説明

シート貯留装置、および、シート処理システム

【課題】搬送路の上流側や下流側でシートの搬送状態が変化しても、搬送路の逆側でのシートの搬送状態を維持できるシート貯留装置およびシート処理システムの提供を図る。
【解決手段】シート貯留装置1は貯留部2と搬入ローラ3と搬出ローラ4とセンサS1,S2と制御部7とを備える。貯留部2はシートを貯留する。搬入ローラ3は、上流搬送路5からシートを貯留部2に搬入する。搬出ローラ4は、貯留部2に貯留されたシートを下流搬送路6に搬出する。センサS1,S2は、それぞれ上流搬送路5、下流搬送路6でのシートの滞留や詰まりを検出する。制御部7は、センサS1,S2の検出結果に基づいて、モータM1,M2を制御し、上流搬送路5や下流搬送路6でシートの滞留や詰まりが生じても、逆側の搬送路でのシートの搬送状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路を搬送されるシートを一時的に貯留するシート貯留装置、および、シート貯留装置を備えるシート処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大量のシートを連続搬送する搬送路では、一部で搬送不良が生じると、その復旧まで搬送路全体でシートの搬送を停止することになる。そこで、搬送不良が生じても処理を継続するために、複数の処理経路を備えて並列にシートを処理するものがある(例えば、特許文献1又は2参照。)。
【特許文献1】特開2003−292223号公報
【特許文献2】特開2004−343409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
仮に、並列にシートを処理するようにしていても、一方の処理経路で搬送不良が生じれば、他方の処理経路で全てのシートを処理することになり、この箇所がボトルネックとなってシートの搬送が遅延することになる。シートの搬送が遅延すれば、処理経路を構成する上流側や下流側での処理速度も抑制する必要が生じるが、このことはシステム制御や構成の複雑化や、装置全体としての処理効率の低下を招来するため望ましくない。
【0004】
そこで、本発明の目的は、搬送路の一部でシート搬送の遅延や停止が生じても、搬送路の他部での処理速度を維持して、システム制御や構成の複雑化、装置全体としての処理効率の低下を防ぐことができるシート貯留装置およびシート処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のシート貯留装置は貯留部と搬入部と搬出部と状態取得部と制御部とを備える。貯留部はシートを貯留する。搬入部は、貯留部よりも上流側の搬送路から貯留部にシートを搬入する。搬出部は、貯留部よりも下流側の搬送路に貯留部からシートを搬出する。状態取得部は、搬送路上の特定位置でのシートの搬送状態を取得する。制御部は、状態取得部で取得した搬送状態に基づいて、搬入部と搬出部とによる貯留部に対するシートの搬入出を制御し、これにより、搬送路の特定位置での搬送状態の定常状態からの変化、例えば、搬送路の上流側や下流側で搬送停止や搬送遅延などの滞留が生じても、貯留部を境界とした特定位置と逆側の搬送路でのシートの搬送状態を維持する。
【0006】
特定位置を貯留部よりも下流側の搬送路内に設定された第1の位置とし、状態取得部が第1の位置でシートが滞留する状態を状得している間に、制御部が搬入部を介して貯留部にシートを搬入させ、制御部が搬出部にシートの搬出を停止させると好適である。これにより、搬送路の下流側でシートが滞留していても、この滞留がある間はシートが搬送路の下流に搬送されずに貯留部に貯留され、搬送路の上流側での搬送状態を維持できる。
【0007】
特定位置を貯留部よりも上流側の搬送路内に設定された第2の位置とし、状態取得部が第2の位置でシートが滞留する状態を取得している間に、制御部が搬出部に対して貯留部にシートを搬出させると好適である。これにより、搬送路の上流側でシートが滞留していても、この滞留がある間はシートが貯留部から搬送路の下流に搬送され、搬送路の下流側での搬送状態を維持できる。
