説明

スクライブ装置

【課題】 装置サイズが大型化することなく、回転刃の刃先にかかる荷重の微調整ができると共に、スクライブ工程でパーティクルが発生した場合であっても、基板の表面へのパーティクルの付着を防止することができるスクライブ装置を提供するものである。
【解決手段】 スクライブ装置100は、基板200に対向させる開口12aを有し、回転刃1の刃先1aが当該開口12aから露出する位置に当該回転刃1を内包する筒状の吸込口部12と、吸込口部12に連通され、吸込口部12を陰圧にする減圧装置70と、吸込口部12の内部の圧力を検出する第1の圧力検知部81と、第1の圧力検知部81の検出結果に基づいて吸込口部12の内部の圧力を調整する第1の圧力制御部82と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板、シリコン(Si)若しくは窒化ガリウム(GaN)等の半導体ウェハ又は低温焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)基板などの脆性材料からなる基板(以下、単に「基板」と称す)に対して回転刃を圧接状態で転動し、当該基板に亀裂を形成するスクライブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスクライブ装置は、支点を中心に揺動可能に支持され、支点から離れた一端側にカッタを備えたアームと、アームの他端側の連結ブラケットにアームを揺動させる方向の力を加えることで、カッタにガラス板の表面に対する押し付け力を付与する空圧シリンダとを備え、前記支点からカッタまでの距離をA、支点から連結ブラケットまでの距離をBとした場合、A<Bに設定したものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−196211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスクライブ装置は、支点から連結ブラケットまでの距離を支点からカッタまでの距離よりも大きく設定したものであるために、アームのサイズが大きくなり、装置サイズが大型化してしまうという課題がある。
また、従来のスクライブ装置は、スクライブ線の刻設の工程での切粉の発生を抑制することができるのであるが、切粉の発生を防止するものではなく、切粉が発生した場合に、この切粉を除去する手段がない。このため、従来のスクライブ装置は、切粉のガラス板の表面への付着残留による不良品の発生及び製品品質の低下を防止することができないという課題がある。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、装置サイズが大型化することなく、回転刃の刃先にかかる荷重の微調整ができると共に、スクライブ工程で切粉が発生した場合であっても、基板の表面への切粉の付着を防止することができるスクライブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスクライブ装置においては、基板に対向させる開口を有し、回転刃の刃先が当該開口から露出する位置に当該回転刃を内包する筒状の吸込口部と、吸込口部に連通され、吸込口部を陰圧にする減圧部と、吸込口部の内部の圧力を検出する圧力検知部と、圧力検知部の検出結果に基づいて吸込口部の内部の圧力を調整する圧力制御部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
開示のスクライブ装置は、装置サイズが大型化することなく、回転刃の刃先にかかる荷重(回転刃の重力、回転刃が基板から受ける垂直抗力、回転刃の軸が接触部分から受ける抗力、吸込口部の開口から流れ込む気体が及ぼす浮力等の回転刃全体に加わる合力)の微調整ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係るスクライブ装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すスクライブヘッドのZ軸方向の位置調整機構を説明するための説明図である。
