説明

シートパッド及びその製造方法

【課題】シートパッドの着座者側の面に凹部が設けられているシートパッドにおいて、この凹部とシートパッドのパーティングラインとの間において該着座者側の面に成形不良が発生することを防止することが可能なシートパッド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】シートパッド1は、発泡成形用金型10内において発泡成形された発泡成形体2よりなる。発泡成形体2は、パーティングラインPLにおいて交わる一連の第1の成形面2a,4a,4bと第2の成形面4cとを有しており、発泡成形用金型10内において該第2の成形面4bを上向きにして発泡成形されたものであり、該第2の成形面4cがシートパッド1の着座者と反対側の面となっている。第1の成形面4aに、第2の成形面4cに向って凹陥する第1の凹部5が設けられている。第2の成形面4cに、第1の凹部5とパーティングラインPLとの間に向って凹陥する第2の凹部6が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形用金型内において発泡成形された発泡成形体よりなるシートパッドに係り、特に該発泡成形体は、パーティングラインにおいて交わる第1の成形面と第2の成形面とを有しており、該発泡成形用金型内において該第2の成形面を上向きにして発泡成形されたものであり、該第2の成形面が該シートパッドの着座者と反対側の面となっており、該第1の成形面に、該第2の成形面に向って凹陥する第1の凹部が設けられているシートパッドに関する。また、本発明は、このシートパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートや家屋内に設置されるソファー等のシートは、一般的に、軟質ポリウレタンフォーム又は半硬質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッドと、このシートパッドを支持するシートフレームとを有している。
【0003】
シートパッドとして、着座者に当接する主板部と、該主板部の周縁部から該主板部の裏面側へ延出した延出部と、該延出部の延出方向の先端側から主板部の裏面の中央側へ張り出した張出部とを有し、該主板部、延出部及び張出部によって囲まれた凹所にシートフレームを係合させるように構成されたものがある。このようなシートパッドの製造方法が特開2008−183129に記載されている。以下に、第7図を参照して同号のシートパッドの製造方法について説明する。第7図は、同号の図2と同様の金型の断面図である。
【0004】
第7図の通り、金型100は、上型101と、下型102と、該上型101の下側に接合された中型103とを有している。この下型102のキャビティ面によりシートパッドの正面(着座者側の面)側が成形され、上型101及び中型103のキャビティ面によりシートパッドの裏面側が成形される。中型103の側面から、前記凹所を形成するための突出部104(同号では言及なし。)が突設されている。即ち、この下型102のキャビティ底面と中型103の下面との間のキャビティ空間105によりシートパッドの主板部が成形され、該突出部104の突出方向の先端面と下型102のキャビティ側面との間のキャビティ空間106によりシートパッドの延出部が成形され、該突出部104の上面と上型101のキャビティ天井面との間のキャビティ空間107によりシートパッドの張出部が成形される(同号では、延出部と張出部とを合わせて延設部と称している。)。
【0005】
シートパッドを発泡成形する場合、中型103に補強材110(同号ではシート体と称されている。)を被着させ、下型102内に発泡合成樹脂原料を注入し、上型101と下型102とを型締めして該発泡合成樹脂原料を発泡させる。発泡合成樹脂原料は、その発泡の進行に伴って、キャビティ空間105,106,107をこの順に充填していく。これにより、主板部、延出部及び張出部が一体に形成される。また、これらの裏面(延出部及び張出部においては前記凹所の内側に臨む面)に補強材110が一体化される。金型100内のガスは、張出部の張り出し方向の先端側(以下、単に先端側と略す。)の上型101と中型103との接合部109を通って金型100外に排出される。
【0006】
第7図のように、キャビティ空間107に臨む上型101のキャビティ天井面が、張出部の張り出し方向の途中部(以下、単に途中部と略す。)において、該張出部の先端側の金型接合部109よりも高位となっている場合には、キャビティ空間107内にガスが残留し易くなり、張出部にボイド(製品の欠け)等の成形不良が生じるおそれがある。これを防止するために、同号では、突出部104の上面に、上型101のキャビティ天井面に向かって張り出す凸部108(同号では凹部形成部と称されている。)が一体に形成されている。シートパッドの発泡成形時には、キャビティ空間106からキャビティ空間107内に流入した発泡合成樹脂原料は、この凸部108を乗り越えるようにして張出部の先端側へ流れるため、発泡合成樹脂原料がキャビティ空間107内を上型101のキャビティ天井面まで十分に充填するようになり、張出部にボイド等の成形不良が発生することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−183129
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特開2008−183129のように、金型接合部109の近傍において、中型103のキャビティ面に、上方へ張り出す凸部108が設けられている場合、キャビティ空間107内を金型接合部109に向って流れてきた発泡成形材料は、この凸部108を乗り越えた後、中型103のキャビティ面に十分に下降しないまま金型接合部109に到達する可能性がある。この場合、該凸部108よりも金型接合部109側において、発泡成形材料と中型103のキャビティ面との間にガスが残留し、成形後のシートパッドの張出部の中型103側の成形面にボイド等の成形不良が発生するおそれがある。
【0009】
