説明

シンボルタイミングリカバリ回路

【課題】入力信号のシンボルタイミングを再生するシンボルタイミングリカバリ回路の再生精度を向上させる。
【解決手段】A/D変換器1は、入力信号をクロックCLK1でサンプリングする。FIRフィルタ2は、サンプリングデータからゼロクロス点/データ識別点のデータを生成する。間引き回路3は、クロックCLK2を利用してFIRフィルタ2の出力を間引く。位相比較器4は、間引き回路3の出力信号の位相誤差Δθを検出する。NCO20は、位相誤差Δθを積分して位相信号θを生成する。タップ係数演算部7は、位相信号θに従ってFIRフィルタ2のタップ係数を生成する。NCO20において、位相信号θが「π」を超えたとこには、その位相信号θから「2π+Δθ」を減算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号のシンボルタイミングを再生するシンボルタイミングリカバリ回路に係わる。
【背景技術】
【0002】
通信システムにおいて受信信号を再生するためには、一般に、その受信信号からシンボルタイミングを再生する必要がある。以下、図15を参照しながら、特許文献1に記載のシンボルタイミングリカバリ回路について説明する。
【0003】
図15において、A/D変換器1は、入力信号(あるいは、受信信号)をデジタル信号に変換する。A/D変換器1のサンプリングレートfsampは、入力信号のシンボルレートfs の2倍以上である。FIR(Finite Impulse Response)フィルタ2は、補間器として動作し、A/D変換器1により得られるデジタルデータ列から、データ識別点におけるデータおよびゼロクロス点におけるデータを求める。間引き回路3は、FIRフィルタ2により得られるデータが重なるときに、その一方を間引く。
【0004】
位相比較器4は、間引き回路3の出力データと理想的なサンプリング点におけるデータとの間の誤差を計算する。ループフィルタ5は、位相比較器4の出力を平滑化する。数値制御発振器(NCO:Numerical Controlled Oscillator)6は、無限位相の積分器として動作し、ループフィルタ5の出力に応じた周波数で発振する。タップ係数演算部7は、NCO6の出力信号に基づいて、FIR2に与えるべきタップ係数(a0〜a4)を計算する。クロック制御回路8は、NCO6の出力信号に基づいて、サンプリングクロックCLK1から間引きクロックCLK2を生成する。
【0005】
上記構成のシンボルタイミングリカバリ回路においては、間引きクロックCLK2のタイミングで、データ識別点における値(データ)、およびゼロクロック点における値(データ)が交互に出力される。すなわち、シンボルタイミングが再生される。
【0006】
なお、特許文献2には、第1のタイミング信号を出力端に出力する第1の発振回路と、第2のタイミング信号を出力端に出力する第2の発振回路と、第1のクロック信号の供給端と第1の発振回路の出力端とに結合され第1のタイミング信号に応じて第1のクロック信号のパルスを間引いた第2のクロック信号を出力端に出力する第1の間引き回路と、第1の間引き回路の出力端と第2の発振回路の出力端に結合され第2のタイミング信号に応じて第2のクロック信号のパルスを間引いた第3のクロック信号を生成する第2の間引き回路を含むタイミングリカバリ回路が記載されている。第1のタイミング信号及び第2のタイミング信号の何れか一方は固定周期を有し、他方はフィードバック制御に応じた周期を有する。
【特許文献1】特許第3573627号
【特許文献2】特開2006−279332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図16は、図15に示すシンボルタイミングリカバリ回路の出力信号のスペクトルを示す図である。なお、このスペクトルは、256QAMで変調された6Mbaudの信号についてシミュレーションにより得られたものである。
【0008】
図16に示すように、従来のシンボルタイミングリカバリ回路においては、入力信号に
は存在しない側帯波が発生してしまう。この側帯波は、クロック間引きの頻度に対応する周波数成分およびその高調波を含む。そして、この側帯波は、シンボルタイミングの再生精度の低下を引き起こす。さらに、シンボルタイミングの再生精度が低下すると、それに応じてBER(Bit Error Rate)特性も劣化してしまう。
【0009】
本発明の目的は、入力信号のシンボルタイミングを再生するシンボルタイミングリカバリ回路の再生精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のシンボルタイミングリカバリ回路は、入力信号のシンボルタイミングを再生するものであって、入力信号を第1のクロックでサンプリングするサンプリング手段と、前記サンプリング手段により得られるサンプリングデータを用いて補間処理を行うことにより、入力信号についての補間データを生成する補間手段と、前記補間手段により得られる補間データを第2のクロックを利用して間引く間引き手段と、前記間引き手段の出力信号の位相誤差を検出する位相比較器と、前記位相比較器の出力信号を平滑化するループフィルタと、前記ループフィルタの出力に応じた周波数の発振信号を生成する数値制御発振器と、前記発振信号に応じて前記補間手段の動作を制御する補間制御手段と、前記発振信号に応じて前記第1のクロックから前記第2のクロックを生成するクロック制御手段と、を備える。そして、前記数値制御発振器は、前記ループフィルタの出力値を累積的に加算し、その加算値が閾値を超えたときにその加算値から所定値および前記ループフィルタの出力値を減算することにより、前記発振信号を生成する。
【0011】
上記第1のクロックの周波数が入力信号のシンボルレートの2倍の周波数と一致していないときには、サンプリング手段により得られるサンプリングデータの位相は徐々にシフトしてゆく。数値制御発振器はこの位相シフトを算出し、補間手段は、算出された位相シフトに応じて補間処理を行う。また、上記周波数が互いに一致していないときは、その周波数差に応じてデータの間引きが行われる。この間引きのタイミングにおいて、数値制御発振器の計算値は、データの間引きに応じた量だけ調整される。ここで、間引き手段により間引かれるデータは、その直前のデータと同じである。そして、この調整においては、ループフィルタの出力値が減算されるので、数値制御発振器の計算値が表す位相は、間引きの直前および間引きの直後において互いに同じになる。よって、数値制御発振器における計算誤差は発生しなくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入力信号のシンボルタイミングを再生するシンボルタイミングリカバリ回路の再生精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路100の構成を示す図である。シンボルタイミングリカバリ回路100は、A/D変換器1、FIRフィルタ2、間引き回路3、位相比較器4、ループフィルタ5、数値制御発振器(NCO)20、タップ係数演算部7、クロック制御回路8を備える。ここで、A/D変換器1、FIRフィルタ2、NCO20、タップ係数演算部7、クロック制御回路8は、発振器11により生成されるクロックCLK1を利用して動作する。一方、間引き回路3、位相比較器4、ループフィルタ5は、クロックCLK2を利用して動作する。クロックCLK2は、後で詳しく説明するが、クロックCLK1から生成される。
