説明

シリコン及びゲルマニウム発光素子

【課題】シリコン及びゲルマニウム発光素子として作成可能な、注入キャリアを発光領域に閉じ込めるための素子構造とその製造方法を提供する。
【解決手段】電極と発光領域の間にキャリアにとって狭い通路、すなわち1次元的または2次元的量子閉じ込め領域を作成する。量子閉じ込めにより、その部分ではバンドギャップが開くため、電子にとっても正孔にとってもエネルギー障壁となり、通常のIII−V族半導体レーザーのダブルへテロ構造と同様の効果が得られる。素子の形状を制御するだけで、通常のシリコンプロセスで使用する元素以外は使わないため、安価に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンまたはゲルマニウムを用いた発光素子に関するものであり、特に、高輝度の発光ダイオードあるいはレーザーとして好適な素子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット産業を支えるブロード・バンド・ネットワークでは、光通信が採用されている。この光通信における光の送受信には、III−V族やII−VI族などの化合物半導体を用いたレーザーが使用されている。
【0003】
化合物半導体レーザーには、様々な構造が提唱されているが、ダブル・ヘテロ構造が一般的である。ダブル・ヘテロ構造は、2種類の異なる化合物半導体を用いて、バンド・ギャップの小さい化合物半導体をバンド・ギャップの大きい化合物半導体で挟んだ構造をしている。ダブル・ヘテロ構造を作製するには、基板上に導電型がn型、ドーピングしていないi型、そしてp型の各化合物半導体を連続的にエピタキシャル成長させ、垂直方向に積層する。その際、間に挟まれているドーピングしていないi型の化合物半導体のバンド構造に注意をする必要があり、n型とp型の各化合物半導体よりもバンドギャップが小さく、i型の伝導帯レベルがn型の伝導帯レベルよりも低く、i型の価電子帯レベルがp型の価電子レベルよりも高いことが重要である。
【0004】
つまり、電子及び正孔がともに、i型の領域に閉じ込められる構造となっている。そのため、電子と正孔が同じ領域にいやすくなるため、電子と正孔が衝突して対消滅する確立が高まり、結果として、発光効率をあげる事ができる。また、屈折率はバンド・ギャップが小さくなるほど大きくなる傾向があるため、i型の化合物半導体の屈折率がn型やp型の各化合物半導体の屈折率よりも大きな材料を選ぶ事によって、光もi型の化合物半導体に閉じ込められることになる。閉じ込められた光は、反転分布をつくっている電子と正孔の再結合を効率よく誘導するため、レーザー発振することにつながる。
【0005】
このように効率よく発光する化合物半導体を用いた光通信によって、長距離情報通信が瞬時の間に大量に行われている。すなわち、情報処理や記憶はシリコンを基幹としたLSI上で行われており、情報の送信は化合物半導体を基幹としたレーザーによって行われている。シリコンを高効率で発光させる事ができれば、シリコン・チップ上に電子デバイスと発光素子をともに集積化させる事ができるため、その産業的価値は甚大である。そこで、シリコンを発光させるという研究は膨大に行われている。
【0006】
また、シリコンLSI上に発光素子を作成して集積度を高めることを考えた場合、ゲルマニウムによる高効率な発光素子が作成できれば、シリコン発光素子のチップ上形成より作成難易度は高いが、化合物半導体発光素子のチップ上形成よりも遙かに難易度は低いので、次善の策として有効である。一方、論理回路と発光素子及び光配線(光導波路)を同一チップ上に作成する場合、導波路の占める体積は発光素子よりも大きくなるので、シリコンで導波路を作成出来れば全体の作成効率が良い。その場合、発光素子もシリコンだと発光した光の波長と導波路で吸収されやすい波長が一致してしまうので、むしろシリコンの吸収波長と異なる波長で発光するゲルマニウム発光素子の方が、都合が良い可能性がある。
【0007】
このように、発光素子の集積化のためにはシリコンまたはゲルマニウムを効率良く発光させることが望ましいが、それは容易ではない。なぜなら、シリコンもゲルマニウムも間接遷移型のバンド構造を有しているからである。間接遷移型のバンド構造とは、伝導帯のエネルギーが最低になるk点(k空間上の位置)と価電子帯のエネルギーが最高になるk点が一致しないバンド構造を指す。シリコンの場合には、価電子帯の最高エネルギー点は、(k、k、k)=(0,0,0)のΓ点と呼ばれるk点であるが、伝導帯の最低エネルギー点はΓ点にはなくΓ点とX点(±π/a、0、0)、(0、±π/a、0)、(0、0、±π/a)、の間にあり、より具体的には、格子定数をaとして、k=0.85*π/aと定義するならば、(0、0、±k)、(0、±k、0)、(±k、0、0)の6点に縮退して存在する。ゲルマニウムの場合、価電子帯の最高エネルギー点はΓ点であるが、伝導帯最低エネルギー点はL点と呼ばれる(±π/2a,±π/2a,±π/2a)の8つの点(Γ点を中心に点対称なL点は等価なので独立なものは4つ)に縮退して存在する。
これに対して、化合物半導体の多くは、伝導帯最低エネルギー点も価電子帯最高エネルギー点もΓ点にあるため直接遷移型の半導体と呼ばれる。
【0008】
次に、何故、間接遷移型の半導体では発光効率が悪く、直接遷移型の半導体では発光効率が良いか説明する。上述のように、半導体素子で発光させるためには、電子と正孔が衝突して対消滅し、両者のエネルギーの差を光として抽出しなければならない。その際、エネルギーと運動量の保存則が共に満足されていなければならない。電子は伝導帯の中にエネルギー準位をもっており、正孔は価電子帯の中で電子がいない部分のエネルギー準位をもっている。両者の差が光の持っているエネルギーになり、エネルギーによって波長が異なるため、伝導帯と価電子帯のエネルギー差、すなわちバンドギャップの大きさが光の波長、すなわち色を決める事になる。こうして考えると、エネルギーの保存則が成立する事に格段の困難さは見いだせられない。
【0009】
一方、発光には電子と正孔の衝突現象が関与するため、運動量も保存されなければならない。電子及び正孔の運動量はk点を表すベクトルkに比例する。微視的な世界を支配する法則である量子力学によると、電子、正孔、光子(光の量子)は共に、波でもあるが粒子として散乱されるため、運動量の保存則が成立する。運動量とは、定性的には、衝突の際に粒子をどの位の勢いで弾き飛ばすかという事を定量化する尺度である。光の分散関係(ω=ck、ここでωは光の角振動数、cは光速、kは光子の運動量)やエネルギーから、結晶中の光子の運動量を見積もるとほとんどゼロとなる事がわかる。これは、光が衝突する事によって物質を弾き飛ばすという現象があるとしても、それによって物質が散乱される影響は非常に少ないという事を意味しており、我々の直感とも一致する。
