説明

シス−1,2−置換スチルベン誘導体、および糖尿病の治療および/または予防のための薬剤の製造におけるそれらの使用

本発明は、シス-1,2-置換スチルベン誘導体、またはその医薬的に許容可能な塩、グルコシドもしくは溶媒和化合物、それらの化合物を含んだ医薬組成物、および糖尿病の治療および/または予防または糖尿病性合併症の改善のための薬剤の製造のための前記化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病の治療および/または予防のための、または糖尿病合併症の軽減のための薬剤の製造における、シス-1,2-置換スチルベン誘導体またはその医薬的に許容可能な塩、グルコシドまたは溶媒和化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、臨床的に全世界で知られた慢性的代謝病である。近年、全世界における糖尿病罹患率は、経済発展および食事構成の変化に従って急速に上昇している。統計学によると、糖尿病患者の総数は1億2千万人であり、その内3千万人以上が中国人である。患者のほとんどが、インスリン非依存型、つまり2型糖尿病である。現在糖尿病は、循環器病および癌に続き、三番目に人の健康を脅かす重篤な疾病となっている。糖尿病の発症期間は長く、慢性血管性合併症(脳血管障害、虚血性心疾患を含む)、糖尿病性腎障害等といった合併症は、通常不十分な治療を受けている間に起こる。糖尿病およびその合併症による死亡率も年々上昇している。それゆえ、糖尿病およびその合併症の治療および予防は、世界の医学および医薬の研究者が直面する重要な研究課題となっている。
【0003】
現在、臨床的に使用される経口性血糖降下薬は、主に欧米の薬剤であり、それらは化学構造によって分類することができる:スルホニル尿素、ビグアナイド、フェニルアラニン、チアゾリジルジケトン(thiazolidyldiketones)、および糖脂質である。そのうえ、現在研究および開発が行われている1,2-スチルベン化合物も存在する。US6,410,596およびCN1398838Aの報告によると、1,2-スチルベン化合物は、多くの植物種の中に存在する。現在までに21科31属の少なくとも数十の植物が、これらの化合物を含むことがわかっている。一方これらの化合物は、抗酸化、抗腫瘍、抗うっ血症候群、血糖降下効果等といった、広範な生理的機能を有することがわかっている。しかしながら、上記の機能を有する1,2-スチルベンは、全てトランス-1,2-置換スチルベン誘導体である。シス-1,2-置換スチルベン誘導体の活性に関して、米国特許第5,525,632号のみが、コンブレタスタチン(combrotastatin)およびその誘導体が抗腫瘍機能を有することを報告している。
【発明の開示】
【0004】
本発明者らは、シス-1,2-置換スチルベン化合物、その医薬的に許容可能な塩、グルコシドまたは溶媒和化合物が全て、血糖降下およびその他の機能を有することを発見した。それゆえ、それらは、糖尿病の治療および/または予防ならびに糖尿病性合併症の改善に用いることができる。
【0005】
本発明の第一の側面は、式Iのシス-1,2-置換スチルベン化合物、その医薬的に許容可能な塩、グルコシドまたは溶媒和化合物に関する:
【化7】

【0006】
ここにおいて、
R1-R12は、同一かまたは異なってよく、それぞれ独立に、水素;水酸基;C1-C6アルキル基;C1-C6アルコキシル基;C1-C6エステル基;アミノ基;C1-C6アルキルアミノ基;C1-C6アルキルスルホニル基、スルファミド、スルホニル尿素基、グアニジノ基、カルボキシル基、アミド基;C1-C6アシル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン、OM1、M2、またはSO2OM3基を表し、さらに、M1、M2およびM3は、同じまたは異なってよく、それぞれ独立に、水素、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、NH4+、もしくは糖を含むグリコシドから選択される陽イオンを表す。
【0007】
本発明の第二の側面は、活性成分として式Iのシス-1,2-置換スチルベン化合物、その医薬的に許容可能な塩、グルコシドまたは溶媒和化合物、ならびに1以上の医薬的に許容可能な媒体(vehicles)または賦形剤を含む、医薬組成物に関する。
【0008】
本発明の第三の側面は、式Iのシス-1,2-置換スチルベン化合物、その医薬的に許容可能な塩、グルコシドまたは溶媒和化合物の、糖尿病の治療および/または予防、または糖尿病性合併症の改善のための薬剤の製造のための使用に関する:
【化8】