【0008】
特定位置を貯留部内に設定された第3の位置とし、状態取得部が第3の位置で貯留部にシートが貯留されている状態を取得している間には、制御部が搬入部に対して貯留部にシートを搬入させると好適である。これにより、搬送路の上流側を搬送されるシートの搬送順を維持したまま、搬送路の下流側にシートを搬出できる。
【0009】
貯留部は、それぞれがシートを貯留する第1および第2のスタッカ容器を備えてもよい。この場合、搬入部が第1のスタッカ容器にシートを搬入する際に、搬出部が第2のスタッカ容器からシートを搬出し、搬入部が第2のスタッカ容器にシートを搬入する際に、搬出部が第1のスタッカ容器からシートを搬出すると好適である。これにより、一方のスタッカ容器にシートを搬入する順番から独立して、他方のスタッカ容器でシートを排出できる。
【0010】
貯留部は、貯留するシートの両面の向きを反転させる反転部を備えると好適である。これにより、シートの搬出順番を入れ替えることができる。
【0011】
本発明のシート処理システムは、前処理装置と後処理装置と中間装置とを備える。前処理装置は、搬送路を搬送されるシートを前処理する。後処理装置は、搬送路を搬送されるシートを後処理する。中間装置は、前処理装置と後処理装置との間に設けられる。そして、貯留部と搬入部と搬出部と状態取得部と制御部とを備える。貯留部は、中間装置に設けられ、搬送路を搬送されるシートを貯留する。搬入部は、搬送路から貯留部にシートを搬入する。搬出部は、搬送路に貯留部からシートを搬出する。状態取得部は、前処理装置と後処理装置とのうちの少なくとも一方に設けられ、シートの搬送状態を取得する。制御部は、状態取得部で取得した搬送状態に基づいて搬入部と搬出部とによる貯留部に対するシートの搬入出を制御する。これにより、前処理装置と後処理装置とのうちの一方の搬送状態が定常状態から変化することを状態取得部により把握しても、前処理装置と後処理装置とのうちの他方でのシートの搬送状態を維持させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、搬送路の上流側や下流側でシートの搬送状態が定常状態から変化しても、貯留部を介したシートの搬送を制御して、搬送路の逆側でのシートの搬送状態を維持し、システム制御や構成の複雑化、装置全体としての処理効率の低下を防げる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1(A)は第1の実施形態に係るシート貯留装置1のブロック図である。
【0014】
シート貯留装置1は、貯留部2と搬入ローラ3と搬出ローラ4と上流搬送路5と下流搬送路6と制御部7とモータM1,M2とセンサS1,S2とを備える。貯留部2は、シートを貯留する。上流搬送路5および下流搬送路6はシートを搬送する。搬入ローラ3は、本発明の搬入部であり、上流搬送路5から貯留部2にシートを搬入する。搬出ローラ4は、本発明の搬出部であり、貯留部2から下流搬送路6にシートを搬出する。モータM1は搬入ローラ3を駆動する。モータM2は搬出ローラ4を駆動する。センサS1は上流搬送路5でのシートの滞留を検出する。センサS2は下流搬送路6でのシートの滞留を検出する。制御部7は、センサS1,S2の検出信号に基づいて、モータM1,M2の制御信号を生成し出力する。
【0015】
図1(B)は制御部が生成する制御信号と検出信号との対応を説明する表である。
【0016】
制御部7は、上流搬送路5が定常状態から変化してセンサS1でシートの滞留を検出するようになると、モータM2の動作を維持したまま、モータM1の動作を停止させる。また、制御部7は、下流搬送路6が定常状態から変化してセンサS2でシートの滞留を検出するようになると、モータM1の動作を維持したまま、モータM2の動作を停止させる。
【0017】
このように貯留部2を設けて、制御部7で貯留部2へのシートの搬入と搬出とを制御することにより、上流搬送路5や下流搬送路6でシートの滞留が生じても、貯留部2を境界とした逆側の搬送路でのシートの搬送状態を維持できる。したがって、このシート貯留装置1では、システム制御や構成の複雑化、装置全体としての処理効率の低下を防げる。
