説明

ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体およびそれらの使用法

式Iによるジアザ複素環式スルホンアミド誘導体は、特に糖尿病、肥満、ならびに関連した病状および障害の治療において、治療的有用性を有する。式中、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、X、Y1、Y2、m、およびnについては明細書中に示す。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年12月14日に提出された米国仮特許第60/750,039号の優先権の恩典を主張し、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は一般に、11β-HSD1などのヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを調節するため、およびヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの調節と関連のある疾患、例えば糖尿病および肥満などを治療または予防するための、新規な化合物、組成物、およびそのための方法におけるいずれかの使用法を対象とする。本方法は、それを必要とする患者に対する、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量の投与を含む。新規なジアザ複素環式スルホンアミド誘導体、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体もしくはプロドラッグが本明細書において提示される。
【0003】
ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSD)は、ステロイドホルモンをその不活性代謝産物に変換することにより、ステロイドホルモン受容体の占有性および活性化を制御する。最近の総説については、Nobel et al., Eur. J. Biochem. 2001, 268:4113-4125を参照されたい。
【0004】
HSDには数多くのクラスがある。11-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11β-HSD)は、活性グルココルチコイド(コルチゾールおよびコルチコステロン)およびそれらの不活性形態(コルチゾンおよび11-デヒドロコルチコステロン)の相互変換を触媒する。アイソフォームである11-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型(11β-HSD1)は、肝臓、脂肪組織、脳、肺および他のグルココルチコイド組織で発現され、グルココルチコイド作用の低下によって改善される可能性のある数多くの障害、例えば糖尿病、肥満および加齢性認知機能障害などを対象とする治療法の標的となる可能性がある。Seckl, et al., Endocrinology, 2001, 142:1371-1376。
【0005】
グルココルチコイドが糖尿病の発症に中心的な役割を果たすこと、およびグルココルチコイドが肝臓に対するグルカゴンの作用を可能にすることはよく知られている。Long et al., J. Exp. Med. 1936, 63: 465-490;およびHoussay, Endocrinology 1942, 30: 884-892。加えて、11β-HSD1が局所グルココルチコイドの効果および肝臓におけるグルコース産生の制御に重要な役割を果たすことも十分に実証されている。Janmieson et al., J. Endocrinol. 2000, 165:685-692。Walker, et al.,J. Clin. Endocrinol. Metab, 1995, 80:3155-3159では、非特異的11β-HSD1阻害薬であるカルベノキソロンの投与がヒトにおける肝インスリン感受性の改善をもたらしたことが報告されている。
【0006】
さらに、糖尿病の治療におけるHSDの作用機序に関する仮説は、マウスおよびラットで実施されたさまざまな実験で裏づけられている。これらの研究により、HSD阻害薬を投与すると、肝臓でのグルコース産生における2つの重要な酵素であるホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)およびグルコース-6-ホスファターゼ(G6Pアーゼ)のmRNAレベルおよび活性が低下することが示されている。加えて、11β-HSD1ノックアウトマウスでは血中グルコースレベルおよび肝臓でのグルコース産生が低下することが示されている。このマウスノックアウトモデルを用いて収集されたそのほかのデータにより、PEPCKおよびG6Pアーゼの基礎レベルはグルココルチコイドに依存せずに制御されるため、11β-HSD1の阻害は低血糖を引き起こさないと考えられることも確かめられている。Kotelevtsev et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1997, 94: 14924-14929。
【0007】
HSDは肥満においても役割を果たすと考えられている。肥満はシンドロームXおよびII型(インスリン非依存性)糖尿病における重要な因子であり、腹部肥満は耐糖能異常、高インスリン血症、高トリグリセリド血症、およびシンドロームXの他の因子(例えば、血圧上昇、HDL低値およびVLDL高値)と関連づけられているため、大網脂肪はこれらの両疾患の発症において中心的な意義があるように思われる。Montague et al., Diabetes 2000, 49:883-888, 2000。また、前脂肪細胞(間質細胞)における11β-HSDの阻害が脂肪細胞への分化の速度低下をもたらしたことも報告されている。これは大網脂肪蓄積の増大の漸減(ことによると減少)をもたらすと予想され、それは中心性肥満の減少につながると考えられる。Bujalska et al., Lancet 1997, 349:1210-1213。
【0008】
成熟脂肪細胞における11β-HSD1の阻害は、Halleux et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 1999, 84:4097-4105に報告されているように、独立した心血管危険因子であるプラスミノーゲン活性化因子インヒビター1(PAI-1)の分泌を減弱させると予想される。加えて、グルココルチコイド活性とある種の心血管危険因子との間には相関が存在することが示されている。このことは、グルココルチコイド作用の低下が、ある種の心血管疾患の治療または予防に有益であると考えられることを示唆する。Walker et al., Hypertension 1998, 31:891-895;およびFraser et al., Hypertension 1999, 33:1364-1368。
【0009】
HSDはまた、食欲制御のプロセスとも関連づけられており、このため、体重と関連のある障害において別の役割を果たすと考えられている。副腎摘出術は、空腹によって食物摂取および視床下部でのニューロペプチドY発現の両方が高まる作用を減弱させることが知られている。このことは、グルココルチコイドが食物摂取を促進させる上で役割を果たすこと、および脳内での11β-HSD1の阻害が満腹感を高め、それ故に食物摂取の減少をもたらすことを示唆する。Woods et al., Science 1998, 280:1378-1383。
【0010】
HSDの調節と関連のある、考えられるもう1つの治療効果は、さまざまな膵臓性栄養物(pancreatic aliment)と関係づけられるものである。マウス膵臓β-細胞における11β-HSD1の阻害はインスリン分泌の増加をもたらすことが報告されている。Davani et al., J. Biol. Chem. 2000, 275:34841-34844。これは、グルココルチコイドがインビボでの膵臓インスリン放出低下の原因になることが以前に見いだされた発見の後に行われた。Billaudel et al., Horm. Metab. Res. 1979, 11:555-560。このため、11β-HSD1の阻害は、肝臓および脂肪減少に対する予想される効果に加えて、糖尿病の治療にも他の有益な効果を生じさせることが示唆される。
【0011】
11β-HSD1はまた、脳内のグルココルチコイド活性も制御し、それ故に神経毒性に寄与する。Rajan et al., Neuroscience 1996, 16:65-70;およびSeckl et al., Neuroendocrinol. 2000, 18:49-99。ストレスおよび/またはグルココルチコイドは認知機能に影響を及ぼすことが知られており(de Quervain et al., Nature 1998, 394:787-790)、未刊行の結果では、非特異的11β-HSD阻害薬による処置を受けたラットで有意な記憶改善が示されている。これらの報告は、脳内でのグルココルチコイドの公知の効果に加えて、HSDを脳内で阻害することには不安および関連病状に対する好ましい治療効果があることを示唆する。Tronche et al., Nature Genetics 1999, 23:99-103。11β-HSD1は海馬細胞において11-DHCをコルチコステロンへと再活性化して、キナーゼ神経毒性を増強し、その結果として加齢性学習障害を引き起こす恐れがある。このため、11β-HSD1の選択的阻害薬は加齢に伴う海馬機能低下を防ぐと考えられている。Yau et al., Proc Natl. Acad. Set. USA 2001, 98:4716-4721。このことから、ヒト脳における11β-HSD1の阻害は、神経機能に対するグルココルチコイドを介した有害な影響、例えば認知障害、うつ病および食欲亢進などを防ぐとの仮説が立てられている。
【0012】
HSDは、グルココルチコイドが免疫系を抑制するという一般的な認識に基づき、免疫調節に役割を果たすと考えられている。免疫系とHPA(視床下部-下垂体-副腎皮質)系との間には動的な相互作用があることが知られており(Rook, Baillier's Clin. Endocrinol. Metab. 2000, 13: 576-581)、グルココルチコイドは細胞性応答と体液性応答との間の均衡をとるのに役立つ。ストレスによって誘導されうるグルココルチコイド活性の上昇は体液性応答と関連があり、このため、11β-HSD1の阻害は細胞性反応の側に応答を推移させる可能性がある。結核、ハンセン病および乾癬といったある種の疾病状態において、免疫反応は典型的には、細胞性応答がより適切と思われるような場合に体液性応答の側に偏る。11β-HSD1の阻害を、これらの場合に細胞性応答を導くために用いることが検討されている。Mason, Immunology Today 1991, 12:57-60。その結果として、その後に、11β-HSD1阻害の別の有用性は、細胞性応答が確実に得られるように免疫処置に伴う一時的な免疫応答を強化することにあると考えられるようになった。
【0013】
最近の報告は、グルココルチコイド標的受容体およびHSDのレベルが緑内障を発症するリスクと結びつけられることを示唆している。Stokes et al., Invest. Ophthalmol. 2000, 41:1629-1638。さらに、11β-HSD1の阻害と眼内圧の低下との結びつきも報告されている。Walker et al., poster P3-698 at the Endocrine society meeting June 12-15, 1999, San Diego。非特異的な11β-HSD1阻害薬であるカルベノキソロンは、正常患者において眼内圧の20%の低下をもたらすことが示されている。眼において、11β-HSD1は角膜上皮の基底細胞、角膜の無色素上皮(房水産生部位)、毛様体筋、ならびに虹彩の括約筋および散大筋においてもっぱら発現される。これに対して、隔たりの大きいアイソエンザイムである11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型(「11β-HSD2」)は、無色素毛様体上皮および角膜内皮で高度に発現される。排液部位である線維柱帯ではHSDは認められていない。このため、11β-HSD1は房水産生に役割を果たすことが示唆される。
【0014】
グルココルチコイドはまた、骨格の発達および機能にも不可欠な役割を果たすが、過剰に存在するとそのような発達および機能に対して有害である。グルココルチコイドにより誘導される骨量減少は、Kim et al., J. Endocrinol. 1999, 162:371-379によって報告されているように、一部には破骨細胞増殖およびコラーゲン合成の抑制に由来する。骨結節形成に対するグルココルチコイドの有害な影響を、非特異的な11β-HSD1阻害薬であるカルベノキソロンの投与によって軽減しうることが報告されている。Bellows et al., Bone 1998, 23:119-125。そのほかの報告により、11β-HSD1が破骨細胞における活性グルココルチコイドのレベルを上昇させ、それ故に骨吸収を増強させる原因となりうることが示唆されている。Cooper et al., Bone 2000, 27:375-381。このデータは、11β-HSD1の阻害が、同時並行的に作用しうる1つまたは複数の機序を介して骨粗鬆症に対して有益な効果を及ぼしうる可能性を示唆する。
【0015】
胆汁酸は11β-HSD2を阻害すること、およびそのような阻害がコルチゾール/コルチゾン平衡をコルチゾールの側に推移させることが知られている。Quattropani et al., J. Clin. Invest. Nov. 2001, 108:1299-305。このため、11β-HSD2の肝活性の低下はコルチゾール/コルチゾン平衡をコルチゾンの側に逆転させると予想され、それは高血圧などの疾患において治療上の利点をもたらしうると考えられる。
【0016】
17-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(17β-HSD)のさまざまなアイソザイムはアンドロゲン受容体またはエストロゲン受容体と結合し、エストラジオール/エストロンおよびテストステロン/アンドロステンジオンを含むさまざまな性ホルモンの相互変換を触媒する。現在までに6種のアイソザイムがヒトで同定されており、これらは子宮内膜組織、乳房組織、結腸組織および精巣を含むさまざまなヒト組織で発現される。17-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型(17β-HSD2)はヒト子宮内膜で発現され、その活性は子宮頸癌と関連することが報告されている。Kitawaki et al., J. Clin. Endocrin. Metab., 2000, 85:1371-3292-3296。17-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ3型(17β-HSD3)は精巣で発現され、その調節はアンドロゲン関連障害の治療のために有用な可能性がある。
【0017】
アンドロゲンおよびエストロゲンは、それぞれの17β-ヒドロキシ立体配置では活性があるが、一方、17-ケト誘導体はアンドロゲン受容体およびエストロゲン受容体と結合せず、それ故に不活性である。性ホルモンの活性型と不活性型との間の変換(エストラジオール/エストロンおよびテストステロン/アンドロステンジオン)は、17β-HSDファミリーのメンバーによって触媒される。17β-HSD1は乳房組織におけるエストラジオールの形成を触媒し、これは悪性乳房腫瘍の増殖にとって重要である。Labrie et al., Mol. Cell. Endocrinol. 1991, 78:C113-C118。同様の役割は結腸癌において17β-HSD4に関して示唆されている。English et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 1999, 84:2080-2085。17β-HSD3はほとんど精巣のみで発現され、アンドロステンジオンをテストステロンに変換する。胎児発育中のこの酵素の欠損は男性偽半陰陽を招く。Geissler et al., Nat. Genet. 1994, 7:34-39。17β-HSD3および種々の3α-HSDアイソザイムは、不活性型と活性型との間でのアンドロゲンの切り換えにつながる複雑な代謝経路に関与する。Penning et al., Biochem. J. 2000, 351:67-77。このため、ある種のHSDの調節は、アンドロゲンおよびエストロゲンに関連した障害の治療において潜在的に有益な効果を有する可能性がある。
【0018】
20-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(20α-HSD)は、プロゲスチン同士の相互変換(プロゲステロンと20α-ヒドロキシプロゲステロンとの間など)を触媒する。20α-HSDの他の基質には、17α-ヒドロキシプレグネノロンまたは17α-ヒドロキシプロゲステロンが含まれ、それらは20α-OHステロイドを生じる。いくつかの20α-HSDアイソフォームが同定されており、20α-HSDは胎盤、卵巣、精巣および副腎を含むさまざまな組織で発現される。Peltoketo, et al., J. Mol. Endocrinol. 1999, 23:1-11。
【0019】
3-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3α-HSD)は、アンドロゲンであるジヒドロテストステロン(DHT)および5α-アンドロスタン-3α,17β-ジオールの相互変換、ならびにアンドロゲンであるDREAおよびアンドロステンジオンの相互変換を触媒し、そのためアンドロゲン代謝において重要な役割を果たす。Ge et al., Biology of Reproduction 1999, 60:855-860。
【0020】
HSD阻害の分野で行われたこれまでの研究にも関わらず、HDSのさまざまなファミリーに対する強力な阻害薬であって、しかも糖尿病、肥満、緑内障、骨粗鬆症、認知障害、免疫障害、うつ病、高血圧といった、HSDが介在する病状の治療のために有効である新規化合物に対しては未だに需要がある。
【発明の開示】
【0021】
発明の概要
本発明は、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型(本明細書では以後「11β-HSD1」)、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型(本明細書では以後「11β-HSD2」)および17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ3型(本明細書では以後「17β-HSD3」)を非限定的に含む、そのすべてのアイソフォームを含め、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、17β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、20α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼおよび3α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼなどのヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSD)の活性を調節するための新規な化合物、その組成物および方法を提供することによって、この需要などを満たす。1つの態様において、本発明の化合物はHSD活性を阻害する。
【0022】
本発明はまた、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの作用と関連のある疾患または障害を治療または予防するための方法にも関し、本方法は、それを必要とする患者に、式Iのジアザ複素環式スルホンアミド誘導体またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体もしくはプロドラッグの治療的有効量を投与する段階を含む。本発明は、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの選択的および非選択的な阻害薬の両方を範囲に含む。
【0023】
ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの選択的および非選択的な阻害薬はそれぞれ、例えば、異常なグルコースレベルまたは視床下部機能と関連のある疾患の治療または予防において利点を有することが理解されるべきである。本発明はまた、HSDの選択的阻害薬も範囲に含む。グルコース代謝に関係する他のタイプの受容体もしくは遺伝子標的にわたる一つのクラスとしてのHSDに対する選択性に関するもの、または他のHSDもしくはその特定のアイソフォームと比較して種々のHSDもしくはその特定のアイソフォームに対して選択的であるものという、2つのタイプの選択性を想定している。
【0024】
1つの態様において、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体は、選択的または非選択的な11β-HSD阻害薬として作用しうる。本化合物は、不活性11-ケトステロイドとその活性ヒドロキシ等価物との相互変換を阻害してもよい。本発明は、不活性型の活性型への変換を制御することができる方法、およびそのような制御の結果として得ることができる有用な治療効果を提供する。排他的ではないが、より特定的には、本発明は、ヒトにおけるコルチゾンとコルチゾールとの間の相互変換に関わる。
【0025】
もう1つの態様において、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体は、インビボで11β-HSD阻害薬として作用しうる。
【0026】
もう1つの態様において、本発明のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体は経口活性を有しうる。
【0027】
ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体はまた、以下のもの:(i)糖質代謝の制御、(ii)タンパク質代謝の制御、(iii)脂質代謝の制御、(iv)正常な成長および/または発達の制御、(v)認知機能に対する影響、(vi)ストレスおよびミネラルコルチコイド活性に対する抵抗性、のうち1つまたは複数を非限定的に含む、数多くの代謝機能の調節のためにも有用である。
【0028】
ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体はさらに、肝臓での糖新生を阻害するためにも有用であり、それらはまた、糖尿病、肥満(中心性肥満を含む)、高齢でのニューロン損失および/または認知障害における内因性グルココルチコイドの影響を緩和するために有効であってもよい。したがって、1つのさらなる局面において、本発明は、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体が投与された患者に、1つまたは複数の治療効果を生じさせることに向けられた方法における、HSDの阻害薬の使用法を提供し、この治療効果は、肝臓での糖新生の阻害、脂肪組織および筋肉におけるインスリン感受性の増大、ならびにグルココルチコイドにより増強される神経毒性または神経の機能障害もしくは損傷に起因するニューロン損失/認知障害の予防または軽減からなる群より選択される。
【0029】
本発明はさらに、肝インスリン抵抗性、脂肪組織インスリン抵抗性、筋肉インスリン抵抗性、グルココルチコイドにより増強される神経毒性に起因するニューロン損失または機能障害、および前述の病状の任意の組み合わせからなる群より選択される病状を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0030】
本発明のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体は、式Iを有する化合物、ならびにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、またはプロドラッグである。

