説明

コードスイッチ及びこれを用いた検知装置

【課題】信頼性に優れる接触型の検知機能も保持しつつ、物体に接触する前に検知できる非接触型の検知機能も併せ持つコードスイッチ及びこれを用いた検知装置を提供する。
【解決手段】復元性を有する中空絶縁体11の中空部10の内面には、相互に接触しないようにして長手方向に螺旋状に電極線12A,12Bが配設され、中空絶縁体11の外周面には外側電極13が設けられ、この外側電極13を絶縁層14により被覆している。外側電極13は、グランド用の電極線との間に静電容量を持つほか、接地との間に浮遊静電容量を形成する。通常時の静電容量と、コードスイッチ1に人体等が接近又は接触したときの静電容量とを比較することにより、非接触でコードスイッチ1への人体等の接近の有無を検知することできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コードスイッチ及びこれを用いた検知装置に関し、特に、自動開閉によるドア等に物体や人体が挟まれたり、挟まれそうになったことを検知するコードスイッチ及びこれを用いた検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車においては、自動開閉するスライドドア、バックドア等の先端部にセンサを取り付け、ドアと車体との間に物体や人体が挟まった時または挾まれそうになった時、これらの状態をセンサで検知し、異常を検知したときにドアを開方向に反転させるようにしたものがある。
【0003】
このような目的のセンサにコードスイッチがあり、自動開閉する窓や扉に物体が接触したときの圧力変化に反応して、複数の電極線が接触することによりオン/オフ動作をする接触型の構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図9は、特許文献1に示された従来のコードスイッチの構成を示す。このコードスイチ100は、復元性を有する中空絶縁体101の内面に、4本の電極線102A,102B,102C,102Dを所定の間隔で長手方向に螺旋状に配置した構成を有している。
【0005】
中空絶縁体101は、電極線102A〜102Dを相互に電気的に接触しないようにして保持すると共に、外力により容易に変形し、かつ外力がなくなれば直ちに復元する材料、例えば、復元性ゴム又は復元性プラスチックを用いて構成されている。
【0006】
電極線102A〜102Dは、1本又は複数本の撚り線からなる金属線の外周に導電性ゴム層又は導電性プラスチック層を設けて構成されている。
【0007】
図10は、図9のコードスイッチ100を用いて構成した検知装置を示す。この検知装置200は、電極線102Aの始端104Aと電極線102Dの始端104Dの間に電源107と電流計108が直列接続され、電極線102Bの始端104Bと電極線102Cの始端104Cの間に抵抗106が接続されている。更に、電極線102A,102Bの終端105A,105B間には短絡線109Aが接続され、電極線102C,102Dの終端105C,105D間に短絡線109Bが接続されている。
【0008】
図10の検知装置200には、通常、電源107から微弱な監視電流iが通電されており、外部からコードスイッチ100に外力が加わることにより、電極線102A,102Bのいずれかと電極線102C,102Dのいずれかが接触すると、抵抗106をバイパスする短絡電流が流れ、この電流変化により電流計108の測定値が大きくなることで異常が検知される。
【0009】
また、圧力によらないセンサとして静電容量方式があり、物体との間の浮遊容量や抵抗損失などの変化を利用して、自動開閉する窓や扉に接触する前に検知する非接触型のセンサが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】再表97/21235号公報
【特許文献2】特開平2−26414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来のコードスイッチによると、中空絶縁体101が、電極線102A,102Bと電極線102C,102Dが接触する状態になるまで変形しなければ検知信号が出力されないため、検知時に物体や人体にかなりの力が加わってしまうという問題がある。また、利便性を向上させるために、ドアの開閉速度を上げようとすると、物体や人体が挟まれた際に物体や人体に加わる力が増大する不具合がある。
【0011】
