説明

シートロック装置

【課題】簡単な機構で背もたれ部に前倒し力を付与するシートロック装置を提供する。
【解決手段】本発明によるシートロック装置は、後部座席シートの回動可能な背もたれ部を車体に固定するシートロック装置であって、車体に設けられるストライカと、背もたれ部内のシートバックフレームに装着され、ストライカが係合する係合溝を有するベースプレートと、係合溝に前記ストライカを係留するラッチと、ラッチをロック方向に保持するラチェットと、ラチェットをロック解除方向に動かす解除レバーとで構成されるロック機構部と、一端がシートバックフレームに取り付けられ、他端がロック時にストライカに当接してたわむロッドスプリングと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートロック装置に係り、より詳細には、シートロックを解除した時に、シートの背もたれ部に前倒れトルクを付与するシートロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用シートは、着座部、背もたれ部およびヘッドレストからなる。特許文献1には、車両の後部座席シートの背もたれ部を前倒し可能に固定するシートロック装置が示されている。背もたれ部を前倒し可能にすると、荷物を荷室と車室間で移動することや荷室を広く使用することができる。このシートロック装置は、背もたれ部の上部を車体に着脱可能に固定するもので、背もたれ部上部の車両走行中の揺れも防止する。なお、背もたれ部の底部は軸支されて回動可能である。特許文献2には、背もたれ部の底部に渦巻きばねを装着した例が示されている。渦巻きばねを使用すると、シートロック装置を解除した時、渦巻きばねに蓄えられた力により、容易に水平位置に前倒しできる。
【0003】
渦巻きばねは、後部座席シートが重くて頑丈な場合、背もたれ部を前倒しするには大きな力を蓄積する必要がある。これは、背もたれ部が水平位置から後方側に約120度傾斜しており、この状態で背もたれ部の一端である根元側を回動させるからである。渦巻きばねの力を強くすると、勢いがつきすぎて急激な前倒しとなる。
【0004】
モータを使用して背もたれ部の回動を補助する場合、背もたれ部を概略水平の状態から回動して起立させると、起立途中の渦巻きばねの反発力が作用するタイミングで、背もたれ部に人体や荷物が挟まれていると判断し、モータを反転させ背もたれ部を元の位置に戻してしまうおそれがある。これを図5に示す。実線がモータの無負荷時の回転周期で、破線が何かを挟み込んだ場合のモータの回転周期を示す。背もたれ部の傾斜角度すなわちリクラーが約30度となった付近で、渦巻きばねの反発力を何かの挟み込みと誤検知している例である。
【0005】
渦巻きばねを前倒し用のヘルバースプリングとして回転中心部に取り付けると、背もたれ部の重量に打ち勝つべく大きなトルクを発生させる渦巻きばねを設ける必要がある。このとき、車体トリムと座席の間に十分な隙間が確保できない場合などにおいて、乗員に異物感なく渦巻きばねを取り付けるレイアウトが困難となる課題が生じる。
【特許文献1】特開2006−248330号公報
【特許文献2】特開昭60−88638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡単な機構で背もたれ部に前倒しトルクを付与することができるシートロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明による請求項1記載のシートロック装置は、後部座席シートの回動可能な背もたれ部を車体に固定するシートロック装置であって、車体に設けられるストライカと、前記背もたれ部内のシートバックフレームに取り付けられ、前記ストライカが係合する係合溝を有するベースプレートと、前記係合溝に前記ストライカを係留するラッチと、前記ラッチをロック方向に保持するラチェットと、前記ラチェットをロック解除方向に動かす解除レバーとで構成されるロック機構部と、一端が前記シートバックフレームに取り付けられ、他端がロック時に前記係合溝に係合した前記ストライカに当接してたわむロッドスプリングと、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2は、前記ストライカの表面が樹脂コーティングされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載のシートロック装置によれば、ロック時にストライカに当接してたわむロッドスプリングを設けたので、ロック解除時には、ロッドスプリングがストライカを蹴るので、背もたれ部に前倒し力を付与できる。これにより、背もたれ部がロック機構部から確実に離れるので、モータで回動する場合でも人手にて回動する場合でも、背もたれ部を引き続いて容易に前倒しできる。ロック中は、ロッドスプリングがストライカに当接してたわんでいるので、背もたれ部に常に前倒しトルクが付与できる。そのため車体が振動しても、ラッチやラチェットはガタつくことなく保持できる。
【0010】
請求項2によれば、ストライカに樹脂コーティングしたので、ロッドスプリングがストライカに当接する場合の異音を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明によるシートロック装置を説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明によるシートロック装置の断面構造図である。後部座席シート1は着座部(図示せず)と背もたれ部2とヘッドレスト3とで構成される。図1では、後部座席シート1の上部のみ示す。シートロック装置50は、ロック機構部20とストライカ5とロッドスプリング9とで構成される。ロック機構部20は、車両の後部座席シート1の背もたれ部2の上部側面に設けられている。ストライカ5は斜線で示す後方側の車体10ではなく、左右側の車体10に設けられる。図1では、ストライカ5にロック機構部20が係合している。ロック機構部20は、背もたれ部2の内部のシートバックフレーム4に取り付けられる。ロッドスプリング9の一端は、シートバックフレーム4に取り付けられ、ロッドスプリング9の他端は、ロック状態でストライカ5に当接し、たわむ位置に設けられる。ロッドスプリング9は、ばね鋼を使用することが好ましい。図1でロックを解除すれば、背もたれ部2は底部が回動可能に軸支されているので、前方に前倒しできる。前倒しトルクの単位は(距離)×(力)であるので、ロック機構部20が背もたれ部の上部で、底部の軸支点から離れた距離にあれば、同じトルクを得るにも小さな力で済む。