【0031】
式Iにおいて、Xは、-C(R1)(R2)(R3)および(C2-C8)アルキニルより選択されるメンバーである。R1は、ヒドロキシ、ハロゲン、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル、シアノ、ニトロ、(C1-C8)アルコキシ、および(C1-C4)アルキレン-C(O)R4からなる群より選択されるメンバーである。R2およびR3は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、および(C3-C8)シクロアルキルからなる群より独立に選択される。R4は、ヒドロキシ、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、および(C3-C8)ヘテロシクロアルキルからなる群より選択されるメンバーである。
【0032】
1つの態様において、R2およびR3は一体となって(C3-C8)シクロアルカン環を形成してもよい。
【0033】
変数Y1およびY2は、NおよびCR5より独立に選択される。
【0034】
置換基R5は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)ハロアルキル、-C(O)R4、および-SO2R6からなる群より選択される。
【0035】
置換基R6は、(C1-C8)アルキルおよびアリールからなる群より選択される。
【0036】
置換基R7は、水素およびハロゲンからなる群より選択される。
【0037】
置換基R8は、水素、(C1-C8)アルキル、(C1-C4)アルキレン-OR14、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル(C1-C4)アルキル、および(C1-C8)ハロアルキルからなる群より選択される。
【0038】
置換基R9は、水素および(C1-C8)アルキルからなる群より選択される。
【0039】
置換基R10、R11およびR12は、水素および(C1-C8)アルキルからなる群より独立に選択される。
【0040】
1つの態様において、R11は、R8またはR9と一体となって、架橋された二環式環を形成してもよい。
【0041】
置換基R13は、水素、ハロゲン、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C1-C8)アルコキシ、シアノ、およびニトロからなる群より独立に選択される。
【0042】
1つの態様において、R13は、Y1、Y2、または隣接したR13と一体となって、N、O、およびSより選択される0、1、または2個のヘテロ原子を含む五員または六員の縮合環を形成してもよい。
【0043】
置換基R14は、水素、1つまたは複数の酸素が介在してもよい(C1-C8)アルキル、-C(O)-(C1-C8)アルキル、-SO2-(C1-C8)アルキル、および(C3-C8)ヘテロシクロアルキル(C1-C4)アルキルからなる群より選択される。
【0044】
添字mおよびnは、独立に1または2である。
【0045】
本明細書に記載した態様において、任意のシクロアルキル部分、ヘテロシクロアルキル部分、アリール部分またはヘテロアリール部分は、オキソ、アリール(C1-C4)アルキル、ヘテロアリール(C1-C4)アルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、-C(O)R'、-C(O)OR'、-NR'C(O)OR''、-OR'、-SR'、-OC(O)R'、-C(O)N(R')2、-S(O)R''、-SO2R''、-SO2N(R')2、-N(R')2、および-NR'C(O)R'からなる群より選択される1つから4つまでのメンバーによって置換されうる。
【0046】
R'のそれぞれの存在は独立に、水素、または(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルコキシ(C1-C4)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、(C3-C8)シクロアルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、(C3-C8)シクロアルキル(C1-C6)アルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル(C1-C6)アルキル、ヘテロアリール(C1-C6)アルキル、およびアリール(C1-C6)アルキルからなる群より選択される非置換型のメンバーである。いくつかの態様において、2つのR'基は、同一の窒素原子と結合した場合に、それらが結合している窒素原子と一体となって、複素環またはヘテロアリール基を形成することができる。
【0047】
R''のそれぞれの存在は独立に、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルコキシ(C1-C4)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、(C3-C8)シクロアルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール,(C3-C8)シクロアルキル(C1-C6)アルキル、ヘテロシクリル(C1-C6)アルキル、ヘテロアリール(C1-C6)アルキル、およびアリール(C1-C6)アルキルからなる群より選択される非置換型のメンバーである。
【0048】
本発明のジアザ複素環式化合物は、R8、R9、R10、R11、およびR12がすべて水素であってmが1である場合に、Y1およびY2は同時にCR5であることはできないという条件に従う。加えて、R1、R2、またはR3は-C1-アルキレン-C(O)OHであることはできない。R1、R2、またはR3は-C(O)OHであることはできない。Y1がNであってY2がCR5である場合に、R5は、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C1-C8)アルコキシ、-C(O)R4、および-SO2R6ではない。本化合物はまた、1-(4-(トリフルオロメチル)フェニルスルホニル)-4-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-1,4-ジアゼパン、1-(4-n-ペンチルフェニルスルホニル)-4-(5-トリフルオロメチル)-3-クロロピリジン-2-イル)-1,4-ジアゼパン、1-(4-(トリフルオロメチル)フェニルスルホニル)-4-(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジン、1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジン、1-(4-(エトキシカルボニル)フェニルスルホニル)-4-(3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジン、1-(4-ニトロフェニルスルホニル)-4-(3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジン、1-(4-アセチルフェニルスルホニル)-4-(3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジン、1-(4-シアノフェニルスルホニル)-4-(3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジン、または1-(4-(トリフルオロメチル)フェニルスルホニル)-4-(3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジンのいずれでもない。また、R10およびR12が両方とも水素であり、R11がR8およびR9の一方と一体となって架橋環を形成し、R8およびR9のもう一方がHであり、mが1または2であり、かつY1およびY2が同時にNである場合に、R13は(C1-C8)アルキルであることはできない。
【0049】
本発明の1つの態様は、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体および薬学的に許容される媒体、担体、添加剤、または希釈剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0050】
もう1つの態様において、本発明は、インスリン依存性糖尿病を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0051】
もう1つの態様において、本発明は、インスリン非依存性糖尿病を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0052】
なおもう1つの態様において、本発明は、インスリン抵抗性を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0053】
さらにもう1つの態様において、本発明は、肥満を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0054】
もう1つの態様において、本発明は、コルチゾール産生を調節するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0055】
もう1つの態様において、本発明は、肝臓でのグルコース産生を調節するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0056】
もう1つの態様において、本発明は、視床下部機能を調節するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0057】
1つの態様において、本発明は、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼが介在する病状または障害を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0058】
もう1つの態様において、本発明は、細胞におけるヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの機能を調節するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0059】
1つのさらなる態様において、本発明は、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを調節するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0060】
さらにもう1つの態様において、本発明は、11β-HSD1が介在する病状または障害を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0061】
なおもう1つの態様において、本発明は、細胞における11β-HSD1の機能を調節するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0062】
1つのさらなる態様において、本発明は、11β-HSD1を調節するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0063】
1つの態様において、本発明は、11β-HSD2が介在する病状または障害を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0064】
もう1つの態様において、本発明は、細胞における11β-HSD2の機能を調節するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0065】
1つのさらなる態様において、本発明は、11β-HSD2を調節するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0066】
1つの態様において、本発明は、17β-HSD3が介在する病状または障害を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0067】
もう1つの態様において、本発明は、細胞における17β-HSD3の機能を調節するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0068】
1つのさらなる態様において、本発明は、17β-HSD3を調節するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0069】
本発明の上記および他の態様は、以下の詳細な説明を参照することによって明白になると考えられる。その目的のために、本発明のさまざまな態様をより具体的に示すための特定の特許および他の文書を、本明細書中に引用している。これらの文書はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0070】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で用いる場合、諸用語は以下の意味を有する。
【0071】
本明細書で用いる「アルキル」という用語は、指定された数の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素を指す。例えば、(C1-C6)アルキルには、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシルおよびネオヘキシルが非限定的に含まれるものとする。アルキル基は非置換型であってもよく、または本明細書で後述するような1つもしくは複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0072】
本明細書で用いる「アルケニル」という用語は、指定された数の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を有する直鎖状または分枝鎖状の不飽和炭化水素を指す。(C2-C8)アルケニル基の例には、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、2-ブチレン、イソブチレン、sec-ブチレン、1-ペンテン、2-ペンテン、イソペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-ヘキセン、イソヘキセン、1-ヘプテン、2-ヘプテン、3-ヘプテン、イソヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、3-オクテン、4-オクテン、およびイソオクテンが非限定的に含まれる。アルケニル基は非置換型であってもよく、または本明細書で後述するような1つもしくは複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0073】
本明細書で用いる「アルキニル」という用語は、指定された数の炭素原子および少なくとも1つの三重結合を有する直鎖状または分枝鎖状の不飽和炭化水素を指す。(C2-C8)アルキニル基の例には、アセチレン、プロピン、1-ブチン、2-ブチン、1-ペンチン、2-ペンチン、1-ヘキシン、2-ヘキシン、3-ヘキシン、1-ヘプチン、2-ヘプチン、3-ヘプチン、1-オクチン、2-オクチン、3-オクチン、および4-オクチンが非限定的に含まれる。アルキニル基は非置換型であってもよく、または本明細書で後述するような1つもしくは複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0074】
「アルキレン」という用語は、二価アルキル基(例えば、2つの他の部分と、典型的には連結基として結合したアルキル基)を指す。(C1-C7)アルキレンの例には、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-、および-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2-、ならびにそれらの分枝バージョンが含まれる。アルキレン基は非置換型であってもよく、または本明細書で後述するような1つもしくは複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0075】
「アルケニレン」という用語は、二価アルケン基(例えば、2つの他の部分と、典型的には連結基として結合したアルケン基)を指す。(C2-C7)アルケニレンの例には、-CH=CH-、-CH=CHCH2-、-CH=CHCH2CH2-、-CH=CHCH2CH2CH2-、-CH=CHCH2CH2CH2CH2-、および-CH=CHCH2CH2CH2CH2CH2-、ならびにそれらの分枝バージョンおよび構造異性体が含まれる。アルケニレン基は非置換型であってもよく、または本明細書で後述するような1つもしくは複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0076】
本明細書で用いる「アルコキシ」という用語は、指定された数の炭素原子を有する-O-アルキル基を指す。例えば、(C1-C6)アルコキシ基には、-O-メチル、-O-エチル、-O-プロピル、-O-イソプロピル、-O-ブチル、-O-sec-ブチル、-O-tert-ブチル、-O-ペンチル、-O-イソペンチル、-O-ネオペンチル、-O-ヘキシル、-O-イソヘキシル、および-O-ネオヘキシルが含まれる。
【0077】
本明細書で用いる「アミノアルキル」という用語は、C1-C6アルキル基の水素原子の1つまたは複数が式-N(Ra)2のアミンによって置き換えられたアルキル基(典型的には1〜6個の炭素原子)を指し、式中、Raのそれぞれの存在は独立に、Hまたは(C1-C6)アルキルである。アミノアルキル基の例には、-CH2NH2、-CH2CH2NH2-、-CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2N(CH3)2、t-ブチルアミノメチル、イソプロピルアミノメチルなどが非限定的に含まれる。
【0078】
本明細書で用いる「アリール」という用語は、六員〜十四員の単環式、二環式または三環式の芳香族炭化水素環系を指す。アリール基の例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。アリール基は非置換型であってもよく、または本明細書で後述するような1つもしくは複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0079】
本明細書で用いる「シクロアルキル」という用語は、三員〜十四員の飽和型または不飽和型で非芳香族性の単環式、二環式または三環式の炭化水素環系を指す。このクラスに含まれるものには、ベンゼン環と縮合したシクロアルキル基がある。代表的なシクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、1,3-シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、1,3-シクロヘプタジエニル、1,4-シクロヘプタジエニル、-1,3,5-シクロヘプタトリエニル、シクロオクチル、シクロオクテニル、1,3-シクロオクタジエニル、1,4-シクロオクタジエニル、-1,3,5-シクロオクタトリエニル、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロナフタレン、ヘキサヒドロナフタレン、オクタヒドロインデン、ヘキサヒドロインデン、テトラヒドロインデン、デカヒドロベンゾシクロヘプテン、オクタヒドロベンゾシクロヘプテン、ヘキサヒドロベンゾシクロヘプテン、テトラヒドロベンゾシクロヘプテン、ドデカヒドロヘプタレン、デカヒドロヘプタレン、オクタヒドロヘプタレン、ヘキサヒドロヘプタレン、およびテトラヒドロヘプタレンが非限定的に含まれる。シクロアルキル基は非置換型であってもよく、または本明細書で後述するような1つもしくは複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0080】
本明細書で用いる「ハロ」という用語は、-F、-Cl、-Br、または-Iを指す。
【0081】
本明細書で用いる「ハロアルキル」という用語は、C1-C6アルキル基の水素原子の1つまたは複数が、同じでも異なってもよいハロゲン原子によって置き換えられたC1-C6アルキル基を指す。ハロアルキル基の例には、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピル、ペンタクロロエチル、および1,1,1-トリフルオロ-2-ブロモ-2-クロロエチルが非限定的に含まれる。
【0082】
「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体で、または別の用語との組み合わせで、別に明記されない限り、炭素原子と、O、N、およびSからなる群より選択される1〜3個のヘテロ原子とからなる安定な直鎖状もしくは分枝鎖状のヘテロシクロアルキルまたはそれらの組み合わせを指し、ここで窒素原子およびイオウ原子は酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、N、およびSはヘテロアルキル基の任意の位置にあってよい。その例には、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、および-CH2-CH=N-OCH3が含まれる。最大で2つのヘテロ原子が、例えば-CH2-NH-OCH3のように連続していてもよい。(C2-C8)などの接頭辞がヘテロアルキル基を指して用いられる場合、炭素の数(この例では2〜8個)にはヘテロ原子も含まれるものとする。例えば、C2-ヘテロアルキル基には、例えば、-CH2OH(1つの炭素原子および炭素原子を置き換える1つのヘテロ原子)および-CH2SHが含まれるものとする。
【0083】
ヘテロアルキル基の定義をさらに実例で説明すると、ヘテロ原子が酸素である場合、ヘテロアルキル基はオキシアルキル基である。例えば、(C2-C5)オキシアルキルには、例えば-CH2-O-CH3(2つの炭素原子および炭素原子を置き換える1つの酸素を有するC3-オキシアルキル基)、-CH2CH2CH2CH2OHなどが含まれるものとする。
【0084】
「ヘテロアルキレン」という用語は、-CH2-CH2-S-CH2CH2-およびCH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-によって例示されるように、それ自体で、または別の置換基の一部として、ヘテロアルキルに由来する二価遊離基のことを意味する。ヘテロアルキレン基に関して、ヘテロ原子は、鎖の末端の一方または両方を占有することもできる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらになお、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基に関して、連結基の配置について何ら含意はない。
【0085】
本明細書で用いる「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素およびイオウより選択される少なくとも一つのヘテロ原子を有し、かつ少なくとも1つの炭素原子を含む、五員〜十四員の芳香族複素環を指し、これには単環式、二環式、および三環式環系が含まれる。代表的なヘテロアリールは、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ピリジル、フリル、ベンゾフラニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、キノリニル、ピロリル、インドリル、オキサゾリル、ベンゾキサゾリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ピリミジル、アゼピニル、オキセピニル、キノキサリニル、およびオキサゾリルである。ヘテロアリール基は非置換型であってもよく、または本明細書で後述するような1つもしくは複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0086】
本明細書で用いる場合、「ヘテロ原子」という用語は、酸素(O)、窒素(N)、およびイオウ(S)を含むものとする。
【0087】
本明細書で用いる場合、「複素環」という用語は、飽和型、不飽和型、または芳香族性のいずれかであって、窒素、酸素、およびイオウより独立に選択される1〜4個のヘテロ原子を含む三員〜十四員の環系を指し、ここで窒素ヘテロ原子およびイオウヘテロ原子は酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は四級化されていてもよく、これには単環式、二環式、および三環式環系が含まれる。二環式および三環式の環系は、ベンゼン環と縮合した複素環またはヘテロアリールを含んでもよい。複素環は任意のヘテロ原子または炭素原子を介して結合してもよい。複素環には以上に定義したヘテロアリールが含まれる。複素環の代表的な例には、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、トリアゾリル、テトラゾリル、アジリニル、ジアジリジニル、ジアジリニル、オキサジリジニル、アゼチジニル、アゼチジノニル、オキセタニル、チエタニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、ピロリル、オキサジニル、チアジニル、ジアジニル、ジオキサニル、トリアジニル、テトラジニル、イミダゾリル、テトラゾリル、ピロリジニル、イソキサゾリル、フラニル、フラザニル、ピリジニル、オキサゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、チアゾリル、ベンズチアゾリル、チオフェニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、プリニル、インドリル、イソキノリニル、キノリニル、およびキナゾリニルが非限定的に含まれる。複素環基は非置換型であってもよく、または本明細書で後述するような1つもしくは複数の置換基によって置換されていてもよい。
【0088】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、それ自体で、または別の用語との組み合わせで、別に明記されない限り、「ヘテロアルキル」の環状バージョンのことを表す。加えて、ヘテロ原子は、複素環が分子の残りと結合している位置を占有することができる。ヘテロシクロアルキルの例には、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが含まれる。
【0089】
本明細書で用いる「ヒドロキシアルキル」という用語は、アルキル基の水素原子の1つまたは複数が-OH基で置き換えられている、指定された数の炭素原子を有するアルキル基を指す。ヒドロキシアルキル基の例には、-CH2OH、-CH2CH2OH、-CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2OH、およびそれらの分枝バージョンが非限定的に含まれる。
【0090】
アルキル、ヘテロアルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニルおよびヘテロシクロアルケニルと呼ばれる基に対する置換基は、0から3までの範囲の数の、以下のものより選択されるさまざまな基であってよく、それらの基は例示的にはゼロ、1つ、または2つの置換基を有する:-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R''、-SR'、-ハロ、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'''C(O)NR'R''、-NR'''SO2NR'R''、-NR''CO2R'、-NHC(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NHC(NH2)=NR'、-S(O)R'、-SO2R'、-SO2NR'R''、-NR''SO2R'、-CN、および-NO2。R'、R''、およびR'''はそれぞれ独立に、水素、非置換(C1-C8)アルキル、非置換ヘテロ(C1-C8)アルキル、非置換アリール、ならびに、-ハロ、非置換アルキル、非置換アルコキシ、非置換チオアルコキシ、および非置換アリール(C1-C4)アルキルより選択される1〜3個の置換基で置換されたアリールを指す。R'およびR''が同じ窒素原子に結合している場合、これらはその窒素原子と一体となって五員環、六員環、または七員環を形成することができる。例えば、-NR'R''は、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むことを意味する。典型的には、アルキルまたはヘテロアルキル基は、0〜3個の置換基を有すると考えられ、2つまたはそれ未満の置換基を有する基が本発明においては例示的である。アルキルまたはヘテロアルキル遊離基は、非置換型でも一置換型でもありうる。いくつかの態様において、アルキルまたはヘテロアルキル遊離基は、非置換型であると考えられる。置換基に関する上記の考察から、当業者は、「アルキル」という用語がトリハロアルキル(例えば、-CF3および-CH2CF3)などの基を含むことを理解するであろう。
【0091】
アルキルおよびヘテロアルキル遊離基に対する例示的な置換基には、-OR'、=O、-NR'R''、-SR'、-ハロ、-SiR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-C(O)NR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''CO2R'、-NR''SO2NR'R''、-S(O)R'、-SO2R'、-SO2NR'R''、-NR''SO2R'、-CN、および-NO2が非限定的に含まれ、ここでR'、R''、およびR'''は、上記で定義した通りである。典型的な置換基は、以下のものより選択することができる:-OR'、=O、-NR'R''、-ハロ、-OC(O)R'、-CO2R'、-C(O)NR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''CO2R'、-NR'''SO2NR'R''、-SO2R'、-SO2NR'R''、-NR''SO2R'、-CNおよび-NO2
【0092】
同様に、アリールおよびヘテロアリール基に対する置換基もさまざまであり、ゼロから芳香族環系上の空き原子価の総数までの範囲の数で、以下のものより選択される:-ハロ、-OR'、-OC(O)R'、-NR'R''、-SR'、-R'、-CN、-NO2、-CO2R'、-C(O)NR'R''、-C(O)R'、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR''CO2R'、-NR'''C(O)NR'R''、-NR'''SO2NR'R''、-NHC(NH2)=NH、-NR'C(NH2)=NH、-NH-C(NH2)=NR'、-S(O)R'、-SO2R'、-SO2NR'R''、-NR''SO2R'、-N3、-CH(Ph)2、ペルフルオロアルコキシ、およびペルフルオロ(C1-C4)アルキル;ここでR'、R''、およびR'''は、水素、非置換(C1-C8)アルキル、非置換(C1-C8)アルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、非置換アリール(C1-C4)アルキル、および非置換アリールオキシ(C1-C4)アルキルより独立に選択される。典型的には、アリールまたはヘテロアリール基は、ゼロから3つまでの置換基を有すると考えられ、2つまたはそれ未満の置換基を有する基が本発明においては例示的である。本発明の1つの態様において、アリールまたはヘテロアリール基は非置換型または一置換型であると考えられる。もう1つの態様において、アリールまたはヘテロアリール基は非置換型であると考えられる。
【0093】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは、式-T-C(O)-(CH2)q-U-の置換基で置換されていてもよく、式中、TおよびUは独立に、-NH-、-O-、-CH2-、または一重結合であり、qは0から2までの整数である。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは、式-A-(CH2)r-B-の置換基で置換されていてもよく、式中、AおよびBは独立に-CH2-、-O-、-NH-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-、または一重結合であり、rは1から3までの整数である。このようにして形成された新しい環の一重結合の1つは、二重結合で置き換えられてもよい。または、アリールまたはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基の2つは式-(CH2)s-X-(CH2)t-の置換基で置換されていてもよく、式中、sおよびtは独立に0から3までの整数であり、Xは-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、または-S(O)2NR'-である。-NR'-および-S(O)2NR'-における置換基R'は、水素または非置換(C1-C6)アルキルより選択される。
【0094】
本明細書で用いる置換基-CO2Hは、

