説明

サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブ

【課題】 本発明は、配線端子部の平面サイズが縮小化されても、スライダ端子部との電気的接続の信頼性を確保できるサスペンション用フレキシャー基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブを提供することを目的とするものである。
【解決手段】 平坦なベース絶縁層の上に形成される第1導体端子パターンの上に、平面視上重複するように第2導体端子パターンを形成し、前記第2導体端子パターンの面積を、前記第1導体端子パターンの面積よりも小さくすることにより、配線端子部に段差を形成することにで、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクドライブ(HDD)に用いられるサスペンション用基板(フレキシャ)に関し、より詳しくは、磁気ヘッドスライダとの電気的な接合信頼性を向上させることができるサスペンション用基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハードディスクドライブ(HDD)は、データが記憶されるディスクに対してデータの書き込み、および読み取りを行う磁気ヘッドスライダが実装されるサスペンション用基板を備えている。このサスペンション用基板は、バネ性を有する金属支持基板の上にベース絶縁層を介して積層された複数の配線を有している。
【0003】
一方、磁気ヘッドスライダは、略直方体形状のスライダ本体と、このスライダ本体の一側面に設けられた磁気ヘッドと、この磁気ヘッドと同一側面に設けられ、磁気ヘッドに接続された複数のスライダ端子部とを有している。
【0004】
そして、サスペンション用基板の各配線の終端には、スライダ端子部に対応して、上面に金めっき等が施された配線端子部が設けられており、前記スライダ端子部と前記配線端子部とを、電気的に接続して各配線に電気信号を流すことにより、ディスクに対してデータの書き込み、または読み込みを行うことができるようになっている。
【0005】
スライダ端子部と配線端子部とを電気的に接続する方法としては、スライダ端子部と配線端子部とを、略直角の角度で近接させて、両者の端子部の間を、溶融した半田で接合する方法(ソルダージェット法)が知られている(特許文献1)。
【0006】
また、球状の半田(半田ボール)を、上述のように略直角の角度で近接させたスライダ端子部と配線端子部との間に配置して、その後、レーザで加熱して半田ボールを溶融させ、両者の端子部を接合する方法(半田ボールボンディング法)もある(特許文献2)。特許文献2では、球状であるがゆえに、溶融前の半田ボールの配設位置がずれてしまうことを防止するために、配線端子部に凹型の開口部等を設けることが提案されている。
【0007】
また、半田ボール溶融時のレーザ照射によるベース絶縁層の損傷を防止するために、配線端子部においてベース絶縁層の端面よりも配線終端を張り出させる構造が提案されている(特許文献3)。特許文献3では、ベース絶縁層の有無による段差や、ベース絶縁層に段差を形成することにより、半田ボールの配設位置ずれを防止する構造の配線端子部も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−50018号公報
【特許文献2】特開2003−123217号公報
【特許文献3】特開2006−120288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、HDDの大容量化に伴って磁気ヘッドの高機能化が進んでおり、スライダ端子部の数も増加する傾向にある。しかしながら、ディスクに対して極小の隙間を維持してデータの読み取りや書き込みを行う精度を維持するためには、スライダ本体のサイズを現状よりも大きくすることは困難である。
【0010】
それゆえ、限られた端子部領域に、多くのスライダ端子部を配設するためには、スライダ端子部の平面サイズを小さく設計するとともに、各スライダ端子部間の間隔も小さくせざるを得なくなり、対応する配線端子部の平面サイズも縮小化され、各配線端子部間の間隔も縮小化されることになる。
そして、スライダ端子部と配線端子部との接続に用いられる半田の量も、各端子部の平面サイズや各端子部間の間隔に合わせて低減せざるを得なくなる。
【0011】
したがって、半田と配線端子部との接合面積は減少し、接合面積の減少に応じて両者の接合強度も低下し、スライダ端子部と配線端子部との電気的接続の信頼性が低下するという問題がある。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、配線端子部の平面サイズが縮小化されても、スライダ端子部との電気的接続の信頼性を確保できるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、種々研究した結果、平坦なベース絶縁層の上に形成される第1導体端子パターンの上に、平面視上重複するように第2導体端子パターンを形成し、前記第2導体端子パターンの面積を、前記第1導体端子パターンの面積よりも小さくすることにより、配線端子部に段差を形成することで、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成したものである。
【0014】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、磁気ヘッドスライダのスライダ端子部と、電気的に接続するための配線端子部を有するサスペンション用基板であって、前記配線端子部は、平坦なベース絶縁層の上に形成される第1導体端子パターンと、前記第1導体端子パターンの上に形成される第2導体端子パターンを備え、平面視上、前記第2導体端子パターンは、前記第1導体端子パターンに重複し、前記第2導体端子パターンの面積が、前記第1導体端子パターンの面積よりも小さいことを特徴とするサスペンション用基板である。
【0015】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記第2導体端子パターンの幅が、前記第1導体端子パターンの幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板である。