【図3】(a)は図1に示す吸込口部の概略構成を示す正面図であり、(b)は図3(a)に示す吸込口部の断面図であり、(c)は図3(a)に示す吸込口部の底面図であり、(d)は図3(b)に示す吸込口部から回転刃を取り外した状態を示す断面図である。
【図4】(a)は図1に示す吸込口部の他の概略構成を示す正面図であり、(b)は図4(a)に示す吸込口部の断面図であり、(c)は図4(a)に示す吸込口部の底面図であり、(d)は図4(a)に示す吸込口部に異なる溝を形成した底面図である。
【図5】第2の実施形態に係るスクライブヘッドのZ軸方向の位置調整機構を説明するための説明図である。
【図6】(a)は第3の実施形態に係る吸込口部から回転刃を取り外した状態を示す断面図であり、(b)は図6(a)に示す吸込口部における回転刃の軸が長穴の上端にある状態を示す断面図であり、(c)は図6(a)に示す吸込口部における回転刃の軸が長穴の下端にある状態を示す断面図である。
【図7】その他の実施形態に係るスクライブヘッドのZ軸方向の位置調整機構を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本発明の第1の実施形態)
スクライブ装置100は、図1に示すように、水平面(X−Y面)内のY軸方向に移動可能であり、モータ(不図示)により水平面内でY軸方向に対して90度回転可能なステージ20と、ステージ20上に載置されて吸着用チャック(不図示)によりステージ20に保持される基板200のアライメントマーク(不図示)を撮像する2台のCCD(charge-coupled device)カメラ30と、ステージ20を介して対向配置される支持部41と、支持部41に支持されてステージ20を跨りX軸方向に延在するブリッジ部42と、モータ43によりガイド44に沿ってX軸方向に移動可能にブリッジ部42に配設されるスクライブヘッド10と、を備える。
【0010】
スクライブヘッド10は、図2及び図3に示すように、ブリッジ部42に取付けられる板状の基台11と、基板200に対向させる開口12aを有し、回転刃1の刃先1aが当該開口12aから露出する位置に当該回転刃1を内包する筒状の吸込口部12と、基台11にレール11aを介して鉛直(Z軸)方向に摺動可能に取付けられ、吸込口部12を保持する保持部材13と、保持部材13の上方で基台11に保持され、後述する電空レギュレータ50に接続され、基板200及び吸込口部12間の間隔を変化させるエアシリンダ14と、を備えている。
【0011】
なお、本実施形態に係る吸込口部12は、図3に示すように、回転刃1の刃先1aが開口12aから露出する位置に回転刃1を軸支できるように、対向する一対の凹部12bを内側面12fに有し、凹部12bに嵌入された円柱状のピン2を回転刃1の中心の貫通孔1bに貫通させることにより、回転刃1を回転自在に保持する。また、吸込口部12は、導管61の端部に螺合する接続部12cが上端に配設され、導管61を介して捕捉部60に連通する。
【0012】
なお、吸込口部12の凹部12bは、有底穴に替えて貫通孔とし、この貫通孔に回転刃1のピン2を挿入した後に、この貫通孔とピン2との間隙を封止する構成であってもよい。この構成により、吸込口部12からのピン2の挿抜を可能にして、吸込口部12に装着した回転刃1から他の回転刃1への交換を容易にすることができる。
【0013】
捕捉部60は、回転刃1の転動により生じる基板200の欠け(チッピング、ファイバー)や刃先1aの削れ等によるパーティクルを捕捉する機構であり、導管61を介して吸込口部12から吸い込んだ気体が、内部で渦を巻き、このときの遠心力で重いパーティクルだけが内部に残り、気体だけを導管62から排出させる。
【0014】
なお、本実施形態に係る捕捉部60は、中空の略円柱状であり、吸込口部12に連通する導管61が一端面(上面)60aの周縁部を通り側面に沿って配設され、真空ポンプ等の減圧装置70に連通する導管62が他端面(底面)60bの略中心を通り捕捉部60の長手方向に沿って内部まで配設される。すなわち、減圧装置70は、導管62、捕捉部60及び導管61を介して、吸込口部12に連通され、吸込口部12の内部の圧力を外部に対して負圧にする(吸込口部12を陰圧にする)本発明に係る減圧部に相当する。
【0015】
