説明

シリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置

【課題】異物の除去率を向上させることができるシリンダヘッド洗浄方法を提供すること。
【解決手段】流路を狭くする狭小空間部Zと、狭小空間部Zより流路を広くする大空間部Yとを含むウォータジャケット15が内部に形成され、ウォータジャケット15に連通する複数の孔部12A〜12R,13,14,16A〜16Cが設けられたシリンダヘッド1を洗浄するシリンダヘッド洗浄方法において、複数の孔部12A〜12R,13,14,16A〜16Cのうち選択した孔部16A,16Cからウォータジャケット15内に洗浄ノズル28A,28Cを挿入し、洗浄ノズル28A,28Cから狭小空間部Zへ向けて洗浄液を噴出し、狭小空間部Zから大空間部Yへ流れた洗浄液を、大空間部Yに連通する孔部16Bからシリンダヘッド1の外部へ排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッド内のウォータジャケットを洗浄するシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンには、重量の軽減や冷却性能の構造その他の目的で、アルミニウム合金製のシリンダヘッドや、シリンダブロックが広く採用されている。このうち、シリンダヘッドは、その内部に、吸気バルブが取り付けられる吸気ポートや、排気バルブが取り付けられる排気ポート、スパークプラグが取り付けられるスパークプラグ孔、燃料を爆発させる燃料室の一部、冷却水を流通させるウォータジャケット等を備える複雑な構造をなす。シリンダヘッドは、通常、吸気ポートや排気ポート、ウォータジャケットなどを一体成形するために、多数の砂中子を用いて鋳造によって形成される。このため、シリンダヘッドには、鋳型から取り出された後、中子を砕いて除去するために、砂抜き穴が設けられている。中子が除去されたシリンダヘッドは、ドリル等でボルト孔を開設されたり、ポートの表面を研磨するなど、機械加工が施される。中子の砂や機械加工で発生した切削屑などの異物がシリンダヘッドの内部に残っていると、エンジンの製品品質を低下させる恐れがある。そこで、従来より、加工済みシリンダヘッドは異物除去のために洗浄されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シリンダヘッドをクランプで把持して回転させ、シリンダヘッドの周りに配置した洗浄ノズルからシリンダヘッドに向けて洗浄液を吐出することにより、シリンダヘッドを洗浄する技術が開示されている。特許文献1記載のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置は、洗浄ノズルをシリンダヘッドに対して近づけたり遠退かせたりするように設け、洗浄ノズルとシリンダヘッドとの距離を常に一定に維持するので、各洗浄ノズルから噴射する洗浄液がシリンダヘッドの全ての洗浄面に効果的に作用し、より優れた洗浄効果を得ることができる。
【0004】
ところが、特許文献1記載のシリンダヘッド洗浄方法は、回転するシリンダヘッドの外側から洗浄液を噴出する。そのため、ウォータジャケット内に浸入する洗浄液は、流速が0.5m/sと小さい上に、流量も少なく、ウォータジャケット内に流れを形成することができなかった。洗浄されたシリンダヘッドは、通常、人がミクロスコープなどでシリンダヘッド内部に残存する異物の有無を確認する目視検査が行われ、発見された異物が1個ずつ手作業で取り除かれる。特許文献1記載のシリンダヘッド洗浄方法で洗浄されたシリンダヘッドは、1個のシリンダヘッドから発見される異物のうち、約80%がウォータジャケット内から発見されていた。よって、特許文献1記載のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置では、ウォータジャケットを十分に洗浄できていなかった。
【0005】
これに対して、特許文献2及び特許文献3では、異物が残存しやすいウォータジャケット内を洗浄する技術を提案している。
【0006】
特許文献2記載のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置は、図24の(a)〜(c)に示す第1〜第3洗浄工程のように、シリンダヘッド101の内部に形成したウォータジャケット102の凹部102a,102b,102cに連通する孔部103c,103d,103eに圧縮空気を送った状態で、ウォータジャケット102に連通する孔部103a,103b,103fに洗浄ノズル104,105,106を順番に切り替えて密着させ、密着した洗浄ノズル104,105,106から洗浄液Wを噴出する。これにより、ウォータジャケット102の凹部102a,102b,102cの近傍には、異なる流れが形成され、凹部102a,102b,102cに残存する異物が洗浄液Wと共にシリンダヘッド101の外部へ排出され、除去される。
【0007】
また、特許文献3記載のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置は、図25に示すように、移動手段209によって、洗浄槽201に設けた複数のノズル204,205,206,207,208とシールパッド213を、シリンダヘッド210に開設した複数の孔部210b〜210jのうち、選択した孔部210b〜210gに密着させる。そして、洗浄液処理装置202においてフィルタ212で濾過された洗浄液Wを、洗浄液供給ポンプ203から各ノズル204〜208へ送り、孔部210b〜210gへ高圧で噴出する。洗浄液Wは、ウォータジャケット210a内で乱流を生じながら流れを形成し、ウォータジャケット210a内を洗浄する。ウォータジャケット210aに残存する異物は、洗浄液Wの流れに巻き込まれ、孔部210h,210i,210jから洗浄液Wと共に洗浄槽201に排出される。
【0008】
【特許文献1】特許第2589637号公報
【特許文献2】特開昭61−153187号公報
【特許文献3】特開2007−192089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3記載のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置は、洗浄ノズル104〜106,204〜208から噴出した洗浄液が、ウォータジャケット102,210aの流路が狭くなる部分(以下「狭小空間部」という。)に到達する前に流速や流体圧を低下させ、狭小空間部に引っ掛かった異物を除去することができなかった。具体的に説明すると以下の通りである。
【0010】
ウォータジャケット102,210aは、例えば、スパークプラグ孔の孔壁とインテークポートの壁との間で形成される流路幅が4.67mm程度、スパークプラグ孔の孔壁とエキゾーストポートの壁との間で形成される流路幅が3.50mm程度となり、流路が狭くなる狭小空間部を多数備える。砕いた中子には、上記流路幅3.50mmより大きいものがある。また、切削屑には、カールや三日月型などをしているものが多い。そのため、ウォータジャケット102,210aの狭小空間部には、砕いた中子や切削屑などの異物が引っ掛かかりやすく、取れにくい。
【0011】
これに対して、特許文献2記載のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置は、図24(b)、(c)に示すように、シリンダヘッド101の上面に開口する孔部103a,103bに洗浄ノズル104〜106をそれぞれ密着させて、洗浄液Wをウォータジャケット102の下面側に向かって噴出する。洗浄ノズル104〜106から噴出された洗浄液Wは、ウォータジャケット102の下壁にぶつかってエネルギーを大きく減衰させてから、孔部103f,103g側に流れる。また、特許文献2記載のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置は、図24(a),(c)に示すように、シリンダヘッド101の側面に開口する孔部103fに洗浄ノズル106を密着させて洗浄液Wを噴出する場合にも、洗浄液Wが最初にウォータジャケット102の内壁にぶつかってエネルギーを大きく減衰させてから、孔部103fから離れた孔部103a,103b,103fへ流れる。このため、特許文献2記載のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置は、洗浄液が狭小空間部に到達する前にエネルギーを減衰して流速や流体圧を低下させ、狭小空間部に引っ掛かった異物を押し流して除去することができなかった。
【0012】
また、特許文献3記載のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置は、シリンダヘッド201の上面と側面に開口する孔部210b,210d〜210gに洗浄ノズル204〜208を密着させ、洗浄液Wを噴出する。この場合にも、洗浄液は、噴出直後にウォータジャケット210aの内壁にぶつかってエネルギーを減衰させ、狭小空間部に到達するころには、流速や流体圧が噴出時より著しく低下させるため、狭小空間部に引っ掛かった異物を押し流して除去することができなかった。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、異物の除去率を向上させることができるシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置は、次のような構成を有している。
