説明

ジッタ印加回路、パターン発生器、試験装置、および、電子デバイス

【課題】高周波のタイミングジッタを有するジッタ重畳信号を容易に生成する。
【解決手段】ジッタを有するジッタ重畳信号を生成するジッタ印加回路であって、与えられる基準信号を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる複数の遅延回路と、それぞれの遅延回路が出力する信号のタイミングに応じて、ジッタ重畳信号のそれぞれのエッジを生成する信号生成部と、それぞれの遅延回路に、ジッタ重畳信号の各エッジに印加すべきジッタに応じた遅延量をそれぞれ設定する遅延設定部とを備え、少なくとも一つの遅延回路の遅延量が、ジッタ重畳信号が有するべき平均周期の整数倍とは異なる値に設定されるジッタ印加回路を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジッタ印加回路、パターン発生器、試験装置、および、電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
高速通信デバイス、高速シリアルI/Oデバイスの試験項目には、ジッタ耐力試験がある。例えばITU−Tの勧告によれば、通信データに数百MHz程度の周波数を有するジッタを印加して、ジッタ耐力試験を行う試験が規定されている。
【0003】
高周波の信号にジッタを印加する方法としては、電圧制御発振器の制御入力に変調信号を印加することで、電圧制御発振器が生成するクロック信号にジッタを印加して、当該クロック信号を用いてデータ信号を生成する方法が考えられる。
【0004】
また、他の方法としては、クロック信号またはデータ信号を生成する発生器の後段に可変遅延回路を設け、可変遅延回路の遅延制御入力を変化させることでジッタを印加する方法も考えられる。可変遅延回路を用いたジッタ印加方法は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2007/049365号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子デバイスの実使用状態においては、高周波数のジッタ成分に起因するビット誤り率を小さくすることが重要である。このため、係る電子デバイスを試験する試験装置においても、高周波数のジッタを印加できることが求められる。
【0007】
しかし、上述したように電圧制御発振器の制御入力を変調することでジッタを生成する場合、制御入力でクロック信号を高速に変調することが困難であり、生成できるジッタの周波数の限界が数十MHz程度となる。また、可変遅延回路の遅延量を変化させることでジッタを生成する場合、可変遅延回路が遅延設定の変化に追従するのに時間を要するので、高周波数かつ大振幅のジッタを生成することができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、ジッタを有するジッタ重畳信号を生成するジッタ印加回路であって、与えられる基準信号を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる複数の遅延回路と、それぞれの遅延回路が出力する信号のタイミングに応じて、ジッタ重畳信号のそれぞれのエッジを生成する信号生成部とを備え、少なくとも一つの遅延回路の遅延量が、ジッタ重畳信号が有するべき平均周期の整数倍とは異なる値に設定されるジッタ印加回路を提供する。
【0009】
本発明の第2の態様においては、被試験デバイスを試験する試験装置であって、ジッタを有するジッタ重畳信号を生成するジッタ印加回路と、ジッタ重畳信号に基づいて試験信号を生成し、被試験デバイスに供給する試験信号発生部と、被試験デバイスが、試験信号に応じて出力する応答信号を測定し、被試験デバイスの良否を判定する測定部とを備え、ジッタ印加回路は、与えられる基準信号を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる複数の遅延回路と、それぞれの遅延回路が出力する信号のタイミングに応じて、ジッタ重畳信号のそれぞれのエッジを生成する信号生成部とを備え、少なくとも一つの遅延回路の遅延量が、ジッタ重畳信号が有するべき平均周期の整数倍とは異なる値に設定される試験装置を提供する。
【0010】
本発明の第3の態様においては、動作回路と、動作回路を試験する自己診断部とを内蔵する電子デバイスであって、自己診断部は、ジッタを有するジッタ重畳信号を生成するジッタ印加回路と、ジッタ重畳信号に基づいて試験信号を生成し、動作回路に供給する試験信号発生部と、動作回路が、試験信号に応じて出力する応答信号を測定し、動作回路の良否を判定する測定部とを有し、ジッタ印加回路は、与えられる基準信号を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる複数の遅延回路と、それぞれの遅延回路が出力する信号のタイミングに応じて、ジッタ重畳信号のそれぞれのエッジを生成する信号生成部とを含み、少なくとも一つの遅延回路の遅延量が、ジッタ重畳信号が有するべき平均周期の整数倍とは異なる値に設定される電子デバイスを提供する。
【0011】
本発明の第4の態様においては、予め定められた論理パターンを有し、且つ、ジッタを有するデータ信号を生成するパターン発生器であって、与えられる基準信号を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる複数の遅延回路と、それぞれの遅延回路が出力する信号のタイミングに応じて、データ信号のそれぞれのエッジを生成する信号生成部と、データ信号が有するべき論理パターンにおいて論理値が遷移するタイミングに応じて、それぞれの遅延回路に、データ信号の1ビット分の時間の何倍の遅延量を設定すべきかを決定し、決定したそれぞれの遅延量に、印加すべきジッタ値を加減算した値を、それぞれの遅延回路に設定する遅延設定部とを備えるパターン発生器を提供する。
【0012】
本発明の第5の態様においては、被試験デバイスを試験する試験装置であって、予め定められた論理パターンを有し、且つ、ジッタを有する試験信号を生成して、被試験デバイスに供給するパターン発生器と、被試験デバイスが、試験信号に応じて出力する応答信号を測定し、被試験デバイスの良否を判定する測定部とを備え、パターン発生器は、与えられる基準信号を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる複数の遅延回路と、それぞれの遅延回路が出力する信号のタイミングに応じて、試験信号のそれぞれのエッジを生成する信号生成部と、試験信号が有するべき論理パターンにおいて論理値が遷移するタイミングに応じて、それぞれの遅延回路に、試験信号の1ビット分の時間の何倍の遅延量を設定すべきかを決定し、決定したそれぞれの遅延量に、印加すべきジッタ値を加減算した値を、それぞれの遅延回路に設定する遅延設定部とを有する試験装置を提供する。