などの生物学的等価性のある置換物で置き換えられてもよいことが理解される必要がある。例えば、The Practice of Medicinal Chemistry;Wermuth, C.G., Ed.;Academic Press: New York, 1996;p. 203を参照。
【0095】
式Iのジアザ複素環式スルホンアミド誘導体はまた、立体配置異性体、幾何異性体、および配座異性体、ならびにさまざまな互変異性体、特に水素原子の結合点が異なるものとして存在するものを含む、さまざまな異性体として存在することもできる。本明細書で用いる場合、「異性体」という用語は、化合物の互変異性体を含む、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体のすべての異性体形態を含むことを意図している。
【0096】
ある種のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体は、不斉中心を有し、このため種々の鏡像異性体形態およびジアステレオマー形態で存在することができる。ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体は、光学異性体またはジアステレオマーの形態でありうる。したがって、本発明は、光学異性体、ジアステレオマー、およびラセミ混合物を含むそれらの混合物の形態で、本明細書に記載するような、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体、およびそれらの使用法を含む。ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の光学異性体は、不斉合成、キラルクロマトグラフィー、疑似移動床技術、または光学活性分割剤の使用による立体異性体の化学的分離を介するものなどの公知の手法によって入手することができる。
【0097】
本明細書で用いる場合、別に指示しない限り、「立体異性体」という用語は、ある化合物の一方の立体異性体であり、その化合物のもう一方の立体異性体を実質的に含まないものを意味する。例えば、1つのキラル中心を有する立体異性体として純粋な化合物は、その化合物の逆の鏡像異性体を実質的に含まないと考えられる。2つのキラル中心を有する立体異性体として純粋な化合物は、化合物の他のジアステレオマーを実質的に含まないと考えられる。典型的な、立体異性体として純粋な化合物は、約80重量%を上回る化合物の一方の立体異性体および約20重量%未満である化合物のもう一方の立体異性体、例えば、約90重量%を上回る化合物の一方の立体異性体および約10重量%未満である化合物のもう一方の立体異性体、または約95重量%を上回る化合物の一方の立体異性体および約5重量%未満である化合物のもう一方の立体異性体、または約97重量%を上回る化合物の一方の立体異性体および約3重量%未満である化合物のもう一方の立体異性体を含む。
【0098】
示された構造とその構造に与えられた名称との間に矛盾がある場合、示された構造が支配的であることに留意すべきである。加えて、構造または構造の一部分の立体化学が、例えば、太線、くさび形線または破線によって示されていない場合、その構造または構造の一部分はそのすべての立体異性体を含むと解釈されるべきである。
【0099】
ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体は、薬学的に許容される塩の形態にあってもよい。誘導体の構造に応じて、本明細書で用いる「薬学的に許容される塩」という語句は、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の薬学的に許容される有機酸もしくは無機酸塩または塩基塩を指す。代表的な薬学的に許容される塩には、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩、水溶性および水不溶性の塩、例えば、酢酸塩、アムソン酸塩(4,4-ジアミノスチルベン-2,2-ジスルホン酸塩)、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩(benzonate)、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、カルシウム、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、カルボン酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エディシレート、エストレート、エシレート、フマル酸塩(fiunarate)、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、メチル臭化物、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、3-ヒドロキシ-2-ナフトエート、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩(1,1-メテン-ビス-2-ヒドロキシ-3-ナフトエート、エインボネート(einbonate))、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリキュレート(sulfosaliculate)、スラメート(suramate)、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシレート、トリエチオジド、および吉草酸塩などが含まれる。さらに、薬学的に許容される塩は、その構造内に複数の荷電原子を有することもできる。この場合、薬学的に許容される塩は複数の対イオンを有することができる。したがって、薬学的に許容される塩は、1つもしくは複数の荷電原子および/または1つもしくは複数の対イオンを有することができる。
【0100】
本明細書で用いる「単離および精製された形態」という用語は、(例えば、合成有機化学反応混合物の他の成分から)単離された時に、単離物が、単離物の重量比で少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を含むことを意味する。1つの態様において、単離物は、単離物の重量比で少なくとも95%のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を含む。
【0101】
本明細書で用いる場合、「プロドラッグ」という用語は、生物的状態(インビトロまたはインビボ)で加水分解し、酸化し、または別の様式で反応して、活性化合物、特にジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を生じることのできる化合物の誘導体を指す。プロドラッグの例には、生体で加水分解可能なアミド、生体で加水分解可能なエステル、生体で加水分解可能なカルバメート、生体で加水分解可能なカーボネート、生体で加水分解可能なウレイド、および生体で加水分解可能なホスフェート類似体(例えば、モノホスフェート、ジホスフェート、またはトリホスフェート)などの生体で加水分解可能な基を含む、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の誘導体および代謝産物が非限定的に含まれる。いくつかの態様において、カルボキシ官能基を有する化合物のプロドラッグは、カルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、分子上に存在する任意のカルボン酸部分をエステル化することによって都合よく形成される。プロドラッグは典型的には、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery 6th ed.(Donald J. Abraham ed., 2001, Wiley)およびDesign and Application of Prodrugs(H. Bundgaard ed., 1985, Harwood Academic Publishers Gmfh)に記載されたものなどの周知の方法を用いて調製することができる。
【0102】
本明細書で用いる場合、「治療する」、「治療すること」、および「治療」という用語は、疾患または疾患に伴う症状の根絶または軽減を指す。ある態様において、そのような用語は、そのような疾患を有する患者に対する1つまたは複数の予防薬または治療薬の投与によってもたらされる、疾患の波及または悪化の最小化を指す。
【0103】
本明細書で用いる場合、「予防する」、「予防すること」、および「予防」という用語は、予防薬または治療薬の投与によってもたらされる、患者の疾患の発現、再発、または波及の防止を指す。
【0104】
本明細書で用いる「有効量」という用語は、疾患の治療もしくは予防において治療上もしくは予防上の利点を提供する、または疾患に伴う症状を遅延もしくは最小化するのに十分な、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体または他の活性成分の量を指す。さらに、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体に関する治療的有効量とは、疾患の治療または予防において治療上の利点を提供する、治療薬の単独または他の治療法との組み合わせでの量のことを意味する。ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体に関連して用いる場合、この用語は、治療法を全体的に改善する量、疾患の症状もしくは原因を軽減もしくは回避する量、または別の治療薬の治療上の有効性もしくは別の治療薬との相乗性を強化する量を含みうる。
【0105】
本明細書で用いる場合、「シンドロームX」とは、高インスリン血症、肥満、トリグリセリド、尿酸、フィブリノーゲン、低密度LDL粒子およびプラスミノーゲン活性化因子阻害薬1(PAI-1)の高値、ならびにHDLコレステロールの低値を含む、一群の異常を指す。シンドロームXはさらに、メタボリックシンドロームを含むことを意味する。
【0106】
「調節する」、「調節」などの用語は、化合物が、例えば11β-HSD1の機能または活性を増大または低下させる能力を指す。本明細書においてそのさまざまな形態で用いられる「調節」は、11β-HSD1と関連のある活性の阻害、拮抗作用、部分的拮抗作用、活性化、作動作用および/または部分作動作用を含むことを意図している。11β-HSD1阻害薬は、例えば、結合する、刺激を部分的もしくは完全に阻止する、減少させる、防止する、活性化を遅延させる、不活性化する、脱感作する、またはシグナル伝達をダウンレギュレートする化合物である。11β-HSD1活性化薬は、例えば、結合する、刺激する、増加させる、開放させる、促進する、活性化を強化する、感作する、またはシグナル伝達をアップレギュレートする化合物である。化合物が11β-HSD1を調節する能力は、酵素アッセイまたはセルベースアッセイで示すことができる。例えば、11β-HSD1の阻害は、コルチゾンのコルチゾールへの変換を阻止することによって、患者におけるコルチゾールレベルを低下させること、および/または患者におけるコルチゾンレベルを上昇させることができる。または、11β-HSD2の阻害は、コルチゾールのコルチゾンへの変換を阻止することによって、患者におけるコルチゾールレベルを上昇させること、および/または患者におけるコルチゾンレベルを低下させることができる。
【0107】
「患者」には、動物(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギまたはモルモット)が含まれ、1つの態様においては非霊長類および霊長類(例えば、サルおよびヒト)などの哺乳動物が含まれ、もう1つの態様においてはヒトが含まれる。1つの態様において、患者はヒトである。他の態様において、患者は、ヒト乳児、小児、青年、または成人である。
【0108】
本明細書で用いる「HSD」という用語は、11-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11β-HSD)、17-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(17β-HSD)、20-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(20α-HSD)、3-α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3α-HSD)、およびそれらのすべてのアイソフォームを非限定的に含む、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ酵素全般を指す。
【0109】
本明細書で用いる「11β-HSD1」という用語は、11-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型酵素、その変異体またはアイソフォームを指す。11β-HSD1変異体には、天然の11β-HSD1と実質的に相同なタンパク質、すなわち、1つまたは複数の天然または非天然のアミノ酸欠失、挿入、または置換を有するタンパク質(例えば、11β-HSD1誘導体、相同体、および断片)が含まれる。11β-HSD1変異体のアミノ酸配列は、天然の11β-HSD1と少なくとも約80%同一であってよく、または少なくとも約90%同一、または少なくとも約95%同一であってよい。
【0110】
本明細書で用いる「11β-HSD2」という用語は、11-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2型酵素、その変異体またはアイソフォームを指す。11β-HSD2変異体には、天然の11β-HSD2と実質的に相同なタンパク質、すなわち、1つまたは複数の天然または非天然のアミノ酸欠失、挿入、または置換を有するタンパク質(例えば、11β-HSD2誘導体、相同体、および断片)が含まれる。11β-HSD2変異体のアミノ酸配列は、天然の11β-HSD2と少なくとも約80%同一であってよく、または少なくとも約90%同一、または少なくとも約95%同一であってよい(Bart et al., J. Med. Chem., 2002, 45:3813-3815を参照)。
【0111】
本明細書で用いる「17β-HSD3」という用語は、17-β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ3型酵素、その変異体またはアイソフォームを指す。17β-HSD3変異体には、天然の17β-HSD3と実質的に相同なタンパク質、すなわち、1つまたは複数の天然または非天然のアミノ酸欠失、挿入、または置換を有するタンパク質(例えば、17β-HSD3誘導体、相同体、および断片)が含まれる。17β-HSD3変異体のアミノ酸配列は、天然の17β-HSD3と少なくとも約80%同一であってよく、または少なくとも約90%同一、または少なくとも約95%同一であってよい。
【0112】
本明細書で用いる場合、「HSD反応性の病状または障害」という用語ならびに関連する用語および語句は、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ酵素(HSD)の調節に対して有利に反応する病状または障害を指す。HSD調節に対する有利な反応には、疾患および/またはその随伴症状の軽減または抑止、疾患の阻害、すなわち疾患の発生またはその臨床症状の停止または減少、および疾患またはその臨床症状の退縮が含まれる。HSD反応性の病状または疾患は、HSD調節に対して完全または部分的に反応しうる。HSD反応性の病状または障害は、不適切な、例えば正常よりも低いまたは高いHSD活性と関連があり、かつ、HSD調節に対して少なくとも部分的に反応性であるか、またはそれによる影響を受ける可能性がある(例えば、HSD阻害薬が少なくとも一部の患者で患者の健康状態の何らかの改善をもたらす)。不適切なHSD機能活性は、通常はHSDを発現しない細胞におけるHSDの発現、HSD発現の低下、またはHSD発現の増大の結果として起こることがある。HSD反応性の病状または障害には、任意のHSDまたはそのアイソフォームが介在する病状または障害が含まれうる。
【0113】
本明細書で用いる場合、「11β-HSD1反応性の病状または障害」という用語ならびに関連する用語および語句は、11β-HSD1活性の調節に対して有利に反応する病状または障害を指す。11β-HSD1調節に対する有利な反応には、疾患および/またはその随伴症状の軽減または抑止、疾患の阻害、すなわち疾患の発生またはその臨床症状の停止または減少、および疾患またはその臨床症状の退縮が含まれる。11β-HSD1反応性の病状または疾患は、11β-HSD1調節に対して完全または部分的に反応しうる。11β-HSD1反応性の病状または障害は、不適切な、例えば正常よりも低いまたは高い11β-HSD1活性と関連があり、かつ、11β-HSD1調節に対して少なくとも部分的に反応性であるか、またはそれによる影響を受ける可能性がある(例えば、11β-HSD1阻害薬が少なくとも一部の患者で患者の健康状態の何らかの改善をもたらす)。不適切な11β-HSD1機能活性は、通常は11β-HSD1を発現しない細胞における11β-HSD1の発現、11β-HSD1発現の低下、または11β-HSD1発現の増大の結果として起こることがある。11β-HSD1反応性の病状または障害には、11β-HSD1が介在する病状または障害が含まれうる。
【0114】
本明細書で用いる場合、「11β-HSD2反応性の病状または障害」という用語ならびに関連する用語および語句は、11β-HSD2活性の調節に対して有利に反応する病状または障害を指す。11β-HSD2調節に対する有利な反応には、疾患および/またはその随伴症状の軽減または抑止、疾患の阻害、すなわち疾患の発生またはその臨床症状の停止または減少、および疾患またはその臨床症状の退縮が含まれる。11β-HSD2反応性の病状または疾患は、11β-HSD2調節に対して完全または部分的に反応しうる。11β-HSD2反応性の病状または障害は、不適切な、例えば正常よりも低いまたは高い11β-HSD2活性と関連があり、かつ、11β-HSD2調節に対して少なくとも部分的に反応性であるか、またはそれによる影響を受ける可能性がある(例えば、11β-HSD2阻害薬が少なくとも一部の患者で患者の健康状態の何らかの改善をもたらす)。
【0115】
本明細書で用いる場合、「17β-HSD3反応性の病状または障害」という用語ならびに関連する用語および語句は、17β-HSD3活性の調節に対して有利に反応する病状または障害を指す。17β-HSD3調節に対する有利な反応には、疾患および/またはその随伴症状の軽減または抑止、疾患の阻害、すなわち疾患の発生またはその臨床症状の停止または減少、および疾患またはその臨床症状の退縮が含まれる。17β-HSD3反応性の病状または疾患は、17β-HSD3調節に対して完全または部分的に反応しうる。17β-HSD3反応性の病状または障害は、不適切な、例えば正常よりも低いまたは高い17β-HSD3活性と関連があり、かつ、17β-HSD3調節に対して少なくとも部分的に反応性である、またはそれによる影響を受ける可能性がある(例えば、17β-HSD3阻害薬が少なくとも一部の患者で患者の健康状態の何らかの改善をもたらす)。不適切な17β-HSD3機能活性は、通常は17β-HSD3を発現しない細胞における17β-HSD3の発現、17β-HSD3発現の低下、または17β-HSD3発現の増大の結果として起こることがある。17β-HSD3反応性の病状または障害には、17β-HSD3が介在する病状または障害が含まれうる。
【0116】
本明細書で用いる場合、「HSDが介在する病状または障害」という用語ならびに関連する用語および語句は、不適切な、例えば正常よりも低いまたは高いヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(HSD)活性によって特徴づけられる病状または障害を指す。HSDが介在する病状または障害は、不適切なHSD活性によって完全または部分的に特徴づけることができる。しかし、HSDが介在する病状または障害とは、HSDの調節が、基礎をなす病状または障害に対して何らかの効果をもたらす(例えば、HSD阻害薬が少なくとも一部の患者で患者の健康状態に何らかの改善をもたらす)ものである。
【0117】
本明細書で用いる場合、「11β-HSD1が介在する病状または障害」という用語ならびに関連する用語および語句は、不適切な、例えば正常よりも低いまたは高い11β-HSD1活性によって特徴づけられる病状または障害を指す。11β-HSD1が介在する病状または障害は、不適切な11β-HSD1活性によって完全または部分的に特徴づけることができる。しかし、11β-HSD1が介在する病状または障害とは、11β-HSD1の調節が、基礎をなす病状または障害に対して何らかの効果をもたらす(例えば、11β-HSD1阻害薬が少なくとも一部の患者で患者の健康状態に何らかの改善をもたらす)ものである。
【0118】
本明細書で用いる場合、「11β-HSD2が介在する病状または障害」という用語ならびに関連する用語および語句は、不適切な、例えば正常よりも低いまたは高い11β-HSD2活性によって特徴づけられる病状または障害を指す。11β-HSD2が介在する病状または障害は、不適切な11β-HSD2活性によって完全または部分的に特徴づけることができる。しかし、11β-HSD2が介在する病状または障害とは、11β-HSD2の調節が、基礎をなす病状または障害に対して何らかの効果をもたらす(例えば、11β-HSD2阻害薬が少なくとも一部の患者で患者の健康状態に何らかの改善をもたらす)ものである。
【0119】
本明細書で用いる場合、「17β-HSD3が介在する病状または障害」という用語ならびに関連する用語および語句は、不適切な、例えば正常よりも低いまたは高い17β-HSD3活性によって特徴づけられる病状または障害を指す。17β-HSD3が介在する病状または障害は、不適切な17β-HSD3活性によって完全または部分的に特徴づけることができる。しかし、17β-HSD3が介在する病状または障害とは、17β-HSD3の調節が、基礎をなす病状または障害に対して何らかの効果をもたらす(例えば、17β-HSD3阻害薬が少なくとも一部の患者で患者の健康状態に何らかの改善をもたらす)ものである。
【0120】
以下の略語が本明細書で用いられており、以下に示す定義を有する:DMEMはダルベッコ変法イーグル培地である;Et3Nはトリエチルアミンである;EtOAcは酢酸エチルである;MeOHはメタノールである;MSは質量分析である;NMRは核磁気共鳴である;PBSはリン酸緩衝食塩水である;SPAはシンチレーション近接アッセイである;THFはテトラヒドロフランである;TMSはトリメチルシリルである。
【0121】
本発明の化合物
本発明は、式(I)の化合物、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体またはプロドラッグを提供し、これらは「ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体」と総称される。

