説明

シール部品及び基板処理装置

【課題】所定のシール用スペースを必要とすることなく、安価であって優れた耐久性を確保することができるシール部品を提供する。
【解決手段】シール部品46は大気側が開口する略コ字状の断面形状を有するラジカルシール部材47と、水平方向に沿って配された略瓢箪状の断面形状を有する真空シール部材48と、ラジカルシール部材47及び真空シール部材48が離間して形成する待避空間48d,48eとを有し、ラジカルシール部材47は真空側に配され、真空シール部材48は大気側に配され、ラジカルシール部材47はフッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなり、真空シール部材48はFKMからなり、ラジカルシール部材47のコ字状断面の開口部に真空シール部材48の真空側塊部48aが圧入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部品及び基板処理装置に関し、特に、反応性活性ガスをプラズマ化し、該プラズマによって基板を処理する基板処理装置に用いられるシール部品に関する。
【背景技術】
【0002】
基板としての半導体ウエハにプラズマ処理、例えば、エッチング処理を施すプラズマ処理装置は、内部がほぼ真空まで減圧可能な真空チャンバを備え、真空チャンバに収容された半導体ウエハに該真空チャンバ内でプラズマ化された処理ガスを用いてエッチング処理を施す。このプラズマ処理装置では、真空チャンバの内部(真空)を外部(大気)からシールするためにリング状のシール部品を用いる(例えば、特許文献1参照。)。特に、プラズマ処理装置としてのエッチング処理装置では、半導体ウエハがプラズマからエネルギーを受けて高温になるため、シール部品として耐熱ゴムであるフッ素ゴムからなるOリングが用いられる。
【0003】
近年、処理ガスとして反応性活性ガス(例えば、C4F8ガス等のCxFyガス系の混合ガス)を用い、反応副生成物によってエッチレートを制御するエッチング処理が主流となっている。このエッチング処理では、反応性活性ガスをプラズマ化する際、デポ性の活性種、例えば、フッ素ラジカルが発生する。
【0004】
また、反応性活性ガスを用いるエッチング処理では反応副生成物が真空チャンバ内壁に付着する。該付着した反応副生成物は剥離してパーティクルとなり、半導体ウエハの半導体デバイスに付着して該半導体デバイスの歩留まりを悪化させる。したがって、プラズマ処理装置では付着した反応副生成物を除去するために、ドライクリーニング処理が行われる。例えば、ドライクリーニング処理の一種であるWLDC(Wafer Less Dry Cleaning)処理が行われる。WLDC処理では酸素ガスから発生した酸素イオンによって反応副生成物が除去されるが、このとき、酸素ラジカルも同時に発生する。
【0005】
ところで、上述したフッ素ゴムはラジカル(フッ素ラジカル、酸素ラジカル)によって容易に消耗する。そのため、反応性活性ガスを用いるプラズマ処理装置では、真空側にラジカル耐性を有するフッ素樹脂(具体的には、テフロン(登録商標))からなるOリング状シール部品(RTR(Radical Trap Ring))を配し、大気側にフッ素ゴム(具体的には、フッ化ビニリデン系ゴム(FKM))からなるOリングを配した2重シール構造が用いられる。なお、RTRはテフロン(登録商標)のチューブと、該チューブ内に充填されたゴムとからなる。
【0006】
この2重シール構造では、RTRが真空側から漏れるラジカルをシールし、フッ素ゴムのOリングが外部の大気から真空チャンバ内の真空をシールする。また、この2重シール構造はRTRとフッ素ゴムのOリングとがそれぞれ収容される2つのシール溝が必要であるため、所定のシール用スペースが必要である。
【特許文献1】米国特許第6689221号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のプラズマ処理装置は2重シール構造を用いることを前提に設計されていないため、所定のシール用スペースを確保することができず、上述した2重シール構造を従来のプラズマ処理装置に適用することは困難である。特に、2つの配管の継ぎ手に用いられるKFフランジ継ぎ手構造(JIS規格 G 5526)では、構造上2つのシール溝を設けることができないため、上述した2重シール構造を適用することができない。
【0008】
2重シール構造を適用できない場合には、耐ラジカル性を有するフッ素ゴム(具体的には、テトラフルオロエチレン−パープルオロビニルエーテル系ゴム(FFKM))からなるOリングを用いるが、FFKMは非常に高価であり、また耐ラジカル性はテフロン(登録商標)より劣る。特に、近年、プラズマ処理装置の長寿命化が強く求められているため、FFKMではプラズマ処理装置の使用者の要求を満足する耐久性を確保することができない。
【0009】
本発明の目的は、所定のシール用スペースを必要とすることなく、安価であって優れた耐久性を確保することができるシール部品及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載のシール部品は、高弾性高分子物質を侵食する侵食物質が存在する減圧容器を備え、該減圧容器内に収容された基板に所定の処理を施す基板処理装置において前記減圧容器内部を外部からシールするシール部品であって、前記減圧容器の内部側に配されて前記侵食物質に対する耐性を有する第1の部材と、前記減圧容器の外部側に配されて前記高弾性高分子物質からなる第2の部材と、前記第1の部材の少なくとも一部及び前記第2の部材の少なくとも一部が離間して形成される所定の空間とを備え、前記第1の部材と前記第2の部材とは互いに嵌合することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載のシール部品は、請求項1記載のシール部品において、前記第1の部材は前記外部側が開口するコ字状断面を有し、前記第2の部材の少なくとも一部は前記コ字状断面の開口部に進入することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載のシール部品は、請求項2記載のシール部品において、前記第1の部材のコ字状断面は少なくとも1つの屈曲部を有することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載のシール部品は、請求項3記載のシール部品において、前記屈曲部は狭小部であることを特徴とする。
【0014】
請求項5記載のシール部品は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシール部品において、前記侵食物質は反応性活性ガスから発生する活性種であり、前記第1の部材はフッ素樹脂からなることを特徴とする。
【0015】
請求項6記載のシール部品は、請求項5記載のシール部品において、前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、及びポリクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択された1つであることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載のシール部品は、請求項5又は6記載のシール部品において、前記高弾性高分子物質はフッ化ビニリデン系ゴム及びテトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴムからなる群より選択された1つであることを特徴とする。