本発明は、シートパッドの着座者側の面に凹部が設けられているシートパッドにおいて、この凹部とシートパッドのパーティングラインとの間において該着座者側の面に成形不良が発生することを防止することが可能なシートパッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)のシートパッドは、発泡成形用金型内において発泡成形された発泡成形体よりなるシートパッドであって、該発泡成形体は、パーティングラインにおいて交わる第1の成形面と第2の成形面とを有しており、該発泡成形用金型内において該第2の成形面を上向きにして発泡成形されたものであり、該第2の成形面が該シートパッドの着座者と反対側の面となっており、該第1の成形面に、該第2の成形面に向って凹陥する第1の凹部が設けられているシートパッドにおいて、該第2の成形面に、該第1の凹部と該パーティングラインとの間に向って凹陥する第2の凹部が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2のシートパッドは、請求項1において、前記第1の凹部と前記パーティングラインとの間に、前記第2の凹部が該パーティングラインに沿って断続的に設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3のシートパッドは、請求項1又は2において、前記パーティングラインの延在方向に間隔をおいて複数個の前記第1の凹部が設けられており、各第1の凹部と該パーティングラインとの間にそれぞれ前記第2の凹部が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明(請求項4)のシートパッドの製造方法は、発泡成形用金型を用いて請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシートパッドを製造する方法であって、該発泡成形用金型は、該シートパッドの前記第1の成形面を成形する第1の成形型と、前記第2の成形面を成形する第2の成形型とを備えており、該第2の成形型は、発泡成形時には該第1の成形型の上側に接合されるものであり、該第1の成形型のキャビティ内面に、該第2の成形型に向って突出した、前記第1の凹部を形成するための第1の凸部が設けられており、該第2の成形型のキャビティ内面に、該第1の成形型と第2の成形型との接合部と、該第1の凸部との間に向って突出した、前記第2の凹部を形成するための第2の凸部が設けられており、該接合部から該発泡成形用金型内のガスを排出しながら該発泡成形用金型内で発泡成形材料を発泡成形することにより該シートパッドを製造することを特徴とするものである。
【0014】
請求項5のシートパッドの製造方法は、請求項4において、前記第1の成形型と第2の成形型とを接合した状態において、前記第2の凸部の先端部は、前記第1の凸部の最上端部よりも下方に位置していることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6のシートパッドの製造方法は、請求項4又は5において、前記第1の成形型と第2の成形型とを接合した状態において、前記第2の凸部の前記接合部と反対側の面は、該第2の凸部の基端側ほど該接合部から離隔するように傾斜しており、且つその基端部は、前記第1の凸部の最先端部の上方かそれよりも該接合部から離隔した位置に配置されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7のシートパッドの製造方法は、請求項4ないし6のいずれか1項において、前記第1の成形型は下型であり、前記第2の成形型は上型であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明(請求項1)のシートパッドにあっては、その着座者と反対側の面(以下、裏面ということがある。)を構成する第2の成形面に、その着座者側の面(以下、座面ということがある。)を構成する第1の成形面に設けられた第1の凹部とパーティングラインとの間に向って凹陥する第2の凹部が設けられている。このシートパッドは、発泡成形用金型内において、該第2の成形面を上向きにして発泡成形されたものである。従って、このシートパッドを発泡成形用金型内で発泡成形した場合、このシートパッドを構成する発泡成形材料は、該金型内をパーティングラインに向って流れる際に、まず第1の凹部の第2の成形面側を回り込み、次いで第2の凹部の第1の成形面側を回り込むようにしてパーティングラインに到達する。これにより、第1の凹部よりもパーティングライン側において、発泡成形材料がより確実に第1の成形面側に回り込むので、該第1の凹部とパーティングラインとの間における第1の成形面即ちシートパッドの座面の成形不良をより確実に防止することが可能である。
【0018】
なお、第1の凹部とパーティングラインとの間に欠陥が生じやすい条件としては、座面から第1の凹部の頂点が第2の成形面に向って伸びている場合であり、特に、第1の凹部によって形作られる隅角部が鋭角状になっている場合や、第1の凹部によってこの隅角部よりもパーティングライン側に形成されるフランジ部(実施の形態を参照のこと)の上面が、シートパッドの内部側ほど第2の成形面に接近するような場合である。
【0019】
前述の通り、シートパッドは、発泡成形用金型内において裏面(即ち第2の成形面)を上向きにして発泡成形される。この発泡成形時には、該発泡成形用金型のうちシートパッドの座面(即ち第1の成形面)を成形する下側の成形型(例えば下型)内に発泡成形材料を供給し、型締めして該発泡成形材料を発泡させる。この発泡成形材料は、金型内において、該下側の成形型のキャビティ内面に沿って広がると共に、上方へ膨張して金型内を充填する。これにより、シートパッドが成形される。このシートパッドの発泡成形においては、一般的に、初期の粘度が低いウレタンフォーム等の発泡成形材料が用いられる。このように初期の粘度が低い発泡成形材料を用いる際には、シートパッドの発泡成形時に金型内において発泡成形材料が素早く下側の成形型のキャビティ内面に沿って広がり、速やかに該キャビティ内面の全体に行き渡るため、下側の成形型による成形面には成形不良が発生しづらい。そのため、より確実に、意匠に影響する座面側の欠陥を防止するためには、下側の成形面を座面とすることが一般的である。本発明では、第2の凹部は、シートパッドの座面に成形不良が発生することを防止するために設けられたものであるが、この第2の凹部は、シートパッドの裏面に設けられているため、この第2の凹部を設けたことによりシートパッドの意匠性が損なわれることは無い。