(1)流路を狭くする狭小空間部と、前記狭小空間部より前記流路を広くする大空間部とを含むウォータジャケットが内部に形成され、前記ウォータジャケットに連通する複数の孔部が設けられたシリンダヘッドを洗浄するシリンダヘッド洗浄方法において、前記複数の孔部のうち選択した孔部から前記ウォータジャケット内に洗浄ノズルを挿入し、前記洗浄ノズルから前記狭小空間部へ向けて前記洗浄液を噴出し、前記狭小空間部から前記大空間部へ流れた洗浄液を、前記大空間部に連通する前記孔部から前記シリンダヘッドの外部へ排出する。
【0015】
(2)(1)に記載の発明において、前記大空間部を挟んで前記洗浄液を対向させるように前記孔部を選択する。
【0016】
(3)(1)又は(2)に記載の発明において、前記シリンダヘッドは、スパークプラグを取り付ける複数のスパークプラグ孔と、前記複数のスパークプラグ孔に対応して設けた複数の燃焼室にそれぞれ連通して吸気を行うインテークポートと、前記複数の燃焼室に連通して排気を行うエキゾーストポートとを備え、前記狭小空間部は、前記スパークプラグ孔の孔壁と前記インテークポートの壁或いは前記エキゾーストポートの壁との間に形成された空間であり、前記大空間部は、前記スパークプラグ孔の孔壁間に形成された空間である。
【0017】
(4)(1)乃至(3)の何れか一つに記載の発明において、前記洗浄ノズルは、前記ウォータジャケット内で回転する。
【0018】
(5)(1)乃至(4)の何れか一つに記載の発明において、前記選択した孔部に前記洗浄ノズルを挿入して洗浄を実施した後、選択しなかった前記孔部に前記洗浄ノズルを挿入して洗浄を実施する。
【0019】
(6)(1)乃至(5)の何れか一つに記載の発明において、前記大空間部に連通する孔部の一つを前記洗浄液の排出孔部とした場合に、前記排出孔部の両側に設けた孔部を前記洗浄ノズルを挿入する孔部として選択する。
【0020】
(7)(1)乃至(6)の何れか一つに記載の発明において、前記シリンダヘッドを洗浄する際に下面となる面に設けた孔部から前記ウォータジャケットに前記洗浄液を供給することを特徴とする。
【0021】
(8)請求項1乃至請求項7の何れか一つに記載するシリンダヘッド洗浄方法において、前記洗浄ノズルが貫通される第1流路と、前記第1流路から分岐して前記シリンダヘッドの側面側に開口する第2流路とを備える洗浄液排出部材を、前記シリンダヘッドの上面に開口する孔部に前記第1流路を連通させるように前記シリンダヘッドの上面に配置し、前記選択した孔部に対応する前記洗浄ノズルを前記第1流路から前記ウォータジャケット内に突出させた第1停止位置で停止させ、前記選択した孔部以外の孔部に対応する前記洗浄ノズルを前記第2流路が前記第1流路から分岐する第2停止位置で停止させる。
【0022】
(9)(1)乃至(8)の何れか1つに記載の発明において、前記複数の孔部のうち前記シリンダヘッドの側面に開口する孔部に近接する洗浄ノズルを揺動させることにより、前記狭小空間部へ向けて前記洗浄液を噴出し、前記狭小空間部から前記大空間部へ流れた洗浄液を、前記大空間部に連通する前記孔部から前記シリンダヘッドの外部へ排出する。
【0023】
(10)流路を狭くする狭小空間部と、前記狭小空間部より前記流路を広くする大空間部とを含むウォータジャケットが内部に形成され、前記ウォータジャケットに連通する複数の孔部が設けられたシリンダヘッドを洗浄するシリンダヘッド洗浄装置において、前記シリンダヘッドを位置決め保持する載置台と、前記載置台の上方に、前記載置台に保持される前記シリンダヘッドの上面に開口する前記孔部に対応して配置される第1洗浄ノズルと、前記第1洗浄ノズルを前記載置台に対して上下垂直方向に直線往復運動させる駆動手段と、を有する。
【0024】
(11)(10)に記載の発明において、前記駆動手段は、前記洗浄液を噴出する前記第1洗浄ノズルを回転させるものである。
【0025】
(12)(10)又は(11)に記載の発明において、前記載置台に保持される前記シリンダヘッドの下面に開口する前記孔部に前記洗浄液を供給する第2洗浄ノズルを有する。
【0026】
(13)(10)乃至(12)の何れか一つに記載の発明において、前記シリンダヘッドの上面に配置され、前記第1洗浄ノズルが貫通する第1流路と、前記第1流路から分岐して側方に開口する第2流路とを有する洗浄液排出部材を有し、前記駆動手段は、前記第1洗浄ノズルを前記第1流路から前記ウォータジャケット内に突出させる第1停止位置と、前記第2流路が前記第1流路から分岐する第2停止位置とで停止させるものである。
【0027】
(14)(10)乃至(13)の何れか1つに記載の発明において、前記シリンダヘッドの側面に開口する前記孔部に近接可能に設けられた第3洗浄ノズルと、前記第3洗浄ノズルを揺動させる揺動装置と、を有する。
【発明の効果】
【0028】
本発明のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置は、シリンダヘッドの複数の孔部のうち選択した孔部に洗浄ノズル(第1洗浄ノズル)を挿入又は近接させ、ウォータジャケットの狭小空間部に引っ掛かった異物に向けて洗浄液を直接噴出する。洗浄液は、洗浄ノズルから噴射された際の初速や流量、流体圧などを維持したまま異物に当たり、異物を狭小空間部から大空間部へ押し流す。大空間部へ流れた異物は、洗浄液とともに大空間部に連通する孔部からシリンダヘッドの外部へ排出され、除去される。このように、本発明のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置によれば、ウォータジャケットの狭小空間部に引っ掛かった異物でも十分に除去することが可能なので、異物の除去率を向上させることができる。
【0029】
これによって、人が、本発明のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置で洗浄したシリンダヘッドの内部を目視検査したときに異物の発見率が減少し、手作業で異物を除去する手間が大幅に軽減する。
【0030】
本発明のシリンダヘッド洗浄方法は、大空間部を挟んで洗浄液を対向させるように選択した孔部に洗浄ノズルを挿入又は近接させ、洗浄ノズルから噴出した洗浄液を大空間部で合流させて大空間部に連通する孔部から排出するので、異物を別の狭小空間部に再侵入させることなく、シリンダヘッドの外部へ排出することができる。
【0031】
本発明のシリンダヘッド洗浄方法は、スパークプラグ孔の孔壁とインテークポートの壁或いはエキゾーストポートの壁との間に形成された狭小空間部から、スパークプラグ孔の孔壁間に形成された大空間部へ向けて洗浄液を噴出するので、狭小空間部と大空間部とが短距離で連通しており、異物を他の狭小空間部に再侵入させることなく除去することができる。
【0032】
本発明のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置は、選択した孔部に挿入又は近接させた洗浄ノズルを回転或いは揺動させて洗浄を行うので、1個の孔部から複数の狭小空間部を狙って洗浄液を噴出して洗浄することができ、洗浄効率が良い。
【0033】
本発明のシリンダヘッド洗浄方法は、選択した孔部に洗浄ノズルを挿入してウォータジャケットの洗浄を実施し、所定の洗浄空間から異物を除去した後、選択しなかった孔部に洗浄ノズルを挿入してウォータジャケットの洗浄を実施し、別の洗浄空間から異物を除去する。このように、本発明のシリンダヘッド洗浄方法は、ウォータジャケットを複数の洗浄空間に分けて間欠的に洗浄し、ウォータジャケット内を満遍なく洗浄するので、ある狭小空間部から取り除いた異物が他の狭小空間部に引っ掛かってウォータジャケット内に残ることを防止できる。
【0034】
本発明のシリンダヘッド洗浄方法は、大空間部に連通する孔部の一つを洗浄液の排出孔部とした場合に、その排出孔部の両側に設けた孔部を洗浄ノズルを挿入する孔部として選択するので、洗浄ノズルから噴出した洗浄液が大空間部で対向してぶつかり合い、排出孔部からシリンダヘッドの外部へ流れやすい。
【0035】
本発明のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置は、シリンダヘッドを洗浄する際に下面となる面に設けた孔部に洗浄液を供給し、ウォータジャケットを水中と疑似状態にする。これにより、ウォータジャケットに残存する異物に浮力が作用し、狭小空間部などから異物を取り除きやすくなる。また、洗浄ノズルから噴出された洗浄液は、ウォータジャケット内を水浸させない気中状態と比べて、狭小空間部から大空間部へ流れる間にエネルギーを減衰させにくい。このような本発明のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置によれば、洗浄液が噴出後から狭小空間部を通過して大空間部に到達するまでの間に流速や流体圧が減少しにくく、異物を狭小空間部から大空間部へ押し流して除去しやすいので、異物の除去率をより一層向上させることができる。
【0036】
