説明

シンセサイザと、これを用いた受信装置及び電子機器

【課題】周波数変動の大きな基準発振器を用いて、周波数変動を抑制した局部発振信号及び分周逓倍信号を出力するシンセサイザを小型に実現すること。
【解決手段】本発明のシンセサイザ2は、基準発振器3から出力された基準発振信号を基に局部発振信号を生成して周波数変換部5に入力するとともに、周波数補償部7から出力された周波数補償信号を基に局部発振信号の周波数補償を行うシンセサイザ2であって、局部発振信号を分周又は逓倍した分周逓倍信号を、周波数変換部5の出力側に接続された後段回路部6に入力する分周逓倍部2aを有する。この構成により、シンセサイザ2が周波数変動を補償した局部発振信号を出力するとともに、この局部発振信号を分周又は逓倍して分周逓倍信号を生成することにより、少なくとも1つのシンセサイザで、局部発振信号及び分周逓倍信号の周波数変動を補償することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンセサイザと、これを用いた受信装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、従来のシンセサイザに関して、図9を用いて説明する。図9でシンセサイザ92は、基準発振器93から出力された基準発振信号を基に局部発振信号を生成して周波数変換部95に入力している。また、このシンセサイザ92を用いて、受信装置90はさらに、前段回路部94が出力する受信信号を局部発振信号に基づいて周波数変換し中間周波数信号を出力する周波数変換部95と、基準発振信号を分周又は逓倍した分周逓倍信号を出力する分周逓倍部97と、分周逓倍信号に基づいて中間周波数信号を信号処理する後段回路部96とを有する。
【0003】
このように、シンセサイザ92は、基準発振信号に基づいて局部発振信号を出力するとともに、これと独立して、分周逓倍部97は基準発振信号に基づいて分周逓倍信号を出力していた。
【0004】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特許第3373431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、基準発振器93は水晶振動子を用いて構成していたため、温度変化等の周囲環境変動に起因する周波数変動は、受信装置及び電子機器の使用温度範囲(−40℃〜+85℃)において高々±30ppmであるため、分周逓倍部97が出力する分周逓倍信号の周波数変動が、後段回路部96の動作に与える影響は小さかった。
【0006】
しかし、周波数変動幅が大きい振動子を用いて基準発振器93を構成した場合は、局部発振信号及び分周逓倍信号の周波数変動が後段回路部6の動作に大きな影響を与える。具体例として近年、実用化検討が進んでいるMEMS(Micro Electromechanical System)振動子が挙げられる。MEMS振動子は水晶振動子に比べて小型化及び低コスト化を図ることができるため、水晶振動子の代替デバイスとして期待されている。しかしながら、水晶振動子に比べて温度特性が悪いという欠点を有し、例えば、MEMS振動子であるシリコン振動子は、温度特性の1次係数が約−30ppm/℃であるため、使用温度範囲(−40℃〜+85℃)で3750ppmもの周波数変動幅となる。従って、このシリコン振動子から成る基準発振信号に基づいて生成される局部発振信号及び分周逓倍信号も3750ppmの周波数変動幅となり、後段回路部6の動作に大きな影響を与える。
【0007】
そこで、本発明は、周波数変動の大きな基準発振器を用いて、周波数変動を抑制した局部発振信号及び分周逓倍信号を出力するシンセサイザを小型に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のシンセサイザは、基準発振器から出力された基準発振信号を基に局部発振信号を生成して周波数変換部に入力するとともに、周波数補償信号を基に前記局部発振信号の周波数補償を行うシンセサイザであって、前記局部発振信号を分周又は逓倍した分周逓倍信号を、前記周波数変換部の出力側に接続された後段回路部に入力する分周逓倍部を有する。
