説明

シリコーン組成物で電気絶縁体を自動的にコーティングする方法及び装置

本発明は、磁器、ガラス、及びポリマー碍子等の工業用の部品をコーティングする連続自動コーティング装置を提供する。本装置は多段階インライン連続作業から成る。これらの段階は洗浄作業、その後の乾燥及び加熱作業、コーティング作業、及び硬化作業である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、連続自動コーティング装置及び方法に関し、特に、シリコーンゴムコーティング、より詳細には一液型(one-component)室温加硫性(RTV)シリコーンゴムで高電圧線絶縁体等の部品をコーティングするコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
工業用の構造物において用いられる部品は多くの場合、腐食環境に晒されるため、保護されねばならない。例えば、高圧送電線における懸垂碍子等の電気事業(electrical utilities)において用いられる絶縁体は、通常は最小限の電流放電を保つように設計されている。しかしながら、絶縁体表面が汚染されると絶縁体の表面に沿って漏れ電流が発生する可能性がある。このような漏れ電流の量は、絶縁体のフィルムの電圧ストレス及び導電率又は絶縁体の表面の汚染物質に応じて決まる。漏れ電流は絶縁体の表面にアークを生じさせ又は引き起こす可能性があり、遊離炭素及び不揮発性半導体物質の形成等、絶縁体表面に深刻な影響を及ぼす可能性がある。漏れ電流は最終的に、絶縁体の表面にわたって導電路を形成し、事実上、絶縁体を短絡させる。
【0003】
電気絶縁体の外表面は、電圧ストレス、漏れ電流、及び天候の影響を受ける部分であるため、絶縁体の最も重要な部分である。高電圧絶縁体の表面は、工業地帯に見られるように汚染大気と共に雨又は霧等の水分に晒されると、何らかの方法で腐食性雰囲気から保護されない限り広域にわたって腐食を被る可能性がある。他の腐食の可能性がある環境としては、塩分の噴霧がみられる海岸に沿って、また、農薬が広く散布される地域を含む。
【0004】
これらの高電圧線絶縁体用の一液型室温加硫性(RTV)シリコーンゴムコーティングを使用するように、より多くの電気事業が切り換えられている。絶縁体の表面を非導電性材料でコーティングすることによって、このコーティングにより、耐アーク性、疎水性、及びかかる電気絶縁体にかかる応力に耐性のある向上した絶縁がもたらされる。これにより、定期保守間に絶縁体の錫が増加し、また、絶縁体の全寿命が増す。このようなコーティングの例は、例えば、本出願人の先の米国特許及び米国出願、具体的には、2004年12月21日に発行された第6,833,407号、2002年8月20日に発行された第6,437,039号、1994年7月5日に発行された第5,326,804号、2004年1月8日に公開された第2004/0006169号、及び2003年6月19日に公開された第2003/0113461号に示されている。
【0005】
なお、電気絶縁体のほかに、工業用の構造物用の他の部品も、本発明の自動塗布及び方法等の自動塗布及び方法から有益性を得るであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの絶縁体は、地面の上で手動によってコーティングされ、架空送電線に張られる。これは、特に工業先進国の場合では、労力及び費用が大幅にかかるだけでなく時間もかかる。したがって、多数の絶縁体をコーティングする費用効果的な迅速な方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[発明の概要]
本発明は、シリコーンエラストマーコーティングで磁器、ガラス、及びポリマー碍子等の工業用の部品をコーティングする連続自動コーティング装置を提供する。本装置は、多段階インライン連続作業から成る。これらの段階は洗浄作業、その後の乾燥及び加熱作業、コーティング作業、及び硬化作業である。
【0008】
本発明の一態様は、インライン連続作業において、シリコーンエラストマーコーティングで工業用の部品を自動的にコーティングする装置を提供する。
当該装置は、上記工業用の部品を保持し、かつ自動化された装置内において当該部品を移動させる、搬送手段と、
上記部品の表面を洗浄する、洗浄ステーションと、
上記シリコーンエラストマーコーティングの付着を促進させるために、上記洗浄された部品の表面を乾燥させ、当該部品の表面を加熱させる、乾燥及び加熱ステーションと、
上記部品の露出面に硬化性のシリコーンエラストマー組成物をコーティングする、コーティングステーションと、
上記シリコーンエラストマー組成物の硬化を促進させる、硬化ステーションとを備えている。
【0009】
本発明の好適な実施形態は添付の図面において示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[好適な実施形態の詳細な説明]
本発明は、磁器、ガラス、及びポリマー碍子等の工業用の部品をシリコーンコーティング組成物でコーティングする連続自動コーティング装置を対象とする。本装置は、図1に示すような多段階インライン連続作業から成る。本装置の第1の段階は洗浄であり、絶縁体の表面にオイル、グリース、塵埃、又は絶縁体表面へのシリコーンコーティングの付着の妨げとなる可能性のある他の汚染物等のいかなる物質もないことを確実にするための始動である。絶縁体の洗浄は、蒸気洗浄、温水スプレー、温水ブラスト、溶剤ワイピング、又はドライアイスブラスト等、一般的に用いられる方法のいずれかによって達成されてもよい。好ましくは、洗浄作業は蒸気洗浄又は温水ブラストのいずれかを用いる。洗浄効果を高めるために、洗剤及び他の洗浄助剤を洗浄液に添加して絶縁体の表面から有機物質又は他の汚染物を除去するのに役立たせてもよい。絶縁体は、洗浄液で洗浄されると、好ましくは、清浄蒸気又は温水ブラストですすがれる。