【0016】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記第1導体端子パターンの先端が、前記第2導体端子パターンの先端よりも張り出していることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のサスペンション用基板である。
【0017】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記配線端子部は、前記ベース絶縁層の下に金属支持基板を備えており、前記ベース絶縁層の先端が、前記第1導体端子パターンの先端よりも張り出しており、前記金属支持基板の先端が、前記ベース絶縁層の先端よりも張り出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサスペンション用基板である。
【0018】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記第1導体端子パターンが、第1導体からなる配線パターンの終端であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサスペンション用基板である。
【0019】
また、本発明の請求項6に係る発明は、前記第2導体端子パターンが、第2導体からなる配線パターンの終端であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のサスペンション用基板である。
【0020】
また、本発明の請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれかに記載のサスペンション用基板を含むことを特徴とするサスペンションである。
【0021】
また、本発明の請求項8に係る発明は、請求項7に記載のサスペンションと、前記サスペンションに実装された磁気ヘッドスライダを有し、前記磁気ヘッドスライダの底面が、前記配線端子部の下のベース絶縁層の表面および磁気ヘッドスライダ搭載部のベース絶縁層の表面に接していることを特徴とするヘッド付サスペンションである。
【0022】
また、本発明の請求項9に係る発明は、請求項8に記載のヘッド付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、配線端子部の平面サイズが縮小化された場合であっても、第2導体端子パターンからなる段差の壁面に相当する面積を、配線端子部の表面積として増やすことができるため、上記のような段差を設けない場合よりも半田との接合面積を増やすことができ、接合面積の増加に応じて接合強度も増加させることができるため、半田を介したスライダ端子部との電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るサスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。
【図2】図1における配線端子部近傍の模式的部分拡大図である。
【図3】本発明に係るサスペンション用基板の第1の実施形態の配線端子部を説明する図であり、(a)は模式的平面図であり、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【図4】配線端子部と半田との接合状態を説明する図であり、(a)は本発明に係る配線端子部の接合状態を示し、(b)は従来の配線端子部の接合状態を示す。
【図5】本発明に係るサスペンション用基板の第2の実施形態の配線端子部を説明する図であり、(a)は模式的平面図であり、(b)は(a)におけるB−B断面図である。
【図6】本発明に係るサスペンション用基板の第3の実施形態の配線端子部を説明する図であり、(a)は模式的平面図であり、(b)は(a)におけるC−C断面図である。
【図7】本発明に係るサスペンション用基板の第4の実施形態の配線端子部を説明する図であり、(a)は模式的平面図であり、(b)は(a)におけるD−D断面図である。
【図8】本発明に係るサスペンション用基板の製造方法の一例を示す模式的工程図である。
【図9】図8に続く、本発明に係るサスペンション用基板の製造方法の一例を示す模式的工程図である。
【図10】本発明に係るサスペンション用基板の製造方法の他の例を示す模式的工程図である。
【図11】図10に続く、本発明に係るサスペンション用基板の製造方法の一例を示す模式的工程図である。
【図12】本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図13】本発明のヘッド付サスペンションの一例を示す概略平面図である。
【図14】本発明のヘッド付サスペンションにおける磁気ヘッドスライダ実装例を説明する図であり、(a)は実装前の要部断面図であり、(b)は実装後の要部断面図である。
【図15】本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。
【図16】従来のサスペンション用基板の配線端子部の例を説明する図であり、(a)は模式的平面図であり、(b)は(a)におけるE−E断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブについて詳細に説明する。
【0026】
[サスペンション用基板]
まず、本発明のサスペンション用基板について説明する。
図1は、本発明のサスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。
図1に示されるサスペンション用基板1は、先端部分に、磁気ヘッドスライダを搭載するタング部2、および磁気ヘッドスライダのスライダ端子部と電気的に接続される配線端子部が配設された配線端子部領域3、を含むジンバル領域を有し、テール側端部に読取回路または書込回路と接続するための外部回路接続端子部が配設された外部回路接続端子部領域4を有し、配線端子部領域3と外部回路接続端子部領域4との間に、少なくとも、前記磁気ヘッドと書込回路とを電気的に接続するための書込配線5と、前記磁気ヘッドと読取回路とを電気的に接続する読取配線6を有するものである。
【0027】
ここで、書込配線5と読取配線6は、相互の電気的な影響を極力避けるため、および、サスペンション用基板の力学的平衡を保つため、各々、サスペンション用基板1の長手方向の両外縁に沿うように配設されている。
【0028】
なお、図1における書込配線5と読取配線6の配置関係は、一例であって、他の配置関係であっても構わない。例えば、図1における書込配線5の位置に、読取配線6が配設され、読取配線6の位置に、書込配線5が配設されていても良い。
