説明

スクリューコンベア型精製装置及びそれを使用した精製方法

【課題】部分結晶化(fractional crystallization)又は再結晶化の原理により、不純物を含有する純粋物(混合物)から不純物のみを除去して純粋物のみを得ることができるスクリューコンベア型精製装置及びそれを使用した精製方法を提供する。
【解決手段】スクリューコンベア型精製装置は、中空状の断面を有して長手方向に延びるように形成され、内部の混合物を移動させるスクリューコンベア200と、混合物の溶解及び凝固作業が繰り返されるようにスクリューコンベアの内部温度を制御して、混合物を純粋物と不純物とに分離して移動させる反応調節部とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクリューコンベア型精製装置及びそれを使用した精製方法に関し、より詳細には、部分結晶化(fractional crystallization)又は再結晶化の原理により、不純物を含有する純粋物(以下、「混合物」という)から不純物のみを除去して純粋物のみを得るスクリューコンベア型精製装置及びそれを使用した精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
混合物である錫合金に含有された不純物である鉛を除去する従来の方法として、(1)非特許文献1の232ページに記載された塩素化法と、(2)同文献の239ページに記載された真空蒸発法と、(3)特許文献1に開示された結晶溶析法とがある。
【0003】
しかし、上記(1)の塩素化法は、高価なSnCl−2HO又は危険な塩素(Cl)ガスを使用するため作業が危険であり、処理コストが非常に高い。また、ドロス(SnCl−PbCl)の処理が非常に複雑であるだけでなく公害を誘発し、SnCl−2HOの製造やドロス(SnCl−PbCl)の処理は毒物劇物を取り扱うため作業が危険であり、毒物劇物の取扱許可と公害防止施設を必要とするという問題があった。特に、ドロス中の錫(Sn)と鉛(Pb)との金属含有量比は、93.46%(Sn):6.54%(Pb)であるため、鉛(Pb)の除去率が低いなどの問題があった。
【0004】
また、上記(2)の真空蒸発法は、1日に16トン処理する真空蒸発設備を用いて、作業温度1,250℃、真空度0.01mmHgの状態で鉛などの不純物を蒸留する方法であり、高価な高周波誘導炉と高真空施設とを必要とするだけでなく、処理金属1トン当たりの電力消費が600KwH/tonであり、電力消費量が大きいという問題があった。
【0005】
また、上記(3)の特許文献1(中国特許公開公報第85 1 07536 A号)に開示された発明は、内槽と外槽とからなり、上部が開放されたU字状鋼製の槽と、前記U字状鋼製の槽の内部に回転可能に設置され、3つの螺旋片がそれぞれ86.5°の角度で溶接されて3方向に突設された回転軸と、前記U字状鋼製の槽の下部に設置された加熱用電熱器とから構成される。
【0006】
しかし、これは上部が開放されたU字状鋼製の槽と螺旋片が突設された回転軸とから構成されており、正確な温度調節のための温度制御装置及び冷却装置を備えておらず、溶融と凝固(結晶化)を繰り返す再結晶化工程を行うことができないため、鉛(Pb)の除去率が低いという問題があった。
【特許文献1】中国特許公開公報第85 1 07356 A号
【非特許文献1】Extractive metallurgy of tin second edition(1982)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたもので、混合物から不純物を除去して純度の高い純粋物を得ることができるスクリューコンベア型精製装置及びそれを使用した精製方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、錫金属又は錫合金中の鉛(Pb)をA(ASTM B 339−72 Classification of pig tin)規格である0.05%以下に除去できるスクリューコンベア型精製装置及びそれを使用した精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明は、中空状の断面を有して長手方向に延びるように形成され、内部の混合物を両方向に移動させるスクリューコンベアと、混合物の溶解及び凝固作業が繰り返されるようにスクリューコンベアの内部温度を制御して、混合物を純粋物と不純物とに分離して移動させる反応調節部と、を含むスクリューコンベア型精製装置を提供する。