【0013】
本発明の第6の態様においては、動作回路と、動作回路を試験する自己診断部とを内蔵する電子デバイスであって、自己診断部は、予め定められた論理パターンを有し、且つ、ジッタを有する試験信号を生成して、被試験デバイスに供給するパターン発生器と、動作回路が、試験信号に応じて出力する応答信号を測定し、動作回路の良否を判定する測定部とを有し、パターン発生器は、与えられる基準信号を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる複数の遅延回路と、それぞれの遅延回路が出力する信号のタイミングに応じて、試験信号のそれぞれのエッジを生成する信号生成部と、試験信号が有するべき論理パターンにおいて論理値が遷移するタイミングに応じて、それぞれの遅延回路に、試験信号の1ビット分の時間の何倍の遅延量を設定すべきかを決定し、決定したそれぞれの遅延量に、印加すべきジッタ値を加減算した値を、それぞれの遅延回路に設定する遅延設定部とを有する電子デバイスを提供する。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係るジッタ印加回路100の構成例を示す図である。
【図2】図1に示したジッタ印加回路100の動作例を示すタイミングチャートである。
【図3】ジッタ印加回路100の他の構成例を示す図である。
【図4】図3に示したジッタ印加回路100の動作例を示すタイミングチャートである。
【図5】図3に示したジッタ印加回路100の他の動作例を示すタイミングチャートである。
【図6】ジッタ印加回路100の他の構成例を示す図である。
【図7】図6に示したジッタ印加回路100の動作例を示すタイミングチャートである。
【図8】ジッタ印加回路100の他の構成例を示す図である。
【図9】ジッタ印加回路100の他の構成例を示す図である。
【図10】一つの実施形態に係るデータジッタ印加回路200の構成例を示す図である。
【図11】データジッタ印加部110の他の構成例を示す図である。
【図12】データ信号にジッタを印加するジッタ印加回路100の動作例を示すタイミングチャートである。
【図13】ジッタ印加回路100の他の構成例を示す図である。
【図14】一つの実施形態に係る試験装置300の構成例を、被試験デバイス400と併せて示す図である。
【図15】パターン発生部320および測定部340の構成例を示す図である。
【図16】一つの実施形態に係る電子デバイス500の構成例を示す図である。
【図17】試験装置300の動作例を示すフローチャートである。
【図18】試験装置300の他の構成例を示す図である。
【図19】電子デバイス500の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、一実施形態に係るジッタ印加回路100の構成例を示す図である。ジッタ印加回路100は、ジッタを有するジッタ重畳信号を生成する回路であって、並列に設けられた複数の遅延回路10、信号生成部20、および、遅延設定部30を備える。本例のジッタ印加回路100は、ジッタ重畳信号を生成する間、遅延量が固定された複数の遅延回路10を用いてジッタ重畳信号を生成する。つまり、遅延回路10における遅延量を変化させずにジッタ重畳信号を生成するので、高周波のジッタを有するジッタ重畳信号を容易に生成することができる。
【0018】
複数の遅延回路10は、与えられる基準信号CLK0を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる。基準信号CLK0は、予め設定された周期を有する周期信号であってよい。
【0019】
信号生成部20は、基準信号CLK0、および、それぞれの遅延回路10が出力する信号(CLK1からCLKn)のタイミングに応じて、出力すべきジッタ重畳信号OCLKのそれぞれのエッジを生成する。例えば信号生成部20は、一つの遅延回路10が出力する信号のエッジから、ジッタ重畳信号OCLKの一つのエッジを生成する。このため、ジッタ重畳信号の各エッジの位置を、対応する遅延回路10の遅延量により設定でき、複数の遅延回路10における遅延量に応じたジッタを、ジッタ重畳信号に印加することができる。
【0020】
本例の信号生成部20は、複数の信号(CLK0からCLKn)の排他的論理和を出力する排他的論理和回路であってよい。複数の信号の排他的論理和とは、例えば複数の信号(CLK0からCLKn)のうち、奇数個の信号がH論理を示す期間ではH論理となり、偶数個の信号がH論理を示す期間ではL論理となる信号であってよい。入力される各信号の遷移タイミングが異なる場合、信号生成部20が出力する信号は、入力される各信号の遷移タイミングで順次論理値が反転する信号となる。
【0021】
つまり、信号生成部20は、それぞれの遅延回路10に設定される遅延量τ1、τ2、τ3、・・・、τk、・・・、τn(ただし、τkは、k個目の遅延回路10に設定される遅延量)のタイミングで論理値が順次反転するジッタ重畳信号を出力する。ここで、少なくとも一つの遅延量τkとして、ジッタ重畳信号の平均周期TOUT(ジッタ重畳信号における各ビットの平均持続時間)の整数倍とは異なる値を設定することで、遅延量τkに応じたタイミングジッタを有するジッタ重畳信号を生成することができる。なお、タイミングジッタを有する信号とは、信号の各エッジのタイミングが、理想的なタイミングに対してばらつきを有する信号を指してよい。
【0022】
例えば、ジッタ周波数f(=2fOUT/(n+1))、ジッタ振幅Aのサイン波のタイミングジッタを、ジッタ重畳信号に印加する場合、k番目の遅延回路10に設定すべき遅延量τkは、次式で与えられる。遅延設定部30は、下式に応じて複数の遅延回路10の遅延量を設定してよい。
【数1】

ただし、foutは、ジッタ重畳信号の周波数を示し、fout=1/2TOUTである。
【0023】
遅延設定部30は、それぞれの遅延回路10に、所定の遅延量を予め設定する。なお、それぞれの遅延回路10における遅延量が、当該所定の遅延量となるように、ジッタ印加回路100が予め設計されている場合、ジッタ印加回路100は、遅延設定部30を備えなくともよい。
【0024】