本発明のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置は、シリンダヘッドの洗浄時にシリンダヘッドの上面に開口する孔部に洗浄液排出部材の第1流路を接続し、第1洗浄ノズルを第1流路に挿入する。そして、選択した孔部に対応する第1洗浄ノズルをウォータジャケット内に挿入して第1停止位置で停止させる一方、選択しなかった孔部に対応する第1洗浄ノズルを第2流路が第1流路から分岐する第2停止位置で停止させる。それから、選択した孔部に挿入した第1洗浄ノズルから洗浄液を噴出する。選択されなかった孔部に連通する第1流路は、上方開口部が第1洗浄ノズルに塞がれている。そのため、洗浄液は、選択されたかった孔部に接続する第1流路から第2流路を流れて、シリンダヘッドの側面側に流出する。よって、本発明のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置によれば、シリンダヘッドの外部に除去した異物がシリンダヘッド内に再侵入することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に、本発明に係るシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0038】
<シリンダヘッドの概略構成>
図1は、本発明の実施形態に係り、シリンダヘッド1のシリンダカバー(図示せず)に接触する面(上面)1A側から見た上面図である。図2は、図1に示すシリンダヘッド1のシリンダボディ(図示せず)に接触する面(下面)1B側から見た下面図である。図3は、図1に示すシリンダヘッドを図1に示す矢印A方向から見た側面図である。図4は、図3のB−B断面図である。図5は、図4のC−C断面図である。
【0039】
図1〜図5に示すシリンダヘッド1は、4気筒エンジンに使用されるものである。シリンダヘッド1は、アルミ合金を材質とし、複数の燃焼室7Aに連通するように形成された部品の取付孔2A,3A,4A,5A,6A…や、冷却水が流れるウォータジャケット15などを備える複雑な形状をなす。
【0040】
図2に示すように、シリンダヘッド1は、シリンダブロック(図示せず)に接触する下面1Bに、エンジンの気筒数に対応して4個の燃焼室7A,7B,7C,7Dが形成されている。図1及び図2、図4、図5に示すように、シリンダヘッド1は、各燃焼室7A,7B,7C,7Dに対応して、スパークプラグ(図示せず)を取り付けるためのスパークプラグ孔2A,2B,2C,2Dが、上面1Aから下面1Bに貫通して設けられている。そして、シリンダヘッド1は、各スパークプラグ孔2A,2B,2C,2Dの周りに、吸気バルブを取り付けるための一対の吸気ポート3A,3B,3C,3D,4A,4B,4C,4Dと、排気バルブを取り付けるための一対の排気ポート5A,5B,5C,5D,6A,6B,6C,6Dが、上面1Aから下面1Bに貫通して設けられている。図2に示すように、シリンダヘッド1の下面1Bには、位置決め孔9,9が対角位置に設けられている。
【0041】
図4に示すように、一対の吸気ポート3A,3B,3C,3D,4A,4B,4C,4Dは、インテークマニホールド(図示せず)に接続されるインテークポート8A,8B,8C,8Dに連通している。また、一対の排気ポート5A,5B,5C,5D,6A,6B,6C,6Dは、エキゾーストマニホールド(図示せず)に接続されるエキゾーストポート10A,10B,10C,10Dに連通している。
【0042】
図4及び図5に示すように、シリンダヘッド1の内部(上面1Aと下面1Bとの間)には、スパークプラグ孔2A,2B,2C,2Dの孔壁やインテークポート8A,8B,8C,8Dの壁、エキゾーストポート10A,10B,10C,10Dの壁の間に、ウォータジャケット15が形成されている。ウォータジャケット15は、シリンダヘッド1の右側面1Cに開口するウォータジャケット口13(「孔部」の一例)と、シリンダヘッド1の左側面1Dに開口する冷却水出力口14に連通している。図2に示すように、シリンダヘッド1の下面には、エンジン組立時に、シリンダブロック(図示せず)に形成したウォータジャケット(図示せず)に接続されて連通する冷却水連通路12A〜12R(「孔部」の一例)が開口している。
【0043】
図5に示すように、ウォータジャケット15は、スパークプラグ孔2A,2B,2C,2Dの孔壁とインテークポート8A,8B,8C,8Dの壁との間に形成される流路の幅が4.67mm、スパークプラグ孔2A,2B,2C,2Dの孔壁とエキゾーストポート10A,10B,10C,10Dの壁との間に形成される流路の幅が3.50mmと狭くなっており、流路が狭い複数の狭小空間部ZA1,ZA2,ZA3,ZA4,ZB1,ZB2,ZB3,ZB4,ZC1,ZC2,ZC3,ZC4,ZD1,ZD2,ZD3,ZD4が設けられている。狭小空間部ZA1,ZA2…には、それらの狭小空間部ZA1,ZA2,ZA3…より流路幅を広くする大空間部YA,YB,YC,YD,YEがそれぞれ連通している。大空間部YA,YB,YC…には、冷却水連通路12A〜12Rがそれぞれ連通している。また、大空間部YB,YC,YDには、砂抜き孔16A,16B,16C(図1参照)が連通している。
【0044】
図1〜図5に示すシリンダヘッド1は、複数の砂中子を用いた鋳造や機械加工などによって、ウォータジャケット15やスパークプラグ孔2A…、吸気ポート3A,4A…、排気ポート5A,6A…、ウォータジャケット口13、冷却水出力口14、冷却水連通路12A〜12Rなどが形成されている。ウォータジャケット15を形成するための砂中子は、鋳造後に砕かれて、砂抜き孔16A,16B,16C(「孔部」の一例)等から除去される。本実施形態では、シリンダヘッド1は、下面1Bに設けた冷却水連通路12D,12E,12Fのほぼ真上(同軸上)に砂抜き孔16A,16B,16Cが設けられている。
【0045】
<シリンダヘッド洗浄装置>
図6は、図1に示すシリンダヘッド1を洗浄するシリンダヘッド洗浄装置20の概略構成図である。図7は、図6のD−D断面図である。図10及び図11は、図1に示すシリンダヘッド1と図6に示す第1〜第3洗浄ノズル28A,28B,28C,32A〜32F,34A,34Bとの位置関係を示す図である。尚、図10のPは、狭小空間部ZA1,ZA2…に引っ掛かった異物を示す。
【0046】
図6及び図7に示すように、シリンダヘッド洗浄装置20は、外枠21が下段枠21Aと上段枠21Bとで構成されている。下段枠21Bには、シリンダヘッド1を載置する載置台22が地面に対して水平に架設されている。シリンダヘッド1は、下面1Bを載置台22に接触させるように、載置台22にセットされる。
【0047】
載置台22の下方には、可動プレート31が配置されている。可動プレート31は、油圧シリンダ33に連結して図中上下垂直方向に直線往復運動する。可動プレート31には、6本の第2洗浄ノズル32A,32B,32C,32D,32E,32Fが立設されている。図10及び図11に示すように、第2洗浄ノズル32A〜32Fは、シリンダヘッド1の冷却水連通路12A〜12Fに対応して可動プレート31に配置されている。第2洗浄ノズル32A〜32Fは、断面形状がシリンダヘッド1の冷却水連通路12A〜12Fに内接可能な円柱形状をなし、先端部に洗浄液を噴出する噴出口38A,38B,38Cが設けられている。第2洗浄ノズル32A〜32Fは、図示しない制御バルブに接続され、洗浄液の供給と停止を制御されている。
【0048】
図6及び図7に示すように、載置台22は、油圧シリンダ33によって上昇した可動プレート31が挿入される開口部22aを備える。載置台22は、開口部22aの外側の対角位置に位置決めピン39,39が立設され、その位置決めピン39,39をシリンダヘッド1の位置決め孔9,9に挿入することによりシリンダヘッド1を位置決め保持する。油圧シリンダ33は、載置台22に位置決めされたシリンダヘッド1の冷却水連流路12A〜12Fの開口部に第2洗浄ノズル32A〜32Fを近接させる位置まで、可動プレート31を上昇させる。
【0049】
図6及び図7に示すように、載置台22の上方には、第1洗浄ノズル28A,28B,28Cが配置されている。図10及び図11に示すように、第1洗浄ノズル28A,28B,28Cは、載置台22に位置決め保持されるシリンダヘッド1の上面1Aに開口する砂抜き孔16A,16B,16Cに対応して設けられている。第1洗浄ノズル28A,28B,28Cは、図11に示すように、先端部側面に洗浄液を噴出する噴出口29A,29B,29Cが設けられている。第1洗浄ノズル28A,28B,28Cは、図示しない制御バルブに接続され、洗浄液の供給と停止を制御される。
【0050】
図6及び図7に示すように、上段枠21Bには、第1洗浄ノズル28A,28B,28Cを図中上下垂直方向に直線運動させる直動装置41A,41B,41Cが固定されている。そして、第1洗浄ノズル28A,28B,28Cは、駆動モータ30A,30B,30Cに連結し、正方向K又は逆方向−Kに回転可能にされている。
【0051】
また、載置台22の上方には、洗浄液排出部材23が配置されている。油圧シリンダ27は、下段枠21Aに固定され、洗浄液排出部材23に連結されている。油圧シリンダ27は、洗浄液排出部材23を載置台22に対して図中上下垂直方向に直線往復運動させ、洗浄液排出部材23をシリンダヘッド1の上面1Aに当接又は離間させる。
【0052】
洗浄液排出部材23は、底面積がシリンダヘッド1より大きい薄い直方体板状をなす。洗浄液排出部材23は、シリンダヘッド1に当接する面(底面)に、挿入部24A,24B,24Cが突設されている。挿入部24A,24B,24Cは、シリンダヘッド1の上面1Aに開口する砂抜き孔16A,16B,16Cに嵌合可能な形状(円柱形状)をなす。挿入部24A,24B,24Cは、砂抜き孔16A,16B,16Cに対応するように洗浄液排出部材23に設けられている。
【0053】