【0017】
請求項8記載のシール部品は、請求項1又は2記載のシール部品において、前記侵食物質は腐食ガスであり、前記第1の部材は耐腐食性金属からなることを特徴とする。
【0018】
請求項9記載のシール部品は、請求項8記載のシール部品において、前記耐腐食性金属は、ステンレス、ニッケル及びアルミニウムからなる群より選択された1つであることを特徴とする。
【0019】
請求項10記載のシール部品は、請求項8又は9記載のシール部品において、前記高弾性高分子物質はフッ化ビニリデン系ゴム及びテトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴムからなる群より選択された1つであることを特徴とする。
【0020】
請求項11記載のシール部品は、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のシール部品において、前記第2の部材は括れ部を有することを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成するために、請求項12記載の基板処理装置は、高弾性高分子物質を侵食する侵食物質が存在する減圧容器を備え、該減圧容器内に収容された基板に所定の処理を施す基板処理装置において、前記減圧容器内部を外部からシールするシール部品を備え、前記シール部品は、前記減圧容器の内部側に配されて前記侵食物質に対する耐性を有する第1の部材と、前記減圧容器の外部側に配されて前記高弾性高分子物質からなる第2の部材と、前記第1の部材の少なくとも一部及び前記第2の部材の少なくとも一部が離間して形成される所定の空間とを有し、前記第1の部材と前記第2の部材とは互いに嵌合することを特徴とする。
【0022】
請求項13記載の基板処理装置は、請求項12記載の基板処理装置において、前記第1の部材は前記外部側が開口するコ字状断面を有し、前記第2の部材の少なくとも一部は前記コ字状断面の開口部に進入することを特徴とする。
【0023】
請求項14記載の基板処理装置は、請求項12又は13記載の基板処理装置において、前記侵食物質は反応性活性ガスから発生する活性種であり、前記第1の部材はフッ素樹脂からなることを特徴とする。
【0024】
請求項15記載の基板処理装置は、請求項12又は13記載の基板処理装置において、前記侵食物質は腐食ガスであり、前記第1の部材は耐腐食性金属からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載のシール部品及び請求項12記載の基板処理装置によれば、シール部品が、減圧容器の内部側に配されて高弾性高分子物質を侵食する侵食物質に対する耐性を有する第1の部材と、減圧容器の外部側に配されて高弾性高分子物質からなる第2の部材とを備えるので、第2の部材が侵食されるのを第1の部材によって防ぐことができ、これにより、侵食物質に対する耐性を有する高弾性高分子物質を用いる必要を無くすことができる。また、第1の部材の少なくとも一部及び第2の部材の少なくとも一部が離間して形成される所定の空間を有するので、第2の部材が圧縮変形した際に第2の部材の一部が所定の空間に進入することができ、これにより、第2の部材は容易に圧縮変形することができる。さらに、第1の部材と第2の部材とは互いに嵌合するので、該シール部品を一体的に取り扱うことができると共に、小型化することができる。その結果、該シール部品は、所定のシール用スペースを必要とすることなく、安価であって優れた耐久性を確保することができる。
【0026】
請求項2記載のシール部品及び請求項13記載の基板処理装置によれば、第1の部材は外部側が開口するコ字状断面を有し、第2の部材の少なくとも一部はコ字状断面の開口部に進入するので、クリーピングや降伏によって第1の部材の復元性が低下しても、進入した第2の部材の反発力によって第1の部材を復元させることができる。その結果、耐久性を長期間に亘って維持することができる。
【0027】
請求項3記載のシール部品によれば、第1の部材のコ字状断面は少なくとも1つの屈曲部を有するので、第1の部材も容易に圧縮変形することができる。したがって、第1の部材の追従性を向上させることができ、優れた耐久性を確保することができると共に、第1の部材及び第2の部材への圧縮加重を低減することができる。
【0028】
請求項4記載のシール部品によれば、屈曲部は狭小部であるので、請求項3の効果を確実に奏することができる。
【0029】
請求項5記載のシール部品及び請求項14記載の基板処理装置によれば、侵食物質は反応性活性ガスから発生する活性種であり、第1の部材はフッ素樹脂からなる。フッ素樹脂は活性種によってほとんど侵食されない。したがって、高弾性高分子物質が活性種によって侵食されるのを確実に防止することができ、もって、より優れた耐久性を確保することができる。
【0030】
請求項6記載のシール部品によれば、フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、及びポリクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択された1つであるので、第1の部材を構成する材料を容易且つ安価に入手することができ、もって、該シール部品をより安価にすることができる。
【0031】
請求項7及び10記載のシール部品によれば、高弾性高分子物質は、フッ化ビニリデン系ゴム及びテトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴムからなる群より選択された1つであるので、第2の部材を構成する材料を容易且つ安価に入手することができ、もって、該シール部品をより安価にすることができる。
【0032】
請求項8記載のシール部品及び請求項15記載の基板処理装置によれば、侵食物質は腐食ガスであり、第1の部材は耐腐食性金属からなる。耐腐食性金属は腐食ガスによってほとんど侵食されない。したがって、高弾性高分子物質が腐食ガスによって侵食されるのを確実に防止することができ、もって、より優れた耐久性を確保することができる。
【0033】
請求項9記載のシール部品によれば、耐腐食性金属は、ステンレス、ニッケル及びアルミニウムからなる群より選択された1つであるので、第1の部材を構成する材料を容易且つ安価に入手することができ、もって、該シール部品をより安価にすることができる。
【0034】
請求項11記載のシール部品によれば、第2の部材が括れ部を有するので、第2の部材の追従性を向上させることができ、シールド性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0036】
まず、本発明の第1の実施の形態に係るシール部品及び基板処理装置について説明する。該基板処理装置は反応性活性ガスを用いて基板に所定の処理を施すように構成されている。
【0037】