また、配線端子部3と外部回路接続端子部4との間には、上記の書込配線5、読取配線6の他に、グランド配線や、電源配線等が設けられていても良い。
【0029】
図2は、図1における配線端子部領域3近傍の模式的部分拡大図である。なお、図2は、本発明に係るサスペンション用基板における配線端子部10の配置関係を説明するための図であり、煩雑となるのを避けるため、配線端子部の構成の詳細や、めっき層、カバー層につての図示は省略している。
【0030】
また、本発明においては、上記の書込配線5、読取配線6の他に、グランド配線や、電源配線等が設けられていても良いが、いずれの配線においても、配線端子部の構成は同様に説明できるため、ここでの詳述は省略する。
【0031】
例えば、図2に示すように、書込配線5、および読取配線6の終端に配線端子部10が形成されており、配線端子部10は、磁気ヘッドスライダが搭載されるタング部側の金属支持基板11bと開口部7を隔てて対向する金属支持基板11aの上に、ベース絶縁層12を介して配設されている。
次に、本発明に係る配線端子部の詳細について説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
図3は、本発明に係るサスペンション用基板の第1の実施形態の配線端子部を説明する図であり、(a)は模式的平面図であり、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
なお、図3(a)は、本発明に係る配線端子部における第1導体端子パターンと第2導体端子パターンの概略平面形状や配置関係、サイズの関係を説明するための図であり、煩雑となるのを避けるため、配線端子部の構成の詳細や、めっき層、カバー層につての図示は省略している。
【0033】
一方、図16は、従来のサスペンション用基板の配線端子部の例を説明する図であり、(a)は模式的平面図であり、(b)は(a)におけるE−E断面図である。
なお、図16(a)は、従来の配線端子部における導体端子パターンの概略平面形状を説明するための図であり、煩雑となるのを避けるため、配線端子部の構成の詳細や、めっき層、カバー層につての図示は省略している。
【0034】
そして、図4は、配線端子部と半田との接合状態を説明する図であり、(a)は本発明に係る配線端子部の接合状態を示し、(b)は従来の配線端子部の接合状態を示す。
【0035】
従来の配線端子部100は、例えば、図16(a)および(b)に示すように、段差のない単層の導体端子パターン103から構成されていたのに対し、本発明に係る配線端子部10は、例えば、図3(a)および(b)に示すように、平坦なベース絶縁層12の上に形成される第1導体端子パターン13と、前記第1導体端子パターンの上に形成される第2導体端子パターン15を備え、平面視上、前記第2導体端子パターン15は、前記第1導体端子パターン13に重複し、前記第2導体端子パターン15の面積が、前記第1導体端子パターン13の面積よりも小さいことを特徴とする。
【0036】
上記のような構成を有するため、例えば、図4(a)および(b)に示すように、本発明に係る配線端子部10は、平面サイズが縮小化された場合であっても、第2導体端子パターン15からなる段差の壁面に相当する面積を増やすことができるため、同じ平面サイズであって、上記のような段差を有していない従来の配線端子部100よりも、半田との接合面積を増やすことができる。
そして、本発明に係る配線端子部10においては、上記のように半田との接合面積が増加するため、その増加に応じて半田との接合強度も増加されることになる。それゆえ、本発明によれば、配線端子部の平面サイズが縮小化された場合であっても、半田を介して接続されるスライダ端子部との接続信頼性を向上させることができる。
【0037】
第2導体端子パターン15の面積が、第1導体端子パターン13の面積よりも小さくなるようにするため、本発明に係る配線端子部においては、例えば、図3(a)に示すように、第2導体端子パターン15の幅(W2)が、第1導体端子パターン13の幅(W1)よりも小さい構成を有することが好ましい。
また、本発明に係る配線端子部においては、上記の構成とは別に、若しくは上記の構成に加えて、前記第1導体端子パターンの先端が、前記第2導体端子パターンの先端よりも張り出している構成を有することが好ましい。例えば、図3(a)において、前記第1導体端子パターンの先端は、前記第2導体端子パターンの先端よりも長さLだけ張り出している。
【0038】
ここで、配線端子部の平面サイズが縮小化される場合、その縮小化された配線端子部に、例えば、平面中央部が凹んでいるような形状や、配線端子部の先端がU字型やV字型等に枝分かれしているような形状等、複雑な段差形状を形成することは、通常、技術的に困難である。
【0039】
しかし、一般に、配線端子部の幅は、配線パターンの幅よりも大きく設計されているため、配線端子部を構成する第1導体端子パターンの上に、配線パターンと同程度の幅を有する第2導体端子パターンを形成することは、技術的に十分に可能である。
なお、例えば、今後予測される配線端子部の幅(第1導体端子パターンの幅)は、端子数が8個の場合に50μm〜60μm程度、端子数が10個の場合に40μm〜50μm程度、端子数が12個の場合に30μm〜40μm程度である。
【0040】
また、同様に、第2導体端子パターンが、配線パターンと同程度の幅を有する場合、その先端を、第2導体端子パターンの幅よりも大きな幅を有する第1導体端子パターンの先端よりも内側に形成することも、技術的に十分に可能である。
【0041】
すなわち、上述のように、第2導体端子パターン15の幅を、第1導体端子パターン13の幅よりも小さくなるように形成して、本発明に係る配線端子部を構成することや、第1導体端子パターン13の先端を、第2導体端子パターン15の先端よりも張り出させるように形成して、本発明に係る配線端子部を構成することは、平面中央部が凹んでいるような形状や、配線端子部の先端がU字型やV字型等に枝分かれしているような形状等、複雑な段差形状を形成することに比べて、製造容易であり、技術的に十分に可能なものである。
【0042】
また、本発明に係る配線端子部10においては、ベース絶縁層12の先端が、第1導体端子パターン13の先端よりも張り出しており、金属支持基板11の先端が、ベース絶縁層12の先端よりも張り出していることが好ましい。短絡や損傷という問題を解消することができるからである。
【0043】