【0009】
ここにおいて、
R1-R12は、同一かまたは異なってよく、それぞれ独立に、水素;水酸基;C1-C6アルキル基;C1-C6アルコキシル基;C1-C6エステル基、アミノ基;C1-C6アルキルアミノ基;C1-C6アルキルスルホニル基、スルファミド、スルホニル尿素基、グアニジノ基、カルボキシル基、アミド基;C1-C6アシル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン、OM1、M2、またはSO2OM3基を表し、さらに、M1、M2およびM3は、同じまたは異なってよく、それぞれ独立に、水素、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、NH4+、もしくは糖を含むグリコシドから選択される陽イオンを表す。
【0010】
本発明の第四の側面は、糖尿病の治療および/または予防、および糖尿病性合併症の改善のための方法であって、それを必要とする患者に対して、式Iの化合物の有効量を投与することを含む方法に関する。
【0011】
本発明の好ましい実施態様において、式Iの化合物は、下記の式II、式IIIおよび式IV
【化9】

【化10】

【0012】
または、
【化11】

【0013】
にて表される以下の構造を有する。
【0014】
本発明による別の好ましい実施態様において、式Iの化合物は、式Vにて表される以下の構造を有する:
【化12】

【0015】
ここにおいて、
R13、R14は、同一かまたは異なってよく、それぞれ独立に、水素;C1-C7アルキル基;C1-C6アルコキシル基;C1-C6エステル基、アミノ基;C1-C6アルキルアミノ基、C1-C6アルキルスルホニル基、スルファミド基、スルホニル尿素基、グアニジノ基を表す。
【0016】
本発明によるさらに好ましい実施態様において、グリコシドは、グルコシドもしくはマンノシドであり、または溶媒和化合物は水和物である。
【0017】
本発明における式Iの化合物は、パーキン反応により、置換フェニル酢酸および置換ベンズアルデヒドから作製される。
【0018】
本出願にて使用される「医薬的に許容可能な塩」という用語は、硫酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩といった医薬的に利用可能な無機酸により形成される塩、または、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、安息香酸塩、アクテイト(actate)、マレイン酸塩といった医薬的に利用可能な有機酸により形成される塩を指す。
【0019】
本発明による化合物は、単独で利用することができ、また医薬組成物の形態で利用することができる。該医薬組成物は、異なる投与経路に従って、錠剤、カプセル、顆粒剤、注射剤、坐薬、ドロップ、またはこう薬(patches)等といった腸管性または非経口性投与製剤に調製できる。
【0020】
上述した投与経路は、経口投与、噴霧吸入(spray inhalation)、経鼻投与、経頬吸収(buccal absorption)、局所処置(local application)、および非経口(皮下、静脈または筋肉内)投与を含み、好ましくは経口または静脈内投与を含む。
【0021】
経口投与された場合、本発明による化合物は、錠剤、カプセル、水溶液または水性懸濁液を含むが、これらに限定されないような、あらゆる経口的に容認可能な製剤形態として作製してよい。典型的に、錠剤に用いられる媒体(vehicles)は、ラクトースおよびコーンスターチを含む。加えて、ステアリン酸マグネシウムといった潤滑剤もまた添加されてよい。通常、カプセルに用いられる希釈剤は、ラクトースおよび乾燥コーンスターチを含む。水性懸濁液製剤は、一般的に、活性成分と適した乳化剤および懸濁剤との混合物を含む。任意に、経口製剤形態は、さらに甘味剤、調味剤または着色剤を含んでよい。
【0022】
