説明

シリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで評価できる乾燥機システム及び評価方法

【課題】シリコーンゴム成形物中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで評価できる乾燥機システム及び評価方法の提供。
【解決手段】シリコーンゴム硬化物のポストキュアを行う乾燥機と、該乾燥機由来の排出ガスが導入され、該排出ガス中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムに測定する測定装置と、を備える乾燥機システム;(a)該乾燥機によりシリコーンゴム硬化物のポストキュアを行い、該測定装置により該乾燥機由来の排出ガス中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムに測定する工程、及び(b)予め作成した所定の検量線を用いて、工程(a)で測定した低分子シロキサン濃度から工程(a)でポストキュアを行ったシリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度を決定する工程、を含んでなるシリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで評価する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム硬化物(1次又は2次以上の硬化物)のポストキュア時に用いる乾燥機由来の排出ガス中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで測定することにより、シリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで評価できる乾燥機システム及び該乾燥機システムによりシリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、優れた耐候性、電気特性、低圧縮永久歪み性、耐熱性、耐寒性等の特性を有しているため、電気機器、自動車、建築、医療、食品を初めとして様々な分野で広く使用されている。
【0003】
シリコーンゴム硬化物には、シリコーンゴムの原料である沸点の低い低分子シロキサンが残留しているため、その使用時には揮発した低分子シロキサンが電気接点不良等の障害を起こす恐れがある。そのため、シリコーンゴム硬化物を乾燥機に入れ、低分子シロキサンを減量させた後、使用する場合がある。
【0004】
従来は、低分子シロキサン量を有効に減少させるために、乾燥機へのシリコーンゴム硬化物の投入方法、投入量、乾燥機の温度、乾燥機内の換気回数などを調整し、調整する度に、乾燥後のシリコーンゴム硬化物に残留する低分子シロキサン量を測定し、目的とする低分子シロキサン量になっているか否か確認する必要があった。
【0005】
シリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度の測定方法としては、例えば、シリコーンゴム硬化物を切り取り、n-テトラデカン含有アセトン中に浸漬させ、抽出された低分子シロキサンの量をキャピラリーガスクロマトグラフにて測定する方法が知られている

(特許文献1)。しかし、シリコーンゴム硬化物の一部を切り出す必要があり、製品としては使用できなくなってしまう問題がある。
【0006】
一方、バイオガス中の低分子シロキサンを活性炭に吸着させて取り除く方法が知られている(特許文献2〜4)。この技術を利用して、シリコーンゴム硬化物のポストキュアを行う乾燥機から排出される低分子シロキサンをチャコールチューブに吸着させ、吸着した低分子シロキサンを四塩化炭素で抽出し、キャピラリーガスクロマトグラフによって低分子シロキサン量を測定することができる。しかし、このような方法では、連続的に低分子シロキサン量を測定することが困難であり、十分なポストキュアを行った後も、更にポストキュアを続けてしまうことがある。
【特許文献1】特開2008−163282号公報
【特許文献2】特開2005−017737号公報
【特許文献3】特開2005−046755号公報
【特許文献4】特開2008−001811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、シリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで評価できる乾燥機システム及び評価方法の提供を目的とする。
【0008】