また、捕捉部60の内部には、圧力センサ等の第1の圧力検知部81が配設され、第1の圧力検知部81は、捕捉部60(吸込口部12)の内部の圧力を検知して、その信号を第1の圧力制御部82に送信する。そして、第1の圧力制御部82は、第1の圧力検知部81からの入力信号と予め設定された信号との間に差圧がある場合に、減圧装置70を制御して予め設定された圧力に調整する。
【0016】
電空レギュレータ50は、負圧ポート52内の気体の排出及び供給を調整し、エアシリンダ14内の圧力を所定の圧力に制御する。
なお、本実施形態においては、排気口となる排気ポート53及び圧力を高めるポンプ等の加圧装置90に連通する供給ポート54がレギュレータ本体51の一端に配設され、負圧ポート52がレギュレータ本体51の他端に配設されている。また、レギュレータ本体51は、負圧ポート52が導管14aを介してエアシリンダ14に連通されている。なお、エアシリンダ14は、基板200及び吸込口部12の間隔を変化させる本発明に係る駆動部に相当するが、基板200及び吸込口部12の間隔を変化させることができるのであれば、エアシリンダ14に限られるものではない。
【0017】
レギュレータ本体51には、排気用電磁弁55及び供給用電磁弁56が配設され、排気用電磁弁55は、負圧ポート52内の気体の排出と排気停止とを切り換え、供給用電磁弁56は、負圧ポート52内への気体の供給と給気停止とを切り換える。
【0018】
負圧ポート52には、圧力センサ等の第2の圧力検知部57が配設され、第2の圧力検知部57は、負圧ポート52(エアシリンダ14)の内部の圧力を検知して、その信号を第2の圧力制御部58に送信する。そして、第2の圧力制御部58は、第2の圧力検知部57からの入力信号と予め設定された信号との間に差圧がある場合に、排気用電磁弁55及び供給用電磁弁56に制御信号を送信し、排気用電磁弁55及び供給用電磁弁56を開閉する。
【0019】
すなわち、第2の圧力制御部58は、負圧ポート52内の圧力が設定値より高い場合に、排気用電磁弁55を開いてエアシリンダ14内の気体を負圧ポート52を介して排気ポート53から排出させ、負圧ポート52内の圧力が設定値になると、排気用電磁弁55を閉じて気体の排出を停止させる。また、第2の圧力制御部58は、負圧ポート52内の圧力が設定値より低い場合に、供給用電磁弁56を開いて加圧装置90からの気体が負圧ポート52を介してエアシリンダ14に供給され、負圧ポート52内の圧力が設定値になると供給用電磁弁56を閉じて気体の供給を停止させる。
【0020】
なお、第2の圧力検知部57は、基板200及び吸込口部12の間隔を検出する本発明に係る間隔検知部に相当するが、基板200及び吸込口部12の間隔を検出することができるのであれば、圧力センサに限られるものではない。また、第2の圧力制御部58は、間隔検知部(第2の圧力検知部57)の検出結果に基づき、駆動部(エアシリンダ14)を駆動させて基板200及び吸込口部12の間隔を調整する本発明に係る間隔制御部に相当する。
【0021】
なお、本実施形態に係るスクライブ装置100は、初期状態で、排気用電磁弁55及び供給用電磁弁56を閉じており、まず、第2の圧力制御部58が、負圧ポート52(エアシリンダ14)内の圧力を制御して、基板200及び吸込口部12間の間隔を調整する。そして、スクライブ装置100は、第2の圧力制御部58が、第1の圧力制御部82に制御信号を送信し、第1の圧力制御部82が、第2の圧力制御部58の制御信号に基づき、捕捉部60(吸込口部12)内の圧力を制御して、回転刃1の刃先1aにかかる荷重を微調整する。
【0022】
つぎに、本実施形態に係るスクライブ装置100の処理動作について説明する。
まず、スクライブ装置100は、基板200に形成されたアライメントマーク(不図示)をCCDカメラ30により撮像し、水平面(X−Y面)内の基板200の位置をステージ20により調整する。
【0023】
そして、電空レギュレータ50の第2の圧力制御部58は、排気用電磁弁55及び供給用電磁弁56を閉じた状態から、供給用電磁弁56を開いて、負圧ポート52を介して加圧装置90からの気体をエアシリンダ14に供給させる。
【0024】