更に、特許文献2の非接触型のセンサは、物体の特性、状態、サイズ等によって検知能力に差異が生じるため、接触型に比べて検知能力の信頼性が劣っている。また、検知範囲を広くしようとすると誤作動が起きやすくなり、誤作動が起きないように検知範囲を狭くすると検知物が小さい場合に検知できなくなる可能性がある。
【0012】
従って、本発明の目的は、信頼性に優れる接触型の検知機能も保持しつつ、物体に接触する前に検知できる非接触型の検知機能も併せ持つコードスイッチ及びこれを用いた検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、上記目的を達成するため、復元性を有する中空絶縁体と、相互に電気的に非接触の状態を保持しつつ前記中空絶縁体の中空部の内面に沿って長手方向に配置された複数の電極線と、前記中空絶縁体の外周面に設けられ、前記電極線との間に静電容量を形成するとともに、接地との間に浮遊静電容量を形成可能な外側電極とを備えたことを特徴とするコードスイッチを提供する。
【0014】
本発明の第1の態様に係るコードスイッチによれば、電極線同士による接触型の検知のほか、外側電極が電極線との間に固定の静電容量を形成し、接地との間には人体等による浮遊静電容量を形成するので浮遊静電容量の形成の有無から非接触でコードスイッチへの物体の接近を確実かつ迅速に検知することができる。
【0015】
前記外側電極は、導電性を有する細線を、前記中空絶縁体の外周面に巻き付け、または編組により被覆して構成されていてもよい。導電性を有する細線を中空絶縁体の外周面に巻き付けることにより、コードスイッチを曲げた場合、中空絶縁体の外側が伸張し、内側の圧縮するが、中空絶縁体に巻き付けられた導電性を有する細線がそれに追随して容易に変形するため、コードスイッチの曲げ特性が向上する。
【0016】
前記外側電極は、導電性を有する帯状部材を、前記中空絶縁体の外周面に巻き付け、または前記中空絶縁体の長さ方向に帯状に設けたものでもよい。
【0017】
前記外側電極は、絶縁層によって被覆されている構成とすることができる。絶縁層によって浮遊容量の検知感度を調整することができる。
【0018】
前記複数の電極線は、金属による撚り線に導電性の電極部材を被覆した構成としてもよい。この構成により、屈曲性能を向上させることができる。
【0019】
前記中空絶縁体は、復元性ゴムからなり、前記電極部材は、導電性ゴムからなり、または前記中空絶縁体は、復元性樹脂からなり、前記電極部材は、導電性プラスチックからなる構成とすることができる。中空絶縁体と電極部材を同種の材料から形成することにより、高い接合強度が得られる。
【0020】
本発明の第2の態様は、上記目的を達成するため、前記第1の態様に記載のコードスイッチと、前記複数の電極線のうち信号用の電極線とグランド用の電極線との間の電位変化又は電流変化を検知する第1の検知部と、前記外側電極に接続されて、前記静電容量及び前記浮遊静電容量を測定し、これらの容量変化を検知する第2の検知部とを備えたことを特徴とする検知装置を提供する。
【0021】
前記コードスイッチは、4本の電極線を備え、2本毎に並列接続または直列接続した構成とすることができる。
【0022】
本発明の第3の態様は、上記目的を達成するため、復元性を有する中空絶縁体の中空部の内面に沿って、信号用とグランド用に用いられる2つの電極線を含む2n本(nは正の整数)の電極線を相互に電気的に非接触の状態を保持しつつ長手方向に配置するとともに前記信号用と前記グランド用の電極線間に他の電極線を直列に接続し、前記電極線との間に静電容量を形成し、かつ接地との間に浮遊静電容量を形成可能に外側電極を配置したコードスイッチと、前記2n本の電極線の途中の電極線間に接続された抵抗と、前記信号用と前記グランド用の電極線間の電位変化または電流変化を検知する第1の検知部と、前記外側電極に接続されて、前記静電容量及び前記浮遊静電容量を測定し、これらの容量変化を検知する第2の検知部とを備えたことを特徴とする検知装置を提供する。
【0023】
本発明の第2及び第3の態様に係る検知装置によれば、コードスイッチの電極線同士と第1の検知部との組合せにより接触型のスイッチを構成し、外側電極及びグラウンド用の電極線と第2の検知部との組合せにより非接触型のスイッチを構成しているため、2種類の検知方法によりコードスイッチへの物体の接近を確実かつ迅速に検知することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、信頼性に優れる接触型の検知機能も保持しつつ、物体に接触する前に検知できる非接触型の検知機能も併せ持つコードスイッチ及びこれを用いた検知装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[第1の実施の形態]