【0014】
上記構成のシンボルタイミングリカバリ回路100において、A/D変換器1、FIRフィルタ2、間引き回路3、位相比較器4、ループフィルタ5、タップ係数演算部7、クロック制御回路8は、特に限定されるものではないが、特許文献1に記載のシンボルタイ
ミングリカバリ回路と同じであってもよい。ただし、NCO20は、特許文献1に記載のNCOとは異なり、後述する加算制御機能を備えている。
【0015】
シンボルタイミングリカバリ回路100への入力信号は、特に限定されるものではないが、通信システムにおいて受信器が受信する受信信号である。受信信号は、例えば、PSKまたはQAMで変調された変調信号である。以下、シンボルタイミングリカバリ回路100の動作について図2〜図4を参照しながら説明する。
【0016】
上記構成のシンボルタイミングリカバリ回路において、A/D変換器1は、発振器11により生成されるクロックCLK1を利用して、入力信号をデジタル信号に変換する。A/D変換器1のサンプリングレートfsamp(すなわち、クロックCLK1の周波数)は、入力信号のシンボルレートfs の2倍よりも高い。図2(a)に示す例では、A/D変換器1により、サンプリングデータs1〜s14が得られている。なお、図2(a)において、白丸印は、サンプリング点を示し、黒丸印は、入力信号のゼロクロス点およびデータ識別点を示している。
【0017】
FIRフィルタ2は、この実施例では、4個の遅延器、5個の乗算器、および加算器を備える5タップのデジタルトランスバーサルフィルタである。FIRフィルタ2は、A/D変換器1により得られるサンプリングデータを用いて補間処理を行うことにより、入力信号のデータ識別点およびゼロクロス点のデータを生成する。
【0018】
なお、図2に示す実施例では、補間処理によって入力信号のデータ識別点およびゼロクロス点におけるデータが生成されているが、データ識別点またはゼロクロス点のうちの一方(例えば、データ識別点のみ)におけるデータが生成されるようにしてもよい。
【0019】
図3は、FIRフィルタの動作を説明するための図である。図3に示す特性は、カットオフ周波数が「2fs 」であるローパスフィルタのインパルス応答に相当する。時間Tは、FIRフィルタ2が備える各遅延器の遅延量に相当する。なお、時間Tは、クロックCLK1の1周期(すなわち、2π)に相当する。
【0020】
FIRフィルタ2は、5個のタップ係数a0〜a4に基づいて、入力信号の位相を調整する。ここで、タップ係数a0〜a4は、後述するタップ係数演算部7において、位相信号θに応じて決定される。例えば、位相信号θが「ゼロ」であれば、タップ係数a2以外のインパルス応答はゼロとなる。この場合、FIRフィルタ2は、遅延時間が2Tの遅延器として動作する。また、位相信号θが「+π/2」であるときは、対応する5個のタップ係数a0〜a4が与えられ、FIRフィルタ2における遅延時間は「2T+T/4」となる。この場合、入力信号の位相は、FIRフィルタ2を通過することにより、「T/4(すなわち、π/2)」だけ遅れることになる。一方、位相信号θが「−π/2」であれば、対応する5個のタップ係数a0〜a4が与えられ、FIRフィルタ2における遅延時間は「2T−T/4」となる。この場合、入力信号の位相は、FIRフィルタ2を通過することにより、「T/4(すなわち、π/2)」だけ進むことになる。このように、FIRフィルタ2は、入力信号の位相を調整することができる。
【0021】
たとえば、図2(a)において、サンプリングデータs1の位相は、データ識別点k1に対して3π/5だけ遅れている。この場合、FIRフィルタ2には、入力信号の位相を3π/5だけ進めるためのタップ係数a0〜a4が与えられる。そうすると、FIRフィルタ2は、データ識別点k1における値を出力する。サンプリングデータs2の位相は、ゼロクロス点k2に対して4π/5だけ遅れている。この場合、FIRフィルタ2には、信号の位相を4π/5だけ進めるためのタップ係数a0〜a4が与えられる。そうすると、FIRフィルタ2は、ゼロクロス点k2における値を出力する。サンプリングデータs3の位相
は、データ識別点k3に対してπだけ遅れている。この場合、FIRフィルタ2には、信号の位相をπだけ進めるためのタップ係数a0〜a4が与えられる。そうすると、FIRフィルタ2は、データ識別点k3における値を出力する。このように、FIRフィルタ2は、サンプリングデータを用いて補間処理を行うことにより、入力信号のデータ識別点およびゼロクロス点における値を出力する。
【0022】
サンプリングデータs4の位相は、ゼロクロス点k4に対して6π/5だけ遅れている。しかし、このサンプリング点は、ゼロクロス点k4よりもデータ識別点k3に近接している。すなわち、サンプリングデータs4の位相は、データ識別点k3に対して4π/5だけ進んでいる。したがって、この場合、FIRフィルタ2には、信号の位相を4π/5だけ遅らせるためのタップ係数a0〜a4が与えられる。そうすると、FIRフィルタ2は、データ識別点k3における値を出力する。ところが、データ識別点k3においては、修正されたサンプリングデータs3も出力される。すなわち、データ識別点k3においては、修正されたサンプリングデータs3およびs4が重複することとなる。また、サンプリングデータs12、s13についても同様である。
【0023】
このように、シンボルタイミングリカバリ回路100においては、クロックCLK1の周波数は、シンボルレートfs の2倍の周波数よりも高い。このため、A/D変換器1により得られるサンプル数は、入力信号のデータ識別点とゼロクロス点との和よりも多くなる。したがって、入力信号に同期したタイミングを再生するためには(すなわち、シンボルタイミングを再生するためには)、FIRフィルタ2から出力される修正サンプリングデータを間引く必要がある。
【0024】
間引き回路3は、たとえば、1個のフリップフロップ回路であり、クロック制御回路8により生成される間引きクロックCLK2に従って、FIRフィルタ2の出力データを間引く。図2(a)に示す例では、修正されたサンプリングデータs3、s4のうちの一方(実施例では、s4)が間引かれ、また、修正されたサンプリングデータs12、s13のうちの一方(実施例では、s13)が間引かれる。
【0025】
このように、間引き回路3は、間引きクロックCLK2のタイミングで、データ識別点におけるデータおよびゼロクロック点におけるデータを交互に出力する。すなわち、シンボルタイミングが再生される。
【0026】
位相比較器4は、間引き回路3の出力信号の位相誤差(Δθ)を検出する。この実施例では、位相比較器4は、間引き回路3により得られる連続する3つの値を利用して、理想的なゼロクロス点に対する位相誤差を検出する。以下、図4を参照しながら、位相比較器4の動作を説明する。
【0027】
連続した3つの値が単調減少であれば(即ち、d(r-1)>d(r)>d(r+1))、下記(1)式により位相誤差が検出される。なお、「d(r)」は、ゼロクロス点における間引き回路3の出力値を表し、「d(r-1)」および「d(r+1)」は、データ識別点における間引き回路3の出力値を表す。
位相誤差={d(r)-d(r+1)}-{d(r-1)-d(r)}=2d(r)-{d(r+1)+d(r-1)}・・・(1)