局所塗布(local application)において、化合物は、活性成分が1以上の媒体(vehicles)に懸濁または溶解した、適した軟膏剤、ローションまたはクリームとして調製することができる。軟膏剤に適した媒体は、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、乳化ワックス(emulsifying wax)および水が含まれるが、これらに限定されず;ローションまたはクリームに適した媒体は、鉱油、ソルビタンモノステアレート、Tween 60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明による化合物は、無菌性注射用製剤の形態、例えば無菌性注射用水性もしくは油性懸濁液、または無菌性注射用溶液の形態にて投与されてよい。容認される媒体(vehicles)および溶媒には、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液が含まれる。加えて、モノグリセリドまたはジグリセリドといった、無菌性の不揮発性油もまた、溶媒または懸濁媒として使用できる。
【0024】
加えて、本発明による化合物の投与レベルおよび使用方法は、患者の年齢、体重、性別、本来の健康状態、および栄養状態を含む様々な因子、投与の時間、代謝率、治療の対象となる特定の疾病の重症度、および診断における医師の主観的判断に依存する。投与レベルは、活性成分が約0.01 mgから約100 mg/kg体重/日であることが好ましい。
【実施例】
【0025】
以下の実施例は、本発明のさらなる詳細な説明であるが、本発明を限定することを意図しない。
【0026】
[実施例1]シス-1-フェニル-2-(3’-メトキシ-4’-ヒドロキシ-フェニル)エテン(式IIの化合物)の作製
1.5 gのα-3-メトキシ-4-ヒドロキシ-フェニルケイ皮酸を量りとり、100 ml容量の三つ口ボトルに入れ、還流チューブおよびマグネチックスターラを設置した。次に、7 mlのキノリン、0.25 gの銅粉末を添加した。この混合物を、電熱器を用いて210℃に加熱しながら一時間撹拌した。二酸化炭素ガスが、反応の間、かすかな爆発音とともに放出された。反応の完了後、系がわずかに冷却したときに、20 mlのエチルアセテートを添加した。ろ過を行った後、反応液を2N HClで洗浄し、続いて水で洗浄し、無水MgSO4で脱水した。脱炭酸の後、生成したスチルベンは非常に強い蛍光性を有したが、α-3-メトキシ-4-ヒドロキシ-フェニルケイ皮酸はそのような性質は示さなかった。カラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール = 9.5:0.5)によって、黄色固体物質が得られた。MS(FAB) m/Z: M+ 226.0. 1HNMR (重水素化DMSO) δ9.16 (s 1H-OH), 3.84(s 3H-OCH3), 7.54(d 2H 2,6-H), 6.78(d 1H 2 -H), 7.37(t 2H α, β-H), 7.35, 7.26, 7.69(芳香族性5H)。
【0027】
[実施例2]シス-2-フェニル-3-(3’-アセトキシ-4’-メトキシ-フェニル)アクリル酸の作製(式IIIの化合物)
13.6 g(0.1モル)のフェニル酢酸、15.2 g(0.1モル)のイソバニリン、12 ml(0.07モル)のトリエチルアミン、および18 ml(0.18モル)の無水酢酸を、250 ml容量の三つ口ビンに入れた。この混合物を、110℃の油浴にて、12時間マグネチックスターラで撹拌しながら還流した。反応の完了後、系を室温まで下げ、200 mlの酢酸エチルを加えた。次に反応液を、pHが中性になるまで水で洗浄し、無水Na2SO4で一晩脱水した。乾燥剤を取り除いた後、溶媒を減圧下で除去した。その後、無水エチルエーテルを加えて、7.55 gの白色固体物質を分離した。融点が180-190℃、収率27.9%であった。
【0028】
分子式C18H16O5の化合物は、分子量312.31であった;MS(FAB) m/Z M+ 312.0, 1HNMR (重水素化) δ8.81 (s 1H, -OH), 3.07(s 3H, -OCH3), 2.73(s 3H, CH3), 7.40, 7.39, 7.18, 6.95(2-H), 6.72(s 1H, β-H), 3.72(s 3H, -OCH3), 7.40, 7.39, 7.18, 6.95(芳香族性7H)。
【0029】
[実施例3]シス-2-フェニル-3-(3’-メトキシ-4’-アセトキシ-フェニル)アクリル酸の作製(式IVの化合物)