【発明の効果】
【0009】
上記構成により、シンセサイザが周波数変動を補償した局部発振信号を出力するとともに、この局部発振信号を分周又は逓倍して分周逓倍信号を生成することにより、少なくとも1つのシンセサイザで、局部発振信号及び分周逓倍信号の周波数変動を補償することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるシンセサイザを用いた受信装置のブロック図である。図1において、受信装置1は、基準発振信号を出力する基準発振器3と、基準発振信号の周波数補償を行うための周波数補償信号を出力する周波数補償部7と、基準発振器3から出力された基準発振信号を基に局部発振信号を出力するとともに周波数補償部7から出力された周波数補償信号に基づいて局部発振信号の周波数補償を行うシンセサイザ2と、受信信号を出力する前段回路部4と、シンセサイザ2から出力された局部発振信号に基づいて前段回路部4から出力された受信信号を周波数変換し中間周波数信号を出力する周波数変換部5と、この周波数変換部5から出力された中間周波数信号の信号処理を行う後段回路部6とを有している。また、シンセサイザ2は、局部発振信号を分周又は逓倍した分周逓倍信号を出力する分周逓倍部2aを有し、後段回路部6は、分周逓倍部2aから出力された分周逓倍信号に基づいて中間周波数信号の信号処理を行う。
【0011】
この構成により、周波数変動量が大きい振動子で構成した基準発振器を用いて受信装置を実現することができる。
【0012】
まず、MEMS振動子の一例であるシリコン振動子を用いて基準発振器3を構成した場合の基準発振信号及び局部発振信号の周波数変動を説明する。図2は、基準発振信号の周波数変動を示した図である。同図は横軸が周波数、縦軸が電力レベルを示しており、常温波形20は常温(30℃)におけるシリコン振動子の波形であり、10MHzの発振周波数となっている。累積波形21は周囲温度を約100秒間で30℃から60℃まで徐々に上げた場合の基準発振信号の波形の累積表示であり、基準発振信号の周波数は、10MHzから9.991MHzまで下降している。このように、シリコン振動子を用いた場合の基準発振信号は−30ppm/℃(=(9.991MHz−10MHz)/10MHz/30℃)の温度特性を有する。また図3は、局部発振信号の周波数変動を示した図である。ここでは、図2に示した基準発振信号を用いて、シンセサイザ2が約1.065GHzの局部発振信号を出力している。常温波形30は常温時(30℃)の波形であり、1.06529GHzとなっている。累積波形31は周囲温度を約100秒間で30℃から60℃まで徐々に上げた場合の局部発振信号の波形の累積表示であり、局部発振信号の周波数は、1.06529GHzから1.06433GHzまで下がり、960kHzの下降幅となっている。ここで、シンセサイザ2は基準発振信号を逓倍することにより局部発振信号を生成しているので、基準発振信号と同じく−30ppm/℃(=(−960kHz/1.06529GHz/30℃)となる。温度補償累積波形32については後述する。
【0013】
次に、この周波数変動が後段回路部の動作に与える影響を説明する。図4は後段回路部の一例として、デジタル変調信号の復調処理及び誤り訂正処理等を行う復調処理部とした場合である。復調処理部40は、基準クロック入力端子42から入力された基準クロックに基づいて、中間周波数信号入力端子41から入力された中間周波数信号の信号処理を行い、データ出力端子43から信号処理後データを出力する。また、復調処理部40は、アナログ信号である中間周波数信号をデジタル信号に変換するAD部40aと、このAD部40aの出力側に接続されてデジタル信号をベースバンド信号に変換し復調処理等を行って復調後信号を出力する復調部40bと、この復調部40bの出力側に接続されて復調後信号に対して誤り訂正処理等を行ってデータ信号を出力する誤り訂正部40cと、基準クロック入力端子42に接続されて基準クロックからAD部40aの動作クロックを生成する分数逓倍部40dと、基準クロック入力端子42に接続されて基準クロックから復調部40bの動作クロックを生成する分数逓倍部40eと、基準クロック入力端子42に接続されて基準クロックから誤り訂正部40cの動作クロックを生成する分数逓倍部40fとを有する。