【0020】
請求項2の態様にあっては、第1の凹部とパーティングラインとの間に、第2の凹部が該パーティングラインに沿って断続的に設けられているので、例えば第2の凹部をパーティングラインに沿って比較的広範囲にわたって設ける必要がある場合でも、第1の凹部とパーティングラインとの間におけるシートパッドの剛性を確保することが可能であり、シートパッドに表皮を設置する際の意匠性を確保することができる。
【0021】
請求項3の態様にあっては、パーティングラインの延在方向に間隔をおいて複数個の第1の凹部が設けられていても、各第1の凹部と該パーティングラインとの間にそれぞれ第2の凹部が設けられているので、各第1の凹部とパーティングラインとの間で第1の成形面に成形不良が発生することをより確実に防止することができる。
【0022】
本発明(請求項4)のシートパッドの製造方法にあっては、発泡成形用金型は、シートパッドの第1の成形面(即ち座面)を成形するための第1の成形型と、該シートパッドの第2の成形面(即ち裏面)を成形するための第2の成形型とを備えている。第2の成形型は、発泡成形時には、第1の成形型の上側に接合されるものとなっている。この第1の成形型のキャビティ内面には、第2の成形型に向って突出した、シートパッドの第1の凹部を形成するための第1の凸部が設けられている。また、第2の成形型のキャビティ内面には、該第1の成形型と第2の成形型との接合部(以下、金型接合部ということがある。)と、第1の凸部との間に向って突出した、シートパッドの第2の凹部を形成するための第2の凸部が設けられている。従って、この発泡成形用金型を用い、金型接合部から該金型内のガスを排出しながら該金型内で発泡成形材料を発泡成形した場合、この発泡成形材料が該金型内を金型接合部に向って流れる際に、この発泡成形材料は、第1の凸部を乗り越えた後、第2の凸部に当って下方に流れるようになる。これにより、この発泡成形材料は、第1の凸部を乗り越えた後、該第1の凸部よりも金型接合部側において第1の成形型のキャビティ内面に十分に密着して金型接合部まで流れることができる。これにより、第1の凸部よりも金型接合部側において発成形材料と第1の成形型のキャビティ内面との間にガスが残留することをより確実に防止することが可能である。その結果、成形後のシートパッドにおいて、第1の凹部とパーティングラインとの間の第1の成形面即ち座面に成形不良が発生することをより確実に防止することが可能となる。
【0023】
このように、本発明のシートパッドの製造方法によれば、シートパッドの第1の凹部とパーティングラインとの間の座面にボイド等の成形不良が発生することをより確実に防止することが可能であるため、高品質なシートパッドを歩留まり良く製造することが可能となる。
【0024】
請求項5の通り、発泡成形用金型は、第1の成形型と第2の成形型とを接合した状態において、第2の凸部の先端部は、第1の凸部の最上端部よりも下方に位置するように構成されていることが好ましい。このように構成することにより、第1の凸部を乗り越えた発泡成形材料をより確実に該第1の凸部の金型接合部側へ回り込ませることが可能となる。
【0025】
請求項6の通り、発泡成形用金型は、第1の成形型と第2の成形型とを接合した状態において、第2の凸部の金型接合部と反対側の面が、該第2の凸部の基端側(上端側)ほど金型接合部から離隔するように傾斜しており、且つその基端部(上端部)が、第1の凸部の最先端部(最上端部)の上方かそれよりも該金型接合部から離隔した位置に配置されるように構成されていることが好ましい。このように構成することにより、発泡成形時に発泡成形金型内において第1の凸部よりも上方へ膨張した発泡成形材料をより確実に第1の凸部の金型接合部側へ導くことが可能となる。
【0026】
本発明のシートパッドの製造方法は、請求項7の通り、下型及び上型よりなる二つ割りの発泡成形用金型に好適に適用可能である。この場合、該下型が第1の成形型に相当し、上型が第2の成形型に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態に係るシートパッドの構成図である。
【図2】図1のシートパッドを製造するための発泡成形用金型の構成図である。
【図3】(a)図は、図2の発泡成形用金型を用いたシートパッドの製造方法における発泡成形材料の流れを示す断面図であり、(b)図は、比較例に係る発泡成形用金型を用いたシートパッドの製造方法における発泡成形材料の流れを示す断面図である。
【図4】別の実施の形態に係るシートパッドの断面図である。
【図5】別の実施の形態に係るシートパッドの断面図である。
【図6】別の実施の形態に係るシートパッドの断面図である。
【図7】従来例に係る発泡成形用金型の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、この実施の形態では、シートパッドとして、車両用シートを構成するシートパッドのうち該シートの腰掛部を構成するクッションパッドを例示しているが、本発明は、クッションパッド以外のシートパッド(例えばシートの背もたれ部を構成するバックパッド等)や、車両用以外の各種シートを構成するためのシートパッド及びその製造方法にも適用可能である。
【0029】
第1図(a)は、実施の形態に係るシートパッドの断面図(第1図(c)のA−A線に沿う断面図)であり、第1図(b)は第1図(a)のB部分の拡大図であり、第1図(c)は第1図(a)のC−C線に沿う断面図である。第2図(a)は、このシートパッドを製造するための発泡成形用金型の断面図(第2図(c)のA−A線に沿う断面図)であり、第2図(b)は第2図(a)のB部分の拡大図であり、第2図(c)は第2図(a)のC−C線に沿う断面図である。第3図(a)は、第2図の発泡成形用金型を用いたシートパッドの製造方法における発泡成形材料の流れを示す断面図であり、第3図(b)は、比較例に係る発泡成形用金型を用いたシートパッドの製造方法における発泡成形材料の流れを示す断面図である。以下、上下方向、左右方向及び前後方向は、このシートパッドを用いて構成されたシートの着座者にとっての上下方向、左右方向及び前後方向と一致するものとする。