【0011】
絶縁体は、洗浄されると、乾燥及び加熱装置に通され、そこで、絶縁体に残存しているいかなる水分もこの装置内で蒸発される。好ましくは、上記装置は絶縁体の表面にわたって加熱空気を移動させて乾燥及び加熱を高める。最も好ましくは、これは、約40℃〜150℃、好ましくは40℃〜80℃、より好ましくは約60℃で装置内に空気を吹き付ける温風送風機を使用することによって達成される。乾燥段階の際、絶縁体はまた、所望の温度レベルに加熱される。絶縁体のこのような加熱は、絶縁体の表面へのシリコーン組成物の塗布や硬化に役立つ。
【0012】
絶縁体は、乾燥及び加熱されると、コーティング装置に通され、そこで、絶縁体の表面がシリコーン組成物の均一なコーティングでコーティングされる。シリコーン組成物は、好ましくは、本発明者らの先の特許及び出願、具体的には、2004年12月21日に発行された第6,833,407号、2002年8月20日に発行された第6,437,039号、1994年7月5日に発行された第5,326,804号、特に、1994年7月5日に発行された米国特許第5,326,804号に示されている一液型RTV組成物(one part RTV compositions)、に教示されているような組成物である。これらの先の特許の開示は参照により本明細書に援用される。このコーティングは、多数の異なるプロセスによって達成されてもよい。一プロセスでは、コーティングは、ディップコーティングによって塗布され、ここでは、絶縁体がシリコーン材料の槽に浸されて、シリコーン材料が絶縁体の表面を覆うと共に付着することが可能となる。好ましくは、絶縁体のコーティングを均一に維持するために、絶縁体表面に所望のコーティングレベルをもたらすのに十分な速度で絶縁体を回転させてもよい。また、シリコーン組成物の粘度は、組成物が絶縁体の表面全体をコーティングすることができるように制御される。ディップコーティングを用いる場合、浸漬領域を窒素雰囲気に維持してシリコーン組成物の表面が剥がれないようにする。
【0013】
シリコーン組成物はまた、スプレー手段によって絶縁体の表面に塗布されてもよい。これは、組成物を絶縁体の表面に導く1つ又は複数のスプレーノズルを用いて、組成物の均一なコーティングで当該表面をコーティングすることで達成され得る。好ましくは、絶縁体の表面全体を均一にコーティングするために、ノズルからの組成物のスプレーが絶縁体の表面全体をコーティングするように絶縁体を回転させてもよい。さらに好ましくは、絶縁体の上面及び下面の双方をコーティングするために、スプレー装置内に、少なくとも2つのノズルが、すなわち、1つは装置内の絶縁体の通路の上側に、1つは装置内の絶縁体の通路の下側に設けられる。或る形態の絶縁体に対する状況下においては、図3に示すように絶縁体の上面及び下面の一方又は双方に1つより多くのノズルを設けることも有益であろう。或いは、絶縁体の露出面にスプレーするようにプログラムされていて、スプレーノズルを有するロボット装置を用いてもよい。
【0014】
シリコーン組成物が絶縁体の表面に塗布されると、次いで、そのシリコーンコーティングを硬化させる。好ましくは、シリコーン組成物の硬化を高めるために、コーティングされた絶縁体を一液型RTVシリコーンコーティング用のオーブン等の硬化チャンバーに入れて、コーティングが硬化するのに要する時間量を減らす。好ましくは、RTVシステムの場合では、硬化チャンバー又はオーブンは70〜80%の相対湿度で約60℃に維持される。放射硬化システム等の他の硬化システム、例えばUV硬化の場合では、オーブンには、硬化を開始させると共に促進させるのに適した放射源、例えばUV光照明が設けられる。これらの用途においては、オーブンには窒素雰囲気が与えられるようにしてもよい。揮発性溶剤を用いるコーティングの場合では、揮発性成分を除去するために、防爆チャンバーを備えたフラッシュオーブン(flash oven)が硬化チャンバーの前に設けられる。システムに硬化チャンバー又は硬化部を設けることにより、標準硬化時間が大幅に短縮される。例えば、一液型RTVシリコーンの場合での数時間の標準硬化時間が一時間未満に短縮される。これにより、絶縁体は、品質が向上すると共にコーティング厚の一様性が高まり、コーティングされた絶縁体の時間当たりの生産速度の増大と相まって、生産費用を大幅に削減することができる。
【0015】
コーティングされた絶縁体が適正に硬化すると、次いで、絶縁体は検査され、そして梱包されて最終的な取引先へ出荷される。
【0016】
本発明の自動コーティングラインは、コンベヤシステムを用いて作業の複数の段階のそれぞれに絶縁体を通過させる。好ましくは、用いられる搬送装置は、複数の段階を経る絶縁体を、上述したように回転させて絶縁体の表面の均一な処理も可能にする。一実施形態では、これは、図2に示す電気モータ等、絶縁体を低速度で回転させる回転手段を設けることによって達成される。絶縁体は、回転手段に取り外し自在に締結され、コーティング装置のこれらの段階を通して、回転手段に保持される。装置の複数の段階を通して移動させるコンベヤ手段に沿って、電気モータ及びクランプが配置されている。
【0017】