【0018】
図2(A)は第2の実施形態に係るシート貯留装置11のブロック図である。この実施形態では、主搬送路中に貯留部を設けるのではなく、主搬送路から分岐させた副搬送路中に貯留部を設ける。
【0019】
シート貯留装置11は、貯留部12と搬入ソレノイド13と搬出ローラ14と上流搬送路15と下流搬送路16と制御部17と主搬送路18と副搬送路19とモータM1,M2とセンサS1,S2とを備える。貯留部12は、副搬送路19中に設けられていてシートを貯留する。搬入ソレノイド13は、上流搬送路15から搬入されるシートを主搬送路18または副搬送路19に振り分ける。搬出ローラ14は、貯留部12から下流搬送路16にシートを搬出する。モータM1は搬入ソレノイド13を駆動する。モータM2は搬出ローラ14を駆動する。センサS1は貯留部12でのシートの有無を検出する。センサS2は下流搬送路16でのシートの滞留とシート詰まりとを検出する。制御部17は、センサS1,S2の検出信号に基づいて、モータM1,M2の制御信号を生成し出力する。
【0020】
図2(B)は制御部17の生成する制御信号と検出信号との対応を説明する表である。
【0021】
制御部7は、センサS1で貯留部12でのシートの存在を検出せず、センサS2で下流搬送路16でのシート滞留やシート詰まりを検出しなければ、モータM1および搬入ソレノイド13を駆動させない。これにより、上流搬送路15から搬送される用紙は全て貯留部12を介さずに下流搬送路16にそのまま搬入される。また、制御部7は、センサS1で貯留部12でのシートの存在を検出せず、センサS2で下流搬送路16でのシート滞留やシート詰まりを検出するようになると、モータM1および搬入ソレノイド13を駆動させる。これにより、上流搬送路15から搬送される用紙は貯留部12に貯留させる。また、制御部17は、センサS1で貯留部12にシートが存在することを検出すると、モータM1を動作させ、搬入ソレノイド13を駆動する。これにより、上流搬送路15から搬送される用紙は全て貯留部12に搬入される。
【0022】
このように、貯留部12が副搬送路19中に設けられている場合には、貯留部12にシートが存在している間に、上流搬送路15から搬送されるシートを全て貯留部12に貯留させる。これにより、上流搬送路15を搬送されるシートの搬送順を維持したまま、下流搬送路16にシートを搬出できる。
【0023】
なお、この実施形態で、上流搬送路についてのシート滞留を検出するセンサをさらに設けてもよく、その場合、そのセンサの検出信号に基づいて、制御部の制御を変更してもよい。
【0024】
次に本発明の第3の実施形態に係るシート処理システムとして、大量高速印刷を行う画像形成システムを例に説明する。
【0025】
図3は、画像形成システム100の断面図である。画像形成システム100は、画像形成装置20とスタッカ装置30とZ状用紙折機70とサドル装置80とフィニッシャ装置90とを備える。スタッカ装置30が本発明のシート貯留装置に相当し、画像形成装置20が本発明の前処理装置に相当し、Z状用紙折機70とサドル装置80とフィニッシャ装置90とが本発明の後処理装置に相当する。
【0026】
画像形成装置20は、大容量給紙カセットなどから給紙された用紙に画像を形成してスタッカ装置30に排紙する。スタッカ装置30は、画像形成装置20から給紙された用紙の一部を、用紙ごとの印刷条件や搬送路の搬送状態に応じて一時的に貯留する。Z状用紙折機70は、スタッカ装置30が排紙した用紙の一部を、用紙ごとの印刷条件に応じてZ状に折り曲げる。サドル装置80は、Z状用紙折機70が排紙した用紙の一部を、用紙ごとの印刷条件に応じて中折りしたり、中折りした複数枚の用紙を一部の冊子として用紙中央で中閉じしたり、複数枚の用紙を一部の冊子として用紙端部で閉じたりする。フィニッシャ装置90は、サドル装置80が排紙した用紙や冊子の、端部を揃えてトレイに排出したり、一部ごとに端部位置をずらしてトレイに排出したりする。