【0010】
本明細書では、純粋物である錫金属、錫合金や錫共晶合金を「純粋な錫合金」といい、不純物である鉛が濃縮されているSn−Pb共晶状態の金属を「不純物錫合金」という。
【0011】
すなわち、純粋な錫合金の融点(Sn:231.9℃、Sn−Ag:221℃、Sn−Ag−Cu:216℃)と鉛が濃縮されている不純物錫合金の融点(Sn−Pb:183℃)との差を利用して、純粋な錫合金(Sn、Sn−Ag、Sn−Ag−Cu)を繰り返して結晶化させることにより純度を高める精製装置を提供する。
【0012】
ここで、錫合金は、Sn−Pb系、Sn−Ag系、及びSn−Ag−Cu系を含む。
【0013】
以下、本発明の精製装置を利用して錫合金を精製する工程について説明する。
【0014】
(1)純粋な錫金属(Sn100%)と錫共晶合金は単一温度の融点を有する。すなわち、純粋な錫金属の融点は231.9℃であり、Sn−Pb共晶合金の融点は183℃であり、その成分比はSnが61.9%、Pbが38.1%である。しかし、Sn−Pb合金の融点は単一温度ではなく、Sn/Pb合金の比率によって183〜231.9℃の温度範囲を有する。
【0015】
(2)通常、粗錫(crude tin metal)中の鉛(Pb)含有量は0.5%未満である。従って、粗錫中の不純物である鉛(Pb)含有量を減少させる(除去する)ために、融点が183℃であるSn−Pb共晶合金(Sn61.9%、Pb38.1%)を形成して粗錫中の鉛(Pb)を除去すると、鉛(Pb)を僅かしか含有しておらず、融点が231.9℃である錫金属は部分的に凝固して部分結晶化する。このような過程を繰り返す再結晶化工程により、精製された錫金属を安価で公害防止施設を必要とせずに鉛(Pb)を除去できる。すなわち、不純物である鉛(Pb)はSn−Pb共晶(融点:183℃)状態で分離される。
【0016】
(3)不純物である鉛(Pb)はSn−Pb共晶合金に含まれて除去される。理論的な鉛(Pb)の最大含有量は38.1%であるが、実際の作業では約32〜34%まで濃縮が可能である。
【0017】
(4)部分結晶化法での錫及び錫合金中の不純物である鉛(Pb)の除去において最も重要な点は、再結晶化工程を繰り返して純度を高めるために温度制御を正確に行う点である。例えば、粗錫金属の場合は、183〜231.9℃の温度範囲内で、任意の温度区間(例えば、230〜231.9℃の温度範囲)を正確に制御しなければならない。
【0018】
同様の方法で、本発明によるスクリューコンベア型精製装置を利用して、次の原理によりSn−Ag合金の鉛(Pb)を除去できる。
【0019】
(a)純粋な錫共晶合金は単一温度の融点を有する。すなわち、純粋なSn−Ag共晶合金(Sn96.5%、Ag3.5%)の融点は221℃であり、Sn−Pb共晶合金の融点は183℃であり、その成分比はSnが61.9%、Pbが38.1%である。しかし、Sn−Pb合金の融点は単一温度ではなく、Sn/Pb合金の比率によって183〜231.9℃の温度範囲を有する。
【0020】
(b)通常、Sn−Ag合金(Sn96.5%、Ag3.5%)中の鉛(Pb)含有量は1%未満である。前述したように、Sn−Ag合金系中の不純物である鉛(Pb)を利用して、融点が183℃であるSn−Pb共晶合金(Sn61.9%、Pb38.1%)を形成すると、融点が221℃であるSn−Ag共晶合金(Sn96.5%、Ag3.5%)は部分的に凝固して部分結晶化する。再結晶化工程を経ることによって精製されたSn−Ag共晶合金(Sn96.5%、Ag3.5%)が生産されるため、安価で公害防止施設を必要とせずに鉛(Pb)を除去できる。すなわち、不純物である鉛(Pb)はSn−Pb共晶(融点:183℃)状態で分離される。
【0021】