図4(a)に示す例では、(1)式により「+10」が得られている。すなわち、位相が進んでいる場合は、位相誤差データとして正の値が得られる。一方、図4(c)に示す例では、(1)式により「−8」が得られている。すなわち、位相が遅れている場合は、位相誤差データとして負の値が得られる。
【0028】
連続した3つの値が単調増加であれば(即ち、d(r-1)<d(r)<d(r+1))、下記(2)式により位相誤差が検出される。
位相誤差={d(r+1)-d(r)}-{d(r)-d(r-1)}=-2d(r)+{d(r+1)+d(r-1)}・・・(2)
図4(b)に示す例では、(2)式により「+8」が得られている。すなわち、位相が進んでいる場合は、位相誤差データとして正の値が得られる。一方、図4(d)に示す例では、(2)式により「−10」が得られている。すなわち、位相が遅れている場合は、位相誤差データとして負の値が得られる。
【0029】
なお、連続した3つの値が単調減少または単調増加のいずれでもない場合には、位相誤差は計算されない。
このように、間引き回路3の出力信号の位相が理想状態に対して進んでいれば、位相比較器4は、位相誤差データとして正の値を出力する。一方、間引き回路3の出力信号の位相が理想状態に対して遅れていれば、位相誤差データとして負の値が出力される。
【0030】
ループフィルタ5は、位相比較器4から出力される位相誤差データを平滑化(または、平均化)する。すなわち、ループフィルタ5は、ローパスフィルタとして動作する。そして、ループフィルタ5により平滑化された位相誤差データは、NCO20に与えられる。ループフィルタ5により得られる位相誤差データは、ほぼ一定の値に収束する。
【0031】
NCO20は、遅延素子21、加算器22、加算制御回路23、加算器24を備え、無限位相の積分器(または、完全積分器)として動作する。ループフィルタ5から与えられる位相誤差データは、遅延素子21および加算器22により累積的に加算される。すなわち、位相誤差データは積分される。ここで、位相誤差データは、基本的に、ほぼ一定である。したがって、NCO20により得られる位相信号θは、図2(b)に示すように、時間経過に対して、ほぼリニアに増加してゆく。なお、図2(b)では、位相誤差データが正の値であるものとしている。
【0032】
なお、遅延素子21は、例えば、フリップフリップである。この場合、このフリップフロップは、サンプリングクロックCLK1で動作する。遅延素子21の出力値は、位相信号θとして出力されると共に、加算器22に与えられる。そして、加算器22は、遅延素子21の出力値に対して、ループフィルタ5から出力される位相誤差データを加算する。
【0033】
また、上述の位相誤差データは、1シンボル当たりの位相誤差を表す。したがって、この位相誤差データを積分すると、入力信号のゼロクロス点またはデータ識別点に対するサンプリング点の位相シフト量が得られる。
【0034】
NCO20は、後で詳しく説明するが、1組の基準値が設定されている。1組の基準値は、入力信号の位相に換算したときに「+π」および「−π」を表すように定義される。そして、NCO20により得られる位相信号θは、一方の基準値(ここでは、「+π」)を超えると、リセットされる。ここで、リセットとは、位相信号θに「2π」を加算する処理(あるいは、位相信号θから「2π」を減算する処理)を意味する。
【0035】
従って、NCO20により生成される位相信号θの波形は、図2(b)に示すように、ノコギリ波となる。ここで、NCO20には1組の基準値「+π」及び「−π」が設定されているので、位相信号θ(すなわち、ノコギリ波)は、概ね「−π」から「+π」の範囲で変化する。ただし、後で説明するが、位相信号θは「−π」から「+π」の範囲を超えることもある。また、このノコギリ波の周期Tsaw は、サンプリングクロックfsampおよび入力信号のシンボルレートfs によって、下記(3)式で表される。
1/Tsaw =fsamp−2fs ・・・(3)
なお、上述のリセット処理は、加算制御回路23により実行される。加算制御回路23の動作については、後で詳しく説明する。
【0036】
タップ係数演算部7は、NCO20により生成される位相信号θに基づいて、対応するタップ係数a0〜a4をFIRフィルタ2に与える。なお、タップ係数演算部7の動作については、図3を参照しながら説明した通りである。
【0037】
クロック制御回路8は、NCO20により生成される位相信号θに基づいて、サンプリングクロックCLK1から間引きクロックCLK2を生成する。図2に示す例では、位相信号θが基準値「+π」を超えてその位相信号θがリセットされたときに、サンプリングクロックCLK1のパルスを1つだけ間引くことにより、間引きクロックCLK2が生成されている。この間引きクロックCLK2は、周期は一定ではないが、周波数の平均は2fs となる。
【0038】
間引き回路3は、上述したように、この間引きクロックCLK2に従ってFIRフィルタ2の出力データを間引く。この実施例では、間引き回路3は、1個のフリップフロップ回路であり、例えば、間引きクロックCLK2の立下りエッジでFIRフィルタ2の出力データを読み込んで出力する。図2に示す例では、立上りエッジE1によりデータ識別点D1のデータが出力される。続いて、立上りエッジE2によりゼロクロス点Z1のデータが出力される。さらに、立上りエッジE3によりデータ識別点D2のデータが出力され、立上りエッジE4によりゼロクロス点Z2のデータが出力される。以降、同様に、間引きクロックCLK2に従って、データ識別点のデータおよびゼロクロス点のデータが交互に出力される。
【0039】
このように、実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路100においては、以下の処理が行われる。
(1)入力信号は、サンプリングクロックCLK1を用いてサンプリングされる。
(2)各サンプリングデータは、FIRフィルタ2における補間処理によってデータ識別点データ/ゼロクロス点データに変換される。ただし、サンプリングクロックCLK1は、入力信号のシンボルレートfs の2倍よりも高速である。よって、補間処理によってデータ識別点データ/ゼロクロス点データの一部は、重複することになる。
(3)データ識別点データ/ゼロクロス点データは、間引きクロックCLK2によって間引かれる。ここで、間引きクロックCLK2の周波数の平均は、入力信号のシンボルレートfs の2倍である。すなわち、データ識別点データ/ゼロクロス点データが重複する場合にその一方が間引かれる。この結果、入力信号のシンボルレートfs の2倍の速度のクロックで入力信号のデータ識別点データ/ゼロクロス点データが再生される。すなわち、シンボルタイミングが再生される。
【0040】
次に、NCOの動作を詳しく説明する。ただし、実施形態のNCO20の動作を説明する前に、従来技術の問題点の原因について検討する。
図5は、従来のシンボルタイミングリカバリ回路において使用されているNCO(例えば、図15に示すNCO6)の動作を説明する図である。図5において、横軸は時間を表し、縦軸はNCOの出力(位相信号θ)を表す。ここで、NCOは、24ビット構成であり、「0x800000 (−8388608)」〜「0x7fffff (8388608)」(2の補数)を出力するものとする。そして、「0x800000」及び「0x7fffff」は、それぞれ「−π」及び「+π」と定義されているものとする。
【0041】