遅延設定部30は、それぞれの遅延回路10に、ジッタ重畳信号の各エッジに印加すべきタイミングジッタに応じた遅延量をそれぞれ設定してよい。例えば遅延設定部30は、それぞれの遅延回路10の遅延量として、ジッタ重畳信号が有するべき平均周期TOUTの整数倍に、ジッタ重畳信号の各エッジが有するべきタイミングジッタの値を加減算した値を設定してよい。
【0025】
それぞれの遅延回路10における遅延量が、ジッタ重畳信号において対応するエッジのタイミングとなるので、ジッタ重畳信号のk番目のエッジは、τk−k・TOUTのタイミングジッタを有することになる。本例の遅延設定部30は、ジッタ印加回路100がジッタ重畳信号を生成している間、遅延回路10における遅延量を固定する。
【0026】
図2は、図1に示したジッタ印加回路100の動作例を示すタイミングチャートである。本例では、5個の遅延回路10を備えるジッタ印加回路100の動作を説明する。また、基準信号CLK0として、予め設定された時間間隔TINで論理値が繰り返し反転する信号を用いて説明する。
【0027】
1個目の遅延回路10−1は、基準信号CLK0を、遅延量τ1で遅延させて出力する。遅延量τ1は、生成すべきジッタ重畳信号OCLK5の平均周期(または、平均パルス幅、以下同じ)TOUTに、所定のジッタ値を加減算した値であってよい。
【0028】
なお、遅延設定部30は、基準信号CLK0のパルス幅(ビット持続時間)TINを、遅延回路10の並列数+1で除算することで、ジッタ重畳信号OCLK5の平均周期TOUTを求めてよい。そして、遅延設定部30には、印加すべきジッタの波形データが与えられてよい。遅延設定部30は、当該平均周期TOUTおよび波形データに基づいて、それぞれの遅延回路10における遅延量を設定してよい。
【0029】
2個目の遅延回路10−2は、基準信号CLK0を、遅延量τ2で遅延させて出力する。遅延量τ2は、ジッタ重畳信号OCLK5の平均周期TOUTの2倍に、所定のジッタ値を加減算した値であってよい。また、遅延量τ2は、遅延量τ1とは異なる値であってよい。
【0030】
同様に、それぞれの遅延回路10において、ジッタ重畳信号OCLK5の平均周期TOUTの整数倍に所定のジッタ値を加減算した値で基準信号を遅延させる。これにより、図2に示すように、信号生成部20には、生成すべきジッタ重畳信号の各エッジタイミングを示す複数の信号が入力される。信号生成部20は、各遅延回路10の遅延時間に応じた時間間隔τ1、τ2、τ3、τ4、τ5で論理値が順次反転する信号を生成する。
【0031】
また、複数の遅延回路10における遅延量の最大値(τ5)を、基準信号のパルス幅TINより小さくすることで、基準信号のパルス幅TINの期間毎に、所定のパターンのジッタが繰り返し印加されたジッタ重畳信号を容易に生成することができる。この場合、信号生成部20は、基準信号の1ビット毎に、ジッタ重畳信号の複数のビットを生成する。
【0032】
複数の遅延回路10は、基準信号の1ビット内で生成されるジッタ重畳信号の複数のエッジと対応して設けられる。それぞれの遅延回路10における遅延量は、対応するエッジのタイミングを規定する。
【0033】
本例では図2に示すように、エッジタイミングが0、τ1、τ2、τ3、τ4、τ5となる波形が、基準信号のパルス幅TINの期間毎に繰り返されるジッタ重畳信号を生成することができる。そして、本例のジッタ印加回路100では、遅延回路10における遅延時間を動的に変化させずにジッタを生成するので、高周波数のジッタを容易に生成することができる。
【0034】
なお、本例のジッタ印加回路100では、基準信号のパルス幅TIN毎に、ジッタのパターンが繰り返されるので、生成されるジッタの周波数は、基準信号のビットレート(1/TIN)の整数倍と略等しい。
【0035】
図3は、ジッタ印加回路100の他の構成例を示す図である。本例のジッタ印加回路100は、図1に関連して説明したジッタ印加回路100の構成に加え、基準周期制御部40および選択部12を更に備える。また、ジッタ印加回路100は、基準周期制御部40および選択部12のいずれかを備えない構成であってもよい。
【0036】
図2に関連して説明したように、複数の遅延回路10における最大の遅延量は、基準信号CLK0のパルス幅より小さいことが好ましい。この場合、ジッタ重畳信号に印加されるジッタの周期は、基準信号CLK0のパルス幅(の整数分の1)と等しくなる。基準周期制御部40は、ジッタ重畳信号に印加すべきジッタの周期に応じて、複数の遅延回路10に与える基準信号CLK0のパルス幅を制御してよい。
【0037】
また、図2に関連して説明したように、ジッタ重畳信号の平均周期(平均ビット持続時間)は、基準信号のパルス幅を、遅延回路10の並列数nに1を加算した値で除算した値となる。選択部12は、ジッタ重畳信号が有するべき平均周期に応じて、複数の遅延回路10の出力信号CLK(k)のうち、信号生成部20に供給する信号を複数個選択する。例えば、基準信号のパルス幅の1/aを平均パルス幅とするジッタ重畳信号を生成する場合、選択部12は、基準信号CLK0と、遅延回路10の出力信号CLK1からCLK(a−1)とを選択して、信号生成部20に供給する。
【0038】
図4は、図3に示したジッタ印加回路100の動作例を示すタイミングチャートである。本例のジッタ印加回路100は、自己の平均周期がTIN/4であり、印加されるジッタの周波数がTINのジッタ重畳信号を生成する。基準周期制御部40は、基準信号CLK0の周期(パルス幅)がTINとなるように、基準信号を制御する。
【0039】
また、本例ではa=4であるので、選択部12は、基準信号CLK0と、遅延回路10の出力信号CLK1からCLK3とを選択して、信号生成部20に供給する。そして、遅延設定部30が、1個目から3個目までの遅延回路10に対して、ジッタ重畳信号の平均周期TIN/4の整数倍に、印加すべきジッタ波形に応じたジッタ値をそれぞれ加減算して得られる遅延量τ1、τ2、τ3を設定する。印加すべきジッタ波形に応じたジッタ値とは、周期がTINのジッタ波形を、周期TIN/(n+1)のクロックで順次サンプリングした値であってよい(但し、nは選択される遅延回路10の並列数)。このような設定により、図4に示すように、自己の平均周期がTIN/4であり、印加されるジッタの周期がTINのジッタ重畳信号を生成することができる。
【0040】
図5は、図3に示したジッタ印加回路100の他の動作例を示すタイミングチャートである。図4に関連して説明した例では、選択部12は、偶数個の信号を信号生成部20に供給した。本例の選択部12は、奇数個の信号を信号生成部20に供給する。
【0041】