(c)不純物である鉛(Pb)はSn−Pb共晶合金成分の38.1%であるが、通常の作業では鉛(Pb)を約32〜34%まで濃縮可能である。
【0022】
(d)上記(4)で述べたとおり、本発明の精製装置を利用した部分結晶化法での錫及び錫合金中の不純物である鉛(Pb)の除去において最も重要な点は、183〜221℃の温度範囲内で温度を正確に制御できるという点である。
【0023】
このような理論に基づいて、含有される鉛(Pb)を共晶化させて除去できる錫合金は、Sn−Pb系、Sn−Ag系、Sn−Ag−Cu系などである。その組成と精製作業条件を下記の表1に示し、より詳細な作業条件を下記の表2〜表5に示す。
【0024】
すなわち、前述した理論と方法を用いて、錫及び錫合金だけでなく、下記の表5と実施例6に示すように、鉛−アンチモン合金(Pb−Sb合金)中のアンチモン(Sb)金属を除去することもできる。
【0025】
【表1】

【0026】
粗錫中のPb除去作業の要約表
【表2】

【0027】
Sn−Ag合金中のPb除去作業の要約表
【0028】
【表3】

【0029】
Sn−Ag−Cu合金中のPb除去作業の要約表
【0030】
【表4】

【0031】
Pb−Sb合金中のPb除去作業の要約表
【0032】
【表5】

【0033】
本発明の別の実施態様によれば、ケトル(kettle)で粗錫又は錫合金を溶解して約250℃に維持する段階と、加熱ヒータでスクリューコンベアを250〜280℃に予熱する段階と、予熱されたスクリューコンベアの装入部を介して、ケトル内の溶解された粗錫又は錫合金をスクリューコンベアに注入する段階と、スクリューコンベアの作業温度を設定制御し、スクリューコンベアの螺旋状スクリューを徐々に回転させながら水噴射部から水を噴射して、スクリューコンベア内部の金属を部分凝固させ、凝固した金属をスクリューコンベアの上部に移送する段階とを含むことを特徴とする錫合金の精製方法が提供される。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、混合物から不純物を除去して純度の高い純粋物を得ることができ、特に、鉛(Pb)を含有する粗錫金属を、鉛(Pb)含有量がASTM Grade A(ASTM B 339−72 Classification of pig tin)規格である0.05%以下になるように精製できるだけでなく、錫合金である廃鉛フリーハンダ(Pb free solder)中の鉛(Pb)を除去して廃資源をリサイクルできるという効果がある。
【0035】
一方、電子業界では、Sn−Pb系ハンダを接合材料として使用してきた。しかし、鉛(Pb)が環境汚染物質であるため規制対象となっているため、環境に優しい製品である鉛フリーハンダを開発又は輸入して使用している。従って、本発明は、このような環境に優しい製品である鉛フリーハンダの材料を効果的に生産でき、公害を減らして輸入を代替するという効果がある。
【0036】
また、現在の廃電気電子機器指令(Waste Electrical and Electronic Equipment[WEEE])及び電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する指令(Restriction on Hazardous Substances[RoHS])によれば、鉛フリーハンダの場合、鉛(Pb)含有量は1000PPM(0.1%)以下に規制されている。しかし、ハンダ作業を長時間継続すると、鉛フリーハンダ中の鉛(Pb)と銅(Cu)の濃度が増加して作業が続けられないため、そのハンダを交換しなければならないが、ハンダの交換中に廃ハンダが発生する。このような廃ハンダから、本発明による精製装置により、不純物である鉛(Pb)を除去することにより、廃資源(ハンダ)をリサイクルできるだけでなく、廃ハンダが銀を含有する場合は、そのハンダのリサイクルによりコストが節減されるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本明細書では、特に錫又は錫合金の混合物から不純物である鉛(Pb)を除去する精製工程を中心に、本発明の一実施形態によるスクリューコンベア型精製装置及びそれを使用した精製方法について添付図面を参照して説明する。