NCOには、クロックタイミング毎に、位相誤差データΔθが与えられる。位相誤差データΔθは、上述したように、位相比較器4において検出され、ループフィルタ5を介してNCOに与えられる。また、位相誤差データΔθは、系が安定しているときには、概ね一定である。そして、NCOは、この位相誤差データΔθを累積的に加算することによって位相信号θを生成する。したがって、NCOから出力される位相信号θは、ほぼリニアの増加してゆく(遷移A)。ただし、位相誤差が正の値であるものとする。
【0042】
位相信号θが「0x7fffff(+π)」を超えると、その位相信号θから「2π」が減算さ
れる(遷移B)。以降、上記動作が繰り返される。なお、位相信号θから「2π」が減算されるタイミングにおいて、サンプリングクロックCLK1のパルスが間引かれて、間引きクロックCLK2が生成される。すなわち、遷移Bが発生するときに、間引き回路3においてデータ識別点データ/ゼロクロス点データの間引きが行われる。
【0043】
従来技術のNCOの動作および問題点を詳細に説明する。ここで、シンボルタイミングリカバリ回路においては、サンプリングクロックCLK1を用いて入力信号をサンプリングする。即ち、サンプリングクロックCLK1の周波数を「CLK1」とすると、サンプリングデータs1、s2、s3、s4、...は、図6(a)に示すように「1/CLK1」間隔で得られる。そして、NCOは、この間隔「1/CLK1」を「2π」に換算して表現する。なお、間隔「1/CLK1」は、サンプリングクロックCLK1の周期である。
【0044】
図6(b)は、NCOのカウントアップ動作を示す図である。カウントアップ動作は、図5に示す遷移Aに相当する。なお、図6(b)において、「Ts 」は、タイミング再生後の理想的な信号点(すなわち、補間により生成した信号点)の時間間隔を表す。
【0045】
カウントアップ動作時は、NCOにおいて、1クロック当たり「Δθ」が加算される。ここで、NCOは、「2π」を時間間隔「1/CLK1」に換算する。したがって、NCOにおいて発生する時間間隔T1は、下記(4)式で表される。
T1=(1/CLK1) + (1/CLK1)×(Δθ/2π)=Ts ・・・(4)
ここで、「(1/CLK1)×(Δθ/2π)」は、「Δθ」である。すなわち、カウントアップ時は、サンプリングクロックCLK1の1周期に相当する時間に、位相誤差Δθに相当する時間が加算される。
【0046】
図6(c)は、NCOの位相が2πだけシフトするときの動作を説明する図である。2πシフト時には、図6(b)に示すカウントアップ時の処理に加えて、「2π」を減算する処理が行われる。ここで、NCOの位相角「2π」は、時間間隔「1/CLK1」に相当する。すなわち、「2πシフト」は、サンプリングクロックCLK1の1周期分の位相を遅らせる演算に相当する。そして、2πシフト時にNCOにおいて発生する時間間隔T1は、下記(5)式で表される。
T1=(1/CLK1) + (1/CLK1)×(Δθ/2π)−(1/CLK1)
= (1/CLK1)×(Δθ/2π)
= Δθ ・・・(5)
このように、2πシフト時には、「(1/CLK1)×(Δθ/2π)」(すなわち、Δθ)だけ位相が進むことになる。
【0047】
ところで、2πシフト時には、上述したように、間引き回路3においてデータ識別点データ/ゼロクロス点データの間引きが行われる。例えば、図2に示す例では、サンプリングデータs3、s4が重複し、サンプリングデータs4が間引かれる。また、図5に示す例では、NCOから出力される位相信号θがA点からB点に遷移する際に、B点が間引きポイントとなる。そして、上記(5)式に示すように、この間引きポイントにおいて位相信号θが「Δθ」だけ進むことになる。
【0048】
一方、サンプリングデータs3、s4は、図2に示すように、いずれも、FIRフィルタ2によってデータ識別点k3のデータに変換されている。すなわち、図5において、A点における位相信号θおよびB点における位相信号θは、互いに同じ(あるいは、互いに2πだけシフトした状態)であるはずである。しかしながら、従来技術のNCOにおいては、上記(5)に示すように、A点における位相信号θおよびB点における位相信号θは、互いにΔθだけシフトしている。そして、この誤差Δθが、図16に示す側帯波の原因となっていた。
【0049】
実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路100は、この問題を解決するために、2πシフト時に位相誤差Δθを補償する機能を備える。
図7は、実施形態のNCO20の構成を示す図である。なお、NCO20の入力は位相誤差データΔθであり、NCO20の出力は位相信号θである。また、NCO20は、この実施例では、25ビット構成であり、「0x1400000 (−12582912)」〜「0x7fffff (8388607)」(2の補数)の値を出力する。「0x7fffff」は「+π」に相当し、「0x1400000」は「−1.5π」に相当する。
【0050】
図7において、遅延素子21および加算器22は、積分器を構成する。すなわち、サンプリングクロックCLK1に従って、Δθが累積的に加算される。そして、累積加算結果を表す位相信号θが出力される。
【0051】
加算制御回路23は、サンプリングクロックCLK1に従って下記の動作を実行する。
if ( b > 0x7fffff ) {
c = −0x1000000 − a
}
else {
c = 0;
}
ここで、「a」は、ループフィルタ5からNCO20へ与えられる位相誤差データΔθを表す。「b」は、NCO20における累積加算値である位相信号θを表す。「c」は、加算制御回路23により生成される補正値である。そして、加算器24は、位相信号θに対して補正値cを加算する。
【0052】
加算制御回路23は、位相信号θが「+π(0x7fffff)」を超えていなければ、補正値cとして「0」を出力する。この場合、NCO20は、位相信号θをそのまま出力する。一方、加算制御回路23は、位相信号θが「+π(0x7fffff)」を超えると、補正値cとして「−0x1000000−a」を出力する。ここで、「0x1000000」は「2π」に相当する。また、「a」は位相誤差データΔθである。すなわち、加算制御回路23は、位相信号θが「+π(0x7fffff)」を超えると、補正値cとして「−2π−Δθ」を出力する。この場合、NCO20は、位相信号θに「−2π−Δθ」を加算する。すなわち、NCO20は、位相信号θから「2π」を減算し、さらに「Δθ」を減算する。
【0053】
図8は、実施形態のNCO20の動作を説明する図である。図8に示すように、位相信号θが「+π」よりも小さい期間は、図6に示した従来技術と同様に、NCO20から出力される位相信号θは、ほぼリニアの増加してゆく(遷移A)。
【0054】
位相信号θが「0x7fffff(+π)」を超えると、NCO20においては、その位相信号θから「2π+Δθ」が減算される(遷移B)。以降、上記動作が繰り返される。なお、位相信号θから「2π+Δθ」が減算されるタイミングにおいて、サンプリングクロックCLK1が間引かれて、間引きクロックCLK2が生成される。すなわち、遷移Bが発生するときに、間引き回路3においてデータ識別点データ/ゼロクロス点データの間引きが行われる。
【0055】
図9は、実施形態のNCOの動作を詳細に説明する図である。なお、図9(a)に示すカウントアップ時の動作は、図6(b)を参照しながら説明した通りである。
