説明

シリンダライナ

【課題】シリンダブロックとの密着性及び熱伝導性が優れるシリンダライナを提供する。
【解決手段】シリンダライナ1は鋳鉄や鋼から形成されている。シリンダライナ1は外周面3と上面4に溶射皮膜6が形成されている。溶射材料としてはAl、Al合金、Fe、Fe合金、Zn、Zn合金、Cu、又はCu合金などが使用される。シリンダライナ1はアルミニウム合金等の軽合金から形成されているシリンダブロックに外周面3と上面4と下面5が鋳包まれる。シリンダライナ1は上面4と内周面7との角部に面取りが形成され、溶射皮膜6は上面4部において面取り部までにわたって形成されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックに鋳包まれるシリンダライナに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンにおいてアルミニウム合金等からなるシリンダブロックに鋳鉄製等のシリンダライナが鋳包まれる場合がある。この場合、シリンダライナとシリンダブロックは互いの物性が異なるため、シリンダライナとシリンダブロックとの間に隙間などを生じる場合がある。この問題を解消するために、特許文献1では、シリンダライナの外周面にアルミニウム又はアルミニウム合金の溶射皮膜を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−8209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、シリンダライナの外周面に溶射を行うことにより、シリンダライナとシリンダブロックとの密着性が増し、接合強度や熱伝導性の向上を得ている。しかしながら、シリンダライナの上面について溶射を行うことは記載していない。
【0005】
本発明の目的は、シリンダブロックとの密着性及び熱伝導性が優れるシリンダライナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は次の解決手段を採る。すなわち、
本発明は、シリンダブロックに鋳包まれるシリンダライナにおいて、上面と外周面に溶射皮膜が形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記において、上面と内周面の角部に面取りが形成されており、前記上面部の溶射皮膜が面取り部までにわたって形成されていることが好ましい。面取り面は斜面や曲面であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
請求項1によれば、シリンダライナが外周面のみならず上面もシリンダブロックに鋳包まれる場合、シリンダライナとシリンダブロックの接合強度及び熱伝導性が優れる。請求項2によれば、シリンダライナ上面での溶射皮膜の密着性が向上する。請求項3によれば、溶射皮膜の密着性が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のシリンダライナの一部分を示す縦断面図である。
【図2】シリンダブロックに鋳包まれたシリンダライナを示す縦断面図である。
【図3】本発明の別のシリンダライナの一部分を示す縦断面図である。
【図4】本発明の更に別のシリンダライナの一部分を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1及び図2において、シリンダライナ1は鋳鉄や鋼から形成され、シリンダブロック2はアルミニウム合金等の軽合金から形成されている。シリンダライナ1は外周面3と上面4に溶射皮膜6が形成されている。溶射材料としてはAl、Al合金、Fe、Fe合金、Zn、Zn合金、Cu、又はCu合金などが使用される。シリンダライナ1はシリンダブロック2に外周面3と上面4と下面5が鋳包まれている。
【0012】
本発明のシリンダライナ1は外周面3と上面4に溶射皮膜6が形成されているため、シリンダブロック2との密着性及び熱伝導性が優れる。
【0013】
図3は本発明の別のシリンダライナを示す。このシリンダライナ1は上面4と内周面7との角部に面取り8が形成され、溶射皮膜6は上面4部において面取り8部までにわたって形成されている。面取り8面は斜面をなしている。他の構成は上記実施形態と同じである。
【0014】
本実施形態では、溶射皮膜6が上面4と内周面7との角部の面取り8部までにわたって形成されているため、溶射皮膜6の密着性が優れる。
【0015】
図4は本発明の更に別のシリンダライナを示す。このシリンダライナ1は上面4と内周面7との角部に形成した面取り8が円弧面をなしているもので、他の構成は上記実施形態と同じである。
【0016】
本実施形態においても、溶射皮膜6の密着性が優れる。
【符号の説明】
【0017】
1 シリンダライナ
2 シリンダブロック
3 ライナ外周面
4 ライナ上面
5 ライナ下面
6 溶射皮膜
7 ライナ内周面
8 面取り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックに鋳包まれるシリンダライナにおいて、上面と外周面に溶射皮膜が形成されていることを特徴とするシリンダライナ。
【請求項2】
上面と内周面の角部に面取りが形成されており、前記上面部の溶射皮膜が面取り部までにわたって形成されていることを特徴とする請求項1記載のシリンダライナ。
【請求項3】
前記面取り面が斜面又は曲面であることを特徴とする請求項2記載のシリンダライナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−202576(P2011−202576A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70245(P2010−70245)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000215785)帝国ピストンリング株式会社 (80)
【出願人】(591206120)テーピ工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】