エアシリンダ14の内部の圧力が高まると、保持部材13(吸込口部12)がエアシリンダ14のピストン14bに押されて基台11のレール11aに沿って下方に移動する。
電空レギュレータ50の第2の圧力制御部58は、吸込口部12の取付けられた回転刃1の刃先1aと基板200とが接触する(負圧ポート52内の圧力が設定値になる)ことで、供給用電磁弁56を閉じてエアシリンダ14への気体の供給を停止させる。
【0025】
その後、第1の圧力制御部82は、捕捉部60を介して吸込口部12内の気体を減圧装置70により吸引させ、回転刃1の刃先1aにかかる荷重が所定の力(例えば、無荷重や回転刃1の自重以下の低荷重)になる(捕捉部60内の圧力が設定値になる)ように、減圧装置70による減圧量を調整する。
【0026】
そして、スクライブ装置100は、スクライブヘッド10に取付けた回転刃1の刃先1aを、エアシリンダ14の圧力制御及び吸込口部12の陰圧制御により、基板200の表面に所定の圧力で押圧した状態でX軸方向に移動させ、基板200の表面をX方向に沿ってスクライブ加工する。
【0027】
また、スクライブ装置100は、スクライブ加工により生じるパーティクルが、吸込口部12の開口12aから吸引され、導管61を介して捕捉部60に入り、捕捉部60の内部に残留することで、基板200の表面へのパーティクルの付着を防止する。
【0028】
そして、スクライブ装置100は、テーブルをY軸方向に所定ピッチで移動して、Y軸方向の各位置でのX軸方向に対するスクライブ加工を終了すると、ステージ20を90度回転させて、前述したX軸方向における動作と同様に、基板200の表面をY軸方向に沿ってスクライブ加工する。
【0029】
そして、テーブルをX軸方向に所定ピッチで移動して、X軸方向の各位置でのY軸方向に対するスクライブ加工を終了すると、第1の圧力制御部82は減圧装置70による吸引を停止させ、第2の圧力制御部58は排気用電磁弁55を開いて負圧ポート52を介してエアシリンダ14内の気体を排気ポート53から排出させる。
【0030】
エアシリンダ14の内部の圧力が低くなると、保持部材13(吸込口部12)がエアシリンダ14のピストン14bの上昇に追従して基台11のレール11aに沿って上方に移動し、回転刃1の刃先1aと基板200とが非接触になり、スクライブ装置100の処理を終了する。
【0031】
以上のように、本実施形態に係るスクライブ装置100は、吸込口部12の陰圧を制御して、回転刃1の刃先1aにかかる荷重を微調整することができ、基板200の仕様に応じたスクライブ圧によりスクライブ加工することができるという作用効果を奏する。
【0032】
また、本実施形態に係るスクライブ装置100は、吸込口部12からの吸引により、スクライブ工程でパーティクルが発生した場合であっても、基板200の表面へのパーティクルの付着を防止することができるという作用効果を奏する。
【0033】
なお、本実施形態に係る吸込口部12は、図3(b)に示すように、スクライブ方向に対して後方(紙面の左)側に回転刃1が存在しない空間を設け、回転刃1の転動により生じるパーティクルを後方で吸い上げ易くしているが、パーティクルを吸引できるのであれば、この外形に限られるものではない。
【0034】
また、吸込口部12は、図4に示すように、吸込口部12の開口12aを構成する底部が、底面12dに凹設した複数の溝12eを有し、複数の溝12eが、回転刃1を中心として時計回り(図4(c)参照)又は反時計回り(図4(d)参照)に各溝12eの方向を揃えてなる形状であってもよい。この形状により、吸込口部12の各溝12eから流れ込む気体が吸込口部12の内部で渦を巻き、パーティクルを吸い上げる力を高めることができる。
また、吸込口部12は、開口12a側から接続部12c側に向かう螺旋状の突起(不図示)を内側面12fに設け、吸込口部12の開口12aから流れ込む気体が螺旋状の突起に沿って吸込口部12の内部で渦を巻き、パーティクルを吸い上げる力を高めることができる。
【0035】
(本発明の第2の実施形態)
図5は第2の実施形態に係るスクライブヘッドのZ軸方向の位置調整機構を説明するための説明図である。図5において、図2と同じ符号は、同一又は相当部分を示し、その説明を省略する。
【0036】