図9(b)は、実施形態のNCO20の位相が2πだけシフトするときの動作を説明する図である。2πシフト時には、図9(a)に示すカウントアップ処理に加えて、「2π+Δθ」を減算する処理が行われる。ここで、NCOの位相角「2π」は、時間間隔「1/
CLK1」に相当する。位相誤差Δθは、「(1/CLK1)×(Δθ/2π)」に相当する。よって、実施形態のNCO20においては、2πシフト時に発生する時間間隔T1は、下記(6)式で表される。
T1=(1/CLK1) + (1/CLK1)×(Δθ/2π)−(1/CLK1)−Δθ
= (1/CLK1)×(Δθ/2π)−Δθ
=0・・・(6)
このように、実施形態のNCO20においては、2πシフト時に位相(すなわち、位相信号θ)は変化しない。
【0056】
一方、2πシフト時には、実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路100においても同様に、間引き回路3によりデータ識別点データ/ゼロクロス点データの間引きが行われる。例えば、図2に示す例では、サンプリングデータs3、s4が重複し、サンプリングデータs4が間引かれる。また、図8に示す例では、NCO20から出力される位相信号θがA点からB点に遷移する際に、B点が間引きポイントとなる。そして、実施形態のNCO20においては、上記(6)式に示すように、この間引きポイントにおいて位相信号θの位相進みは「ゼロ」である。
【0057】
ここで、サンプリングデータs3、s4は、図2に示すように、いずれも、FIRフィルタ2によってデータ識別点k3のデータに変換されている。すなわち、図8において、A点における位相信号θおよびB点における位相信号θは、互いに同じ(あるいは、互いに2πだけシフトした状態)であるはずである。そして、実施形態のNCO20においては、上記(6)に示すように、A点における位相信号θおよびB点における位相信号θは互いに同じである。したがって、実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路100においては、間引きタイミングにおいてNCOによる演算誤差が発生しない。
【0058】
図10は、実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路100の出力信号のスペクトルを示す図である。なお、このスペクトルは、256QAMで変調された6Mbaudの信号についてシミュレーションにより得られたものである。
【0059】
実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路100によれば、図16に示す従来のシンボルタイミングリカバリ回路と異なり、側帯波が発生しない。したがって、実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路100においては、シンボルタイミングの再生精度が向上する。さらに、シンボルタイミングの再生精度が向上すると、それに応じてBER(Bit Error Rate)特性も改善する。
【0060】
なお、図5および図8を比較すると、実施形態のNCO20の位相信号θの振幅は、従来技術の振幅よりも大きくなっている。ここで、図5に示すNCOを採用した場合、ループフィルタ5の収束値は、下記(7)式で表される。
収束値= (2^24−1)×(CLK1−(1/Ts)) / CLK1 ・・・(7)
一方、実施形態のNCO20を採用した場合には、ループフィルタの収束値5は、下記(8)式で表される。
収束値= (2^24−1)×(CLK1−(1/Ts)) /(CLK1−(1/Ts)) ・・・(8)
このように、実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路100においては、ループフィルタ5の収束値(すなわち、位相誤差Δθ)は、図5に示すNCOを搭載するシンボルタイミングリカバリ回路と比較して大きくなる。この結果、位相信号θの周期(すなわち、ノコギリ波の周期)は、従来の構成および実施形態の構成において互いに同じである。
【0061】
また、実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路100においては、位相信号θの変動領域は、「−π≦θ≦π」に限定されない。すなわち、位相信号θは「θ<−π」領域にまで広がる。そして、実施形態のタップ係数演算部7は、「−π≦θ≦π」領域だけで
なく、「θ<−π」領域のタップ係数a0〜a4も求めることができる。
【0062】
図11は、加算制御回路23の実施例である。この実施例では、加算制御回路23は、比較器31、乗算器32、加算器33、セレクタ34を備える。比較器31の一方の入力端子には「0x7fffff」が与えられ、他方の入力端子には信号bが与えられる。ここで、信号bは、位相信号θに相当する。そして、比較器31は、「b≦0x7fffff」であれば信号b0 を出力し、「b>0x7fffff」であれば信号b1 を出力する。
【0063】
乗算器32は、信号aに「−1」を乗算する。すなわち「−a」を生成する。また、加算器33は、乗算器32の出力値に対して「−0x1000000」を加算する。ここで、「a」は位相誤差データΔθに相当し、「0x1000000」は「2π」に相当する。したがって、加算器33の出力は、「−2π−Δθ」である。そして、加算器33の出力は、セレクタ34のb1 端子に与えられる。一方、セレクタ34のb0 端子には「ゼロ」が与えられる。セレクタ34は、比較器31から信号b0 が与えられると、b0 端子を選択する。すなわち、「ゼロ」が出力される。一方、信号b1 が与えられると、セレクタ34はb1 端子を選択する。すなわち、「−2π−Δθ」が出力される。
【0064】
なお、加算制御回路23は、この実施例ではハードウェア回路で実現されているが、ソフトウェアで実現することも可能である。
また、上述の実施例では、NCO20により生成されるノコギリ波信号が右肩上がりであるが、本発明はこのようなケースに限定されるものではない。なお、「右肩上がり」とは、位相信号θが時間経過に伴ってほぼリニアに増加し、その位相信号θが閾値を超えたときにリセットされる波形を意味する。
【0065】
図12は、他の実施形態のNCOの構成を示す図である。このNCOは、ノコギリ波信号が右肩下がりである場合に用いられる。なお、「右肩下がり」とは、位相信号θが時間経過に伴ってほぼリニアに減少し、その位相信号θが閾値を下回ったときにリセットされる波形を意味する。図12に示すNCOは、遅延素子21、加算器22、加算器24、および加算制御回路25を備える。そして、加算制御回路25は、位相信号θが「−π」よりも小さくなると、「2π+a」を出力する。なお、「a」は「Δθ」に相当する。すなわち、図12に示すNCOにおいては、位相信号θが「−π」よりも小さくなると、その位相信号θに「2π+Δθ」が加算される。
【0066】
このように、ノコギリ波信号が右肩上がりのときは、位相信号θから「2π+Δθ」を減算する演算が行われる。一方、ノコギリ波信号が右肩下がりのときは、位相信号θに対して「2π+Δθ」を加算する演算が行われる。ただし、これらの演算は、実質的に同じ処理を意味している。
【0067】
図13は、実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路を搭載した受信装置の構成を示す図である。ここでは、この受信装置は、QPSK信号を受信して復調するものとする。QPSK信号は、例えば、無線搬送波に乗せられて伝送される。