【0027】
画像形成装置20は、用紙一枚当たりの処理時間が高速であるが、Z状用紙折機70、サドル装置80、およびフィニッシャ装置90は、用紙一枚当たりの処理時間が画像形成装置20よりも遅い。特にZ状用紙折機70は他の装置よりも処理時間が遅く、また用紙詰まりも生じ易い。そこで、本実施形態では、画像形成装置20とZ状用紙折機70との間にスタッカ装置30を設けて、画像形成装置での処理を後処理の所要時間に関係なく、高速に行えるようにしている。
【0028】
図4は、画像形成装置20の概略の断面図である。
【0029】
画像形成装置20は、内部給紙ユニット21、画像形成ユニット22、および、原稿読取ユニット25を備える。
【0030】
原稿読取ユニット25は、原稿台の上面に配置される原稿から1枚ずつ画像データを読み取る。画像形成ユニット22は、入力される画像データに基づいてLSUからレーザビームを照射し、そのレーザビームを感光体ドラムに導光して、トナー像を形成する。そして、このトナー像を用紙に転写し、熱定着器により熱定着させる。内部給紙ユニット21は複数の内部給紙カセットを備え、A4サイズや、リーガルサイズ、B5サイズなどの用紙が収容される。
【0031】
複数のローラによって構成された搬送路には、印刷条件に適合するサイズの用紙が給紙される。この用紙は、まず搬送路26Aを搬送されて、用紙先端がレジストローラ27Aに把持される位置で停止する。レジストローラ27Aは画像の形成タイミングに合わせて用紙を搬送路26Bに搬出する。搬送路26Bは画像形成ユニット22内で感光体ドラム、熱定着器等を経由して用紙を搬送する。搬送路26Bの後端には分岐部28が設けられていて、印刷条件に応じて用紙の搬送先を振り分ける。具体的には、印刷条件として片面印刷のフェイスアップ排紙が指定されていれば、排紙ローラ27Bに向けて用紙を排出する。印刷条件として片面印刷のフェイスダウン排紙が指定されていれば、搬送路26Cに搬出し、その後、排紙ローラ27Bに向けて排紙する。印刷条件として両面印刷が指定されていれば、搬送路26C、搬送路26Dを経由して再び搬送路26Bに搬送し、その後に、排紙ローラ27Bに向けて排紙する。各搬送路26A〜26Dには複数のセンサ29が設けられていて、それらのセンサ29は搬送路内での用紙の滞留を検出すると、通知情報をスタッカ装置30に送信する。これらのセンサ29は本発明の状態取得部に相当する。
【0032】
図5は、Z状用紙折機70の概略の断面図である。
【0033】
Z状用紙折機70は、Z状用紙折機70内の複数のローラによって構成された搬送路を備え、スタッカ装置30から給紙される用紙の一部をZ状に折り曲げる。そのため、ローラ71A〜71I、センサ79A〜79H、ストッパ73A,73B、折りローラ74A〜74C、ゲート75、およびブラシ76を備える。
【0034】
センサ79A〜79Hは、用紙の前端の通過と後端の通過とを検出する。ローラ71A,71C〜71Iは、用紙を搬送する。ローラ71Bは、用紙を挟持する閉状態と、狭持しない開状態とを切り替えることが可能である。ストッパ73A,73Bは、用紙のサイズに応じた位置に移動して、用紙端部の位置を規制する。折りローラ74A〜74Cは互いの圧接するニップ部にて用紙を折り曲げる。ゲート75は、各用紙の印刷条件に応じて動作し、ローラ71Aとローラ71Iとの間の搬送路、および、ローラ71Aとローラ71Bとの間の搬送路を選択的に開閉する。ブラシ76は用紙の静電気を除去する。
【0035】
印刷条件が用紙のZ折りを行わないものであれば、ゲート75はローラ71Aとローラ71Iとの間の搬送路を開き、ローラ71Iは、サドル装置80に用紙を搬出する。
【0036】