【0122】
変数R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、X、Y1、Y2、m、およびnは、本発明の概要において上述した通りに定義される。
【0123】
本明細書に記載した態様の任意のものとの組み合わせにおいて、1つの態様は、mを1とする。
【0124】
他の態様において、任意で本明細書に記載した態様の任意のものとの組み合わせにおいて、R8は水素であり、R9は水素である。
【0125】
さらに他の態様において、R8は(C1-C8)アルキルである。例えば、R8は(C1-C3)アルキルであってよい。R8の具体的な例には、メチル、エチルおよびイソプロピルが非限定的に含まれる。1つの態様において、R8はメチルである。
【0126】
他の態様において、Y1およびY2はCR5である。
【0127】
さらに他の態様において、R5は水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、-SO2R6より選択される。
【0128】
他の態様は、Xを-C(R1)(R2)(R3)とする。いくつかの態様において、R1は(C1-C8)アルキルである。例えば、R1は(C1-C3)アルキルであってよい。(C1-C3)アルキル基の実例にはメチルがある。
【0129】
他の態様において、R2は(C1-C8)ハロアルキル部分であり、R3は-OHである。例えば、(C1-C8)ハロアルキル部分はトリフルオロメチルであってよい。
【0130】
さらなる態様は、R1がメチルであり、R2がトリフルオロメチルであり、かつR3が-OHである化合物を提供する。これらの構造的要件を満たす具体的な例には、R1、R2、およびR3が、それらが結合する炭素原子と一緒に、式:

の(S)-トリフルオロメチルカルビノール基となる化合物がある。
【0131】
または、R1、R2およびR3は、それらが結合する炭素原子と一緒に、式:

の(R)-トリフルオロメチルカルビノール基となる。
【0132】
他の態様において、R1は(C1-C8)アルキルであり、R2は(C1-C8)アルキルであり、かつR3は(C1-C8)アルキルである。例えば、R1は(C1-C3)アルキルであってよく、R2は(C1-C3)アルキルであってよく、R3は(C1-C3)であってよい。1つの態様において、R1はメチルであり、R2はメチルであり、かつR3はメチルである。
【0133】
さらに他の態様では、任意で本明細書に記載した態様の任意のものとの組み合わせにおいて、R9は水素であり、Y1はCHおよびNより選択され、かつXは-C(R1)(R2)(R3)であり、ここで例えば、R1はメチルであり、R2はトリフルオロメチルであり、かつR3は-OHである。さらなる態様は、R1がメチルであり、R2がメチルであり、かつR3がメチルである化合物を提供する。
【0134】
任意で本明細書に記載した態様の任意のものとの組み合わせにおいて、1つの態様は、mを2とする。
【0135】
さらなる態様において、mは2であり、Xは-C(R1)(R2)(R3)である。
【0136】
別のさらなる態様において、mは2であり、Y1はCR5であり、かつY2はCR5である。
【0137】
さらに別の態様において、R1は(C1-C8)アルキルであり、R2は(C1-C8)アルキルであり、かつR3は(C1-C8)アルキルであり、それと組み合わせてmは2である。例えば、R1は(C1-C3)アルキルであってよく、R2は(C1-C3)アルキルであってよく、R3は(C1-C3)アルキルであってよい。1つの態様において、R1はメチルであり、R2はメチルであり、かつR3はメチルである。
【0138】
ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体は不斉中心を有し、このため種々の鏡像異性体形態およびジアステレオマー形態で存在することができる。本発明は、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体のすべての光学異性体および立体異性体とそれらの混合物の使用法、ならびにそれらを使用または含有しうるすべての薬学的組成物および治療方法に関する。
【0139】
以上のもののラセミ体、ラセミ混合物、および立体異性体、特にジアステレオマー混合物またはジアステレオマーとして純粋な化合物、および鏡像異性体または鏡像異性体として純粋な化合物がすべて想定されていることに留意すべきである。
【0140】
式Iの化合物の具体的な例は、以下に提供されている。




【0141】
本発明はまた、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体および薬学的に許容される媒体、担体、希釈剤、または添加剤を含む組成物も提供する。
【0142】
本発明はさらに、単離および精製された形態にある式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を提供する。
【0143】
本発明は、糖尿病を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0144】
本発明はまた、肥満を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0145】
本発明はさらに、HSDが介在する病状または障害を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0146】
本発明はさらに、11β-HSD1が介在する病状または障害を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0147】
本発明はさらに、11β-HSD2が介在する病状または障害を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0148】
本発明はさらに、17β-HSD3が介在する病状または障害を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0149】
本発明はさらに、HSD反応性の病状または障害を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0150】
本発明はさらに、11β-HSD1反応性の病状または障害を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0151】
本発明はさらに、11β-HSD2反応性の病状または障害を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0152】
本発明はさらに、17β-HSD3反応性の病状または障害を治療するための方法を提供し、本方法は、それを必要とする患者に、式(I)のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与する段階を含む。
【0153】
式Iのジアザ複素環式スルホンアミドの調製
当業者は、特許請求の範囲に示す分子を合成するために利用可能なさまざまな方法があることを認識しているであろう。一般に、特許請求の範囲に示す化合物を合成するために有用な方法は一般に4つの部分を含み、それらは任意の順序で行うことができる:スルホンアミド結合、-CR1R2R3基の導入および/または修飾、中心のジアザ環に付加する官能基および-R5含有アリール環の導入および/または修飾、ならびにアリール-アザ結合の形成。化合物の構築のために有用な、本発明の化合物の、断片a、b、cおよびdへの逆合成結合切断は以下に示す。

【0154】
請求対象の化合物の調製のために、いくつかの方法を用いることができる(式1〜3)。式1は、スルホンアミド結合を形成させる1つの方法を示す。式1の場合には、Zは、Cl、およびFなどの適切な基から、またはアミンによる置換のためにスルホニル基を活性化しうる任意の基(例えば、OSu、イミダゾール、その他)から選択される。

【0155】
式1において言及されているカップリングは、有機もしくは無機塩基、活性化剤の使用によって、また触媒によって、特にDMAPのようにスルホンアミド結合の形成を補助することが当技術分野で公知である触媒によって補助することもできる。適したカップリングパートナーには、スルホニルクロリドとアミン、スルホニルフルオリドとアミン、およびSO2OSuとアミンが非限定的に含まれる。当業者は、所望の生成物を同じくもたらすと考えられる可能性のある組み合わせが他にもあることを認識しているであろう。
【0156】
-CR1R2R3基の導入は中心的なカップリング反応の前または後に行ってよく、さらに請求対象の化合物の調製中のさまざまな時点で修飾することができる。式2は、中心的なカップリング反応の前に-CR1R2R3基をケトンの形態で導入し、その後に本発明の化合物に至るためにさらなる修飾を行う1つの方法を示している。中心的なカップリングの後に、例えばCF3TMS、MeLi、MeMgBr、または類似の試薬の添加を介して、CF3-またはCH3-などの求核試薬(「Nu」)を付加することで、-CR1R2R3基の導入が完了する。この後に、調製を完了するために置換基のさらなる修飾を行うこともできる。

【0157】
または、式3に示すように、-CR1R2R3基を、中心的なカップリングの後にフリーデル-クラフツ(Friedel-Crafts)アシル化を介して導入することもできる。当業者は、これが置換基のパターンに応じて有益であることもそうでないこともあることを理解しているであろう。さらなる修飾により、式1および2に示すように、本発明の化合物が提供される。

【0158】
トリフルオロメチルカルビノール部分の導入はさまざまな方法によって達成することができ、そのいくつかを式4〜6に例示する。CF3基は、CF3TMSおよびTBAFを用いたケトンに対する付加によって導入することができ、または式4に示すように、一方の鏡像異性体を過剰に優先的に生成させるために、TBAFの四級アンモニウム塩基をキラル四級塩基と置換することもできる(一例については、Caron et al., Synthesis, 2003, 1693-1698を参照)。

【0159】
もう1つの有用な方法は、トリフルオロメチルケトンに対する、アミンまたはアミノアルコール添加物(式5)を介して媒介されるMeLiまたはMeMgBrなどの求核試薬の立体選択的付加である(一例については、Thompson et al., Tetrahedron Lett., 1995, 49, 8937-8940を参照)。さらにもう1つの有用な方法はフリーデル-クラフツのアルキル化(式6)であり、これはビナフトール由来のチタン触媒(Ishii et al., J. Org. Chem, 2000, 65, 1597-1599)およびキラル銅触媒(Zhuang et al., J. Org. Chem-, 2001, 66,1009-1013)などのキラル触媒を用いて光学活性生成物が得られるような様式で行うことができる。当業者は、この変換のためにさまざまな方法を利用しうることを理解しているであろう。特許請求の範囲における任意の特定の化合物の最も効率的な調製に関して、当業者は-CR1R2R3基の導入の時期がさまざまであってよく、所定の化合物の調製における最初の、最後の、または中間的な変換であってよいことを認識しているであろう。
【0160】
アザ-アリール結合の形成はさまざまな方法を介して達成することができ、その1つを式7に例示する。ジアザ環と適切に置換されたアリール部分とのカップリングは、アリール環上の脱離基の求核置換を介して、または金属補助によるカップリングによって達成することができる。場合によっては、トリエチルアミン、ヒューニッヒ塩基、炭酸カリウムなどの有機または無機塩基を含めることによってカップリングを加速させることができる。適したカップリングパートナーには、ジアザ複素環とアリールフルオリド、アリールクロリド、アリールブロミド、アリールヨージド、アリールトリフラートおよびアリールスタンナンが含まれる。カップリングは、金属種を触媒量または化学量論量で含めることにより、特にパラジウムまたは銅種を用いることにより、補助することができる。本発明の化合物への加工は、例えば、式1〜6に示するように達成することができる。

【0161】
または、ジアザ複素環-アリール結合を、式8に例示するように、上記と同じさまざまな条件を利用して、スルホンアミド結合の後に作製することもできる。当業者は、これが所望の化合物における置換基のパターンに応じて有益であることもそうでないこともあることを理解しているであろう。続いて、以前の式の場合と同じように、さらなる修飾により、本発明の化合物が得られる。