【0068】
入力RF信号は、1組のミキサ41a、41bにおいてローカル信号(fvcoから供給される)が乗算される。なお、1組のミキサ41a、41bに与えられるローカル信号は、互いに位相が90度ずれている。また、このローカル信号の周波数は、無線搬送波の周波数とほぼ同じである。これにより、1組のベースバンド信号(I相信号およびQ相信号)が得られる。なお、無線搬送波およびローカル信号の周波数は、完全には一致していない。したがって、受信装置において検出されるQPSK信号の信号点(コンスタレーション)は、IQ位相平面上を、この周波数で回転する。
【0069】
LPF42a、42bは、I相信号およびQ相信号をフィルタリングする。LPF42a、42bの出力信号は、シンボルタイミングリカバリ回路に与えられる。
シンボルタイミングリカバリ回路は、A/D変換器1a、1b、FIRフィルタ2a、2b、間引き回路3a、3b、位相比較器4、ループフィルタ5、NCO20、タップ係数演算部7、クロック制御回路8を備える。なお、A/D変換器1a、FIRフィルタ2a、間引き回路3aは、I相信号を処理し、A/D変換器1b、FIRフィルタ2b、間引き回路3bは、Q相信号を処理する。
【0070】
シンボルタイミングリカバリ回路は、入力QPSK信号のシンボルレートの2倍に等しい周波数を持った間引きクロックCLK2を生成する。そして、1組の間引き回路3a、3bにより、この間引きクロックCLK2に同期した再生信号が得られる。
【0071】
1組の再生信号は、ルートナイキストフィルタ43a、43bを介してバタフライ回路44に入力される。バタフライ回路44は、キャリアリカバリ回路45からの制御信号に基づいて、一次変換により、再生信号から残留キャリア成分を除去する。これによりIチャネル信号およびQチャネル信号が得られる。キャリアリカバリ回路45は、Iチャネル信号およびQチャネル信号に基づいて、位相平面上における信号点の回転成分を検出し、バタフライ回路44に与えるべき制御信号を生成する。
【0072】
なお、位相比較器4は、バタフライ回路44から出力されるIチャネル信号およびQチャネル信号から入力QPSK信号の時間軸方向の位相誤差を検出する。
図14は、実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路100が形成される半導体装置の一例を示している。この実施例では、QPSK復調回路、シンボルタイミングリカバリ回路、エラー訂正回路が1つの半導体チップ上に形成されている。
【0073】
これらの回路は、例えば、ハードウェア記述言語を使って記述される。この場合、記述された回路データは、コンピュータ上で動作する論理合成ツールへ入力され、最適化された論理回路データが生成される。次に、最適化された論理回路データは、コンピュータ上で動作する自動レイアウトツールへ入力される。これにより、チップ上のセル配置およびセル間の配線が決定される。そして、このレイアウトデータに基づいてLSI製造のためのマスクパターンが作成され、そのマスクパターンを用いて半導体装置が製造される。
【0074】
なお、上述の実施例では、FIRフィルタ2のタップ数は5であるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、FIRフィルタ2は、任意のタップ数であってよい。
【0075】
また、上述の実施例では、FIRフィルタを用いてサンプリングデータからゼロクロス点/データ識別点のデータを生成しているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、他の形態のデジタルフィルタを用いてサンプリングデータからゼロクロス点/データ識別点のデータを生成してもよい。
【0076】
さらに、本発明においてシンボルタイミングを再生すべき入力信号は、特に限定されるものではなく、例えば、PSK信号、QAM信号を含むものとする。
(付記1)
入力信号のシンボルタイミングを再生するシンボルタイミングリカバリ回路であって、
入力信号を第1のクロックでサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により得られるサンプリングデータを用いて補間処理を行うことにより、入力信号についての補間データを生成する補間手段と、
前記補間手段により得られる補間データを第2のクロックを利用して間引く間引き手段と、
前記間引き手段の出力信号の位相誤差を検出する位相比較器と、
前記位相比較器の出力信号を平滑化するループフィルタと、
前記ループフィルタの出力に応じた周波数の発振信号を生成する数値制御発振器と、
前記発振信号に応じて前記補間手段の動作を制御する補間制御手段と、
前記発振信号に応じて前記第1のクロックから前記第2のクロックを生成するクロック制御手段と、を備え、
前記数値制御発振器は、前記ループフィルタの出力値を累積的に加算し、その加算値が閾値を超えたときにその加算値から所定値および前記ループフィルタの出力値を減算することにより、前記発振信号を生成する
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【0077】
(付記2)
付記1に記載のシンボルタイミングリカバリ回路であって、
前記所定値は、前記第1のクロックの位相に換算すると2πに相当する
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【0078】
(付記3)
付記1に記載のシンボルタイミングリカバリ回路であって、
前記数値制御発振器は、
前記ループフィルタの出力値を積分する積分回路と、
前記積分回路の出力値と前記閾値とを比較する比較器と、
前記比較器において前記積分回路の出力値が前記閾値を超えたときに、前記所定値および前記ループフィルタの出力値の和を出力するセレクタと、
前記積分器への入力値から前記セレクタの出力を減算する演算器、を備える
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【0079】
(付記4)
付記3に記載のシンボルタイミングリカバリ回路であって、
前記セレクタは、前記比較器において前記積分回路の出力値が前記閾値を超えていないときは、ゼロを出力する
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【0080】
(付記5)
付記1に記載のシンボルタイミングリカバリ回路であって、
サンプリング手段は、A/D変換器である
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【0081】
(付記6)
付記1に記載のシンボルタイミングリカバリ回路であって、
前記補間手段は、FIRフィルタであり、
前記補間制御手段は、前記発振信号に応じてFIRフィルタのタップ係数を生成する
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【0082】
(付記7)
付記1に記載のシンボルタイミングリカバリ回路であって、
前記間引き手段は、前記第2のクロックに従って前記補間手段により得られる補間データをラッチして出力するフリップフロップ回路である
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【0083】