図8は、図6に示す洗浄液排出部材23の外観斜視図である。図9は、図8のE−E断面図である。
洗浄液排出部材23には、第1流路25A,25B,25Cと第2流路26A,26B,26Cが形成されている。第1流路25A,25B,25Cは、洗浄液排出部材23の上面から挿入部24A,24B,24Cを介して下面側に開口するように、洗浄液排出部材23に貫通して形成されている。一方、第2流路26A,26B,26Cは、第1流路25A,25B,25Cから分岐して洗浄液排出部材23の側面に開口するように、洗浄液排出部材23に形成されている。
【0054】
図9に示すように、洗浄液排出部材23の第1流路25A,25B,25Cには、第1洗浄ノズル28A,28B,28Cが摺動可能に挿通される。直動装置41A,41B,41C(図6及び図7参照)は、シリンダヘッド1の洗浄作業中には、図9に示すように、第1洗浄ノズル28A,28B,28Cの先端部を挿入部24A,24B,24Cの下面からウォータジャケット15内に突出させる「第1停止位置X1」、又は、第2流路26A,26B,26Cが第1流路25A,25B,25Cから分岐する「第2停止位置X2」に停止させる。尚、直動装置41A,41B,41Cは、シリンダヘッド1を洗浄しない間、第1洗浄ノズル28A,28B,28Cを第1流路25A,25B,25Cから抜き出した「退避位置」で停止させる(図6及び図7参照)。
【0055】
図6に示すように、シリンダヘッド洗浄装置20は、シリンダヘッド1を挟んで左右両側に、第3洗浄ノズル34A,34Bが配置されている。第3洗浄ノズル34A,34Bは、下段枠21Aに固定された油圧シリンダ35A,35Bと揺動装置40A,40Bに連結されている。油圧シリンダ35A,35Bは、第3洗浄ノズル34A,34Bを載置台22に対して図中左右水平方向に直線往復運動させ、シリンダヘッド1のウォータジャケット口13と冷却水出力口14に近接又は退避させる。一方、揺動装置40A,40Bは、図11に示すように、第3洗浄ノズル34A,34Bの先端に設けた噴出口36A,36Bの向きを変えるように第3洗浄ノズル34A,34Bを揺動させる。第3洗浄ノズル34A,34Bは、図示しない制御バルブに接続され、洗浄液の供給と停止を制御される。
【0056】
<シリンダヘッド洗浄方法>
続いて、シリンダヘッド洗浄装置20を用いたシリンダヘッド1の洗浄方法について説明する。図12は、図1に示すシリンダヘッド1のウォータジャケット15を洗浄する動作の概略を示すタイミングチャートである。図13は、第1洗浄工程S1における駆動モータの動作関係を詳細に示すタイミングチャートである。図14は、第2洗浄工程S2における駆動モータと揺動装置の動作関係を詳細に示すタイミングチャートである。図15は、図6に示すシリンダヘッド洗浄装置20がシリンダヘッド1を洗浄する洗浄パターンの一例を概念的に示す図である。図15に記載するS1,S2は、第1洗浄工程S1と第2洗浄工程S2を示し、図中矢印は、第1洗浄ノズル28A,28B,28Cが反転位置で洗浄液を噴出する方向と、第3洗浄ノズル34A,34Bがウォータジャケット口13と冷却水出力口14と同軸上に洗浄水を噴出する方向を示す。
【0057】
図12に示すように、シリンダヘッド洗浄装置20は、シリンダヘッド1を洗浄しない間、直動装置41A,41B,41Cが第1洗浄ノズル28A,28B,28Cを上昇させて洗浄液排出部材23から抜き出し、退避位置で停止させている。また、油圧シリンダ33は、可動プレート31を下降させて、載置台22の下方に第2洗浄ノズル32A〜32Fを退避させている。更に、油圧シリンダ35A,35Bは、第3洗浄ノズル34A,34Bをシリンダヘッド1から離間する方向に退避させている。
【0058】
その後、シリンダヘッド洗浄装置20は、シリンダヘッド1の位置決め孔9,9に載置台22の位置決めピン39,39を挿通するように、シリンダヘッド1が載置台22にセットされる。これにより、シリンダヘッド1が載置台22に位置決め保持される。
【0059】
すると、図12のT0に示すように、油圧シリンダ27が、洗浄液排出部材23を下降させ、洗浄液排出部材23の挿入部24A,24B,24Cをシリンダヘッド1の砂抜き孔16A,16B,16Cに嵌合させる。これにより、洗浄液排出部材23は、シリンダヘッド1を載置台22に対して押さえつけ、シリンダヘッド1のがたつきを防ぐ。
【0060】
それから、図12のT1に示すように、シリンダヘッド洗浄装置20は、油圧シリンダ33が可動プレート31を上昇させ、第2洗浄ノズル32A〜32Fをシリンダヘッド1の冷却水連通路12A〜12Fにそれぞれ近接させる。
そして、図12のT2に示すように、第2洗浄ノズル32A〜32Fから洗浄液を低圧(0.15MPa)で噴出することにより、図3のウォータジャケット口13内に点線で示すように、ウォータジャケット15の半分程度(シリンダヘッド1の下面1Aから30mm程度の深さ)まで洗浄液を溜めてウォータジャケット15内を水中状態と同様の状態(以下「疑似水中状態」とする。尚、第2洗浄ノズル32A〜32Fからの洗浄液の供給は、シリンダヘッド1の洗浄が終わるまで継続し、シリンダヘッド1を洗浄する間、ウォータジャケット15内に規定量の洗浄液を溜めるようにする。
【0061】
その後、シリンダヘッド洗浄装置20は、第1洗浄工程S1を開始する。
具体的には、図12のT3に示すように、直動装置41A,41B,41Cが第1洗浄ノズル28A,28B,28Cを下降させる。第1洗浄工程S1では、例えば、砂抜き孔16A,16Cを選択して洗浄を実施する。この場合、直動装置41A,41Cは、第1洗浄ノズル28A,28Cを第1停止位置X1で停止させ、第1洗浄ノズル28A,28Cの先端部をウォータジャケット15内に挿入する(図9及び図11参照)。このとき、駆動モータ30A,30Cは、第1洗浄ノズル28A,28Cの噴出口29A,29Cを対向させるように真横に向けて停止している(以下、この第1洗浄ノズル28A,28Cの位置を「第1反転位置」という。)。一方、直動装置41Bは、第1洗浄ノズル28Bを第2停止位置X2で停止させてウォータジャケット15内に配置せず、第1流路25Bの上面開口部を第1洗浄ノズル28Bで塞ぐ(図9参照)。
【0062】
その後、図12のT4に示すように、駆動モータ30A,30Cを回転させ、第1洗浄ノズル28A,28Cを回転させる。第1洗浄ノズル28A,28Bは、駆動モータ30A,30Bによって回転される間、高圧(例えば10〜30MPa)の洗浄液を噴出し続ける。
【0063】
具体的には、図13及び図15に示すように、駆動モータ30A,30Bは、第1洗浄ノズル28A,28Cを第1反転位置から正方向Kと逆方向−Kにそれぞれ180度ずつ同じ回転速度で回転させ、噴出口29A,29Cを相反する方向に向けると、回転方向をそれぞれ反転させる(以下、この第1洗浄ノズル28A,28Cを反転させる位置を「第2反転位置」という。)。
【0064】
第1洗浄ノズル28A,28Cは、回転しながら洗浄液を噴出し、洗浄液を噴出する空間を連続的に変える。例えば、図13及び図15に示すように、第1洗浄ノズル28A,28Cは、第1反転位置から正方向Kと逆方向−Kにそれぞれ回転して噴出口29A,29Cの向きを約90度ずらすまでの間、図10に示す狭小空間部ZB3,ZB1,ZC4,ZC2に向けて洗浄液を噴出する。第1洗浄ノズル28A,28Cから噴出された洗浄液は、狭小空間部ZB3,ZB1,ZC4,ZC2からZB4,ZB2,ZC3,ZC1を介して大空間部YCへ対向して流れ込んでぶつかり合い、大空間部YCに連通する砂抜き孔16Bから吹き上がる。
【0065】
ここで、砂抜き孔16Bには、洗浄液排出部材23の挿入部24Bが嵌合し、第1流路25Bが連通している。第1流路25Bは、第1洗浄ノズル28Bによって上面開口部が塞がれているため、砂抜き孔16Bから吹き上がった洗浄液は、第1流路25Bから第2流路26Bへ流れ、シリンダヘッド1の側方に異物Pと一緒に排出される。洗浄液排出部材23は、シリンダヘッド1より大きく、第2流路26Bの開口部がシリンダヘッド1の側面より外側に位置しているため、異物Pを含む洗浄液をシリンダヘッド1にかけることなく排出する。
【0066】
図15に示すように、第1洗浄ノズル28A,28Cは、第1反転位置に対して約90度ずれた位置から第2反転位置まで回転して噴出口29A,29Cの向きを更に正方向Kに約90度ずらすまでの間、図10に示す狭小空間部ZA2,ZA4,ZD1,ZD3に向けて洗浄液を噴出する。第1洗浄ノズル28A,28Cから噴出された洗浄液は、狭小空間部ZA2,ZA4,ZD1,ZD3からZA1,ZA3,ZD2,ZD4を介して大空間部YA,YEへ流れ、冷却水出力口14とウォータジャケット口13とからそれぞれ排出される。ウォータジャケット口13と冷却水出力口14は、シリンダヘッド1の側面1C,1Dにそれぞれ開口しているため、ウォータジャケット口13と冷却水出力口14から排出された異物Pを含む洗浄液が、ウォータジャケット15に再侵入しない。
【0067】
第2反転位置まで正方向Kと逆方向−Kに回転された第1洗浄ノズル28A,28Cは、反転され、上記と逆手順で狭小空間部ZA4,ZA2,ZB1,ZB3,ZD3,ZD1,ZC2,ZC4に向けて洗浄液を噴出する。そして、第1反転位置まで逆方向−Kと正方向Kに回転した第1洗浄ノズル28A,28Cは、反転され、上記と同様の手順で狭小空間部ZB3,ZB1,ZA2,ZA4,ZC4,ZC2,ZD1,ZD3に向けて洗浄液を噴出する。このように、第1洗浄ノズル28A,28Cは、洗浄液を噴出する空間と洗浄液を排出する孔部16A,13,14を連続的に変え、狭小空間部ZA2,ZA4,ZB1,ZB3,ZC2,ZC4,ZD1,ZD3に引っ掛かっている異物Pを直接狙って洗浄液を噴出し、狭小空間部ZA2,ZA4,ZB1,ZB3,ZC2,ZC4,ZD1,ZD3から大空間部YA,YC,YEに異物Pを押し流してシリンダヘッド1の外部へ排出する。
