を形成するのに適している。本発明の塗膜は、光透過性を有し且つ互いに屈折率の異なる層(光透過性層)を二層以上積層してなる多層型反射防止膜のうちの少なくとも一層を形成するのに用いることができる。なお、本明細書では、多層型反射防止膜の中で最も屈折率の高い層を高屈折率層と称し、最も屈折率の低い層を低屈折率層と称し、それ以外の中間的な屈折率を有する層を中屈折率層と称している。
【0096】
本発明によれば、硬化後膜厚:0.05〜10μm、屈折率:1.55〜2.20の塗膜を形成した時に、JIS−K7361の規定に従って基材と一体の状態で測定したヘイズ値が、前記基材だけのヘイズ値と変わらないか又は前記基材だけのヘイズ値との差が1%以内に抑制することが可能である。
【0097】
また、反射防止膜で被覆する面、例えば画像表示装置の表示面に、本発明の塗膜をただ一層設けただけでも、被覆面自体の屈折率と本発明の塗膜の屈折率のバランスが丁度良い場合には反射防止効果が得られる。従って、本発明の塗膜は、単層の反射防止膜としても有効に機能する場合がある。
【0098】
本発明の塗膜は、特に、液晶表示装置(LCD)や陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示装置の表示面を被覆する多層型反射防止膜の少なくとも一層、特に中〜高屈折率層を形成するのに好適に用いられる。
【0099】
塗膜の適用例
図1は、本発明の塗膜を光透過性層として含んだ多層型反射防止膜により表示面を被覆した液晶表示装置101の一例の断面を模式的に示したものである。液晶表示装置101は、表示面側のガラス基板1の一面にRGBの画素部2(2R、2G、2B)とブラックマトリックス層3を形成してなるカラーフィルター4を準備し、当該カラーフィルター4の画素部2上に透明電極層5を設け、背面側のガラス基板6の一面に透明電極層7を設け、背面側のガラス基板6とカラーフィルター4とを、透明電極層5、7同士が向き合うようにして所定のギャップを空けて対向させ、周囲をシール材8で接着し、ギャップに液晶Lを封入し、背面側のガラス基板6の外面に配向膜9を形成し、表示面側のガラス基板1の外面に偏光フィルム10を貼り付け、後方にバックライトユニット11を配置したものである。
【0100】
図2は、表示面側のガラス基板1の外面に貼り付けた偏光フィルム10の断面を模式的に示したものである。表示面側の偏光フィルム10は、ポリビニルアルコール(PVA)等からなる偏光素子12の両面をトリアセチルセルロース(TAC)等からなる保護フィルム13、14で被覆し、その裏面側に接着剤層15を設け、その鑑賞側にハードコート層16と多層型反射防止膜17を順次形成したものであり、接着剤層15を介して表示面側のガラス基板1に貼着されている。
【0101】
ここで、液晶表示装置101の内部から射出する光を拡散させて眩しさを低減させるために、ハードコート層16の表面を凹凸形状に形成したり或いはハードコート層16の内部に無機や有機のフイラーを分散させてハードコート層16内部で光を散乱させる機能を持たせた防眩層(アンチグレア層)を兼ねてもよい。
【0102】
多層型反射防止膜17の部分は、バックライトユニット11側から鑑賞側に向かって中屈折率層18、高屈折率層19、低屈折率層20が順次積層された3層構造を有している。多層型反射防止膜17は、高屈折率層19と低屈折率層20が順次積層された2層構造であってもよい。なお、ハードコート層16の表面が凹凸形状に形成される場合には、その上に形成される多層型反射防止膜17も図2に示すように凹凸形状となることが一般的である。
【0103】
低屈折率層20は、例えば、シリカやフツ化マグネシウム等の無機物、フツ素系樹脂等を含有する塗工液から得られる屈折率1.46以下の塗工膜を用いて形成することができる。また、中屈折率層18及び高屈折率層19は、本発明のコーティグ組成物を塗工して形成することができ、中屈折率層18には屈折率1.46〜1.80の範囲の光透過性層、高屈折率層19には屈折率1.65以上の光透過性層が使用される。
【0104】
この多層型反射防止膜17の作用により、外部光源から照射された光の反射率が低減するので、景色や蛍光灯の映り込みが少なくなり、表示の視認性が向上する。また、ハードコート層16を防呟層を兼ねたものとすることができるので、内部からの直進光及び外光が散乱されるために、反射のぎらつき感が軽減し、表示の視認性がさらに向上する。