【0010】
シリコン及びゲルマニウムでは、正孔のエネルギー最小点(価電子帯エネルギー最高点)はΓ点にあるため、正孔はほとんど運動量を有さない。しかし、電子のエネルギー最小点(伝導帯エネルギー最低点)はシリコンの場合X点付近、ゲルマニウムの場合L点に存在するため、大きな運動量を有している。
【0011】
従って、シリコンやゲルマニウム中では、単純に電子と正孔が衝突する課程では、運動量保存則とエネルギー保存則を同時に満足させる事ができない。そこで、結晶中の格子振動の量子であるフォノンを吸収または放出するなどして、運動量保存則とエネルギー保存則をなんとか同時に満足できた電子・正孔対のみが光に変換されることになる。このような過程は、物理的に存在しないわけではないが、電子・正孔・光子・フォノンが同時に衝突するような高次の散乱過程であるため、そのような現象がおこる確率は少ない。従って、間接遷移型の半導体であるシリコンやゲルマニウムは極めて発光効率が悪いということが知られている。
【0012】
これに対して、直接遷移型の化合物半導体の多くは、伝導帯最低エネルギー点も価電子帯最高エネルギー点もΓ点に存在するため、運動量の保存則とエネルギーの保存則を共に満たす事ができる。従って、化合物半導体では発光効率が高い。下記非特許文献1には、発光効率の高い化合物半導体を用いたレーザーを化合物半導体で作られたバイポーラ・トランジスタで駆動するトランジスタ・レーザー素子が報告されている。
【0013】
シリコンは上述したようにバルクの状態では極めて発光効率が悪いが、ポーラス状態、あるいは、ナノ粒子状態にすることで発光効率が上がる事が知られている。たとえば、下記非特許文献2では、フッ酸溶液中で陽極酸化したシリコンがポーラス状態になることによって、室温でなおかつ可視光波長帯で発光することが報告されている。そのメカニズムに関しては、完全には解明されていないものの、多孔質の形成によって、狭い領域に閉じ込められたシリコンが存在するために生ずる量子サイズ効果が重要ではないかと考えられている。サイズの小さいシリコン中では、電子の位置がその領域内に閉じ込められるため、量子力学の不確定性原理により、逆に運動量が定まらなくなるため、電子と正孔の再結合が生じやすくなっているのではないかと考えられている。
【0014】
シリコンを用いた別の方法として、たとえば下記非特許文献3には、Si基板に形成されたpn接合中にErイオンを注入する事によって、発光素子となる発光ダイオード(LED)をつくることができたと記載されている。ErイオンをSi基板中に注入すると、Erが不純物準位をつくり、不純物準位は空間的に局在した準位であるため、Siの伝導帯にある電子がErイオンのつくる不純物準位に捕獲されると運動量は実効的にゼロとなり、価電子帯の正孔と再結合ができるようになり発光すると考えられる。Erイオンを介在した発光は、1.54μmの波長であるため、周囲のシリコンに吸収されること無く光を伝搬させることができる。また既存の光ファイバーを用いた場合に損失が少なくなる波長でもあるため、将来の技術革新によって、Erイオンを用いたSiベースのLEDが実用化された場合にも、既存の光ファイバー網を利用する事ができるため、大規模な設備投資を必要する事が無いのではないかと、期待されている。
【0015】
さらに、シリコンを用いた別の方法として、たとえば下記非特許文献4や下記非特許文献5には、上述の量子サイズ効果とErイオンのアイディアを組み合わせて、シリコン・ナノ粒子中にErイオンを注入する事によって、効率を上げて発光させる事ができたと記載されている。
【0016】
上記の従来技術では、シリコンを発光させるために、シリコンの伝導帯のバンド構造をバルクのバンド構造と変えて、不確定性原理によって、運動量をkの点から離すためには、量子サイズ効果によって、シリコンを多孔質状態か、または、ナノ粒子状態などにすれば良いと考えられていた。しかしながら、たとえば、ナノ粒子のような構造のシリコンを形成すると、シリコン表面は極めて酸化されやすいという特徴から、シリコン・ナノ粒子の表面が酸化されて、表面に二酸化シリコンが形成されるという問題がある。二酸化シリコンはバンドギャップが極めて大きい絶縁体であるため、表面に二酸化シリコンが形成されると効率よく電子や正孔を注入することができないという問題が生じる。従って、従来のシリコン発光素子では、フォトルミネッセンスでは高い強度が得られたとしても、エレクトロルミネッセンスでは極めて効率が落ちてしまうという問題が生じる。また、発光の際には、発光層となる物質の結晶性が重要になるが、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成したナノ粒子や陽極酸化によって表面に不規則かつ多量の穴を開けた構造では、単結晶と比べて結晶性が悪くなるという問題がある。結晶性が悪いと欠陥準位を介した発光が発生するという事態が生ずるが、欠陥を利用した発光では、効率が悪いため、情報通信などの実用に耐える素子は作製できないという問題がある。
【0017】
上述のように、ポーラスシリコンやナノ粒子やErドープなど、様々な技術によってシリコンを発光させるという努力は行われているが、発光効率は実用レベルまで高くなかった。
【0018】
我々は、電子を注入する第1の電極部と、正孔を注入する第2の電極部と、第1の電極部及び第2の電極部と電気的に接続された発光部を備え、発光部を単結晶のシリコンとし、発光部が第1の面(上面)と第1の面に対向する第2の面(下面)を有し、第1及び第2の面の面方位を(001)面とし、第1及び第2の面に直交する方向の発光部の厚さを薄くすることで、シリコンなどの基板上に通常のシリコン・プロセスを用いて容易に形成可能で、かつ、高効率に発光する発光素子を得られることを報告した(下記特許文献1)。これは、極薄の単結晶シリコン膜などに代表される極めて狭い領域に電子を閉じ込めた場合、バルクの電子状態では、伝導帯の電子がΓ点に存在しないシリコンのような物質であったとしても、実効的に薄膜の垂直方向には運動できないと理解できる。これは、定性的には、薄膜に垂直な方向がなくなるため、電子が薄膜に垂直な方向には動けなくなるという極めて当然の事を示している。すなわち、シリコンの極薄膜化でも、量子閉じ込め効果(2次元の閉じ込め効果)によって、バルクでは間接遷移型の半導体が、実効的に直接遷移に変わると考えられる。以下に発光の原理およびその実証結果を示す。
【0019】
シリコンやそれに順ずるゲルマニウムなどのIV族半導体を効率良く光らせるための原理について説明する。シリコンなどの結晶中での電子の状態を表す波動関数Ψ(r)は大変良い近似で(式1)のように表すことができる。
【0020】
【数1】