なお、本発明において、低分子シロキサンとは、ケイ素原子数(又は重合度)3〜10の環状又は直鎖状の低分子シロキサン、即ち、ジメチルシロキサン環状3〜10量体などの、式:D(ここで、mは3〜10の整数)と表記されるジオルガノシロキサン環状重合体(3〜10量体);両末端トリメチルシロキシ基封鎖直鎖状ジメチルシロキサン(1〜8量体)などの、式:M−(D)−M(ここで、nは1〜8の整数)と表記される両末端トリオルガノシロキシ基封鎖直鎖状ジオルガノシロキサン重合体(1〜8量体);又はこれらの混合物をいう(上記式中、MはR3SiO1/2単位、DはR2SiO2/2単位を示し、Rは独立に炭素原子数1〜10、特には、炭素原子数1〜6、とりわけ炭素原子数1〜3の1価炭化水素基、典型的には、脂肪族不飽和基を除く1価炭化水素基を示し、Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基が挙げられるが、典型的にはアルキル基、特にはメチル基である。)。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、シリコーンゴム硬化物のポストキュア時に用いる乾燥機由来の排出ガス中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで測定することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
従って、本発明は第一に、
シリコーンゴム硬化物のポストキュアを行う乾燥機と、
該乾燥機由来の排出ガスが導入され、該排出ガス中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムに測定する測定装置と、
を備える乾燥機システムを提供する。
【0011】
本発明は第二に、
(a)上記乾燥機システム中の乾燥機によりシリコーンゴム硬化物のポストキュアを行い、該乾燥機システム中の測定装置により該乾燥機由来の排出ガス中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムに測定する工程、および
(b)予め作成した、該乾燥機によりポストキュアを行ったシリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度と該ポストキュアを行ったときに該測定装置で測定した該乾燥機由来の排出ガス中の低分子シロキサン濃度との関係を示す検量線を用いて、工程(a)で測定した低分子シロキサン濃度から工程(a)でポストキュアを行ったシリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度を決定する工程
を含んでなるシリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで評価する方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の乾燥機システムによれば、シリコーンゴム硬化物のポストキュア時に用いる乾燥機由来の排出ガス中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで測定することにより、シリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで評価することができる。よって、シリコーンゴム硬化物を傷つけることなく、かつ、リアルタイムに必要十分なポストキュアを行うことができるので、高い品質を保ったまま、低分子シロキサンを十分に減量させたシリコーンゴム硬化物を高い生産性で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
[乾燥機システム]
本発明の乾燥機システムは、
シリコーンゴム硬化物のポストキュアを行う乾燥機と、
該乾燥機由来の排出ガスが導入され、該排出ガス中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムに測定する測定装置と、
を備える乾燥機システムである。
【0015】
本発明の乾燥機システムは、
前記乾燥機から延びる主排気ラインと、
該主排気ラインから分岐して前記測定装置に接続する分岐排気ラインと、
を更に備えることが好ましい。この場合、該乾燥機由来の排出ガスは、主排気ラインと分岐排気ラインとを経由して、該測定装置に導入される。また、本発明の乾燥機システムは、前記乾燥機に接続する吸気ラインを有してもよい。
【0016】
<乾燥機>
シリコーンゴム硬化物のポストキュアを行う前記乾燥機は、シリコーンゴム硬化物をポストキュアに適した温度、例えば、180〜300℃、好ましくは200〜250℃に加熱することができるものであれば特に限定されず、その例としては、熱風乾燥機等が挙げられる。本発明で用いる乾燥機は、乾燥機内の空気交換率を上げ、有効にシリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサンを除去するために、吸気ファンと排気ファンがついていることが好ましい。
【0017】
<シリコーンゴム硬化物>
シリコーンゴム硬化物としては、硬化性シリコーンゴム組成物を室温で又は必要に応じ加熱下で硬化させて得られるものであれば特に制限されないが、典型的には、該組成物を所定の形状に成形し、室温で又は必要に応じ加熱下で硬化させて得られるシリコーンゴム成形物が用いられる。該組成物としては、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)含有化合物及び白金族金属系触媒を硬化剤として用いる付加反応硬化型シリコーンゴム組成物、ならびに、有機過酸化物を硬化剤として用いる有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物が一般的である。該組成物の形態(性状)は、ミラブルタイプ(即ち、室温で流動性のない半固体状)でも液状タイプでもよい。