図1は、本実施の形態に係る基板処理装置としてのプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。このプラズマ処理装置は基板としての半導体ウエハWにRIE(ReactiveIon Etching)処理を施し、またWLDC処理が実行可能なように構成されている。
【0038】
図1において、プラズマ処理装置10は円筒形状の真空容器11(減圧容器)を有し、該真空容器11は内部に処理空間Sを有する。また、真空容器11内には、例えば、直径が300mmの半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)を載置する載置台としての円柱状のサセプタ12が配置されている。真空容器11の内壁面は側壁部材45で覆われる。該側壁部材45はアルミニウムからなり、その処理空間Sに対向する面はイットリア(Y2O3)等のセラミックによってコーティングされている。また、真空容器11は電気的に接地し、サセプタ12は真空容器11の底部に絶縁性部材29を介して設置される。
【0039】
プラズマ処理装置10では、真空容器11の内側壁とサセプタ12の側面とによって、サセプタ12上方の気体分子を真空容器11の外へ排出する流路として機能する排気路13が形成される。この排気路13の途中にはプラズマの漏洩を防止する環状のバッフル板14が配置される。また、排気路13におけるバッフル板14より下流の空間は、サセプタ12の下方へ回り込み、可変式バタフライバルブである自動圧力制御弁(Adaptive Pressure Control Valve)(以下、「APCバルブ」という。)15に連通する。APCバルブ15は、アイソレータ(Isolator)16を介して真空引き用の排気ポンプであるターボ分子ポンプ(Turbo Molecular Pump)(以下、「TMP」という。)17に接続され、TMP17は、バルブV1を介して排気ポンプであるドライポンプ(以下、「DP」という。)18に接続されている。APCバルブ15、アイソレータ16、TMP17、バルブV1及びDP18によって構成される排気流路(以下、「本排気ライン」という。)は、APCバルブ15によって真空容器11内の圧力制御を行い、さらにTMP17及びDP18によって真空容器11内をほぼ真空状態になるまで減圧する。
【0040】
また、配管19がアイソレータ16及びAPCバルブ15の間からバルブV2を介してDP18に接続されている。配管19及びバルブV2(以下、「バイパスライン」という。)は、アイソレータ16及びTMP17をバイパスして、DP18によって真空容器11内を粗引きする。
【0041】
サセプタ12には下部電極用の高周波電源20が給電棒21及び整合器(Matcher)22を介して接続されており、該下部電極用の高周波電源20は、所定の高周波電力をサセプタ12に供給する。これにより、サセプタ12は下部電極として機能する。また、整合器22は、サセプタ12からの高周波電力の反射を低減して高周波電力のサセプタ12への供給効率を最大にする。
【0042】
サセプタ12の内部上方には、導電膜からなる円板状のESC電極板23が配置されている。ESC電極板23には直流電源24が電気的に接続されている。ウエハWは、直流電源24からESC電極板23に印加された直流電圧により発生するクーロン力又はジョンソン・ラーベック(Johnsen-Rahbek)力によってサセプタ12の上面に吸着保持される。また、サセプタ12の上方には、サセプタ12の上面に吸着保持されたウエハWの周りを囲うように円環状のフォーカスリング25が配設される。このフォーカスリング25は、処理空間Sに露出し、該処理空間SにおいてプラズマをウエハWの表面に向けて収束し、RIE処理の効率を向上させる。
【0043】
また、サセプタ12の内部には、例えば、円周方向に延在する環状の冷媒室26が設けられる。この冷媒室26には、チラーユニット(図示せず)から冷媒用配管27を介して所定温度の冷媒、例えば、冷却水やガルデン(登録商標)液が循環供給され、当該冷媒の温度によってサセプタ12上面に吸着保持されたウエハWの処理温度が制御される。
【0044】
さらに、サセプタ12の上面のウエハWが吸着保持される部分(以下、「吸着面」という。)には、複数の伝熱ガス供給孔28が開口している。これら複数の周縁伝熱ガス供給孔28は、サセプタ12内部に配置された伝熱ガス供給ライン30を介して伝熱ガス供給部32に接続され、該伝熱ガス供給部32は伝熱ガスとしてのヘリウムガスを、伝熱ガス供給孔28を介して吸着面及びウエハWの裏面の間隙に供給する。
【0045】
また、サセプタ12の吸着面には、サセプタ12の上面から突出自在なリフトピンとしての複数のプッシャーピン33が配置されている。これらのプッシャーピン33は、モータ(図示せず)とボールねじ(図示せず)を介して接続され、ボールねじによって直線運動に変換されたモータの回転運動に起因して吸着面から自在に突出する。ウエハWにRIE処理を施すためにウエハWを吸着面に吸着保持するときには、プッシャーピン33はサセプタ12に収容され、RIE処理が施されたウエハWを真空容器11から搬出するときには、プッシャーピン33はサセプタ12の上面から突出してウエハWをサセプタ12から離間させて上方へ持ち上げる。
【0046】
真空容器11の天井部には、サセプタ12と対向するようにガス導入シャワーヘッド34が配置されている。ガス導入シャワーヘッド34には整合器35を介して上部電極用の高周波電源36が接続されており、上部電極用の高周波電源36は所定の高周波電力をガス導入シャワーヘッド34に供給するので、ガス導入シャワーヘッド34は上部電極として機能する。なお、整合器35の機能は上述した整合器22の機能と同じである。
【0047】
ガス導入シャワーヘッド34は、多数のガス穴37を有する天井電極板38と、該天井電極板38を着脱可能に支持する電極支持体39とを有する。また、該電極支持体39の内部にはバッファ室40が設けられ、このバッファ室40には処理ガス供給部(図示せず)からの処理ガス導入管41が接続されている。この処理ガス導入管41の途中には配管インシュレータ42が配置されている。この配管インシュレータ42は絶縁体からなり、ガス導入シャワーヘッド34へ供給された高周波電力が処理ガス導入管41によって処理ガス供給部へリークするのを防止する。ガス導入シャワーヘッド34は、処理ガス導入管41からバッファ室40へ供給された処理ガス、例えば、反応性活性ガスであるCxFyガスとアルゴン(Ar)ガスとの混合ガスを、ガス穴37を経由して真空容器11内部(処理空間S)へ供給する。
【0048】
プラズマ処理装置10は、真空容器11の上部に配された容器蓋31を備える。容器蓋31はガス導入シャワーヘッド34を覆う。真空容器11内部を外部からシールするために、容器蓋31及び真空容器11の間にはOリング状のシール部品46がガス導入シャワーヘッド34を囲うように配されている。
【0049】
また、真空容器11の側壁には、プッシャーピン33によってサセプタ12から上方へ持ち上げられたウエハWの高さに対応する位置にウエハWの搬出入口43が設けられ、搬出入口43には、該搬出入口43を開閉するゲートバルブ44が取り付けられている。
【0050】