【0014】
従来の構成では、図9に示すように、中間周波数信号も基準クロックも共に基準発振信号に基づいて作成されるため、ともに基準発振信号の周波数変動の影響を受ける。中間周波数について説明すると、前述の通り局部発振信号は基準発振信号と同じ比で周波数変動し、また周波数変換部95が出力する中間周波数信号は受信信号と局部発振信号の差分周波数となるため、局部発振信号と同じ幅で周波数変動する。つまり、局部発振信号が高周波となるほど(すなわち受信信号が高周波となるほど)、基準発振信号の周波数変動に起因する中間周波数信号の周波数変動幅は大きくなる。例えば、シリコン振動子から成る基準発振器93の基準発振信号を10MHzとし、局部発振信号を100MHzとすると、局部発振信号及び中間周波数信号は1℃の温度変化で−3kHz(=−30ppm×100MHz)の周波数変動を生じるが、局部発振信号が1.06529GHzの場合は、同じ1℃の温度変化で、−31.9kHz(=−30ppm×1.06529GHz)もの周波数変動となる。この中間周波数の周波数変動は、復調部40bの周波数同期処理に悪影響を与え、復調誤りをもたらす。また、基準クロックについて説明すると、分周逓倍部97は基準発振信号を分周又は逓倍した信号を基準クロックとして出力するので、基準発振信号と同じ変動比となる。基準発振信号が10MHzの場合は、基準クロックは1℃の温度変化で−300Hz(=−30ppm×10MHz)の周波数変動を生じる。同様に分周逓倍部40d、40e、40fが出力する各クロックも基準クロックと同じ変動比となり、各信号処理部の動作に悪影響を与える。例えば、分数逓倍部40dの周波数変動はAD部40aのサンプリングレートのジッタを引き起こし、AD変換精度を劣化させる。分数逓倍部40eの周波数変動は復調部40bの同期性能や検波性能の劣化をもたらす。分数逓倍部40fの周波数変動は誤り訂正部40cが出力するデータ信号のジッタをもたらし、復調処理部40の更に後段に接続される表示部等とのデータ授受に不具合を生じさせる。
【0015】
ここで、中間周波数信号の周波数変動に対する耐性(以下、中間周波数変動耐性という)、及び基準クロック変動に対する耐性(以下、基準クロック変動耐性という)について説明する。中間周波数変動耐性は、受信信号に含まれる既知信号等に基づいて局部発振信号の周波数誤差を補償することができる。例えば、日本のデジタル放送(ISDB−T)では、受信信号に含まれるパイロット信号等の送受信間で既知の基準シンボルや、OFDM信号中のガードインターバル期間信号が有効シンボル期間信号の後部のコピーであることを利用して、送受信間の局部発振信号の周波数誤差を検出し、局部発振周波数を調整することにより補正することができる。復調処理部は、この仕組みを利用し、中間周波数変動耐性として例えば±100kHzを有するものが用いられている。また、基準クロック変動耐性も同様に、受信信号に含まれる基準シンボル等を用いることにより、±200ppmのものが用いられている。
【0016】
従来の水晶振動子を用いた基準発振器の場合は、使用温度範囲(−40℃〜+85℃)で高々30ppmの周波数変動であるので、この変動耐性で十分であった。つまり、ISDB−Tで用いるUHF帯(470MHz〜770MHz)では、最大でも23.1kHz(=770MHz×30ppm)の周波数変動幅であるため、中間周波数変動耐性及び基準クロック変動耐性の範囲内となり、周波数調整を行う必要はない。しかし、温度特性が悪い振動子を用いた基準発振器の場合は、変動耐性を超えてしまうため問題となる。復調処理部40の変動耐性から規定される振動子の温度特性(以下、所要温度特性という)を算出すると、中間周波数変動耐性の観点からは、4.33ppm/℃(=100kHz/770MHz/(40℃+85℃))以下とする必要があり、基準クロック変動耐性の観点からは、1.6ppm/℃(=200ppm/(40℃+85℃))以下とする必要がある。実際には、ばらつきや経年劣化等のためのマージンを考慮すると、中間周波数変動耐性の観点から2.16ppm/℃以下であることが望ましく、基準クロック変動耐性の観点から0.8ppm/℃以下であることが望ましい。