【0018】
<測定装置>
前記乾燥機由来の排出ガスが導入される前記測定装置は、該排出ガス中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムに測定することができるものであれば特に限定されない。該測定装置としては、例えば、赤外線シロキサン分析装置等が挙げられるが、リアルタイムでの測定を簡便かつ正確に行うことができる点で、赤外線シロキサン分析装置が好ましい。
【0019】
赤外線シロキサン分析装置は、赤外線の吸収量から前記排出ガス中の有機系シロキサン濃度および無機系シロキサン濃度を測定できる測定装置であり、好ましくは波数1250〜770cm-1の赤外線の吸収を検出する装置および波数850〜770cm-1の赤外線の吸収を検出する装置を有してなり、波数1250〜770cm-1の赤外線の吸収量および波数850〜770cm-1の赤外線の吸収量から、排出ガス中の有機系シロキサン濃度および無機系シロキサン濃度を算出できる測定装置である。
【0020】
具体的には、これらの吸収量に基づいて、次のとおりにして排出ガス中の低分子シロキサン濃度を算出することができる。光源から放出された赤外線は、それぞれ試料セル又は比較セル(ブランク)を通過した後に検出セルに入る。試料セルを通過する赤外線が試料ガス中の低分子シロキサンによって吸収されると、試料セルを通過して検出セルに入射する赤外線を比較セルを通過して検出セルに入射する赤外線との間で光量に差が生じる。検出セルによりこの光量の差を検知して予め作成した光量差とシロキサン濃度との相関関係を表す検量線に基づいて、低分子シロキサン濃度を算出する。比較セル中に封入するガスとしては、窒素、空気などの、測定波数に吸収を有しないガスが使用できる。検出セル中に封入するガスとしては、アンモニアなどの測定波数に吸収を有するものが使用できる。
【0021】
本発明で用いる赤外線シロキサン分析装置では、特に、低分子シロキサン濃度が50ppm未満である排出ガス中の低分子シロキサン濃度を良好に測定することができる。そこで、排出ガス中の低分子シロキサン濃度が50ppm以上である場合には、希釈後の低分子シロキサン濃度が50ppm未満となるように、該排出ガスを任意のガスにより所定の希釈率で希釈した後に、赤外線シロキサン分析装置に導入して低分子シロキサン濃度を測定してもよい。任意のガスとしては、赤外線の吸収波数が低分子シロキサンによる赤外線吸収の測定を妨げない領域にあるものであれば特に制限されず、例えば、窒素、空気等が挙げられる。
【0022】
前記測定装置に導入される排出ガスの温度は、水分による干渉の問題を回避するという観点から、好ましくは40℃以下(例えば0〜40℃)に制御され、より好ましくは0〜10℃に制御される。そのためには排気ラインを冷却することが好ましい。冷却方法としては、例えば、冷却水循環装置を用いて、排気ライン(主排気ライン、分岐排気ライン又は両方)を冷却する方法が挙げられる。
【0023】
浮遊微粒子が排出ガス中に存在していると、該排出ガス中の低分子シロキサン濃度の測定精度が低下する場合がある。例えば、前記測定装置として赤外線シロキサン分析装置を用いる場合、測定波数域、例えば、1250〜770cm-1の波数域に吸収を有する浮遊微粒子が排出ガス中に存在していると、該排出ガス中の低分子シロキサン濃度の測定精度が低下することがある。そこで、このような測定精度の低下を回避するために、該測定装置に導入される排出ガスとしては、ポアサイズ10μm以下の浮遊微粒子除去用ガスフィルターを通過したガスを用いることが好ましい。このようなガスフィルターを通過することにより該排出ガス中からは浮遊微粒子が除去される。浮遊微粒子が排出ガスから除去される限りガスフィルターの装着位置は特に限定されないが、前記測定装置への排出ガスの導入口の手前に装着することが好ましい。該ガスフィルターとしては、シリコン系の物質を使用していない限り、一般的なガスフィルターが使用できる。ガスフィルターのポアサイズは、通常、10μm以下であり、0.01〜5μmであることが好ましい。該ポアサイズが10μmを超えると、排出ガス中の浮遊微粒子を十分に除去することができない場合がある。
【0024】
<排気ライン>
本発明の乾燥機システムが前記主排気ラインと前記分岐排気ラインとを備える場合、乾燥機由来の排出ガスは該主排気ラインを経て、又は該主排気ラインと該分岐排気ラインとを経て大気中に放出される。該分岐排気ラインは開閉可能であることが好ましい。分岐排気ラインの開閉には、例えば、二方コック、三方コック等を用いることができる。二方コックであれば、例えば、分岐排気ライン上に設置することにより、分岐排気ラインの開閉を行うことができる。また、三方コックであれば、例えば、主排気ラインと分岐排気ラインとの分岐点に設置することにより、分岐排気ラインの開閉を行うことができる。また、分岐排気ラインには流量計が設置されていることが好ましい。これにより、測定装置に供給される排出ガスの流量を調整して該測定装置による低分子シロキサン濃度の測定に適したものとすることができる。バルブ付フローメーターを用いると、分岐排気ラインの開閉と流量測定とを同時に行うことができる。