本実施形態に係る第2の圧力制御部58は、第1の圧力制御部82の制御信号に基づいて、エアシリンダ14の内部の圧力を再調整する。
【0037】
なお、この第2の実施形態においては、第2の圧力制御部58が第1の圧力制御部82の制御信号に基づいてエアシリンダ14の内部の圧力を再調整するところのみが第1の実施形態と異なるところであり、エアシリンダ14の内部の圧力を再調整することによる作用効果以外は、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0038】
本実施形態に係るスクライブ装置100は、第1の圧力制御部82(減圧装置70)による吸込口部12の陰圧制御の他に、エアシリンダ14を制御することにより基板200及び吸込口部12間の間隔を可変にし、回転刃1の刃先1aにかかる荷重を調整するものである。
【0039】
すなわち、第2の圧力制御部58は、第1の圧力制御部82からの制御信号が入力されると、排気用電磁弁55を開いて、エアシリンダ14の内部の気体を排出し、エアシリンダ14内の圧力を減圧する。これにより、ピストン14bが上昇して、回転刃1の刃先1aが基板200に加える押圧力を減少させ、回転刃1の刃先1aが基板200から受ける反力を減少させる。
【0040】
なお、基板200及び吸込口部12間の間隔を広げることは、減圧装置70による減圧量が一定であれば、吸込口部12内の圧力を上げることになり、第2の圧力制御部58(エアシリンダ14)によっても吸込口部12の陰圧を制御できることになる。
【0041】
以上のように、本実施形態に係るスクライブ装置100は、基板200及び吸込口部12間の間隔並びに吸込口部12の陰圧を制御して、回転刃1の刃先1aにかかる荷重を微調整することができ、基板200の仕様に応じたスクライブ圧によりスクライブ加工することができるという作用効果を奏する。
【0042】
特に、本実施形態に係るスクライブ装置100は、回転刃1の刃先1aにかかる荷重を、無荷重や回転刃1の自重以下の低荷重にすることができ、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)の基板等の板厚の非常に薄い脆性材料基板や非常に脆弱な脆性材料基板からなる基板200に対応することができるという作用効果を奏する。
【0043】
(本発明の第3の実施形態)
図6(a)は第3の実施形態に係る吸込口部の回転刃を取り外した状態を示す断面図であり、図6(b)は図6(a)に示す吸込口部における回転刃の軸が長穴の上端にある状態を示す断面図であり、図6(c)は図6(a)に示す吸込口部における回転刃の軸が長穴の下端にある状態を示す断面図である。図6において、図3及び図4と同じ符号は、同一又は相当部分を示し、その説明を省略する。
【0044】
本実施形態に係る吸込口部12は、図6に示すように、対向する一対の長穴12gを内側面12fに有し、回転刃1(ピン2)は、基板200に対して鉛直(Z軸)方向に摺動可能に長穴12gに軸支される。
【0045】
なお、この第3の実施形態においては、吸込口部12の凹部12bが長穴12gであるところのみが第1の実施形態又は第2の実施形態と異なるところであり、後述する長穴12gによる作用効果以外は、第1の実施形態又は第2の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0046】
本実施形態に係るスクライブ装置100は、長穴12gにより、鉛直方向における回転刃1の軸支位置に遊びがあるために、回転刃1全体に加わる合力をつり合わせることが容易になり、回転刃1の刃先1aにかかる荷重を無荷重にすることができるという作用効果を奏する。
【0047】
また、本実施形態に係るスクライブ装置100は、エアシリンダ14により長穴12gの長さの範囲内に保持部材13(吸込口部12)を上昇又は下降させるのであれば、回転刃1と基板200とが常に接触し、スクライブ加工を行なうことができ、減圧装置70の減圧量を一定にした状態で、吸込口部12内の圧力を調整することもできる。
【0048】
(本発明のその他の実施形態)
図7はその他の実施形態に係るスクライブヘッドのZ軸方向の位置調整機構を説明するための説明図である。図7において、図2と同じ符号は、同一又は相当部分を示し、その説明を省略する。
