説明

サイドエアバッグ及びサイドエアバッグ装置

【課題】膨張展開時における下部チャンバのバタつきを抑制することにより、展開安定性を向上することができるサイドエアバッグ及びサイドエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】第1テザー30を、第1パネル22Aに結合される第1縁部30aと第2パネル22Bに結合される第2縁部30bの各結合位置36,32が互いにオフセットするように、各パネル22A,22Bに対し結合する。これにより、下部チャンバ28における車両前後方向後方側に位置する円筒膨張部34の長さを増大させ、下部チャンバ28の剛性を高めることができる。その結果、上部チャンバ26と下部チャンバ28の内圧差による膨張展開時の下部チャンバ28のバタつきを抑制し、サイドエアバッグ16の展開安定性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の側面衝突時等に乗員を受け止めるためのサイドエアバッグ及びサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の側面衝突や車体横転時等に、インフレータによってサイドエアバッグを乗員の側部に膨張させ、乗員の身体を受け止めるサイドエアバッグ装置が知られている。このサイドエアバッグ装置は、例えばシートの背もたれ部に収納されており、側面衝突時等には、サイドエアバッグがインフレータから噴射されるガスによって背もたれ部から乗員と車両の側壁部との間に膨張展開する。
【0003】
このようなサイドエアバッグとして、乗員の少なくとも胸部を受け止めるための上部チャンバと、腰部を受け止めるための下部チャンバとを有するものがある(例えば、特許文献1参照)。このサイドエアバッグでは、外部からの衝撃に弱い胸部を受け止める上部チャンバの内圧を、腰部を受け止める下部チャンバの内圧より低圧に設定することにより、乗員の安全性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−62566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、上部チャンバの内圧を下部チャンバよりも低圧に設定したサイドエアバッグ装置の基本構成が開示されている。
【0006】
このような構成であるサイドエアバッグ装置の最適化を図る上では、上部チャンバと下部チャンバの内圧差による膨張展開時の下部チャンバのバタつきを抑制し、展開安定性を向上することが要求される。
【0007】
本発明の目的は、膨張展開時における下部チャンバのバタつきを抑制することにより、展開安定性を向上することができるサイドエアバッグ及びサイドエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1発明のサイドエアバッグは、拘束される乗員に面する第1パネル部と、前記乗員側と反対側に面する第2パネル部により形成され、前記乗員の側部に膨張展開するサイドエアバッグであって、前記乗員の少なくとも胸部を受け止めるための上部チャンバと、前記乗員の腰部を受け止めるための下部チャンバと、前記第1パネル部に結合される第1縁部及び前記第2パネル部に結合される第2縁部を有し、それら第1縁部及び第2縁部の各結合位置が互いにオフセットするように結合された、前記上部チャンバと前記下部チャンバとを区画する第1テザーと、前記下部チャンバにおける前記車両前後方向後方側に位置し、前記第1テザーにより膨張時に円筒状となるように形成された円筒膨張部と、を有することを特徴とする。
【0009】
サイドエアバッグは、例えばシートの背もたれ部に折り畳まれて収納され、車両の側面衝突や車体横転時等に、インフレータから噴射されるガスによって乗員と車両の側壁部との間に膨張展開する。このとき、外部からの衝撃に弱い乗員の胸部を受け止める上部チャンバの内圧が、腰部を受け止める下部チャンバの内圧より低圧となるように、例えばインフレータから各チャンバに供給されるガス流量が調整される。
【0010】
ここで、一般に上部チャンバと下部チャンバとを有するサイドエアバッグにおいては、インフレータのガス噴出口が2つのチャンバの分割ラインである第1テザーの車両前後方向後端部近傍に位置する構成となる。これは、ガス噴出口より上部チャンバ及び下部チャンバに対し円滑にガスを供給するためである。このため、仮に第1テザーの両縁部をオフセットさせない構成の場合には、下部チャンバの後方側に位置する円筒膨張部の長さは、おおよそエアバッグ下端からインフレータのガス噴出口近傍までの長さとなる。
【0011】
このとき本願第1発明においては、上部チャンバと下部チャンバとを区画する第1テザーが、第1パネル部に結合される第1縁部と第2パネル部に結合される第2縁部の各結合位置が互いにオフセットするように結合されている。このように第1テザーをオフセット構造とすることにより、第1テザーの低位置側の領域をインフレータのガス噴出口に対応(貫通)させれば、高位置側の領域によって円筒膨張部を上記長さ(エアバッグ下端からインフレータのガス噴出口近傍までの長さ)よりも増大することが可能となる。これにより、長さが増大した円筒膨張部によって下部チャンバの剛性を高めることができる。その結果、上部チャンバと下部チャンバの内圧差による膨張展開時の下部チャンバのバタつきを抑制し、サイドエアバッグの展開安定性を向上することができる。
【0012】
また本願第1発明によれば、次のような効果をも得ることができる。すなわち、例えば第1テザーの第1縁部及び第2縁部の結合位置をオフセットさせない構成の場合には、下部チャンバを安定させるために円筒膨張部を長くしようとした場合、第1テザーの後端部をできるだけエアバッグ上部に配設する必要があり、その結果インフレータもエアバッグ上部に取り付ける必要が生じる。一方で、シートフレームの仕様等によりインフレータの取り付け位置を高くできない場合には、第1テザーの後端部を低くする必要があり、その結果円筒膨張部の長さが短くなり、下部チャンバの安定性が不十分となる。したがって、下部チャンバを安定させるためにはインフレータの取り付け位置がエアバッグ上部に制限されることになる。このとき本願第1発明によれば、第1テザーをオフセットした構成であるため、上述したように第1テザーの低位置側の領域をインフレータのガス噴出口に対応させれば、高位置側の領域によって円筒膨張部の長さを必要分確保することが可能となる。これにより、インフレータの取り付け位置を低くした場合でも下部チャンバを安定させることができる。したがって、インフレータの取り付け位置の自由度を向上することができる。