【0105】
液晶表示装置101の場合には、偏光素子12と保護フィルム13、14からなる積層体に本発明のコーティング組成物を塗布して屈折率を1.46〜1.80の範囲で調節した中屈折率層18と屈折率を1.65以上に調節した高屈折率層19を形成し、さらに低屈折率層20を設けることができる。そして、多層型反射防止膜17を含む偏光フィルム10を接着剤層15を介して表示面側のガラス基板1上に貼着することができる。
【0106】
これに対し、CRTの表示面には偏光フィルム10を貼着しないので、反射防止膜を直接設ける必要がある。しかしながら、CRTの表示面に本発明のコーティング組成物を塗布するのは煩雑な作業である。このような場合には、本発明の塗膜を含んでいる反射防止フィルムを作製し、それを表示面に貼着すれば反射防止膜が形成されるので、表示面に本発明のコーティング組成物を塗布しなくて済む。
【0107】
光透過性を有する基材フィルムの一面側又は両面に、光透過性を有し且つ互いに屈折率が異なる光透過性層を二層以上積層してなり、該光透過性層のうちの少なくとも一層を本発明の塗膜で形成することにより、反射防止フィルムが得られる。基材フィルム及び光透過性層は、反射防止フィルムの材料として使用できる程度の光透過性を有する必要があり、できるだけ透明に近いものが好ましい。
【0108】
図3は、本発明の塗膜を含んだ反射防止フィルム102の一例の断面を模式的に示したものである。反射防止フィルム102は、光透過性を有する基材フィルム21の一面側に、本発明のコーティング組成物を塗布して高屈折率層22を形成し、さらに高屈折率層22の上に低屈折率層23を設けたものである。この例では、互いに屈折率の異なる光透過性層は高屈折率層22と低屈折率層23の二層だけだが、光透過性層を三層以上設けてもよい。その場合には、高屈折率層22だけでなく中屈折率層も、本発明のコーティング組成物を塗布して形成することができる。
【実施例1】
【0109】
(1)二酸化チタン微粒子の作製
TiOとして200g/lの濃度の四塩化チタン水溶液500mlとNaOとして100g/lの濃度の水酸化ナトリウム水溶液を、系のpHを5〜9に維持するように水中に並行添加し、所定時間熟成した。得られた超微粒子の含水二酸化チタン沈澱物を濾過、洗浄した後、再び水中に分散させ、TiOとして100g/lの濃度の含水二酸化チタンスラリーとした。このスラリーに、CoOとして200g/lの硫酸コバルト水溶液(CoSOを20%硫酸溶液に溶解)25mlを添加し、アンモニア水20%水溶液を添加して、pH7に調整し、コバルト成分の沈澱を生成させた。このように処理してなる含水二酸化チタンスラリーをホモミキサーで十分攪拌した後、電気炉にて800℃で5時間焼成し、放冷し、乾式粉砕してCoO5%ドープした二酸化チタン微粒子を得た。
【0110】
前記工程で得られたCoOドープ二酸化チタン微粒子を水中に分散させて固形分濃度100g/lのスラリーとし、湿式粉砕した後、70℃に加熱した。スラリーの固形分に対し、Alとして8重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液と硫酸とを系のpHを7〜10に維持するように並行添加してアルミニウムの含水酸化物を二酸化チタン微粒子上に沈澱、被覆させた。この後、濾過、洗浄し、乾燥した後、乾式粉砕することにより、アルミニウムの含水酸化物でコーティングされた二酸化チタン微粒子を得た。
【0111】
前記工程で得られたアルミニウムの含水酸化物でコーティングされた二酸化チタン微粒子の固形分に対して3重量%となるように、メタノール溶液にて溶解させた亜鉛アセチルアセトナートを添加し、ホモミキサーにて均一に表面処理されるよう混合することにより、亜鉛アセチルアセトナートで表面処理された二酸化チタン微粒子を得た。
【0112】
前記工程で得られた亜鉛アセチルアセトナートで表面処理された二酸化チタン微粒子に、さらに分散性を付与するためにヘキサン溶液にて溶解させたステアリン酸を3重量%となるように添加し、ホモミキサーにて均一に表面処理されるよう混合し、反応させるため100℃にて熱処理を行った。得られたものは、ルチル型結晶で平均単一粒子径(電子顕微鏡法)が30〜40nmで、表面は撥水性の二酸化チタン微粒子であった。