(コードスイッチの構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るコードスイッチを示す斜視図であり、図2は図1のコードスイッチの断面図である。
【0026】
図1、図2に示すように、コードスイッチ1は、中心部に中空部10を有するとともに復元性を備えた断面略円形状の中空絶縁体11と、中空絶縁体11の内面に、所定の間隔で長手方向に螺旋状に配設された2本の電極線12A,12Bと、中空絶縁体11の外周面に設けられた外側電極13と、外側電極13を被覆する絶縁層14とを備える。
【0027】
中空絶縁体11は、電極線12A,12Bを一部埋設した状態で、かつ互いに電気的に接触しない状態で螺旋状に保持固定する。この中空絶縁体11は、物体等との接触時には容易に変形して電極線12Aと電極線12Bを電気的に接触させ、外力が無くなれば直ちに元の形状に復元する特性を有する材料を用いて構成されている。その材料として、復元性ゴム、復元性プラスチック、またはエラストマー等を用いることができる。
【0028】
復元性ゴムとして、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム等を挙げることができる。また、復元性樹脂(プラスチック)としては、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等を挙げることができる。さらに、エラストマーとして、オレフィン系あるいはスチレン系の熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0029】
電極線12A,12Bは、図2に示すように、錫、銀、ニッケル等のめっきが施された複数(ここでは7本)の軟銅素線を7本撚り合わせた導体15に、樹脂又はゴムにカーボンを混ぜて低抵抗化した電極部材16を被覆して構成されている。なお、電極線12A,12Bは、軟銅等による単線であってもよい。
【0030】
外側電極13は、電極線12A,12Bとの間に静電容量を形成する導電体であり、以下のいずれかの構造を用いることができる。
(1)錫、銀等のめっきを施した軟銅線等の金属細線による編組を中空絶縁体11の外周に被覆した構造(編組構造)。
(2)錫、銀等のめっきを施した軟銅線等の金属細線を中空絶縁体11の外周に巻き付けた構造(横巻構造)。
(3)銅又はアルミニウムによる導電部材としての金属箔を中空絶縁体11の外周に巻き付け、または中空絶縁体11の長手方向に帯状に設ける構造(縦添え)。
(4)蒸着、メッキ等による金属膜が片面に施されたPET(ポリエチレンテレフタレート)PP(ポリプロピレン)等による樹脂テープや樹脂繊維を導電部材として中空絶縁体11の外周に巻き付け、または縦添えした構造。
(5)導電性樹脂や導電性ゴムによる導電部材を中空絶縁体11の外周に被覆した構造。
(6)板状の導電性樹脂や導電性ゴムによる導電部材を中空絶縁体11の外周に巻き付け、または縦添えした構造。
【0031】
また、外側電極13の接地処理を容易とするため、金属撚り線導体や薄い金属板によるドレインワイヤを外側電極13と絶縁層14との間に設けてもよい。また、外側電極13と中空絶縁体11、外側電極13と絶縁層14間のいずれか、または両方にセパレート用の樹脂テ一プや紙テープを設けてもよい。
【0032】
絶縁層14は、外側電極13を絶縁ならびに保護するためのものであり、ウレタン、PVC(ポリ塩化ビニール)、EP(エポキシ樹脂)ゴム・シリコーンゴム等のゴム類、エラストマー、PET等の材料を用いて外側電極13を被覆し、或いはテープにして外側電極13に巻き付けられる。なお、絶縁層14の外径は、取付性、柔軟性、及び加工性を考慮すると、直径3〜5mm程度が好ましい。また、絶縁層14は復元性を有することが好ましい。
【0033】
また、浮遊容量の検知感度を調整するため、絶縁層14に低誘電フィラーを混ぜ、或いは絶縁層14を発泡させた構造や、外側電極13と絶縁層14の間に、誘電体を配置した構造、絶縁層14の外側に高誘電体を配置した構造などを採用することができる。
【0034】
(検知装置の構成)
図3は、図1のコードスイッチを用いた検知装置を示す。この検知装置2は、上記したコードスイッチ1と、このコードスイッチ1の電極線12Aに接続された第1の検知部としての通電検知部21と、外側電極13に接続された第2の検知部としての静電容量測定部22とを備える。なお、電極線12Bは接地される。