印刷条件が用紙のZ折りを行うものあれば、ゲート75はローラ71Aとローラ71Bとの間の搬送路を開き、ストッパ73A,73Bが用紙サイズに応じた位置に移動し、ローラ72Bが開状態になり、用紙先端がストッパ73Aに接触する位置に用紙が搬送される。折りローラ74A,74Bが回転することで、用紙の先端から1/3程度の部分が、折りローラ74A,74Bのニップ部により折り曲げられる。その後、折りローラ74B,74Cが回転することで、用紙先端から2/3程度の部分が折りローラ74B,74Cのニップ部により折り曲げられる。その後、用紙はローラ71C〜71Hを介して、ローラ71Iまで搬送され、ローラ71Iは、サドル装置80に用紙を搬出する。各センサ79A〜79HはZ状用紙折機70内部の搬送路での用紙詰まりを検出する。それらのセンサ79A〜79Hは搬送路内での用紙の滞留を検出すると、通知情報をスタッカ装置30に送信する。これらのセンサ79A〜79Hは本発明の状態取得部に相当する。
【0037】
図6はサドル装置80の概略の断面図である。
【0038】
サドル装置80は、複数のローラによって構成された搬送路を備え、Z状用紙折機70から給紙される用紙の一部を中綴じする。そのため、ストレート搬送路81A、待機搬送路81B、中綴処理搬送路81C、中折処理搬送路81D、分岐部82、冊子トレイ83、および、センサ89を備える。
【0039】
分岐部82は、各用紙の印刷条件に応じて動作し、ストレート搬送路81Aまたは待機搬送路81Bを選択的に開閉する。印刷条件が用紙の中綴じを行わないものであれば、分岐部82は、ストレート搬送路81Aを開き、ストレート搬送路81Aは、フィニッシャ装置90に用紙を搬出する。印刷条件が用紙の中綴じを行うものであれば、分岐部82は、待機搬送路81Bを開き、中綴じする一連の用紙が揃うまで、各用紙を待機搬送路81Bで待機させる。中綴じする一連の用紙が揃うと、待機搬送路81Bは用紙を中綴処理搬送路81Cに搬出する。中綴処理搬送路81Cでは、一連の用紙の端部を揃え、用紙中央で一部の冊子として中綴じし、冊子を中折処理搬送路81Dに搬出する。中折処理搬送路81Dでは、冊子を中央の中綴じした部分で折り曲げて、冊子トレイ83に搬出する。各搬送路81A〜81Dには複数のセンサ89が設けられていて、それらのセンサ89は、搬送路内での用紙の滞留を検出すると、通知情報をスタッカ装置30に送信する。これらのセンサ89は本発明の状態取得部に相当する。
【0040】
図7はフィニッシャ装置90の概略の断面図である。
【0041】
フィニッシャ装置90は、複数のローラによって構成された搬送路を備え、サドル装置80から給紙される用紙を端部で綴じたり、複数枚をソートして排出したりする。そのため、給紙搬送路91A、通常排紙搬送路91B、ソート搬送路91C、ステープル搬送路91D、分岐部92、プルーフトレイ93、ソートトレイ94、およびセンサ99を備える。
【0042】
分岐部92は、各用紙の印刷条件に応じて動作し、通常排紙搬送路91B、ソート搬送路91C、またはステープル搬送路91Dを選択的に開放する。用紙のソートや端部を綴じない印刷条件であれば、分岐部92は、通常排紙搬送路91Aを開き、通常排紙搬送路91Aは、プルーフトレイ93に用紙を搬出する。用紙がソートを行う印刷条件であれば、分岐部92は、ソート搬送路91Cを開き、用紙を中綴処理搬送路81Cに搬出する。ソート搬送路91Cでは、用紙の端部の位置を振り分けながら、各用紙をソートトレイ94に搬出する。用紙が端部綴じを行う印刷条件であれば、分岐部92は、ステープル搬送路91Dを開き、用紙をステープル搬送路91Dに搬出する。ステープル搬送路91Dでは、一連の用紙の端部を揃え、用紙端部で一部の冊子として綴じ、冊子をソートトレイ94に搬出する。各搬送路91A〜91Dには複数のセンサ99が設けられていて、それらのセンサ99は、搬送路内での用紙の滞留を検出すると、通知情報をスタッカ装置30に送信する。これらのセンサ99は本発明の状態取得部に相当する。
【0043】
図8はスタッカ装置30の概略の断面図である。
【0044】
スタッカ装置30は、複数のローラによって構成された搬送路を備え、画像形成装置20から給紙される用紙の一部を一時貯留する。そのため、ストレート搬送路31A、分離搬送路31B、分岐部32A,32B、スタッカ容器33A,33B、ピックアップローラ34A,34B、および押圧板35A,35Bを備える。