【0030】
この実施の形態では、シートパッド1は、車両用シートの腰掛部を構成するクッションパッドである。このシートパッド1は、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッド本体2と、該シートパッド本体2の下面に沿って配設された面状の補強材3とを備えている。補強材3は、シートパッド本体2と一体成形により一体化されている。補強材3を構成する材料としては、例えば不織布が好適であるが、不織布以外の材料(例えばフェルトや織布、編布等)により構成されてもよい。補強材3は省略されてもよい。このシートパッド本体2を発泡成形するための発泡成形用金型(以下、単に金型と略すことがある。)10の構成、並びにこの金型10を用いたシートパッド1の製造方法の詳細については後述する。このシートパッド1は、表皮材(図示略)によって外面が被覆され、シートのベースフレーム(図示略)に取り付けられるものとなっている。シートパッド本体2の下面には、このベースフレームが係合する係合部2b,2cが設けられている。この実施の形態では、シートパッド本体2の下面の前部及び後部にそれぞれ凹所よりなる係合部2b,2cが設けられている。なお、係合部2b,2cの形状や個数、配置等の構成はこれに限定されない。図示は省略するが、シートパッド本体2の下面の左辺部及び右辺部にも、それぞれこれと同様の係合部が設けられている。これらの係合部2b,2cにそれぞれベースフレームが係合することにより、シートパッド1がベースフレームに固定され、該シートパッド1がベースフレームに対し前後左右にずれ動くことが防止される。着座者がシートに着座したときには、このシートパッド1の上面に該着座者の臀部及び腿部が接触する。
【0031】
この実施の形態では、第1図(a),(b)の通り、シートパッド本体2は、着座者が座る座部2zと、該座部2zの前面2a(第1図(b))から前方に向って突出したフランジ部4とを有している。このフランジ部4は、座部2zの前面2aの下辺に沿って該前面2aの左端から右端まで連続して形成されている。このフランジ部4の上下方向の厚さは、座部2zの前端部の上下方向の厚さよりも小さいものとなっている。なお、フランジ部4の形状及び配置はこれに限定されない。この実施の形態では、補強材3は座部2zの下面にのみ配設されているが、フランジ部4の下面4cにも配設されてもよい。
【0032】
この実施の形態では、座部2zの前面2aとフランジ部4の上面4aとによって形成される凹形状部が第1の凹部5となっている。この実施の形態では、座部2zの前面2aは、下端側ほど後方(即ち座部2zの内方)となるように傾斜しており、フランジ部4の上面4aは、後端側ほど下方となるように(即ちシートパッド本体2の下面に接近するように)傾斜しており、該前面2aと上面4aとは鋭角状に交わっている。この座部2zの前面2aとフランジ部4の上面4aとのなす角は60〜100°程度である。
【0033】
このフランジ部4は、座部2zと一体に成形されたものである。この実施の形態では、座部2zの前面2aとフランジ部4の上面4a及び前面4bとが、後述の金型10の第1の成形型としての下型11により連続して成形され、座部2zの下面(補強材3)とフランジ部4の下面4cとが、この金型10の第2の成形型としての上型12により連続して成形されたものとなっており、このフランジ部4の前面4bと下面4cとが交わる角部がパーティングラインPLとなっている。即ち、この実施の形態では、座部2zの前面2aとフランジ部4の上面4a及び前面4bとが一連の第1の成形面となっており、座部2zの下面とフランジ部4の下面4cとが一連の第2の成形面となっている。
【0034】
この実施の形態では、第1図(a),(b)の通り、第1の凹部5の頂点、即ち座部2zの前面2aとフランジ部4の上面4aとの交差隅部付近に、該フランジ部4の上面4aから下方(この実施の形態では座部2zの前面2aの延長方向)に凹陥する第3の凹部5aが設けられている。この第3の凹部5aは、第1の凹部5と連続したものであり、この第3の凹部5aにより、第1の凹部5の頂点が部分的にさらにシートパッド本体2の下面に向って伸びた形状となっている。フランジ部4の上面4aからの第3の凹部5aの深さdは、3〜10mm特に5mm程度である。この実施の形態では、第3の凹部5aは、シートパッド本体2の外面を被覆した前記表皮材を意匠線に沿って吊り込むためのものである。この第3の凹部5aの底部には、第1の凹部5内に吊り込まれた表皮材を係止するための係止部材としてのワイヤ7が埋設されている。なお、係止部材の構成はこれに限定されない。このワイヤ7に、表皮材に設けられたフック等の係止具を係止することにより、表皮材がシートパッド本体2に留め付けられる。なお、第3の凹部5aの機能は、これに限定されない。
【0035】
フランジ部4の下面4cには、該下面4cから第1の凹部5とパーティングラインPLとの間に向って上方に凹陥する第2の凹部6が設けられている。この実施の形態では、第1図(b)の通り、第2の凹部6の底面(天井面)6aと前方の側面6bとは、フランジ部4の上面4a及び前面4bと略平行に延在している。また、この第2の凹部6の後方の側面6cは、下端側ほど前方の側面6bとの間隔が大きくなるように傾斜している。この第2の凹部6の底面6aからフランジ部4の上面4aまでの距離(即ち該底面6aと上面4aとの間のウレタン厚み)tは、3〜10mm特に5mm程度であることが好ましい。この第2の凹部6の底面6aからフランジ部4の上面4aまでの距離tは、該上面4aからの第1の凹部5の深さdよりも小さいことが好ましい。この第2の凹部6の前方の側面6bからフランジ部4の前面4bまでの距離(即ち該側面6bと前面4bとの間のウレタン厚み)tは、5〜15mm程度であることが好ましい。この第2の凹部6の後方の側面6cから第3の凹部5aまでの最短距離(即ち該側面6cと第3の凹部5aとの間のウレタンの最小厚み)tは、3〜10mm程度であることが好ましい。