【0025】
<好ましい実施形態>
図1は本発明の乾燥機システムの一例を示す概略図である。図1に基づいて、本発明の乾燥機システムの好ましい実施形態を説明する。
【0026】
図1に示す乾燥機システム1は、乾燥機2と、該乾燥機2の上部に接続された主排気ライン5と、主排気ライン5から分岐点7において分岐した分岐排気ライン8と、分岐排気ライン8が接続された測定装置10とを有し、更に、測定装置10からガスを排出するための排気ライン8aを有する。乾燥機2には上部に吸気ライン4が接続され、乾燥機2内の底部近くまで延び開口している。吸気ライン4が乾燥機2内部に入る手前には吸気ファン4aが設けられ、吸気ライン4から取り込まれたガスは乾燥機2内へと送られる。また、主排気ライン5には冷却水循環装置6から出て主排気ライン5の周りにらせん状に設けられた後に冷却水循環装置6に戻る冷却管6aが設けられ、主排気ライン5を冷却できるようになっている。更に、分岐排気ライン8上にはバルブ付きフローメーター9が設置され、分岐排気ライン8の開閉および測定装置10に供給される排出ガスの流量測定ができるようになっている。
【0027】
この乾燥機システム1において、乾燥機2にはシリコーンゴム硬化物3が収容され所定の温度でポストキュアが行われる。乾燥機2は吸気ライン4および主排気ライン5を備える。吸気ライン4から取り込まれたガスは乾燥機2内でシリコーンゴム硬化物3から放出された低分子シロキサンと混ざり、排出ガスとして主排気ライン5へと排出される。排出ガスは、冷却水循環装置6から連続的に供給される冷却水により40℃以下に制御され、分岐点7で一部は分岐排気ライン8へと進み、残りはそのまま排気ライン5を経由して大気中に放出される。分岐排気ライン8へと進んだ排出ガスは、分岐排気ライン8上に設置されたバルブ付きフローメーター9を経由して測定装置10に到達し、低分子シロキサン濃度がリアルタイムに測定される。その後、排出ガスは分岐排気ライン8を経由して大気中に放出される。
【0028】
[シリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで評価する方法]
本発明の評価方法は、工程(a)および(b)を含んでなるシリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで評価する方法である。
【0029】
上記工程(a)は、本発明の乾燥機システム中の乾燥機によりシリコーンゴム硬化物のポストキュアを行い、該乾燥機システム中の測定装置により該乾燥機由来の排出ガス中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムに測定する工程である。
【0030】
上記工程(b)は、予め作成した検量線を用いて、工程(a)で測定した低分子シロキサン濃度から工程(a)でポストキュアを行ったシリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度を決定する工程である。該検量線は、
(1)本発明の乾燥機システム中の乾燥機によりポストキュアを行ったシリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度と
(2)該ポストキュアを行ったときに本発明の乾燥機システム中の測定装置で測定した該乾燥機由来の排出ガス中の低分子シロキサン濃度と
の関係を示すものである。上記(1)の低分子シロキサン濃度は、例えば、ポストキュアを行ったシリコーンゴム硬化物をn−テトラデカン含有アセトン等の溶剤に浸漬して低分子シロキサンを抽出し、抽出された低分子シロキサン量をキャピラリーガスクロマトグラフにて測定することにより測定することができる。
【0031】
本発明の評価方法は、上記のとおり、上記工程(a)および(b)を含んでなり、本発明の乾燥機システムを用いるものであり、シリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで評価するのに有用である。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、「低分子シロキサン濃度」(単位:ppm)は、ケイ素原子数3〜10の環状及び直鎖状のオルガノポリシロキサンの合計が排出ガス全体またはポストキュア後のシリコーンゴム硬化物全体に占める含有率(質量換算)を意味する。
【0033】