【0017】
シリコン振動子の温度特性は、上述の通り、約−30ppm/℃であるため、上述の所要温度特性を大幅に超えてしまう。シリコン振動子以外のMEMS振動子としては、ポリシリコン振動子や、AlN等の薄膜圧電材料を用いたFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)、SiO2等の薄膜材料を用いた振動子、弾性表面波を用いたSAW(Surface Acoustic Wave)振動子、異なる物質の境界を伝播する境界波を用いた振動子などが挙げられるが、いずれを用いても上述の所要温度特性を実用化するのは困難である。従って、この温度特性が、小型で安価なMEMS振動子を受信装置等に適用する阻害要因の1つとなっていた。
【0018】
そこで、MEMS振動子を用いた場合は、基準発振信号の温度変化に起因する周波数変動を検出し、この検出結果に基づいて周波数変動の補償を行う(以下、周波数補償制御)ことにより、周波数変動を抑制した信号を得ることができる。以下、周波数補償制御の一例として、MEMS振動子の周囲温度を検出し、Phased Locked Loop(以下、PLL)を用いて補償する方法を、図5を用いて説明する。図5において、シリコン振動子から成る基準発振器51は基準発振信号を出力し、温度検出補償部52はシリコン振動子の周囲温度を検出すると共にこの検出温度に基づいて分周比を出力し、PLL50は基準発振信号及び分周比に基づいて局部発振信号を出力する。また、PLL50は基準発振器51から出力された基準発振信号と比較信号の位相差に比例したパルス幅信号を出力する位相比較器50aと、この位相比較器50aから出力されたパルス幅信号を入力し低域濾波後信号を出力するループフィルタ50bと、このループフィルタ50bから出力された低域濾波後信号に基づいた周波数の信号を局部発振信号として出力するVCO50cと、温度検出補償部52が出力した分周比に従ってVCO50cから出力された局部発振信号を分周し比較信号を出力する分周部50dとを有する。この構成において、基準発振信号の周波数をfref、局部発振信号の周波数をfvco、分周部50dに設定された分周比をMとすると、位相比較器50aには周波数frefと周波数fvco/Mの2つの信号が入力されるが、ループ構成により、この2つの信号の周波数が同一になるようにループフィルタ50bの出力電圧が収束する。従って、fvcoは(数1)で表される。
【0019】
(数1)fvco=fref×M
この関係を用いて、温度検出補償部52は温度検出結果に基づいて分周部50dの分周比Mを制御することにより、基準発振周波数に比べて大幅に変動比の小さい局部発振信号をPLL50から出力させることができる。また、分周部50dにおいて分数分周を実現する方法としてフラクショナルN方式やΔΣ方式が用いられており、これらの方式を用いることにより、fvcoの設定分解能を格段に小さくすることが可能となる。
【0020】
この構成を用いて、基準発振信号が10MHz(周囲温度30℃)の場合に、局部発振信号として1.06529GHzを出力するためには、温度検出補償部52は分周部50dに対して分周比Mを106.529(=1.06529GHz/10MHz)と設定すればよい。また、周囲温度が60℃となった場合は、基準発振信号は9.991MHzとなるので、温度検出補償部52は分周部50dの分周比Mを106.625(=1.06529GHz/9.991MHz)とすればよい。なお、温度検出補償部52は温度センサー等によりシリコン振動子の周囲温度を直接又は間接的に検出する方法以外に、他の振動子との周波数差から周波数変動量を検出してもよいし、受信信号に含まれる既知信号等を用いて検出してもよい。図3の温度補償累積波形32は、累積波形21と同様に、周囲温度を約100秒間で30℃から60℃まで徐々に上げた場合の累積表示であるが、受信信号に含まれる既知信号を用いて中間周波数信号の周波数変動を検出し、この周波数変動に基づいて分周比Mを制御することにより局部発振周波数の周波数補償を施した場合の波形である。