【0035】
通電検知部21は、電極線12A,12B間に所定の直流電圧Vsを印加する電源回路を備えるほか、電極線12A,12B間の電位が直流電圧Vsから0レベルに変化したことを検知する回路を備える。
【0036】
静電容量測定部22は、外側電極13と電極線12Bの間の通常時の静電容量C、及び人体23がコードスイッチ1に接近したときに生じる浮遊静電容量ΔCが加わった静電容量(C+ΔC)を測定し、浮遊静電容量ΔCの増加を検知したときに検知信号を発生する回路構成を有する。
【0037】
(コードスイッチ及び検知装置の動作)
ここでは、自動車のスライドドアにコードスイッチ1が装着されているものとする。なお、バックドア、ウィンドウ等の他のドアであっても、動作はスライドドアと同様である。
【0038】
(通電検知部による検知動作)
まず、通電検知部21の動作を説明する。スライドドアが閉動作をしているとき、コードスイッチ1に人体23が接触したとすると、コードスイッチ1の接触箇所は外力を受けて変形する。その外力が大きかった場合、中空絶縁体11は偏平になり、中空部10内で電極線12Aと電極線12Bの表面が接触する。
【0039】
電極線12Aと電極線12Bの接触により、電極線12A,12B間に印加されていた直流電圧Vsは0V状態になる。この電位変化から、通電検知部21は検知信号を発生する。この検知信号に基づいて図示しないドア駆動回路は、ドア駆動用モータを逆回転させ、スライドドアを開ける方向に駆動する。これにより、人体23に過度の圧力が加わらない様になる。なお、人体23以外の物体、例えば、手荷物等に対しても同様にして検知が行われる。また、外力が無くなったとき中空絶縁体11は元の形状に復元し、絶縁層14も中空絶縁体11の復元力及び自身の復元力によって元の形状に戻る。
【0040】
(静電容量測定部による検知動作)
次に、静電容量測定部22による検知動作について説明する。外側電極13と電極線12Bとの間には、静電容量Cが常に形成されている。この静電容量Cは、通常時はスライドドアがどの場所にあっても変化しない。
【0041】
次に、スライドドアが閉動作にあるとき、コードスイッチ1が人体23に接近すると、コードスイッチ1への外力の有無にかかわらず、外側電極13と接地間に、人体23による浮遊静電容量ΔCが形成される。この浮遊静電容量ΔCと静電容量Cの和、(C+ΔC)が静電容量測定部22によって測定される。
【0042】
静電容量測定部22は、静電容量がCから(C+ΔC)に変化したことに基づいて、検知信号を出力する。この検知信号に基づいて図示しないドア駆動回路は、ドア駆動用モータを逆回転させ、スライドドアを開ける方向に駆動する。
【0043】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(イ)静電容量測定部22で静電容量を測定し、その静電容量の変化から、人体23や物体の有無を非接触により確実かつ迅速に検出することができる。
(ロ)電極線12A,12Bによる従来からの接触型のコードスイッチの機能も有しているので、高い信頼性で挟み込み等の圧力を検知することかできる。
(ハ)電極線12Bの長さが変われば、静量容量Cが変わるため、静量容量Cの変化から電極線12Bの断線を検知することかできる。なお、電極線12Aと電極線12Bを静電容量測定部22への接続替えを行えば、電極線12Aの断線も検知することかできる。
【0044】
[第2の実施の形態]
図4は、本発明の第2の実施の形態に係るコードスイッチを示し、(a)は通常時の断面図、(b)は外力を受けて変形した時の断面図である。
【0045】
本実施の形態は、第1の実施の形態において、電極線を2本から4本にしたものであり、その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0046】
中空絶縁体11の中空部10は、十字形を成し、その4つの凹部位置に電極線12A,12B,12C,12Dが配設されている。この電極線12A〜12Dは、脱落しないように中空絶縁体11の内面に螺旋状に保持されている。
【0047】
図5は、図4のコードスイッチを用いた検知装置を示す。この検知装置3は、電極線12A〜12Dを並列接続したものである。すなわち、電極線12A〜12Dのそれぞれの終端を開放にし、電極線12A,12Cの始端のそれぞれに通電検知部21を接続し、電極線12B,12Dのそれぞれの始端を接地し、更に、外側電極13に静電容量測定部22を接続して構成されている。
【0048】