【0113】
(2)高屈折率層形成用コーティング組成物の調製
二酸化チタン微粒子として前記(1)の工程にて得られたルチル型二酸化チタン微粒子、電離放射線硬化性バインダー成分として、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PET30:商品名、日本化薬社製)、アニオン性の極性基を有する分散剤として顔料に親和性のあるブロック共重合体(ディスパービック163:商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、及び、有機溶剤としてメチルイソブチルケトンをマヨネーズ瓶に入れ、混合物の約4倍量のジルコニアビーズ(φ0.3mm)を媒体に用いてペイントシェーカーで10時間攪拌し、攪拌後に光開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュアー184:商品名、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)を下記の配合割合で加えて、本実施例1の高屈折率層形成用コーティング組成物を得た。
(配合組成)
高屈折率材料(TiO2):上記(1)にて作製したチタニア微粒子 10重量部
分散剤:Disperbyk163(商品名、ビックケミー・ジャパン製) 2重量部
光硬化樹脂:PET30(商品名、日本化薬製) 4重量部
光開始剤:IRGACURE184(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)
0.2重量部
溶剤:メチルイソブチルケトン(純正化学製) 37.3重量部
(3)ハードコート層形成用コーティング組成物の調製
下記の組成の成分を配合してハードコート層形成用コーティング組成物を調製した。
【0114】
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA:商品名、日本化薬社製)
50重量部
光開始剤:IRGACURE184(商品名、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)
2.5重量部
溶剤:メチルイソブチルケトン(純正化学製) 47.5重量部
(4)塗膜の作成
厚さ80μmの表面無処理TACフィルム基材(FT−T80UZ:商品名、富士フィルム(株)製)上に調製直後の前記(3)工程で得られたハードコート層形成用コーティング組成物をバーコーター♯10で塗工し、60℃で1分間加熱乾燥した後、UV照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン(株)製)のHバルブを光源に用いて100mJ/cmの照射量で硬化させ、硬化後膜厚が約5μmの透明膜を形成した。
【0115】
その後、前記工程(2)で調製した高屈折率層形成用コーティング組成物をバーコーター♯2で塗工し、60℃で1分間加熱乾燥した後、UV照射装置のHバルブを光源に用いて100mJ/cmの照射量で硬化させ、硬化後膜厚が約60nmの透明膜を形成した。
【0116】
形成した硬化後膜厚が約60nmの透明膜について、ヘイズ値と屈折率を測定した。ヘイズ値は、濁度計NDH2000(商品名、日本電色工業社製)を用いて測定した。また、硬化後の塗膜の屈折率は、分光エリプソメーター(UVSEL:商品名、ジョバン−イーボン社製)を用い、ヘリウムレーザー光の波長633nmでの屈折率を測定した。
【0117】
その結果、ヘイズ値は基材とほぼ同等のヘイズ値(0.3)となり、屈折率は1.90と良好な透明膜が得られた。
【0118】
また、得られた塗布膜の耐光性試験は、サンシャインウェザーメーターを用い、63℃降雨における50、100、150、200時間を経た塗布膜について、♯0000のスチールウールを用い、200g荷重で20回表面を擦ることによる耐スチールウールの評価を行った。その結果を下記の表1に示す。表1によればCoドープにさらに亜鉛カップリング剤処理を施した二酸化チタン塗膜を用いることで、200時間経過後も初期と同等の耐スチールウール性が保持されることが分かった。
【実施例2】
【0119】