この例では、局部発振信号の変動が10kHz以内に抑えられており、局部発振信号の温度特性は、0.31ppm/℃(=10kHz/1.06529GHz/30℃)となっている。従って、中間周波数変動耐性の観点から求められる所要温度特性(2.16ppm/℃)、及び基準クロック変動耐性の観点から求められる所要温度特性(0.8ppm/℃)を共に満たしている。このように、周波数補償を行うことにより、復調処理部の変動耐性内とすることができ、AD部40aや復調部40b、誤り訂正部40c等が行う信号処理に与える悪影響を軽減することができ、使用温度範囲(−40℃〜+85℃)にわたって受信品質を劣化させずに信号処理を行うことができる。
【0021】
ここで、復調処理部40に入力される2つの信号(中間周波数信号と基準クロック)は共に基準発振信号に基づいて作成されるため、それぞれの信号の周波数補償制御を行うためには、局部発振信号を生成するPLLと、基準クロックを生成するPLLの2つを有する構成とし、温度検出補償部52はそれぞれのPLLの分周比を制御する必要がある。図9に示した従来構成では、局部発振信号の周波数補償制御はシンセサイザ92を用いることができるが、分周逓倍部97の出力である分周逓倍信号の周波数補償制御を行うために、分周逓倍部97を上述のPLL等で構成する必要がある。しかし、PLLに含まれるVCOやループフィルタ等は、分周回路や逓倍回路に比べて半導体プロセスの微細化に伴うサイズ縮小効果が小さいため、PLLを複数有すると実装面積及び消費電力が増大し、小型化や低消費電力化が求められる受信装置において大きな課題となる。
【0022】
そこで、本実施の構成は、VCOやループフィルタ等の回路よりも分周回路又は逓倍回路の方が小さく構成できることに着目し、周波数補償が施された局部発振信号に基づいて基準クロックを生成する。これにより、1つのシンセサイザのみで周波数補償制御を施した複数の信号を出力することができ、サイズ及び消費電力の増大をもたらすことなくシリコン振動子を用いた受信装置を実現することができる。上述の説明で用いた温度検出補償部及びPLLによる周波数補償制御を行った受信装置の構成例を、図6を用いて説明する。PLL61は、VCO50cが出力する発振信号を局部発振信号として出力するとともに、この発振信号を分周逓倍部61aで分周又は逓倍して得た分周逓倍信号を基準クロックとして復調処理部40に入力している。この構成により、復調処理部40は周波数補償された基準クロックを用いて、周波数補償された中間周波数信号を復調復号処理することができるため、基準発振周波数の周波数変動の影響を抑制することができ、その結果、受信品質の劣化を防ぐことができる。
【0023】
なお、基準発振器とシンセサイザを一体形成することにより、より小型に受信装置60を構成することができる。
【0024】
また、受信装置60の出力側に表示部を接続することにより、従来の水晶振動子から、半導体から形成された小型な振動子に代替した電子機器を構成することが可能となる。
【0025】
また、本発明は、周波数補償を施した複数の信号を1つのシンセサイザで供給するところに技術的特徴を有するものであるため、受信装置として用いる場合に限るものでない。すなわち、シンセサイザの構成を、基準発振器信号及び周波数補償信号に基づいて周波数補償を施した発振信号を生成して第1回路部に入力するとともに、この発振信号を分周逓倍部で分周又は逓倍した分周逓倍信号を、第1回路部と同一又は別の第2回路部に入力する構成とすることにより、このシンセサイザは2つの周波数補償後の信号を出力することができる。これにより、1つのシンセサイザのみで、例えば受信装置とカメラ装置など電子機器内の複数の回路部に対して、周波数補償された信号を供給することができる。
【0026】
また、シンセサイザはPLLに限るものではなく、外部から出力周波数を調整できるものであれば、本実施の構成は実施可能である。例えば、DLL(Delay Locked Loop)や、ループを構成しないDDS(Direct Digital Synthesizer)を用いて、これらが有する分周器や逓倍器の調整により局部発振周波数の周波数補償を行ってもよい。また、基準発振器の負荷インピーダンスの調整により周波数補償を行ってもよい。
【0027】