13.6 g(0.1モル)のフェニル酢酸、15.2 g(0.1モル)のバニリン、12 ml(0.07モル)のトリエチルアミン、18 ml(0.18モル)の無水酢酸を、250 mlの三つ口ビンに入れた。この混合物を、110℃の油浴にて、12時間マグネチックスターラで撹拌しながら還流した。反応の完了後、系を室温まで下げ、200 mlの酢酸エチルを加えた。次に反応液を、pHが中性になるまで水で洗浄し、無水Na2SO4で一晩脱水した。乾燥剤を取り除いた後、溶媒を減圧下で除去した。その後、無水エチルエーテルを加えて、1.11 gの白色固体物質を分離した。融点が200-210℃、収率40%であった。
【0030】
分子式C18H16O5の化合物は、分子量312.31、MS(FAB) m/Z M+313であった。
【0031】
元素分析:分子式C18H16O5;分子量312.31、
理論値 C 69.22% H 5.13%、
分析値 C 69.32% H 5.13%。
【0032】
[実施例4]シス-2-フェニル-3-(3’-メトキシ-4’-ヒドロキシ-フェニル)アクリル酸の作製
100 mlの無水メタノールおよび0.5 gの金属ナトリウム(metallic sodium)を250 mlの三つ口ビンに入れ、ナトリウムが完全に溶解するまで撹拌した。次に、実施例3で作製した化合物を9.4 g加え、室温で5時間撹拌し、50℃の湯浴で1時間加熱した。その後、反応液を、15%のHClで酸性に調製し、減圧下で溶媒を除去して固体物質を得た。固体物質を水で洗浄し、30%エタノール中で再結晶を行い、7.94 gの白色結晶性固体物質を得た。融点が198-202℃、収率91%であった。
【0033】
元素分析:分子式C16H14O4;分子量270.28、
理論値 C 71.11% H 5.19%、
分析値 C 70.92% H 5.10%。
【0034】
[実施例5]シス-2-フェニル-3-(3’-カルボキシ-4’-メトキシ-フェニル)アクリル酸の作製
100 mlの無水メタノールおよび0.5 gの金属ナトリウム(metallic sodium)を250 mlの三つ口ビンに入れ、ナトリウムが完全に溶解するまで撹拌した。実施例2で作製した化合物を3.2 g加え、室温で3時間撹拌し、50℃の湯浴で1時間加熱した。その後、反応液を、15%のHClで酸性に調製し、減圧下で溶媒を除去して固体物質を得た。固体物質を水で洗浄し、95%エタノール中で再結晶を行い、2.3 gの白色結晶性固体物質を得た。融点が220-224℃、収率85.2%であった。
【0035】
元素分析:分子式C16H14O4;分子量270.28、
理論値 C 71.11% H 5.19%、
分析値 C 71.24% H 5.18%。
【0036】
[実施例6]シス-2-フェニル-3-(3-メトキシ-4’-アセトキシ-フェニル)-N-シクロヘキシルアクリルアミドの作製
9.36 g(0.03モル)のシス-2-フェニル-3-(3-メトキシ-4-アセトキシ-フェニル)アクリル酸を、100 ml容量の三つ口ビンに入れた。次に、22 ml(0.3モル)の塩化チオニルおよび50 ml無水トルエンを加え、3時間にわたって加熱および撹拌しながら100-110℃で還流した。反応の完了後、余分な塩化チオニルを、吸引して減圧下で乾燥させることにより除去した。適当量のトルエンを加え、吸引して減圧下で乾燥させ(二回繰り返した)、赤色粘着性液体物質を得た。次に、30 mlの無水トルエンを、得られた液体に加え、室温で撹拌しながら6 ml(0.05モル)のシクロヘキシルアミンを滴下した。滴下完了後、反応液を50℃で3時間撹拌し、次にトルエンを減圧下で除去して赤色油状物質を得た。その後、酢酸エチルを、得られた油状物質に加え、撹拌して固体物質を沈殿させた。その固体物質をろ過により回収し、次に酢酸エチルで3回洗浄し、3.6 gの生成物を得た。融点が124-127℃、収率30%であった。
【0037】
元素分析:分子式C24H27O4;分子量393.48、
理論値 C 73.26% H 6.92% N 3.56%、
分析値 C 73.37% H 6.91% N 3.54%。
【0038】
[実施例7]シス-2-フェニル-3-(3’-メトキシ-4’-アセトキシ-フェニル)-N-(メチレンフラン)アクリルアミドの作製