【0013】
第2発明のサイドエアバッグは、上記第1発明において、第1テザーの低位置側の領域に、前記サイドエアバッグを膨張させるガスを供給するインフレータを挿通させるための挿通部を設けたことを特徴とする。
【0014】
これにより、第1テザーの高位置側の領域によって、円筒膨張部を上述したオフセットさせない場合における長さ(エアバッグ下端からインフレータのガス噴出口近傍までの長さ)よりも増大することができる。これにより、長さが増大した円筒膨張部によって下部チャンバの剛性を高めることができる。その結果、膨張展開時の下部チャンバのバタつきを抑制し、サイドエアバッグの展開安定性を向上することができる。
【0015】
第3発明のサイドエアバッグは、上記第1又は第2発明において、前記第1テザーは、前記第1縁部の前記第1パネル部に対する結合位置が、前記第2縁部の前記第2パネル部に対する結合位置より低くなるように、各パネル部に対しオフセットして結合されていることを特徴とする。
【0016】
本願第3発明においては、第1縁部の第1パネル部に対する結合位置が、第2縁部の第2パネル部に対する結合位置より低くなるように、第1テザーを各パネル部に対し結合する。すなわち、乗員側の結合位置が乗員と反対側(車両の側壁部側)の結合位置より低くなるように第1テザーを各パネル部に対し結合する。このようにすることで、乗員側の第1パネル部側における下部チャンバの大きさを、車両の側壁部側の第2パネル部側における下部チャンバの大きさよりも小さくすることができる。これにより、車両の側面衝突や車体横転時等に、上部チャンバよりも高圧である下部チャンバが必要以上に乗員の身体に接触することを防止し、乗員の安全性を向上することができる。
【0017】
第4発明のサイドエアバッグは、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記第1縁部の結合位置と前記第2縁部の結合位置とのオフセット量は、前記第1テザーの幅とほぼ同等であることを特徴とする。
【0018】
これにより、非膨張状態においてサイドエアバッグを第1パネル部と第2パネル部とが上下に重なるように平面状に置いた際に、第1テザーを折りやしわ等が生じることなく平面状にすることができる。その結果、サイドエアバッグを平坦にすることができるので、収納時に折り畳み易くすることができると共に、嵩張らないようにすることができる。また、サイドエアバッグを平面状に置いた際に第1テザーも平面状になるため、製造時における第1テザーの第1パネル部及び第2パネル部への結合(縫製)の作業性を向上することができる。
【0019】
第5発明のサイドエアバッグは、上記第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記上部チャンバを、前記乗員の肩部を受け止めるための第1チャンバと、前記乗員の胸部を受け止めるための第2チャンバとに区画する第2テザーを有することを特徴とする。
【0020】
本願第5発明においては、サイドエアバッグを、乗員の肩部を受け止めるための第1チャンバと、乗員の胸部を受け止めるための第2チャンバと、乗員の腰部を受け止めるための下部チャンバとを有する3チャンバ構造とする。このように、乗員の身体の各部を受け止めるための多数のチャンバを設けることにより、各チャンバにおいて対応する身体部分の特徴にきめ細かに応じた受け止め方をすることが可能となり、乗員の安全性をさらに向上することができる。
【0021】
第6発明のサイドエアバッグは、上記第5発明において、前記第2テザーは、前記第1パネル部に結合される第3縁部及び前記第2パネル部に結合される第4縁部を有し、少なくとも一部の領域において、前記第3縁部の前記第1パネル部に対する結合位置が、前記第4縁部の前記第2パネル部に対する結合位置より高くなるように、各パネル部に対しオフセットして結合されていることを特徴とする。
【0022】
一般に、乗員の肩部を受け止めるための第1チャンバと乗員の胸部を受け止めるための第2チャンバとを有するサイドエアバッグにおいては、外部からの衝撃に弱い胸部を受け止める第2チャンバの内圧を、肩部を受け止める第1チャンバの内圧より低圧に設定する。
【0023】
ここで本願第6発明においては、少なくとも一部の領域において、第3縁部の第1パネル部に対する結合位置が第4縁部の第2パネル部に対する結合位置より高くなるように、第2テザーを各パネル部に対し結合する。すなわち、少なくとも一部の領域において、乗員側の結合位置が乗員と反対側(車両の側壁部側)の結合位置より高くなるように第2テザーを各パネル部に対し結合する。このようにすることで、乗員側の第1パネル部側における第1チャンバの大きさを、車両の側壁部側の第2パネル部側における第1チャンバの大きさよりも小さくすることができる。これにより、車両の側面衝突や車体横転時等に、第2チャンバよりも高圧である第1チャンバが必要以上に乗員の身体に接触することを防止し、乗員の安全性を向上することができる。
【0024】
第7発明のサイドエアバッグは、上記第5又は第6発明において、前記第3縁部の結合位置と前記第4縁部の結合位置とのオフセット量は、前記第2テザーの幅とほぼ同等であることを特徴とする。
【0025】
これにより、非膨張状態においてサイドエアバッグを第1パネル部と第2パネル部とが上下に重なるように平面状に置いた際に、第1テザーのみならず第2テザーについても折りやしわ等が生じることなく平面状にすることができる。その結果、3チャンバとした場合でもサイドエアバッグを平坦にすることができるので、収納時に折り畳み易くすることができると共に、嵩張らないようにすることができる。また、製造時における第2テザーの第1パネル部及び第2パネル部への結合(縫製)の作業性を向上することができる。
