説明

スクリーン印刷方法およびスクリーン印刷装置

【課題】印刷時および版離れ時の何れにおいても良好な印刷品質を維持することができるスクリーン印刷方法およびスクリーン印刷装置を提供する。
【解決手段】スクリーン印刷装置1を断熱壁21で覆い、送気口22から冷気を送り込み、低温環境下で印刷作業を行う。印刷時にはスクリーンマスク3上の半田15を局所的に加熱し、半田15の温度を上昇させる。温度が上昇した半田15は流動性を増し、スクリーンマスク3の開孔に隙間なく充填される。スクリーンマスク3や基板6、それにこれらを取り囲む空気は低温に維持されているので、充填された半田は急激に冷却され、版離れが可能な温度に低下する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンマスクを介して基板に半田を印刷するスクリーン印刷に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷においては、基板の表面を覆うスクリーンマスクと、スクリーンマスクの表面を摺動するスキージを備えたスクリーン印刷装置が広く用いられている。スクリーンマスクには表裏面に連通する開孔が形成されており、半田はスクリーンマスクの表面を摺動するスキージによって開孔に充填され、基板の表面に印刷される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−179029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に半田は高温下では粘度が減少して流動化し、低温下では粘度が増加して固形化する。半田の粘度が高いと複雑な形状の開孔の隅々にまで半田が行き渡らないことがあるので、従来のスクリーン印刷方法では半田の温度を高めに設定して印刷を行っていた。しかし、印刷後の版離れにおいては半田の粘度が低いままでは開孔から抜け出るときに型崩れを起こし易いという問題がある。従来は半田が一定温度まで低下し、ある程度固化するのを待って版離れを行っていたため、この待ち時間が生産性を向上させる上での大きな問題となっていた。
【0004】
本発明は、印刷時および版離れ時の何れにおいても良好な印刷品質を維持することができるスクリーン印刷方法およびスクリーン印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のスクリーン印刷方法は、スクリーンマスクの開孔を介して基板に半田を印刷するスクリーン印刷方法において、周囲温度より高い温度に上昇させて粘度を減少させた半田をスクリーンマスク上で摺動するスキージによって基板に印刷する工程と、基板に印刷された半田を周囲温度に近い温度まで低下させ、半田の粘度を増加させた後に版離れを行う工程とを含む。
【0006】
請求項2に記載のスクリーン印刷装置は、スクリーンマスクの開孔を介して基板に半田を印刷するスクリーン印刷装置において、スクリーンマスク上の半田を周囲温度より高い温度に上昇させる手段と、基板に印刷された半田を周囲温度に近い温度まで低下させる手段とを備えた。
【0007】
請求項3に記載のスクリーン印刷装置は請求項2に記載のスクリーン印刷装置であって、スクリーンマスク上の半田に超音波振動を付与することで温度を上昇させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、周囲温度より高い温度に上昇させて粘度を減少させた半田は流動性が増すため、スクリーンマスクの開孔への充填性が向上し、周囲温度に近い温度まで低下させて粘度を増加させた半田は流動性が低下して固形化するため、開孔からの抜け性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態のスクリーン印刷装置の構成を示す図である。スクリーン印刷装置1は、基板支持装置2と、スクリーンマスク3と、スキージ装置4で構成されている。基板支持装置2は、半田の印刷対象となる基板6を水平に保持するクランプ7と、基板6の上面(半田印刷面)がクランプ7の上面と同一平面上に位置するように基板6の高さを調整する基板高さ調整機構8と、クランプ7によって水平に保持された基板6を昇降させて、基板6の半田印刷面を上方に位置するスクリーンマスク3の裏面に対して密着させ、または版離れさせる基板昇降機構9と、クランプ7によって水平に保持された基板6をスクリーンマスク3に対して水平方向に移動させて、基板6とスクリーンマスク3との水平位置合わせを行う基板水平移動機構となるXロボット10およびYロボット11とで構成されている。
【0010】
スキージ装置4は、一対のスキージ12、13と、一対のスキージ12、13をそれぞれ独立して昇降させるスキージ昇降機構14とで構成されている。スキージ装置4は水平方向に移動可能である。
【0011】