【0162】
上記のさまざまな方法が、本発明の化合物を調製するために用いられており、そのいくつかを実施例において例示する。
【0163】
薬学的組成物
ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体またはその薬学的に許容される立体異性体、プロドラッグ、塩、溶媒和物、水和物もしくは包接化合物を含む薬学的組成物および単位用量剤形も、本発明に含まれる。本発明の個々の剤形は、経口、粘膜(舌下、口腔内、直腸内、鼻内または腟内を含む)、非経口(皮下、筋肉内、ボーラス注射、動脈内または静脈内を含む)、経皮または局所投与に適すると考えられる。
【0164】
剤形の例には、以下のものが非限定的に含まれる:錠剤;カプレット;ゼラチン軟カプセル剤などのカプセル剤;カシェ剤;トローチ;ロゼンジ;分散剤;坐剤;軟膏;パップ剤(湿布剤);ペースト;散剤;包帯剤;クリーム;硬膏剤;液剤;パッチ;エアロゾル(例えば、鼻スプレーまたは吸入器);ゲル;懸濁剤(例えば、水性もしくは非水性の懸濁液、水中油型乳剤、または油中水型乳剤)、液剤およびエリキシル剤を含む、患者への経口または粘膜投与に適した液体剤形;患者への非経口投与に適した液体剤形;ならびに再構成して、患者への非経口投与のために適した液体剤形を提供することができる滅菌固体(例えば、結晶またはアモルファス固体)。
【0165】
本発明の剤形の組成、形状およびタイプは、典型的には、それらの用途に応じてさまざまであると考えられる。例えば、炎症または関連疾患の急性治療に用いられる剤形は、それが含む1つまたは複数の活性成分を、同じ疾患の慢性治療に用いられる剤形よりも多量に含みうる。同様に、非経口剤形は、それが含む1つまたは複数の活性成分を、同じ疾患または障害を治療するために用いられる経口剤形よりも少量で含みうる。本発明に含まれる特定的な剤形が互いに異なると考えられる上記および他の様式は、当業者には容易に明らかになるであろう。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照。
【0166】
典型的な薬学的組成物および剤形は、1つまたは複数の担体、添加剤または希釈剤を含む。適した添加剤は薬学の当業者には周知であり、適した添加剤の非限定的な例を本明細書に提示する。特定の添加剤が薬学的組成物または剤形への組み入れに適しているか否かは、剤形を患者に投与する様式を非限定的に含む、当技術分野で周知のさまざまな要因に依存する。例えば、錠剤などの経口剤形は、非経口剤形における使用に適していない添加剤を含んでもよい。特定の添加剤の適合性が、剤形中の特定の活性成分に依存することもある。
【0167】
水はいくつかの化合物の分解を促進させうるため、本発明はさらに、活性成分を含む無水(例えば、水が1%未満の)薬学的組成物および剤形を含む。例えば、水の添加(例えば、5%)は、貯蔵寿命または製剤の経時的安定性などの特徴を決定づけるために、長期保存を模擬する手段として薬学分野で広く認められている。例えば、Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 2d. Ed., Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379-80を参照。実際に、水および熱はいくつかの化合物の分解を促進する。このように、水分および/または湿度は、製剤の製造、取り扱い、パッケージ化、保存、輸送および使用中に遭遇することが多いため、製剤に対する水の影響は非常に重要となりうる。
【0168】
本発明の無水の薬学的組成物および剤形は、無水または低水分含有性の成分および低水分または低湿度条件を用いて調製することができる。ラクトース、および一級または二級アミンを含む少なくとも1つの活性成分を含む薬学的組成物および剤形は、製造、パッケージ化、および/または保存中の水分および/または湿度との実質的接触が予想される場合には、無水性でありうる。
【0169】
無水の薬学的組成物は、その無水性が維持されるように調製および保存すべきである。したがって、無水組成物は、適した処方キットに含めうるように、水への曝露を防止することが知られている材料を用いてパッケージ化することができる。適したパッケージ化の例には、密封ホイル、合成樹脂、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパックおよびストリップパックが非限定的に含まれる。
【0170】
本発明はさらに、活性成分が分解する速度を低下させる1つまたは複数の化合物を含む薬学的組成物および剤形を含む。本明細書において「安定化剤」と呼ばれるそのような化合物には、アスコルビン酸などの抗酸化剤、pH緩衝剤または塩緩衝剤が非限定的に含まれる。
【0171】
式Iのジアザ複素環式スルホンアミド誘導体は、11β-HSD1モジュレーター、糖尿病の予防薬もしくは治療薬、糖尿病合併症(網膜症、腎症、ニューロパチー、アテローム性動脈硬化が基盤にある心筋梗塞および脳梗塞など)の予防薬もしくは治療薬、高脂血症の予防薬もしくは治療薬、肥満、神経変性疾患などの予防薬もしくは治療薬、または11β-HSD1が介在する疾患の予防薬もしくは治療薬として、哺乳動物(ヒト、ウマ、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して投与することができる。
【0172】
ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体は、疾患の予防または治療を目的として、糖尿病または肥満などの疾患の治療のための追加の治療薬と同時に、哺乳動物に投与することができる。このため、本発明のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体は、糖尿病および肥満を非限定的に含む、数多くの疾患の治療または予防のための他の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0173】
治療しようとする疾患および患者の状態に応じて、本発明の化合物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、大槽内注射もしくは注入、皮下注射または植え込み)、吸入、鼻内、腟内、直腸内、舌下、または局所(例えば、経皮、局部)投与経路によって投与することができ、かつ単独でまたは別のものとともに、それぞれの投与経路に適した従来の非毒性の薬学的に許容される担体、補助剤および媒体を含む、適した単位用量製剤として製剤化することができる。本発明はまた、活性成分が規定された期間にわたって放出されるデポー製剤における本発明の化合物の投与も想定している。
【0174】
併用投与の場合、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を、糖尿病、肥満もしくは他の疾患の治療もしくは予防のために有用な他のもう1つの治療薬と同時に投与してもよく、またはもう1つの治療薬の前もしくは後に投与してもよい。併用投与の場合、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体および追加の治療薬を含む薬学的組成物を投与することもできる。または、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を含む薬学的組成物と、追加の治療薬を含む薬学的組成物とを別々に投与することもできる。それぞれの薬学的組成物の投与経路は同じでも異なっていてもよい。
【0175】
併用投与の場合には、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を、1回の投与当たり50mgから800mgまでの用量で、1日に最大で数回投与することができる。例えば、1日当たり1回、または1日当たり1回未満の投与を想定している。加えて、化合物をより低用量で投与することもできる。併用される薬剤は、糖尿病もしくは肥満の予防もしくは治療のために一般に用いられる用量で、またはそれよりも低用量で投与することができる。
【0176】
添加剤の量およびタイプと同様に、剤形中の活性成分の量および具体的なタイプは、患者に対して投与される経路などを非限定的に含む要因に応じて異なりうる。しかし、本発明の典型的な剤形は、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多形物もしくはプロドラッグを含む。糖尿病、肥満、緑内障、骨粗鬆症、認知障害、免疫障害、うつ病、またはヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの調節と関連のある他の病状もしくは障害の治療または予防において、適した用量レベルは一般に、1日に患者体重1kg当たり約0.001〜約100mgで、1回または複数回投与することができる。例示的な用量レベルは、1日に約0.01〜約25mg/kg、または1日に約0.05〜約10mg/kgである。他の態様において、適した用量レベルは1日に約0.01〜約25mg/kg、1日に約0.05〜約10mg/kg、または1日に約0.1〜約5mg/kgでありうる。この範囲内で、用量は、1日に約0.1mg〜約2000mgの範囲内にある、1日に約0.005〜約0.05、約0.05〜約0.5、または約0.5〜約5.0mg/kgであってよく、1日1回の用量で朝に投与されるが、典型的には1日を通して食事とともに分割用量で投与される。1つの態様において、1日量は、等分した用量で1日2回投与される。1日量の範囲は1日に約5mg〜約500mg、または1日に約10mg〜約200mgの間でありうる。患者の管理において、治療法を約1mg〜約25mgといった低用量で開始し、患者の総合的反応に応じて、必要であれば1日に約200mg〜約2000mgまで、単回用量または分割用量のいずれかとして増量することができる。
【0177】
多剤療法に関して、本発明の化合物と第2の活性成分との重量比はさまざまであってよく、各成分の有効量に依存すると考えられる。一般に、それぞれの有効量を用いる。したがって、例えば、本発明の化合物をNSAIDと組み合わせる場合、本発明の化合物のNSAIDに対する重量比は一般に、約1000:1〜約1:1000、例えば約200:1〜約1:200などの範囲にあると考えられる。本発明の化合物と他の活性成分との組み合わせも一般に前述した範囲内にあると考えられるが、それぞれの場合に各活性成分の有効量を用いるべきである。
【0178】
しかし、任意の特定の患者に対する具体的な用量レベルおよび投与頻度はさまざまである可能性があり、これは用いる具体的な化合物の活性、その化合物の代謝的安定性および作用の長さ、年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事、投与の様式および時間、排出速度、薬物の組み合わせ、特定の病状の重症度、ならびに治療を受ける宿主を含む、さまざまな要因に依存すると考えられる。
【0179】
経口剤形
経口投与に適した本発明の薬学的組成物は、錠剤(例えば、咀嚼錠)、カプレット、カプセル剤、および液剤(例えば、着香シロップ)を非限定的に含む、離散的な剤形で提供することができる。そのような剤形はあらかじめ決められた量の活性成分を含み、当業者は周知の製薬法によって調製することができる。全般については、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照。
【0180】
本発明の典型的な経口剤形は、従来の薬学的調剤技術に従って、活性成分を少なくとも1つの添加剤と密接混合物中で混ぜ合わせることによって調製することができる。添加剤は、投与のために望まれる調製の形に応じて、さまざまな形態をとることができる。例えば、経口液体またはエアロゾル剤形における使用に適した添加剤には、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存料および着色剤が非限定的に含まれる。固体経口剤形(例えば、散剤、錠剤、カプセル剤、およびカプレット)における使用に適した添加剤の例には、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤が非限定的に含まれる。
【0181】
それらの投与の容易さにより、錠剤およびカプセル剤は最も都合のよい経口単位用量剤形であり、この場合には固体添加剤が用いられる。所望であれば、錠剤を標準的な水性または非水性技術によってコーティングすることができる。そのような剤形は任意の製薬法によって調製することができる。一般に、薬学的組成物および剤形は、活性成分を液体担体、微粉化された固体担体またはその両方と均質かつ密接に混合し、続いて必要があれば生成物を所望の体裁に成形することによって調製される。
【0182】
例えば、錠剤は圧縮または成形によって調製することができる。圧縮錠は、適した機械の中で、粉末または顆粒などの流動形態にある活性成分を、任意で添加剤と混合して、圧縮することによって調製することができる。成形錠は、適した機械の中で、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を成形することによって調製することができる。
【0183】
本発明の経口剤形に用いうる添加剤の例には、結合剤、充填剤、崩壊剤および滑沢剤が非限定的に含まれる。薬学的組成物および剤形における使用に適した結合剤には、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたは他のデンプン、ゼラチン、アラビアゴムなどの天然および合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末トラガカント、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、第2208号、2906号、2910号)、微結晶セルロース、ならびにそれらの混合物が非限定的に含まれる。
【0184】
本明細書で開示される薬学的組成物および剤形における使用に適した充填剤の例には、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒または粉末)、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、およびそれらの混合物が非限定的に含まれる。本発明の薬学的組成物中の結合剤または充填剤は、典型的には、薬学的組成物または剤形の約50〜約99重量パーセントで存在する。
【0185】
微結晶セルロースの適した形態には、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103 AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PAから入手可能)として販売されている材料、およびそれらの混合物が非限定的に含まれる。1つの具体的な結合剤は、AVICEL RC-581として販売されている微結晶セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合物である。適した無水または低水分性の添加剤または添加物には、AVICEL-PH-103(商標)およびStarch 1500 LMが含まれる。
【0186】
水性環境に曝露されると崩壊する錠剤を提供するためには、本発明の組成物中に崩壊剤が用いられる。過剰な崩壊剤を含む錠剤は保存中に崩壊する可能性があるが、崩壊剤が少なすぎるものは所望の速度または所望の条件下で崩壊しないことがある。このため、活性成分の放出を不都合に変えることのない、多すぎも少なすぎもしない十分な量の崩壊剤を用いて本発明の固体経口剤形を形成すべきである。用いる崩壊剤の量は製剤のタイプに応じてさまざまであり、当業者には容易に識別することができる。典型的な薬学的組成物は、約0.5〜約15重量パーセントの崩壊剤、特に約1〜約5重量パーセントの崩壊剤を含む。
【0187】
本発明の薬学的組成物および剤形中に用いうる崩壊剤には、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルファ化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ゴム、およびそれらの混合物が非限定的に含まれる。
【0188】
本発明の薬学的組成物および剤形中に用いうる滑沢剤には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(例えば、落花生油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、およびそれらの混合物が非限定的に含まれる。そのほかの滑沢剤には、例えば、シロイド(syloid)シリカゲル(AEROSIL 200、W. R. Grace Co. of Baltimore, MDにより製造)、合成シリカの凝固エアロゾル(Degussa Co. of Plano, TXにより市販)、CAB-O-SIL(発熱性二酸化ケイ素製品、Cabot Co. of Boston, MAにより販売)およびそれらの混合物が含まれる。少しでも用いる場合には、滑沢剤は典型的には、それらが組み入れられる薬学的組成物または剤形の約1重量パーセント未満の量で用いられる。
【0189】
経口投与のためには、組成物を約1〜約1000ミリグラムの活性成分を含む錠剤の形態で提供することができる。他の態様において、組成物は、治療する患者の症状に合わせて用量を調整するために、約1.0、約5.0、約10.0、約15.0. 約20.0、約25.0、約50.0、約75.0、約100.0、約150.0、約200.0、約250.0、約300.0、約400.0、約500.0、約600.0、約750.0、約800.0、約900.0、または約1000.0ミリグラムの活性成分を含む錠剤の形態で提供される。化合物は1日に1〜4回、例えば1日に1〜2回のレジメンで投与することができる。
【0190】
遅延放出剤形
本発明の活性成分は、当業者に周知の制御放出手段または送達装置によって投与することができる。その例には、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;ならびに第4,008,719号、第5,674,533号、第5,059,595号、第5,591,767号、第5,120,548号、第5,073,543号、第5,639,476号、第5,354,556号、および第5,733,566号に記載されたものが含まれ、そのそれぞれは参照により本明細書に組み入れられる。そのような剤形は、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、浸透圧システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェアまたはその組み合わせを用いてさまざまな比率の所望の放出特性を提供する、1つまたは複数の活性成分の緩徐または制御放出を提供するために用いることができる。本明細書に記載されたものを含む、当業者に公知の適した制御放出製剤は、本発明の活性成分とともに用いるために容易に選択することができる。したがって、本発明は、制御放出用に適合化された錠剤、カプセル剤、ゲルキャップおよびカプレットなどを非限定的に含む、経口投与に適した単位用量剤形を含む。
【0191】
制御放出製剤は、制御されていない対応物によって達成されるものよりも、薬物療法を改善することができる。理想的には、最適に設計された制御放出製剤の医学的治療における使用は、病状を最短時間で治癒または管理するために最小限の薬物を用いることによって特徴づけられる。制御放出製剤の利点には、薬物の活性の延長、投与頻度の低下および患者のコンプライアンス向上が含まれる。加えて、制御放出製剤は、作用開始時間または他の特徴、例えば薬物の血中レベルなどに影響を及ぼすために用いることができ、したがって、副(例えば、有害)作用の発生に影響を及ぼしうる。
【0192】
ほとんどの制御放出製剤は、所望の治療効果を直ちに生じさせる量の薬物(活性成分)をまず放出し、続いて長期間にわたってこのレベルの治療または予防効果を維持するために、他の量の薬物を徐々に、かつ持続的に放出するよう設計される。体内で薬物のこの一定レベルを維持するために、薬物は、代謝されて体から排出される薬物の量を置き換える速度で剤形から放出されなければならない。活性成分の制御放出は、pH、温度、酵素、水もしくは他の生理的条件または化合物を非限定的に含む、さまざまな条件によって促すことができる。
【0193】
非経口剤形
非経口剤形は、皮下、静脈内(ボーラス注射を含む)、筋肉内、および動脈内を非限定的に含む、さまざまな経路によって患者に投与することができる。それらの投与は典型的には汚染に対する患者の自然な防御を回避することから、非経口剤形は無菌であるか、または患者への投与の前に滅菌可能である。非経口剤形の例には、すぐに注射を行える液剤、注射用の薬学的に許容される媒体中に溶解または懸濁化する乾燥製剤、すぐに注射を行える懸濁剤、および乳剤が非限定的に含まれる。例えば、ヒトへの投与に適した微粒子を含まない剤形に再構成するのに適した凍結乾燥滅菌組成物。
【0194】
本発明の非経口剤形を提供するために用いうる適切な媒体は、当業者に周知である。その例には、以下のものが非限定的に含まれる:米国薬局方注射液;注射用食塩液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロースおよび食塩注射液、ならびに乳酸加リンゲル液などを非限定的に含む水性媒体;エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなどを非限定的に含む水混和性媒体;ならびにトウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび安息香酸ベンジルなどを非限定的に含む非水性媒体。
【0195】
本明細書で開示される1つまたは複数の活性成分の溶解性を高める化合物も、本発明の非経口剤形中に組み入れることができる。
【0196】
いくつかの態様において、非経口剤形は癌患者の疾患を予防、治療または管理する方法のために用いられる。
【0197】
経皮および局所剤形
本発明の経皮および局所剤形には、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、液剤、乳剤、懸濁剤、または当業者に公知の他の剤形が非限定的に含まれる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 4th ed., Lea & Febiger, Philadelphia (1985)を参照のこと。経皮剤形には「リザーバー型」または「マトリックス型」パッチが含まれ、これは皮膚に適用して特定の期間にわたって装着し、所望の量の活性成分を浸透させることができる。
【0198】
本発明に含まれる経皮および局所剤形を提供するために用いることができる適した添加剤(例えば、担体および希釈剤)および他の材料は、薬学の当業者に周知であり、所定の薬学的組成物または剤形が適用される特定の組織に依存する。この事実を考慮して、典型的な添加剤には、非毒性で薬学的に許容される、ローション、チンキ剤、クリーム、乳剤、ゲルまたは軟膏を形成するめの、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油およびそれらの混合物が非限定的に含まれる。所望の場合には、加湿剤または湿潤剤も薬学的組成物および剤形に加えることができる。そのような追加の成分の例は当技術分野において周知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照。
【0199】
治療する具体的な組織に応じて、追加の成分を、本発明の活性成分による治療の前、同時または後に用いてもよい。例えば、浸透促進剤を用いて活性成分の組織への送達を補助することができる。適した浸透促進剤には、以下のものが非限定的に含まれる:アセトン;エタノール、オレイルおよびテトラヒドロフリルなどの種々のアルコール;ジメチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンなどのピロリドン;コリドンの諸等級(ポビドン、ポリビドン);尿素;ならびにTween 80(ポリソルベート80)およびSpan 60(モノステアリン酸ソルビタン)などの種々の水溶性または水不溶性の糖エステル。
【0200】
薬学的組成物もしくは剤形の、または薬学的組成物もしくは剤形が適用される組織のpHを、1つまたは複数の活性成分の送達を改善するために制御することもできる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、または張性を、送達を改善するために制御することもできる。1つまたは複数の活性成分の親水性または親油性を都合よく変更して送達を改善するために、ステアレートなどの化合物を薬学的組成物または剤形に加えることもできる。これに関して、ステアレートは、製剤の脂質媒体として、乳化剤または界面活性剤として、および送達促進剤または浸透促進剤として役立てることができる。活性成分の種々の塩、水和物または溶媒和物を用いて、結果的に得られる組成物の性質をさらに制御することもできる。
【0201】
粘膜剤形および肺送達
本発明の粘膜剤形には、点眼液、噴霧剤およびエアロゾル、または当業者に公知の他の剤形が非限定的に含まれる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 4th ed., Lea & Febiger, Philadelphia (1985)を参照。口腔内の粘膜組織を治療するのに適した剤形は、洗口剤または口内ゲルとして製剤化することができる。1つの態様において、エアロゾルは担体を含む。もう1つの態様において、エアロゾルは担体を含まない。
【0202】
本発明の化合物を、吸入によって肺に直接投与することもできる(例えば、Tong et al., 国際公開公報第97/39745号;Clark et al, 国際公開公報第99/47196号を参照のこと、これらは参照により本明細書に組み入れられる)。吸入による投与のために、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体をさまざまな装置によって簡便に肺に送達することができる。例えば、適した低沸点噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適したガスを含む小缶を利用する定量噴霧式吸入器(「MDI」)を用いて、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を肺に直接送達することができる。MDI装置は、3M Corporation、Aventis、Boehringer Ingleheim、Forest Laboratories、Glaxo-Wellcome、Schering PloughおよびVecturaなどのいくつかの供給元から入手可能である。
【0203】
または、粉末吸入器(DPI)装置を用いてジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を肺に投与することもできる(例えば、Raleigh et al., Proc. Amer. Assoc. Cancer Research Annual Meeting, 1999, 40, 397を参照のこと、これは参照により本明細書に組み入れられる)。DPI装置は典型的には、容器内で乾燥粉末の霧を発生させるガスの噴射などの機構を用いており、続いてこれを患者が吸入することができる。DPI装置も当技術分野で周知であり、例えば、Fisons、Glaxo-Wellcome、Inhale Therapeutic Systems、ML Laboratories、QdoseおよびVecturaを含むいくつかの取り扱い業者から購入することができる。普及している変形物には多回投与DPI(「MDDPI」)システムがあり、これは複数回の治療量の送達を可能にする。MDDPI装置は、AstraZeneca、Glaxo Wellcome、IVAX、Schering Plough、SkyePharmaおよびVecturaなどの会社から入手可能である。例えば、これらのシステムのために、化合物の粉末混合物、およびラクトースまたはデンプンなどの適した粉末基剤を含む、吸入器または注入器で用いるためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジを製剤化することができる。
【0204】
ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を肺に送達するために用いうる別のタイプの装置には、例えば、Aradigm Corporationによって供給される液体噴霧器がある。液体噴霧システムは、極めて小さなノズル孔を用いて液体製剤をエアロゾル化し、続いてこれが肺に直接吸入されうる。
【0205】
1つの態様においては、ネブライザー装置が、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を肺に送達するために用いられる。ネブライザーは、例えば、容易に吸入しうる微粒子を生成させる超音波エネルギーを用いて、液体製剤からエアロゾルを生成する(例えば、Verschoyle et al., British J Cancer, 1999, 80, Suppl 2, 96を参照のこと、これは参照により本明細書に組み入れられる)。ネブライザーの例には、Sheffield/Systemic Pulmonary Delivery Ltd.(Armer et al., 米国特許第5,954,047号;van der Linden et al., 米国特許第5,950,619号;van der Linden et al., 米国特許第5,970,974号を参照のこと、これらは参照により本明細書に組み入れられる)、AventisおよびBatelle Pulmonary Therapeuticsによって供給される装置が含まれる。ネブライザー装置によって送達される本発明の吸入化合物は、気道・消化器癌(aerodigestive cancer)(Engelke et al., Poster 342 at American Association of Cancer Research, San Francisco, Calif., Apr. 1-5, 2000)および肺癌(Dahl et al., Poster 524 at American Association of Cancer Research, San Francisco, Calif., April 1-5, 2000)の治療薬として現在試験中である。
【0206】
もう1つの態様においては、電気粒体力学(「EHD」)エアロゾル装置が、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を肺に送達するために用いられる。EHDエアロゾル装置は、電気エネルギーを用いて液体薬物溶液または懸濁液をエアロゾル化する(例えば、Noakes et al., 米国特許第4,765,539号;Coffee、米国特許第4,962,885号;Coffee、国際公開公報第94/12285号;Coffee、国際公開公報第94/14543号;Coffee、国際公開公報第95/26234号、Coffee、国際公開公報第95/26235号、Coffee、国際公開公報第95/32807号を参照のこと、これらは参照により本明細書に組み入れられる)。本発明の製剤の化合物の電気化学的性質は、この薬物を肺にEHDエアロゾル装置を用いて送達する際に最適化するための重要なパラメーターであると考えられ、そのような最適化は当業者によって定型的に実施される。EHDエアロゾル装置は、既存の肺送達技術よりも効率的な肺への送達薬物である可能性がある。ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の肺内送達の他の方法は当業者に公知であると考えられ、それらは本発明の範囲内にある。
【0207】
ネブライザーおよび液体噴霧装置ならびにEHDエアロゾル装置とともに用いるのに適した液体製剤は、典型的には、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を薬学的に許容される担体とともに含むと考えられる。いくつかの態様において、薬学的に許容される担体は、アルコール、水、ポリエチレングリコールまたはペルフルオロカーボンなどの液体である。任意で、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の溶液または懸濁液のエアロゾル特性を変更するために、別の材料を加えることができる。この材料は、アルコール、グリコール、ポリグリコールまたは脂肪酸などの液体であってよい。エアロゾル装置における使用に適した液体薬物溶液または懸濁液の他の製剤化の方法は、当業者に公知である(例えば、Biesalski、米国特許第5,112,598号;Biesalski、第5,556,611号を参照のこと、これらは参照により本明細書に組み入れられる)。本発明の化合物を、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む、坐剤または保持浣腸などの直腸または膣組成物へと製剤化することもできる。
【0208】
前述の製剤に加えて、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を、デポー製剤として製剤化することもできる。そのような長時間作用性製剤は、植え込み(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。すなわち、例えば化合物を、適したポリマー性もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中にある乳剤として)またはイオン交換樹脂とともに、または難溶性誘導体、例えば難溶性塩として製剤化することができる。
【0209】
他の送達システム
または、他の薬学的送達システムを用いることもできる。リポソームおよび乳剤は、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を送達するために用いうる送達媒体の周知の例である。ジメチルスルホキシドなどのある種の有機溶媒を用いることもできるが、通常はより大きな毒性という犠牲を伴う。また、本発明の化合物を制御放出システムにて送達することもできる。1つの態様においては、ポンプを用いることができる(Sefton, CRC Crit. Ref Biomed Eng., 1987, 14, 201;Buchwald et al., Surgery, 1980, 88, 507;Saudek et al., N. Engl. J Med, 1989, 321, 574)。他の態様においては、ポリマー材料を用いることができる(Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Fla. (1974);Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984);Ranger and Peppas, J Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem., 1983, 23, 61を参照;同じくLevy et al., Science 1985, 228, 190;During et al., Ann. Neurol., 1989, 25, 351;Howard et al., 1989, J. Neurosurg. 71, 105も参照のこと)。さらにもう1つの態様において、本発明の化合物の標的、例えば肺の近傍に制御放出システムを配置することもでき、このためそれは全身用量の一部しか必要としない(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115 (1984)を参照)。他の制御放出システムを用いることもできる(例えば、Langer, Science, 1990, 249, 1527を参照)。
【0210】
本発明に含まれる粘膜剤形を提供するために用いうる適した添加剤(例えば、担体および希釈剤)および他の材料は薬学の当業者に周知であり、所定の薬学的組成物または剤形が投与される特定の部位または方法に依存する。この事実を考慮して、典型的な添加剤には、非毒性かつ薬学的に許容される、水、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油およびそれらの混合物が非限定的に含まれる。そのような追加の成分の例は当技術分野で周知である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th eds., Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照のこと。
【0211】
薬学的組成物もしくは剤形、または薬学的組成物もしくは剤形が適用される組織のpHを、1つまたは複数の活性成分の送達を改善するために制御することもできる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度、または張性を、送達を改善するために制御することができる。1つまたは複数の活性成分の親水性または親油性を都合よく変更して送達を改善するために、ステアレートなどの化合物を薬学的組成物または剤形に加えることもできる。これに関して、ステアレートは、製剤の脂質媒体として、乳化剤または界面活性剤として、および送達促進剤または浸透促進剤として役立てることができる。活性成分の種々の塩、水和物または溶媒和物を用いて、結果的に得られる組成物の性質をさらに制御することもできる。
【0212】
ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的使用
1つの局面において、本発明は、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの調節と関連のある病状または障害を有する患者に、本発明の化合物または組成物の治療的有効量を投与することによって、そのような病状または障害を治療または予防するための方法を提供する。態様の1つの群において、ヒトまたは他の種の慢性疾患を含む病状および障害を、11β-HSD1などのヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼのモジュレーター、刺激薬または阻害薬によって治療することができる。
【0213】
糖尿病の治療または予防
ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与することによって、糖尿病および糖尿病性の病状を治療または予防することができる。
【0214】
ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与することによって治療または予防することができる糖尿病の型には、I型糖尿病(若年型糖尿病、インスリン依存性糖尿病またはIDDM)、II型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病またはNIDDM)、異常インスリン症、膵臓障害に関連する糖尿病、他の障害(クッシング症候群、先端巨大症、クロム親和細胞腫、グルカゴノーマ、原発性アルドステロン症、およびソマトスタチン産生腫瘍など)に関連する糖尿病、A型およびB型インスリン抵抗性症候群、脂肪萎縮性糖尿病、ならびにβ細胞毒素により誘導される糖尿病が含まれる。
【0215】
いくつかの態様において、治療される糖尿病の型はII型糖尿病である。
【0216】
肥満の治療または予防
肥満を、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与することによって治療または予防することができる。
【0217】
肥満は、遺伝性、環境性(例えば、摂取するエネルギーよりも消費するエネルギーが少ない)、および調節性の決定因子を有すると考えられる。肥満には、外因性、過インスリン性、過血漿性、甲状腺機能低下性、視床下部性、症候性、小児、上半身、食事性、性機能低下性、単純性および中心性肥満、下垂体性肥満ならびに過食症が含まれる。高脂血症および糖尿病などの代謝障害、ならびに高血圧および冠動脈疾患などの冠血管障害は、多くの場合、肥満と関連している。
【0218】
肥満に起因する合併症を、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与することによって治療または予防することもできる。そのような合併症には、睡眠時無呼吸症、ピックウィック症候群、荷重および非荷重関節の整形外科疾患、ならびに発汗または皮膚分泌増加に起因する皮膚障害が含まれる。
【0219】
他の病状の治療または予防
ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療的有効量を投与することによって治療または予防することができる他の病状には、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼまたはその特定のアイソフォームの調節、例えば阻害などに反応性であって、そのためそのようなモジュレーターの投与による利点を受ける、任意の病状が非限定的に含まれる。これに関する代表的な病状には、以下の病状が非限定的に含まれる:シンドロームX、多嚢胞性卵巣、摂食障害(例えば、食欲不振および過食症)、頭蓋咽頭腫、プラダー-ウィリ症候群、フレーリッヒ症候群、高脂血症、異脂肪血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、HDL低値、HDL高値、高血糖、インスリン抵抗性、高インスリン血症およびクッシング症候群などの代謝障害および関連する心血管危険因子;高血圧、アテローム性動脈硬化、血管再狭窄、網膜症および腎症などのそれらと関連する疾患;神経変性疾患、ニューロパチーおよび筋力低下などの神経障害;加齢性学習障害、痴呆、神経変性などの認知障害、ならびに重度障害(例えば、パーキンソン病またはアルツハイマー病に伴う痴呆)ないし軽度障害(例えば、加齢性記憶障害、薬剤誘発性認知障害)から障害のない対象までの範囲にわたる対象における認知機能の改善のため(例えば、一般集団のための認知機能改善薬)(Sandeep, et al., PNASを参照、これはwww.pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.0306996101で電子的に入手可能である);前立腺癌、結腸癌、乳癌、良性前立腺肥大症、卵巣癌、子宮癌および男性偽半陰陽などのアンドロゲンおよび/またはエストロゲンに関連した障害;子宮内膜症、痴呆、うつ病、乾癬、緑内障、骨粗鬆症、ウイルス感染症、炎症性疾患、ならびに免疫障害。
【0220】
追加の治療薬
1つの態様において、治療または予防のための本発明の方法はさらに、本明細書に開示された疾患または障害を治療または予防するために有用な別の治療薬の治療的有効量の投与を含む。この態様において、他の治療薬の治療効果が発揮される時期は、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の治療効果が発揮される時期と部分的に重複する。
【0221】
本発明の化合物は、糖尿病、肥満、緑内障、骨粗鬆症、認知障害、免疫障害、うつ病、および前述の病状を含む、本発明の化合物が有用である病状または障害の治療、予防、抑制または改善において有用な他の薬剤と組み合わせるか、または併用することができる。
【0222】
そのような他の薬剤または薬物は、そのために一般的に用いられる経路および量で、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体と同時または逐次的に投与することができる。1つの態様において、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を1つまたは複数の他の薬物と同時に用いる場合、薬学的組成物は、そのような薬物を本発明の化合物に加えて含む。したがって、本発明の薬学的組成物には、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体に加えて、1つまたは複数の他の活性成分または治療薬も含むものが含まれる。
【0223】
1つの態様においては、糖尿病の治療または予防のために、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を、インスリン、吸入型インスリン(Exubera(登録商標))、インスリン模倣物、インスリン分泌促進物質、スルホニル尿素(例えば、グリブリド、メグリナチド、グリメピリド、グリクラジド、グリピジド、グリキドン、クロロプロプレスポンシベミド、トルブタミド、アセトヘキサミド、グリコピラミド、カルブタミド、グリボヌリド、グリソキセピド、グリブチアゾール、グリブゾール、グリへキサミド、グリミジン、グリピナミド、フェンブタミド、トルシルアミドおよびトラザミド)、ビグアナイド(例えば、メトフォルミン(Glucophage(登録商標))、α-グルコシダーゼ阻害薬(例えば、アカルボース、ボグリボースおよびミグリトール)、チアゾリジノン化合物(例えば、ロシグリタゾン(Avandia(登録商標))、トログリタゾン(Rezuline(登録商標))、シグリタゾン、ピオグリタゾン(Actos(登録商標))およびエングリタゾン)、食事性グルコース調節薬(例えば、レパグリニドおよびナテグリニド)およびグルカゴン受容体拮抗薬などの抗糖尿病薬を非限定的に含む、別の治療薬とともに投与することができる。
【0224】
もう1つの態様においては、肥満の治療または予防のために、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を、β3アドレナリン受容体作動薬、レプチンまたはその誘導体、ニューロペプチドY(例えば、NPY5)拮抗薬およびマジンドールを非限定的に含む、別の治療薬とともに投与することができる。
【0225】
別々に投与するにせよ、同一の薬学的組成物中にある形で投与するにせよ、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体と組み合わせることができる他の治療薬の例には、以下のものが非限定的に含まれる:(i)コレステロール低下薬、例えば、HMG-CoAレダクターゼ阻害薬(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン(Zocor(登録商標))、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン(Lipitor(登録商標))および他のスタチン)、胆汁酸隔離剤(例えば、コレスチラミンおよびコレスチポール)、ビタミンB3(ニコチン酸またはナイアシンとしても知られる)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンB12(シアノコバラミン)、フィブリン酸誘導体(例えば、ゲムフィブロジル、クロフィブレート、フェノフィブレートおよびベンザフィブレート)、プロブコール、ニトログリセリン、およびコレステロール吸収の阻害薬(例えば、エゼチミブ(Zetia(登録商標))、β-シトステロールおよびアシルCoA-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害薬、例えばメリナミドなど)、HMG-CoAシンターゼ阻害薬、スクアレンエポキシダーゼ阻害薬およびスクアレンシンターゼ阻害薬など;(ii)抗血栓薬、例えば、血栓溶解薬(ストレプトキナーゼ、アルテプラーゼ、アニストレプラーゼおよびレテプラーゼ)、ヘパリン、ヒルジンおよびワルファリン誘導体、β-遮断薬(例えば、アテノロール)、βアドレナリン作動薬(例えば、イソプロテレノール)、アンギオテンシンII拮抗薬、ACE阻害薬および血管拡張薬(例えば、ニトロプルシドナトリウム、塩酸ニカルジピン、ニトログリセリンおよびエナロプリラト)など;(iii)PPAR作動薬、例えば、PPARγおよびPPARδ作動薬;(iv)DP拮抗薬;(v)滑沢剤または皮膚軟化剤、例えば、ワセリンおよびラノリン、角質溶解剤、ビタミンD3誘導体(例えば、カルシポトリエンおよびカルシポトリオール(Dovonex(登録商標))、PUVA、アントラリン(Drithrocreme(登録商標))、エトレチネート(Tegison(登録商標))およびイソトレチノインなど;(vi)緑内障治療薬、例えば、コリン作動薬(例えば、ピロカルピンおよびカルバコール)、コリンエステラーゼ阻害薬(例えば、フィゾスチグミン、ネオスチグミン、デマカリウム、ヨウ化エコチオフェートおよびイソフルオロフェート)、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、アセタゾラミド、ジクロルフェナミド、メタゾラミド、エトキシゾラミドおよびドルゾラミド)、非選択的アドレナリン作動薬(例えば、エピネフリンおよびジピベフリン)、α2-選択的アドレナリン作動薬(例えば、アプラクロニジンおよびブリモニジン)、β-遮断薬(例えば、チモロール、ベタゾロール、レボブノロール、カルテオロールおよびメチプラノロール)、プロスタグランジン類似体(例えば、ラタノプラスト)および浸透圧性利尿薬(例えば、グリセリン、マンニトールおよびイソソルビド);ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、プレニゾロン、デキサメタゾン、フルチカゾンおよびヒドロコルチゾンなどのコルチコステロイド、ならびにブデソニドなどのコルチコステロイド類似体など;(vii)免疫抑制薬、例えば、シクロスポリン(シクロスポリンA、Sandimmune(登録商標)、Neoral(登録商標))、タクロリムス(FK-506、Prograf(登録商標))、ラパマイシン(シロリムス、Rapamune(登録商標))および他のFK-506型免疫抑制薬、ならびにミコフェノール酸エステル、例えばミコフェノール酸モフェチル(CeilCept(登録商標))など;(viii)非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、プロピオン酸誘導体(例えば、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロクス酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸およびチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(例えば、インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロズ酸、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナク、イソキセパク、オキシピナク、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシンおよびゾメピラク)、フェナム酸誘導体(例えば、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸およびトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(例えば、ジフルニサルおよびフルフェニサル)、オキシカム(例えば、イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカムおよびテノキシカム)、サリチル酸塩(例えば、アセチルサリチル酸およびスルファサラジン)ならびにピラゾロン(例えば、アパゾン、ベンズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾンおよびフェニルブタゾン)など;(ix)シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害薬、例えば、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))およびロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))など;(xi)ホスホジエステラーゼIV型(PDE-IV)の阻害薬;(xii)オピオイド鎮痛薬、例えば、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン、メサドン、モルフィン、オキシコドン、オキシモルフォン、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィンおよびペンタゾシンなど;(xiii)肝保護物質;ならびに(xiv)他の化合物、例えば、5-アミノサリチル酸およびそのプロドラッグなど。
【0226】
本発明の化合物と第2の活性成分との重量比はさまざまであってよく、各成分の有効量に依存すると考えられる。一般に、それぞれの有効量を用いる。したがって、例えば、本発明の化合物をNSAIDと組み合わせる場合、本発明の化合物のNSAIDに対する重量比は一般に、約1000:1〜約1:1000、例えば約200:1〜約1:200などの範囲にあると考えられる。本発明の化合物と他の活性成分との組み合わせも一般に前述した範囲内にあると考えられるが、それぞれの場合に各活性成分の有効量を用いるべきである。
【0227】
キット
本発明は、患者に対する本発明のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体または組成物の投与を簡単にすることができるキットを含む。
【0228】
本発明の典型的なキットは、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の単位用量を含む。1つの態様において、単位用量剤形は、治療的有効量のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体および薬学的に許容される媒体を含む、無菌でありうる容器内にある。もう1つの態様において、単位用量剤形は、治療的有効量のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を、凍結乾燥物または薬学的に許容される塩として含む容器内にある。この場合には、キットは、凍結乾燥物の再構成または塩の溶解のために有用な溶液を含む別の容器をさらに含むことができる。キットは、ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の使用のためのラベルまたは印刷した説明書も含むことができる。
【0229】
本発明のキットはまた、逐次的に、別々に、または同時に投与することができる第2の治療薬を含んでもよい。そのような第2の治療薬の非限定的な例は本明細書に上述されている。
【0230】
さらなる態様において、キットは本発明の組成物の単位用量剤形を含む。
【0231】
本発明のキットはさらに、本発明のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体または組成物の単位用量剤形を投与するために有用な、1つまたは複数の装置を含むことができる。そのような装置の例には、単位用量剤形を任意に含む、シリンジ、点滴バッグ、パッチまたは浣腸が非限定的に含まれる。
【0232】
本発明は、本発明の少数の局面の例示であることを意図している、実施例において開示される特定の態様による範囲に限定されるものではなく、機能的に等価ないかなる態様も本発明の範囲内にある。実際に、本明細書に示され、記載されたものに加えて、本発明のさまざまな変更物が当業者には明らかになると思われ、それらは添付の特許請求の範囲に含まれることを意図している。このために、1つまたは複数の水素原子またはメチル基は、そのような有機化合物に関して認められている簡略表記に一致して、描写される構造式から省略してもよく、有機化学の当業者はそれらの存在を容易に理解するであろうことに留意すべきである。
【0233】
実施例
実施例1:4-((R)-3-メチル-4-(4-(S)-1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニルスルホニル)ピペラジン-1-イル)ベンゾニトリル(1a)および4-((R)-3-メチル-4-(4-(R)-1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニルスルホニル)ピペラジン-1-イル)ベンゾニトリル(1b)の調製

