説明

ゴム片搬送回収装置

【課題】押出機から排出されたゴム片の飛散を防止したゴム片搬送回収装置を提供する。
【解決手段】押出機40のゴム片出口41の下方位置に配置された傾斜ベルトコンベア10と、水平ベルトコンベア20と、傾斜ベルトコンベア10の搬送方向下流端部に、上部が揺動可能に軸支された飛散防止板30と、を備えるため、ゴム片60の勢いを飛散防止板30で抑制して飛散することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム片搬送回収装置に関し、さらに詳しくは、例えばタイヤ成型などに用いられる押出機から排出されるゴム片を搬送・回収するゴム片搬送回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤ成型において、押出機から押し出されたゴム部材をタイヤに直接貼り付ける方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このタイヤ成型方法では、押出機から押し出されたゴム部材をタイヤに巻き付け、押出機から導出されたゴム部材を所定長さでカットしている。このため、押出機側の口金部位には使用されなかった押出ゴム片が残ることとなる。押出機は通常80〜90℃程度に温められているため、時間が経過すると口金部位に残った押出ゴム片の加硫が進みスコーチ(焼け)が発生してしまう。そこで、次のタイヤ製造に取り掛かる前に、スコーチが発生したゴム片を口金部位から排出している。従来は、押出機の口金部位の下方にベルトコンベアを配置し、このベルトコンベア上にゴム片を落下させている。そして、ベルトコンベアによりゴム片を回収部へ搬送している。ベルトコンベアとしては、搬送場所に応じて複数が互いに連続搬送が可能なように配置され、搬送方向の下流側のベルトコンベアの搬送方向の端部でゴム片が回収箱などに収容されるようになっている。
【特許文献1】特開2002−307520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ゴム片の回収部の場所によっては、ベルトコンベアによる搬送方向は水平方向ばかりではなく、斜め下方に向けて搬送させる必要もある。また、複数のベルトコンベアが連続搬送を行う場合の連絡部分や最下流のベルトコンベアの下流端での回収箱への落下距離が長い場合もある。さらに、複数のベルトコンベアの一部を斜め下方に傾けて設ける場合もある。
【0004】
ベルトコンベアが搬送方向下流側へ向けて下方に傾斜していると、ベルトコンベア上をゴム片が転がって飛び跳ねて飛散し易くなり、下流側のベルトコンベア若しくは下方の回収箱へうまく搬送されない場合がある。また、ベルトコンベア同士の連絡部分の落差や回収箱との落差があると、搬送速度によってはゴム片の落下方向が変化してしまう場合がある。これらの場合には、ゴム片がベルトコンベアや回収箱の近傍に飛散して回収作業上の問題が発生している。
【0005】
そこで、本発明の目的は、押出機から排出されたゴム片の飛散を防止したゴム片搬送回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、ゴム片搬送回収装置であって、押出機のゴム片出口の下方位置に配置された無端帯状のベルトコンベアと、前記ベルトコンベアの搬送方向下流端部に、上部が揺動可能に支持され、前記ベルトコンベアで搬送されるゴム片に接触しつつ該ゴム片の前記ベルトコンベアからの落下を許容する飛散防止板と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のゴム片搬送回収装置であって、ベルトコンベアは複数が連続搬送可能に配置され、互いに隣接するベルトコンベアうち少なくとも搬送方向上流側に配置されたベルトコンベアにおける搬送方向の下流端部に飛散防止板が配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のゴム片搬送回収装置であって、搬送下流端部に前記飛散防止板が配置されたベルトコンベアは、搬送方向下流側へ向けて斜め下方に傾いて配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のゴム片搬送回収装置であって、飛散防止板が、ベルトコンベアの両側部に互いに対向するように立設された一対のサイドプレートに揺動可能に軸支されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のゴム片搬送回収装置であって、飛散防止板における少なくとも前記ゴム片が接触する面は、柔軟性を有する材料でなることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のゴム片搬送回収装置であって、飛散防止板が、幅方向の中央が搬送方向の下流側へ膨出するように湾曲していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、上部が揺動可能に支持され飛散防止板が、ベルトコンベアで搬送されるゴム片に接触して、ゴム片の勢いを抑制して落