【0026】
上記目的を達成するために、第8発明のサイドエアバッグ装置は、上記第1乃至第7発明のいずれかのサイドエアバッグと、前記サイドエアバッグ内における前記車両の前後方向後方側に配設され、前記サイドエアバッグを膨張展開させるためのガスを供給するインフレータと、前記サイドエアバッグ及び前記インフレータを収納するケーシングと、を備えたことを特徴とする。
【0027】
サイドエアバッグ装置は、例えばシートの背もたれ部に折り畳まれて収納され、車両の側面衝突や車体横転時等に、インフレータから噴射されるガスによってサイドエアバッグが乗員と車両の側壁部との間に膨張展開する。このとき、外部からの衝撃に弱い乗員の胸部を受け止める上部チャンバの内圧が、腰部を受け止める下部チャンバの内圧より低圧となるように、例えばインフレータから各チャンバに供給されるガス流量が調整される。
【0028】
ここで、一般に上部チャンバと下部チャンバとを有するサイドエアバッグにおいては、インフレータのガス噴出口が2つのチャンバの分割ラインである第1テザーの車両前後方向後端部近傍に位置する構成となる。これは、ガス噴出口より上部チャンバ及び下部チャンバに対し円滑にガスを供給するためである。このため、仮に第1テザーの両縁部をオフセットさせない構成の場合には、下部チャンバの後方側に位置する円筒膨張部の長さは、おおよそエアバッグ下端からインフレータのガス噴出口近傍までの長さとなる。
【0029】
このとき本願第8発明においては、サイドエアバッグにおいて上部チャンバと下部チャンバとを区画する第1テザーが、第1パネル部に結合される第1縁部と第2パネル部に結合される第2縁部の各結合位置が互いにオフセットするように結合されている。このように第1テザーをオフセット構造とすることにより、第1テザーの低位置側の領域をインフレータのガス噴出口に対応(貫通)させれば、高位置側の領域によって円筒膨張部を上記長さ(エアバッグ下端からインフレータのガス噴出口近傍までの長さ)よりも増大することが可能となる。これにより、長さが増大した円筒膨張部によって下部チャンバの剛性を高めることができる。その結果、上部チャンバと下部チャンバの内圧差による膨張展開時の下部チャンバのバタつきを抑制することができ、サイドエアバッグの展開安定性を向上することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、膨張展開時における下部チャンバのバタつきを抑制することにより、サイドエアバッグの展開安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のサイドエアバッグ装置の第1実施形態を備えた自動車のシートの平常時及びサイドエアバッグ膨張時における概略側面図である。
【図2】膨張展開した状態におけるサイドエアバッグの全体構造を表す側面図である。
【図3】非膨張状態のサイドエアバッグを第2パネル側から見た平面図である。
【図4】非膨張状態のサイドエアバッグを第1パネル側から見た平面図である。
【図5】図3中V−V断面によるサイドエアバッグの断面を模式的に表す図、及びその膨張状態を表す図である。
【図6】第1テザーの挿通部の構造を表すための、第1パネルに第1テザーを取り付けた状態の平面図である。
【図7】挿通部にインフレータを挿通した状態を表す部分拡大図である。
【図8】第1テザーの作成手順を表す図である。
【図9】第1テザーの挿通部により、第1テザーの低位置側の領域においてインフレータが挿通されることを説明するための、膨張した状態におけるサイドエアバッグの概念的な断面図である。
【図10】インフレータに設けられるスリーブの全体構造を表す斜視図である。
【図11】膨張展開した状態における第2実施形態のサイドエアバッグの全体構造を表す側面図である。
【図12】非膨張状態のサイドエアバッグを第2パネル側から見た平面図である。
【図13】非膨張状態のサイドエアバッグを第1パネル側から見た平面図である。
【図14】図12中XIV−XIV断面によるサイドエアバッグの断面を模式的に表す図、及びその膨張状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の第1実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、車両前後方向とは着座した乗員12から見た車両の前後方向をいう。
【0033】
図1は、本発明のサイドエアバッグ装置の一実施の形態を備えた自動車のシートの概略側面図であり、図1(a)は平常時、図1(b)はサイドエアバッグの膨張時を示している。
【0034】
この図1において、シート10上に乗員12が着座している。上記シート10は座部10Aを有し、この座部10Aから背もたれ部10Bが上方に突出している。この背もたれ部10Bの頂部には、ヘッドレスト10Cが取り付けられている。
【0035】
上記シート10は、事故等による側面衝突又は車体横転時等に乗員12の上半身を受け止めるためのサイドエアバッグ装置14を上記背もたれ部10B内に装備している。このサイドエアバッグ装置14は、自動車のボディの側壁部(図示せず。図1では紙面手前側に位置する)とシート10に着座した乗員12との間に膨張展開するサイドエアバッグ16と、このサイドエアバッグ16が折り畳まれた状態で収納される例えば樹脂製あるいは不織布製のケーシング18と、上記サイドエアバッグ16を膨張展開させるためのガスを供給する略円筒形状のインフレータ20(後述の図8等参照)を備えている。このインフレータ20は、図示しないインフレータ制御回路によって点火される。
【0036】