【0045】
分岐部32Aは、画像形成装置20、Z状用紙折機70、サドル装置80、およびフィニッシャ装置90での用紙搬送状態や、各用紙の印刷条件などに応じて動作し、ストレート搬送路31A、または分離搬送路31Bを選択的に開放する。
【0046】
貯留しない用紙については、分岐部32Aは、ストレート搬送路31Aを開き、用紙を後段のZ状用紙折機70に搬出する。貯留する用紙については、分岐部32Aは分離搬送路31Bを開き、用紙を分離搬送路31Bに搬出する。
【0047】
分離搬送路31Bは、用紙の搬出と搬入とが交互に行われる。そのため、分岐部32Bは、スタッカ容器33Aまたはスタッカ容器33Bへの搬送路を交互に開き、スタッカ容器33A,33Bのうちの一方に用紙を搬入し、他方から用紙を搬出する。用紙貯留用のスタッカ容器が満杯になる、または、用紙搬出用のスタッカ容器が空になると、搬入先のスタッカ容器と搬出元のスタッカ容器とが入れ替わる。ピックアップローラ34A,34Bは、スタッカ装置30のフレームに揺動自在に支持され、スタッカ容器33A,33Bに貯留された用紙を搬出する。押圧板35A,35Bはスタッカ装置30のフレームに揺動自在に支持され、スタッカ容器33A,33Bからの用紙搬出時に、用紙の前端を持ち上げて、用紙とピックアップローラとを圧接させる。複数のスタッカ容器33A,33Bを設けることにより、シートを貯留する順番と独立して、スタッカ容器からシートを搬出できる。
【0048】
このような構成のスタッカ装置30では、例えば、Z状用紙折機70でZ状の折りが施される用紙がZ状用紙折機70の内部で滞留している間に、後続の用紙を待機させることができる。
【0049】
図9は、スタッカ装置30のブロック図である。
【0050】
スタッカ装置30はCPU41とROM42とRAM43とネットワークインターフェイス(ネットワークI/F)44と搬送エンジン45と貯留センサ46とを備える。
【0051】
ROM42は、制御プログラムの一つとして搬送路制御プログラムを記憶する。RAM43は搬送路制御プログラムを展開する。CPU41はRAM43に展開された搬送路制御プログラムを実行する。搬送路制御プログラムを記憶するROM42と、搬送路制御プログラムを展開するRAM43と、搬送路制御プログラムを実行するCPU41とは本発明の制御部を構成する。ネットワークI/F44はネットワークに接続され、画像形成装置20とZ状用紙折機70とサドル装置80とフィニッシャ装置90とが送信する通知情報を受信する。通知情報は、各装置で用紙の滞留が生じたことを通知する情報であり、例えば、用紙詰まりの発生や、各装置での用紙処理の遅延を通知する情報である。搬送エンジン45は、図示しない搬送モータやソレノイドなどの機構部から構成され、搬送路での用紙搬送や搬送経路の選択を行う。貯留センサ46は、スタッカ容器33A,33Bに貯留された用紙の存在を検出する。
【0052】
CPU41は、搬送路制御プログラムを実行することにより、ネットワークI/F44で取得した通知情報と貯留センサ46で検出した検出信号とに基づいて搬送エンジン45を制御する。具体的には、スタッカ装置30の後段のZ状用紙折機70やサドル装置80、フィニッシャ装置90で用紙の滞留が生じても、スタッカ装置30の前段の画像形成装置20でのシートの搬送状態を維持し、画像形成装置20から搬入される用紙を貯留する。また、スタッカ装置30の前段の画像形成装置20で用紙の滞留が生じると、貯留している用紙が存在すれば、スタッカ装置30の後段のZ状用紙折機70やサドル装置80、フィニッシャ装置90にその用紙を搬出し、後段でのシートの搬送状態を維持する。また、スタッカ容器33A,33Bに用紙が貯留されていれば、後続の用紙をスタッカ容器33A,33Bのいずれかに貯留する。
【0053】
図10は、スタッカ容器33Aの詳細構成を説明する図である。なお、説明は省くがスタッカ容器33Bも同様のものである。ここでは、スタッカ容器33Aに搬入される用紙の搬入順番を維持したまま搬出する場合の動作状態を示す。