例えば、ベース絶縁層12の先端が、第1導体端子パターン13の先端、および金属支持基板11の先端よりも内側に引き込んでいるような形態の場合には、めっき層16の形成によって、第1導体端子パターン13と金属支持基板11とが電気的に接続されてしまう恐れがある。それゆえ、少なくとも、ベース絶縁層12の先端は、第1導体端子パターン13の先端よりも張り出していることが好ましい。
【0044】
また、金属支持基板11の先端が、ベース絶縁層12の先端よりも内側に引き込んでいるような形態の場合には、ベース絶縁層12は、その厚さが10μm程度であることから、強度的に弱く、少なくとも、ベース絶縁層12が、第1導体端子パターン13の先端よりも張り出している部分において、損傷を受けやすい。それゆえ、金属支持基板11の先端は、ベース絶縁層12の先端よりも張り出していることが好ましい。
【0045】
すなわち、ベース絶縁層12の先端が、第1導体端子パターン13の先端よりも張り出しており、金属支持基板11の先端が、ベース絶縁層12の先端よりも張り出している構成であれば、上述のような、第1導体端子パターン13と金属支持基板11とが電気的に接続されてしまうという問題や、ベース絶縁層12が損傷を受けるという問題を解消することができる。
【0046】
また、本発明においては、配線端子部を構成する第1導体端子パターンが、第1導体からなる配線パターンの終端であること、および/または、配線端子部を構成する第2導体端子パターンが、第2導体からなる配線パターンの終端であること、が好ましい。
【0047】
例えば、中間絶縁層を介して2層の配線パターンを有する積層配線構造のサスペンション用基板が知られているが、この各層の配線パターンの終端を、第1導体端子パターン、または第2導体端子パターンとすることで、配線パターン形成と端子パターン形成を同一工程で行うことができ、配線パターン形成と端子パターン形成を別々の工程で製造するよりも、工程を短縮化でき、製造コストの上昇を抑えることができるからである。
【0048】
さらに、第1導体からなる配線パターンの上に、中間絶縁層を介して第2導体からなる配線パターンを積層した積層配線構造のサスペンション用基板においては、本発明に係る配線端子部の構成を用いることで、各配線の配線端子部の厚み(高さ)を、均一にすることができるという効果も奏する。
【0049】
例えば、従来の積層配線構造のサスペンション用基板においては、第1導体層の厚さと第2導体層の厚さが異なる場合があり、第1導体からなる配線パターンの主端として第1導体のみで形成された配線端子部と、第2導体からなる配線パターンの主端として第2導体のみで形成された配線端子部とが混在する場合、各々の配線端子部の厚み(高さ)は、各導体の厚さに応じて異なってしまい、スライダ端子部との接続も不均一になって接続信頼性が損なわれる場合があった。
【0050】
一方、本発明においては、各配線端子部の厚み(高さ)は、いずれも、第1導体層と第2導体層の両方を重ねた厚み(高さ)となるため、均一であり、スライダ端子部との接続信頼性もより向上させることが出来る。
【0051】
なお、本発明に係るサスペンション用基板の第1の実施形態は、第1導体端子パターン13が、第1導体からなる配線パターンの終端になっており、かつ、第2導体端子パターン15が、第2導体からなる配線パターンの終端になっている形態である。
【0052】
すなわち、図3(b)に示すように、配線端子部10においては、第1導体端子パターン13を構成する第1導体と、第2導体端子パターン15を構成する第2導体は、中間絶縁層14を介さず、電気的に接続されているが、図3(b)の左端に示すように、配線端子部10から離れた領域では、第1導体端子パターン13を構成する第1導体と、第2導体端子パターン15を構成する第2導体は、中間絶縁層14を介して電気的に絶縁されており、各層の配線パターンを構成する。
【0053】
なお、図3(a)においては、第1導体端子パターン13、および第2導体端子パターン15の形状として、双方とも矩形の平面形状を例示したが、本発明においては、第2導体端子パターン15の面積が、第1導体端子パターン13の面積よりも小さいものであれば良く、上記形状に限定されず、各種多角形、略円形、楕円形、長円形、角丸形、等の平面形状とすることができる。また、第1導体端子パターン13の形状と第2導体端子パターン15の形状は、相似形状に限定されず、異なる形状としてもよい。
【0054】
(第2の実施形態)
図5は、本発明に係るサスペンション用基板の第2の実施形態の配線端子部を説明する図であり、(a)は模式的平面図であり、(b)は(a)におけるB−B断面図である。なお、図5(a)は、本発明に係る配線端子部における第1導体端子パターンと第2導体端子パターンの概略平面形状や配置関係、サイズの関係を説明するための図であり、煩雑となるのを避けるため、配線端子部の構成の詳細や、めっき層、カバー層につての図示は省略している。
【0055】
本実施形態は、第2導体端子パターン15のみが配線パターンの終端になっている形態であり、第1導体端子パターン13が配線パターンの終端になっていない点で、上記の第1実施形態と相違する。
【0056】
すなわち、図5(b)に示すように、第2導体端子パターン15は、第2導体からなる配線パターンの終端になっているが、第1導体端子パターン13は、孤立した導体パターンになっている。
ただし、本発明においては、第1導体端子パターン13とは接続されていない第1導体からなる配線パターンが、中間絶縁層14を介して、第2導体からなる配線パターンの下に形成されていても良い。
【0057】
なお、図5(a)においては、第1導体端子パターン13、および第2導体端子パターン15の形状として、双方とも矩形の平面形状を例示したが、本発明においては、第2導体端子パターン15の面積が、第1導体端子パターン13の面積よりも小さいものであれば良く、上記形状に限定されず、各種多角形、略円形、楕円形、長円形、角丸形、等の平面形状とすることができる。また、第1導体端子パターン13の形状と第2導体端子パターン15の形状は、相似形状に限定されず、異なる形状としてもよい。
【0058】
(第3の実施形態)
図6は、本発明に係るサスペンション用基板の第3の実施形態の配線端子部を説明する図であり、(a)は模式的平面図であり、(b)は(a)におけるC−C断面図である。なお、図6(a)は、本発明に係る配線端子部における第1導体端子パターンと第2導体端子パターンの概略平面形状や配置関係、サイズの関係を説明するための図であり、煩雑となるのを避けるため、配線端子部の構成の詳細や、めっき層、カバー層につての図示は省略している。