【0038】
図1〜図4に示すように、本発明によるスクリューコンベア型精製装置は、スクリューコンベア200と反応調節部とを含む。
【0039】
スクリューコンベア200はベース100に対して傾斜して設置される。ベース100はトラス状の枠であり得る。
【0040】
スクリューコンベア200は、図2及び図3に示すように、半円状の断面を有する上半部中空円筒体204と、上半部中空円筒体204の結合部202に対向して結合され、半円状の断面を有する下半部中空円筒体205とから構成される中空円筒体を含む。また、上半部中空円筒体204と下半部中空円筒体205との間には円筒断熱材201が挿入され、中空円筒体204、205の内部には螺旋状スクリュー210が駆動部により回転可能に設置される。ここで、円筒断熱材201は、スクリューコンベア200内の錫金属の溶解熱の損失を防止する。
【0041】
螺旋状スクリュー210は、中空円筒体204、205の内部に挿入され、駆動部、例えば、駆動モータ500に減速器600のスプロケット610及びチェーン611を介して連結される。螺旋状スクリュー210は、駆動モータ500の駆動により回転し、その外周上に螺旋状に形成されたブレード211により凝固した結晶状の金属を上方に押し上げて移動させる。ここで、溶融状態の不純物金属を不純物排出口240に流すために、中空円筒体204、205とブレード211との間には所定の間隙が形成されている。
【0042】
ここで、上半部中空円筒体204には、別途のケトル250から精製する粗金属を注入する装入部220が連通して形成され、下半部中空円筒体205の底面には、鉛(Pb)が濃縮されたSn−Pb合金の共晶状態で溶解された金属を排出する不純物排出口240が形成される。また、下半部中空円筒体205の不純物排出口240の対応する上部には、精製された錫を排出する純粋物排出口230(製品排出口)が連通して形成される。つまり、純粋物排出口230が不純物排出口240より、ベース100が置かれる床から高い位置に配置される。ここで、粗錫(Sn)を精製する際、鉛(Pb)が濃縮された不純物金属の流れを調節できるように、不純物排出口240にはバルブ241が取り付けられる。
【0043】
反応調節部は、図5及び図6に示すように、スクリューコンベア200を加熱する加熱部340と、スクリューコンベア200を冷却する冷却部440と、加熱部340及び冷却部440の作動を制御する温度制御部とを含む。ここで、温度制御部は、加熱部340を制御するための加熱制御部300と、冷却部440を制御するための冷却制御部400とを含む。
【0044】
加熱部340は、スクリューコンベア200の下半部中空円筒体205に装着される加熱ヒータであり得る。加熱ヒータ340は、図4に示すように、スクリューコンベア200の下半部中空円筒体205に密着した形態で複数(好ましくは、18〜21個)装着され、銅鋳物で形成された本体に電源端子342が接続されており、電源を供給することによって加熱される。また、加熱ヒータ340の底面には、半円状の断面を有するヒータ断熱部341が装着されており、加熱ヒータ340の熱損失を防止して、下半部中空円筒体205の温度を一定に維持する。
【0045】
また、加熱の程度を正確に制御するために、加熱ヒータ340には加熱温度センサ又は熱電対331が取り付けられており、加熱制御部300の温度調節器330により加熱ヒータ340が適切な温度範囲を維持できるように制御される。
【0046】
図2及び図5に示すように、複数(18〜21個)の加熱ヒータ340及びそのうち任意の2つの加熱ヒータに挿入された熱電対331と加熱制御部300との間には、電圧調節器320、温度調節器330、及び計器板310がそれぞれ電気的に接続される。これにより、電圧調節器320は、複数の加熱ヒータ340に印加される電圧のレベルを調節し、温度調節器330は、熱電対331を利用して加熱ヒータ340の温度を調節する。また、計器板310は、電圧調節器320の出力電圧、電流、及び動作Kwを視覚的に表示して総体的な作業管理を可能にする。
【0047】