【0036】
第1図(b)の通り、第2の凹部6の後方の側面6cの下端は、第1の凹部5の最深部(この実施の形態では、第1の凹部5の頂点をさらに下方へ延長した第3の凹部5aの底面の後縁付近。以下、同様。)の下方かそれよりも後方(パーティングラインPLから離隔した位置)に位置していることが好ましい。具体的には、第2の凹部6の後方の側面6cの下端は、第1の凹部5の最深部の鉛直下方から後方へ10〜30mm程度の範囲内に位置していることが好ましい。また、この第2の凹部6の底面6aの最高位部(この実施の形態では、底面6aの前端付近)は、第1の凹部5の最深部(第3の凹部5aの底面の後縁付近)よりも高位に位置していることが好ましい。
【0037】
この実施の形態では、第1図(c)の通り、座部2zの前面2aとフランジ部4の上面4aとの交差隅部には、左右方向に間隔をおいて複数個の第3の凹部5aが設けられており、各第3の凹部5aとパーティングラインPLとの間にそれぞれ第2の凹部6が設けられている。この実施の形態では、第3の凹部5a同士は、実質的に同一形状となっており、第2の凹部6同士も、実質的に同一形状となっている。各第2の凹部6の左右方向の幅wは、各第3の凹部5aの左右方向の幅wの300〜500%程度であることが好ましい。各第2の凹部6の左右方向の幅wは、各々が対峙する各第3の凹部5aの左右方向の幅wよりも大きいことが好ましい。隣り合う第2の凹部6,6同士の間隔wは40〜70mm程度であることが好ましい。
【0038】
なお、第3の凹部5a及び第2の凹部6の個数や配置、形状等の構成はこれに限定されない。例えば、全ての第3の凹部5aが同一形状でなくてもよく、一部の第3の凹部5aが他の第3の凹部5aと異なる形状であってもよい。また、第2の凹部6についても、全て同一形状でなくてもよく、一部の第2の凹部6が他の第2の凹部6と異なる形状であってもよい。
【0039】
次に、シートパッド本体2を発泡成形するための金型10について説明する。第2図(a)〜(c)の通り、この実施の形態では、金型10は、第1の成形型としての下型11と、第2の成形型としての上型12とを備えた2つ割りの発泡成形用金型となっている。なお、金型10の構成はこれに限定されない。例えば、金型10は、下型11と上型12との間に中型(図示略)が配置された構成であってもよい。この場合、下型11が第1の成形型に相当し、中型が第2の成形型に相当するものであってもよく、中型が第1の成形型に相当し、上型12が第2の成形型に相当するものであってもよい。金型10は、さらに多数の成形型を組み合わせたものであってもよい。第2図(a)の符号13は、上型12を下型11に対し開閉可能に連結したヒンジ部を示している。符号14は、上型12と下型11との接合部(パーティングライン)を示している。この金型10内において、シートパッド本体2は、座面(第1図(a)〜(c)における上面)を下向きにして発泡成形される。以下、金型10の前後方向をシートパッド本体2の前後方向に対応させて該金型10の各部の構成について説明する。
【0040】
下型11は、シートパッド本体2の座部2zを成形するための第1のキャビティ空間11aと、フランジ部4を成形するための第2のキャビティ空間11bとを有している。型開き状態にあっては、これらのキャビティ空間11a,11bは、上方に開放している。型締め時には、上型12は、これらのキャビティ空間11a,11bを上方から閉鎖するように、下型11の上面に接合される。これらのキャビティ空間11a,11bに臨む上型12のキャビティ内面により、座部2zの下面(補強材3)及びフランジ部4の下面4cが成形され、下型11のキャビティ内面により、座部2z及びフランジ部4の残りの外面が成形される。
【0041】
即ち、第1のキャビティ空間11aの底面により、座部2zの上面即ちシートパッド本体2の座面が成形される。第2図(a),(b)の通り、第1のキャビティ空間11aの前端部は第2のキャビティ空間11bよりも深くなっており、これらの間の段差面11cにより、座部2zの前面2aが成形される。第2のキャビティ空間11bの底面11dによりフランジ部4の上面4aが成形され、第2のキャビティ空間11bの前方の壁面11eによりフランジ部4の前面4bが成形される。この実施の形態では、該段差面11cと第2のキャビティ空間11bの底面11dとによって形成された、金型内方へ向って張り出す凸形状部が、第1の凹部5を形成するための第1の凸部15となっている。この第1の凸部15の外形は、実質的に、第1の凹部5の内部形状と合致する形状となっている。該段差面11cは、上端側ほど後方となるように傾斜しており、第2のキャビティ空間11bの底面11dは、後端側ほど上方となるように傾斜しており、該段差面11cと底面11dとは鋭角状に交わっている。この段差面11cと底面11dとのなす角は、シートパッド本体2の座部2zの前面2aとフランジ部4の上面4aとのなす角と実質的に同一である。第2図(b)の通り、金型10を型締めした状態にあっては、この第2のキャビティ空間11bの前方の壁面11eの上端縁と、上型12のキャビティ内面の前端縁とが金型10の前端側の接合部14において接合される。
【0042】
第1の凸部15の先端部(即ち該段差面1cと第2のキャビティ空間11bの底面11dとが交わる角部)には、第3の凹部5aを形成するための第3の凸部15aが設けられている。第2図(b)の通り、この実施の形態では、該第3の凸部15aは、第2のキャビティ空間11bの底面11dの後端部から上方(この実施の形態では、該段差面11cの延長方向)へ向って突出している。この第3の凸部15aは、第1の凸部15と連続したものであり、この第3の凸部15aにより、第1の凸部15の頂点が部分的にさらに上型12のキャビティ内面に向って伸びた形状となっている。第3の凸部15aの先端部には、ワイヤ7を係止するためのマグネット17が埋設されている。なお、ワイヤ7の下型11への係止方法はこれに限定されない。この第3の凸部15aの外形は、実質的に、第3の凹部5aの内部形状と合致する形状となっている。第2のキャビティ空間11bの底面11dからの第3の凸部15aの突出高さpは、フランジ部4の上面4aからの第3の凹部5aの深さdと実質的に同一大きさであり、その好適範囲も該深さdの好適範囲と実質的に同一である。