また、MEMS振動子の温度変化に起因する周波数変動を補償する例を用いて説明したが、その他の周囲環境変化や、初期ばらつき、経年変化等に起因する周波数変動を補償するものであってもよい。
【0028】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2のブロック図である。図7において、PLL70の分周器は、局部発振信号を外部から設定された分周比Nで分周し分周逓倍信号を出力する分周逓倍部70dと、この分周逓倍部70dから出力された分周逓倍信号を温度検出補償部52から設定された分周比Mで分周し比較信号を出力する分周部70eとを有する。
【0029】
受信装置においては、受信信号の周波数(以下、受信チャンネル)によって周波数変換部に入力する局部発振信号の周波数が異なるため、受信チャンネルに応じて局部発振信号を所定の周波数にするとともに、基準クロック等として用いる分周逓倍信号は受信チャンネルによらない一定の周波数とする必要がある。従って、図6の構成とすると、受信チャンネルを変更する都度、分周部50dの分周比と、分周逓倍部61aの分周比又は逓倍比の両方を変更する必要がある。以下、具体例を用いて説明する。基準発振信号を10MHz、分周逓倍信号を20MHzとし、また第1の受信チャンネルを受信するための局部発振信号が1.06529GHzであり、第2の受信チャンネルを受信するための局部発振信号が1.08929GHzとする。この場合、第1の受信チャンネルを受信するためには、分周部50dの分周比を106.529(=1.06529GHz/10MHz)と設定し、分周逓倍部61aの分周比を53.2645(=1.06529GHz/20MHz)と設定する。また、第2の受信チャンネルを受信するためには、分周部50dの分周比を108.929(=1.08929GHz/10MHz)と設定し、分周逓倍部61aの分周比を54.4645(=1.08929GHz/20MHz)と設定する。このように、受信チャンネルを変更する都度、それぞれの分周比を変更する必要が生じるため、受信チャンネル毎の分周比を格納する選局テーブルのメモリ量増大、及び設定フローの複雑化の要因となる。
【0030】
そこで、本実施の形態では、分周逓倍部70d及び分周部70eを直列接続し、受信チャンネルの変更時は分周逓倍部70dの分周比を設定し、温度検出補償部52による周波数補償制御は分周部70eを用いて行うことにより、上記課題を解決している。上述の具体例では、第1の受信チャンネルを受信するためには、分周逓倍部70dの分周比を53.2645(=1.06529GHz/20MHz)と設定し、第2の受信チャンネルを受信するためには、分周逓倍部70dの分周比を54.4645(=1.08929GHz/20MHz)と設定すればよい。また、分周部70eには、受信チャンネルによらず常に20MHzの分周逓倍信号が入力されるので、温度検出補償部52は検出温度に基づいて基準発振信号の周波数を算出し、20MHzからこの基準発振信号の周波数を除算した値を分周比として分周部70eに設定すればよい。このように、本実施の形態によれば、受信チャンネルを変更する際には、分周逓倍部70dのみを変更すればよく、選局テーブルのメモリ量増大、及び設定フローの複雑化を回避することが可能となる。なお、分周逓倍部70dは周波数補償を施した局部発振信号を分周又は逓倍したものであるので、分周逓倍信号も周波数補償が施されており、後段回路部に供給する基準クロックとして用いることができる。一方、分周部70eが出力する比較信号は、温度検出補償部52が検出温度に基づいて適宜調整する分周比で分周されるので、基準発振信号と同じ周波数変動幅を有している。
【0031】
ここで、本実施の形態の構成では、分周逓倍部70dと分周部70eを直列接続しているため、局部発振信号及び分周逓倍信号の位相雑音が劣化する。しかし、基準発振器を構成するシリコン振動子の位相雑音特性は水晶と同等或いは優れている利点を有するため、この利点を活かし、両ブロックを直列接続としても、局部発振信号及び分周逓倍信号は十分な位相雑音特性を確保することができる。
【0032】