この場合、基準信号CLK0のエッジ前後に対応するジッタ重畳信号の波形が反転する。例えば図5に示す例では、E0からE3の期間と、E3からE6の期間とで、ジッタ重畳信号の波形が反転する。選択部12は、ジッタ重畳信号の用途に応じて、偶数個または奇数個の信号を選択して信号生成部20に供給してよい。
【0042】
図6は、ジッタ印加回路100の他の構成例を示す図である。本例におけるジッタ印加回路100は、図1から図5に関連して説明したいずれかのジッタ印加回路100の構成に加え、パルス発生部24を更に備える。図6では、図1に示したジッタ印加回路100の構成に、パルス発生部24を追加した例を示す。
【0043】
パルス発生部24は、基準信号CLKINを受け取り、基準信号CLKINの立ち上がりエッジ毎に、所定のパルス幅のパルスを生成し、基準信号CLK0として出力する。パルス発生部24は、基準信号CLK0を、信号生成部20および複数の遅延回路10に並列に供給する。
【0044】
図7は、図6に示したジッタ印加回路100の動作例を示すタイミングチャートである。上述したように、パルス発生部24は、基準信号CLKINの立ち上がりエッジ毎に、所定のパルス幅のパルスを出力する。当該パルス幅は、複数の遅延回路10に設定される最小の遅延量よりも小さいことが好ましい。
【0045】
それぞれの遅延回路10は、パルス発生部24が出力するパルスを受け取り、それぞれ設定される遅延量τkで遅延させて出力する。これにより、図7に示すように、複数の遅延回路10における遅延量に応じたタイミングでパルスが配置されたジッタ重畳信号を生成することができる。
【0046】
なお、本例における信号生成部20は、入力される複数の信号の論理和を出力する論理和回路であってよい。複数の信号の論理和とは、いずれかの信号がH論理を示す場合にH論理となり、全ての信号がL論理を示す場合にL論理となる信号であってよい。遅延設定部30が、印加すべきタイミングジッタ波形に応じた遅延量を、それぞれの遅延回路10に対して予め設定することで、ジッタ重畳信号の各エッジにタイミングジッタを印加することができる。
【0047】
また、ジッタ印加回路100は、複数の遅延回路10および信号生成部20に、基準信号CLKINを入力するか、または、パルス発生部24が生成するパルスを入力するかを切り替える入力切替部を更に備えてよい。このような構成により、ジッタ印加回路100を、図1から図5に関連して説明したように動作させるか、または、図6および図7に関連して説明したように動作させるかを選択することができる。
【0048】
図8は、ジッタ印加回路100の他の構成例を示す図である。本例のジッタ印加回路100は、図1から図7に関連して説明したいずれかのジッタ印加回路100の構成に加え、低周波ジッタ印加部80を更に備える。図8では、図1に示したジッタ印加回路100に、低周波ジッタ印加部80を加えた構成を示す。
【0049】
低周波ジッタ印加部80は、複数の遅延回路10および信号生成部20において生成されるジッタの周波数より低周波数のジッタを基準信号に印加して、複数の遅延回路10および信号生成部20に入力する。低周波ジッタ印加部80は、例えば遅延量が動的に変化する可変遅延回路を用いて、基準信号に低周波ジッタを印加してよい。
【0050】
図9は、ジッタ印加回路100の他の構成例を示す図である。本例のジッタ印加回路100は、図1から図7に関連して説明したいずれかのジッタ印加回路100の構成に加え、低周波ジッタ印加部80を更に備える。図9では、図1に示したジッタ印加回路100に、低周波ジッタ印加部80を加えた構成を示す。
【0051】
本例の低周波ジッタ印加部80は、信号生成部20が出力するジッタ重畳信号に、図8に関連して説明した低周波ジッタを更に印加する。これらのような構成により、広帯域のジッタを容易に生成することができる。また、低周波ジッタ印加部80を備える代わりに、遅延設定部30が、それぞれの遅延回路10における遅延量を、基準信号の周波数より十分低い周波数で変化させてもよい。
【0052】
図10は、一つの実施形態に係るデータジッタ印加回路200の構成例を示す図である。データジッタ印加回路200は、データ信号にジッタを印加する回路であって、ジッタ印加回路100およびデータジッタ印加部110を備える。
【0053】
ジッタ印加回路100は、図1から図9に関連して説明したいずれかのジッタ印加回路100と同一であってよい。データジッタ印加部110は、ジッタ印加回路100からジッタ重畳信号を受け取り、ジッタ重畳信号の各エッジタイミングをビット境界とするデータ信号を生成する。このような構成により、データ信号にデータジッタを印加することができる。
【0054】
本例のデータジッタ印加部110は、複数のフリップフロップ112および排他的論理和回路114を有するLFSR(Linear Feedback Shift Register)である。複数のフリップフロップ112は、縦続接続され、ジッタ重畳信号を共通に受け取る。それぞれのフリップフロップ112は、入力されるデータを、ジッタ重畳信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのそれぞれまたは一方に応じて取り込み、後段のフリップフロップ112に供給する。
【0055】
また、排他的論理和回路114は、LFSRの生成多項式に応じて選択される、2つのフリップフロップ112の出力信号の排他的論理和を生成して、初段のフリップフロップ112に供給する。このような構成により、ジッタが印加された擬似ランダム(PRBS、Pseudo-Random Binary Sequence)データを生成することができる。
【0056】
図11は、データジッタ印加部110の他の構成例を示す図である。本例のデータジッタ印加部110は、パターンメモリ120およびフリップフロップ122を有する。パターンメモリ120は、データ信号が有するべき論理値パターンを予め格納する。
【0057】
フリップフロップ122は、パターンメモリ120が格納した論理値パターンを、ジッタ印加回路100から与えられるジッタ重畳信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジのそれぞれまたは一方に応じて取り込んで出力する。このような構成により、任意の論理値パターンを有するデータ信号に、ジッタを印加することができる。
【0058】
また、図10および図11に示した構成に代えて、図1から図9に関連して説明したいずれかのジッタ印加回路100を用いて、ジッタが印加されたデータ信号を生成することもできる。
【0059】