【0021】
ここで、kは伝導帯のバンドの谷底(valley)を与える運動量であり、r=(x,y,z)は空間上での位置を表し、φk0(r)は伝導帯のバンドの谷でのBloch関数を与え、ξ(r)は包絡線関数を表す。φk0(r)は、結晶中の単位格子ベクトルaに対する周期性を反映した周期関数uk0(r+a)=uk0(r)を用いて(式2)と表せる。
【0022】
【数2】

【0023】
このことからも明らかなように、原子スケールの距離の関数として激しく振動する。これに対して、包絡線関数ξ(r)は原子スケールでは緩やかな変化をする成分を表しており、半導体の物理的な形状や周囲から印加されている外場に対する応答を表す。ここで、Ψ(r)が、必ずしもバルク結晶ではない、有限の大きさを有した半導体構造中での波動関数である場合も含めて考えると、ξ(r)の満足すべき式を(式3)と導く事ができる。
【0024】
【数3】

【0025】
ここで、ε=ε(k)は、運動量kを有する伝導帯電子のバルクにおけるバンド構造を表しており、運動量kに微分演算子を−i▽と運動量kの和を代入したものをε(k−i▽)と示している。また、V=V(r)は、電子の感じるポテンシャルで、たとえば、半導体の境界部に絶縁体や別の種類の半導体が接触している場合には、ポテンシャル障壁を与えるし、外部から電界効果によって電場を印加することによって、V=V(r)の値を調整する事もできる。ここでは簡単のために、Vのz方向に対する変化のみに注目する。
【0026】
ここで、理解を容易にするため、具体的に、たとえば、半導体として(001)面上でのシリコンを想定すると、上述のようにバルクではk方向の(0,0,±k)に存在する伝導帯の谷は、(式4)と近似することができる。
【0027】
【数4】

【0028】
ここで、m及びmは、回転楕円体形状をしている伝導帯の谷の短軸及び長軸方向の曲率から求めたシリコン結晶中の有効質量を表している。すると (式3)は、(式5)と表される。
【0029】
【数5】

【0030】
なお、(001)面に平行な方向を(x,y)とし、幅をW、長さをLとして、包絡線関数を(式6)と置くことによって、(式5)は、(式7)となる。
【0031】
【数6】

【0032】
【数7】

【0033】
ここで、ΔEは、z方向のエネルギーを表し、伝導帯の底から測った電子の全エネルギーは、(式8)と表される。
【0034】
【数8】

【0035】
まず、(式7)がバルクの電子状態を再現する事を確かめる。そのためには、V(r)=0とおいた時の連続状態の解を求めれば良い。それは、z方向の厚さをtとして、包絡線波動関数が(式9)となり、ΔEが(式10)となる事から確かめられる。
【0036】
【数9】

【0037】
【数10】

【0038】
すなわち、波動関数は、バルク結晶全体に連続的に広がった状態で、波動関数は激しく振動している。この時、z方向の運動量の量子力学的期待値は、z方向の運動量演算子をkとして(式11)となる事は当然である。
【0039】
【数11】

【0040】
すなわち、シリコンなどの間接遷移型の半導体では、電子の多くは、運動量空間で、Γ点から遠く離れた点にいる確率が圧倒的に高いため、非常に大きい運動量を持って動いているという事を数式の上からも示している。
本発明は、このz方向の厚さであるtが非常に小さい極薄膜の場合、量子閉じ込め効果によって、バルクでは間接遷移型の半導体が、実効的に直接遷移型に変わるという事を基本原理として使う。以下、この点について詳しく説明する。
【0041】
話を具体的にわかりやすく説明するために、引き続き、シリコンを例にとり、z方向の厚さtが非常に小さく、z方向の上下には、隣接して、SiOなどのバンドギャップの大きい絶縁体か、さらにエネルギー障壁が大きい真空または大気に接していると想定する。同様の効果が期待できる系としては、たとえば、電界効果などによって、電子を狭い領域に閉じ込めれば同様の効果が期待できる。これらの場合、シリコン中の電子の波動関数は、z方向の上下の界面でゼロになる。もちろん、厳密には量子力学的な波動関数のしみ出しが存在するが、エネルギー障壁が大きいため、z方向の距離に対して指数関数的にしみ出しは小さくなるため、界面でゼロになるという近似はほぼ厳密に正しい。従って、外部から印加されるポテンシャルV(r)=0であったとしても、包絡線波動関数の様子はtが厚い場合と全く異なる。実際、このような量子井戸中に閉じ込められた電子及び正孔の包絡線波動関数は、離散的エネルギー準位を表す指数をnとして、n=0,2,4, …と偶数の場合には、(式12)と解けるし、n=1,3,5,…と奇数の場合には、(式13)となり、エネルギー準位の値は、nが偶数か奇数かによらず、(式14)と表す事ができる。
【0042】
【数12】

【0043】
【数13】

【0044】
【数14】

【0045】
最もエネルギーが低い状態がn=0である事は言うまでもない。包絡線波動関数を示すにあたって、z軸の原点を薄膜シリコンの中心にし設定し、z=±t/2にエネルギー障壁の高い界面が存在するとした。ここで、この包絡線波動関数χ(z)の性質について説明する。nが0または偶数であった場合、波動関数は、zの符号変化に対して対称的であり、χ(z)=χ(−z)という性質を有している。これをパリティが偶であるという。一方、nが奇数であった場合には、χ(z)=−χ(−z)という性質を有しており、パリティが奇であるという。
このような対称性を反映した構造をもっているため、包絡線波動関数による運動量への寄与を評価すると、(式15)となる。
【0046】
【数15】

【0047】
これは、χ(z)をz方向に対して微分をとると、もともとχ(z)が有していたパリティと変わるため、z方向に対して積分をとるとゼロになるというきわめて一般的な性質を示している。つまり、電子がz軸方向に強く束縛されているため、包絡線波動関数が定在波となり、電子が動かなくなる性質があることがわかる。これは、バルク状態での包絡線波動関数が(式9)で与えられるように指数関数的であり、電子が運動量をもってバルク結晶全体を動きまわっているのと全く対照的である。ただし、Bloch関数の存在まで考慮した全波動関数は、(式1)の中に、(式2)及び(式6)及び(式13)または(式14)を代入したものであるため、z方向の運動量の量子力学的期待値は、(式16)となる事に注意が必要である。
【0048】
【数16】

【0049】
つまり、もともとの半導体材料の性質としてバルクのときには、Γ点に伝導帯の谷底があるわけでなく、(0,0,±k)に谷底があるため、全体としての波動関数は、その性質を反映している。このようにしてみると、薄膜にしても、運動量±kを持って、電子が動き回っているように見えるが、そこには注意が必要である事に気付いた。つまり、たとえば、シリコンのように結晶として反転対称性を有している物質では、(0,0,+k)の谷と(0,0,−k)の谷がエネルギー的に等しく、縮退している事に注意が必要である。このように、極めて一般的に縮退したエネルギー準位を有する量子力学的な状態が空間的に同じ領域に閉じ込められると、それらの状態間に混成が生じる。つまり、(0,0,+k)の谷と(0,0,−k)の谷の間を結ぶエネルギー的な結合が非常にわずかでも存在すれば、2つの離散準位は、結合軌道と反結合軌道を形成する。たとえば、バンド計算には十分に含まれていない電子間のクーロン相互作用などは、狭い領域に閉じ込められている電子間には強く働く事が考えられる。電子間に働く相互作用は電子相関と呼ばれ、高温超伝導をはじめとする多くの遷移金属酸化物などで大問題になっているが、バルクのシリコンでは、もともとのシリコン原子でのsp軌道が大きな軌道をもっていることを反映してこれまでは大きな問題とはなってこなかった。しかしながら、量子力学的な効果が重要となるような非常に狭い領域に閉じ込めた場合には、クーロン相互作用が強く働くために、このような電子間のクーロン相互作用を無視する事ができなくなる。クーロン相互作用をきちんと取り入れて、ハミルトニアンの行列要素を計算すれば、そこには(0,0,+k)の谷と(0,0,−k)の谷を結ぶ混成がある。そして、そのハミルトニアンを対角化すれば、結合軌道と反結合軌道に分裂していることがわかる。これは、ふたつの水素原子を近づけていった場合に、水素分子が形成されるプロセスと似ており、そのような系を評価する方法はHeitler−Londonによって量子力学が形成された70年位前から理解されていた。我々は、Heitler−Londonによって理解された結合状態の形成が、シリコンなどのIV族半導体が狭い領域に閉じ込められている場合において、谷間の結合にも重要となることにはじめて気がついた。また、たとえ、もし、そのようなエネルギー的な結合が全くなかったとしても、2つの状態のユニタリー変換から、z軸方向に運動していない定在波を構成できる。これをもう少し具体的に説明する。Bloch状態は、結晶の有する反転対称性からu−k0(r)=uk0(r)という性質があるため、(0,0,+k)の谷と(0,0,−k)の谷のBloch波動関数は、それぞれ、φk0(r)=uk0(r)eik0zとφ−k0(r)=uk0(r)e−ik0zと表せる。従って、e±ik0zの部分に着目すればよい事がわかる。これらの波動関数の和と差から新しい基底状態を構成するには、ユニタリー変換Uによって、(式17)と変換してやれば良い。
【0050】
【数17】