なお、本実施の形態は、図6の構成に比べて更に小型化及び低消費電力化とする効果がある。つまり、高周波信号を受信する場合には局部発振信号は高周波信号となるため、この用途に用いられるPLLでは、VCOが出力する局部発振信号を、例えば、アナログ回路で構成される回路規模の大きなプリスケーラ(図示せず)を用いて分周することにより低周波信号とし、当該低周波信号を比較的回路規模の小さい可変分周器(図示せず)で分周することにより実現される。従って、図6の構成では、分周部50d及び分周逓倍部61aの両方にプリスケーラを備える必要があるが、図7の構成とすることにより、分周部70eは低周波信号を扱うこととなるので、分周逓倍部70dのみプリスケーラを備えればよく、回路規模を小さくし、また消費電力を下げることが可能となる。
【0033】
(実施の形態3)
図8は、本発明の実施の形態3における受信装置のブロック図である。
【0034】
図8において、受信装置80は周波数変換部5の出力側に接続されたフィルタ81を有し、フィルタ81は分周逓倍部2aから出力された分周逓倍信号に基づいて周波数変換部5から出力された中間周波数信号を濾波し、後段回路部(図示せず)に出力している。ここで、フィルタ81のカットオフ周波数は分周逓倍信号の周波数から定まるため、分周逓倍信号の周波数が変動するとカットオフ周波数も変動してしまい、適切な信号濾波ができず後段回路部で受信品質劣化が生じる。従って、周波数補償制御を施した分周逓倍信号をフィルタ81に供給することにより、基準発振周波数の周波数変動が大きくても、カットオフ周波数の変動比が小さいフィルタ81を実現することができる。
【0035】
なお、受信チャンネルや受信環境によってフィルタ81のカットオフ周波数を調整するカットオフ調整回路(図示せず)の基準信号として分周逓倍信号を用いてもよい。
【0036】
また、受信装置の構成によっては、周波数変換部5として、アナログ信号を離散時間信号に変換するダイレクトサンプリングミキサを用い、この後段に離散時間フィルタ(図示せず)を配置する場合があるが、この場合には、周波数補償を施した局部発振信号をダイレクトサンプリングミキサのサンプリングクロックとして用いることによりサンプリングジッタを抑制すると共に、分周逓倍信号を基準信号として離散時間フィルタを動作させることによりカットオフ周波数の変動比を抑制することが可能となる。なお、離散時間フィルタは基準信号のデューティ比(High期間とLow期間の比)を変更して用いる場合があるが、周波数補償を施した分周逓倍信号を基準とすることにより、デューティ比の変動を抑制する効果をも有する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のシンセサイザ及びこれを用いた受信装置及び電子機器は、周波数変動の大きい基準発振信号を用いた場合に、1つのシンセサイザで周波数補償を施した複数の信号を後段回路部に供給することができる。例えば、温度係数の大きいMEMS振動子は従来の水晶振動子よりも小型かつ安価に実現できるが、本発明により、このような温度係数の大きい振動子を受信装置に利用することができるようになる。結果として本発明は、携帯端末や放送受信機等の電子機器の小型化及び低価格化に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態1におけるシンセサイザを搭載した受信装置のブロック図
【図2】同受信装置における基準発振信号の波形の説明図
【図3】同受信装置における局部発振信号の波形の説明図
【図4】同受信装置における復調処理部の説明図
【図5】同受信装置におけるPLLの説明図
【図6】同受信装置の他のブロック図
【図7】実施の形態2におけるシンセサイザを搭載した受信装置のブロック図
【図8】実施の形態3におけるシンセサイザを搭載した受信装置のブロック図
【図9】従来のシンセサイザを搭載した受信装置のブロック図
【符号の説明】
【0039】
1 受信装置
2 シンセサイザ
2a 分周逓倍部
3 基準発振器
4 前段回路部
5 周波数変換部
6 後段回路部
7 周波数補償部
20 常温波形
21 累積波形
30 常温波形
31 累積波形
32 温度補償累積波形
40 復調処理部
40a AD部
40b 復調部
40c 誤り訂正部