図12は、データ信号にジッタを印加するジッタ印加回路100の動作例を示すタイミングチャートである。本例では、論理値パターン"11101000"が繰り返されるデータ信号に、ジッタを印加する例を説明する。この場合、基準周期制御部40は、データ信号の1ビット分の時間に、繰り返される論理値パターンのビット数を乗算した値と略等しい周期の基準信号を生成してよい。
【0060】
また、選択部12は、繰り返される論理値パターン"11101000"においてデータが遷移する回数に応じた個数の信号を信号生成部20に供給する。本例では、繰り返しの論理値パターン"11101000"において、論理値が3回遷移するので、選択部12は、基準信号CLK0と、出力信号CLK1からCLK3とを選択して、信号生成部20に供給する。
【0061】
遅延設定部30は、ジッタ重畳信号が有するべき論理値パターンにおいて、同一の論理値が連続するビット数に更に基づいて、それぞれの遅延回路10の遅延量を設定する。例えば、本例のジッタ重畳信号が有するべき、繰り返しの論理値パターン"11101000"は、まず論理値"1"が3ビット連続する。このため、遅延設定部30は、1個目の遅延回路10−1の遅延量τ1として、ジッタ重畳信号における3ビット分の時間(ジッタ重畳信号の平均周期の3倍)に、印加すべきジッタ値を加減算した値を設定する。
【0062】
次に、論理値パターン"11101000"では、論理値"0"が1ビット存在する。このため、遅延設定部30は、2個目の遅延回路10−2の遅延量τ2として、遅延量τ1およびジッタ重畳信号における1ビット分の時間の和に、印加すべきジッタ値を加減算した値を設定する。
【0063】
同様に、遅延設定部30は、3個目の遅延回路10−3の遅延量τ3として、遅延量τ2およびジッタ重畳信号における1ビット分の時間の和に、印加すべきジッタ値を加減算した値を設定する。このような処理により、ジッタ印加回路100を用いて、ジッタが印加されたデータ信号を生成することができる。
【0064】
図13は、ジッタ印加回路100の他の構成例を示す図である。本例のジッタ印加回路100は、図1から図12に関連して説明したいずれかのジッタ印加回路100の構成に加え、遅延量算出部60、切替部70、スイッチ16、および、スイッチ18を更に備え、各遅延回路10における遅延量を測定する。図13では、図3に関連して説明したジッタ印加回路100に、遅延量算出部60、切替部70、スイッチ16、および、スイッチ18を加えた構成を示す。
【0065】
切替部70は、それぞれの遅延回路10の遅延量を測定する場合に、それぞれの遅延回路10の出力信号が、当該遅延回路10の入力に帰還されるループを形成するように、信号の伝送経路を切り替える。本例では、切替部70は、それぞれの遅延回路10に対応して設けられた選択部12、および、スイッチ18と協働して当該ループを形成する。
【0066】
本例の切替部70は、信号生成部20の後段に設けられ、それぞれの遅延回路10の遅延量を測定する場合に、信号生成部20が出力する信号をスイッチ18を介して、それぞれの遅延回路10に入力する。そして、選択部12が、遅延量を測定すべき遅延回路10の出力信号を信号生成部20に供給して、他の遅延回路10の出力信号を信号生成部20に供給しないことにより、当該遅延回路10の出力信号が、当該遅延回路10の入力に帰還されるループを形成する。
【0067】
スイッチ18は、各遅延回路10に、基準信号を供給するか、切替部70からの帰還信号を供給するかを選択する。スイッチ18は、ジッタ重畳信号を生成する場合には基準信号を選択して、各遅延回路10の遅延量を測定する場合には帰還信号を選択する。
【0068】
また、スイッチ16は、各遅延回路10の遅延量を測定する場合に、信号生成部20の一つの入力に、論理値Hを供給する。これにより、信号生成部20には、測定対象の遅延回路10からの信号と、論理値Hとが入力されることとなる。つまり、各遅延回路10の遅延量を測定する場合、信号生成部20は、測定対象の遅延回路10からの信号を反転して出力する。
【0069】
遅延量算出部60は、切替部70、スイッチ18、測定対象の遅延回路10、選択部12、および、信号生成部20が形成するループを伝送する信号の周期に基づいて、当該遅延回路10の遅延量を算出する。例えば遅延量算出部60は、第3の切替部70−3から第1の切替部70−1に伝送する信号の周期を計測してよい。また、遅延量算出部60は、当該ループに一つのパルスを入力して、当該パルスが当該ループを周回する周期を計測してよい。当該周期が、遅延回路10における遅延量に相当する。
【0070】
遅延設定部30は、遅延量算出部60が算出した遅延量に更に基づいて、それぞれの遅延回路10における遅延量を設定する。選択部12は、それぞれの遅延回路10の出力信号を順次選択して、遅延量算出部60は、それぞれの遅延回路10における遅延量を、順次測定してよい。このような構成により、ジッタ重畳信号に印加するジッタの波形を精度よく調整することができる。
【0071】
図14は、一つの実施形態に係る試験装置300の構成例を、被試験デバイス400と併せて示す図である。試験装置300は、半導体回路等の被試験デバイス400を試験する装置であって、ジッタ印加回路100、試験信号発生部310、および、測定部340を備える。
【0072】
ジッタ印加回路100は、図1から図13に関連して説明したいずれかのジッタ印加回路100と同一であってよい。上述したように、ジッタ印加回路100は、高周波のジッタを有するジッタ重畳信号を生成することができる。
【0073】
試験信号発生部310は、ジッタ重畳信号に基づいて試験信号を生成して、被試験デバイス400に供給する。例えば試験信号発生部310は、ジッタ重畳信号をクロックとして動作して、試験信号を生成してよい。本例の試験信号発生部310は、パターン発生部320および等化器330を有する。
【0074】
パターン発生部320は、予め定められた論理パターンを有しており、且つ、ジッタ重畳信号の各エッジをビット境界とする試験信号を生成する。このような構成により、高周波のジッタを有する試験信号を生成することができる。等化器330は、試験信号発生部310から被試験デバイス400までの伝送損失に応じて、試験信号の波形を予め補償する。
【0075】
測定部340は、被試験デバイス400が試験信号に応じて出力する応答信号を測定することで、被試験デバイス400の良否を判定する。例えば測定部340は、応答信号の論理パターンが、所定の期待値パターンと一致するか否かにより、被試験デバイス400の良否を判定してよい。
【0076】