次に、検知装置3の動作について説明する。スライドドアが閉動作をしているとき、コードスイッチ1に人体等が接触すると、コードスイッチ1の接触箇所は外力を受けて変形する。外力が大きかった場合、図4の(b)のように、中空絶縁体11は変形して偏平になり、電極線12A,12Bは電極線12D,12Cに接触する。また、図4の(b)の横方向から外力が加わった場合、電極線12A,12Dと、電極線12B,12Cが接触する。
【0049】
上記した電極線同士の接触により、通電検知部21の入力端の電位は、直流電圧Vsから0V状態に変化する。この電位変化から、通電検知部21は検知信号を発生する。この検知信号に基づいて図示しないドア駆動回路は、ドア駆動用モータを逆回転させ、スライドドアを開ける方向に駆動する。これにより、人体等に過度の圧力が加わるのを防止することができる。なお、静電容量測定部22による検出は、第1の実施の形態で説明した通りであるので、説明を省略する。
【0050】
(第2の実施の形態の効果)
第2の実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)4本の電極線12A〜12Dを用いているため、図4に示すコードスイッチ1の上下、左右の4方向からの圧力を検知することができる。
(2)信号用及びグランド用に各2本が割り当てられているため、確実に短絡回路が形成され、検知の信頼性を高めることができる。
(3)検知装置3は、電極線12A〜12Dの結線をすべて始端側で行えるため、施工をし易くすることができる。
その他の効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0051】
[第3の実施の形態]
図6は、図4のコードスイッチを用いて構成された第3の実施の形態に係る検知装置を示す。この検知装置4は、電極線12A〜12Dを直列接続したものである。すなわち、電極線12A,12Cのそれぞれの終端を短絡線17Aで接続し、電極線12B,12Dのそれぞれの終端を短絡線17Bで接続し、電極線12Aの始端に通電検知部21を接続し、電極線12Bの始端を接地し、電極線12C,12Dの始端を開放にし、更に、外側電極13に静電容量測定部22を接続して構成されている。
【0052】
次に、検知装置4の動作について説明する。スライドドアが閉動作をしているとき、コードスイッチ1に人体等が接触すると、コードスイッチ1の接触箇所は外力を受けて変形する。外力が大きかった場合、図4の(b)のように、中空絶縁体11は変形して偏平になり、電極線12Aと電極線12Dが接触するほか、電極線12Bと電極線12Cが接触する。この結果、電極線12A,12Bの始端間の電位は、直流電圧Vsから0V状態に変化する。
【0053】
この電位変化から、通電検知部21は検知信号を発生する。この検知信号に基づいて図示しないドア駆動回路は、ドア駆動用モータを逆回転させ、スライドドアを開ける方向に駆動する。これにより、人体等に過度の圧力が加わるのを防止できる。なお、静電容量測定部22による検出は、第1の実施の形態で説明した通りであるので、説明を省略する。
【0054】
(第3の実施の形態の効果)
第3の実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)4本の電極線12A〜12Dを用いているため、図4に示すコードスイッチ1の上下、左右の4方向からの圧力を検知することができる。
(2)信号用及びグランド用に各2本が割り当てられているため、確実に短絡回路が形成され、検知の信頼性を高めることができる。
(3)検知装置3は、電極線12A〜12Dの結線を始端及び終端に振り分けられるため、始端側の接続を簡略にすることができる。
その他の効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0055】
[第4の実施の形態]
図7は、本発明の第4の実施の形態に係るコードスイッチを示し、(a)は要部正面図、(b)は屈曲状態を示す要部正面図である。なお、図7(a),(b)では、後述する外側電極線130を断面して示す。
【0056】
本実施の形態は、第1の実施の形態において、外側電極13として外側電極線130を中空絶縁体11の外周に螺旋状に巻き付けたものである。なお、図7では、最外層の絶縁層14の図示を省略している。
【0057】
外側電極線130は、例えば、銅、銅合金等の金属を用いることができる。
【0058】