【0234】
(a)4-(ピペラジン-1-イル)ベンゾニトリル
488mgの4-フルオロベンゾニトリル(4.0mmol、1.0当量)を圧力管内で1.0gの(R)-2-メチルピペラジン(10.0mmol、2.5当量)と混ぜ合わせた。その結果得られた混合物を、あらかじめ加熱した100℃浴に入れた。一晩撹拌した後に、混合物を室温まで冷却し、50mLのCH2Cl2および飽和NaHCO3で希釈した上で、抽出した(3×10% MeOH/CH2Cl2)。有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、5% MeOH/CH2Cl2から8% MeOH/CH2Cl2+1% NH4OHに)により、生成物を黄褐色の固体として得た。
【0235】
(b)(R)-4-(4-(4-アセチルフェニルスルホニル)-3-メチルピペラジン-1-イル)ベンゾニトリル
10mL CH2Cl2中にある、以上のようにして得た生成物(690mg、3.43mmol、1.0当量)を、フラスコ内で747mgの4-アセチルベンゼンスルホニルクロリド(3.43mmol、1.0当量)および693mgのトリエチルアミン(6.86mmol、2.0当量)と混ぜ合わせた。この溶液を1時間撹拌した後に、20mLのCH2Cl2および飽和NaHCO3で希釈した。水溶液を抽出した(2×10% MeOH/CH2Cl2)。有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、2% MeOH/CH2Cl2)により、生成物を無色の油として得た。
【0236】
(c)4-((R)-3-メチル-4-(4-(1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニルスルホニル)ピペラジン-1-イル)ベンゾニトリル
以上のようにして得た生成物(1.0g、2.6mmol、1.0当量)および8mL THFを含む50mLフラスコに対して、550mgのTMSCF3(3.91mmol、1.5当量)を0℃で加えた。溶液を0.5時間撹拌した。テトラブチルアンモニウムフルオリド(3.91mL、THF中に1.0M、3.91mmol、1.5当量)を混合物に10分間かけて滴下した。0.5時間撹拌した後に、溶液を飽和NaHCO3で希釈して、抽出した(2×10% MeOH/CH2Cl2)。有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、2% MeOH/CH2Cl2)により、生成物を白色固体として得た。