ジッタ印加回路100が生成するジッタの周波数および振幅を調整することで、被試験デバイス400のジッタ耐力を試験することができる。例えば、ジッタ印加回路100が、被試験デバイス400のジッタ耐力の仕様により定まる周波数および振幅のジッタを生成することで、被試験デバイス400がジッタ耐力の仕様を満たすか否かを試験することができる。また、高周波のジッタを有する試験信号を用いて被試験デバイス400を試験することができる。
【0077】
図15は、パターン発生部320および測定部340の構成例を示す図である。本例のパターン発生部320は、リニアフィードバックシフトレジスタ(LFSR)を用いて、擬似ランダム系列(PRBS)の論理パターンを有する試験信号を生成する。パターン発生部320は、複数のフリップフロップ322および排他的論理和回路324を有する。
【0078】
それぞれのフリップフロップ322は、ジッタ印加回路100からジッタ重畳信号を並列に受け取り、前段のフリップフロップ322が出力する信号を、ジッタ重畳信号の各エッジに応じて取り込んで出力する。ただし、初段のフリップフロップ322は、排他的論理和回路324が出力する信号を、ジッタ重畳信号に応じて取り込む。また、ジッタ印加回路100が、図6に関連して説明したようにパルス発生部24を備える場合、それぞれのフリップフロップ322は、ジッタ重畳信号の立ち上がりエッジに応じて動作してよい。
【0079】
排他的論理和回路324は、LFSRの生成多項式に応じて選択されるフリップフロップ322が出力する信号の排他的論理和を、試験信号として出力する。このような構成により、ジッタ重畳信号に応じたジッタを有する、擬似ランダム系列の試験信号を生成することができる。
【0080】
測定部340は、パターン発生部320と同一構成のリニアフィードバックシフトレジスタを用いて、期待値パターンを生成する。測定部340は、複数のフリップフロップ342、排他的論理和回路344、および、比較部346を有する。
【0081】
複数のフリップフロップ342および排他的論理和回路344は、複数のフリップフロップ322および排他的論理和回路324と同一の機能および構成を有してよい。ただし、それぞれのフリップフロップ342は、ジッタが印加されていないクロック信号に応じて動作する。また、初段のフリップフロップ342は、被試験デバイス400の応答信号をクロック信号に応じて取り込む。このような構成により、排他的論理和回路344は、被試験デバイス400の応答信号が示すべき論理値を順次生成することができる。
【0082】
比較部346は、被試験デバイス400の応答信号の論理値と、排他的論理和回路344が出力する信号の論理値とを比較し、一致したか否かを示すエラー信号を出力する。また、比較部346において、論理値の不一致が生じる割合を計測することで、被試験デバイス400のビット誤り率を計測してもよい。
【0083】
図16は、一つの実施形態に係る電子デバイス500の構成例を示す図である。電子デバイス500は、例えば入力信号に応じた出力信号を出力する、半導体チップ等のデバイスであってよい。電子デバイス500は、等化器520、自己診断部510、マルチプレクサ530、および、動作回路540を備える。
【0084】
等化器520は、入力信号の伝送経路における信号損失に応じて、入力信号の波形を補償する。マルチプレクサ530は、電子デバイス500が通常動作する場合に、入力信号を選択して動作回路540に供給する。
【0085】
自己診断部510は、電子デバイス500が自己診断を行う場合に、動作回路540を試験する。自己診断部510は、ジッタ印加回路100、試験信号発生部310、および、測定部340を有する。ジッタ印加回路100、試験信号発生部310、および、測定部340は、図14において同一の符号を付して説明した構成要素と同一の機能および構成を有してよい。また、ジッタ印加回路100は、外部から与えられる入力信号を、基準信号として受け取ってよい。
【0086】
マルチプレクサ530は、電子デバイス500が自己診断を行う場合に、自己診断部510が生成した試験信号を選択して動作回路540に供給する。測定部340は、動作回路540の応答信号に基づいて、動作回路540の良否を判定する。
【0087】
このような構成により、電子デバイス500は、動作回路540の良否を自己診断することができる。また、ジッタ印加回路100により高周波のジッタを生成することができるので、高周波のジッタを有する試験信号を用いて、動作回路540を試験することができる。
【0088】
図17は、試験装置300の動作例を示すフローチャートである。本例の試験装置300は、被試験デバイス400の動作帯域内における低周波ジッタを用いた試験と、動作帯域外における高周波ジッタを用いた試験を行う。
【0089】
まず試験装置300は、被試験デバイス400の動作帯域内における低周波ジッタを用いて被試験デバイス400を試験する(S600)。この場合、ジッタ印加回路100が、被試験デバイス400の動作帯域内の周波数を有するジッタが印加された第1のジッタ重畳信号を生成する。例えば、被試験デバイス400がPLL回路を有する場合、ジッタ印加回路100は、PLL回路のループ帯域内における周波数のジッタを有するジッタ重畳信号を生成する。
【0090】
また、試験信号発生部310は、第1のジッタ重畳信号に応じた第1の試験信号を被試験デバイス400に供給する。次に測定部340は、第1の試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する第1の応答信号に応じて被試験デバイス400の良否を判定する。具体的には、測定部340は、第1の応答信号にビット誤りが生じたか否かを判定する(S602)。ビット誤りが生じた場合、測定部340は被試験デバイス400を不良品と判定して(S610)、試験を終了する。
【0091】
低周波ジッタ試験でビット誤りが生じず、低周波ジッタ試験において被試験デバイス400が良品と判定された場合、試験装置300は、被試験デバイス400の動作帯域外における高周波ジッタを用いて被試験デバイスを試験する(S604)。この場合、ジッタ印加回路100が、被試験デバイス400の動作帯域外における周波数のジッタを有する第2のジッタ重畳信号を生成する。つまり、ジッタ印加回路100は、第1のジッタ重畳信号と、第2のジッタ重畳信号とを順次生成する。
【0092】