【0068】
図12のT5に示すように、駆動モータ30A,30Bが第1洗浄ノズル28A,28Bを第1及び第2反転位置の間で規定数回転させると、第1洗浄ノズル28A,28Cは洗浄液の噴出を停止する。これにより、第1洗浄工程S1が終了する。
【0069】
続いて、シリンダヘッド洗浄装置20は、第2洗浄工程S2を開始する。
すなわち、図12のT6に示すように、直動装置41A,41Cは、第1洗浄工程S1で選択した砂抜き孔16A,16Cに挿入した第1洗浄ノズル28A,28Cを第1停止位置から上昇させて第2停止位置に配置する一方、直動装置41Bは、第1洗浄ノズル28Bを第2停止位置から下降させ、第1停止位置に配置する。これにより、第1洗浄工程S1で選択されなかった砂抜き孔16Bに第1洗浄ノズル28Bが挿入される。このとき、第1洗浄ノズル28Bは、第3洗浄ノズル34A側の真横に噴出口29Bを向けるように、砂抜き孔16Bに配置される(以下、この第1洗浄ノズル28Bの位置を「第3反転位置」という。)。また、油圧シリンダ35A,35Bは、第3洗浄ノズル34A,34Bをシリンダヘッド1に近づける方向に突出させ、第3洗浄ノズル34A,34Bの噴出口36A,36Bをウォータジャケット口13と冷却水出力口14にそれぞれ近接させる。
【0070】
それから、図12のT7において、駆動モータ40Bを回転させる。第1洗浄ノズル28Bは、駆動モータ40Bによって回転される間、噴出口29Bから高圧(例えば10〜30MPa)の洗浄液を連続して噴出する。また、第3洗浄ノズル34A,34Bは、駆動モータ40Bが第1洗浄ノズル28Cを回転させる間、高圧(例えば10〜30MPa)の洗浄液を噴出口36A,36Bから断続して噴出する。揺動装置40A,40Bは、第3洗浄ノズル34A,34Bが洗浄液を噴出するタイミングに同期して、第3洗浄ノズル34A,34Bをそれぞれ揺動させる。
【0071】
具体的には、図14及び図15に示すように、駆動モータ30Bは、第1洗浄ノズル28Bを第3反転位置から180度正方向Kに回転させ、第3洗浄ノズル34B側の真横に噴出口29Bを向けると、反転する(以下、この第1洗浄ノズル28Bの反転位置を「第4反転位置」という。)。揺動装置40Aは、駆動モータ30Bが第1洗浄ノズル28Bを第3反転位置から約90度正方向Kに回転させるまでの間、第3洗浄ノズル34Aを揺動させる。一方、揺動装置40Bは、駆動モータ30Bが第3反転位置に対して約90度ずれた位置から第4反転位置まで第1洗浄ノズル28Bを回転させる間、第3洗浄ノズル34Bを揺動させる。
【0072】
例えば、図14及び図15に示すように、第1洗浄ノズル28Bは、第3反転位置から約90度正方向Kに回転して噴出口29Bの向きを約90度ずらすまでの間、図10に示す狭小空間部ZC3,ZC1に向けて洗浄液を噴出する。これに対応して、第3洗浄ノズル34Aは、揺動装置40Aによって第1洗浄ノズル28Bの回転方向Kと逆位相になるように図中J方向に揺動されながら、図10に示す狭小空間部ZD4,ZD2に向けて洗浄液を噴出する。第1洗浄ノズル28Bと第3洗浄ノズル34Aから噴出された洗浄液は、狭小空間部ZC3,ZC1,ZD4,ZD2から狭小空間部ZC4,ZC2,ZD3,ZD1を介して大空間部YDへ対向して流れ込んでぶつかり合い、大空間部YDに連通する砂抜き孔16Cから吹き上げられる。そして、砂抜き孔16Cから吹き上げられた洗浄液は、洗浄液排出部材23を介してシリンダヘッド1の外部に排出される。この洗浄液の排出方法は、上述した砂抜き孔16Bから洗浄液を排出する方法と同様であるので、説明を省略する。
【0073】
図15に示すように、第1洗浄ノズル28Bは、第3反転位置に対して約90度ずれた位置から第4反転位置まで回転して噴出口29Bの向きを更に約90度正方向Kにずらすまでの間、図10に示す狭小空間部ZB2,ZB4に向けて洗浄液を噴出する。第1洗浄ノズル28Bが第3反転位置に対して90度ずれた位置を過ぎると、第3洗浄ノズル34Aが、洗浄液の噴出を停止し、揺動装置40Aによる揺動を停止されるのに対し、第3洗浄ノズル34Bが、揺動装置40Bによって第1洗浄ノズル28Bと逆位相で揺動するように図中J方向に揺動されながら、図10に示す狭小空間部ZA1,ZA3に向けて洗浄液を噴出する。第1洗浄ノズル28Bと第3洗浄ノズル34Bから噴出された洗浄液は、狭小空間部ZB2,ZB4,ZA1,ZA3から狭小空間部ZB1,ZB3,ZA2,ZA4を介して大空間部YBへ対向して流れ込んでぶつかり合い、大空間部YBに連通する砂抜き孔16Aから吹き上げられる。そして、砂抜き孔16Cから吹き上げられた洗浄液は、洗浄液排出部材23を介してシリンダヘッド1の外部に排出される。この洗浄液の排出方法は、上述した砂抜き孔16Bから洗浄液を排出する方法と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
第4反転位置まで正方向Kに回転された第1洗浄ノズル28Bは、反転され、上記と逆手順で狭小空間部ZB4,ZB2,ZC1,ZC3に向けて洗浄液を噴出する。そして、第3洗浄ノズル34A,34Bは、第1洗浄ノズル28Bの回転方向−Kと逆位相になるように第1洗浄ノズル28Bの回転角度に応じて−J方向に揺動し、狭小空間部ZA3,ZA1,ZD2,ZD4に洗浄液をそれぞれ噴出する。そして、第3反転位置まで逆方向−Kに回転した第1洗浄ノズル28Bは、更に反転され、上記と同様の手順で狭小空間部ZC3,ZC1,ZB2,ZB4に向けて洗浄液を噴出する。これに対応して、第3洗浄ノズル34A,34Bも上記と同様の手順でJ方向に揺動しながら洗浄液を噴出する。このように、第1洗浄ノズル28Bと第3洗浄ノズル34A,34Bは、洗浄液を噴出する空間と洗浄液を排出する孔部16B,16Cを連続的に変えてウォータジャケット15内に乱流を生じさせながら、狭小空間部ZA1,ZA3,ZB2,ZB4,ZC1,ZC3,ZD2,ZD4に引っ掛かっている異物Pを直接狙って洗浄液を噴出し、狭小空間部ZA1,ZA3,ZB2,ZB4,ZC1,ZC3,ZD2,ZD4から大空間部YB,YDに異物Pを押し流してシリンダヘッド1の外部へ排出する。
【0075】
図12のT8に示すように、駆動モータ30Bが第1洗浄ノズル28Bを正方向Kと逆方向−Kに規定数回転させると、第1〜第3洗浄ノズル28A,28B,28C,32A〜32F,34A,34Bは、洗浄液の噴出を停止する。また、駆動モータ30Bの回転停止と同時に、揺動装置40A,40Bは、第3洗浄ノズル34A,34Bを揺動しなくなる。
【0076】
その後、図12のT9に示すように、直動装置41A,41B,41Cが、第1洗浄ノズル28A,28B,28Cを退避位置まで上昇させる。また、油圧シリンダ35A,35Bが、第3洗浄ノズル34A,34Bをシリンダヘッド1から離間する方向へ後退させる。これにより、第2洗浄工程S2が終了する。
【0077】
そして、図12のT10において、油圧シリンダ33が、可動プレート32を下降させ、第2洗浄ノズル32A〜32Fをシリンダヘッド1から離間させる。
そして、図12のT11において、油圧シリンダ27が、洗浄液排出部材23を上昇させ、挿入部24A,24B,24Cを砂抜き孔16A,16B,16Cから外す。
その後、シリンダヘッド1は、位置決め孔9,9から位置決めピン39,39を抜くように持ち上げられ、次の作業場所に搬送される。
【0078】
洗浄されたシリンダヘッド1は、異物検査場所へ移動され、人によってウォータジャケット15等に異物Pが残っていないか目視検査される。
【0079】
<流体解析シュミレーション>
次に、発明者らが行った流体解析シュミレーションについて説明する。
発明者らは、第2洗浄ノズル32A,32B,32C,32D,32E,32Fからウォータジャケット15に洗浄液を供給せずに、第1洗浄ノズル28A,28Cからスパークプラグ孔2B,2C側に向けて洗浄液を10〜30MPaで噴射して、シリンダヘッド1を洗浄する場合(以下、本明細書において「気中洗浄」という。)と、第2洗浄ノズル32A,32B,32C,32D,32E,32Fからウォータジャケット15に洗浄液を0.15MPaで供給しながら、第1洗浄ノズル28A,28Cからスパークプラグ2B,2C側に向けて洗浄液を10〜30MPaで噴射し、シリンダヘッド1を洗浄する場合(以下、本明細書において「疑似水中洗浄」という。)について、流体解析ソフトを用いて、ウォータジャケット15を流れる洗浄液の流速と流れをシュミレーションした。このシュミレーションの結果を図16〜図19に示す。尚、図16〜図19は、ウォータジャケット15内の洗浄液の流速や流れを記載するが、解析結果を表示する関係で図4に示す断面形状と形状が完全に一致していない。
【0080】
図16は、図1に示すシリンダヘッド1を気中洗浄した場合の洗浄液の流速をシュミレーションした結果を示す図である。
気中洗浄されるシリンダヘッド1は、狭小空間部ZB1,ZB3,ZC2,ZC4と大空間部YCにおいて、洗浄液の流速を2m/sec程度確保している。特に、狭小空間部ZB1,ZB3,ZC2,ZC4では、洗浄液が初速で噴射され、流速が4m/sec以上になっている。また、洗浄液を排出する砂抜き孔16B付近の流速は、1m/sec程度確保できている。