【0237】
(d)4-((R)-3-メチル-4-(4-(S)-1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニルスルホニル)ピペラジン-1-イル)ベンゾニトリル(1a)および4-((R)-3-メチル-4-(4-(R)-1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニルスルホニル)ピペラジン-1-イル)ベンゾニトリル(1b)
以上の段階cで得た生成物 をHPLCによって分離した。流速はChiralcel OD-H 内径20mm×250mmの10ミクロンカラム(Daciel chemical Industries LTD)上で18mL/minとし、イソプロピルアルコール/ヘキサン(20/80)を溶出剤として用いた。収集した第2のピークは、4-((R)-3-メチル-4-(4-(S)-1,1,1-トリフルオロ--2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニルスルホニル)ピペラジン-1-イル)ベンゾニトリル(1a)であり、収集した第1のピークは、4((R)-3-メチル-4-(4-(R)-1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニルスルホニル)ピペラジン-1-イル)ベンゾニトリル(1b)であった。
【0238】
実施例2:(S)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-2-メチル-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール(2a)および(R)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4((R)-2-メチル-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール(2b)の調製

段階aにおいて4-フルオロベンゾニトリルの代わりに1-フルオロ-4-ニトロベンゼンを用いる形で、上記の実施例1の方法を用いて、1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-2-メチル4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オールを調製した。

【0239】
(S)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-2-メチル-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール(2a)および(R)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-2-メチル-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール(2b)
以上のようにして得た生成物をHPLCによって分離した。流速はChiralcel OD-H 内径20mm×250mmの10ミクロンカラム(Daciel chemical Industries LTD)上で18mL/minとし、イソプロピルアルコール/ヘキサン(25/75)を溶出剤として用いた。第2のピークは、(S)-トリフルオロメチルカルビノール(2a)であった。
【0240】
実施例3:(S)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-2-メチル-4(4-(メチルスルホニル)フェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール(3a)および(R)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-2-メチル-4-(4-(メチルスルホニル)フェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール(3b)の調製

段階aにおいて4-フルオロベンゾニトリルの代わりに1-フルオロ-4-(メチルスルホニル)ベンゼンを用いる形で、上記の実施例1の方法を用いて、1,1,1-トリフルオロ-2-(4((R)-2メチル-4-(4-(メチルスルホニル)フェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オールを調製した。

【0241】
(S)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-2-メチル-4-(4-(メチルスルホニル)フェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール(3a)および(R)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-2-メチル-4-(4-(メチルスルホニル)フェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール(3b)
以上のようにして得た生成物をHPLCによって分離した。流速はChiralcel OD-H 内径20mm×250mmの10ミクロンカラム(Daciel chemical Industries LTD)上で18mL/minとし、イソプロピルアルコール/ヘキサン(40/60)を溶出剤として用いた。収集した第2のピークは、(S)-トリフルオロメチルカルビノール(3a)であった。
【0242】
実施例4:(S)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール(4a)および(R)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール(4b)の調製

【0243】
(a)(R)-1-(4-フルオロフェニル)-3-メチルピペラジン
100mLのトルエンを含む250mLフラスコに対して、2.45gのナトリウムt-ブトキシド(25.5mmol、1.5当量)、191mgの酢酸パラジウム(0.85mmol、0.05当量)および517mgのトリ-p-トリルホスフィン(1.7mmol、0.1当量)を、N2下で添加した。20分間の撹拌の後に、3.0gの1-ブロモ-4-フルオロベンゼン(17.0mmol、1.0当量)および1.71gの(R)-2-メチルピペラジン(17.0mmol、1.0当量)を溶液に添加した。その結果得られた混合物を、あらかじめ加熱した110℃浴に入れた。7時間の撹拌の後に、混合物を室温まで冷却して、一晩撹拌した。この混合物をセライトのプラグを通して濾過した。セライトプラグをCH2Cl2で2回洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、2% MeOH/CH2Cl2から2% MeOH/CH2Cl2+1% NH4OH)により、生成物を淡褐色の油として得た。
【0244】
(b)(R)-1-(4-(4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)エタノン
以上のようにして得た生成物(666mg、3.43mmol、1.0当量)を10mLのCH2Cl2中に溶解させ、その後に747mgの4-アセチルベンゼンスルホニルクロリド(3.43mmol、1.0当量)および693mgのトリエチルアミン(6.86mmol、2.0当量)を添加した。溶液を1時間撹拌し、その後に20mLのCH2Cl2および飽和NaHCO3で希釈した。水溶液を抽出し(2×10% MeOH/CH2Cl2)、有機層を乾燥させて(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、2% MeOH/CH2Cl2)により、生成物を無色の油として得た。
【0245】
(c)1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルピペラジン-1-イル)スルホニル)フェニル)プロパン-2-オール
以上のようにして得た生成物(0.98g、2.6mmol、1.0当量)および8mL THFを含む50mLフラスコに対して、550mgのTMSCF3(3.91mmol、1.5当量)を0℃で添加した。この溶液を0.5時間撹拌した。テトラブチルアンモニウムフルオリド(3.91mL、THF中に1.0M、3.91mmol、1.5当量)を混合物に10分間かけて滴下した。0.5時間の撹拌の後に、溶液を飽和NaHCO3で希釈して、抽出した(2×10% MeOH/CH2Cl2)。有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、2% MeOH/CH2Cl2)により、生成物を白色固体として得た。

【0246】
(d)(S)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール(4a)および(S)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-4-(4-フルオロフェニル)2-メチルピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール(4b)
以上のようにして得た生成物をHPLCによって分離した。流速はChiralcel OD-H 内径20mm×250mmの10ミクロンカラム(Daciel chemical Industries LTD)上で18mL/minとし、イソプロピルアルコール/ヘキサン(10/90)を溶出剤として用いた。収集した第2のピークは、(S)-トリフルオロメチルカルビノール(4a)であった。
【0247】
実施例5:1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(4-クロロフェニル)-2-メチルピペラジン(5)の調製

【0248】
(a)1-(4-クロロフェニル)-3-メチルピペラジン
100mLトルエンを含む250mLフラスコに対して、2.45gのナトリウムt-ブトキシド(25.5mmol、1.5当量)、191mgの酢酸パラジウム(0.85mmol、0.05当量)および517mg tri-p-トリルホスフィン(1.7mmol、0.1当量)を、N2下で添加した。20分間の撹拌の後に、3.28gの1-ブロモ-4-クロロベンゼン(17.0mmol、1.0当量)および1.71gの2-メチルピペラジン(17.0mmol、1.0当量)を溶液に添加した。その結果得られた混合物を、あらかじめ加熱した110℃浴に入れた。7時間の撹拌の後に、混合物を室温まで冷却させて一晩撹拌した。この混合物をセライトのプラグを通して濾過した。セライトプラグをCH2Cl2で2回洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、2% MeOH/CH2Cl2から2% MeOH/CH2Cl2+1% NH4OH)により、生成物を黄色みがかった固体として得た。
【0249】
(b)1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(4-クロロフェニル)-2-メチルピペラジン(5)
10mLのCH2Cl2中にある、以上のようにして得た生成物(722mg、3.43mmol、1.0当量)の溶液に対して、798.2mgの4-tert-ブチルベンゼン-1-スルホニルクロリド(3.43mmol、1.0当量)および693mgのトリエチルアミン(6.86mmol、2.0当量)を添加した。溶液を1時間撹拌し、その後に20mLのCH2Cl2および飽和NaHCO3で希釈した。この水溶液を抽出した(2×10% MeOH/CH2Cl2)。有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、10%ヘキサン/CH2Cl2)により、生成物を白色固体として得た。

【0250】
実施例6:1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-2-メチル-4-o-トリルピペラジン(6)の調製

段階aにおいて1-ブロモ-4-クロロベンゼンの代わりに1-ブロモ-2-メチルベンゼンを用いる形で、上記の実施例5の方法を用いて、1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-2-メチル-4-o-トリルピペラジン(6)を調製した。

【0251】
実施例7:4-(4-フルオロフェニル)-2-メチル-1-(4-tert-ペンチルフェニルスルホニル)ピペラジン(7)の調製

段階aにおいて1-ブロモ-4-クロロベンゼンの代わりに1-ブロモ-4-フルオロベンゼンを用い、段階bにおいて4-tert-ブチルベンゼン-1-スルホニルクロリドの代わりに4-tert-ペンチルベンゼン-1-スルホニルクロリドを用いる形で、上記の実施例5の方法を用いて、4-(4-フルオロフェニル)-2-メチル-1-(4-tert-ペンチルフェニルスルホニル)ピペラジン(7)を調製した。

【0252】
実施例8:1-((1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン-2-イル)メチル)ピロリドン-2-オン(8)の調製

【0253】
(a)(4-ベンジル-1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)ピペラジン-2-イル)メタノール
20mLのCH2Cl2中にある、233mgの(1-ベンジルピペラジン-2-イル)メタノール(1.13mmol、1.0当量)を、フラスコ内で237mgの4-tert-ブチルベンゼン-1-スルホニルクロリド(1.01mmol、0.9当量)および149mgのトリエチルアミン(1.47mmol、1.3当量)と混ぜ合わせた。溶液を12時間撹拌し、その後に20mLのCH2Cl2および飽和NaHCO3で希釈した。この水溶液を抽出し(2×10% MeOH/CH2Cl2)、有機層を乾燥させて(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、0〜2.5% MeOH/CH2Cl2)により、生成物を無色の油として得た。
【0254】
(b)(1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)ピペラジン-2-イル)メタノール
1Lのフラスコに500mgの10% Pd/Cおよび400mLのEtOHをN2下で添加した。10mL EtOH中にある、以上のようにして得た生成物(6.23g、15.5mmol、1.0当量)を添加し、その後に150mLのシクロヘキセンを加えた。フラスコに還流冷却器を取り付けて、あらかじめ加熱した84℃浴に入れた。12時間の撹拌の後に、溶液をセライトのプラグを通して熱濾過し、セライトプラグをEtOHで3回洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、1% MeOH/CH2Cl2から10% MeOH/CH2Cl2+1% NH4OHに)により、生成物を得た。
【0255】
(c)(1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン-2-イル)メタノール
以上のようにして得た生成物(1.0g、3.2mmol、1.0当量)を、圧力管内で1.35gの1-フルオロ-4-ニトロベンゼン(9.6mmol、3.0当量)および650mgの4-メチルモルホリン(6.4mmol、2.0当量)と混ぜ合わせた。その結果得られた混合物を、あらかじめ加熱した90℃浴に入れた。一晩の撹拌の後に、混合物を室温まで冷却し、50mLのCH2Cl2および飽和NaHCO3で希釈して、抽出した(3×10% MeOH/CH2Cl2)。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、0〜2%のMeOH/CH2Cl2)により、生成物を黄色固体として得た。
【0256】
(d)(1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン-2-カルバルデヒド
5mLのTHF中にある、以上のようにして得た生成物(350mg、0.81mmol、1.0当量)を、フラスコ内で342mgのデス-マーチン(Dess-Martin)ペルヨージナン(0.81mmol、1.0当量)と混ぜ合わせた。2時間の撹拌の後に、混合物を20mLのCH2Cl2および飽和NaHCO3で希釈し、抽出した(3×10% MeOH/CH2Cl2)。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、1% MeOH/CH2Cl2)により、生成物を黄色固体として得た。
【0257】
(e)1-((1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン-2-イル)メチル)ピロリドン-2-オン(8)
5mL のジクロロエタン中にある、以上のようにして得た生成物(177mg、0.41mmol、1.0当量)を、フラスコ内で82mgの4-アミノ酪酸エチル(0.49mmol、1.2当量)と混ぜ合わせ、0.5mLの酢酸および348mgのNaB(OAc)3H(1.46mmol、4.0当量)で処理した。2時間の撹拌の後に、混合物を20mLのCH2Cl2および飽和NaHCO3で希釈して、抽出した(3×10% MeOH/CH2Cl2)。有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、0.5% MeOH/CH2Cl2、2% MeOH/CH2Cl2)により、生成物を得た。
【0258】
以上のようにして得た生成物を10mLの10%AcOH/トルエン中に溶解させ、その結果得られた混合物を、あらかじめ加熱した60℃浴に入れた。一晩の撹拌の後に、混合物を室温まで冷却し、20mLのCH2Cl2および飽和NaHCO3で希釈して、抽出した(3×10% MeOH/CH2Cl2)。有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮して、生成物を黄色固体として得た。

【0259】
実施例9:1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(3-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジン(9)の調製

【0260】
(a)1-(3-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジン
4.0gの2-クロロ-3-(トリフルオロメチル)ピリジン(22.0mmol、1.0当量)を、圧力管内で4.74gのピペラジン(55.0mmol、2.5当量)と混ぜ合わせた。その結果得られた混合物を、あらかじめ加熱した100℃浴に入れた。一晩の撹拌の後に、混合物を室温まで冷却し、50mLのCH2Cl2および飽和NaHCO3で希釈して、抽出した(3×10% MeOH/CH2Cl2)。有機層を乾燥させ(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、10% MeOH/CH2Cl2+1% NH4OH)により、生成物を無色の油として得た。
【0261】
(b)1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(3-(トりフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジン(9)
3mLのCH2Cl2中にある、以上のようにして得た生成物(100mg、0.43mmol、1.0当量)の溶液に対して、121mgの4-tert-ブチルベンゼン-1-スルホニルクロリド(0.52mmol、1.2当量)および86.9mgのトリエチルアミン(0.86mmol、2.0当量)を添加した。この混合物を1時間撹拌し、その後に20mLのCH2Cl2および飽和NaHCO3で希釈した。この水溶液を抽出し(2×10% MeOH/CH2Cl2)、有機層を乾燥させて(MgSO4)、減圧下で濃縮した。残留物のフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、2% MeOH/CH2Cl2)により、生成物を白色固体として得た。

【0262】
実施例10:1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(4-ニトロフェニル)-1,4-ジアゼパン(18)の調製