【0049】
第1の実施形態〜第3の実施形態に係るスクライブ装置100は、初期状態における基板200に対する吸込口部12のZ軸方向の位置調整をエアシリンダ14で行なっている。しかしながら、基板200に対する吸込口部12のZ軸方向の位置決めが初期状態で設定されているのであれば、図7に示すように、エアシリンダ14、電空レギュレータ50、加圧装置90及び基台11のレール11aを、スクライブ装置100に備える必要はなく、第1の圧力制御部82が、捕捉部60(吸込口部12)内の圧力を制御して、回転刃1の刃先1aにかかる荷重を微調整するのみの構成であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 回転刃
1a 刃先
1b 貫通孔
2 ピン
10 スクライブヘッド
11 基台
11a レール
12 吸込口部
12a 開口
12b 凹部
12c 接続部
12d 底面
12e 溝
12f 内側面
12g 長穴
13 保持部材
14 エアシリンダ
14a 導管
14b ピストン
20 ステージ
30 CCDカメラ
41 支持部
42 ブリッジ部
43 モータ
44 ガイド
50 電空レギュレータ
51 レギュレータ本体
52 負圧ポート
53 排気ポート
54 供給ポート
55 排気用電磁弁
56 供給用電磁弁
57 第2の圧力検知部
58 第2の圧力制御部
60 捕捉部
60a 一端面
60b 他端面
61 導管
62 導管
70 減圧装置
81 第1の圧力検知部
82 第1の圧力制御部
90 加圧装置
100 スクライブ装置
200 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して回転刃を圧接状態で転動し、当該基板上に亀裂を形成するスクライブ装置において、
前記基板に対向させる開口を有し、前記回転刃の刃先が当該開口から露出する位置に当該回転刃を内包する筒状の吸込口部と、
前記吸込口部に連通され、前記吸込口部を陰圧にする減圧部と、
前記吸込口部の内部の圧力を検出する圧力検知部と、
前記圧力検知部の検出結果に基づいて前記吸込口部の内部の圧力を調整する圧力制御部と、
を備えることを特徴とするスクライブ装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のスクライブ装置において、
前記基板及び吸込口部間の間隔を変化させる駆動部と、
前記基板及び吸込口部間の間隔を検出する間隔検知部と、
前記間隔検知部の検出結果に基づき、前記駆動部を駆動させて前記基板及び吸込口部間の間隔を調整する間隔制御部と、
を備えることを特徴とするスクライブ装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載のスクライブ装置において、
前記圧力制御部が、前記間隔制御部の制御信号に基づき、前記吸込口部の内部の圧力を調整することを特徴とするスクライブ装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載のスクライブ装置において、
前記吸込口部が、対向する一対の長穴を内側面に有し、
前記回転刃が、前記基板に対して鉛直方向に摺動可能に前記長穴に軸支されることを特徴とするスクライブ装置。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載のスクライブ装置において、
前記吸込口部の開口を構成する底部が、底面に凹設した複数の溝を有し、
前記複数の溝が、前記回転刃を中心として時計回り又は反時計回りに各溝の方向を揃えてなることを特徴とするスクライブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−59911(P2013−59911A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199729(P2011−199729)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【出願人】(390000608)三星ダイヤモンド工業株式会社 (383)
【Fターム(参考)】