【0043】
上型12のキャビティ内面には、第2の凹部6を形成するための第2の凸部16が設けられている。第2図(b)の通り、この実施の形態では、第2の凸部16は、金型10を型締めした状態において、上型12のキャビティ内面の前端縁の近傍部から、第1の凸部15と金型10の前端側の接合部14との間に向って下方に突出している。この第2の凸部16の外形は、実質的に、第2の凹部6の内部形状と合致する形状となっている。金型10を型締めした状態における第2の凸部16の先端面(下端面)16aと第2のキャビティ空間11bの底面11dとの間隔sは、第2の凹部6の底面6aからフランジ部4の上面4aまでの距離tと実質的に同一大きさであり、その好適範囲も該距離tの好適範囲と実質的に同一である。金型10を型締めした状態において、この第2の凸部16の先端面16aと第2のキャビティ空間11bの底面11dとの間隔sは、第2のキャビティ空間11bの底面11dからの第1の凸部15の突出高さpよりも小さいことが好ましい。金型10を型締めした状態における第2の凸部16の前側の側面16bと第2のキャビティ空間11bの前方の壁面11eとの間隔sは、第2の凹部6の前方の側面6bからフランジ部4の前面4bまでの距離tと実質的に同一大きさであり、その好適範囲も該距離tの好適範囲と実質的に同一である。第2の凸部16の後側の側面16cは、基端(上端)側ほど前側の側面16bから離隔するように傾斜している。この第2の凸部16の後側の側面16cは、前方且つ下方へ比較的なだらかに傾斜していることが好ましい。具体的には、この側面16cは、鉛直方向に対し前方且つ下方へ30〜75°特に45〜60°程度の傾斜角θ(第2図(b))にて傾斜していることが好ましい。この第2の凸部16の後側の側面16cから第3の凸部15aまでの最短距離sは、第2の凹部6の後方の側面6cから第3の凹部5aまでの最短距離tと実質的に同一大きさであり、その好適範囲も該距離tの好適範囲と実質的に同一である。
【0044】
第2図(b)の通り、第2の凸部16の後側の側面16cの上端部は、第1の凸部15の最上端部(この実施の形態では、第1の凸部15の頂点をさらに上方へ延長した第3の凸部15aの上端部。以下、同様。)の上方かそれよりも後方(金型接合部14から離隔した位置)に配置されていることが好ましい。具体的には、第2の凸部16の後側の側面16cの上端部は、第1の凸部15の最上端部の鉛直上方から後方へ10〜30mm程度の範囲内に位置していることが好ましい。また、発泡成形用金型10は、下型11と上型12とを接合(型締め)した状態において、第2の凸部16の先端部(下端部)が第1の凸部15の最上端部(第3の凸部15aの上端部)よりも下方に位置するように構成されていることが好ましい。
【0045】
第2図(a)の符号12a,12bは、上型12のキャビティ内面に設けられた、シートパッド本体2の下面のフレーム係合部2b,2cを形成するための張出部を示している。
【0046】
この実施の形態では、第2図(c)の通り、第1の凸部15の頂点、即ち第2のキャビティ空間11bの底面11dと前記段差面11cとの交差角部には、左右方向に間隔をおいて複数個の第1の凸部15が設けられており、各第1の凸部15と金型10の前端側の接合部14との間にそれぞれ第2の凸部16が設けられている。各第2の凸部16の左右方向の幅及び隣り合う第2の凸部16,16同士の間隔は、それぞれ、実質的に各第2の凹部6の左右方向の幅w及び隣り合う第2の凹部6,6同士の間隔wと同一大きさであり、且つそれらの好適範囲も、該幅w及び間隔wと実質的に同一である。
【0047】
なお、第1の凸部15及び第2の凸部16の個数や配置、形状等の構成はこれに限定されない。
【0048】
この金型10を用いてシートパッド1を製造する場合、まず、下型11と上型12とを型開きし、該上型12のキャビティ内面に補強材3を被着させる。また、ワイヤ7を、各第3の凸部15aの上端面に跨って延在するように配設し、各第3の凸部15aの上端面のマグネット17に対し磁力により吸着保持させる。次に、下型11内に発泡合成樹脂原料を注入し、下型11と上型12とを型締めして該発泡合成樹脂原料を発泡させる。この発泡合成樹脂は、キャビティ空間11a,11bをこの順に充填していく。これにより、シートパッド本体2の座部2zとフランジ部4とが一体に成形される。また、シートパッド本体2の下面に補強材3が一体化される。この際、キャビティ空間11a,11b内のガスは、下型11と上型12との接合部14を通って金型10外に排出される。
【0049】
第3図(a)の通り、この発泡成形工程において、発泡合成樹脂が第1のキャビティ空間11aから第2のキャビティ空間11bに入り込む場合、該発泡合成樹脂は、各第3の凸部15a及びこれらの間の第1の凸部15の頂点を乗り越えて第2のキャビティ空間11bに入り込む。この発泡合成樹脂は、該第1の凸部15及び第3の凸部15aを乗り越えた直後に第2の凸部16に当る。そして、この発泡合成樹脂は、該第2の凸部16の後側の側面16cに沿って下方へ流れ、該第2の凸部16の後側の側面16cと第3の凸部15aとの間、及び該第2の凸部16の先端面16aと第2のキャビティ空間11bの底面11dとの間に入り込む。その後、この発泡合成樹脂は、該第2の凸部16の先端面16aと第2のキャビティ空間11bの底面11dとの間、及び該第2の凸部16の前側の側面16bと第2のキャビティ空間11bの前方の壁面11eとの間を通り、該壁面11eと上型12のキャビティ内面とが交わる接合部14に到達する。
【0050】