【0051】
従って、原子レベルの波動関数の変化は、21/2k0(r)cos(kz)と21/2k0(r)sin(kz)という2つの定在波の波動関数によって記述できることがわかる。そして、波動関数全体を示すと(式18)及び(式19)と表すことができる。
【0052】
【数18】

【0053】
【数19】

【0054】
(式18)または(式19)の状態での運動量のz軸方向の期待値は、定在波である事を反映して(式20)となる。
【0055】
【数20】

【0056】
つまり、電子がz軸方向には、全く動いていない事がわかる。基底を変えるだけで、運動量の期待値が変わって見える事には、誤解が生じかねないので、ここで注意する。実は、(式18)と(式19)のような基底波動関数は、運動量の固有状態ではない。すなわち、運動量演算子の行列要素は、(式18)と(式19)を用いると、(式21)となり、対角行列要素がゼロとなり、非対角行列要素が純虚数となる。
【0057】
【数21】

【0058】
このような基底を取ることが物理的に適切かどうかは、対象としている系の性質に依存する。我々は、極薄の単結晶シリコン膜を想定しているが、そのような場合は、z軸方向に対する並進対称性が崩れかけているので、運動量の固有状態であるuk0(r)e±ik0zを用いるよりも、むしろ定在波となっている√2uk0(r)cos(kz)や√2uk0(r)sin(kz)を用いた方が適切である。逆に、バルクの状態を扱う時には、並進対称性が存在するため、uk0(r)e±ik0zを用いた方が良い。また、バルク状態では、運動量±kを有している電子は結晶中を激しく動き回っており、その際に、結晶中の格子振動の量子であるフォノンなどに強く散乱されており、波動関数の位相がダイナミックに変化しているため、運動量+kの状態と運動量−kの状態がコヒーレントに結合した状態を形成する事は期待できない。これとは対称的に、極薄の単結晶シリコン膜などのように、散乱を特徴づける長さである平均自由工程lよりも薄いような、極めて狭い領域に電子を閉じ込めている場合、室温でも十分波導関数は位相の定まった定在波を形成できる。定性的には、電子の波が狭い領域を高速で行き来しているうちに、その領域の大きさにピッタリあう定常的な波になるという事を意味している。
【0059】
上述のように、詳細に簡単な数式を用いて説明したように、極薄の単結晶シリコン膜などに代表される極めて狭い領域に電子を閉じ込めた場合、バルクの電子状態では、伝導帯の電子がΓ点に存在しないシリコンのような物質であったとしても、実効的に薄膜に垂直方向には運動しない事がわかる。これは、定性的には、薄膜に垂直な方向がなくなるため、電子が薄膜に垂直な方向には動けなくなるという極めて当然の事を示している。つまり、バルクでは高速に結晶中を動いていたとしても、薄膜では、そもそも動くべき方向がなくなってしまうため、電子は止まらざるを得ないという事を意味する。
【0060】
z軸方向への運動ができなくなったため、バルクのバンド構造は、k=0の面に射影され、2次元的なバンド構造になる。このように2次元に閉じ込められた系は、2次元電子系と呼ばれている。また、薄膜でなく、ナノワイヤのような極微細線構造にすれば、更に、次元を低下させて、1次元電子系も形成することができる。薄膜では、バルクの3次元的バンド構造における(0,0,±k)の伝導帯最低エネギー点が、2次元バンド構造でのΓ点に射影される。
【0061】
この2次元バンド構造のΓ点に存在する電子は、正孔と効率よく再結合し、発光素子として使えるはずであるという発想に至った。つまり、電子を閉じ込めることによって、電子は自由に動けなくなるわけであるから、同じくΓ点に存在するため運動量の小さい正孔と衝突した際、やはり運動量の小さい光を運動量とエネルギーの保存則を破ることなく、放出する事ができるわけである。上述のように、運動量とは、粒子が別の粒子に衝突した際に、どの位の衝撃で粒子を散乱するかという尺度である。我々は、電子を狭い領域に閉じ込める事によって、電子を動けなくするようにすれば、電子の運動量が失われるという事に気付いた。電子の運動量が小さくなれば、従来の方法では、難しかった散乱の際の運動量の保存則を満たす事ができるようになるため、シリコンなどのIV族半導体であっても効率よく光るようになる。
【0062】
ここまでの例で、シリコンの場合はバルクでのX点付近の伝導帯最低点を2次元のΓ点に射影させるため、薄膜は(001)面が膜の表面となるような結晶方位を取る必要があった。ゲルマニウムの場合はL点に伝導帯最低点があるので、同様の効果を得るには(111)面が膜の表面となるようにする必要がある。
【0063】
ただし、ゲルマニウムはシリコンと同じ間接遷移半導体ではあるが、伝導帯のエネルギーがL点で最低となる他に、Γ点にもエネルギーの極小点がある点がシリコンと異なる。Γ点とL点のエネルギー差は0.14eV程度なので、電子を大量に注入すればL点付近のk点を満たした後、Γ点にも電子を注入する事ができる。このため、ゲルマニウム薄膜での直接遷移による発光では、L点由来でΓ点に射影された伝導帯最低点の電子が発光に関与する場合と、バルクの時から元々Γ点にあった伝導帯の極小点の電子が発光に関与する場合の2つがある。価電子帯最高点との間の光学遷移行列要素はΓ点由来の伝導帯極小点の方がL点由来のものよりも遙かに大きいため、十分に電子注入を行えるならばこのΓ点由来極小点を利用した方が発光効率が良い。しかし必要な電子注入量は決して小さくはないので、簡単ではない。従って、L点由来最小点とΓ点由来極小点のどちらを積極的に利用した方が発光効率を上げやすいかは、薄膜の薄さ、界面の構造、デバイスの構造などにも依存し、場合による。
【0064】
特許文献2では特許文献1の素子構造を基礎として、シリコン薄膜をシリコンレーザーの光源として効率よく利用するために、発光波長λの半分の間隔でフィン状に並べ、導波路と組み合わせた素子構造も示されている。フィン状の構造の製造方法としては、マスクに細線パターンを描画した上で深くエッチングする方法と、MBE法を用いてシリコン層とシリコンゲルマニウム層を交互に積層した後、シリコンゲルマニウム層を選択的にエッチングする事によりフィン状のシリコン層だけを残す方法が示されている。
【0065】
特許文献3では特許文献1及び特許文献2の構造において発光高効率を向上させる方法として、シリコン結晶の(001)方向、すなわち薄膜の面に垂直な方向に圧縮する方法が有効であることが示されている。体積が2%収縮する程度の圧縮が行われた時、圧力は1.5GPa程度で、発光効率は1割から3割程度上昇する。効率の上昇に幅があるのは膜厚(原子層数)によって変化の度合いが異なるためである。この効果は30原子層程度の、容易に作成できる膜厚のシリコン薄膜においても有効なので、シリコン(001)薄膜による発光素子の効率向上に利用する事が容易である。
【0066】
ここで、一般的なIII−V族化合物半導体で既に実現されている半導体レーザーのダブルへテロ構造につい述べる。比較的発光効率の良いIII−V族半導体であっても、材料そのままに正極と負極を接続し両端から電子と正孔を注入しただけでは、衝突・発光・消滅しなかった電子と正孔は、すれ違ったまま反対側の電極に到達し発光せずに吸収されてしまうので効率が悪い。そこで発光領域の両側(正極側と負極側)に発光領域よりもバンドギャップが大きい領域をエピタキシャル成長などの技術を用いて作成し、電子にとっても正孔にとってもエネルギー障壁となるような構造とする。バリア層となる部分には発光領域の半導体よりも元々バンドギャップが大きい半導体を使用する。これをダブルへテロ構造という。これによって発光領域内に注入された電子と正孔はエネルギー障壁を越えられずに発光領域内に閉じ込められ、その間に電子と正孔が再結合して発光する確率が高まることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2007−294628号公報
【特許文献2】特開2008−205006号公報
【特許文献3】特開2010−238722号広報
【非特許文献】
【0068】