このプラズマ処理装置10の真空容器11内では、上述したように、サセプタ12及びガス導入シャワーヘッド34に高周波電力を供給して、サセプタ12及びガス導入シャワーヘッド34の間の処理空間Sに高周波電力を印加することにより、該処理空間Sにおいてガス導入シャワーヘッド34から供給された混合ガスをプラズマ化し、イオンを発生させ、イオン等によってウエハWにRIE処理を施す。このとき、混合ガスのCxFyガスから生成された反応副生成物によってエッチレートが制御されるが、イオンの発生と同時にデポ性の活性種であるフッ素ラジカルが発生する。
【0051】
なお、上述したプラズマ処理装置10の各構成部品の動作は、プラズマ処理装置10が備える制御部(図示しない)のCPUがRIE処理に対応するプログラムに応じて制御する。
【0052】
図2は、図1におけるOリング状のシール部品の拡大断面図である。なお、ガス導入シャワーヘッド34は図中上方に存在しているため、図中上方が真空容器11の内部に相当する。したがって、以下、図中上方を「内部(真空)側」、図中下方を「外部(大気)側」と称する。また、図中上下方向を「水平方向」と、図中左右方向を「上下方向」と称する。
【0053】
図2において、シール部品46は大気側が開口する略コ字状の断面形状を有するラジカルシール部材47と、水平方向に沿って配された略瓢箪状の断面形状を有する真空シール部材48とを有する。ラジカルシール部材47は内部(真空)側に配され、真空シール部材48は外部(大気)側に配されている。ラジカルシール部材47はフッ素樹脂であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなり、真空シール部材48はFKMからなる。
【0054】
シール部品46は真空容器11に形成された矩形の断面形状を有するシール溝49と、容器蓋31とによって画成される空間に収容される。シール部品46の上方には容器蓋31が配され、該容器蓋31はシール部品46の上部と当接する。具体的には、シール溝49の底面49bはラジカルシール部材47及び真空シール部材48と当接し、容器蓋31はラジカルシール部材47及び真空シール部材48と当接する。
【0055】
容器蓋31とシール溝49の底面49bとの距離は、ラジカルシール部材47の上下方向に関する自然長及び真空シール部材48の上下方向に関する自然長より所定の長さだけ短く設定されているので、シール部品46がシール溝49と容器蓋31とによって画成される空間に収容された際、ラジカルシール部材47及び真空シール部材48は上下方向に圧縮される。これにより、ラジカルシール部材47及び真空シール部材48は反発力を発生し、該反発力に起因してラジカルシール部材47及び真空シール部材48は容器蓋31及びシール溝49の底面49bに密着する。
【0056】
ラジカルシール部材47は、容器蓋31に当接する部分及び真空側側面49aに当接する部分の間にラジカルシール狭小部47aを有し、真空側側面49aに当接する部分及び底面49bに当接する部分の間にラジカルシール狭小部47bを有する。ラジカルシール狭小部47a,47bの剛性は低いため、ラジカルシール部材47の圧縮変形を助長する。すなわち、ラジカルシール狭小部47a,47bは屈曲部であり、ラジカルシール部材47が上下方向に圧縮されると、ラジカルシール部材47は、ラジカルシール狭小部47a,47bにおいて屈曲し、圧縮変形する。
【0057】
真空シール部材48は、上述したように略瓢箪状の断面形状を有するので、真空側塊部48aと、大気側塊部48bと、真空側塊部48a及び大気側塊部48bを連結する真空シール狭小部48cとを有する。ラジカルシール部材47の一部及び真空シール部材48の一部、具体的には、真空側塊部48a、大気側塊部48b及び真空シール狭小部48cは離間して2つの待避空間48d,48eを形成する。すなわち、真空シール狭小部48cは、真空シール部材48において括れ(括れ部)を形成する。
【0058】
真空シール部材48の真空側塊部48aはラジカルシール部材47のコ字状断面の開口部に圧入されている。これにより、ラジカルシール部材47と真空シール部材48は互いに嵌合している。また、真空シール部材48の真空側塊部48aの一部はラジカルシール狭小部47a,47bと離間して待避空間48f,48gを形成する。
【0059】
上述した真空シール部材48の周囲に存在する待避空間48d,48e,48f,48gには、上下方向に圧縮された真空シール部材48から突出する部分が進入するため、待避空間48d,48e,48f,48gは真空シール部材48の圧縮変形を助長する。
【0060】
次いで、シール部品46の具体的形状について説明する。
【0061】
図3は、図2におけるシール部品の具体的形状を示す断面図である。図3において、シール部品46は、真空シール部材48の真空側塊部48aがラジカルシール部材47のコ字状断面の開口部に圧入されて変形していることを除いて、各部が自然長状態である。
【0062】
図3に示すように、真空シール部材48は、自然長状態において、水平方向の長さがL1に、上下方向の長さ(大気側塊部48bの上下方向高さ)がL2に、真空シール狭小部48cの上下方向の長さ(幅)がL3にそれぞれ形成されている。
【0063】
ラジカルシール部材47は、自然長状態において、水平方向の長さがL4に、上下方向の長さがL5に、容器蓋31と当接する当接面47c及びシール溝49の底面49bと当接する当接面47dの長さがL6にそれぞれ形成されている。また、ラジカルシール部材47は、ラジカルシール狭小部47a,47bの厚みがW1に形成されている。
【0064】
また、真空シール部材48及びラジカルシール部材47は、真空シール部材48の真空側塊部48aがラジカルシール部材47のコ字状断面の開口部に圧入された状態において、待避空間48d,48eの水平方向の幅がD1に、待避空間48f、48gの最小幅がD2となるようにそれぞれ形成されている。また、容器蓋31とシール溝49の底面49bとの距離はDrである。
【0065】
真空シール部材48の水平方向長さL1及び上下方向長さL2、並びにラジカルシール部材47の水平方向長さL4及び上下方向長さL5は、容器蓋31とシール溝49の底面49bとの距離Drに対して最適な値に設定されている。具体的には、真空シール部材48の水平方向長さL1は、1.8×Dr≧L1≧0.8×Drを、好ましくは1.5×Dr≧L1≧1.2×Drを満たす値に設定されている。真空シール部材48の上下方向長さL2は、1.8×Dr≧L2≧1.05×Drを、好ましくは1.5×Dr≧L2≧1.15×Drを満たす値に設定されている。また、ラジカルシール部材47の水平方向長さL4は、(5/6)×L1≧L4≧(1/6)×L1を、好ましくは(2/3)×L1≧L4≧(1/3)×L1を満たす値に設定されている。ラジカルシール部材47の上下方向長さL5は、1.8×Dr≧L5≧1.05×Drを、好ましくは1.5×Dr≧L5≧1.15×Drを満たす値に設定されている。
【0066】
真空シール狭小部48cの上下方向の長さL3は、真空シール部材48の上下方向長さL2に対応して設定されており、0.95×L2≧L3≧0.3×L2を、好ましくは0.9×L2≧L3≧0.45×L2を満たす値に設定されている。真空シール狭小部48cの上下方向の長さL3が大きい場合、真空シール狭小部48cにおける真空シール部材48の剛性が高くなり、真空シール部材48が取り扱いやすくなる。一方、真空シール狭小部48cの上下方向の長さL3が小さい場合は、真空シール部材48の容器蓋31やシール溝49の底面49bの傾きに対する追従性が向上する。