この第4の実施の形態によれば、コードスイッチ1を曲げた場合、図7(b)に示すように、中空絶縁体11の外側が伸張し、内側の圧縮するが、外側電極線130がそれに追随して容易に変形するため、コードスイッチの曲げ特性を向上させることができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0059】
ここでは、図4に示す構成により、実施例1〜3を以下のように製作した。実施例1は、錫めっき軟銅撚り線(0.127mmの素線を7本撚り)の外周に導電性ゴムを被覆して0.6mm径の電極線12A〜12Dを製作し、これらを外径3.5mmの中空絶縁体11の内側に螺旋状に配置した。次に、中空絶縁体11の外周面に、100本の0.05mmの錫めっき軟銅素線を等ピッチで巻き付けて外側電極13とし、この外周面にウレタンからなる絶縁層14を0.3mmの厚さに被覆した。
【0060】
本実施例1と、Al/PET箔により外部導体を形成した一般的な同軸構造のもの(比較例)について、静電容量と静電容量の変化を測定した。その結果、静電容量については、実施例1は144pF/m、比較例は138pF/mとなった。また、50mm幅の金属板をコードスイッチ1から30mmの距離に配置したときの静電容量の変化は、実施例1は0.12pF/m、比較例は0.11pF/mとなり、実施例1は、比較例と同等の静電容量及び静電容量変化が得られた。
【実施例2】
【0061】
実施例2は、電極線12A〜12D及び中空絶縁体11を実施例1と同様に製作した後、中空絶縁体11の外周面に4μmのPETと7μのアルミニウム箔を貼り合せた6mm幅のテープを等ピッチに巻き付けて外側電極13とし、この外側電極13の外周面にウレタンからなる絶縁層14を0.4mmの厚さに被覆した。
【実施例3】
【0062】
実施例3は、電極線12A〜12D及び中空絶縁体11を実施例1と同様に製作した後、中空絶縁体11の外周面に0.1mmの錫めっき軟銅素線を編み込んだ編組構造の外側電極13とし、この外側電極13の外周面にPVCからなる絶縁層14を0.25mmの厚さに被覆した。
【0063】
以上のようにして製作した実施例1〜3によるコードスイッチ1を自動車のドアに取り付け、図5に示す検知装置3を構成して動作させたところ、接触型スイッチ、非接触型スイッチのいずれも、良好な結果を得ることができた。
【0064】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、その要旨を変更しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、各実施の形態間の構成要素の組合せは任意に行うことができる。また、電極線は、2本及び4本による構成を示したが、更に多くてもよい。この場合、偶数の組合せにするのが望ましい。
【0065】
また、上記各実施の形態では、電極線に抵抗を接続しない検知装置の構成を示したが、図8に示したように電極線12B,12Cの途中に抵抗18を介在させた構成にすることも可能である。これにより、電極線同士の接触を抵抗値変化あるいは電流値変化により検知することができる。
【0066】
また、細い金属導体に薄い絶縁被覆を施した電線を外側電極13としてコ一ドスィッチの外周に巻き付ける構造により、絶縁層14を省略した構造にすることができる。
【0067】
なお、上記実施の形態においては、コードスイッチ1を自動車のスライドドア、バックドア、ウィンドウ等の挟み込み検知に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、自動ドア等の挟み込み防止用、或いは侵入防止用のセンサとして利用することも可能である。
【0068】
また、上記実施の形態において、静電容量がCから(C+ΔC)に変化したことに基づく検出信号によりドア駆動用モータを逆転させるようにしたが、これに限らず、検出信号に基づきドア駆動用モータを減速あるいは停止させるようにしてもよい。また、音声ブザー等により警告を促すようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るコードスイッチを示す斜視図である。
【図2】図1のコードスイッチの断面図である。
【図3】図1のコードスイッチを用いた検知装置を示す接続図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るコードスイッチを示し、(a)は通常時の断面図、(b)は外力を受けて変形した時の断面図である。
【図5】図4のコードスイッチを用いた検知装置を示す接続図である。