装置において絶縁体の搬送及び回転を与える他の手段、例えば、デュアルスピードベルト又はチェーン駆動部等を設けるようにしてもよい。2つのベルト又はチェーンが同じ方向に異なる速度で移動するようにして、2つのベルト又はチェーンによって同時に駆動されるギヤに絶縁体用のクランプが接続されようにしてデュアルスピードベルト又はチェーン駆動部を設けるようにしてもよい。上記ギヤ及び取り付けられた絶縁体はラインに沿って移動する際に回転する。
【0018】
或いは、洗浄ステーション及びコーティングステーションのそれぞれにロボットスプレー装置が設けられている場合には、装置内で絶縁体を回転させる必要はないであろう。
【0019】
以下の例は、本発明の好適な実施形態を示すために用いられているものであり、本発明はその実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明の自動コーティング装置の好適な実施形態では、搬送装置は絶縁体を分当たり12回転の回転速度で回転させながら分当たり約5メートルの速度で移動させる。絶縁体は洗浄ステーションにおいて約1分間洗浄され、その後、1分間乾燥される。次いで、絶縁体はスプレーブースにおいて約5秒間コーティングされてから、硬化チャンバーに移動し、絶縁体のコーティングを硬化するためにそこで20分間60℃で加熱される。次いで、絶縁体は包装作業において梱包される。本発明の装置により、1時間の作業ごとに約500個のコーティングされた電気絶縁体の処理量により、高スループットの電気絶縁体コーティングが可能となる。これにより、高電圧絶縁体のコーティングのための労力及び費用が著しく節減される。
【0021】
本発明の各種好適な実施形態を本明細書において詳細に説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなくそれらに変更を行い得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の連続コーティング装置の第1の実施形態の概略図である。
【図2】本発明の搬送装置の好適な実施形態の斜視図である。
【図3】本発明のコーティング用のスプレーノズル配置の好適な実施形態の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インライン連続作業において、シリコーンエラストマーコーティングで工業用の部品を自動的にコーティングする装置であって、
前記工業用の部品を保持し、前記装置内で該部品を移動させる、搬送手段と、
前記部品の表面を洗浄する、洗浄ステーションと、
前記シリコーンエラストマーコーティングの付着を促進させるために、前記洗浄された部品の表面を乾燥させると共に該部品の表面を加熱させる、乾燥及び加熱ステーションと、
前記部品の露出面に硬化性のシリコーンエラストマー組成物のコーティングを塗布する、コーティングステーションと、
前記シリコーンエラストマー組成物の硬化を促進させる、硬化ステーションと
を備える、装置。
【請求項2】
前記硬化性のシリコーンエラストマー組成物は一液型室温加硫性組成物である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記洗浄ステーションは、前記部品の表面に蒸気、温水、又は溶剤を吐出する1つ又は複数のノズルを備える、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記洗浄ステーションは、前記部品の表面に温水ブラストを吐出して該部品の表面を洗浄する複数のノズルを備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記乾燥及び加熱ステーションは、前記部品の表面に温風を吹き付けて該部品の表面を乾燥及び加熱する温風送風機を備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記コーティングステーションは、前記部品の露出面にコーティング組成物を噴霧するようにプログラムされ且つスプレーノズルを有するロボット装置を備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記硬化ステーションは、前記部品の表面上の前記硬化性の室温加硫性シリコーンコーティングの硬化を促進させるように、約60℃で70〜80%の相対湿度の雰囲気を有するチャンバーを備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記搬送手段は、前記部品が解放可能に装着され、前記部品が複数の前記ステーションを通る際に該部品を回転させる回転手段を含み、
該回転手段と装着された前記部品とを複数の前記ステーションに移動させる手段に前記回転手段が取り付けられる、請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−532216(P2008−532216A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556472(P2007−556472)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【国際出願番号】PCT/CA2006/000268
【国際公開番号】WO2006/089420
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(501065753)シーエスエル シリコーンズ インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】