【0054】
スタッカ容器33Aは、第1容器部36Aと、第2容器部37Aと、図示しない回転モータと、図示しない昇降ソレノイドとを備える。第2容器部37Aは、その側面が回転自在にスタッカ装置30のフレームに支持されている。回転モータは第2容器部37Aを回転駆動させる。第1容器部36Aは、昇降自在に第2容器部37Aに支持されている。昇降ソレノイドは第1容器部36Aを昇降駆動させる。第1容器部36Aには、押圧板35Aの移動を遮らないように開口が設けられていて、第2容器部37Aにはピックアップローラ34Aの移動を遮らないように開口が設けられている。回転モータと昇降ソレノイドが本発明の反転部を構成する。
【0055】
図10(A)は、スタッカ容器33Aに用紙が搬入される状態を示す。この場合、第1容器部36Aおよび第2容器部37Aの間隔が広い状態で、第2容器部37Aが第1容器部36Aの下方に位置する。スタッカ容器33Aに搬入される用紙は、第2容器部37A上に堆積する。また、この状態では、ピックアップローラ34Aは上昇して用紙から離れた位置にあり、押圧板35Aは下降して用紙から離れた位置にある。
【0056】
図10(B)は、図10(A)の状態から第1容器部36Aが下降した状態を示す。スタッカ容器33Aへの用紙搬入が終了すると、第1容器部36Aが下降して第1容器部36Aと第2容器部37Aとの間隔が狭まり、第1容器部36Aが第2容器部37Aに対して用紙を押しつける。
【0057】
図10(C)は、図10(B)の状態からスタッカ容器33Aが回転した状態を示す。この状態では、スタッカ容器33Aの回転に伴い用紙の前後端が反転する。
【0058】
図10(D)は、図10(C)の状態からスタッカ容器33Aが下降した状態を示す。この状態では、第1容器部36Aと第2容器部37Aとの間隔が広がる。
【0059】
図10(E)は、スタッカ容器33Aから用紙が搬出される状態を示す。スタッカ容器33Aからの用紙搬出が開始する際には、ピックアップローラ34Aが下降するとともに押圧板35Aが上昇する。
【0060】
このように、スタッカ容器33Aに貯留するシートの両面の向きを反転させれば、貯留したシートの前後端を入れ替えることができ、搬入順番を維持したまま用紙を搬出することができる。
【0061】
本実施形態の画像形成システム100では以上の構成によって、前処理装置や後処理装置でシートが滞留するようになっても、スタッカ装置30に貯留させる用紙の搬送を制御して、滞留していない搬送路の逆側での搬送状態を維持する。したがって、各装置での処理速度を頻繁に変更する必要がなくなり、システム全体としての処理効率の低下を防げる。
【0062】
なお、この実施形態では後処理装置として複数の装置を設ける例を示したが、少なくとも一つの装置は設ければ本発明は好適に実施できる。
【0063】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシート貯留装置を説明する図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るシート貯留装置を説明する図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る画像形成システムの断面図である。
【図4】同画像形成システムが備える画像形成装置の断面図である。
【図5】同画像形成システムが備えるZ状用紙折機の断面図である。
【図6】同画像形成システムが備えるサドル装置の断面図である。
【図7】同画像形成システムが備えるフィニッシャ装置の断面図である。
【図8】同画像形成システムが備えるスタッカ装置の断面図である。
【図9】同スタッカ装置のブロック図である。
【図10】同スタッカ装置の備えるスタッカ容器を説明する図である。
【符号の説明】
【0065】
1,11…シート貯留装置
2,12…貯留部
3…搬入ローラ
4,14…搬出ローラ
5,15…上流搬送路
6,16…下流搬送路
7,17…制御部
13…搬入ソレノイド
20…画像形成装置
30…スタッカ装置