【0013】
図2は、ロック機構部、ロッドスプリングおよびストライカの取り付けを示す斜視図である。図2に示すように、ストライカ5は、車体10の一側に取り付けられる。解除レバー7を含むロック機構部20は、シートバックフレーム4に取り付けられた台座6に装着される。ロッドスプリング9は、台座6に挿入され、留め金8a、8bでシートバックフレーム4に取り付けられる。従って、シートバックフレーム4が後方側に倒されると、ロック機構部20がストライカ5に係合し、同時に、ストライカ5がロッドスプリング9の先端を前方に押し、たわませることになる。
【0014】
図3は、ロック機構部の斜視図である。図3に示すように、ベースプレート11とサイドプレート15により、解除レバー7、ラチェット12、ラッチ13を挟み込んでいる。ベースプレート11とサイドプレート15にはピン16a、16bの貫通孔が設けられ、中央後方側にストライカ5が係合する係合溝18が設けられる。ラチェット12は、ラッチ13が反時計回りに回動しないようにする爪であり、解除レバー7でラチェット12をラッチ13から外すと、ラッチ13は反時計回りに回動する。ラッチ13は、ストライカ5を囲い込む凹部19が設けられる。樹脂製のストッパ14は、サイドプレート15の係合溝18の奥側に設けられ、ストライカ5が当接した際の異音を抑止する。なお、ラチェット12とラッチ13の間には、ばね17(図4に示す)が設けられる。
【0015】
図4は、ロック機構部の動作説明図である。図4(A)はロック状態を示す。図4(B)はロック状態が解除された直後の状態を示す。図4(A)では、ストライカ5が係合溝18に係合し、ラッチ13の凹部19で挟み込まれている。ロッドスプリング9の下端が前方側にたわんで、ラッチ13を反時計回りに回動させようとするが、ラチェット12がラッチ13のこの回動を封じている。ここで解除レバー7を上方向に引くと、ラチェット12が反時計回りに回動し爪がラッチ13から外れる。すると、図4(B)に示すように、ラッチ13がただちにラチェット12の下側の位置まで回動する。同時に、ロッドスプリング9がストライカ5を蹴るので、ロック機構部20を含む背もたれ部2は、前方側に前倒しトルクを得て動く。
【0016】
図4(B)は、ロック直前の状態も示している。図4(B)の状態で、背もたれ部2を後方に強く押すと、ストライカ5によってラッチ13が時計回りに回動し、凹部19がストライカ5を挟み込み、ストライカ5を係合溝18内に係留する。ストライカ5は係合溝18を前方向に進むがストッパ14に当接して止まる。一方、ロッドスプリング9がたわんで、ラッチ13を反時計回りに回動させようとするが、ラチェット12がラッチ13に当接して反時計回りの回動を封じる。ここでロック状態が成立する。
【0017】
ロック状態では、ロッドスプリング9がたわんでいるので、その反発力によってラッチ13とラチェット12がガタつかないように保持できる。ロッドスプリング9の前倒し力は、ロッドスプリング9が背もたれ部2底部の回動点から遠い位置にあるので、比較的小さな力でも、大きな前倒しトルクを得ることができる。
【0018】
本構成によれば、ロッドスプリング9がストライカ5に当接するタイミングはほぼ起立状態の完了直前であるため、また、乗員が背もたれ部2の間などに挟み込まれる心配がない位置にあるため、この角度近傍における挟み込み検知を解除状態に設定しておくことが可能となる。従って、起立状態完了前の途中で自動復帰用のモータ作動を停止させてしまうような誤った動作を、本発明による簡易な構成により回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によるシートロック装置は、回動可能な車両の後部座席シートに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるシートロック装置の断面構造図である。(実施例1)
【図2】本発明によるロック機構部、ロッドスプリングおよびストライカの取り付けを示す斜視図である。(実施例1)
【図3】本発明によるロック機構部の斜視図である。(実施例1)
【図4】本発明によるロック機構部の動作説明図である。(実施例1)
【図5】渦巻きばねとモータ制御を採用した背もたれ部において、挟み込みが誤検知された例を示す。(従来例)
【符号の説明】
【0021】
1 後部座席シート
2 背もたれ部
3 ヘッドレスト
4 シートバックフレーム
5 ストライカ
6 台座
7 解除レバー
8a、8b 留め金
9 ロッドスプリング
10 車体
11 ベースプレート
12 ラチェット
13 ラッチ
14 ストッパ
15 サイドプレート
16a、16b ピン
17 ばね
18 係合溝
19 凹部
20 ロック機構部
50 シートロック装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部座席シートの回動可能な背もたれ部を車体に固定するシートロック装置であって、
車体に設けられるストライカと、
前記背もたれ部内のシートバックフレームに装着され、前記ストライカに係合する係合溝を有するベースプレートと、前記係合溝に前記ストライカを係留するラッチと、前記ラッチをロック方向に保持するラチェットと、前記ラチェットをロック解除方向に動かす解除レバーとで構成されるロック機構部と、
一端が前記シートバックフレームに取り付けられ、他端がロック時に前記ストライカに当接してたわむロッドスプリングと、を備えることを特徴とするシートロック装置。
【請求項2】
前記ストライカは、表面が樹脂コーティングされていることを特徴とする請求項1に記載のシートロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−254663(P2008−254663A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100886(P2007−100886)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】