40d 分周逓倍部
40e 分周逓倍部
40f 分周逓倍部
41 中間周波数信号入力端子
42 基準クロック入力端子
43 データ出力端子
50 PLL
50a 位相比較器
50b ループフィルタ
50c VCO
50d 分周部
51 基準発振器
52 温度検出補償部
60 受信装置
61 PLL
61a 分周逓倍部
70 PLL
70d 分周逓倍部
70e 分周部
80 受信装置
81 フィルタ
90 受信装置
92 シンセサイザ
93 基準発振器
94 前段回路部
95 周波数変換部
96 後段回路部
97 分周逓倍部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準発振器から出力された基準発振信号を基に局部発振信号を生成して周波数変換部に入力するとともに、周波数補償信号を基に前記局部発振信号の周波数補償を行うシンセサイザであって、
前記局部発振信号を分周又は逓倍した分周逓倍信号を、前記周波数変換部の出力側に接続された後段回路部に入力する分周逓倍部を備えたシンセサイザ。
【請求項2】
前記シンセサイザは、前記基準発振信号が入力される比較部と、
前記比較部の出力側に接続されると共に前記局部発振信号を生成して前記局部発振信号を周波数変換部に入力する発振部と、
前記発振部の他の出力と前記比較部の他の入力との間に接続されて前記周波数補償信号を基に前記局部発振信号の周波数補償を行う分周部とを備えた請求項1に記載のシンセサイザ。
【請求項3】
前記分周逓倍部は、前記発振部と前記後段回路部との間に接続された請求項2に記載のシンセサイザ。
【請求項4】
前記分周逓倍部は、前記発振部と前記分周部との間に直列接続された請求項2に記載のシンセサイザ。
【請求項5】
前記周波数補償信号は温度補償信号である請求項1に記載のシンセサイザ。
【請求項6】
基準発振器から出力された基準発振信号を基に発振信号を生成して第1回路部に入力するとともに、周波数補償信号を基に前記発振信号の周波数補償を行うシンセサイザであって、
前記発振信号を分周又は逓倍した分周逓倍信号を、第2回路部に入力する分周逓倍部を備えたシンセサイザ。
【請求項7】
基準発振信号を生成する基準発振器と、
前記基準発振器から出力された基準発振信号を基に局部発振信号を生成すると共に周波数補償信号を基に前記局部発振信号の周波数補償を行うシンセサイザと、
前記シンセサイザから出力された局部発振信号が入力される周波数変換部と、
前記周波数変換部の出力側に接続された後段回路部とを備え、
前記シンセサイザ部は、前記周波数補償された局部発振信号を分周又は逓倍した分周逓倍信号を前記後段回路部の他の入力に入力する分周逓倍部を備えた受信装置。
【請求項8】
前記後段回路部は、前記周波数変換部から出力された信号を復調する復調部を含み、
前記分周逓倍部から出力された信号は、前記復調部を動作させるクロック信号である請求項7に記載の受信装置。
【請求項9】
前記後段回路部は、前記周波数変換部から出力された信号をフィルタリングするフィルタ部を含み、
前記分周逓倍部から出力された信号は、前記フィルタ部を動作させるクロック信号である請求項7に記載の受信装置。
【請求項10】
前記後段回路部は、前記周波数変換部から出力された信号をサンプリングするサンプリング部を含み、
前記分周逓倍部から出力された信号は、前記サンプリング部を動作させるサンプリング信号である請求項7に記載の受信装置。
【請求項11】
前記基準発振器は半導体から形成された振動子を含む請求項7に記載の受信装置。
【請求項12】
前記基準発振器と前記シンセサイザとは一体形成された請求項7に記載の受信装置。
【請求項13】
請求項7に記載の受信装置と、
前記受信装置の出力側に接続された表示部とを備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−194613(P2009−194613A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32852(P2008−32852)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】