【0081】
図17は、図1に示すシリンダヘッド1を気中洗浄した場合の洗浄液の流れ分布をシュミレーションした結果を示す図である。
気中洗浄されるシリンダヘッド1は、第1洗浄ノズル28A,28Cが挿入される砂抜き孔16A,16Cから、大空間部YCの砂抜き孔16Bへ向かって、2L/min程度の洗浄液の流れがウォータジャケット15に形成されている。
【0082】
従って、シリンダヘッド1は、気中洗浄した場合には、第1洗浄ノズル28A,28Cが狭小空間部ZB1,ZB3,ZC2,ZC4に向かって対向して噴出した洗浄液が、大空間部YCにおいて合流し、砂抜き孔16Bから排出される流れを形成する。
【0083】
図18は、図1に示すシリンダヘッド1を疑似水中洗浄した場合の洗浄液の流速をシュミレーションした結果を示す図である。
疑似水中洗浄されるシリンダヘッド1は、狭小空間部ZB1,ZB3,ZC2,ZC4に加え、狭小空間部ZB2,ZB4,ZC1,ZC3も、洗浄液の流速が4m/sec以上になっている。更に、大空間部YCは、砂抜き孔16B付近における洗浄液の流速が4〜5m/sec以上になっており、大空間部全体としても、流速が2.5m/sec以上になっている。
【0084】
図19は、図1に示すシリンダヘッド1を疑似水中洗浄した場合の洗浄液の流れ分布をシュミレーションした結果を示す図である。図20は、図19のF−F断面図である。
水中洗浄されるシリンダヘッド1は、狭小空間部ZB1〜ZB4,ZC1〜ZC4から大空間部YCまでの流路全体に亘って、2.5L/min〜5.0L/minの洗浄液の流れが形成されている。特に、大空間部YCで衝突した洗浄液は、砂抜き孔16Bから約3L/min勢いよく噴出している。
【0085】
従って、シリンダヘッド1は、疑似水中洗浄した場合には、第1洗浄ノズル28A,28Cから噴射された洗浄液が、初速を保って狭小空間部ZB1〜ZB4,ZC1〜ZC4を流れて大空間部YCへ流れ込む。大空間部YCで対向してぶつかった洗浄液は、大空間部YCに開口する砂抜き孔16Bに向かって勢いよく流れる。
【0086】
疑似水中洗浄を気中洗浄とを比べると、図18に示す疑似水中洗浄は、図16に示す気中洗浄と比べ、第1洗浄ノズル28A,28Bから噴出した洗浄液が初速を維持する範囲が広く、第1洗浄ノズル28A,28C間に配置される狭小空間部ZB1〜ZB4,ZC1〜ZC4をほぼカバーしている(黒塗り部参照)。流速の2乗が流体圧となるため、流速が大きい範囲が広いほど、異物Pを押し流す力が大きいことを意味する。また、疑似水中洗浄では、洗浄液を排出する砂抜き孔16B付近において、流速が5m/sec以上確保しており、気中洗浄の約5倍の流速を得ている。
【0087】
また、図19及び図20に示す疑似水中洗浄は、図17に示す気中洗浄と比べ、第1洗浄ノズル28A,28Cから洗浄液を噴出される狭小空間部ZB1,ZB3,ZC2,ZC4からその間の大空間部YCまでの流路を流れる洗浄液の流量が多い。よって、疑似水中洗浄は、気中洗浄と比べ、洗浄液の噴出位置から排出位置までの流れが勢いよく形成され、異物Pをウォータジャケット15の底部に沈ませることなく、シリンダヘッド1の外部へ排出しやすい。
【0088】
このように疑似水中洗浄が、気中洗浄より流速が早い範囲や流量が多い範囲を確保できる理由は、第2洗浄ノズル32A〜32Fからウォータジャケット15に洗浄液を供給することにより、第1洗浄ノズル28A,28Cから噴出した洗浄液が狭小空間部ZB1〜ZB4,ZC1〜ZC4を向きを変えながら流れる際にウォータジャケット内壁との間でエネルギーを損失しにくく、流速や流体圧を減衰させないためと考えられる。また、疑似水中洗浄では、洗浄液を排出する砂抜き孔16Bの真下から洗浄液が上向きに噴出し、狭小空間部ZB1,ZB3,ZC2,ZC4から大空間部YCに対向して流入する洗浄液と砂抜き孔16Bの真下で合流し、砂抜き孔16B側への流速や流れを促進するためと考えられる。
【0089】
<実機による異物の排出確認>
次に、実機による異物の排出確認実験について説明する。
この実験では、シリンダヘッド1のウォータジャケット15に切り粉等の異物の代用としてOリングを使用した。そして、スパークプラグ孔2の周りに形成される狭小空間部Zで構成する各狭小ゾーン(例えば、スパークプラグ孔2Aに対応する狭小ゾーンは、狭小空間部ZA1,ZA2,ZA3,ZA4で構成される。)にOリングを7個ずつそれぞれ設置した(合計28個)。そして、実験では、各狭小ゾーンにOリングを設置したシリンダヘッドをシリンダヘッド洗浄装置20にセットし、セットしたシリンダヘッド1を気中洗浄又は疑似水中洗浄して、Oリングの移動率と除去率を調べた。実験は、気中洗浄と疑似水中洗浄のそれぞれについて5回ずつ行い、Oリングの移動率と除去率の平均値を求めた。
【0090】
この結果、シリンダヘッド1を気中洗浄した場合には、Oリングの除去率が57.1%、移動率が78.6%であった。
一方、シリンダヘッド1を疑似水中洗浄した場合には、Oリングの移動率が97.9%、除去率が94.3%であった。
更に、発明者らが、シリンダヘッド1を洗浄槽に水没させた状態で疑似水中洗浄と同様にしてシリンダヘッドを洗浄したところ(以下「水中洗浄」という。)、Oリングの移動率が100%、除去率が92.9%であった。
【0091】
よって、気中洗浄は、異物の除去率が低いものの、異物の移動率が80%と高く、狭小空間部Zから異物を効率的に移動できることが判明した。また、疑似水中洗浄では、ウォータジャケット15を疑似水中状態とすることにより、異物移動率を気中洗浄より大幅に向上させ、水中洗浄に近づけられることが判明した。そして、気中洗浄でも、異物を80%近く移動できるが、さらに疑似水中洗浄によって、異物移動率をほぼ100%にできることが判明した。しかも、疑似水中洗浄は、水中洗浄より異物除去率が高いことが判明した。
【0092】
この実験では、気中洗浄と疑似水中洗浄の何れも、スパークプラグ孔2Aを含む狭小ゾーンに設置したOリングを冷却水出力口14から排出でき、スパークプラグ孔2B,2Cを含む狭小ゾーンに設置したOリングを砂抜き孔16Bから排出でき、スパークプラグ孔2Dを含む狭小ゾーンに設置したOリングをウォータジャケット口13から排出できることを確認した。
【0093】
すなわち、狭小空間部Zに引っ掛かった異物は、気中洗浄と疑似水中洗浄と関わらず、第1洗浄ノズル28A,28B,28Cの噴出口29A,29B,29Cの向きを変えて、異なる狭小空間部Zを狙って洗浄液を噴出することにより、第1洗浄ノズル28A,28B,28Cを挿入した孔部の両側にあって、第1洗浄ノズル28A,28B,28Cを挿入されていない孔部から、排出できることを確認できた。
【0094】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置20は、シリンダヘッド1の複数の孔部12A〜12R,13,14,16A,16B,16Cのうち、例えば砂抜き孔16A,16Cを選択し、砂抜き孔16A,16Cからウォータジャケット15内に第1洗浄ノズル28A,28Cを挿入して、ウォータジャケットの狭小空間部ZB1,ZB3,ZC2,ZC4に引っ掛かった異物Pへ向けて洗浄液を直接噴出する。洗浄液は、第1洗浄ノズル28A,28Cから噴射された際の流速や流量、流体圧などを維持したまま異物Pに当たり、異物Pを狭小空間部ZB1,ZB2,ZB3,ZB4,ZC1,ZC2,ZC3,ZC4から大空間部YCへ押し流す。大空間部YCへ流れた異物Pは、洗浄液とともに大空間部YCに連通する砂抜き孔16Bからシリンダヘッド1の外部へ排出され、除去される。このように、本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置20によれば、ウォータジャケット15の狭小空間部ZB1,ZB2,ZB3,ZB4,ZC1,ZC2,ZC3,ZC4に引っ掛かった異物Pでも十分に除去することが可能なので、異物Pの除去率を向上させることができる。
【0095】
これによって、人が、本発明のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置20で洗浄したシリンダヘッド1の内部を目視検査したときに異物Pの発見率が減少し、手作業で異物を除去する手間が大幅に軽減する。
【0096】
本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法は、例えば、大空間部YCを挟んで洗浄液を対向させるように選択した砂抜き孔16A,16Cに第1洗浄ノズル28A,28Cを挿入し、第1洗浄ノズル28A,28Cから噴出した洗浄液を大空間部YCで合流させて他の砂抜き孔16Bから排出するので、異物Pを別の狭小空間部ZA2,ZA4,ZD1,ZD3…に再侵入させることなく、シリンダヘッド1の外部へ排出することができる。
【0097】
本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法は、例えば、スパークプラグ孔2B,2Cの孔壁とインテークポート8B,8Cの壁或いはエキゾーストポート10B,10Cの壁との間に形成された狭小空間部ZB1,ZB2,ZB3,ZB4,ZC1,ZC2,ZC3,ZC4から、スパークプラグ孔2B,2Cの孔壁間に形成された大空間部YCへ向けて洗浄液を噴出するので、狭小空間部ZB1,ZB2,ZB3,ZB4,ZC1,ZC2,ZC3,ZC4と大空間部YCとが短距離で連通しており、異物Pを他の狭小空間部ZA1,ZA2,ZA3,ZA4,ZD1,ZD2,ZD3,ZD4に再侵入させることなく除去することができる。