【0059】
本実施形態は、第1導体端子パターン13のみが配線パターンの終端になっており、第2導体端子パターン15が配線パターンの終端になっていない点で、上記の第1実施形態、および第2実施形態と相違する。
【0060】
すなわち、図6(b)に示すように、第1導体端子パターン13は、第1導体からなる配線パターンの終端になっているが、第2導体端子パターン15は、孤立した導体パターンになっている。
なお、本発明においては、第2導体端子パターン15とは接続されていない第2導体からなる配線パターンが、中間絶縁層14を介して、第1導体からなる配線パターンの上に形成されていても良い。
【0061】
なお、図6(a)においては、第1導体端子パターン13、および第2導体端子パターン15の形状として、双方とも矩形の平面形状を例示したが、本発明においては、第2導体端子パターン15の面積が、第1導体端子パターン13の面積よりも小さいものであれば良く、上記形状に限定されず、各種多角形、略円形、楕円形、長円形、角丸形、等の平面形状とすることができる。また、第1導体端子パターン13の形状と第2導体端子パターン15の形状は、相似形状に限定されず、異なる形状としてもよい。
【0062】
(第4の実施形態)
図7は、本発明に係るサスペンション用基板の第3の実施形態の配線端子部を説明する図であり、(a)は模式的平面図であり、(b)は(a)におけるD−D断面図である。なお、図7(a)は、本発明に係る配線端子部における第1導体端子パターンと第2導体端子パターンの概略平面形状や配置関係、サイズの関係を説明するための図であり、煩雑となるのを避けるため、配線端子部の構成の詳細や、めっき層、カバー層につての図示は省略している。
【0063】
本実施形態は、第2導体端子パターン18を構成する第2導体が、第1導体端子パターン13を構成する第1導体とは、異なる金属材料からなり、第1導体端子パターン13のみが配線パターンの終端になっている点で、上記の第1〜第3の実施形態と相違する。
【0064】
すなわち、図7(b)に示すように、第1導体端子パターン13は、第1導体からなる配線パターンの終端になっているが、第1導体と異なる金属材料からなる第2導体端子パターン18は、孤立した導体パターンになっている。
【0065】
ここで、第1導体端子パターン13を構成する第1導体は、主に、銅(Cu)からなるが、本実施形態における第2導体端子パターン18を構成する第2導体の金属材料には、例えば、ニッケル(Ni)を挙げることができる。
【0066】
なお、図7(a)においては、第1導体端子パターン13、および第2導体端子パターン18の形状として、双方とも矩形の平面形状を例示したが、本発明においては、第2導体端子パターン18の面積が、第1導体端子パターン13の面積よりも小さいものであれば良く、上記形状に限定されず、各種多角形、略円形、楕円形、長円形、角丸形、等の平面形状とすることができる。また、第1導体端子パターン13の形状と第2導体端子パターン18の形状は、相似形状に限定されず、異なる形状としてもよい。
【0067】
以下、本発明のサスペンション用基板を構成する部材について説明する。
【0068】
[金属支持基板]
金属支持基板の材料としては、サスペンション用基板の支持体として機能し、所望のばね性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばステンレス鋼を挙げることができる。
金属支持基板の厚さは、例えば10μm〜30μmの範囲内、中でも15μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。
【0069】
[第1導体]
次に、本発明における第1導体について説明する。本発明において、第1導体は、配線端子部の第1導体端子パターンを構成する導体であり、また、配線パターンを構成する導体でもある。
第1導体の材料としては、例えば、金属を挙げることができ、具体的には、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、および、これらの金属の合金等を挙げることができ、中でも銅(Cu)が好ましい。導電性が高く、安価だからである。
第1導体の厚さは、例えば、1μm〜18μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜12μmの範囲内であることがより好ましい。
【0070】
[第2導体]
次に、本発明における第2導体について説明する。本発明において、第2導体は、配線端子部の第2導体端子パターンを構成する導体であり、また、配線パターンを構成する導体でもある。第1導体と第2導体は同じ材料の場合もあり、異なる材料の場合もある。
第2導体の材料としては、例えば、金属を挙げることができ、具体的には、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、および、これらの金属の合金等を挙げることができ、中でも銅(Cu)が好ましい。導電性が高く、安価だからである。
第2導体の厚さは、例えば、1μm〜18μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜12μmの範囲内であることがより好ましい。
【0071】
[ベース絶縁層]
次に、本発明におけるベース絶縁層について説明する。ベース絶縁層は、金属支持基板の表面上に形成されるものであり、ベース絶縁層の上に形成される配線パターンや配線端子部と、金属支持基板とを電気的に絶縁するものである。
ベース絶縁層の材料としては、所望の絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリイミド等を挙げることができる。また、ベース絶縁層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。ベース絶縁層の厚さは、例えば5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
【0072】
[中間絶縁層]
次に、本発明における中間絶縁層について説明する。中間絶縁層は、第1導体からなる配線パターンと第2導体からなる配線パターンとを電気的に絶縁するものである。