図1及び図6に示すように、冷却部440は、スクリューコンベア200の上半部中空円筒体204に所定距離をおいて設置されて水を噴射し、スクリューコンベア200に沿って所定区間を往復移動可能に形成された水噴射部であり得る。
【0048】
水噴射部440は、1つの水噴射器441に2つのソレノイドバルブ430が結合したものが噴射台450上に3組固定設置されたもので、スクリューコンベア200の装入部220前後の上部にそれぞれ設置される。水噴射部440は、スクリューコンベア200の長手方向に所定距離451(約35cm)往復移動しながら水を噴射できるように、スクリューコンベア200の上部に所定距離をおいて設置される。
【0049】
また、ソレノイドバルブ430は、ゴムホース433を介して、作業場の上部に設置された水道管432と別途の空気圧縮機から圧縮空気が供給される圧縮空気パイプ431とにそれぞれ連結されている。
【0050】
また、水噴射器441、ソレノイドバルブ430、及びマグネットスイッチ420は、冷却制御部400に形成された温度調節器410〜415(熱電対460と同じ数)の出力側にそれぞれ接続され、温度調節器410〜415の入力側には、スクリューコンベア200内の錫金属の温度を測定する6つの冷却温度センサ又は熱電対460がそれぞれ接続される。これら熱電対460は、スクリューコンベア200内部の錫金属の温度を計測するために、円筒断熱材201の長手方向に沿って挟まれている。
【0051】
これら熱電対460の温度情報が冷却制御部400に伝送されて、水噴射部440の水噴射量が自動的に調節され、スクリューコンベア200内部の温度を精製作業制御範囲に正確に維持する。
【0052】
従って、作業者が冷却制御部400の各温度調節器410〜415に水噴射制御温度範囲を設定して入力すると、各温度調節器410〜415により、ソレノイドバルブ430が開閉されて、水噴射部440の水噴射が自動的に作動する。これにより、スクリューコンベア200内の粗錫(Sn)の溶融温度が制御されて、前述したように再結晶化と不純物除去作業が行われる。
【0053】
本発明の精製方法
以下、このように構成された本発明によるスクリューコンベア型精製装置を使用して、粗錫(Sn)金属を精製する方法を説明する。
【0054】
図7に示すように、別途のケトル250で粗錫金属を溶解して250℃に維持する。
【0055】
その後、スクリューコンベア200の加熱ヒータ340によりスクリューコンベア200を250〜280℃に予熱する。そして、ケトル250の溶融金属をステンレス容器などで汲み、装入部220に注入してスクリューコンベア200に満たした後、金属の溶融状態を確認する。
【0056】
冷却制御部400(図6)の各温度調節器410〜415の温度は、操業初期に232℃に設定する。スクリューコンベア200に連結された駆動モータ500を稼動して螺旋状スクリュー210を徐々に回転させながら、水噴射部440を稼動して水を噴射する(冷却させる)。また、冷却制御部400の各温度調節器410〜415に作業温度を設定する。
【0057】
例えば、錫金属の場合、最上端の温度調節器410は232℃、最下端の温度調節器415は185℃を基準にして各温度勾配を定め、徐々に1℃ずつ下げて上記表2の実操業の温度制御範囲を維持して作業を続ける。ここで、制御温度の基準は実験により得られた下記数式1により計算できる。
【0058】
Tx℃=81.5(logx−1)+150.4 (1)
【0059】
ここで、合金中の錫含有量は61.9〜100%の範囲内で適用される。
【0060】
上記数式1でxは錫含有量%であり、錫が100%、90%、61.9%の場合、次のように計算される。
【0061】
100℃=81.5(log100−1)+150.4=231.9℃であり、
90℃=81.5(log90−1)+150.4=81.5(1.95424−1)+150.4=217.13℃であり、
61.9℃=81.5(log61.9−1)+150.4=81.50.79169+150.4=183℃である。
【0062】
このように、作業に必要な温度調節範囲を上記数式1を用いて計算できる。
【0063】