【非特許文献1】R. Chan, M. Feng, N. Holonyak, Jr., A. James, and G. Walter, アプライド・フィジックス・レターズ(Appl. Phys. Lett.), 2006年, 88巻, pp. 143508-1〜143508-3
【非特許文献2】L. T. Canham, アプライド・フィジックス・レターズ(Appl. Phys. Lett.), 1990年, 57巻, pp. 1046〜1048
【非特許文献3】S. Coffa, G. Franzo, and F. Priolo, アプライド・フィジックス・レターズ(Appl. Phys. Lett.), 1996年, 69巻, pp. 2077〜2079
【非特許文献4】F. Iacona, G. Franzo, E. C. Moreira, and F. Priolo, ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(J. Appl. Phys.), 2001年, 89巻, pp. 8354〜8356
【非特許文献5】S. Coffa, アイ・イー・イー・イー スペクトラム(IEEE Spectrum), 2005年, Oct. pp.44〜49
【非特許文献6】A. W. Fang、 H. Park、 R. Jones、 O. Cohen、M. J. Paniccia、 J. E. Bowers、 アイ・イー・イー・イー フォトニクス テクノロジー レターズ (Photonics Technology Letters)、2006年、18巻、pp.1143〜1145
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0069】
上述の特許文献1および特許文献2の発明ではシリコンの極薄膜に電子と正孔を注入して電界発光をさせる事のできる発光素子を提供し、また特許文献3ではその発光効率を向上させる方法を提供している。しかし、その発光領域の発光効率はGaAsなどのIII−V族半導体の発光効率と比べるとまだ小さい。このような材料によりレーザーを作成するには、大きくはない発光効率を十分に生かさなければならない。
そのためにはIII−V族半導体を使ったレーザーのダブルへテロ構造と同様、電子と正孔を発光領域内に閉じ込めるための構造を作成する必要がある。そのような構造により発光効率が高まれば、レーザーの設計上の余裕が増え、設計の自由度が増して好ましい。またそのような構造はレーザーではない発光素子として利用する場合でも、発光効率を高めるのに有用である。しかし、従来型の半導体レーザーではエピタキシャル成長の技術により、基板に平行な面方向には一様に、基板に垂直な方向にはnmサイズで厚さを制御して、適切なサイズのバリア領域を作成する事ができたが、特許文献1や特許文献2のような薄膜に沿って横から電流を注入する素子では、基板に対して上下に積み上げる方向の微細構造制御だけでは不十分で、面に平行な方向にもnmサイズのパターンを描かなければならないので、従来の方法ではバリア領域を作成できない。この薄膜素子は非常に薄い超微細構造なので、それを壊すことなく更にバリア領域という微細構造を追加するためには、不必要な酸化の防止、微細構造が壊れないための温度管理、不純物の排除などに注意する必要があり、適用できる手法は限られている。そのため、バリア構造そのものを見直して従来とは異なる、実現可能な方法でキャリア(電子及び正孔)の閉じ込めを実現する必要がある。
本発明は、特許文献1及び特許文献2の発光素子の構造に適用可能な、ダブルへテロ構造に相当するキャリア閉じ込めのための素子構造、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0070】
発光領域の正極側と負極側の両側にバンドギャップが広い半導体を配置したのと同様の効果を得るため、そのような半導体の代わりに1次元的量子閉じ込め領域を作成する。
電子や正孔は狭い空間に閉じ込められた時、量子閉じ込め効果によってエネルギーが上昇する。特許文献1及び特許文献2に記載の発光素子の発光領域は薄膜の形状をしているため、それだけで既にキャリアは2次元的量子閉じ込め領域の中にある。膜の表面に垂直な方向をz方向とすると、薄膜内のキャリアはz方向の井戸型ポテンシャルに閉じ込められていて、そのエネルギーはバルクの時と比べて上昇し、(式14)で表される。 nは0以上の整数だが、n=0の最低のエネルギー状態でもエネルギー上昇量はゼロではなく、薄膜の厚さtが薄ければ薄いほど上昇することがわかる。この量子閉じ込めにより、電子が注入される伝導帯下端のエネルギーは上昇し、正孔が注入される価電子帯上端のエネルギーは下降する。正孔とは電子が詰まっていない状態のことで、正孔の運動を論じる際には電子のエネルギーで表した式を正負逆転させて論じれば良いため、正孔の量子閉じ込めによるエネルギー上昇は価電子帯上端の下降となって現れる。こうして、2次元への量子閉じ込めの結果として、バルクの場合と比べると薄膜は既にバンドギャップが開いた状態になっている。ちなみにこのことを利用して、膜厚を制御することで発光波長を調整する事も可能である。
このような薄膜構造の両側、電極への接続部に更にバンドギャップが広い構造を作成する方法としては、キャリアが流れる通路を狭くして1次元的な量子閉じ込め領域を作成するという方法がある。薄膜がxy平面に平行にあり、正極と負極がx軸方向にある(電流がx軸に沿って流れる)とした時、y方向の幅を十分に狭くする事により、その狭い部分は1次元的に量子閉じ込めをされた領域となる。新たなy方向への量子閉じ込めにより、y方向の幅に応じてバンドギャップが更に開くので、その1次元量子閉じ込め領域がバンドギャップ拡張領域となり、バリア領域として機能する。
特許文献1及び特許文献2の発光素子において発光領域の薄膜を作成する際には、半導体が酸化される領域をエッチング等で限定した後、酸化の量を十分に制御しながら酸化を行うことにより、半導体部分が最終的に目的の薄膜の形に残るようにしていた。同様の手法を用いて、酸化を行うことにより、1次元的量子閉じ込め領域を作成することができる。薄膜の薄さを所定の薄さにするための酸化工程と、1次元閉じ込め領域の幅を所定の細さにするための酸化工程は同一の工程であっても良いし、それぞれ別の工程であっても良い。薄膜の作成と全く同じ技術を使用するため技術的な精度は高く、微細な構造の作成が可能で、温度、不純物などの点で新たな問題が発生しない。
バリア領域として1次元閉じ込め領域を作成するため、その領域では薄膜領域と比べて電流が流れる断面積が小さくなる。そのため、素子全体としての電気抵抗は大きくなる。少しでもその短所を減らすためには、バリア領域の長さをできるだけ短くした方が良い。x軸方向に電流が流れるとしたら、バリア領域のx方向の幅をできるだけ小さくする事が、電気抵抗の上昇を出来るだけ小さく済ませることにつながる。つまり、長い1次元量子細線で電極と接続するような構造は好ましくなく、1次元領域は短いほど良い。そのためには例えば、薄膜に円形の穴をy方向に並べて開け、隣り合う2つの穴の隙間が1次元閉じ込め領域となるようにする。このようにすると、最も幅の狭い1次元閉じ込め領域は隣り合う円の中心同士を結んだ直線上だけとなり、1つの穴の幅よりも小さい。
また、発光領域が5nm以上の厚みのある膜またはバルクゲルマニウムである場合、1次元閉じ込め領域ではなく2次元閉じ込め領域、すなわち5nm以下の薄膜をバリア領域とすることでも同様の効果が期待できる。
【発明の効果】
【0071】
本発明によれば、シリコンなどの基板上に容易に形成可能なシリコン発光素子またはゲルマニウム発光素子の中でもより発光効率の良いものを安価に提供できる。また、同様にシリコンなどの基板上に容易に形成可能なシリコンレーザーまたはゲルマニウムレーザーの中でも、より強力な発光源によって設計の自由度の増したものを安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明による実施例1の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図2】本発明による実施例1の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図3】(a)は、本発明による実施例1の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図及び(b)は、その素子平面模式図。