中間絶縁層の材料としては、所望の絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリイミド等を挙げることができる。また、中間絶縁層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。中間絶縁層の厚さは、例えば5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
【0073】
[カバー層]
次に、本発明に用いられるカバー層について説明する。腐食等による劣化を防止するため、最外層の配線パターンは、カバー層で覆われていることが好ましい。カバー層の材料としては、例えば、ポリイミドを挙げることができる。また、カバー層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。カバー層の厚さは、例えば3μm〜30μmの範囲内であることが好ましい。
【0074】
[めっき層]
次に、本発明に用いられるめっき層について説明する。めっき層は、配線端子部の表面に形成され、半田との接合強度の向上や、露出する導体の腐食からの保護を目的とするものである。
めっき層は、電解めっき法により形成され、その材料としては、サスペンション用基板の端子部を形成し得るものであれば、特に制限されることなく使用することができ、例えば、Ni(ニッケル)、Au(金)、パラジウム(Pd)などが用いられる。
めっき層は、多層として形成してもよく、例えば、電解Niめっきと電解Auめっきとを順次実施して、下層にNi、上層にAuの多層構造とすることができる。この場合、Ni層の厚さは、例えば、0.1〜3μm程度であり、Au層の厚さは、例えば、1〜5μm程度である。
【0075】
[サスペンション用基板の製造方法]
次に、本発明のサスペンション用基板の製造方法について説明する。なお、本発明のサスペンション用基板の製造方法は、上述した構成を有するサスペンション用基板を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。
【0076】
(第1の製造方法)
サブトラクティブ法を用いた本発明のサスペンション用基板の製造方法の一例について、図8および図9を用いて説明する。
まず、図8(a)に示すように、金属支持基板11(例えばステンレス鋼)、ベース絶縁層13(例えばポリイミド)、および第1導体層13A(例えば銅)が、順次積層された積層体を用意する。
【0077】
次に、ドライフィルムレジストを用いたフォト製版、およびエッチングにより、第1導体層13Aを加工して、第1導体からなる配線パターン、および第1導体端子パターン13を形成する(図8(b))。
【0078】
次に、第1導体端子パターン13の上に、配線端子部が露出するようにして中間絶縁層14(例えば、ポリイミド)を形成する(図8(c))。
ここで、中間絶縁層14の材料として非感光性ポリイミドを用いた場合、中間絶縁層14の上に、所望の部位を残し、不要な部位が除去されるようにレジストパターンを形成し、前記レジストパターンから露出する部位をアルカリ系のエッチング液を用いて除去することにより、前記エッチング液の等方性によって、中間絶縁層14の端部の断面形状をテーパー形状とすることができる。
また、中間絶縁層14の材料として感光性ポリイミドを用いた場合、塗工、乾燥後のポリアミック酸の状態において、所望の部位を残し、不要な部位が除去されるようにマスクパターンを介して露光し、アルカリ系の現像液により未露光部を除去する。その際、露光部の光の乱反射による、未露光部側への光の回り込みによって、第1導体パターン側に近付くにしたがって、ポリイミドが横方向に広がって硬化する。その後、アルカリ系の現像液を用いて、未露光部を除去することにより、中間絶縁層14の端部の断面形状をテーパー形状とすることができる。
【0079】
次に、中間絶縁層14、および第1導体端子パターン13の上に、電解めっき法により、第2導体(例えば銅)からなる配線パターンおよび第2導体端子パターン15を形成する(図8(d))。
【0080】
次に、カバー層17(例えばポリイミド)を、第2導体からなる配線パターンの上に形成する。ただし、配線端子部は露出するようにする(図9(e))。
【0081】
次に、ドライフィルムレジストを用いたフォト製版、およびエッチングにより、ベース絶縁層12の先端を金属支持基板11の先端よりも引き込むように加工する(図9(f))。
【0082】
最後に、露出する第1導体端子パターン13および第2導体端子パターン15の、側壁面を含む表面にめっき層(例えばNi/Au)を形成し、本発明に係るサスペンション用基板を得る(図9(g))。
【0083】
なお、上述の製造方法においては、本発明に係る第1の実施形態の配線端子部を有するサスペンション用基板の製造方法について説明したが、本発明に係る第2〜4の実施形態の配線端子部を有するサスペンション用基板についても、本製造方法を用いて同様に製造することができる。
【0084】
(第2の製造方法)
次に、アディティブ法を用いた本発明のサスペンション用基板の製造方法の一例について、図10および図11を用いて説明する。
まず、 金属支持基板11(例えばステンレス鋼)を用意し(図10(a))、その上に、先端が金属支持基板11の先端よりも引き込んだ形態のベース絶縁層12を形成する(図10(b))。
【0085】
次に、ベース絶縁層12の上に電解めっき法により、第1導体(例えば銅)からなる配線パターンおよび第1導体端子パターン13を形成する(図10(c))。
【0086】
次に、第1導体端子パターン13の上に、配線端子部が露出するようにして中間絶縁層14(例えばポリイミド)を形成する(図10(d))。
ここで、中間絶縁層14の材料として非感光性ポリイミドを用いた場合、中間絶縁層14の上に、所望の部位を残し、不要な部位が除去されるようにレジストパターンを形成し、前記レジストパターンから露出する部位をアルカリ系のエッチング液を用いて除去することにより、前記エッチング液の等方性によって、中間絶縁層14の端部の断面形状をテーパー形状とすることができる。
また、中間絶縁層14の材料として感光性ポリイミドを用いた場合、塗工、乾燥後のポリアミック酸の状態において、所望の部位を残し、不要な部位が除去されるようにマスクパターンを介して露光し、アルカリ系の現像液により未露光部を除去する。その際、露光部の光の乱反射による、未露光部側への光の回り込みによって、第1導体パターン側に近付くにしたがって、ポリイミドが横方向に広がって硬化する。その後、アルカリ系の現像液を用いて、未露光部を除去することにより、中間絶縁層14の端部の断面形状をテーパー形状とすることができる。