(付記8)
付記1に記載のシンボルタイミングリカバリ回路であって、
前記クロック制御手段は、前記数値制御発振器における加算値が前記閾値を超えたときに前記第1のクロックのパルスを間引くことによって前記第2のクロックを生成する
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【0084】
(付記9)
通信システムにおいて使用される受信装置であって、
入力信号を第1のクロックでサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により得られるサンプリングデータを用いて補間処理を行うことにより、入力信号についての補間データを生成する補間手段と、
前記補間手段により得られる補間データを第2のクロックを利用して間引く間引き手段と、
前記間引き手段の出力信号の位相誤差を検出する位相比較器と、
前記位相比較器の出力信号を平滑化するループフィルタと、
前記ループフィルタの出力に応じた周波数の発振信号を生成する数値制御発振器と、
前記発振信号に応じて前記補間手段の動作を制御する補間制御手段と、
前記発振信号に応じて前記第1のクロックから前記第2のクロックを生成するクロック制御手段と、を備え、
前記数値制御発振器は、前記ループフィルタの出力値を累積的に加算し、その加算値が閾値を超えたときにその加算値から所定値および前記ループフィルタの出力値を減算することにより、前記発振信号を生成するシンボルタイミングリカバリ回路と、
前記シンボルタイミングリカバリ回路により生成されるクロックを利用して受信動作を行う受信回路と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【0085】
(付記10)
入力信号を第1のクロックでサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により得られるサンプリングデータを用いて補間処理を行うことにより、入力信号についての補間データを生成する補間手段と、
前記補間手段により得られる補間データを第2のクロックを利用して間引く間引き手段と、
前記間引き手段の出力信号の位相誤差を検出する位相比較器と、
前記位相比較器の出力信号を平滑化するループフィルタと、
前記ループフィルタの出力に応じた周波数の発振信号を生成する数値制御発振器と、
前記発振信号に応じて前記補間手段の動作を制御する補間制御手段と、
前記発振信号に応じて前記第1のクロックから前記第2のクロックを生成するクロック制御手段と、を備え、
前記数値制御発振器は、前記ループフィルタの出力値を累積的に加算し、その加算値が閾値を超えたときにその加算値から所定値および前記ループフィルタの出力値を減算することにより、前記発振信号を生成するシンボルタイミングリカバリ回路が形成された半導体装置。
【0086】
(付記11)
入力信号のシンボルタイミングを再生するシンボルタイミングリカバリ回路であって、
入力信号を第1のクロックでサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により得られるサンプリングデータを用いて補間処理を行うことにより、入力信号についての補間データを生成する補間手段と、
前記補間手段により得られる補間データを第2のクロックを利用して間引く間引き手段と、
前記間引き手段の出力信号の位相誤差を検出する位相誤差検出手段と、
前記位相誤差に応じた周波数の発振信号を生成する数値制御発振器と、
前記発振信号に応じて前記補間手段の動作を制御する補間制御手段と、
前記発振信号に応じて前記第1のクロックから前記第2のクロックを生成するクロック制御手段と、を備え、
前記数値制御発振器は、前記位相誤差を累積的に加算し、その加算値が閾値を超えたときにその加算値から所定値および前記位相誤差を減算することにより、前記発振信号を生成する
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【0087】
(付記12)
入力信号のシンボルタイミングを再生するシンボルタイミングリカバリ回路であって、
入力信号を第1のクロックでサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により得られるサンプリングデータを用いて補間処理を行うことにより、入力信号についての補間データを生成する補間手段と、
前記補間手段により得られる補間データを第2のクロックを利用して間引く間引き手段と、
前記間引き手段の出力信号の位相誤差を検出する位相比較器と、
前記位相比較器の出力信号を平滑化するループフィルタと、
前記ループフィルタの出力に応じた周波数の発振信号を生成する数値制御発振器と、
前記発振信号に応じて前記補間手段の動作を制御する補間制御手段と、
前記発振信号に応じて前記第1のクロックから前記第2のクロックを生成するクロック制御手段と、を備え、
前記数値制御発振器は、前記ループフィルタの出力値を累積的に加算して出力するとともに、その加算値が閾値を超えたときにはその直前の出力値と同じ位相を表す値を出力することにより、前記発振信号を生成する
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路の構成を示す図である。
【図2】実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路の動作を説明するためのタイミング図である。
【図3】FIRフィルタの動作を説明するための図である。
【図4】位相比較器の動作を説明する図である。
【図5】従来技術のNCOの動作を説明する図である。
【図6】従来技術のNCOの動作を詳細に説明する図である。
【図7】実施形態のNCOの構成を示す図である。
【図8】実施形態のNCOの動作を説明する図である。
【図9】実施形態のNCOの動作を詳細に説明する図である。
【図10】実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路の出力信号のスペクトルを示す図である。
【図11】加算制御回路の実施例である。
【図12】他の実施形態のNCOの構成を示す図である。
【図13】実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路を搭載した受信装置の構成を示す図である。
【図14】実施形態のシンボルタイミングリカバリ回路が形成される半導体装置の一例を示す図である。
【図15】特許文献1に記載のシンボルタイミングリカバリ回路の構成を示す図である。
【図16】図15に示すシンボルタイミングリカバリ回路の出力信号のスペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1 A/D変換器
2 FIRフィルタ
3 間引き回路
4 位相比較器
5 ループフィルタ
7 タップ係数演算部
8 クロック制御回路
11 発振器
20 数値制御発振器(NCO)
21 遅延素子
22 加算器
23 加算制御回路
24 加算器
25 加算制御回路
31 比較器
32 乗算器
33 加算器
34 セレクタ
100 シンボルタイミングリカバリ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号のシンボルタイミングを再生するシンボルタイミングリカバリ回路であって、