図1(a)に示すように、平常時には、サイドエアバッグ16は、ケーシング18内に折り畳まれた状態でシート10の背もたれ部10B内に収納されている。そして、例えば自動車が側面衝突等した場合には、上記インフレータ制御回路(図示せず)によりサイドエアバッグ装置14のインフレータ20が点火され、図1(b)に示すように、サイドエアバッグ16が膨張してシート10から(本実施形態では背もたれ部10Bの側面の布地の図示しない縫製ラインを割って)飛び出し、自動車のボディの側壁部と乗員12との間に展開する。
【0037】
図2は、膨張展開した状態におけるサイドエアバッグ16の全体構造を表す側面図である。
【0038】
この図2において、サイドエアバッグ16は、ほぼ同一形状に形成された第1パネル22A(後述の図4参照)と第2パネル22Bとがその外縁部に沿って周囲を縫製結合されることにより、袋体として構成されている。図中の符号24はその外縁部の縫製結合部を示している。上記第1パネル22Aは拘束される乗員12に面するように配置され、第2パネル22Bは乗員12側と反対側(すなわち自動車のボディの側壁部側)に面するように配置される。なお、この図2は乗員12側と反対側(自動車のボディの側壁部側)から見た側面図であるため、第2パネル22Bのみを図示している。
【0039】
上記において、第1パネル22Aが特許請求の範囲に記載の第1パネル部を構成し、第2パネル22Bが第2パネル部を構成する。
【0040】
サイドエアバッグ16は、乗員12の肩部12A及び胸部12B(腹部を含む)を受け止めるための上部チャンバ26と、乗員12の腰部12Cを受け止めるための下部チャンバ28とを有する2チャンバエアバッグである。これら上部チャンバ26と下部チャンバ28とは、サイドエアバッグ16の内部において第1テザー30(後述の図3乃至図5参照)により区画されている。第1テザー30は、第1パネル22Aに結合される第1縁部30a(後述の図5参照)及び第2パネル22Bに結合される第2縁部30b(後述の図5参照)を有している。図中の符号32は、上記第2縁部30bの第2パネル22Bに対する縫製結合部を示している。
【0041】
下部チャンバ28は、車両前後方向後方側(図2中右側)に位置する、第1テザー30により膨張時に略円筒状となるように形成された円筒膨張部34を有している。円筒膨張部34は、図1(b)に示すように、シート10の背もたれ部10Bにほぼ沿う方向に延設されている。この円筒膨張部34により、下部チャンバ28の剛性を高め、下部チャンバ28の自立性を向上できる。その結果、膨張展開時における下部チャンバ28のバタつきを抑制し、サイドエアバッグ16の展開安定性を向上することができる。
【0042】
図3は、非膨張状態のサイドエアバッグ16を第2パネル22B側から見た平面図、図4は、非膨張状態のサイドエアバッグ16を第1パネル22A側から見た平面図、図5(a)は、図3中V−V断面によるサイドエアバッグ16の断面を模式的に表す図であり、図5(b)はその膨張状態を表す図である。
【0043】
これら図3乃至図5において、サイドエアバッグ16は、前述したように第1テザー30により区画された上部チャンバ26及び下部チャンバ28とを有している。第1テザー30は、第1パネル22A及び第2パネル22Bと同様の材質で構成された帯状の基布であり、その幅方向両端に、第1パネル22Aに結合される第1縁部30a(図5参照)及び第2パネル22Bに結合される第2縁部30b(図5参照)をそれぞれ有している。図中の符号32は、前述したように第2縁部30bの第2パネル22Bに対する縫製結合部を示しており、符号36は、第1縁部30aの第1パネル22Aに対する縫製結合部を示している。
【0044】
これら縫製結合部32,36は、図3及び図4に示すように、下部チャンバ28における車両前後方向後方側に円筒膨張部34を形成するために、エアバッグ側面視において略S字状(あるいは略L字状)となるように各パネル22B,22Aに形成されている。同様に、第1テザー30は、図3及び図4に示すように、下部チャンバ28における車両前後方向後方側に円筒膨張部34を形成するために、エアバッグ側面視において略S字状(あるいは略L字状)に配置する必要があり、且つその両縁部30a,30bを上下方向にオフセットするために、その形状はテザー平面視において略S字状(あるいは略L字状)となっている。
【0045】
第1テザー30は、第1縁部30aの第1パネル22Aに対する結合位置である縫製結合部36の位置(以下単に「結合位置36」と称する)が、第2縁部30bの第2パネル22Bに対する結合位置である縫製結合部32の位置(以下単に「結合位置32」と称する)より低くなるように、各パネル22A,22Bに対しオフセットして縫製結合されている。そして、図5(a)に示すように、第1縁部30aの結合位置36と第2縁部30bの結合位置32とのオフセット量L1は、第1テザー30の幅L2とほぼ同等となるように構成されている。
【0046】
なお、サイドエアバッグ16内における車両の前後方向後方側(図3中右側、図4中左側)には、サイドエアバッグ16を膨張展開させるためのガスを供給するインフレータ20が配設される(図3,4中では2点鎖線にて図示)。詳細は後述するが、このインフレータ20は2本のボルト44(後述の図8参照)によりケーシング18に固定されるようになっており、第1パネル22Aにはそれらボルト44を挿通するためのボルト孔38が穿設されている(図4参照)。
【0047】
なお、上記図3乃至図5では図示を省略したが、インフレータ20は第1テザー30を貫通するように配設されるため、第1テザー30はインフレータ20を挿通させるための挿通部60を有している。この挿通部60の詳細について、図6及び図7を用いて説明する。
【0048】
図6は、第1テザー30の挿通部60の構造を表すための、第1パネル22Aに第1テザー30を取り付けた状態の平面図、図7は、挿通部60にインフレータ20を挿通した状態を表す部分拡大図である。
【0049】
これら図6及び図7において、第1テザー30は、第1テザーパネル62及び第2テザーパネル64を縫製結合することにより形成されている。具体的には、第1及び第2テザーパネル62,64はほぼ同一形状のタブ部66をそれぞれ有しており、これらタブ部66同士を縫製結合部68によって結合することにより、インフレータ20を挿通させるための挿通部60が形成される。