【0067】
このように、真空シール狭小部48cが真空シール部材48において括れを形成するので、待避空間48d,48eと共同して真空シール部材48の容器蓋31及び底面49bに対する追従性を向上させることができ、シール性能を向上させることができる。
【0068】
ラジカルシール部材47の当接面47c,47dの長さL6は、上限値が水平方向長さL4に対応して設定されており、0.6×L4≧L6≧0.5mmを、好ましくは0.6×L4≧L6≧1mmを満たす値に設定されている。このように当接面47c,47dに幅(長さL6)を持たせることにより、ラジカルシール部材47のシールド性能を安定化させることができる。
【0069】
ラジカルシール部材47のラジカルシール狭小部47a,47bの厚みW1は、ラジカルシール狭小部47a,47bの剛性、すなわち厚みW1でのPTFEの剛性が、ラジカルシール部材47のコ字状断面の開口部に圧入された真空側塊部48aの復元力、すなわち圧入された真空側塊部48aの状態においてFKMの回復力以下の力によって変形するレベルとなるように設定されている。これは、ラジカルシール部材47の当接面47c,47dがクリープしても、真空側塊部48aの復元力によりラジカルシール狭小部47a,47bを上方及び下方にそれぞれ押し上げてラジカルシール部材47のラジカルに対するシールド性能を保持するためである。具体的には、ラジカルシール狭小部47a,47bの厚みW1は、2.0mm≧W1≧0.05mmを、好ましくは、1.5mm≧W1≧0.1mmを満たす値に設定されている。ラジカルシール狭小部47a,47bの厚みが上記厚みW1より薄いと、ラジカルシール狭小部47a,47bの耐久性及び加工性が極端に低下してしまい、ラジカルに対する良好なシールド性能を得ることができなくなる。
【0070】
このようにラジカルシール狭小部47a,47bを設けることにより、ラジカルシール部材47の変形の自由度が増し、ラジカルシール部材47は容易に圧縮変形することができる。したがって、圧縮時におけるラジカルシール部材47の追従性を向上させることができ、ラジカルシール部材47を優れた耐久性を有するものにすることができると共に、ラジカルシール部材47への圧縮加重を低減することができる。
【0071】
待避空間48d,48eの水平方向の幅D1は、少なくとも、自然長状態(図3の状態)において、ラジカルシール部材47の大気側端部と真空シール部材48の大気側塊部48bとが当接せず、且つシール部品46の取り付け状態(図2の状態)において、ラジカルシール部材47の大気側端部と真空シール部材48の大気側塊部48bとが当接しないような値に設定されていることが好ましい。このように待避空間48d,48eを設けることにより、シール部品46の取り付け状態においても、ラジカルシール部材47及び真空シール部材48が互いに独立して動くことが可能となり、例えば、片締めにより真空シール部材48の倒れ込みが生じた場合であっても、ラジカルシール部材47は真空シール部材48の動きに追従することなく当接面47c,47dそれぞれの容器蓋31及び底面49bとの当接状態を良好に保つことができる。これにより、ラジカルシール部材47のラジカルに対するシールド性能を長期間に亘り安定したものにすることができる。
【0072】
待避空間48f、48gの最小幅D2は、自然長状態(図3の状態)において0より大きく、好ましくはシール部品46の取り付け状態(図2の状態)においても0より大きくなるような値に設定されている。このように待避空間48f、48gの最小幅D2を設定することにより、シール部品46においてはゴム材(FKM)と樹脂材(PTFE)とを締め付けるため、ゴム材単体からなるシール部品を締め付ける場合よりも圧縮加重が増加する傾向となるが、待避空間48f,48gを設けることにより樹脂材(ラジカルシール部材47)の反力を抑えて締め付けに必要な締付力を低減させることができる。また、上述のように、待避空間48f,48gを形成することによりラジカルシール部材47の変形時のスペースを十分確保することができ、ラジカルシール部材47の変形を安定させることができ、もってラジカルシール部材47の反力をより低減させることができる。
【0073】
プラズマ処理装置10では真空容器11内部にフッ素ラジカルや酸素ラジカル(以下、単に「ラジカル」という。)が発生する。該ラジカルは真空シール部材48を構成するFKMを容易に消耗させる。ここで、図2の真空側から大気側へ向けてラジカルが流れるが、ラジカルシール部材47が真空側に配されて容器蓋31並びにシール溝49の底面49bに密着するため、該ラジカルシール部材47はラジカルが大気側に配された真空シール部材48まで到達するのを防止する。特に、ラジカルシール部材47を構成するPTFEはラジカルに対して優れた耐性を有するので、ラジカルシール部材47は消耗することがない。また、PTFEは長時間に亘って圧縮され続けるとクリーピングによって復元性が低下するが、シール部品46ではラジカルシール部材47のコ字状断面の開口部に真空シール部材48の真空側塊部48aが圧入されているので、該真空側塊部48aの反発力がラジカルシール部材47の低下した復元性を補う。したがって、ラジカルシール部材47は長時間に亘ってラジカルが大気側に配された真空シール部材48まで到達するのを防止する。
【0074】
また、プラズマ処理装置10では、真空シール部材48が大気側に配されて容器蓋31並びにシール溝49の底面49bに密着する。また、上述したように、ラジカルが真空シール部材48まで到達しないので、真空シール部材48は消耗することがなく、真空シール部材48は長時間に亘って外部の大気が真空容器11内部へ進入するのを防止する。
【0075】
本実施の形態に係るシール部品46によれば、真空側に配されてラジカルに対して優れた耐性を有するPTFEからなるラジカルシール部材47と、大気側に配されてFKMからなる真空シール部材48とを備える。ラジカルシール部材47はラジカルが真空シール部材48まで到達するのを防止するため、真空シール部材48がラジカルで消耗するのを防ぐことができ、これにより、ラジカルに対する耐性を有するFFKMを用いる必要を無くすことができる。また、ラジカルシール部材47と真空シール部材48は互いに嵌合しているので、該シール部品46を一体的に取り扱うことができると共に、小型化することができる。その結果、該シール部品46は、所定のシール用スペースを必要とすることなく、安価であって優れた耐久性を確保することができる。
【0076】
上述したシール部品46では、ラジカルシール部材47は大気側が開口するコ字状断面を有し、真空シール部材48の真空側塊部48aがコ字状断面の開口部に圧入されているので、クリーピングによってラジカルシール部材47の復元性が低下しても、圧入された真空側塊部48aの反発力によってラジカルシール部材47の低下した復元性を補うことができる。その結果、ラジカルシール部材47は長時間に亘ってラジカルが大気側に配された真空シール部材48まで到達するのを防止してシール部品46の耐久性を長期間に亘って維持することができる。