【図6】第3の実施の形態に係る検知装置を示す接続図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係るコードスイッチを示し、(a)は要部正面図、(b)は屈曲状態を示す要部正面図である。
【図8】コードスイッチの変形例を用いた見地装置を示す接続図である。
【図9】従来のコードスイッチの構成を示す断面図である。
【図10】図8のコードスイッチを用いて構成した検知装置を示す接続図である。
【符号の説明】
【0070】
1 コードスイッチ
2 検知装置
3,4 検知装置
10 中空部
11 中空絶縁体
12A〜12D 電極線
13 外側電極
14 絶縁層
15 導体
16 電極部材
17A,17B 短絡線
18 抵抗
21 通電検知部
22 静電容量測定部
23 人体
100 コードスイッチ
101 中空絶縁体
102A〜102D 電極線
103 中空部
104A〜104D 始端
105A〜105D 終端
106 抵抗
107 電源
108 電流計
109A,109B 短絡線
130 外側電極線
200 検知装置
C 静電容量
ΔC 浮遊静電容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
復元性を有する中空絶縁体と、
相互に電気的に非接触の状態を保持しつつ前記中空絶縁体の中空部の内面に沿って長手方向に配置された複数の電極線と、
前記中空絶縁体の外周面に設けられ、前記電極線との間に静電容量を形成するとともに、接地との間に浮遊静電容量を形成可能な外側電極とを備えたことを特徴とするコードスイッチ。
【請求項2】
前記外側電極は、導電性を有する細線を前記中空絶縁体の外周面に巻き付けて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコードスイッチ。
【請求項3】
前記外側電極は、導電性を有する細線を、前記中空絶縁体の周面を編組により被覆して構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコードスイッチ。
【請求項4】
前記外側電極は、導電性を有する帯状部材を、前記中空絶縁体の外周面に巻き付け、または前記中空絶縁体の長さ方向に帯状に設けたことを特徴とする請求項1に記載のコードスイッチ。
【請求項5】
前記外側電極は、絶縁層によって被覆されていることを特徴とする請求項1に記載のコードスイッチ。
【請求項6】
前記複数の電極線は、金属による撚り線に導電性の電極部材を被覆した構成であることを特徴とする請求項1に記載のコードスイッチ。
【請求項7】
前記中空絶縁体は、復元性ゴムからなり、前記電極部材は、導電性ゴムからなり、または前記中空絶縁体は、復元性樹脂からなり、前記電極部材は、導電性プラスチックからなることを特徴とする請求項6に記載のコードスイッチ。
【請求項8】
前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載のコードスイッチと、
前記複数の電極線のうち信号用の電極線とグランド用の電極線との間の電位変化又は電流変化を検知する第1の検知部と、
前記外側電極に接続されて、前記静電容量及び前記浮遊静電容量を測定し、これらの容量変化を検知する第2の検知部とを備えたことを特徴とする検知装置。
【請求項9】
前記コードスイッチは、4本の電極線を備え、2本毎に並列接続または直列接続されていることを特徴とする請求項8に記載の検知装置。
【請求項10】
復元性を有する中空絶縁体の中空部の内面に沿って、信号用とグランド用に用いられる2つの電極線を含む2n本(nは正の整数)の電極線を相互に電気的に非接触の状態を保持しつつ長手方向に配置するとともに前記信号用と前記グランド用の電極線間に他の電極線を直列に接続し、前記電極線との間に静電容量を形成し、かつ接地との間に浮遊静電容量を形成可能に外側電極を配置したコードスイッチと、
前記2n本の電極線の途中の電極線間に接続された抵抗と、
前記信号用と前記グランド用の電極線間の電位変化または電流変化を検知する第1の検知部と、
前記外側電極に接続されて、前記静電容量及び前記浮遊静電容量を測定し、これらの容量変化を検知する第2の検知部とを備えたことを特徴とする検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−123202(P2007−123202A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317499(P2005−317499)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】