下させるため、ゴム片が周囲に飛散することを防止できる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、複数の互いに隣接するベルトコンベアうち少なくとも搬送方向上流側に配置されたベルトコンベアにおける搬送方向の下流端部に飛散防止板が配置されているため、次のベルトコンベアへゴム片を飛散させることなく搬送できる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1および請求項2に記載の発明の効果に加えて、ゴム片が転がるような斜め下方に傾いて配置されたベルトコンベアにおいも飛散防止板がゴム片の勢いを緩衝して飛散を防止することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、ベルトコンベアの両側部に互いに対向するように立設された一対のサイドプレートを利用して飛散防止板を揺動可能に簡単に取り付けることができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、ゴム片が、飛散防止板の柔軟性を有する材料でなる面に接触するためさらに緩衝効果を高めることができる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発明に加えて、ゴム片が飛散防止板により幅方向の中央側へ導かれるため、ゴム片がベルトコンベアの側方へ逸脱することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係るゴム片搬送回収装置の詳細を図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態に係るゴム片搬送回収装置1の概略を示す斜視図、図2は飛散防止板30の作用を示す側面説明図、図3は飛散防止板30の縦断面図である。
【0019】
図1に示すように、ゴム片搬送回収装置1は、傾斜ベルトコンベア10と、水平ベルトコンベア20と、傾斜ベルトコンベア10に設けられた飛散防止板30とから大略構成されている。そして、このゴム片搬送回収装置1は、搬送方向最上流部が、例えばタイヤ成型などに用いられるゴム部材の押し出しを行う押出機40のゴム片出口41の下方に位置する。具体的には、傾斜ベルトコンベア10の最上流部がゴム片出口(口金部)41の下方に位置するように設置されている。ゴム片搬送回収装置1の最下流部、即ち水平ベルトコンベア20の最下流部は、ゴム片60の回収位置に配置される回収箱50の上方に位置するように配置されている。
【0020】
傾斜ベルトコンベア10は、所定の搬送距離を持つ無端帯状のベルト11と、このベルト11がかけられた少なくとも一対のローラ12と、搬送経路の両側に立設された一対のサイドプレート13と、を有する。ローラ12の少なくとも一方はベルト11を駆動する機能を有する。傾斜ベルトコンベア10は、搬送方向の下流側へ向けて下方に所定角度傾斜している。そして、一対のサイドプレート13,13の搬送方向の下流端の上部には、飛散防止板30が軸支軸31で揺動可能に支持されている。
【0021】
水平ベルトコンベア20は、無端帯状のベルト21と、このベルト21がかけられた少なくとも一対のローラ22と、搬送経路の両側に立設された一対のサイドプレート23と、搬送経路の上流端に立設されたエンドプレート24と、を有する。ローラ22の少なくとも一方はベルト21を駆動する機能を有する。
【0022】
図3に示すように、本実施の形態では、飛散防止板30が二層の構造となっている。即ち、飛散防止板30における傾斜ベルトコンベア10側の面は、例えばウレタンフォームなどの発泡材や柔軟性を有する緩衝材層32で構成され、反対側の面は例えば可撓性を有する樹脂材層33で構成されている。
【0023】
ここで、押出機40はタイヤに巻き付けるゴム部材を押し出している。この押出機40から導出されたゴム部材が所定長さでカットされるようになっている。このため、押出機40側のゴム片出口41には使用されなかった押出ゴム片が残ることとなる。押出機40は通常、例えば80〜90℃程度に温められているため、時間が経過するとゴム片出口41に残ったゴム片60の加硫が進みスコーチ(焼け)が発生してしまう。そこで、次のタイヤ製造に取り掛かる前に、スコーチが発生したゴム片60をゴム片出口41から排出している。
【0024】
以下、ゴム片搬送回収装置1の作用、動作および効果について説明する。
【0025】
押出機40のゴム片出口41から排出されたゴム片60は、傾斜ベルトコンベア10上に落下し、ベルト11により下流側へ搬送される。この際に、ゴム片60の形状などに起因してベルト11上をゴム片60が転がって下る場合もある。この場合に、傾斜ベルトコンベア10の搬送方向の下流端部に配置された飛散防止板30がゴム片60の移動する勢いを緩和しつつ下方への落下を許容する作用がある。図2は、飛散防止板30にゴム片60が接触して飛散防止板30が外側へ揺動して緩衝作用を奏している状態を示す。このように、傾斜ベルトコンベア10を通過したゴム片60は、飛散防止板30に接触して飛散することなく、水平ベルトコンベア20側への落下が許容される。そして、水平ベルトコンベア20は、ゴム片60を水平方向に搬送して、搬送方向の下流側に配置された回収箱50内に収容させる。このため、本実施の形態のゴム片搬送回収装置1によれば、ゴム片60が各ベルトコンベアや回収箱50の近傍に飛散することを抑制でき、回収作業上の問題が発生することを防止できる。