【0050】
図8は、第1テザー30の作成手順を表す図である。
【0051】
図8(a)に示すように、第1テザーパネル62は全体として略円弧状に形成された基布であり、一端部に上述したタブ部66を有している。また、第2テザーパネル64は全体として略三角形状に形成された基布であり、上記タブ部66とほぼ同一形状のタブ部66を有している。これらタブ部66同士がほぼ一致するように、第1テザーパネル62と第2テザーパネル64とを重ね合わせる。
【0052】
次に、図8(b)に示すように、重ね合わせたタブ部66同士を縫製結合部68により結合し、インフレータ20を挿通させるための袋状の挿通部60を形成する。その後、図8(c)に示すように、第2テザーパネル64を、形成された挿通部60が下向きとなるように折り返すことにより、第1テザー30のオフセット構造における低位置側の領域にインフレータ20を挿通させるための挿通部60が設けられた、平面視において略S字状(あるいは略L字状)である第1テザー30が形成される。
【0053】
以上のように、第1テザー30は、上部チャンバ26と下部チャンバ28とを区画する部分については、第1テザーパネル62による1枚のパネルのみで構成されており、基布量の削減及びエアバッグの厚みの低減を図っている。一方で、インフレータ20を挿通させるための挿通部60部分については、袋状である必要があるため、第1及び第2テザーパネル62,64による2枚のパネルで構成されている。
【0054】
上記構成である第1テザー30は、上部チャンバ26と下部チャンバ28とを区画し、サイドエアバッグ16の厚みを所定量に規制する役割を果たしている。また、挿通部60でインフレータ20を受け、後述するスリーブ40と共に噴出されるガスを整流するディフューザとしても機能する。さらに、タブ部66を長めに形成して挿通部60を長めの構成とすることにより、エアバッグ膨張時に高圧側である下部チャンバ28から低圧側である上部チャンバ26へガスが逆流するのを防止する機能(逆止弁としての機能)を持たせることも可能である。
【0055】
図9は、上述した第1テザー30の挿通部60により、第1テザー30の低位置側の領域においてインフレータ20が挿通されることを説明するための、膨張した状態におけるサイドエアバッグ16の概念的な断面図(図3中IX−IX断面に相当)である。
【0056】
図9において、前述したように、第1パネル22Aに対する結合位置36が第2パネル22Bに対する結合位置32より低くなるように、第1テザー30が各パネル22A,22Bに対しオフセットして結合される結果、サイドエアバッグ16が膨張した際に、第1テザー30には、第2パネル22B側の高位置側領域30Hと、第1パネル22A側の低位置側領域30Lとが形成される。そして、上述した第1テザー30の構成により、挿通部60によって、第1テザー30の低位置側領域30Lにおいてインフレータ20がスリーブ40と共に挿通される。なお、煩雑防止のため図9では挿通部60の図示を省略している。
【0057】
これにより、仮に第1テザー30をオフセットさせない構成の場合には、下部チャンバ28における後方側に位置する円筒膨張部34の上下方向長さは、おおよそエアバッグ下端からインフレータ20のガス噴出孔を有する凸部20a近傍までの長さL5となるのに対し、本実施形態においては、第1テザー30の高位置側領域30Hによって円筒膨張部34の上下方向長さを上記L5からL6に増大することができる。
【0058】
なお、上述したように、挿通部60には、インフレータ20のガス噴出側がスリーブ40と共に嵌合される。スリーブ40は、先端に絞り部を有する筒状の部材であり、インフレータ20から噴出されるガスを上部チャンバ26及び下部チャンバ28に所定の流量比率で分配する流量分配機能を有している。このスリーブ40の詳細について、図10を用いて説明する。
【0059】
図10は、インフレータ20に設けられるスリーブ40の全体構造を表す斜視図である。
【0060】
図10において、スリーブ40は、一方側(図10中左側)端部に絞り部40aを有すると共に、他方側(図10中右側)にこのスリーブ40をインフレータ20に係止するための舌片部41を有する筒状部材である。一方、インフレータ20は一方側(図10中左側)に凸部20aを有しており、この凸部20aにはガスを噴出するための複数の噴出孔42が設けられている。このインフレータ20は前述したボルト44を有するクリップ46により支持されており、ボルト44がケーシング18に締結されることによって、インフレータ20がケーシング18に固定される。
【0061】
スリーブ40の舌片部41には、インフレータ20の軸方向2箇所に設けられたクリップ46のボルト44を挿通させるための孔48がそれぞれ設けられている。これらの孔48にボルト44が挿通されることにより、スリーブ40はインフレータ20の一方側(図10中左側)を覆う状態でインフレータ20に係合される。なお、スリーブ40の内径はインフレータ20の外径よりも所定量大きくなるように形成されており、スリーブ40の内周面とインフレータ20の外周面との間には噴出されたガスが上部チャンバ26側に流れる流路(図中矢印50で示す)の隙間が確保される。
【0062】
また、上記スリーブ40の絞り部40aは、開口52を有する環状部材である。この開口52の口径は、サイドエアバッグ16に備えられた上部チャンバ26及び下部チャンバ28の内圧がそれぞれ所望の値となるように、インフレータ20の噴出ガスが適切な流量比率で分配されるように予め算出された適宜の値に設定されている。ここでは、乗員12の腰部12Cを受け止める下部チャンバ28の内圧が、外部からの衝撃に弱い肩部12A及び胸部12Bを受け止める上部チャンバ26の内圧よりも高圧になるように、開口52の口径が設定される。これにより、インフレータ20から噴出されたガスが予め設定された所定の流量に調整されて下部チャンバ28側に供給される(その流路を図中矢印54で示す)。
【0063】