【0087】
次に、中間絶縁層14、および第1導体端子パターン13の上に、電解めっき法により、第2導体(例えば銅)からなる配線パターンおよび第2導体端子パターン15を形成する(図11(e))。
【0088】
次に、カバー層17(例えばポリイミド)を、第2導体からなる配線パターンの上に形成する。ただし、配線端子部は露出するようにする(図11(f))。
【0089】
最後に、露出する第1導体端子パターン13および第2導体端子パターン15の、側壁面を含む表面にめっき層(例えばNi/Au)を形成し、本発明に係るサスペンション用基板を得る(図11(g))。
【0090】
なお、上述の製造方法においては、本発明に係る第1の実施形態の配線端子部を有するサスペンション用基板の製造方法について説明したが、本発明に係る第2〜4の実施形態の配線端子部を有するサスペンション用基板についても、本製造方法を用いて同様に製造することができる。
【0091】
[サスペンション]
次に、本発明のサスペンションについて説明する。本発明のサスペンションは、上述したサスペンション用基板を含むことを特徴とするものである。
【0092】
図12は、本発明のサスペンションの一例を示す概略平面図である。図12に示されるサスペンション30は、上述したサスペンション用基板1と、サスペンション用基板1の裏面側(金属支持基板11側)に備え付けられたロードビーム31、及びベースプレート(図示せず)とを有するものである。ロードビーム、及びベースプレートは、一般的なサスペンションに用いられるロードビーム、ベースプレートと同様のものを用いることができる。
【0093】
本発明によれば、上述したサスペンション用基板を用いることで、磁気ヘッドスライダとの電気的な接続信頼性が良好なサスペンションとすることができる。
【0094】
[ヘッド付サスペンション]
次に、本発明のヘッド付サスペンションについて説明する。本発明のヘッド付サスペンションは、上述したサスペンションと、前記サスペンションに実装された磁気ヘッドスライダとを有し、前記磁気ヘッドスライダの底面先端が、前記配線端子部の下のベース絶縁層の表面先端に接していることを特徴とするものである。
【0095】
図13は、本発明のヘッド付サスペンションの一例を示す概略平面図である。図13に示されるヘッド付サスペンション40は、上述したサスペンション30と、サスペンション30のジンバル部2に実装された磁気ヘッドスライダ41とを有するものである。
【0096】
なお、サスペンション30については、上述した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、磁気ヘッドスライダ41は、一般的なヘッド付サスペンションに用いられる磁気ヘッドスライダと同様のものを用いることができる。
【0097】
図14は、本発明のヘッド付サスペンションにおける磁気ヘッドスライダ実装例を説明する図であり、(a)は実装前の要部断面図であり、(b)は実装後の要部断面図である。
【0098】
まず、図14(a)に示すように、実装前のタング部2側の金属支持基板11bの上には、ベース絶縁層12bが所望のパターン形状で形成されており、その上面の高さ位置は、タング部2と開口部7を隔てて対向する配線端子部10側の金属支持基板11aの上に形成されたベース絶縁層12aの上面の高さ位置と一致する。
両者の高さ位置が一致する理由は、金属支持基板11a、11bは、共に同一の金属支持基板11からなり、開口部7を設けたことによって、図14(a)に示すように、左右に隔てられたものであり、ベース絶縁層12a、12bは、共に金属支持基板11の上に形成された同一のベース絶縁層12からなり、フォト製版等により、所望のパターン状に加工されて、図14(a)に示すように、左右に隔てられたものであるからである。
【0099】
そして、図14(b)に示すように、実装時には、磁気ヘッドスライダ41は、その底面が、配線端子部10側のベース絶縁層12aの表面、およびタング部2側のベース絶縁層12bの表面に接するように配設され、導電性接着剤44により、磁気ヘッドスライダ41の底面と金属支持基板11bとが接着される。
【0100】
ここで、上述のように、ベース絶縁層12aの上面の高さ位置は、ベース絶縁層12bの上面の高さ位置と一致するため、磁気ヘッドスライダ41は、両者の上面の高さ位置に水平に保たれることになる。
【0101】
それゆえ、本発明においては、磁気ヘッドスライダ41の側面に形成されたスライダ端子部42の位置を、配線端子部10に対して所定の高さ、および所定の角度(配線端子部に対し略直角)に配置することができ、配線端子部10とスライダ端子部42との接続を良好に行うことができる。
【0102】
ここで、配線端子部10とスライダ端子部42との接続は、半田接合により行われる。
半田接合の方法としては、細管状の半田吐出ヘッド内において、レーザ加熱して溶融された半田を、高圧の窒素ガスで吐出して、所望の端子部間を接合する方法(ソルダージェット法)を、好適に用いることができる。
本発明の配線端子部10は、断面が略凸型の段差形状を有しているが、このソルダージェット法を用いれば、上述の半田ボールボンディング法のように、溶融前の半田ボールの配設位置がずれてしまう弊害は生じないからである。
【0103】
そして、溶融された半田は、図14(b)に示すように、配線端子部10の段差側壁を含む表面に形成されためっき層16の上、およびスライダ端子部42の表面に形成されためっき層43の上を濡れ広がり、その後、温度が下がって固化する。
それゆえ、本発明においては、段差側壁を含む配線端子部10のめっき表面全てを、半田との接合面積とすることができ、同じ平面形状で段差側壁を有さない配線端子部よりも接合強度を向上させることができる。
【0104】
なお、溶融された半田は、絶縁層や酸化膜に対して撥液性を示すため、ベース絶縁層12や磁気ヘッドスライダ41の側面(表面はシリコン酸化膜)の上には濡れ広がらない。
それゆえ、配線端子部10とスライダ端子部42との空間を埋める量の溶融半田が吐出されても、配線端子部間のベース絶縁層12の上や、スライダ端子部間のシリコン酸化膜の上に溶融半田は濡れ広がらず、配線端子部間の短絡や、スライダ端子部間の短絡を、回避することができる。
【0105】
以上説明したように、本発明によれば、上述したサスペンションを用いることで、磁気ヘッドスライダとの電気的接続信頼性が良好なヘッド付サスペンションとすることができる。