【0026】
なお、本実施の形態のゴム片搬送回収装置1では、飛散防止板30が二層構造であるが、三層以上の構造や単層構造のものであっても勿論よい。
【0027】
また、図4および図5に示すように、飛散防止板30の両側に剛性を有する一対の枠部材34を設け、これら枠部材34の間に、幅方向の中央が搬送方向の下流側へ膨出するように湾曲している湾曲板35を設けた構成としてもよい。このような構成とすることにより、図5に示すように、ゴム片60が飛散防止板30により幅方向の中央側(図中太い矢印で示す方向)へ導かれるため、ゴム片60がゴム片搬送回収装置1の側方へ逸脱することを防止できる。
【0028】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0029】
例えば、上述の実施の形態に係るゴム片搬送回収装置1は、タイヤ成型に用いるゴム部材の押出機40からのゴム片60の搬送・回収に適用したが、このような押出機40に限定されるものではなく、各種ゴム部材の搬送・回収に適用できることは云うまでもない。
【0030】
また、上述の実施の形態では、ゴム片搬送回収装置1が、傾斜ベルトコンベア10と水平ベルトコンベア20とで構成されていが、それ以上の数のベルトコンベアを有する場合や、単数のベルトコンベアのみを有する場合にも本発明が適用可能であることは勿論である。
【0031】
さらに、上述の実施の形態では、飛散防止板30を軸支軸31で軸支した構成であるが、飛散防止板30の少なくとも上部両側部分をワイヤで吊り下げて揺動可能に支持しても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係るゴム片搬送回収装置の概略を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態のゴム片搬送回収装置に備えられた飛散防止板の作用を示す側面説明図である。
【図3】本実施の形態のゴム片搬送回収装置に備えられた飛散防止板の縦断面図である。
【図4】飛散防止板の変形例を示す斜視図である。
【図5】飛散防止板の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0033】
1…ゴム片搬送回収装置、10…傾斜ベルトコンベア、20…水平ベルトコンベア、30…飛散防止板、31…軸支軸、40…押出機、41…ゴム片出口、50…回収箱、60…ゴム片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機のゴム片出口の下方位置に配置された無端帯状のベルトコンベアと、
前記ベルトコンベアの搬送方向下流端部に、上部が揺動可能に支持され、前記ベルトコンベアで搬送されるゴム片に接触しつつ該ゴム片の前記ベルトコンベアからの落下を許容する飛散防止板と、
を備えることを特徴とするゴム片搬送回収装置。
【請求項2】
前記ベルトコンベアは複数が連続搬送可能に配置され、互いに隣接する前記ベルトコンベアうち少なくとも搬送方向上流側に配置された前記ベルトコンベアにおける搬送方向の下流端部に前記飛散防止板が配置されていることを特徴とする請求項1記載のゴム片搬送回収装置。
【請求項3】
搬送下流端部に前記飛散防止板が配置された前記ベルトコンベアは、搬送方向下流側へ向けて斜め下方に傾いて配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のゴム片搬送回収装置。
【請求項4】
前記飛散防止板は、前記ベルトコンベアの両側部に互いに対向するように立設された一対のサイドプレートに揺動可能に軸支されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のゴム片搬送回収装置。
【請求項5】
前記飛散防止板における前記ゴム片が接触する面は、柔軟性を有する材料でなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のゴム片搬送回収装置。
【請求項6】
前記飛散防止板は、幅方向の中央が搬送方向の下流側へ膨出するように湾曲していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のゴム片搬送回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−1381(P2009−1381A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164100(P2007−164100)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】