また、試験信号発生部310は、第2のジッタ重畳信号に応じた第2の試験信号を被試験デバイス400に供給する。次に測定部340は、第2の試験信号に応じて被試験デバイス400が出力する第2の応答信号に応じて被試験デバイス400の良否を判定する。具体的には測定部340は、被試験デバイス400の応答信号にビット誤りが生じたか否かを判定する(S606)。ビット誤りが生じた場合、測定部340は被試験デバイス400を不良品と判定して(S610)、試験を終了する。また、ビット誤りが生じなかった場合、測定部340は被試験デバイス400を良品と判定して(S608)、試験を終了する。
【0093】
上述したように、試験装置300は高周波のジッタを容易に生成することができるので、被試験デバイス400の帯域外におけるジッタ耐力の試験も容易に行うことができる。このため、被試験デバイス400の良否を精度よく判定することができる。
【0094】
図18は、試験装置300の他の構成例を示す図である。本例の試験装置300は、パターン発生器350、等化器330、および、測定部340を備える。等化器330は、図14に関連して説明した等化器330と同一であってよい。また、測定部340は、被試験デバイス400の応答信号を測定して、被試験デバイス400の良否を判定する。
【0095】
パターン発生器350は、予め定められた論理パターンを有し、且つ、ジッタを有する試験信号を生成して、被試験デバイス400に供給する。パターン発生器350は、図12に関連して説明したジッタ印加回路100を有しており、これらのジッタ印加回路100が生成したデータ信号を、試験信号として出力してよい。
【0096】
図19は、電子デバイス500の他の構成例を示す図である。本例の電子デバイス500は、等化器520、パターン発生器350、測定部340、マルチプレクサ530、および、動作回路540を備える。等化器520、マルチプレクサ530、および、動作回路540は、図16に示した等化器520、マルチプレクサ530、および、動作回路540と同一であってよい。
【0097】
また、パターン発生器350および測定部340は、図18に関連して説明したパターン発生器350および測定部340と同一であってよい。また、パターン発生器350は、外部から基準信号を受け取ってよい。
【0098】
以上、本発明の(一)側面を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0099】
上記説明から明らかなように、本発明の実施形態によれば、高周波のタイミングジッタを有するジッタ重畳信号を容易に生成することができる。また、当該ジッタ重畳信号を用いて被試験デバイスまたは動作回路を試験することで、被試験デバイスまたは動作回路の良否を精度よく判定することができる。
【0100】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0101】
10・・・遅延回路、12・・・選択部、16、18・・・スイッチ、20・・・信号生成部、24・・・パルス発生部、30・・・遅延設定部、40・・・基準周期制御部、60・・・遅延量算出部、70・・・切替部、80・・・低周波ジッタ印加部、100・・・ジッタ印加回路、110・・・データジッタ印加部、112、122、322、342・・・フリップフロップ、114、324、344・・・排他的論理和回路、120・・・パターンメモリ、200・・・データジッタ印加回路、300・・・試験装置、310・・・試験信号発生部、320・・・パターン発生部、330・・・等化器、340・・・測定部、346・・・比較部、350・・・パターン発生器、400・・・被試験デバイス、500・・・電子デバイス、510・・・自己診断部、520・・・等化器、530・・・マルチプレクサ、540・・・動作回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジッタを有するジッタ重畳信号を生成するジッタ印加回路であって、
与えられる基準信号を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる複数の遅延回路と、
それぞれの前記遅延回路が出力する信号のタイミングに応じて、前記ジッタ重畳信号のそれぞれのエッジを生成する信号生成部と
を備え、
少なくとも一つの前記遅延回路の遅延量が、前記ジッタ重畳信号が有するべき平均周期の整数倍とは異なる値に設定されるジッタ印加回路。
【請求項2】
それぞれの前記遅延回路に、前記ジッタ重畳信号の各エッジに印加すべきジッタに応じた遅延量をそれぞれ設定する遅延設定部を更に備える
請求項1に記載のジッタ印加回路。
【請求項3】
それぞれの前記遅延回路が生成する遅延量のうち、最大の遅延量は、前記基準信号のビットレートより小さい
請求項2に記載のジッタ印加回路。
【請求項4】
前記信号生成部は、前記基準信号の1ビットレート毎に、前記ジッタ重畳信号の複数のエッジを生成し、
前記複数の遅延回路は、前記基準信号の1ビットレート内で生成される前記ジッタ重畳信号の複数のエッジと対応して設けられ、
前記遅延設定部は、それぞれの前記遅延回路に対して、前記ジッタ重畳信号の平均周期の整数倍に、対応する前記ジッタ重畳信号のビットが有するべきタイミングジッタを加算した遅延量を設定する
請求項3に記載のジッタ印加回路。
【請求項5】
前記信号生成部は、複数の前記遅延回路が出力する信号の排他的論理和を、前記ジッタ重畳信号として出力する排他的論理和回路を有する
請求項1に記載のジッタ印加回路。
【請求項6】
前記ジッタ重畳信号に印加すべきジッタの周期に応じて、前記複数の遅延回路に与える前記基準信号の周期を制御する基準周期制御部を更に備える
請求項5に記載のジッタ印加回路。
【請求項7】
前記ジッタ重畳信号が有するべき平均周期に応じて、それぞれの前記遅延回路が出力する信号を、前記排他的論理和回路に入力するか否かをそれぞれ選択する選択部を更に備える
請求項5に記載のジッタ印加回路。
【請求項8】
前記ジッタ重畳信号の各エッジタイミングをビット境界とするデータ信号を生成して、データジッタを前記データ信号に印加するデータジッタ印加部を更に備える
請求項1に記載のジッタ印加回路。
【請求項9】
前記遅延設定部は、前記ジッタ重畳信号が有するべき論理値パターンにおいて、同一の論理値が連続するビット数に更に基づいて、それぞれの前記遅延回路の遅延量を設定する
請求項2に記載のジッタ印加回路。
【請求項10】
それぞれの前記遅延回路の遅延量を測定する場合に、それぞれの前記遅延回路の出力信号が、当該遅延回路の入力に帰還されるループを形成する切替部と、
前記ループを伝送する信号の周期に基づいて、前記遅延回路の遅延量を算出する遅延量算出部と
を更に備え、