次に、水噴射部440により水を噴射してスクリューコンベア200内部の金属を部分凝固(部分結晶化)させる。螺旋状スクリュー210を徐々に回転させると、凝固した金属(結晶)はスクリューコンベア200の上部に少しずつ移送される。
【0064】
加熱制御部300の設定又は操作により加熱ヒータ340を稼動して、図9のSn−Pb合金状態図に示す液相線に沿って凝固した金属(結晶)を溶解する。
【0065】
さらに、スクリューコンベア200の上半部中空円筒体204の表面に水噴射部440により水を噴射して金属を凝固(再結晶化)させる。この過程で、冷却時に凝固した金属が純粋な金属又は合金の場合は共晶合金が形成される。
【0066】
このように、金属の凝固と溶解作業を無数に繰り返す再結晶化過程を経て精製作業が行われる。
【0067】
正常な作業において、精製された製品(product)は、スクリューコンベア200の上部の純粋物排出口230から排出され、不純物が濃縮した金属は、スクリューコンベア200の下部の不純物排出口240のバルブ241を調節することにより、製品の約1/8〜1/15ずつ排出される。不純物金属の排出量は、各実施例に示すように、作業時に物質収支(material balance)で計算される。
【0068】
不純物金属量の計算値を以下の各実施例と図8の不純物除去工程図に示す。
【0069】
不純物金属中のPb含有量が10%前後の場合は、図8の不純物除去工程図に示すように循環させて繰り返し処理することにより製品の回収率を高める。
【0070】
作業を終了する際は、水噴射部440と螺旋状スクリュー210の稼動を中止して加熱ヒータ340のみを稼動して、スクリューコンベア200内に残っている金属を完全に溶解させた後、不純物排出口240のバルブ241を開いて金属をレードル260に受け取り、加熱ヒータ340をオフにして作業を終了する。
【0071】
精製作業は、原料装入と製品生産を連続的に行う、いわゆる連続作業工程である。また、図1、図3、図6、図7及び図8に示すように、作業中、スクリューコンベア断熱材201に挟まれた全6つの熱電対460が、図6の冷却制御部400の温度調節器410〜415により、処理特性に応じて予め設定された上記表2〜表5の数値のように自動的に温度を調節する。
【0072】
本発明者は粗錫中の鉛(Pb)を除去するために、前述した本発明によるスクリューコンベア型精製装置及びそれを使用した精製方法で、数百トンを処理した結果、精製装置の1日処理能力は約5トンであり、電力消費は処理金属1トン当たり平均91.6KWHである。以下、その実操業の一部を実施例に示す。
【0073】
実施例1
本発明によるスクリューコンベア型精製装置を使用して、前述した精製方法で、粗錫金属(Sn)中の不純物である鉛(Pb)含有量を、ASTM Grade A規格である0.05%以下に除去するための作業条件(上記表2)中の実操業の制御温度範囲を230〜232℃に変更して精製作業を行った。結果は次のとおりである。
【0074】
装入物(feed)は粗錫金属であり、鉛(Pb)含有量が0.055%である粗錫金属を精製装置の装入部220に250℃の溶融状態で注入し、前述の精製作業条件で精製作業を行った。ここで、上記表2の実操業の制御温度範囲を185〜232℃から230〜232℃に変更した理由は、精製しようとする粗錫金属の鉛(Pb)含有量が低すぎて、制御温度範囲を185〜232℃にして精製作業をする場合、スクリューコンベア200内部の半溶融状態の金属が凝固して精製作業が不可能だからである。
【0075】
これにより、精製装置の純粋物排出口230から排出された精製された錫金属(Sn)中の鉛(Pb)含有量は0.017%とASTM Grade A規格である0.05%より低い。また、精製装置の不純物排出口240から排出された不純物合金(Sn−Pb合金)中の鉛(Pb)含有量は1.19%であった。不純物合金は図8の不純物除去工程図に示すように循環処理される。
【0076】
これを表に示すと次のとおりである。
【0077】
【表6】

【0078】
実施例2
実施例2の精製作業による結果を表に示すと次のとおりである。
【0079】
【表7】

【0080】
実施例3
実施例3の精製作業による結果を表に示すと次のとおりである。
【0081】
【表8】