【0263】
(a)1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-1,4-ジアゼパン
50mLのCH2Cl2中にある4-tert-ブチルベンゼンスルホニルクロリド(2.32g、10mmol、1.0当量)を、フラスコ内で1.0gのホモピペラジン(10.0mmol、1.0当量)および1.7mLのトリエチルアミン(12.0mmol、1.2当量)と混ぜ合わせた。4時間の撹拌の後に、溶液を飽和NaHCO3で希釈し、50mLのCH2Cl2で抽出した。有機層を洗浄し(塩水で1回)、乾燥させて(Na2SO4)、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、5% MeOH/CH2Cl2)によって精製して、生成物を得た。
【0264】
(b)1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(4-ニトロフェニル)-1,4-ジアゼパン(18)
100mLフラスコに、以上のようにして得た生成物(110mg、0.37mmol、1.0当量)、52.4mgの4-フルオロニトロベンゼン(0.37mmol、1.0当量)および0.13mLのジイソプロピルエチルアミン(0.74mmol、2.0当量)を加えた。フラスコに還流冷却器を取り付け、続いて、あらかじめ加熱した120℃浴に入れた。2時間の撹拌の後に、溶液をCH2Cl2で希釈し、洗浄して(塩水で1回)、乾燥させ(Na2SO4)、減圧下で濃縮した。その結果得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、30%EtOAc/hexane)によって精製して、生成物を得た。

【0265】
生物学的実施例
ジアザ複素環式スルホンアミド誘導体の生物学的評価のために有用な手順
種々の疾患および障害におけるHSDの役割を開示している広範囲にわたる文献に加えて、本発明のジアザ複素環式スルホンアミド誘導体を試験するために有用なアッセイを本明細書に提供する。
【0266】
アッセイ
インビトロでの11β-HSD1(ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1)活性阻害作用
11β-HSD1阻害活性を、酵素供給源としてバキュロウイルス系を用いて発現させたヒト11β-HSD1(本明細書では以下、組換え11β-HSD1)を用いる、コルチゾンからコルチゾールへの変換に対する抑制作用に関するSPA(シンチレーション近接アッセイシステム)による定量的評価によって調べた。反応のためには、試薬を96ウェルプレート(96ウェルOpti-plates(商標)-96(Packard))に以下の最終濃度で添加し、容積100μlを室温で90分間反応させた。用いた反応溶液は、0.1% BSA(Sigma)を含むPBS中に溶解させた0.1μg/mlの組換え11β-HSD1、500μMのNADPH、16nMの3Hコルチゾン(Amersham Biosciences、1.78Tbq/mol)とし、被験薬は化合物溶液(DMSO中に溶解)2μlとした。90分後に、0.08μgの抗コルチゾールマウスモノクローナル抗体(East Coast Biologics)、365μgのSPA PVTマウス抗体結合ビーズ(Amersham Biosciences)および175μMのカルベノキソロン(Sigma)を含むPBS(40μl、0.1% BSA(Sigma)を含む)を反応溶液に添加することにより、反応を停止させた。反応の完了後に、プレートを室温で一晩インキュベートし、放射能をTopcount(Packard)により測定した。対照に関しては、被験薬の代わりに2μlのDMSOを含むウェルの値(0%阻害)を用い、陽性対照に関しては、被験薬の代わりにカルベノキソロンを最終濃度50μMで含むウェルの値(100%阻害)を用いた。被験薬の阻害(%)は、((対照の値−被験薬の値)/(対照の値−陽性対照の値))×100(%)により算出した。IC50値はコンピュータによる曲線適合用ソフトを用いて解析した。
【0267】
以下のこの実施例は、11β-HSD1を調節する化合物の評価および選択に有用なアッセイを提供する。
【0268】
SPAによる11β-HSD1の生化学アッセイ
組換えヒト、マウスおよびラット11β-HSD1をバキュロウイルス発現系で発現させ、アフィニティー精製によって単離し、インビトロでのコルチゾンからコルチゾールへの変換のための酵素供給源として用いた。3H-コルチゾン(Amersham Bioscience、1.78 Tbq/mol. 49Ci/mmol)を基質として用い、モノクローナル抗コルチゾール抗体およびシンチレーション近接アッセイ(SPA)システムを用いて、11β-HSD1触媒反応の生成物である3H-コルチゾールを検出した。反応は、96ウェルOpti-plates(商標)-96(Packard)内で、0.1% BSA(Sigma)を加えたPBS緩衝液中にある、DMSO中の2μLの試験化合物または対照、0.1μg/mLの11β-HSD1タンパク質、500μMのNADPHおよび16nMの放射性コルチゾンを含む100μL容積において、室温で90分間行った。0.08μgの抗コルチゾールモノクローナル抗体(East Coast Biologics)、365μgのSPA PVT抗体結合ビーズ(Amersham Biosciences)および175μMのカルベノキソロン(Sigma)を含む緩衝液40μLの添加により、反応を停させた。
【0269】
プレートを室温で一晩インキュベートした後に、Topcount(Packard)で読み取った。11β-HSD1酵素活性の50%阻害点(IC50)を、コンピュータによる曲線適合用ソフトによって決定した。
【0270】
SPAによる11β-HSD1のセルベースアッセイ
このセルベースアッセイは、ヒト組換え11β-HSD1を安定的に過剰発現するHEK-293細胞株における3H-コルチゾンの3H-コルチゾールへの変換を測定する。HEK-293細胞を、10%ウシ胎仔血清を加えたDMEM/F12中で培養し、ポリ-D-リジンでコーティングした96ウェルアッセイプレート(Costar 3903)上に、1ウェル当たり細胞100,000個/50μLアッセイ培地(フェノール非含有DMEM/F12(Invitrogen)+0.2% BSA+1%抗菌薬-抗真菌薬溶液)としてプレーティングした。溶液を37℃で24時間インキュベートし、各ウェルに対する、所望の濃度の化合物を含むアッセイ培地25μLおよび40nMの3H-コルチゾンを含むアッセイ培地25μLの添加によって反応を開始させた。反応混合物を37℃で90分間インキュベートし、0.2μgの抗コルチゾールモノクローナル抗体(East Coast Biologics)、500μgのSPA PVT抗体結合ビーズ(Amersham Biosciences)および500μMのカルベノキソロン(Sigma)を含むアッセイ培地25μLの添加によって反応を停止させた。
【0271】
プレートを室温で少なくとも2時間インキュベートした後に、Topcount(Packard)で読み取った。11β-HSD1酵素活性の50%阻害点(IC50)を、コンピュータによる曲線適合用ソフトによって決定した。
【0272】
前記の実施例で調製した化合物は、アッセイにおいて、1nM未満から1000nMまでの範囲にわたるβ-HSD1酵素活性(IC50)を呈した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)を有する化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、もしくはプロドラッグ:

式中、
Xは、-C(R1)(R2)(R3)、(C2-C8)アルキニルより選択され;
Y1およびY2は、NおよびCR5より独立に選択され;
R1は、ヒドロキシ、ハロゲン、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル、シアノ、ニトロ、(C1-C8)アルコキシ、および(C1-C4)アルキレン-C(O)R4より選択され;
R2およびR3は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、および(C3-C8)シクロアルキルより独立に選択され;
R2およびR3は一体となって(C3-C8)シクロアルカン環を形成してもよく;
それぞれのR4は、ヒドロキシ、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、および(C3-C8)ヘテロシクロアルキルより選択され;
R5は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)ハロアルキル、-C(O)R4、および-SO2R6より選択され;
R6は、(C1-C8)アルキルおよびアリールより選択され;
R7は、水素およびハロゲンより選択され;
R8は、水素、(C1-C8)アルキル、(C1-C4)アルキレン-OR14、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル(C1-C4)アルキル、および(C1-C8)ハロアルキルより選択され;
R9は、水素および(C1-C8)アルキルより選択され;
R10、R11、およびR12は、水素および(C1-C8)アルキルより独立に選択され;
R11は、R8またはR9と一体となって、架橋された二環式環を形成してもよく;
それぞれのR13は、水素、ハロゲン、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C1-C8)アルコキシ、シアノ、およびニトロより独立に選択され;
R13は、Y1、Y2または隣接したR13と一体となって、N、OおよびSより選択される0、1または2個のヘテロ原子を含む五員または六員の縮合環を形成してもよく;
R14は、水素、1つまたは複数の酸素が介在してもよい(C1-C8)アルキル、-C(O)-(C1-C8)アルキル、-SO2-(C1-C8)アルキル、および(C3-C8)ヘテロシクロアルキル(C1-C4)アルキルより選択され;
添字mおよびnは、独立に1または2であり;
ここで任意のシクロアルキル部分、ヘテロシクロアルキル部分、アリール部分、またはヘテロアリール部分は、オキソ、アリール(C1-C4)アルキル、ヘテロアリール(C1-C4)アルキル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C8)アルコキシ、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、-C(O)R'、-C(O)OR'、-NR'C(O)OR''、-OR'、-SR'、-OC(O)R'、-C(O)N(R')2、-S(O)R''、-SO2R''、-SO2N(R')2、-N(R')2、および-NR'C(O)R'より選択される1つから4つまでのメンバーによって置換されていてもよく;
ここでR'のそれぞれの存在は独立に、水素、または(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルコキシ(C1-C4)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、(C3-C8)シクロアルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、(C3-C8)シクロアルキル(C1-C6)アルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル(C1-C6)アルキル、ヘテロアリール(C1-C6)アルキル、およびアリール(C1-C6)アルキルより選択される非置換型のメンバーであり;
2つのR'基は、同一の窒素原子と結合した場合に、それらが結合している窒素原子と一体となって複素環またはヘテロアリール基を形成してもよく;
ここでR''のそれぞれの存在は独立に、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルコキシ(C1-C4)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C2-C8)ヒドロキシアルキル、(C3-C8)シクロアルキル、(C3-C8)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アリール、(C3-C8)シクロアルキル(C1-C6)アルキル、ヘテロシクリル(C1-C6)アルキル、ヘテロアリール(C1-C6)アルキル、およびアリール(C1-C6)アルキルより選択される非置換型のメンバーであり;かつ
(a)R8、R9、R10、R11、およびR12がすべて水素であり、かつmが1である場合に、Y1およびY2は、同時にCR5であることはできない;
(b)R1、R2、またはR3は、-C1-アルキレン-C(O)OHであることはできない;
(c)Y1がNであり、かつY2がCR5である場合に、R5は、(C1-C8)アルキル、(C1-C8)ハロアルキル、(C1-C8)アルコキシ、-C(O)R4、および-SO2R6ではない;
(d)化合物は、1-(4-(トリフルオロメチル)フェニルスルホニル)-4-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-1,4-ジアゼパンではない;
(e)化合物は、1-(4-n-ペンチルフェニルスルホニル)-4-(3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-1,4-ジアゼパンではない;
(f)化合物は、1-(4-(トリフルオロメチル)フェニルスルホニル)-4-(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジンではない;
(g)化合物は、1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジンではない;
(h)化合物は、1-(4-(トリフルオロメチル)フェニルスルホニル)-4-(3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジンではない;および
(i)R10およびR12が両方とも水素であり、R11がR8およびR9の一方と一体となって架橋環を形成し、かつR8およびR9のもう一方がHであり、mが1または2であり、かつY1およびY2が同時にNである場合に、R13は、(C1-C8)アルキルであることはできない、
ことを条件とする。
【請求項2】
添字mが1である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
R8が(C1-C8)アルキルである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
R8が(C1-C3)アルキルである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
R8が、メチル、エチル、またはイソプロピルである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
R8がメチルである、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
R8が水素であり、かつR9が水素である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
Y1およびY2が、CR5である、請求項2記載の化合物。
【請求項9】
R5が、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、-SO2R6からなる群より選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項10】
Xが-C(R1)(R2)(R3)である、請求項2記載の化合物。
【請求項11】
R1が(C1-C8)アルキルである、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
R1が(C1-C3)アルキルである、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
R1がメチルである、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
R2が(C1-C8)ハロアルキルであり、かつR3が-OHである、請求項10記載の化合物。
【請求項15】
R2がトリフルオロメチルである、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
R1がメチルであり、R2がトリフルオロメチルであり、かつR3が-OHである、請求項10記載の化合物。
【請求項17】
R1、R2、およびR3が、それらが結合した炭素原子と一緒に、式:

の(S)-トリフルオロメチルカルビノール基となる、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
R1、R2、およびR3が、それらが結合する炭素原子と一緒に、式:

の(R)-トリフルオロメチルカルビノール基となる、請求項16記載の化合物。
【請求項19】
R1が(C1-C8)アルキルであり、R2が(C1-C8)アルキルであり、かつR3が(C1-C8)アルキルである、請求項10記載の化合物。
【請求項20】
R1が(C1-C3)アルキルであり、R2が(C1-C3)アルキルであり、かつR3が(C1-C3)アルキルである、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
R1がメチルであり、R2がメチルであり、かつR3がメチルである、請求項20記載の化合物。
【請求項22】
R9が水素であり、Y1がCHおよびNより選択され、かつXが-C(R1)(R2)(R3)である、請求項1記載の化合物。
【請求項23】
R1がメチルであり、R2がトリフルオロメチルであり、かつR3が-OHである、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
R1がメチルであり、R2がメチルであり、かつR3がメチルである、請求項22記載の化合物。
【請求項25】
請求項1記載の化合物および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項26】
請求項1記載の化合物および追加の治療薬を含む、薬学的組成物。
【請求項27】
追加の治療薬が、糖尿病、シンドロームX、肥満、多嚢胞性卵巣疾患、摂食障害、頭蓋咽頭腫、プラダー-ウィリ症候群、フレーリッヒ症候群、高脂血症、異脂肪血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、HDL低値、HDL高値、高血糖、インスリン抵抗性、高インスリン血症、クッシング症候群、高血圧、アテローム性動脈硬化、血管再狭窄、網膜症、腎症、神経変性疾患、ニューロパチー、筋肉疲労、認知障害、痴呆、うつ病、乾癬、緑内障、骨粗鬆症、ウイルス感染症、炎症性疾患、および免疫障害からなる群より選択される病状または障害を治療するために有用である、請求項26記載の薬学的組成物。
【請求項28】
病状または障害に罹患した患者に請求項1記載の化合物の治療的有効量を投与する段階を含む、病状または障害を治療するための方法であって、該病状または障害が、糖尿病、シンドロームX、肥満、多嚢胞性卵巣疾患、摂食障害、頭蓋咽頭腫、プラダー-ウィリ症候群、フレーリッヒ症候群、高脂血症、異脂肪血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、HDL低値、HDL高値、高血糖、インスリン抵抗性、高インスリン血症、クッシング症候群、高血圧、アテローム性動脈硬化、血管再狭窄、網膜症、腎症、神経変性疾患、ニューロパチー、筋肉疲労、認知障害、痴呆、うつ病、乾癬、緑内障、骨粗鬆症、ウイルス感染症、炎症性疾患、および免疫障害からなる群より選択される、方法。
【請求項29】
病状または障害が、糖尿病または肥満である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
それを必要とする患者に請求項1記載の化合物の治療的有効量を投与する段階を含む、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの調節に反応する病状または障害を治療する方法。
【請求項31】
ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼが、11β-HSD1、11β-HSD2、および17β-HSD3からなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
細胞を請求項1記載の化合物と接触させる段階を含む、細胞におけるヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの機能を調節する方法。
【請求項33】
化合物がヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
細胞を請求項1記載の化合物と接触させる段階を含む、細胞における11β-HSD1の機能を調節する方法。
【請求項35】
細胞を請求項1記載の化合物と接触させる段階を含む、細胞における11β-HSD2の機能を調節する方法。
【請求項36】
細胞を請求項1記載の化合物と接触させる段階を含む、細胞における17β-HSD3の機能を調節する方法。
【請求項37】
以下からなる群より選択される化合物:
4-((R)-3-メチル-4-(4-(S)-1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニルスルホニル)ピペラジン-1-イル)ベンゾニトリル;
4-((R)-3-メチル-4-(4-(R)-1,1,1-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-2-イル)フェニルスルホニル)ピペラジン-1-イル)ベンゾニトリル;
(S)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-2-メチル-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール;
(R)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-2-メチル-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール;
(S)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-2-メチル-4-(4-(メチルスルホニル)フェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール;
(R)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-2-メチル-4-(4-(メチルスルホニル)フェニル)ピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール;
(S)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール;
(R)-1,1,1-トリフルオロ-2-(4-((R)-4-(4-フルオロフェニル)-2-メチルピペラジン-1-イルスルホニル)フェニル)プロパン-2-オール;
1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(4-クロロフェニル)-2-メチルピペラジン;
1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-2-メチル-4-o-トリルピペラジン;
4-(4-フルオロフェニル)-2-メチル-1-(4-tert-ペンチルフェニルスルホニル)ピペラジン;
1-((1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン-2-イル)メチル)ピロリジン-2-オン;
1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(3-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジン;
1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-2-メチル-4-(ピリジン-4-イル)ピペラジン;
1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-2,2-ジメチル-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン;
1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-2-メトキシメチル-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン;
1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-2-((2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)メチル)-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン
1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-2-フルオロメチル-4-(4-ニトロフェニル)ピペラジン;
1-(4-(2-ヒドロキシプロピル)フェニルスルホニル)-4-(3-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペラジン;
1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(3-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-1,4-ジアゼパン;
1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(2-(トリフルオロメチル)フェニル)-1,4-ジアゼパン;
1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(4-ニトロフェニル)-1,4-ジアゼパン;
1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(2-トリフルオロメチル-4-ニトロフェニル)-1,4-ジアゼパン;
1-(4-tert-ブチルフェニルスルホニル)-4-(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-1,4-ジアゼパン;ならびに
それらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体、およびプロドラッグ。

【公表番号】特表2009−519933(P2009−519933A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545732(P2008−545732)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/047353
【国際公開番号】WO2007/070506
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(506147331)アムゲン インコーポレイティッド (27)
【Fターム(参考)】