図1に示す乾燥機システム1中の乾燥機2(内寸(cm):幅60×高さ60×奥行60、外寸(cm):幅119×高さ97×奥行79)内に、15.6kgのシリコーンゴム硬化物3(厚さ2mmのシート状シリコーンゴム成形物)を入れ、200℃でポストキュアを行った。排気は12.96m3/hr(空気換気率60回/hr)の割合で行った。主排気ライン5の一部の周囲に冷却水循環装置6からの冷却水を通水し、乾燥機2からの排出ガスを35℃に冷却した。主排気ライン5および分岐排気ライン8を経て、該排出ガスを500ml/minの流速で、測定装置10(波数1250〜770cm-1の赤外線の吸収を検出する装置と波数850〜770cm-1の赤外線の吸収を検出する装置とを有してなる赤外線シロキサン分析装置)に導入し、低分子シロキサン濃度を測定した。ポストキュア開始から30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後に排出ガス中の低分子シロキサン濃度を測定した結果を表1に示す。
【0034】
一方、乾燥機システム1を用いて上記のとおり測定した排出ガス中の低分子シロキサン濃度と、ポストキュア後のシリコーンゴム硬化物3中の低分子シロキサン濃度とを対応させるために、上記と同一の条件下で乾燥機システム1を用いて行ったポストキュアの開始から30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後のシリコーンゴム硬化物3を1g、n−テトラデカン(20μg/mL)含有アセトン10mL中に16時間浸漬させ、抽出された低分子シロキサン量をキャピラリーガスクロマトグラフ((株)日立製作所製 G−3500)にて測定した。測定結果をポストキュア後のシリコーンゴム硬化物3中の低分子シロキサン濃度として表2に示す。
【0035】
表1と表2に示されたそれぞれの結果の比較から、乾燥機2からの排出ガス中の低分子シロキサン濃度が50ppm未満(より具体的には48ppm以下)であれば、シリコーンゴム硬化物3中の低分子シロキサン濃度は高く見積もっても600ppm以下(より正確には470ppm以下)であることがわかる。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の乾燥機システムの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0039】
1 乾燥機システム
2 乾燥機
3 シリコーンゴム硬化物
4 吸気ライン
5 主排気ライン
6 冷却水循環装置
7 分岐点
8 分岐排気ライン
9 バルブ付きフローメーター
10 測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴム硬化物のポストキュアを行う乾燥機と、
該乾燥機由来の排出ガスが導入され、該排出ガス中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムに測定する測定装置と、
を備える乾燥機システム。
【請求項2】
前記測定装置が赤外線シロキサン分析装置である請求項1に係る乾燥機システム。
【請求項3】
前記乾燥機から延びる主排気ラインと、
該主排気ラインから分岐して前記測定装置に接続する分岐排気ラインと、
を更に備える請求項1又は2に係る乾燥機システム。
【請求項4】
前記分岐排気ラインが開閉可能である請求項1〜3のいずれか1項に係る乾燥機システム。
【請求項5】
前記分岐排気ラインに流量計が設置されている請求項3又は4に係る乾燥機システム。
【請求項6】
前記赤外線シロキサン分析装置が、波数1250〜770cm-1の赤外線の吸収を検出する装置および波数850〜770cm-1の赤外線の吸収を検出する装置を有してなる請求項2に係る乾燥機システム。
【請求項7】
前記測定装置に導入される前記排出ガスの温度が40℃以下に制御される請求項1〜6のいずれか1項に係る乾燥機システム。
【請求項8】
前記測定装置に導入される前記排出ガスがポアサイズ10μm以下の浮遊微粒子除去用ガスフィルターを通過したガスである請求項1〜7のいずれか1項に係る乾燥機システム。
【請求項9】
(a)請求項1〜8のいずれか1項に記載の乾燥機システム中の乾燥機によりシリコーンゴム硬化物のポストキュアを行い、該乾燥機システム中の測定装置により該乾燥機由来の排出ガス中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムに測定する工程、および
(b)予め作成した、該乾燥機によりポストキュアを行ったシリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度と該ポストキュアを行ったときに該測定装置で測定した該乾燥機由来の排出ガス中の低分子シロキサン濃度との関係を示す検量線を用いて、工程(a)で測定した低分子シロキサン濃度から工程(a)でポストキュアを行ったシリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度を決定する工程
を含んでなるシリコーンゴム硬化物中の低分子シロキサン濃度をリアルタイムで評価する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−137468(P2010−137468A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317185(P2008−317185)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】