【0082】
実施例4
実施例4の精製作業による結果を表に示すと次のとおりである。
【0083】
【表9】

【0084】
実施例5
実施例5の精製作業による結果を表に示すと次のとおりである。
【0085】
【表10】

【0086】
実施例6
実施例6の操業は硬鉛(Pb−Sb合金)中のアンチモン(Sb)を除去する作業である。
【0087】
【表11】

【0088】
以上、本発明の好ましい実施形態を例に挙げて説明したが、本発明の範囲はこのような特定の実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で適切に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施態様によるスクリューコンベア型精製装置の構成を示す図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のスクリューコンベアの分解斜視図である。
【図4】図1の加熱ヒータの斜視図である。
【図5】図1の加熱ヒータを制御する制御部の構成を示す概略図である。
【図6】図1の水噴射部の電気的結線を示す拡大断面図である。
【図7】錫合金の不純物精製方法を説明するための図である。
【図8】図1に示す装置を利用した不純物除去工程を示す工程図である。
【図9】Sn−Pb合金の状態図である。
【図10】Sn−Ag合金の状態図である。
【図11】Sn−Ag−Cu合金の状態図である。
【図12】Sn−Ag−Cu合金の状態図である。
【図13】Pb−Sb合金の状態図である。
【符号の説明】
【0090】
100 ベース
200 スクリューコンベア
300 加熱制御部
400 冷却制御部
500 駆動モータ
600 減速器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状の断面を有して長手方向に延びるように形成され、内部の混合物を移動させるスクリューコンベアと、
前記混合物の溶解及び凝固作業を繰り返すように前記スクリューコンベアの内部温度を制御して、前記混合物を純粋物と不純物とに分離して移動させる反応調節部と、
を含むことを特徴とするスクリューコンベア型精製装置。
【請求項2】
前記混合物が、Sn−Pb系、Sn−Ag系及びSn−Ag−Cu系の錫合金を含むことを特徴とする、請求項1に記載のスクリューコンベア型精製装置。
【請求項3】
前記スクリューコンベアが、
内部に前記混合物が装入される中空円筒体と、
前記中空円筒体の内部に回転可能に装着される螺旋状スクリューと、
前記螺旋状スクリューに連結されて該螺旋状スクリューを回転させる駆動部と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のスクリューコンベア型精製装置。
【請求項4】
前記中空円筒体が、
互いに結合される半円状の断面を有する上半部中空円筒体及び下半部中空円筒体と、
前記上半部中空円筒体と前記下半部中空円筒体との間に配置される円筒断熱材と、
を含むことを特徴とする、請求項3に記載のスクリューコンベア型精製装置。
【請求項5】
前記中空円筒体が、
精製しようとする前記混合物を装入する装入部と、
前記不純物が溶融して排出されるように形成された不純物排出口と、
前記純粋物が凝固して排出されるように形成された純粋物排出口と、
を含むことを特徴とする、請求項3に記載のスクリューコンベア型精製装置。
【請求項6】
ベースをさらに含み、
前記中空円筒体が、前記純粋物排出口が形成された側の端部が、前記不純物排出口が形成された側の端部より高く配置されるように、前記中空円筒体が前記ベースに対して傾斜して装着されることを特徴とする、請求項5に記載のスクリューコンベア型精製装置。
【請求項7】
前記駆動部が、
駆動モータと、
前記駆動モータに連結される減速器と、
前記減速器と前記螺旋状スクリューとを連結するスプロケット及びチェーンと、
を含むことを特徴とする、請求項3に記載のスクリューコンベア型精製装置。
【請求項8】
前記反応調節部が、
前記スクリューコンベアの一側に形成されて前記混合物を冷却する冷却部と、
前記スクリューコンベアの他側に形成されて前記混合物を加熱する加熱部と、