前記実施例1において、二酸化チタン微粒子の作製する際に、無機化合物をコーティングする処理、即ち、アルミニウムの含水酸化物で二酸化チタンをコーティング処理することを取り止めた以外は、全て前記実施例1と同様にして本実施例2のコーティング組成物を調製した。次いで、前記実施例1と同様にして屈折率2.00、ヘイズ値0.3の塗膜を作製した。得られた塗膜について前記実施例1と同じ方法で耐光性試験を行った結果を下記の表1に示す。表1によれば200h経過後も初期と同等の耐スチールウール性が保持されることが分かった。
【実施例3】
【0120】
前記実施例1において、アニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングする処理、即ち、ステアリン酸でコーティング処理することを取り止めた以外は、全て前記実施例1と同様にして本実施例3のコーティング組成物を調製した。次いで、前記実施例1と同様にして屈折率1.90、ヘイズ値0.50の塗膜を作製した。得られた塗膜について前記実施例1と同じ方法で耐光性試験を行った結果を下記の表1に示す。表1によれば200h経過後も初期と同等の耐スチールウール性が保持されることが分かった。
【実施例4】
【0121】
前記実施例1において、二酸化チタン微粒子の作製する際に、無機化合物をコーティングする処理、即ち、アルミニウムの含水酸化物で二酸化チタンをコーティング処理することを取り止め、さらに、アニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングする処理、即ち、ステアリン酸でコーティング処理することを取り止めた以外は、全て前記実施例1と同様にして本実施例4のコーティング組成物を調製した。次いで、前記実施例1と同様にして屈折率2.00、ヘイズ値0.50の塗膜を作製した。得られた塗膜について前記実施例1と同じ方法で耐光性試験を行った結果を下記の表1に示す。表1によれば200h経過後も初期と同等の耐スチールウール性が保持されることが分かった。
【実施例5】
【0122】
前記実施例1で得た屈折率1.90の二酸化チタン分散液10重量部に対して、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR399E:商品名、日本化薬社製)を2.5重量部加えることにより、屈折率1.76の本実施例5の中屈折率層形成用コーティング組成物を調製した。TACフィルム基材上に、前記実施例1で示したハードコート形成用コーティング組成物を塗工後、上記1.76の中屈折率層形成用コーティング組成物を前記実施例1の高屈折率層形成と同様の条件にて塗工し、硬化後の膜厚が80nmの透明膜を塗工後、さらに前記実施例1で得た高屈折率層形成用コーティング組成物を硬化後膜厚が約60nmになるよう塗工した。高屈折率層上にシリコン含有ポリフッ化ビニリデン共重合体からなる屈折率1.4の低屈折率層を90nmにコーティングし、UV照射量500mJ/cmで硬化した。
【0123】
得られた反射防止フィルムの分光カーブを図4に示す。初期の分光カーブは広可視域で低反射を示すことが分かる。また、耐光性試験を前記実施例1と同様の条件で行ったところ、200時間経過後も多少低波長側に分光カーブのシフトが見られるものの、広可視域に渡り、低反射を保持していることが分かる。
【0124】
[比較例1]
二酸化チタンの表面が分散性のみ確保するために、Coがドープされておらず、Al及び亜鉛アセチルアセトナートで表面処理されておらず、且つステアリン酸で表面処理したルチル型酸化チタンを用いること以外は、前記実施例1と同様の組成にてコーティング組成物を調製し、屈折率2.00の塗膜を形成した。得られた塗膜について前記実施例1と同じ方法で耐光性試験を行った。結果を下記の表1に示す。表1によれば50時間の時点で劣化していることが分かる。
【0125】
[比較例2]
(1)コーティング組成物の調製
ルチル型酸化チタンとして、酸化チタン含量85〜90%で、Al、ZrO及びシリコーンオイルで表面処理し、一次粒径30〜40nmで、比表面積が30〜50m/gで、表面が撥水性のルチル型酸化チタン(MT−500HDM、商品名、テイカ社製)を用い前記実施例1と同様の組成にてコーティング組成物を調製し、屈折率1.90の塗膜を形成した。得られた塗膜について前記実施例1と同じ方法で耐光性試験を行った。結果を下記の表1に示す。表1によれば100時間の時点で劣化し始め、150時間では完全に剥離していることが分かる。