【図4】(a)は、本発明による実施例1の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図及び(b)は、その素子平面模式図。
【図5】本発明による実施例1の集積発光素子の製造工程を説明する素子平面模式図。
【図6】本発明による実施例1の集積発光素子の製造工程を説明する素子平面模式図。
【図7】本発明による実施例1の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図8】本発明による実施例1の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図9】本発明による実施例1の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図10】本発明による実施例1の集積発光素子の構造を説明する鳥瞰模式図。
【図11】(a)は、本発明による実施例2の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図及び(b)は、その素子平面模式図。
【図12】本発明による実施例2の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図13】本発明による実施例2の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図14】本発明による実施例2の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図15】本発明による実施例2の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図16】本発明による実施例2の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図17】本発明による実施例2の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図18】本発明による実施例2の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図19】本発明による実施例2の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図20】本発明による実施例2の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図21】本発明による実施例2の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図22】本発明による実施例2の集積発光素子の構造を説明する鳥瞰模式図。
【図23】(a)は、本発明による実施例3の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図及び(b)は、その素子平面模式図。
【図24】本発明による実施例3の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図25】本発明による実施例3の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図26】本発明による実施例3の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図27】本発明による実施例3の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図。
【図28】(a)は、本発明による実施例3の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図及び(b)は、その素子平面模式図。
【図29】(a)は、本発明による実施例3の集積発光素子の製造工程を説明する素子断面模式図及び(b)は、その素子平面模式図。
【図30】本発明による実施例3の集積発光素子の構造を説明する鳥瞰模式図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0073】
特許文献1のシリコン薄膜発光素子の発光領域の両端に穴を開けることにより、キャリアにとってのバリア領域を形成して、ダブルへテロ構造と同様の効果を得る方法を示す。
【0074】
図1はシリコン薄膜発光素子の作成途中の構造のxz面での模式的断面図である。シリコン支持基板10の表面及びシリコン薄膜11に垂直な方向(図面上下方向)をz方向、完成後にシリコン薄膜内を電流が流れる方向(図面左右方向)をx方向、紙面に垂直な奥行き方向をy方向とする。この図を含めて全ての図は模式図であり、それぞれの領域の大きさの比、縦横の比は実際とは異なる。
【0075】
まずシリコン支持基板10上に厚さ1μmのシリコン酸化膜20を積み、このシリコン酸化膜上に厚さ100nmの単結晶シリコン薄膜11を形成する。シリコン薄膜11上には自然酸化によりシリコン酸化膜21が形成される。この上にエッチングによってシリコンナイトライド層30を形成し、次の工程で熱酸化を行う部分以外を覆い、保護する。なお、発光領域を形成しないシリコン基板の裏側(図の下側)にも自然酸化、熱酸化、ナイトライド形成等の効果は現れるが、それらの描写は全ての図で省略する。
【0076】
図2は、熱酸化によって、シリコン薄膜11を1nmから5nmの所定の薄さに加工したところである。この時、シリコン薄膜11は酸化して薄くなり、シリコン酸化膜層21は厚くなる。シリコンナイトライドに保護された両端の領域のシリコンは薄くならずに元の厚さのまま残る。
【0077】
図3は、ドライエッチングによりシリコン酸化膜21とシリコン薄膜11の所定の位置に穴41を開けたところである。図の下半分はこの素子をz方向の上から見た平面図で、A−A’に沿った線での断面図が図の上半分に相当する。穴はy方向に等間隔に並べて開ける。ところで、図中の左側の電極の近傍に一列に形成された穴41と、それに対向して図中の右側の電極の近傍に一列に形成された穴41との向かい合う距離は、通常1μm程度に設定する。
【0078】
図4は、ウェットエッチングを行ってシリコン薄膜11に空いた穴41を拡大し、より大きな穴22としたところである。その結果、穴22と穴22の間のシリコン結晶部分からなるキャリアの通路はより狭くなっている。この幅が1nmから10nmの所定の幅となるように、ウェットエッチの量を調節する。この狭くなった部分が1次元量子閉じ込め領域であり、キャリアにとってのバリア領域となる。上記所定の幅の下限値は、x方向へ流れる電流の抵抗面から決定され、上限は量子閉じ込め効果の面から決定される。
【0079】
なお、最終的な穴22の大きさは出来るだけ小さく、その分y方向(図4で穴が整列している方向)の単位長さあたり多数の穴が空いている構造とする事が、キャリアの通路の数を増やし、電気抵抗を低下させることにつながるので望ましい。通常、ドライエッチングだけでは穴と穴の間隔を1nmから10nmの範囲の所定の幅に制御することは難しいので、まず大きめの間隔でドライエッチにより穴を開け、次にウェットエッチで穴を拡大し隙間の幅を調節する、という2段階の工程が必要になる。
【0080】
エッチングの精度により、開けられる穴の大きさは一定値以上だが、穴の配列パターンを工夫することにより、キャリアの通路の数を増やす方法は存在する。
【0081】
図5は、穴を一直線でなくジグザグに並べた例である。Y方向(図5では紙面の上下方向)の単位長さあたりのキャリア通路(1次元閉じ込め領域)の数は図4の一直線上の配列の場合よりも大きい。
【0082】