この際、第2の凸部16の後側の側面16cが前方且つ下方へ比較的なだらかに(鉛直方向に対し前方且つ下方へ好ましくは30〜75°特に好ましくは45〜60°程度の傾斜角θにて)傾斜している方がより好ましく、さらに第2の凸部16の先端部(下端部)が第1の凸部15の最上端部(この実施の形態では第3の凸部15aの上端部)よりも下方に位置し、また該側面16cの上端部が第1の凸部15の最上端部(第3の凸部15aの上端部)の上方かそれよりも後方(金型接合部14から離隔した位置)に配置されることにより、成形後のシートパッド本体2に、より欠陥が発生しにくくなる。
【0051】
このように、本発明にあっては、第1の凸部15及び第3の凸部15aを乗り越えて第2のキャビティ空間11bに入り込んだ発泡合成樹脂は、該第1の凸部15及び第3の凸部15aを乗り越えた直後に第2の凸部16に当って下方へ流れるため、該第1の凸部15及び第3の凸部15aを乗り越えた後、該第3の凸部15aの第2のキャビティ空間11b側の面、該第2のキャビティ空間11bの底面11d及び前方の壁面11eに十分に密着して接合部14まで流れることができる。これにより、第1の凸部15及び第3の凸部15aよりも接合部14側において発泡合成樹脂と下型11のキャビティ内面との間にガスが残留することをより確実に防止することが可能である。その結果、成形後のシートパッド1において、第1の凹部5及び各第3の凹部5aとパーティングラインPLとの間のフランジ部4の上面4a及び前面4bにボイド等の成形不良が発生することをより確実に防止することが可能となる。
【0052】
キャビティ空間11a,11bを充填した発泡合成樹脂が硬化した後、下型11と上型12とを型開きしてシートパッド本体2及びフランジ部4を脱型する。その後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業を行うことにより、シートパッド1が完成する。
【0053】
以上の通り、本発明によれば、シートパッド1のパーティングラインPL付近において、着座者側に配置されるフランジ部4の上面4a及び前面4bにボイド等の成形不良が発生することを防止することが可能であるため、高品質なシートパッド1を歩留まり良く製造することが可能となる。
【0054】
なお、仮に第2の凸部16が設けられていない場合に、第1の凸部15及び第3の凸部15aを乗り越えた発泡合成樹脂が第2のキャビティ空間11b内でどのように流動するかについて第3図(b)を参照して説明する。第3図(b)の発泡成形用金型10’は、上型12のキャビティ内面に、第1の凸部15と接合部14との間に向って突出する第2の凸部16が設けられていないこと以外は、第2図(a)〜(c)及び第3図(a)の発泡成形用金型10と同様の構成となっている。第3図(b)において、第2図(a)〜(c)及び第3図(a)と同一符号は同一部分を示している。この発泡成形用金型10’を用いてシートパッドを発泡成形した場合、第3図(b)の通り、第1の凸部15及び第3の凸部15aを乗り越えて第2のキャビティ空間11bに入り込んだ発泡合成樹脂は、十分に第2のキャビティ空間11bの底面11dに向って下降しないまま接合部14に吸い寄せられて該接合部14に到達してしまう可能性がある。この場合、第1の凸部15及び第3の凸部15aよりも接合部14側において、発泡合成樹脂と下型11のキャビティ内面との間にガスが残留し、成形後のシートパッドにおいて、第1の凹部5及び第3の凹部5aとパーティングラインPLとの間のフランジ部4の上面4a及び前面4bにボイドB等の成形不良が発生するおそれがある。これに対し、本発明によれば、前述の通り、発泡合成樹脂は、該第1の凸部15及び第3の凸部15aを乗り越えた直後に第2の凸部16に当って下方へ流れることにより、該第1の凸部15及び第3の凸部15aを乗り越えた後、該第3の凸部15aの第2のキャビティ空間11b側の面、該第2のキャビティ空間11bの底面11d及び前方の壁面11eに十分に密着して接合部14まで流れることができるので、成形後のシートパッド1において、フランジ部4の上面4a及び前面4bにボイド等の成形不良が発生することをより確実に防止することが可能である。
【0055】
この実施の形態では、パーティングラインPLの延在方向に間隔をおいて複数個の第3の凹部5aが設けられているが、第1図(c)の通り、各第3の凹部5aとパーティングラインPLとの間にそれぞれ第2の凹部6が設けられているので、各第3の凹部5aとパーティングラインPLとの間でフランジ部4の上面4a及び前面4bに成形不良が発生することをより確実に防止することができる。
【0056】
この実施の形態では、第2の凹部6は、シートパッド1の座面と反対側を向いたフランジ部4の下面4cに設けられているので、この第2の凹部6を設けたことによりシートパッド1の意匠性が損なわれることは無い。
【0057】
この実施の形態では、発泡成形用金型10は、下型11と上型12とを接合(型締め)した状態において、第2の凸部16の先端部(下端部)が第1の凸部15の最上端部(この実施の形態では第3の凸部15aの上端部)よりも下方に位置するように構成されているため、該第1の凸部15及び第3の凸部15aを乗り越えた発泡合成樹脂をこの第2の凹部16によってより確実に該第1の凸部15及び第3の凸部15aの第2のキャビティ空間11b側へ回り込ませることが可能となる。
【0058】
また、この実施の形態では、第2の凸部16の後側の側面16cは、上端側ほど前側の側面16bから離隔するように傾斜しており、且つ該側面16cの上端部は、第1の凸部15の最上端部(この実施の形態では第3の凸部15aの上端部)の上方かそれよりも後方(金型接合部14から離隔した位置)に配置されている。これにより、発泡成形時に金型10内において第1の凸部15及び第3の凸部15aよりも上方へ膨張した発泡合成樹脂がより確実にこの側面16cによって第1の凸部15及び第3の凸部15aの第2のキャビティ空間11b側へ導かれるようになる。
【0059】
<その他の構成>
第4図〜第6図は、それぞれ、第3の凸部5a及び第2の凸部6の別の形状例を示す、第1図(c)と同様部分の断面図である。
【0060】
前述の実施の形態では、パーティングラインPLの延在方向に間隔をおいて複数個の第3の凹部5aが設けられ、各第3の凹部5aとパーティングラインPLとの間にそれぞれ第2の凹部6が設けられているが、第3の凸部5a及び第2の凸部6の個数や配置はこれに限定されない。