以上により、例えばエアバッグ内に、インフレータ20の周囲を覆うように各チャンバに対応した噴出孔が形成された流量調整カバーを設置する等の複雑な構成とすることなく、簡易な構成で、インフレータ20から各チャンバに供給されるガスの流量を調整できる。
【0064】
次に、以上のような構成であるサイドエアバッグ16により得られる作用効果について説明する。
【0065】
サイドエアバッグ16は、シート10の背もたれ部10Bに折り畳まれて収納され、車両の側面衝突や車体横転時等に、インフレータ20から噴射されるガスによって乗員12と車両の側壁部との間に膨張展開する。このとき、上述したように、外部からの衝撃に弱い乗員12の肩部12A及び胸部12Bを受け止める上部チャンバ26の内圧が、腰部12Cを受け止める下部チャンバ28の内圧より低圧となるように、インフレータ20から各チャンバに供給されるガス流量が調整される。
【0066】
ここで、一般に上部チャンバ26と下部チャンバ28とを有するサイドエアバッグ16においては、インフレータ20のガス噴出孔42が2つのチャンバ26,28の分割ラインである第1テザー30の車両前後方向後端部近傍に位置する構成となる。これは、ガス噴出孔42より上部チャンバ26及び下部チャンバ28に対し円滑にガスを供給するためである。このため、仮に第1テザー30の両縁部をオフセットさせない構成の場合には、下部チャンバ28における後方側に位置する円筒膨張部34の上下方向長さは、おおよそエアバッグ下端からインフレータ20のガス噴出孔42近傍までの長さL5となる(図9参照)。
【0067】
このとき本実施形態のサイドエアバッグ16においては、上部チャンバ26と下部チャンバ28とを区画する第1テザー30が、第1パネル22Aに結合される第1縁部30aと第2パネル22Bに結合される第2縁部30bの各結合位置36,32が互いにオフセットするように結合されている。このように第1テザー30をオフセット構造とすることにより、第1テザー30の低位置側領域30Lをインフレータ20の噴出孔42に対応させれば、高位置側領域30Hによって円筒膨張部34の長さを上記長さL5(エアバッグ下端からインフレータ20のガス噴出孔42近傍までの長さ)からL6に増大することができる(図9参照)。これにより、長さが増大した円筒膨張部34によって下部チャンバ28の剛性を高めることができる。その結果、上部チャンバ26と下部チャンバ28の内圧差による膨張展開時の下部チャンバ28のバタつきを抑制し、サイドエアバッグ16の展開安定性を向上することができる。
【0068】
また本実施形態のサイドエアバッグ16によれば、次のような効果をも得ることができる。すなわち、例えば第1テザー30の第1縁部30a及び第2縁部30bの結合位置をオフセットさせない構成の場合には、下部チャンバ28を安定させるために円筒膨張部34を長くしようとした場合、第1テザー30の後端側をできるだけエアバッグ上部に配設する必要があり、その結果インフレータ20も上部に取り付ける必要が生じる。一方で、例えばインフレータ20が固定されるシートフレームの仕様等に対応するために、インフレータ20の取り付け位置を高くできないような場合には、第1テザー30の後端側を低くする必要があり、その結果円筒膨張部34の長さが短くなり、下部チャンバ28の安定性が不十分となる。したがって、下部チャンバ28を安定させるためにはインフレータ20の取り付け位置がエアバッグ上部に制限されることになる。
【0069】
これに対し、本実施形態によれば、第1テザー30の第1縁部30a及び第2縁部30bの各パネル22A,22Bに対する結合位置36,32をオフセットした構成であるため、上述したように第1テザー30の低位置側領域30Lをインフレータ20のガス噴出孔42に対応させれば、高位置側領域30Hによって円筒膨張部34の長さを必要分確保することができる。これにより、インフレータ20の取り付け位置を低くした場合でも下部チャンバ28を安定させることができる。したがって、インフレータ20の取り付け位置の自由度を向上することができる。
【0070】
また、本実施形態では特に、第1テザー30の低位置側領域30Lに、サイドエアバッグ16を膨張させるガスを供給するインフレータ20を挿通させるための挿通部60を設ける。これにより、第1テザー30の高位置側領域30Hによって、円筒膨張部34を上述したオフセットさせない場合における長さL5(エアバッグ下端からインフレータ20の噴出孔42近傍までの長さ)からL6に増大することができる。これにより、長さが増大した円筒膨張部34によって下部チャンバ28の剛性を高めることができる。その結果、膨張展開時の下部チャンバ28のバタつきを抑制し、サイドエアバッグ16の展開安定性を向上することができる。
【0071】
また、本実施形態では特に、第1テザー30の第1縁部30aの第1パネル22Aに対する結合位置36が、第2縁部30bの第2パネル22Bに対する結合位置32より低くなるように、第1テザー30を各パネル22A,22Bに対し結合する。すなわち、図5(a)に示すように、乗員12側の結合位置36が乗員と反対側(車両の側壁部側)の結合位置32より低くなるように第1テザー30を各パネル22A,22Bに対し結合する。このようにすることで、図5(b)に示すように、乗員12側の第1パネル22A側における下部チャンバ28の大きさを、車両の側壁部側の第2パネル22B側における下部チャンバ28の大きさよりも小さくすることができる。これにより、車両の側面衝突や車体横転時等に、上部チャンバ26よりも高圧である下部チャンバ28が必要以上に乗員12の身体に接触することを防止し、乗員12の安全性を向上することができる。
【0072】
また、本実施形態では特に、第1テザー30の第1縁部30aの結合位置36と第2縁部30bの結合位置32とのオフセット量L1を、第1テザー30の幅L2とほぼ同等となるように構成する。これにより、図3乃至図5(a)に示すように、非膨張状態においてサイドエアバッグ16を第1パネル22Aと第2パネル22Bとが上下に重なるように平面状に置いた際に、第1テザー30を折りやしわ等が生じることなく平面状にすることができる。その結果、サイドエアバッグ16を平坦にすることができるので、収納時に折り畳み易くすることができると共に、嵩張らないようにすることができる。また、サイドエアバッグ16を平面状に置いた際に第1テザー30も平面状になるため、製造時における第1テザー30の第1パネル22A及び第2パネル22Bへの結合(縫製)の作業性を向上することができる。