図6は穴の配列を更に大きくうねらせた例である。図4と図5の例ではx方向に電場がかかったとき、並んだ1次元閉じ込め領域は全て同じ電位を持つという特徴があったが、図6の例では等しくはならない。そのため一部の隙間に電流が集中しやすいという問題があるが、その代わりうねりの幅を大きくすることで飛躍的にキャリア通路の数を増やすことができるという利点がある。
【0083】
穴の配列パターンには図4、図5、図6のいずれかを採用したとする。次に図7の模式的断面図に示すように表面のシリコンナイトライド層30を除去し、その下にあった厚みの残っている左右のシリコン層にp型ドーパントとn型ドーパントをそれぞれイオン打ち込み法により打ち込んで活性化する。これによりp型ドープ領域12とn型ドープ領域13が形成される。
【0084】
図8は次にシリコン酸化膜21を積んで穴を埋め、シリコンナイトライド31をパターニングして発光領域の上に配置したところである。シリコンナイトライド31は紙面の奥行き方向に100nm程度の厚さで、その厚みを含めてシリコン薄膜の発光波長のちょうど半分の間隔で並ぶように配列しており、導波路及びDFBミラーとしての役割を果たす。
【0085】
図9は次にシリコン酸化膜に穴を開けて、アルミニウム電極51がp型シリコン領域12及びn型シリコン領域13にそれぞれ接続するように形成したところである。このあと全体を保護膜で覆えば完成となる。
【0086】
図10は完成した素子を斜め上から見た模式的鳥瞰図である。ただし、わかり易さのため、表面のシリコン酸化膜21を省略して描いている。
なお、ここではシリコン薄膜素子を例としたが、同様の方法によりゲルマニウム薄膜で同様の発光素子を作成する事も可能である。
【実施例2】
【0087】
特許文献2で示されているフィン型シリコン発光素子において、フィンを構成する個々のシリコン薄膜の両端にくびれ構造を作成し、1次元的量子閉じ込め領域とすることでバリア領域を作成し、ダブルへテロ構造と同様の効果を得る方法を示す。
【0088】
図11は本実施例による、くびれ構造を持つフィン型シリコン発光素子の最終的に完成した構造を示すもので、下図は素子の上から見た平面図、上図は下図のA−A’に沿った断面図である。ただし、下図の平面図では、構造をわかりやすくするため、保護膜であるシリコン酸化膜21を省略して描いている。シリコン支持基板10の上にシリコン酸化膜20が積まれ、その上にシリコン薄膜11がフィン状に配列し、そこにp型シリコン領域12とn型シリコン領域13が接続し、更にそこにアルミニウム電極51がそれぞれ接続し、シリコン薄膜11の上部にはシリコンナイトライド31による導波路が配置され、電極の取り出し部分以外をシリコン酸化膜21で覆った構造となっている。
【0089】
図12はこの構造を作成するための最初の段階を示すもので、図11下図のB−B’の位置、方向に沿った断面図である。まずシリコン支持基板10上に厚さ1μmのシリコン酸化膜20を積み、このシリコン酸化膜上に厚さ300nmの単結晶シリコン薄膜11を形成する。本実施例ではシリコン薄膜(シリコンフィン)を基板に垂直に立てて作成するので、最終的なシリコンフィンの幅はこの時点のシリコン薄膜11の厚さ以下となる。発光領域の体積を確保するためには幅が広い方が良いが、均一な厚みのフィン構造は幅が狭い方が作成しやすいので、この厚みとしている。シリコン薄膜11上には自然酸化によりシリコン酸化膜21が形成される。更にこの上に50nm程度の厚さのシリコンナイトライド層を形成する。
【0090】
図13は図12の構造にレジストを積んでパターニングをした後、ドライエッチングとウェットエッチングの組み合わせにより作成したブロック構造である。シリコン酸化膜20より上のブロック構造の幅は50nm程度で、個々のブロックは250nm程度の間隔で並ぶようにする。シリコンフィンの間隔自体がDFBミラーの役目を果たすよう、この間隔はシリコンフィンから発する光の波長のちょうど半分となるように決める。
【0091】
図14に示すように、次に熱酸化を行ってシリコン部分11を薄膜化させる。
その後、図15に示すように、シリコンナイトライドの上に50nm積もる程度にシリコン酸化膜を積層させる。これにより、シリコンフィン11同士の間の隙間が全てシリコン酸化膜に満たされるようにする。
【0092】
次に、図16に示すように、シリコンナイトライド上のシリコン酸化膜をドライエッチングにより除去する。この時、ナイトライドに覆われていない部分のシリコン酸化膜は同時に除去されることになる。
【0093】
更に、図17に示すようにウェットエッチングによってシリコンナイトライド層を除去する。このとき、ナイトライドの下にあったシリコン酸化膜も大部分が除去されることになる。
【0094】
図18は20nmから40nmの所定の厚さでシリコン酸化膜21を積層し、50nmから250nmの所定の厚さでシリコンナイトライド30を積層した後の断面図である。これは図11の下図のA−A’に沿った、シリコンフィンが存在する場所での断面図である。
【0095】
図19はパターニングを行って、シリコンフィンのくびれ構造を作成する位置の上部に穴を開けた後の断面図である。
【0096】
次に、図20に示すように熱酸化を行うことにより、穴の空いた部分のシリコンフィンの酸化が進み、その部分がくびれ構造になる。くびれて残った部分の幅が5nm程度となるように、熱酸化を調節する。
【0097】
次に、シリコンナイトライド層を除去し、シリコン酸化膜を再度積層し、上面を平坦にしたあと、導波路として機能させるためのシリコンナイトライド層31を250nm程度の厚さで再度積層する。次にパターニングを行って所定の位置のシリコンナイトライド31だけを残し、その他の部分のシリコンナイトライドを除去し、保護膜としてシリコン酸化膜を30nm程度の厚さで積層する。その結果形成された構造を図21に示す。
【0098】
次に、イオン打ち込みによりp型ドープシリコン領域12とn型ドープシリコン領域13を形成し、50nm程度の厚さでシリコン酸化膜を再び積層した後、所定の温度での熱処理により、ドープ領域を活性化する。次にパターニングを行ってウェットエッチングによりドープシリコン領域12及び13の上のシリコン酸化膜に穴を開け、そこにアルミニウム電極51を形成する。その結果の構造の断面図と平面図が図11に示されている。
【0099】
また、図22はこの構造の鳥瞰図である。ただしわかりやすさのため、シリコン酸化膜21を省略して描いている。
【0100】
なお、ここではフィン型シリコン発光素子を例として、そこにくびれ構造を導入してキャリア閉じ込めを実現する方法を示したが、ゲルマニウムによるフィン型発光素子においても、同様の方法で同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0101】
ゲルマニウムは間接遷移型半導体だが、シリコンとは異なり、伝導帯最低点のL点のエネルギー準位とΓ点にある極小点のエネルギー準位が接近しているため、十分に多量の電子を注入すればΓ点にも電子を注入することができる。このような形でのΓ点からの発光は、素子の形状に依らず、バルクでも得られるものなので、ゲルマニウム発光素子は厚みのある膜を用いても良い。このため、フィン型ゲルマニウム発光素子の個々のフィンの中央部分(発光領域)を厚く、電極から接続する端の部分を薄くする事で、薄い部分での量子閉じ込め効果により、キャリアにとってのバリア領域を形成してダブルへテロ構造と同様の効果を得る方法を示す。
【0102】
図23は本実施例により最終的に完成した、フィン型ゲルマニウム発光素子において個々のフィンの両側の電極への接続部分が特に薄くなっている構造を示したものである。下図は阻止の上から見た平面図、上手は下図のA−A’に沿った断面図である。ただし下図の平面図では、構造をわかりやすくするため、保護膜であるシリコン酸化膜21を省略して描いている。シリコン支持基板10の上にシリコン酸化膜20が積まれ、その上に中央部が厚く両端が薄いゲルマニウム薄膜62がフィン状に配列し、その薄い両端にp型シリコン領域12とn型シリコン領域13がそれぞれ接続し、更にそこにアルミニウム電極51がそれぞれ接続し、電極から配線への引き出し部を除いて全体をシリコン酸化膜21で覆った構造となっている。