スクリーンマスク3は表裏面に貫通する複数の開孔を介し、ペースト状の半田15を表面側から裏面側の基板6の半田印刷面に転写できる構造になっている。半田15はスクリーンマスク3上を水平移動するスキージ12もしくは13によってスクリーンマスク3上を移動しながら開孔に充填される。開孔に充填された半田は半田印刷面に付着し、版離れ時に開孔から抜け出す。これにより半田印刷面にはスクリーンマスク3の開孔の位置および形状に倣った半田が印刷された状態となる。
【0012】
スキージ12、13には超音波振動子20が備えられている。超音波振動子20の作動によりスキージ12、13に接触した半田15に超音波振動が付与される。超音波振動が付与された半田15はスキージ12、13との間の摩擦や半田自体が繰り返し受ける圧縮によって発熱し、温度が上昇する。
【0013】
スクリーン印刷装置1は断熱壁21によって側方および上方を略密閉した状態に覆われている。断熱壁21の上部には送気口22が設けられており、ここから吹き出す冷気が断熱壁21の内側の温度を低下させる。この冷気の影響によりスクリーンマスク3上の印刷前の半田15の温度も低下しているので、印刷時には超音波振動子20の作動によって半田15の温度のみを局所的に上昇させ、冷気の影響下にあるスクリーンマスク3や基板6、半田15を取り囲む空気等の周囲温度より高い温度に上昇させる。これにより半田15の粘度が減少し、流動性が増すので、半田15はスキージ12、13の水平移動に伴ってスクリーンマスク3上を円滑に移動し、開孔の隅々まで隙間なく充填される。
【0014】
開孔に充填された半田は、周囲の冷気や、冷気により冷やされたスクリーンマスク3や基板6と接触することによって直ちに冷却され、短い時間で周囲温度に近い温度まで低下する。温度が低下した半田は粘度が増加し、流動性が低下して固形化するので版離れ時に型崩れを起こすことなく開孔から抜き出すことができる。
【0015】
本発明の実施の形態のスクリーン印刷装置1は、半田15の流動性を低下させる低温度の環境下において印刷作業を行い、印刷時にはスクリーンマスク3上の半田15を局所的に加熱し、半田15の温度を上昇させる。温度が上昇した半田15は流動性を増し、スクリーンマスク3の開孔に隙間なく充填される。スクリーンマスク3や基板6、それにこれらを取り囲む空気は低温に維持されているので、充填された半田は急激に冷却され、版離れが可能な温度に低下する。そのため印刷後にさほど時間をおくことなく版離れを開始することができる。
【0016】
本発明の実施の形態のスクリーン印刷装置1は冷気が充満した断熱壁21の内側に設置
されているが、スクリーン印刷装置1を設置する地域や場所が半田の流動性を低下させるだけの低温が維持できる環境であれば断熱壁21を用いる必要はない。また、スクリーン印刷装置1の全体を低温下におくことが望ましいが、スクリーンマスク3の開孔に充填された半田の周囲、例えばスクリーンマスク3や基板6を低温に維持するだけでも半田の冷却効果を得ることができる。スクリーンマスク3が金属製のメタルマスクの場合には、スクリーンマスク3に直接冷気を吹き付けたり、冷却水と接触させたりすることで、スクリーンマスク3の温度をさらに低温に維持し、半田の冷却効果をさらに高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は基板に半田を供給するスクリーン印刷に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態のスクリーン印刷装置の構成を示す図
【符号の説明】
【0019】
1 スクリーン印刷装置
3 スクリーンマスク
6 基板
12、13 スキージ
15 半田
20 超音波振動子
21 断熱壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーンマスクの開孔を介して基板に半田を印刷するスクリーン印刷方法において、
周囲温度より高い温度に上昇させて粘度を減少させた半田をスクリーンマスク上で摺動するスキージによって基板に印刷する工程と、
基板に印刷された半田を周囲温度に近い温度まで低下させ、半田の粘度を増加させた後に版離れを行う工程と、
を含むことを特徴とするスクリーン印刷方法。
【請求項2】
スクリーンマスクの開孔を介して基板に半田を印刷するスクリーン印刷装置において、
スクリーンマスク上の半田を周囲温度より高い温度に上昇させる手段と、基板に印刷された半田を周囲温度に近い温度まで低下させる手段とを備えたことを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項3】
スクリーンマスク上の半田に超音波振動を付与することで温度を上昇させることを特徴とする請求項2に記載のスクリーン印刷装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−76285(P2010−76285A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247830(P2008−247830)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】