【0098】
本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置20は、例えば、砂抜き孔16A,16Cからウォータジャケット15内へ挿入した第1洗浄ノズル28A,28Cを回転させて洗浄を行う。また例えば、砂抜き孔16Bからウォータジャケット15内へ挿入した第1洗浄ノズル28Bを回転させ、ウォータジャケット口13と冷却水入力口14に近接させた第3洗浄ノズル34A,34Bを揺動させて洗浄を行う。よって、本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置20は、各砂抜き孔16A,16Cが複数の狭小空間部ZA2,ZA4,ZB1,ZB3,ZC2,ZC4,ZD1,ZD3を狙って洗浄液を噴出して洗浄することができ、洗浄効率が良い。
【0099】
本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法は、例えば、砂抜き孔16A,16Cに第1洗浄ノズル28A,28Cを挿入してウォータジャケット15の洗浄を実施し(第1洗浄工程S1)、所定の洗浄空間(大空間部YA,YC,YE)から異物Pを除去した後、選択しなかった別の砂抜き孔16Bに第1洗浄ノズル28Bを挿入してウォータジャケット15の洗浄を実施し(第2洗浄工程S2)、別の洗浄空間(大空間部YB,YD)から異物Pを除去する。このように、本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法は、ウォータジャケット15を複数の洗浄空間に分けて間欠的に洗浄し、ウォータジャケット15内を満遍なく洗浄するので、例えば、狭小空間部ZB1から取り除いた異物が他の狭小空間部ZA2に引っ掛かってウォータジャケット15内に残ることを防止できる。
【0100】
本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法は、例えば、大空間部YCに連通する砂抜き孔16Bを洗浄液の排出孔部とした場合に、その排出孔部の両側に設けた砂抜き孔16A,16Cを第1洗浄ノズル28A,28Cを挿入する孔部として選択するので、第1洗浄ノズル28A,28Cから噴出した洗浄液が大空間部YCで対向してぶつかり合い、排出孔部16Bからシリンダヘッド1の外部へ流れやすい。
【0101】
本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置20は、シリンダヘッド1を洗浄する際に下面1Bとなる面に設けた冷却水連通路12A〜12Fに洗浄液を供給し、ウォータジャケット15を水中と疑似状態にする。ウォータジャケット15は、図5に示すように、スパークプラグ孔2A,2B,2C,2Dの周りにおいてシリンダヘッド1の下面1B側に近いほど流路幅が狭く、狭小空間部ZA1,ZA2,ZA3…が形成されている。ウォータジャケット15を疑似水中状態にすると、異物Pに浮力が作用して異物Pに作用する重力の影響が小さくなり、異物Pが狭小空間部Pから外れやすくなる。しかも、第1洗浄ノズル28A,28Cから噴出した洗浄液は、ウォータジャケット15に溜まっている洗浄液によって狭小空間部ZA1,ZA2…を流れる際にウォータジャケット15の内壁との間でエネルギーを損失しにくくなる。これにより、洗浄液は、第1洗浄ノズル28A,28Cから噴出された際の初速を保ったまま、狭小空間部ZA1,ZA2…を流れることが可能になる。また、洗浄液が噴出される狭小空間Zと大空間部Yとの間の流量変動が小さいため、洗浄液を排出する砂抜き孔16B付近でも大流量を確保することができ、洗浄液が狭小空間部Zから大空間部Yへ流れ込んだ後も流速を低下させにくい。よって、本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置20によれば、異物Pを狭小空間部Zから取り除いて、他の狭小空間部Zに引っ掛かることなく砂抜き孔16Bへ押し流す洗浄液の流れを形成しやすく、異物Pの除去率がより一層向上する。
【0102】
しかも、本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置20は、疑似水中洗浄することによって水中洗浄と同等以上の異物除去率を得ることができるので、シリンダヘッド1を洗浄液に水没させるためのタンクが必要でなく、コストやスペースの面でメリットがある。
【0103】
本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置20は、シリンダヘッド1の洗浄時にシリンダヘッド1の上面に開口する砂抜き孔16A,16B,16Cに洗浄液排出部材23の第1流路25A,25B,25Cを接続し、第1洗浄ノズル28Z,28B,28Cを第1流路25A,25B,25Cに挿入する。そして、例えば、砂抜き孔16A,16Cに対応する第1洗浄ノズル28A,28Cをウォータジャケット15内に挿入して第1停止位置X1で停止させる一方、砂抜き孔16Bに対応する第1洗浄ノズル28Bを第2流路26Bが第1流路25Bから分岐する第2停止位置X2で停止させる。それから、第1洗浄ノズル28A,28Cから洗浄液を噴出する。砂抜き孔16Bに連通する第1流路25Bは、上方開口部が第1洗浄ノズル28Cに塞がれている。そのため、洗浄液は、砂抜き孔16Bに接続する第1流路25Bから第2流路26Bを流れて、シリンダヘッド1の側面側に流出する。よって、本実施形態のシリンダヘッド洗浄方法及びシリンダヘッド洗浄装置20によれば、シリンダヘッド1の外部に除去した異物Pがシリンダヘッド1内に再侵入することを防止できる。
【0104】
特に、洗浄液排出部材23は、平面積がシリンダヘッド1より大きく、シリンダヘッド1の外部に第2流路26A,26B,26Cの開口部が位置しているので、排出した洗浄液がシリンダヘッド1にかからず、異物Pがシリンダヘッド1に再付着しない。
【0105】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
【0106】
例えば、上記実施形態では、4気筒エンジンに使用されるシリンダヘッドの洗浄方法について説明した。これに対して、図21〜図23に示す3気筒又は5気筒エンジンに使用されるシリンダヘッド51,52,53の洗浄に上記実施形態のシリンダヘッド洗浄装置20やシリンダヘッド洗浄方法を適用しても良い。この場合にも、図21〜図23の図中矢印に示すように、大空間部に連通する砂抜き孔16を排出孔部とした場合に、その排出孔部の両側にある砂抜き孔16を選択して第1洗浄ノズル28を第1停止位置まで挿入すると共に、排出孔部の第1洗浄ノズル28を第2停止位置で停止させ、洗浄を実施すると良い。そして、洗浄時には、選択した砂抜き孔16に挿入した第1洗浄ノズル28を正方向Kと逆方向−Kに切り替えて回転(但し、第3洗浄ノズル34A,34Bについては揺動)させることによって、複数の狭小空間部を狙って洗浄液を噴出して洗浄すると良い。このようにして選択した砂抜き孔16から第1洗浄ノズル28を挿入して洗浄を実施したら、選択した砂抜き孔16の第1洗浄ノズル28を第1停止位置から第2停止位置まで後退させ、選択しなかった砂抜き孔16の第1洗浄ノズル28を第2停止位置から第1停止位置まで進行させ、洗浄を実施すると良い。このようにして、第1洗浄ノズル28を順次砂抜き孔16に挿入して洗浄を行うことにより、シリンダヘッド51〜53のウォータジャケット全体が満遍なく洗浄される。
【0107】
例えば、上記実施形態では、第1洗浄ノズル28A,28B,28Cを砂抜き孔16A,16B,16Cに対応して設け、上下垂直方向にのみ移動させるようにした。これに対して、第1洗浄ノズル28を上下垂直方向と左右及び前後水平方向に移動可能に設け、第1洗浄ノズル28を左右及び前後水平方向に移動させて選択した孔部上に配置し、第1洗浄ノズル28を下降させて選択した孔部に挿入するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施形態に係り、シリンダヘッドのシリンダカバーに接触する面(上面)側から見た上面図である。
【図2】図1に示すシリンダヘッドのシリンダボディに接触する面(下面)側から見た下面図である。
【図3】図1に示すシリンダヘッドを図1に示す矢印A方向から見た側面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】図4のC−C断面図である。
【図6】図1に示すシリンダヘッドを洗浄する洗浄装置の概略構成図である。
【図7】図6のD−D断面図である。
【図8】図6に示す洗浄液排出部材の外観斜視図である。
【図9】図8のE−E断面図である。
【図10】図1に示すシリンダヘッドと図6に示す第1〜第3洗浄ノズルとの位置関係を示す図である。
【図11】図1に示すシリンダヘッドと図6に示す第1〜第3洗浄ノズルとの位置関係を示す図である。
【図12】図1に示すシリンダヘッドのウォータジャケットを洗浄する動作の概略を示すタイミングチャートである。
【図13】第1工程における駆動モータの動作関係を詳細に示すタイミングチャートである。
【図14】第2工程における駆動モータと揺動装置の動作関係を詳細に示すタイミングチャートである。