前記遅延設定部は、前記遅延量算出部が算出した前記遅延量に更に基づいて、それぞれの前記遅延回路における遅延量を設定する
請求項2に記載のジッタ印加回路。
【請求項11】
前記基準信号に、前記複数の遅延回路および前記信号生成部において印加されるジッタの周波数より低周波数のジッタを印加して、前記複数の遅延回路に入力する低周波ジッタ印加部を更に備える
請求項1に記載のジッタ印加回路。
【請求項12】
前記ジッタ重畳信号に、前記複数の遅延回路および前記信号生成部において印加されるジッタの周波数より低周波数のジッタを印加する低周波ジッタ印加部を更に備える
請求項1に記載のジッタ印加回路。
【請求項13】
前記遅延設定部は、それぞれの前記遅延回路における遅延量を、前記ジッタ重畳信号に印加されるジッタの周波数より低周波数で変化させる
請求項2に記載のジッタ印加回路。
【請求項14】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
ジッタを有するジッタ重畳信号を生成するジッタ印加回路と、
前記ジッタ重畳信号に基づいて試験信号を生成し、前記被試験デバイスに供給する試験信号発生部と、
前記被試験デバイスが、前記試験信号に応じて出力する応答信号を測定し、前記被試験デバイスの良否を判定する測定部と
を備え、
前記ジッタ印加回路は、
与えられる基準信号を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる複数の遅延回路と、
それぞれの前記遅延回路が出力する信号のタイミングに応じて、前記ジッタ重畳信号のそれぞれのエッジを生成する信号生成部と
を備え、
少なくとも一つの前記遅延回路の遅延量が、前記ジッタ重畳信号が有するべき平均周期の整数倍とは異なる値に設定される試験装置。
【請求項15】
前記ジッタ印加回路は、前記被試験デバイスの帯域内の周波数を有するジッタを印加した第1の前記ジッタ重畳信号と、前記被試験デバイスの帯域外の周波数を有するジッタを印加した第2の前記ジッタ重畳信号とを順次生成し、
前記試験信号発生部および前記測定部は、前記第1のジッタ重畳信号に応じた第1の試験信号を前記被試験デバイスに供給し、前記第1の試験信号に応じて前記被試験デバイスが出力する第1の前記応答信号に応じて前記被試験デバイスの良否を判定し、当該判定結果が良である場合に、前記第2のジッタ重畳信号に応じた第2の前記試験信号を用いて前記被試験デバイスを試験する
請求項14に記載の試験装置。
【請求項16】
動作回路と、前記動作回路を試験する自己診断部とを内蔵する電子デバイスであって、
前記自己診断部は、
ジッタを有するジッタ重畳信号を生成するジッタ印加回路と、
前記ジッタ重畳信号に基づいて試験信号を生成し、前記動作回路に供給する試験信号発生部と、
前記動作回路が、前記試験信号に応じて出力する応答信号を測定し、前記動作回路の良否を判定する測定部と
を有し、
前記ジッタ印加回路は、
与えられる基準信号を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる複数の遅延回路と、
それぞれの前記遅延回路が出力する信号のタイミングに応じて、前記ジッタ重畳信号のそれぞれのエッジを生成する信号生成部と
を含み、
少なくとも一つの前記遅延回路の遅延量が、前記ジッタ重畳信号が有するべき平均周期の整数倍とは異なる値に設定される電子デバイス。
【請求項17】
予め定められた論理パターンを有し、且つ、ジッタを有するデータ信号を生成するパターン発生器であって、
与えられる基準信号を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる複数の遅延回路と、
それぞれの前記遅延回路が出力する信号のタイミングに応じて、前記データ信号のそれぞれのエッジを生成する信号生成部と、
前記データ信号が有するべき論理パターンにおいて論理値が遷移するタイミングに応じて、それぞれの前記遅延回路に、前記データ信号の1ビット分の時間の何倍の遅延量を設定すべきかを決定し、決定したそれぞれの遅延量に、印加すべきジッタ値を加減算した値を、それぞれの前記遅延回路に設定する遅延設定部と
を備えるパターン発生器。
【請求項18】
被試験デバイスを試験する試験装置であって、
予め定められた論理パターンを有し、且つ、ジッタを有する試験信号を生成して、前記被試験デバイスに供給するパターン発生器と、
前記被試験デバイスが、前記試験信号に応じて出力する応答信号を測定し、前記被試験デバイスの良否を判定する測定部と
を備え、
前記パターン発生器は、
与えられる基準信号を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる複数の遅延回路と、
それぞれの前記遅延回路が出力する信号のタイミングに応じて、前記試験信号のそれぞれのエッジを生成する信号生成部と、
前記試験信号が有するべき論理パターンにおいて論理値が遷移するタイミングに応じて、それぞれの前記遅延回路に、前記試験信号の1ビット分の時間の何倍の遅延量を設定すべきかを決定し、決定したそれぞれの遅延量に、印加すべきジッタ値を加減算した値を、それぞれの前記遅延回路に設定する遅延設定部と
を有する試験装置。
【請求項19】
動作回路と、前記動作回路を試験する自己診断部とを内蔵する電子デバイスであって、
前記自己診断部は、
予め定められた論理パターンを有し、且つ、ジッタを有する試験信号を生成して、前記動作回路に供給するパターン発生器と、
前記動作回路が、前記試験信号に応じて出力する応答信号を測定し、前記動作回路の良否を判定する測定部と
を有し、
前記パターン発生器は、
与えられる基準信号を並列に受け取り、それぞれ予め設定される遅延量で遅延させる複数の遅延回路と、
それぞれの前記遅延回路が出力する信号のタイミングに応じて、前記試験信号のそれぞれのエッジを生成する信号生成部と、
前記試験信号が有するべき論理パターンにおいて論理値が遷移するタイミングに応じて、それぞれの前記遅延回路に、前記試験信号の1ビット分の時間の何倍の遅延量を設定すべきかを決定し、決定したそれぞれの遅延量に、印加すべきジッタ値を加減算した値を、それぞれの前記遅延回路に設定する遅延設定部と
を有する電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−180732(P2009−180732A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20430(P2009−20430)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】