【0073】
次に、本発明の第2実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0074】
図11は、膨張展開した状態における本実施形態のサイドエアバッグ70の全体構造を表す側面図である。なお、この図11において、前述の図2と同様の部分には同符号を付し、説明を省略する。
【0075】
図11において、サイドエアバッグ70は、乗員12の肩部12Aを受け止めるための第1チャンバ72と、乗員12の胸部12B(腹部を含む)を受け止めるための第2チャンバ74と、乗員12の腰部12Cを受け止めるための前述した下部チャンバ28とを有する3チャンバエアバッグである。第1チャンバ72と第2チャンバ74とは、サイドエアバッグ16の内部において第2テザー76(後述の図12乃至図14参照)により区画されている。第2テザー76は、第1パネル22Aに円弧状に結合される第3縁部76a(後述の図14参照)及び第2パネル22Bに円弧状に結合される第4縁部76b(後述の図14参照)を有している。図中の符号78は、上記第4縁部76bの第2パネル22Bに対する縫製結合部を示している。
【0076】
なお、本実施形態では第2テザー76をパネル22A,22Bに対し円弧状に設けた場合を一例として挙げているが、その他の形状(例えば直線状)となるように設けてもよい。
【0077】
図12は、非膨張状態のサイドエアバッグ70を第2パネル22B側から見た平面図、図13は、非膨張状態のサイドエアバッグ70を第1パネル22A側から見た平面図、図14(a)は、図12中XIV−XIV断面によるサイドエアバッグ70の断面を模式的に表す図であり、図14(b)はその膨張状態を表す図である。なお、これらにおいて、前述の図3乃至図5と同様の部分には同符号を付し、説明を省略する。
【0078】
これら図12乃至図14において、サイドエアバッグ70は、前述したように第2テザー76及び第1テザー30により区画された第1チャンバ72、第2チャンバ74、及び下部チャンバ28を有している。第2テザー76は、前述の第1テザー30と同様に、第1パネル22A及び第2パネル22Bと同様の材質で構成された帯状の基布であり、その幅方向両端に、第1パネル22Aに円弧状に結合される第3縁部76a(図14参照)及び第2パネル22Bに円弧状に結合される第4縁部76b(図14参照)をそれぞれ有している。図中の符号78は、前述したように第4縁部76bの第2パネル22Bに対する縫製結合部を示しており、符号80は、第3縁部76aの第1パネル22Aに対する縫製結合部を示している。
【0079】
第2テザー76は、エアバッグ上部領域(おおよそサイドエアバッグ70の上下方向中央部より上部の領域)において、第3縁部76aの第1パネル22Aに対する結合位置である縫製結合部80の位置(以下単に「結合位置80」と称する)が、第4縁部76bの第2パネル22Bに対する結合位置である縫製結合部78の位置(以下単に「結合位置78」と称する)より高くなるように、各パネル22A,22Bに対しオフセットして縫製結合されている。そして、図14(a)に示すように、第3縁部76aの結合位置80と第4縁部76bの結合位置78とのオフセット量L3は、第2テザー76の幅L4とほぼ同等となるように構成されている。
【0080】
なお、本実施形態では、乗員12の肩部12Aを受け止める第1チャンバ72の内圧が、外部からの衝撃に弱い胸部12Bを受け止める第2チャンバ74の内圧よりも高圧になるように設定される。これは、詳細な説明については省略するが、例えば第2テザー76に圧力調整弁を設ける等によって実現される。
【0081】
その他、第1テザー30やインフレータ20等の構成は前述の第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0082】
以上のような構成であるサイドエアバッグ70によれば、前述の第1実施形態と同様に、円筒膨張部34により膨張展開時の下部チャンバ28のバタつきを抑制しサイドエアバッグ70の展開安定性を向上できるという効果を奏すると共に、次のような作用効果をも得ることができる。
【0083】
すなわち本実施形態においては、サイドエアバッグ70を3チャンバ構造とする。このように、乗員12の身体の各部を受け止めるための多数のチャンバを設けることにより、各チャンバにおいて対応する身体部分の特徴にきめ細かに応じた受け止め方をすることが可能となり、乗員の安全性をさらに向上することができる。
【0084】
また、本実施形態では特に、エアバッグ上部領域において、第2テザー76の第3縁部76aの第1パネル22Aに対する結合位置80が第4縁部76bの第2パネル22Bに対する結合位置78より高くなるように、第2テザー76を各パネル22A,22Bに対し結合する。このようにすることで、図14(b)に示すように、乗員12側の第1パネル22A側における第1チャンバ72の大きさを、車両の側壁部側の第2パネル22B側における第1チャンバ72の大きさよりも小さくすることができる。これにより、車両の側面衝突や車体横転時等に、第2チャンバ74よりも高圧である第1チャンバ72が必要以上に乗員12の身体に接触することを防止し、乗員12の安全性を向上することができる。
【0085】
また、本実施形態では特に、第2テザー76の第3縁部76aの結合位置80と第4縁部76bの結合位置78とのオフセット量L3が、第2テザー76の幅L4とほぼ同等となるように構成する。これにより、図12乃至図14(a)に示すように、非膨張状態においてサイドエアバッグ70を第1パネル22Aと第2パネル22Bとが上下に重なるように平面状に置いた際に、第1テザー30のみならず第2テザー76についても折りやしわ等が生じることなく平面状にすることができる。その結果、3チャンバとした場合でもサイドエアバッグ70を平坦にすることができるので、収納時に折り畳み易くすることができると共に、嵩張らないようにすることができる。また、製造時における第2テザー76の第1パネル22A及び第2パネル22Bへの結合(縫製)の作業性を向上することができる。