6.24 g(0.02モル)のシス-2-フェニル-3-(3’-メトキシ-4’-アセトキシ-フェニル)-アクリル酸および20 ml(0.28モル)の塩化チオニルを、50 ml容量の三つ口ビンに入れ、3時間加熱しながら撹拌し還流した。その後、余分な塩化チオニルを、吸引して減圧下で乾燥させることにより除去した。エチルエーテルを加え、撹拌しながら6 gの2-アミノメチル-テトラヒドロフランを滴下した。滴下完了後、引き続き系を室温で1時間撹拌し、固体物質を沈殿させた。その固体物質をろ過で回収し、メタノール-エチルエーテルで再結晶を行い、6.4 gの精製された生成物を得た。融点が119-121℃、収率80%であった。
【0039】
元素分析:分子式C23H25NO5;分子量395.45、
理論値 C 69.85% H 6.37% N 3.54%、
分析値 C 69.55% H 6.32% N 3.25%。
【0040】
[実施例8]シス-2-フェニル-3-(3’-メトキシ-4’-アセトキシ-フェニル)-N-(4-メチルシクロヘキシル)アクリルアミドの作製
実施例7に記載の方法に従って、シス-2-フェニル-3-(3’-メトキシ-4’-アセトキシ-フェニル)-N-(4-メチルシクロヘキシル)アクリルアミドを作製した。融点が136-140℃であった。
【0041】
元素分析:分子式C25H29NO4;分子量407.51、
理論値 C 73.69% H 7.17% N 3.44%、
分析値 C 73.64% H 7.29% N 3.61%。
【0042】
[実施例9]シス-2-フェニル-3-(3’,4’-ジメトキシ-フェニル)-アクリル酸メチルの作製
5.4 gのシス-2-フェニル-3-(3’-メトキシ-4’-ヒドロキシ-フェニル)アクリル酸、10 gの硫酸ジメチル、および40 mlの塩化メチレンを、50 ml容量の三つ口ビンに入れ、そこへ40 mlの10%水酸化ナトリウム溶液を40℃で撹拌しながら滴下した。滴下完了後、反応を4時間続け、静置して有機層を分離した。次に、有機層を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。ろ過により乾燥剤を除去した後、ろ液を濃縮し塩化メチレンを除去し、白色固体物質を得た。その白色固体物質を次に、メタノールで再結晶し、2.5 gの精製された生成物を得た。融点が100-103℃、収率78%であった。
【0043】
元素分析:分子式C18H18O4;分子量298.34、
理論値 C 72.47% H 6.08%、
分析値 C 72.13% H 6.04%。
【0044】
[実施例10]シス-2-フェニル-3-(3’-メトキシ-4’-アセトキシ-フェニル)ピロリジニル(pyrrolidinyl)アクリルアミドの作製
実施例7に記載の方法に従って、シス-2-フェニル-3-(3’-メトキシ-4’-アセトキシ-フェニル)ピロリジニルアクリルアミド(N365)を作製した。融点が113-116℃であった。
【0045】
元素分析:分子式C22H33NO4;分子量365.472、
理論値 C 72.296% H 6.34% N 3.85%、
分析値 C 72.475% H 6.41% N 4.08%。
【0046】
[実施例11]生物学的活性
以下の生物学的実験にて、上記化合物の血糖降下活性が、高血糖性マウスにおいて第一に認められた。3,3’,5’-トリヒドロキシ-4’-メトキシスチルベン-3-O-β-D-グルコシド(ラポンティシン(rhaponticin))をポジティブコントロール薬剤として使用して、これらの化合物の血糖降下活性を予備的に評価した。
【0047】
体重21-33 gのオスのクンミンマウス(Kun Ming male mice)(認可: 医学動物番号D01-3023)を実験に使用した。16時間、水のみを与えて絶食させた後、前記化合物をマウスに投与した。候補化合物は、ジメチルスルホキシド(2.5 ml/kg)にて処方し、マウスの胃内に(intragastrically)投与した。15分後、グルコース(2 g/10 ml/kg)を経口的に投与した。1時間後、尾の分節を切って1滴の血液を採取し、血糖値を、グルコース酸化酵素を含む試験紙を用いて、Johnson Company(米国)製の血糖モニターにて調べた。コントロール群のマウスには、ジメチルスルホキシド(205 ml/kg)およびグルコース(2 g/10 ml/kg)を胃内に与えた。これらの結果を表1から表3に示す。
【表1】