【0077】
また、シール部品46では、ラジカルシール部材47はPTFEからなる。PTFEはラジカルに対して優れた耐性を有し、ラジカルによってほとんど消耗することがない。したがって、真空シール部材48のFKMがラジカルによって消耗するのを確実に防止することができ、もって、より優れたシール部品46の耐久性を確保することができる。
【0078】
さらに、シール部品46は、真空シール部材48の周囲に該真空シール部材48が単独で若しくは真空シール部材48とラジカルシール部材47とが協働して画成する待避空間48d,48e,48f,48gを有するので、真空シール部材48が上下方向に圧縮された際に真空シール部材48から突出する部分が待避空間48d,48e,48f,48gに進入することができ、これにより、真空シール部材48は容易に圧縮変形することができる。また、ラジカルシール部材47はコ字状断面においてラジカルシール狭小部47a,47bを有するので、ラジカルシール部材47も容易に圧縮変形することができる。したがって、シール溝49におけるラジカルシール部材47の底面49b及び容器蓋31に対する追従性を向上させることができ、もって、優れた耐久性を確保することができると共に、ラジカルシール部材47及び真空シール部材48への圧縮加重を低減することができる。
【0079】
また、シール部品46ではFKMからなる真空シール部材48が真空シールを実現する。FKMは密着する面の面粗度が大きくても真空シールを実現することができる。これにより、シール部品46は優れた真空シールを実現することができる。また、容器蓋31やシール溝49の底面49bの面粗度を極力小さくする必要がない。その結果、容器蓋31やシール溝49の面粗度管理が容易になるため、プラズマ処理装置10の製造コストを低下することができる。
【0080】
上述したシール部品46では、ラジカルシール部材47をPTFEによって構成したが、ラジカルシール部材47はラジカルに対する耐性を有する材料によって構成されればよく、例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)のいずれかによって構成されてもよい。これらの材料は容易且つ安価に入手することができるため、シール部品46をより安価にすることができる。
【0081】
また、上述したシール部品46では、真空シール部材48をFKMによって構成したが、真空シール部材48は真空シール性を有する材料によって構成されればよく、例えば、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム(FEPM)によって構成されてもよい。これらの材料も容易且つ安価に入手することができるため、シール部品46をより安価にすることができる。
【0082】
次いで、上記シール部品46の変形例について説明する。
【0083】
図2,3に示すように、本実施の形態において、シール部品46のラジカルシール部材47は、シール部品46の対称面(図4参照)の片側部分に屈曲部としての1つのラジカルシール狭小部47a,47bをそれぞれ備えるものである。この場合、図4に示すように、シール部品46の取り付け状態(図2の状態)において、容器蓋31又は底面49bの圧縮力、及び真空シール部材48の復元力により、ラジカルシール部材47の当接面47c,47dが対応する面に面接触しない場合が生じる。これに対して、後述する図6(A)〜(D)に示すように、ラジカルシール部材47が、シール部品46の対称面に対して対称に配設される屈曲部を少なくとも3つ以上備えるものにすることにより、シール部品46の取り付け状態(図2の状態)において、ラジカルシール部材47の当接面47c,47dを容器蓋31又は底面49bの各面に対して夫々面接触させることができ、良好なラジカルシールド効果を得ることができる。
【0084】
これは、ラジカルシール部材47がシール部品46の対称面に対して対称に配設される屈曲部を少なくとも3つ以上備える場合は、図5に示すように、相手材(容器蓋31又は底面49b)の圧縮力と真空シール部材48の復元力とによりラジカルシール部材47に発生するモーメントが各屈曲部へ分散し、ラジカルシール部材47の当接面47c,47dが相手材に追従するからである。
【0085】
図6(A)〜(D)にシール部品46の変形例を具体的に示す。図6(A),(B)に示すように、ラジカルシール部材47は、ラジカルシール狭小部47a,47bに加えて、対称面上形成された1つの屈曲部を備えるものであってもよい。また、図6(C),(D)に示すように、ラジカルシール部材47は、ラジカルシール狭小部47a,47bに加えて、対称面に対して対称に配設された2つの屈曲部を備えるものであってもよい。
【0086】
屈曲部は、狭小部によって構成するものに限らず、切欠きや凹部によって構成してもよく(図6(A),(C)参照)、又は角部によって構成してもよい(図6(B),(D)参照)。また、屈曲部は他の形状であってもよい。
【0087】
以上、シール部品46がシール溝49と容器蓋31とによって画成される空間に収容される場合について説明したが、シール部品46が適用される場所はこれに限られず、真空を大気からシールする必要がある場所であれば適用することができる。例えば、真空容器11内部のガス等を排気する排気系統の継ぎ手に適用することができる。排気系統の継ぎ手としてはKFフランジ継ぎ手構造が多用されている。
【0088】
図7は、図2におけるシール部品をKFフランジ継ぎ手構造に適用した場合を示す断面図である。
【0089】
図7において、KFフランジ継ぎ手構造50は、穴51aと同軸の円形フランジ部51bを有するパイプ51と、該パイプ51の穴51aと連通する穴52aを有する受け部52と、パイプ51及び受け部52の間に介在するセンタリングパイプ53と、インナーフランジ部54aを有する略リング状の締結部材54とを備える。
【0090】
パイプ51は端面において穴51aと同軸であって該穴51aより所定値だけ大きい直径を有する挿入穴51cを有し、受け部52も端面において穴52aと同軸であって挿入穴51cと同直径の挿入穴52bを有する。センタリングパイプ53の外直径は挿入穴51c,52bの直径より所定値だけ小さく設定されている。したがって、センタリングパイプ53の上下端部をそれぞれ挿入穴51c,52bに挿入することによってパイプ51の穴51a及び受け部52の穴52aをセンタリングすることができる。
【0091】
また、センタリングパイプ53は図中水平方向に突出する突出部53aを有する。突出部53aは図中上下方向に関して所定の長さを有し、上下端部は図中水平方向に沿うように成形され且つ側端部は断面が弓状に成形される。締結部材54のインナーフランジ部54aはセンタリングパイプ53を介して受け部52に取り付けられたパイプ51の円形フランジ部51bの周縁部を押圧する。これにより、突出部53aの上下端部はそれぞれパイプ51の端面及び受け部52の端面と当接してパイプ51及び受け部52の間隔を所定値に維持する。
【0092】
また、KFフランジ継ぎ手構造50では、穴51aが真空容器11内部に連通する。したがって、穴51a及び穴52aの内圧はほぼ真空であり、穴51a及び穴52aにはラジカルが流れる。また、図7では、穴51a及び穴52aが真空側に相当し、パイプ51の外側が大気側に相当する。