【0126】
[比較例3]
前記実施例1において、二酸化チタン微粒子の作製する際に、亜鉛カップリング剤処理を取り止めた以外は、全て前記実施例1と同様にして比較例3のコーティング組成物を調製した。次いで、前記実施例1と同様にして屈折率1.90、ヘイズ値0.3の塗膜を作製した。得られた塗膜について前記実施例1と同じ方法で耐光性試験を行った結果を下記の表1に示す。表1によれば150h経過後から劣化し始め、200hにおいて傷多く剥離も見られたことが分かった。
【表1】

【0127】
[比較例4]
前記比較例2で得た屈折率1.90の二酸化チタン分散液10重量部に対して、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR399E:商品名、日本化薬社製)を2.5重量部加え、屈折率1.76の中屈折率層を調製した。TAC基材上に、前記実施例1で示したハードコート成分を塗工後、上記1.76の中屈折率層を前記実施例1の高屈折率層と同様の条件にて塗工し、硬化後の膜厚が80nmの透明膜を塗工後、さらに前記比較例2で得た屈折率1.90の高屈折率層を硬化後膜厚が約60nmになるよう塗工した。高屈折率層上にシリコン含有ポリフッ化ビニリデン共重合体からなる屈折率1.40の低屈折率層を90nmにコーティングし、UV照射量500mJ/cmで硬化した。
【0128】
得られた反射防止フィルムの分光カーブを図5に示す。初期の分光カーブは前記実施例2で得られた塗膜と同様に広可視域で低反射を示すことが分かる。しかしながら、耐光性試験を前記実施例1と同様の条件で行うと、50h経過後から低波長側に分光カーブのシフトと同時に高波長側の反射率が高くなり、V字形の反射率カーブとなり、広可視域での低反射を保持しなくなることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明のコーティング組成物、及び該コーティング組成物を用いて形態した塗膜は、LCDやCRT等の表示面を被覆する反射防止膜を構成する層、特に、中〜高屈折率層を形成するのに適した、耐光性が向上したコーティング組成物、該コーティング組成物を用いて形成した塗膜の層を有する反射防止膜、及び該反射防止膜を適用した画像表示装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の塗膜を含んだ多層型反射防止膜により表示面を被覆した液晶表示装置の一例であり、その断面を模式的に示した図である。
【図2】図1の液晶表示装置における表示面側のガラス基板の外面に貼り付けた偏光フィルムの断面を模式的に示した図である。
【図3】本発明の塗膜を含んだ反射防止フィルムの一例であり、その断面を模式的に示した図である。
【図4】実施例5で得られた反射防止フィルムの分光カーブを示す図である。
【図5】比較例3得られた反射防止フィルムの分光カーブを示す図である。
【符号の説明】
【0131】
1 表示面側のガラス基板
2 画素部
3 ブラックマトリックス層
4 カラーフィルター
5,7 透明電極層
6 背面側のガラス基板
8 シール材
9 配向膜
10 偏光フィルム
11 バックライトユニット
12 偏光素子
13、14 保護フィルム
15 接着剤層
16 ハードコート層
17 多層型反射防止膜
18 中屈折率層
19、22 高屈折率層
20、23 低屈折率層
21 基材フィルム
101 液晶表示装置
102 反射防止フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物を被塗工体に塗布し、硬化させることにより形成された塗膜であって、
前記コーティング組成物が、
少なくとも、
(1)自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つコバルトがドープされた二酸化チタン微粒子に対し、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理し、前記亜鉛の有機金属化合物で表面処理した後、さらにアニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングすることにより得られた、光触媒活性が消失又は抑制された二酸化チタン微粒子と、