【0061】
例えば、第4図のシートパッド1Aのように、第2の凹部6は、複数個の第3の凹部5aとパーティングラインPLとの間に跨って設けられてもよい。第4図では、第2の凹部6がフランジ部4の左端側から右端側まで連続して延在しており、この1個の第2の凹部6が全ての第3の凹部5aとパーティングラインPLとの間に跨って存在したものとなっているが、第2の凹部6は、一部の第3の凹部5aの群とパーティングラインPLとの間にのみ跨って存在するように配設されてもよい。
【0062】
第5図のシートパッド1Bのように、第3の凹部5aも、フランジ部4の左端側から右端側まで連続して延在したものであってもよい。
【0063】
第6図のシートパッド1Cのように、1個の第3の凹部5aとパーティングラインPLとの間に、左右方向に間隔をおいて複数個の第2の凹部6が設けられてもよい。
【0064】
なお、第1図のシートパッド1や第6図のシートパッド1Cのように、複数個の第2の凹部6をパーティングラインPLに沿って断続的に設けることにより、例えば第2の凹部6をパーティングラインPLに沿って比較的広範囲にわたって設ける必要がある場合でも、第3の凹部5aとパーティングラインPLとの間におけるシートパッド1の剛性を確保することが可能であり、例えばシートパッド1に表皮材を装着した際に、この表皮材からシートパッド1のパーティングラインPL付近に荷重が加えられても、シートパッド1がこの荷重により押し潰されてしまうことを防止することが可能となる。
【0065】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示の構成に限定されない。例えば、上記の実施の形態では、シートパッド本体の前方の壁面に第1の凹部を形成した例を示したが、左右の方や後面等の他のパッド側面に第1の凹部が設けられたシートパッドに本発明を適用してもよい。
【0066】
本発明では、第3の凹部は設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,1A,1B,1C シートパッド
2 シートパッド本体
3 補強材
4 フランジ部
5 第1の凹部
5a 第3の凹部
6 第2の凹部
10 発泡成形用金型
11 下型
12 上型
15 第1の凸部
15a 第3の凸部
16 第2の凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形用金型内において発泡成形された発泡成形体よりなるシートパッドであって、
該発泡成形体は、パーティングラインにおいて交わる第1の成形面と第2の成形面とを有しており、該発泡成形用金型内において該第2の成形面を上向きにして発泡成形されたものであり、
該第2の成形面が該シートパッドの着座者と反対側の面となっており、
該第1の成形面に、該第2の成形面に向って凹陥する第1の凹部が設けられているシートパッドにおいて、
該第2の成形面に、該第1の凹部と該パーティングラインとの間に向って凹陥する第2の凹部が設けられていることを特徴とするシートパッド。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の凹部と前記パーティングラインとの間に、前記第2の凹部が該パーティングラインに沿って断続的に設けられていることを特徴とするシートパッド。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記パーティングラインの延在方向に間隔をおいて複数個の前記第1の凹部が設けられており、各第1の凹部と該パーティングラインとの間にそれぞれ前記第2の凹部が設けられていることを特徴とするシートパッド。
【請求項4】
発泡成形用金型を用いて請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシートパッドを製造する方法であって、
該発泡成形用金型は、該シートパッドの前記第1の成形面を成形する第1の成形型と、前記第2の成形面を成形する第2の成形型とを備えており、該第2の成形型は、発泡成形時には該第1の成形型の上側に接合されるものであり、
該第1の成形型のキャビティ内面に、該第2の成形型に向って突出した、前記第1の凹部を形成するための第1の凸部が設けられており、
該第2の成形型のキャビティ内面に、該第1の成形型と第2の成形型との接合部と、該第1の凸部との間に向って突出した、前記第2の凹部を形成するための第2の凸部が設けられており、
該接合部から該発泡成形用金型内のガスを排出しながら該発泡成形用金型内で発泡成形材料を発泡成形することにより該シートパッドを製造することを特徴とするシートパッドの製造方法。
【請求項5】
請求項4において、前記第1の成形型と第2の成形型とを接合した状態において、前記第2の凸部の先端部は、前記第1の凸部の最上端部よりも下方に位置していることを特徴とするシートパッドの製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、前記第1の成形型と第2の成形型とを接合した状態において、前記第2の凸部の前記接合部と反対側の面は、該第2の凸部の基端側ほど該接合部から離隔するように傾斜しており、且つその基端部は、前記第1の凸部の最先端部の上方かそれよりも該接合部から離隔した位置に配置されていることを特徴とするシートパッドの製造方法。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項において、前記第1の成形型は下型であり、前記第2の成形型は上型であることを特徴とするシートパッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−50693(P2012−50693A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195798(P2010−195798)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】