【0093】
ここで、シール部品46は、上述したように、ラジカルシール部材47と真空シール部材48は互いに嵌合して小型化されているため、該シール部品46は、所定のシール用スペースを必要とすることない。したがって、シール部品46をパイプ51の端面、受け部52の端面、及びセンタリングパイプ53の突出部53aの弓状側端部によって画成される空間に収容することができる。すなわち、KFフランジ継ぎ手構造50の構造を変更することなく、シール部品46を適用することができる。
【0094】
KFフランジ継ぎ手構造50では、パイプ51の端面と受け部52の端面との距離、すなわち、突出部53aの上下方向の長さは、ラジカルシール部材47の上下方向に関する自然長及び真空シール部材48の上下方向に関する自然長より所定の長さだけ短く設定されているので、シール部品46がパイプ51の端面、受け部52の端面、及びセンタリングパイプ53の突出部53aの弓状側端部によって画成される空間に収容された際、ラジカルシール部材47及び真空シール部材48は上下方向に圧縮される。このとき、ラジカルシール部材47及び真空シール部材48は反発力を発生し、該反発力に起因してラジカルシール部材47及び真空シール部材48はパイプ51の端面及び受け部52の端面に密着する。したがって、ラジカルシール部材47は穴51a及び穴52aに流れるラジカルが真空シール部材48に到達するのを長時間に亘って防止する。また、真空シール部材48は外部の大気が穴51a及び穴52aへ進入するのを長時間に亘って防止する。
【0095】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るシール部品について説明する。
【0096】
本実施の形態は、その構成や作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであり、基板処理装置において反応性活性ガスではなく腐食ガスを用いる点で上述した第1の実施の形態と異なるのみである。したがって、同様の構成については説明を省略し、以下に第1の実施の形態と異なる作用についてのみ説明を行う。
【0097】
図8は、本実施の形態に係るシール部品の拡大断面図である。なお、図中上方がほぼ真空まで減圧され且つ腐食ガスが存在する空間に相当し、図中下方が大気空間に相当する。したがって、以下、図中上方を「真空側」、図中下方を「大気側」と称する。また、図中上下方向を「水平方向」と、図中左右方向を「上下方向」と称する。
【0098】
図8において、シール部品55は大気側が開口する略コ字状の断面形状を有する腐食ガスシール部材56と、真空シール部材48とを有する。腐食ガスシール部材56は真空側に配され、真空シール部材48は大気側に配されている。腐食ガスシール部材56はオーステナイト系ステンレスからなり、真空シール部材48はFKMからなる。
【0099】
シール部品55も、例えば、真空容器11に形成された矩形の断面形状を有するシール溝49と、容器蓋31とによって画成される空間に収容される。シール部品55の上方には容器蓋31が配され、該容器蓋31はシール部品55の上部と当接する。具体的には、シール溝49の底面49bは腐食ガスシール部材56及び真空シール部材48と当接し、容器蓋31は腐食ガスシール部材56及び真空シール部材48と当接する。
【0100】
容器蓋31とシール溝49の底面49bとの距離は、腐食ガスシール部材56の上下方向に関する自然長及び真空シール部材48の上下方向に関する自然長より所定の長さだけ短く設定されているので、シール部品55がシール溝49と容器蓋31とによって画成される空間に収容された際、腐食ガスシール部材56及び真空シール部材48は上下方向に圧縮される。これにより、腐食ガスシール部材56及び真空シール部材48は反発力を発生し、該反発力に起因して腐食ガスシール部材56及び真空シール部材48は容器蓋31及びシール溝49の底面49bに密着する。
【0101】
真空シール部材48の真空側塊部48aは腐食ガスシール部材56のコ字状断面の開口部に圧入されている。これにより、腐食ガスシール部材56と真空シール部材48は互いに嵌合している。また、真空シール部材48の真空側塊部48aの一部は腐食ガスシール部材56の一部と離間して待避空間48h,48iを形成する。
【0102】
上述した真空シール部材48の周囲に存在する待避空間48d,48e,48h,48iには、上下方向に圧縮された真空シール部材48から突出する部分が進入するため、待避空間48d,48e,48h,48iは真空シール部材48の圧縮変形を助長する。
【0103】
図中において真空側から大気側へ向けて流れる腐食ガスは真空シール部材48を構成するFKMを容易に消耗させるが、腐食ガスシール部材56が真空側に配されて容器蓋31並びにシール溝49の底面49bに密着するため、該腐食ガスシール部材56は腐食ガスが大気側に配された真空シール部材48まで到達するのを防止する。特に、腐食ガスシール部材56を構成するオーステナイト系ステンレスは腐食ガスに対して優れた耐性を有するので、腐食ガスシール部材56は消耗することがない。したがって、腐食ガスシール部材56は長時間に亘って腐食ガスが大気側に配された真空シール部材48まで到達するのを防止する。
【0104】
本実施の形態に係るシール部品55によれば、真空側に配されて腐食ガスに対して優れた耐性を有するオーステナイト系ステンレスからなる腐食ガスシール部材56と、大気側に配されてFKMからなる真空シール部材48とを備える。腐食ガスシール部材56は腐食ガスが真空シール部材48まで到達するのを防止するため、真空シール部材48が腐食ガスで消耗するのを防ぐことができ、これにより、腐食ガスに対する耐性を有するエラストマー材を用いる必要を無くすことができる。また、腐食ガスシール部材56と真空シール部材48は互いに嵌合しているので、該シール部品55を一体的に取り扱うことができると共に、小型化することができる。その結果、該シール部品55は、所定のシール用スペースを必要とすることなく、安価であって優れた耐久性を確保することができる。
【0105】
また、シール部品55では、腐食ガスシール部材56はオーステナイト系ステンレスからなる。オーステナイト系ステンレスは腐食ガスに対して優れた耐性を有し、腐食ガスによってほとんど消耗することがない。したがって、真空シール部材48のFKMが腐食ガスによって消耗するのを確実に防止することができ、もって、より優れたシール部品55の耐久性を確保することができる。
【0106】
さらに、シール部品55は、真空シール部材48の周囲に該真空シール部材48が単独で若しくは真空シール部材48と腐食ガスシール部材56とが協働して画成する待避空間48d,48e,48h,48iを有するので、真空シール部材48が上下方向に圧縮された際に真空シール部材48から突出する部分が待避空間48d,48e,48h,48iに進入することができ、これにより、真空シール部材48は容易に圧縮変形することができる。したがって、真空シール部材48が圧壊するのを防止することができ、もって、さらに優れた耐久性を確保することができる。
【0107】