【図15】図6に示す洗浄装置がシリンダヘッドを洗浄する洗浄パターンの一例を概念的に示す図である。洗浄工程毎に段を変えて洗浄液を噴出する方向を矢印で示し、洗浄方法を記載する。
【図16】図1に示すシリンダヘッドを気中洗浄した場合の洗浄液の流速をシュミレーションした結果を示す図である。
【図17】図1に示すシリンダヘッドを気中洗浄した場合の洗浄液の流れ分布をシュミレーションした結果を示す図である。
【図18】図1に示すシリンダヘッドを疑似水中洗浄した場合の洗浄液の流速をシュミレーションした結果を示す図である。
【図19】図1に示すシリンダヘッドを疑似水中洗浄した場合の洗浄液の流れ分布をシュミレーションした結果を示す図である。
【図20】図19のF−F断面図である。
【図21】図6に示す洗浄装置によって3気筒のシリンダヘッドを洗浄する洗浄パターンの一例を示す概念図である。洗浄工程毎に段を変えて洗浄液を噴出する方向を矢印で示し、洗浄方法を記載する。
【図22】図6に示す洗浄装置によって5気筒のシリンダヘッドを洗浄する洗浄パターンの一例を示す概念図である。洗浄工程毎に段を変えて洗浄液を噴出する方向を矢印で示し、洗浄方法を記載する。
【図23】図6に示す洗浄装置によって6気筒のシリンダヘッドを洗浄する洗浄パターンの一例を示す概念図である。洗浄工程毎に段を変えて洗浄液を噴出する方向を矢印で示し、洗浄方法を記載する。
【図24】従来のシリンダヘッド洗浄方法を説明する図である。(a)は第1洗浄工程を示し、(b)は第2洗浄工程を示し、(c)は第3洗浄工程を示す。
【図25】従来のシリンダヘッド洗浄装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0109】
1 シリンダヘッド
2A,2B,2C,2D スパークプラグ孔
7A,7B,7C,7D 燃焼室
8A,8B,8C,8D インテークポート
10A,10B,10C,10D エキゾーストポート
12A,12B,12C,12D,12E,12F 冷却水連通路(孔部)
13 ウォータジャケット口(孔部)
14 冷却水出力口(孔部)
15 ウォータジャケット
16A,16B,16C 砂抜き孔(孔部)
20 シリンダヘッド洗浄装置
22 載置台
23 洗浄液排出部材
25A,25B,25C 第1流路
26A,26B,26C 第2流路
28A,28B,28C 第1洗浄ノズル
30A,30B,30C 駆動モータ(駆動手段)
32A,32B,32C,32D,32E,32F 第2洗浄ノズル
34A,34B 第3洗浄ノズル
40A,40B 揺動装置
ZA1〜ZD4 狭小空間部
YA〜YE 大空間部
X1 第1停止位置
X2 第2停止位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を狭くする狭小空間部と、前記狭小空間部より前記流路を広くする大空間部とを含むウォータジャケットが内部に形成され、前記ウォータジャケットに連通する複数の孔部が設けられたシリンダヘッドを洗浄するシリンダヘッド洗浄方法において、
前記複数の孔部のうち選択した孔部から前記ウォータジャケット内に洗浄ノズルを挿入し、前記洗浄ノズルから前記狭小空間部へ向けて前記洗浄液を噴出し、前記狭小空間部から前記大空間部へ流れた洗浄液を、前記大空間部に連通する前記孔部から前記シリンダヘッドの外部へ排出する
ことを特徴とするシリンダヘッド洗浄方法。
【請求項2】
請求項1に記載するシリンダヘッド洗浄方法において、
前記大空間部を挟んで前記洗浄液を対向させるように前記孔部を選択する
ことを特徴とするシリンダヘッド洗浄方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するシリンダヘッド洗浄方法において、
前記シリンダヘッドは、スパークプラグを取り付ける複数のスパークプラグ孔と、前記複数のスパークプラグ孔に対応して設けた複数の燃焼室にそれぞれ連通して吸気を行うインテークポートと、前記複数の燃焼室に連通して排気を行うエキゾーストポートとを備え、
前記狭小空間部は、前記スパークプラグ孔の孔壁と前記インテークポートの壁或いは前記エキゾーストポートの壁との間に形成された空間であり、
前記大空間部は、前記スパークプラグ孔の孔壁間に形成された空間である
ことを特徴とするシリンダヘッド洗浄方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載するシリンダヘッド洗浄方法において、
前記洗浄ノズルは、前記ウォータジャケット内で回転する
ことを特徴とするシリンダヘッド洗浄方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載するシリンダヘッド洗浄方法において、
前記選択した孔部に前記洗浄ノズルを挿入して洗浄を実施した後、選択しなかった前記孔部に前記洗浄ノズルを挿入して洗浄を実施する
ことを特徴とするシリンダヘッド洗浄方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載するシリンダヘッド洗浄方法において、
前記大空間部に連通する孔部の一つを前記洗浄液の排出孔部とした場合に、前記排出孔部の両側に設けた孔部を前記洗浄ノズルを挿入する孔部として選択する
ことを特徴とするシリンダヘッド洗浄方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載するシリンダヘッド洗浄方法において、
前記シリンダヘッドを洗浄する際に下面となる面に設けた孔部から前記ウォータジャケットに前記洗浄液を供給する
ことを特徴とするシリンダヘッド洗浄方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一つに記載するシリンダヘッド洗浄方法において、
前記洗浄ノズルが貫通される第1流路と、前記第1流路から分岐して前記シリンダヘッドの側面側に開口する第2流路とを備える洗浄液排出部材を、前記シリンダヘッドの上面に開口する孔部に前記第1流路を連通させるように前記シリンダヘッドの上面に配置し、前記選択した孔部に対応する前記洗浄ノズルを前記第1流路から前記ウォータジャケット内に突出させた第1停止位置で停止させ、前記選択した孔部以外の孔部に対応する前記洗浄ノズルを前記第2流路が前記第1流路から分岐する第2停止位置で停止させる
ことを特徴とするシリンダヘッド洗浄方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載するシリンダヘッド洗浄方法において、
前記複数の孔部のうち前記シリンダヘッドの側面に開口する孔部に近接する洗浄ノズルを揺動させることにより、前記狭小空間部へ向けて前記洗浄液を噴出し、前記狭小空間部から前記大空間部へ流れた洗浄液を、前記大空間部に連通する前記孔部から前記シリンダヘッドの外部へ排出する
ことを特徴とするシリンダヘッド洗浄方法。
【請求項10】
流路を狭くする狭小空間部と、前記狭小空間部より前記流路を広くする大空間部とを含むウォータジャケットが内部に形成され、前記ウォータジャケットに連通する複数の孔部が設けられたシリンダヘッドを洗浄するシリンダヘッド洗浄装置において、
前記シリンダヘッドを位置決め保持する載置台と、
前記載置台の上方に、前記載置台に保持される前記シリンダヘッドの上面に開口する前記孔部に対応して配置される第1洗浄ノズルと、
前記第1洗浄ノズルを前記載置台に対して上下垂直方向に直線往復運動させる駆動手段と、
を有することを特徴とするシリンダヘッド洗浄装置。
【請求項11】
請求項10に記載するシリンダヘッド洗浄装置において、
前記駆動手段は、前記洗浄液を噴出する前記第1洗浄ノズルを回転させるものである
ことを特徴とするシリンダヘッド洗浄装置。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載するシリンダヘッド洗浄装置において、
前記載置台に保持される前記シリンダヘッドの下面に開口する前記孔部に前記洗浄液を供給する第2洗浄ノズルを有する
ことを特徴とするシリンダヘッド洗浄装置。
【請求項13】
請求項10乃至請求項12の何れか一つに記載するシリンダヘッド洗浄装置において、
前記シリンダヘッドの上面に配置され、前記第1洗浄ノズルが貫通する第1流路と、前記第1流路から分岐して側方に開口する第2流路とを有する洗浄液排出部材を有し、
前記駆動手段は、前記第1洗浄ノズルを前記第1流路から前記ウォータジャケット内に突出させる第1停止位置と、前記第2流路が前記第1流路から分岐する第2停止位置とで停止させるものである
ことを特徴とするシリンダヘッド洗浄装置。
【請求項14】
請求項10乃至請求項13の何れか1つに記載するシリンダヘッド洗浄装置において、
前記シリンダヘッドの側面に開口する前記孔部に近接可能に設けられた第3洗浄ノズルと、
前記第3洗浄ノズルを揺動させる揺動装置と、
を有することを特徴とするシリンダヘッド洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−144585(P2009−144585A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321978(P2007−321978)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000158862)鬼頭工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】