前記スクリューコンベアの内部温度を感知し、前記冷却部及び前記加熱部の作動を制御する温度制御部と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載のスクリューコンベア型精製装置。
【請求項9】
前記冷却部が、前記スクリューコンベアに離隔して配置されて水を噴射する水噴射部であり、前記加熱部が、前記スクリューコンベアに装着される加熱ヒータであることを特徴とする、請求項8に記載のスクリューコンベア型精製装置。
【請求項10】
前記水噴射部が、前記スクリューコンベアの長手方向に所定距離往復移動可能に設置されることを特徴とする、請求項9に記載のスクリューコンベア型精製装置。
【請求項11】
前記加熱ヒータを覆うように前記スクリューコンベアに装着され、前記加熱ヒータの熱損失を防止するヒータ断熱部をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載のスクリューコンベア型精製装置。
【請求項12】
前記温度制御部が、
前記冷却部の作動を制御する冷却制御部と、
前記加熱部の作動を制御する加熱制御部と、
を含むことを特徴とする、請求項8に記載のスクリューコンベア型精製装置。
【請求項13】
前記スクリューコンベアの内部に延びて前記冷却制御部に電気的に接続され、前記混合物の温度を計測するための冷却温度センサと、
前記加熱部に装着されて前記加熱制御部に電気的に接続され、前記加熱部の温度を計測するための加熱温度センサと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項12に記載のスクリューコンベア型精製装置。
【請求項14】
ケトルで粗錫又は錫合金を溶解して約250℃に維持する段階と、
加熱ヒータでスクリューコンベアを250〜280℃に予熱する段階と、
前記予熱されたスクリューコンベアの装入部を介して、前記ケトル内の溶解された粗錫又は錫合金を前記スクリューコンベアに注入する段階と、
前記スクリューコンベアの作業温度を設定制御し、前記スクリューコンベアの螺旋状スクリューを徐々に回転させながら水噴射部から水を噴射して、前記スクリューコンベア内部の金属を部分凝固させ、前記凝固した金属を前記スクリューコンベアの上部に移送する段階と、
を含むことを特徴とする錫合金の精製方法。
【請求項15】
銀(Ag)を含有する錫合金Sn−Ag系中の不純物である鉛(Pb)を利用して、融点が183℃であるSn−Pb共晶系及び融点が221℃であるSn−Ag共晶系が形成されるように、操業制御温度を185〜221℃に設定して、再結晶化法で不純物である鉛(Pb)を除去することを特徴とする、請求項14に記載の錫合金の精製方法。
【請求項16】
銀(Ag)を含有する錫合金Sn−Ag−Cu系中の不純物である鉛(Pb)を利用して、融点が183℃であるSn−Pb共晶系及び融点が216℃であるSn−Ag−Cu共晶系が形成されるように、操業制御温度を185〜216℃に設定して、再結晶化法で不純物である鉛(Pb)を除去することを特徴とする、請求項14に記載の錫合金の精製方法。
【請求項17】
前記スクリューコンベア内の粗錫(Sn)を精製するときの任意の作業制御基準温度が、数式
Tx=81.5(logx−1)+150.4
(式中、xは錫(Sn)含有量%を示し、錫含有量%が61.9〜100%である場合に適用され、Txは錫含有量%がxである場合の作業制御基準温度(℃)である)により決定され、
前記作業制御基準温度に基づいて精製作業制御温度範囲を算出することを特徴とする、請求項14に記載の錫合金の精製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−132654(P2007−132654A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302204(P2006−302204)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(506374100)
【氏名又は名称原語表記】LEE Goon−Hee
【Fターム(参考)】