上述したシール部品55では、腐食ガスシール部材56をオーステナイト系ステンレスによって構成したが、腐食ガスシール部材56は腐食ガスに対する耐性を有する材料によって構成されればよく、例えば、オーステナイト系以外のステンレス、ニッケル及びアルミニウムのいずれかによって構成されてもよい。これらの材料は容易且つ安価に入手することができるため、シール部品55をより安価にすることができる。
【0108】
以上、シール部品55がシール溝49と容器蓋31とによって画成される空間に収容される場合について説明したが、シール部品55が適用される場所はこれに限られず、真空を大気からシールする必要がある場所であれば適用することができる。例えば、上述したKFフランジ継ぎ手構造50にも適用することができるのは言うまでもない。
【0109】
上述した各実施の形態では、処理される基板が半導体ウエハであったが、処理される基板はこれに限られず、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やFPD(Flat PanelDisplay)等のガラス基板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置としてのプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1におけるOリング状のシール部品の拡大断面図である。
【図3】図2におけるシール部品の具体的形状を示す断面図である。
【図4】図2におけるシール部品の取り付け状態を示す図である。
【図5】図2におけるシール部品の変形例の取り付け状態を示す図である。
【図6】図2におけるシール部品の変形例を示す図であり、図6(A)〜(D)はシール部品の変形例の一例を示す断面図である。
【図7】図2におけるシール部品をKFフランジ継ぎ手構造に適用した場合を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るシール部品の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0111】
W ウエハ
10 プラズマ処理装置
11 真空容器
31 容器蓋
46,55 シール部品
47 ラジカルシール部材
47a,47b ラジカルシール狭小部
48 真空シール部材
48a 真空側塊部
48b 大気側塊部
48c 真空シール狭小部
48d,48e,48f,48g,48h,48i 待避空間
49 シール溝
49a 真空側側面
49b 底面
49c 大気側側面
50 KFフランジ継ぎ手構造
51 パイプ
51a,52a 穴
51b 円形フランジ部
51c,52b 挿入穴
52 受け部
53 センタリングパイプ
53a 突出部
54 締結部材
54a インナーフランジ部
56 腐食ガスシール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高弾性高分子物質を侵食する侵食物質が存在する減圧容器を備え、該減圧容器内に収容された基板に所定の処理を施す基板処理装置において前記減圧容器内部を外部からシールするシール部品であって、
前記減圧容器の内部側に配されて前記侵食物質に対する耐性を有する第1の部材と、
前記減圧容器の外部側に配されて前記高弾性高分子物質からなる第2の部材と、
前記第1の部材の少なくとも一部及び前記第2の部材の少なくとも一部が離間して形成される所定の空間とを備え、
前記第1の部材と前記第2の部材とは互いに嵌合することを特徴とするシール部品。
【請求項2】
前記第1の部材は前記外部側が開口するコ字状断面を有し、前記第2の部材の少なくとも一部は前記コ字状断面の開口部に進入することを特徴とする請求項1記載のシール部品。
【請求項3】
前記第1の部材のコ字状断面は少なくとも1つの屈曲部を有することを特徴とする請求項2記載のシール部品。
【請求項4】
前記屈曲部は狭小部であることを特徴とする請求項3記載のシール部品。
【請求項5】
前記侵食物質は反応性活性ガスから発生する活性種であり、前記第1の部材はフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のシール部品。
【請求項6】
前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、及びポリクロロトリフルオロエチレンからなる群より選択された1つであることを特徴とする請求項5記載のシール部品。
【請求項7】
前記高弾性高分子物質はフッ化ビニリデン系ゴム及びテトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴムからなる群より選択された1つであることを特徴とする請求項5又は6記載のシール部品。
【請求項8】
前記侵食物質は腐食ガスであり、前記第1の部材は耐腐食性金属からなることを特徴とする請求項1又は2記載のシール部品。
【請求項9】
前記耐腐食性金属は、ステンレス、ニッケル及びアルミニウムからなる群より選択された1つであることを特徴とする請求項8記載のシール部品。
【請求項10】
前記高弾性高分子物質はフッ化ビニリデン系ゴム及びテトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴムからなる群より選択された1つであることを特徴とする請求項8又は9記載のシール部品。
【請求項11】
前記第2の部材は括れ部を有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のシール部品。
【請求項12】
高弾性高分子物質を侵食する侵食物質が存在する減圧容器を備え、該減圧容器内に収容された基板に所定の処理を施す基板処理装置において、
前記減圧容器内部を外部からシールするシール部品を備え、
前記シール部品は、前記減圧容器の内部側に配されて前記侵食物質に対する耐性を有する第1の部材と、前記減圧容器の外部側に配されて前記高弾性高分子物質からなる第2の部材と、前記第1の部材の少なくとも一部及び前記第2の部材の少なくとも一部が離間して形成される所定の空間とを有し、前記第1の部材と前記第2の部材とは互いに嵌合することを特徴とする基板処理装置。
【請求項13】
前記第1の部材は前記外部側が開口するコ字状断面を有し、前記第2の部材の少なくとも一部は前記コ字状断面の開口部に進入することを特徴とする請求項12記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記侵食物質は反応性活性ガスから発生する活性種であり、前記第1の部材はフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項12又は13記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記侵食物質は腐食ガスであり、前記第1の部材は耐腐食性金属からなることを特徴とする請求項12又は13記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−120738(P2007−120738A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3059(P2006−3059)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】