入力信号を第1のクロックでサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により得られるサンプリングデータを用いて補間処理を行うことにより、入力信号についての補間データを生成する補間手段と、
前記補間手段により得られる補間データを第2のクロックを利用して間引く間引き手段と、
前記間引き手段の出力信号の位相誤差を検出する位相比較器と、
前記位相比較器の出力信号を平滑化するループフィルタと、
前記ループフィルタの出力に応じた周波数の発振信号を生成する数値制御発振器と、
前記発振信号に応じて前記補間手段の動作を制御する補間制御手段と、
前記発振信号に応じて前記第1のクロックから前記第2のクロックを生成するクロック制御手段と、を備え、
前記数値制御発振器は、前記ループフィルタの出力値を累積的に加算し、その加算値が閾値を超えたときにその加算値から所定値および前記ループフィルタの出力値を減算することにより、前記発振信号を生成する
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【請求項2】
請求項1に記載のシンボルタイミングリカバリ回路であって、
前記所定値は、前記第1のクロックの位相に換算すると2πに相当する
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【請求項3】
請求項1に記載のシンボルタイミングリカバリ回路であって、
前記数値制御発振器は、
前記ループフィルタの出力値を積分する積分回路と、
前記積分回路の出力値と前記閾値とを比較する比較器と、
前記比較器において前記積分回路の出力値が前記閾値を超えたときに、前記所定値および前記ループフィルタの出力値の和を出力するセレクタと、
前記積分器への入力値から前記セレクタの出力を減算する演算器、を備える
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【請求項4】
請求項3に記載のシンボルタイミングリカバリ回路であって、
前記セレクタは、前記比較器において前記積分回路の出力値が前記閾値を超えていないときは、ゼロを出力する
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【請求項5】
通信システムにおいて使用される受信装置であって、
入力信号を第1のクロックでサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により得られるサンプリングデータを用いて補間処理を行うことにより、入力信号についての補間データを生成する補間手段と、
前記補間手段により得られる補間データを第2のクロックを利用して間引く間引き手段と、
前記間引き手段の出力信号の位相誤差を検出する位相比較器と、
前記位相比較器の出力信号を平滑化するループフィルタと、
前記ループフィルタの出力に応じた周波数の発振信号を生成する数値制御発振器と、
前記発振信号に応じて前記補間手段の動作を制御する補間制御手段と、
前記発振信号に応じて前記第1のクロックから前記第2のクロックを生成するクロック制御手段と、を備え、
前記数値制御発振器は、前記ループフィルタの出力値を累積的に加算し、その加算値が
閾値を超えたときにその加算値から所定値および前記ループフィルタの出力値を減算することにより、前記発振信号を生成するシンボルタイミングリカバリ回路と、
前記シンボルタイミングリカバリ回路により生成されるクロックを利用して受信動作を行う受信回路と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項6】
入力信号を第1のクロックでサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により得られるサンプリングデータを用いて補間処理を行うことにより、入力信号についての補間データを生成する補間手段と、
前記補間手段により得られる補間データを第2のクロックを利用して間引く間引き手段と、
前記間引き手段の出力信号の位相誤差を検出する位相比較器と、
前記位相比較器の出力信号を平滑化するループフィルタと、
前記ループフィルタの出力に応じた周波数の発振信号を生成する数値制御発振器と、
前記発振信号に応じて前記補間手段の動作を制御する補間制御手段と、
前記発振信号に応じて前記第1のクロックから前記第2のクロックを生成するクロック制御手段と、を備え、
前記数値制御発振器は、前記ループフィルタの出力値を累積的に加算し、その加算値が閾値を超えたときにその加算値から所定値および前記ループフィルタの出力値を減算することにより、前記発振信号を生成するシンボルタイミングリカバリ回路が形成された半導体装置。
【請求項7】
入力信号のシンボルタイミングを再生するシンボルタイミングリカバリ回路であって、
入力信号を第1のクロックでサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により得られるサンプリングデータを用いて補間処理を行うことにより、入力信号についての補間データを生成する補間手段と、
前記補間手段により得られる補間データを第2のクロックを利用して間引く間引き手段と、
前記間引き手段の出力信号の位相誤差を検出する位相誤差検出手段と、
前記位相誤差に応じた周波数の発振信号を生成する数値制御発振器と、
前記発振信号に応じて前記補間手段の動作を制御する補間制御手段と、
前記発振信号に応じて前記第1のクロックから前記第2のクロックを生成するクロック制御手段と、を備え、
前記数値制御発振器は、前記位相誤差を累積的に加算し、その加算値が閾値を超えたときにその加算値から所定値および前記位相誤差を減算することにより、前記発振信号を生成する
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。
【請求項8】
入力信号のシンボルタイミングを再生するシンボルタイミングリカバリ回路であって、
入力信号を第1のクロックでサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段により得られるサンプリングデータを用いて補間処理を行うことにより、入力信号についての補間データを生成する補間手段と、
前記補間手段により得られる補間データを第2のクロックを利用して間引く間引き手段と、
前記間引き手段の出力信号の位相誤差を検出する位相比較器と、
前記位相比較器の出力信号を平滑化するループフィルタと、
前記ループフィルタの出力に応じた周波数の発振信号を生成する数値制御発振器と、
前記発振信号に応じて前記補間手段の動作を制御する補間制御手段と、
前記発振信号に応じて前記第1のクロックから前記第2のクロックを生成するクロック制御手段と、を備え、
前記数値制御発振器は、前記ループフィルタの出力値を累積的に加算して出力するとともに、その加算値が閾値を超えたときにはその直前の出力値と同じ位相を表す値を出力することにより、前記発振信号を生成する
ことを特徴とするシンボルタイミングリカバリ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−33300(P2009−33300A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193071(P2007−193071)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】