【0086】
なお、以上においては、シート10の背もたれ部10B内に装備されたいわゆるシートマウントタイプのサイドエアバッグ装置に本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えば車両のドアに装備されたいわゆるドアマウントタイプのサイドエアバッグ装置に本発明を適用してもよい。
【0087】
また以上においては、2枚のパネル22A,22Bの周囲を縫製結合することによりサイドエアバッグ16,70を袋体として構成するようにしたが、これに限られず、例えば第1パネル22Aと第2パネル22Bとを袋織りする等、他の結合手段により結合させてサイドエアバッグ16,70を構成するようにしてもよい。また例えば、1枚のパネルを半分に折り、その折り部以外の周囲を縫製結合することにより袋体として構成してもよい。このようなサイドエアバッグに対しても本発明は適用可能である。
【0088】
また以上においては、シート側面からボディ側壁部と乗員12との間に(すなわち乗員12に対し衝突側に)膨張展開するサイドエアバッグに対し本発明を適用した例を説明したが、これに限られず、乗員12に対しボディ側壁部とは反対側に(すなわち乗員12に対し衝突側とは反対側に)膨張展開し乗員12を拘束するサイドエアバッグ(いわゆるファーサイドエアバッグ)に対し、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0089】
12 乗員
12A 肩部
12B 胸部
12C 腰部
14 サイドエアバッグ装置
16 サイドエアバッグ
18 ケーシング
20 インフレータ
22A 第1パネル
22B 第2パネル
26 上部チャンバ
28 下部チャンバ
30 第1テザー
30a 第1縁部
30b 第2縁部
34 円筒膨張部
70 サイドエアバッグ
72 第1チャンバ
74 第2チャンバ
76 第2テザー
76a 第3縁部
76b 第4縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拘束される乗員に面する第1パネル部と、前記乗員側と反対側に面する第2パネル部により形成され、前記乗員の側部に膨張展開するサイドエアバッグであって、
前記乗員の少なくとも胸部を受け止めるための上部チャンバと、
前記乗員の腰部を受け止めるための下部チャンバと、
前記第1パネル部に結合される第1縁部及び前記第2パネル部に結合される第2縁部を有し、それら第1縁部及び第2縁部の各結合位置が互いにオフセットするように結合された、前記上部チャンバと前記下部チャンバとを区画する第1テザーと、
前記下部チャンバにおける前記車両前後方向後方側に位置し、前記第1テザーにより膨張時に円筒状となるように形成された円筒膨張部と、
を有することを特徴とするサイドエアバッグ。
【請求項2】
請求項1記載のサイドエアバッグにおいて、
前記第1テザーの低位置側の領域に、前記サイドエアバッグを膨張させるガスを供給するインフレータを挿通させるための挿通部を設けた
ことを特徴とするサイドエアバッグ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のサイドエアバッグにおいて、
前記第1テザーは、前記第1縁部の前記第1パネル部に対する結合位置が、前記第2縁部の前記第2パネル部に対する結合位置より低くなるように、各パネル部に対しオフセットして結合されている
ことを特徴とするサイドエアバッグ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のサイドエアバッグにおいて、
前記第1縁部の結合位置と前記第2縁部の結合位置とのオフセット量は、前記第1テザーの幅とほぼ同等である
ことを特徴とするサイドエアバッグ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のサイドエアバッグにおいて、
前記上部チャンバを、前記乗員の肩部を受け止めるための第1チャンバと、前記乗員の胸部を受け止めるための第2チャンバとに区画する第2テザーを有する
ことを特徴とするサイドエアバッグ。
【請求項6】
請求項5記載のサイドエアバッグにおいて、
前記第2テザーは、前記第1パネル部に結合される第3縁部及び前記第2パネル部に結合される第4縁部を有し、少なくとも一部の領域において、前記第3縁部の前記第1パネル部に対する結合位置が、前記第4縁部の前記第2パネル部に対する結合位置より高くなるように、各パネル部に対しオフセットして結合されている
ことを特徴とするサイドエアバッグ。
【請求項7】
請求項5又は6記載のサイドエアバッグにおいて、
前記第3縁部の結合位置と前記第4縁部の結合位置とのオフセット量は、前記第2テザーの幅とほぼ同等である
ことを特徴とするサイドエアバッグ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のサイドエアバッグと、
前記サイドエアバッグ内における前記車両の前後方向後方側に配設され、前記サイドエアバッグを膨張展開させるためのガスを供給するインフレータと、
前記サイドエアバッグ及び前記インフレータを収納するケーシングと、
を備えたことを特徴とするサイドエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−163142(P2010−163142A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9320(P2009−9320)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(506166778)ティーケー ホールディングス,インコーポレーテッド (34)
【Fターム(参考)】