【0103】
図24はこの構造を作成する途中の段階を、図23のB−B’に沿った断面図で示すものである。実施例2と同様の方法により、シリコン支持基板とシリコン酸化膜の上にシリコンフィン構造11を作成する。このとき、エッチングによりシリコンフィンの側面の表面がほとんどシリコン酸化膜に覆われず、シリコン結晶が露出するようにする。
【0104】
図25に示すように、次にここにシリコンゲルマニウム61を蒸着させる。このシリコンゲルマニウムはシリコンとゲルマニウムが無秩序に配置したものだが、これを熱酸化処理すると、図26に示すようにシリコンだけが酸化されて外側にシリコン酸化膜21としてふくらみ、ゲルマニウムだけが酸化されずに残されて、徐々に濃度が上昇する(濃縮酸化)。最終的には、最初からあったシリコンフィンも酸化され、シリコンゲルマニウムに含まれていたゲルマニウムだけが、シリコンフィンのあった位置に残り、ゲルマニウムフィン62となる。このような状態になったタイミングで熱酸化処理を終了することが重要で、シリコンが全て酸化された後も酸化処理を続行すると、ゲルマニウムの酸化が始まってしまい、ゲルマニウムフィンが残らない。
【0105】
次に図27に示すようにシリコン酸化膜を積層し、ゲルマニウムフィン構造の隙間を埋める。次にパターニングを行って、図28のようにゲルマニウムフィンの中央部分を露出させるようにシリコン酸化膜21を除去する。このとき、ゲルマニウムフィン62のうち、シリコン結晶11に接続している両端の部分は、シリコン酸化膜21に覆われて露出しない状態になっている必要がある。
【0106】
次に図29に示すようにゲルマニウムを蒸着させ、ゲルマニウムフィンの厚さを厚くする。図29の下図の平面図は、わかりやすさのため、シリコン酸化膜21を省略して描いている。これにより、ゲルマニウムフィン62の大部分が厚くなり、シリコン結晶11に接続している両端の部分だけが薄い構造となる。
【0107】
既に示した図23のように、このあとイオン打ち込みによりp型ドープシリコン領域12とn型ドープシリコン領域13を形成し、シリコン酸化膜を積層し、p型ドープシリコン領域12とn型ドープシリコン領域13にアルミニウム電極51をそれぞれ接続した構造を作成する。これによって、ゲルマニウム薄膜のより一層薄い部分をキャリアにとってのバリア構造とした、フィン型ゲルマニウム発光素子ができる。図30にこの構造の鳥瞰図を示す。ただし、ここでもわかりやすさのため、保護膜のシリコン酸化膜を省略して描いている。なお、ここではゲルマニウムフィンそのものが導波路の役目を同時に果たすため、導波路としてのシリコンナイトライド層は形成していない。
【符号の説明】
【0108】
10…シリコン基板、
11…単結晶シリコン、
12…p型ドープシリコン、
13…n型ドープシリコン、
20,21…シリコン酸化膜、
22…穴41を更に拡大した穴、
30…シリコンナイトライド、
31…シリコンナイトライドによる導波路、
41…シリコン酸化膜及びシリコン薄膜に開けた穴、
51…アルミニウム電極、
62…単結晶ゲルマニウム、
61…シリコンゲルマニウム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層を介して半導体基板上にそれぞれ設けられた電子を注入するための第1の電極と、正孔を注入するための第2の電極と、
前記第1及び第2の電極と電気的に接続され前記絶縁層上に配置された薄膜で構成された発光部とを有し、
前記薄膜は、シリコン結晶またはゲルマニウム結晶から構成され、前記半導体基板に平行な平面構造か、または垂直方向に形成されたフィン構造であって前記電子および前記正孔の注入により光を発する程度の膜厚を有し、前記第1および第2の電極のそれぞれの近傍において設けられた、電子および正孔に対する量子閉じ込め機構によるバンドギャップ拡張領域を有することを特徴とする発光素子。
【請求項2】
半導体基板上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上にそれぞれ設けられた電子を注入するための第1の電極と、正孔を注入するための第2の電極と、
前記第1及び第2の電極と電気的に接続され前記絶縁層上に前記半導体基板表面に対して平行に延在する薄膜で構成された発光部とを有し、
前記薄膜は、シリコン結晶またはゲルマニウム結晶から構成され、前記電子および前記正孔の注入により光を発する程度の膜厚を有し、
前記薄膜は、前記第1および第2の電極のそれぞれの近傍において長手方向に所定の間隔で配設された穴部を具備してなることを特徴とする発光素子。
【請求項3】
前記穴部における隣接する穴同士の隙間が、10nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記穴部において、各穴が一直線上に配列されていることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
【請求項5】
前記穴部において、隣接する穴同士が所定の間隔を保持しながら、各穴はジグザグ形状に配列されていることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
【請求項6】
前記穴部において、隣接する穴同士が所定の間隔を保持しながら、各穴はつづら折れ状に配列されていることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
【請求項7】
前記発光部上に、該発光部から出射される光を導波する導波路が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
【請求項8】
半導体基板上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上にそれぞれ設けられた電子を注入するための第1の電極と、正孔を注入するための第2の電極と、
前記第1及び第2の電極と電気的に接続された発光部とを有し、
前記発光部は、前記電子および前記正孔の注入により光を発する程度の膜厚を具備したフィン形状を有する薄膜が複数並行に配置された構造からなり、
該薄膜は、シリコン結晶またはゲルマニウム結晶から構成され、前記第1および第2の電極のそれぞれの近傍において前記半導体基板に垂直な方向に前記電子および前記正孔の経路を狭めたくびれ構造を有することを特徴とする発光素子。
【請求項9】
前記穴部における隣接する穴同士の隙間が、10nm以下であることを特徴とする請求項8に記載の発光素子。
【請求項10】
前記発光部上に、該発光部から出射される光を導波する導波路が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の発光素子。
【請求項11】
半導体基板上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層上にそれぞれ設けられた電子を注入するための第1の電極と、正孔を注入するための第2の電極と、
前記第1及び第2の電極と電気的に接続された発光部とを有し、
前記発光部は、前記電子および前記正孔の注入により光を発する程度の膜厚を具備したフィン形状を有する薄膜が複数並行に配置された構造からなり、
該薄膜は、ゲルマニウム結晶から構成され、前記第1および第2の電極のそれぞれの近傍において前記半導体基板に水平な方向に前記電子および前記正孔の経路を狭めた狭窄領域を有することを特徴とする発光素子。
【請求項12】
前記穴部における隣接する穴同士の隙間が、10nm以下であることを特徴とする請求項11に記載の発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−12547(P2013−12547A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143420(P2011−143420)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】