特に、本発明においては、磁気ヘッドスライダの底面が、配線端子部側のベース絶縁層の表面に接するとともに、タング部側のベース絶縁層の表面にも接する構成を有するため、磁気ヘッドスライダを、両方のベース絶縁層の上面の高さ位置に、水平に保持することができる。それゆえ、磁気ヘッドスライダのスライダ端子部の位置を、配線端子部に対して所定の高さ、および所定の角度に配置することができ、配線端子部とスライダ端子部との接続をより良好に行うことができる。
【0106】
[ハードディスクドライブ]
次に、本発明のハードディスクドライブについて説明する。本発明のハードディスクドライブは、上述したヘッド付サスペンションを含むことを特徴とするものである。
【0107】
図15は、本発明のハードディスクドライブの一例を示す概略平面図である。
図15に示されるハードディスクドライブ50は、ケース51と、このケース51に回転自在に取り付けられ、データが記憶されるディスク52と、このディスク52を回転させるスピンドルモータ53と、ディスク52に所望のフライングハイトを保って近接するように設けられ、ディスク52に対してデータの書き込みおよび読み込みを行うスライダを含むヘッド付サスペンション40とを有している。このうちヘッド付サスペンション40は、ケース51に対して移動自在に取り付けられ、ケース51にはヘッド付サスペンション40のスライダをディスク52上に沿って移動させるボイスコイルモータ54が取り付けられている。また、ヘッド付サスペンション40は、ボイスコイルモータ54にアーム55を介して取り付けられている。
【0108】
なお、ヘッド付サスペンションについては、上述した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、その他の部材についても、一般的なハードディスクドライブに用いられる部材と同様のものを用いることができる。
【0109】
本発明によれば、上述したヘッド付サスペンションを用いることで、より高機能化されたハードディスクドライブとすることができる。
【0110】
以上、本発明に係るサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、およびハードディスクドライブについて説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0111】
1・・・サスペンション用基板
2・・・タング部
3・・・配線端子部領域
4・・・外部回路接続端子部領域
5・・・書込配線
6・・・読取配線
7・・・開口部
10・・・配線端子部
11、11a、11b・・・金属支持基板
12、12a、12b・・・ベース絶縁層
13・・・第1導体端子パターン
13A・・・第1導体層
14・・・中間絶縁層
15、18・・・第2導体端子パターン
16・・・めっき層
17・・・カバー層
20、200・・・半田
30・・・サスペンション
31・・・ロードビーム
40・・・ヘッド付サスペンション
41・・・磁気ヘッドスライダ
42・・・スライダ端子部
43・・・めっき層
44・・・導電性接着剤
50・・・ハードディスクドライブ
51・・・ケース
52・・・ディスク
53・・・スピンドルモータ
54・・・ボイスコイルモータ
55・・・アーム
100・・・配線端子部
101・・・金属支持基板
102・・・ベース絶縁層
103・・・導体端子パターン
106・・・めっき層
107・・・カバー層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ヘッドスライダのスライダ端子部と、電気的に接続するための配線端子部を有するサスペンション用基板であって、
前記配線端子部は、平坦なベース絶縁層の上に形成される第1導体端子パターンと、前記第1導体端子パターンの上に形成される第2導体端子パターンを備え、
平面視上、前記第2導体端子パターンは、前記第1導体端子パターンに重複し、
前記第2導体端子パターンの面積が、前記第1導体端子パターンの面積よりも小さいことを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項2】
前記第2導体端子パターンの幅が、前記第1導体端子パターンの幅よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板。
【請求項3】
前記第1導体端子パターンの先端が、前記第2導体端子パターンの先端よりも張り出していることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のサスペンション用基板。
【請求項4】
前記配線端子部は、前記ベース絶縁層の下に金属支持基板を備えており、
前記ベース絶縁層の先端が、前記第1導体端子パターンの先端よりも張り出しており、
前記金属支持基板の先端が、前記ベース絶縁層の先端よりも張り出していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサスペンション用基板。
【請求項5】
前記第1導体端子パターンが、第1導体からなる配線パターンの終端であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサスペンション用基板。
【請求項6】
前記第2導体端子パターンが、第2導体からなる配線パターンの終端であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のサスペンション用基板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のサスペンション用基板を含むことを特徴とするサスペンション。
【請求項8】
請求項7に記載のサスペンションと、前記サスペンションに実装された磁気ヘッドスライダを有し、前記磁気ヘッドスライダの底面が、前記配線端子部の下のベース絶縁層の表面および磁気ヘッドスライダ搭載部のベース絶縁層の表面に接していることを特徴とするヘッド付サスペンション。
【請求項9】
請求項8に記載のヘッド付サスペンションを含むことを特徴とするハードディスクドライブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−198957(P2012−198957A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61797(P2011−61797)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】