31A…ストレート搬送路
31B…分離搬送路
32A,32B…分岐部
33A,33B…スタッカ容器
34A,34B…ピックアップローラ
35A,35B…押圧板
36A…第1容器部
37A…第2容器部
41…CPU
42…ROM
43…RAM
45…搬送エンジン
70…Z状用紙折機
80…サドル装置
90…フィニッシャ装置
100…画像形成システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを貯留する貯留部と、
前記貯留部よりも上流側の搬送路から前記貯留部にシートを搬入する搬入部と、
前記貯留部よりも下流側の搬送路に前記貯留部からシートを搬出する搬出部と、
搬送路上の特定位置でのシートの搬送状態を取得する状態取得部と、
前記状態取得部で取得した前記搬送状態に基づいて前記搬入部と前記搬出部とによる前記貯留部に対するシートの搬入出を制御し、前記特定位置での搬送状態が定常状態から変化しても、前記貯留部を境界とした前記特定位置と逆側の搬送路でのシートの搬送状態を維持させる制御部と、を備えるシート貯留装置。
【請求項2】
前記特定位置は、前記貯留部よりも下流側の搬送路内に設定された第1の位置であり、
前記制御部は、前記第1の位置でシートが滞留する状態を前記状態取得部が取得している間には、前記搬入部を介して前記貯留部にシートを搬入させ、前記搬出部にシートの搬出を停止させる、請求項1に記載のシート貯留装置。
【請求項3】
前記特定位置は、前記貯留部よりも上流側の搬送路内に設定された第2の位置であり、
前記制御部は、前記第2の位置でシートが滞留する状態を前記状態取得部が取得している間には、前記搬出部を介して前記貯留部からシートを搬出させる、請求項1または2に記載のシート貯留装置。
【請求項4】
前記特定位置は、前記貯留部内に設定された第3の位置であり、
前記制御部は、前記第3の位置で前記貯留部にシートが貯留されている状態を前記状態取得部が取得している間には、前記搬入部を介して前記貯留部にシートを搬入させる、請求項1〜3のいずれかに記載のシート貯留装置。
【請求項5】
前記貯留部は、それぞれがシートを貯留する第1および第2のスタッカ容器を備え、
前記搬入部が前記第1のスタッカ容器にシートを搬入する際に、前記搬出部が前記第2のスタッカ容器からシートを搬出し、
前記搬入部が前記第2のスタッカ容器にシートを搬入する際に、前記搬出部が前記第1のスタッカ容器からシートを搬出する、
請求項1〜4のいずれかに記載のシート貯留装置。
【請求項6】
前記貯留部は、貯留するシートの両面の向きを反転させる反転部を備える請求項1〜5のいずれかに記載のシート貯留装置。
【請求項7】
搬送路を搬送されるシートを前処理する前処理装置と、
前記搬送路を搬送されるシートを後処理する後処理装置と、
前記前処理装置と前記後処理装置との間に設けられた中間装置と、を備えるシート処理システムであって、
前記中間装置に設けられ、前記搬送路を搬送されるシートを貯留する貯留部と、
前記搬送路から前記貯留部にシートを搬入する搬入部と、
前記搬送路に前記貯留部からシートを搬出する搬出部と、
前記前処理装置と前記後処理装置とのうちの少なくとも一方に設けられ、シートの搬送状態を取得する状態取得部と、
前記状態取得部で取得した前記搬送状態に基づいて前記搬入部と前記搬出部とによる前記貯留部に対するシートの搬入出を制御し、前記前処理装置と前記後処理装置とのうちの一方の搬送状態が定常状態から変化することを前記状態取得部により把握しても、前記前処理装置と前記後処理装置とのうちの他方でのシートの搬送状態を維持させる制御部と、
を備えるシート処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−6549(P2010−6549A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168315(P2008−168315)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】