【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのシス-1,2-置換スチルベン誘導体、その医薬的に許容可能な塩、グルコシドまたは溶媒和化合物:
【化1】

ここにおいて、
R1-R12は、同一かまたは異なってよく、それぞれ独立に、水素;水酸基;C1-C6アルキル基;C1-C6アルコキシル基;C1-C6エステル基;アミノ基;C1-C6アルキルアミノ基;C1-C6アルキルスルホニル基、スルファミド、スルホニル尿素基、グアニジノ基、カルボキシル基、アミド基;C1-C6アシル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン、OM1、M2、またはSO2OM3基を表し、さらに、M1、M2およびM3は、同じまたは異なってよく、それぞれ独立に、水素、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、NH4+、もしくは糖を含むグリコシドから選択される陽イオンを表す。
【請求項2】
前記式Iの化合物が以下の構造を有する、請求項1に記載の化合物。
【化2】

【化3】

または
【化4】

【請求項3】
前記式Iの化合物が以下の構造を有する、請求項1に記載の化合物:
【化5】

ここにおいて、
R13、R14は、同一かまたは異なってよく、それぞれ独立に、水素;C1-C7アルキル基;C1-C6アルコキシル基;C1-C6エステル基、アミノ基;C1-C6アルキルアミノ基、C1-C6アルキルスルホニル基、スルファミド基、スルホニル尿素基、グアニジノ基を表す。
【請求項4】
前記グリコシドが、グルコシドまたはマンノシドである、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記溶媒和化合物が水和物である、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の化合物。
【請求項6】
活性成分として、式Iのシス-1,2-置換スチルベン化合物、その医薬的に許容可能な塩、グルコシドまたは溶媒和化合物を含み、ならびに1以上の医薬的に許容可能な媒体(vehicles)または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項7】
錠剤、カプセル、顆粒剤、こう薬(patches)、坐薬、ドロップ、または注射剤の形態をとる、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
式Iのシス-1,2-置換スチルベン化合物、その医薬的に許容可能な塩、グルコシドまたは溶媒和化合物の、糖尿病の治療および/または予防、または糖尿病性合併症の改善のための薬剤の製造のための使用、
【化6】

ここにおいて、
R1-R12は、同一かまたは異なってよく、それぞれ独立に、水素、水酸基;C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシル基;C1-C6エステル基、アミノ基;C1-C6アルキルアミノ基;C1-C6アルキルスルホニル基、スルファミド、スルホニル尿素基、グアニジノ基、カルボキシル基、アミド基;C1-C6アシル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン、OM1、M2、またはSO2OM3基を表し、さらに、M1、M2およびM3は、同じまたは異なってよく、それぞれ独立に、水素、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、NH4+、もしくは糖を含むグリコシドから選択される陽イオンを表す。
【請求項9】
糖尿病の治療および/または予防、および糖尿病性合併症の改善のための方法であって、糖尿病を患う患者に対して請求項1に記載の式Iの化合物の有効量を投与することを含む方法。

【公表番号】特表2008−506722(P2008−506722A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521774(P2007−521774)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【国際出願番号】PCT/CN2005/001086
【国際公開番号】WO2006/007794
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(505249816)中国人民解放▲軍▼▲軍▼事医学科学院放射医学研究所 (3)
【Fターム(参考)】