(2)バインダー成分と、
(3)分散剤と、
(4)有機溶剤
を含み、
前記亜鉛の有機金属化合物が亜鉛アセチルアセトナート、安息香酸亜鉛、酢酸亜鉛、2−エチルヘキシル酸亜鉛から選ばれた1種又は2種以上であり、前記アニオン性の極性基を持つ有機化合物が有機カルボン酸であり、前記アニオン性の極性基を持つ有機金属化合物がシランカップリング剤及び/又はチタネートカップリング剤である、塗膜。
【請求項2】
コーティング組成物を被塗工体に塗布し、硬化させることにより形成された塗膜であって、
前記コーティング組成物が、
少なくとも、
(1)自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つコバルトがドープされた二酸化チタン微粒子に対し、光触媒活性を低下又は消失させる性質を有する無機化合物をコーティングし、前記無機化合物でコーティングした後、さらに、自由電子及び/又は正孔を捕捉する性質を持つ亜鉛の有機金属化合物で表面処理し、前記亜鉛の有機金属化合物で表面処理した後、さらにアニオン性の極性基を持つ有機化合物及び/又は有機金属化合物でコーティングすることにより得られた、光触媒活性が消失又は抑制された二酸化チタン微粒子と、
(2)バインダー成分と、
(3)分散剤と、
(4)有機溶剤
を含み、
前記無機化合物が、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム、スズ、インジウム及びアンチモンの群から選ばれる少なくとも一種の元素の含水酸化物であり、前記亜鉛の有機金属化合物が亜鉛アセチルアセトナート、安息香酸亜鉛、酢酸亜鉛、2−エチルヘキシル酸亜鉛から選ばれた1種又は2種以上であり、前記アニオン性の極性基を持つ有機化合物が有機カルボン酸であり、前記アニオン性の極性基を持つ有機金属化合物がシランカップリング剤及び/又はチタネートカップリング剤である、塗膜。
【請求項3】
前記光触媒活性が抑制された二酸化チタン微粒子が一次粒子系0.01〜0.1μmである、請求項1または2に記載の塗膜。
【請求項4】
前記分散剤が、アニオン性の極性基を有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の塗膜。
【請求項5】
前記バインダー成分が、電離放射線硬化性である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塗膜。
【請求項6】
前記コーティング組成物が、光開始剤として、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン及び/又は2−メチル−1〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフオリノプロパン−1−オンをさらに含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の塗膜。
【請求項7】
前記塗膜の硬化後膜厚が0.05〜10μmの時に、屈折率が1.55〜2.20である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の塗膜。
【請求項8】
光透過性を有し且つ互いに屈折率が異なる光透過性層を二層以上積層してなり、前記光透過性層のうちの少なくとも一層が請求項1ないし7のいずれか1項に記載の前記塗膜である、反射防止膜。
【請求項9】
請求項8記載の反射防止膜により表示面を被覆した画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−106240(P2012−106240A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249018(P2011−249018)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【分割の表示】特願2005−65090(P2005−65090)の分割
【原出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】