説明

スクリーン印刷機

【課題】スキージをスキージ移動装置によりマスクに沿って移動させ、そのマスクの貫通穴を通して回路基板にクリーム状はんだを印刷するスクリーン印刷機を、さらにコンパクトで使い勝手のよいものに改善する。
【解決手段】マスク132が固定されたマスク枠134を保持するマスク枠受け120に、スキージ装置本体200を固定し、その本体200上にスキージスライド,スキージヘッドおよびスキージスライド駆動装置を配設する。スクリーン印刷機の本体フレーム70と、マスク枠受け120およびスキージ装置本体200との間に、2つの前後方向調節ユニット144と、1つの左右方向調節ユニット146と、1つの浮動支持ユニット148とを含む位置調節装置122を設け、マスク枠受け120とスキージ装置本体200とを一体的に移動させてマスク132と回路基板との相対位置の調節を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷機に関するものであり、特に、回路基板にクリーム状はんだを印刷するスクリーン印刷機の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷機は、スキージをスキージ移動装置によりマスクに沿って移動させ、そのマスクの貫通穴を通して被印刷剤を印刷対象部材に印刷するものである。このスクリーン印刷機は、回路基板にクリーム状はんだ(以下、特に必要がない限りはんだと略称する)を印刷するために広く使用されており、その一例が下記特許文献1に記載されているが、一般のスクリーン印刷機に比較して、ユーザの要求が厳しい。例えば、回路基板に形成されたパッド上に極めて正確にはんだを印刷することが要求される。そのために、下記特許文献1に記載されているように、回路基板とマスクとにそれぞれ基準マークを設け、回路基板とマスクとが離間している状態で両者の間に撮像装置を進入させ、両者の基準マークを撮像させる等により、両者の相対的な位置ずれを検出し、回路基板またはマスクの位置を調節することが行われている。
【0003】
回路基板の位置調節は、従来、下記特許文献1に記載されているように、回路基板を支持する基板支持装置を水平面内において互いに直交する左右方向および前後方向に移動させるとともに、鉛直な回転軸線のまわりに回転させることにより行われ、マスクの位置調節は、同じく下記特許文献1に記載されているように、マスクを保持するマスク枠を、マスク枠受けに対して移動および回転させることにより行われていた。しかし、これら従来技術には、後に詳述するように、未だ改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−38456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記回路基板とマスクとの位置合わせの高精度化は、回路基板にはんだを印刷するスクリーン印刷機に対する要求の厳しさの一例であり、これ以外にも、スクリーン印刷機の設置スペースをさらに小さくすることや、製造コストをさらに低減させること、使い勝手を良くすることなど、種々の厳しい要求がなされている。本発明は、これらの要求の少なくとも1つを満たすべく、従来のスクリーン印刷機をさらに改良することを課題として為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、例えば、回路基板にはんだを印刷するスクリーン印刷機において、スキージおよびスキージ移動装置を、マスク枠を受けるマスク枠受けに保持させることにより解決される。マスクはマスク枠に保持され、そのマスク枠がマスク枠受けに受けられることにより、マスクがスクリーン印刷機の本体フレームに保持されるのであるが、そのマスク枠受けに、スキージおよびスキージ移動装置を保持させるのである。
【発明の効果】
【0007】
従来においては、マスク枠受けと、スキージ移動装置およびスキージとは、共にスクリーン印刷機の本体フレームに直接保持されていた。この構成では、スクリーン印刷機が大形となることを避け得ない。マスク枠受けは、そのスクリーン印刷機において使用が予定されている最大のマスクのマスク枠を受け得る大きさとすることが必要であるため、相当大形とせざるを得ず、そのマスク枠受けと、スキージ移動装置およびスキージとを、それぞれ直接にスクリーン印刷機の本体フレームに保持させる場合には、本体フレームを大形にせざるを得なかったのである。
それに対し、スキージおよびスキージ移動装置をマスク枠受けに保持させ、そのマスク枠受けを介して間接的に本体フレームに保持させれば本体を小形化することができ、結局、スクリーン印刷機全体を小形化することができる。
【発明の態様】
【0008】
前記課題は、以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。「請求可能発明」は、特許請求の範囲に記載の発明である本願発明やその下位概念発明あるいは上位概念発明を含み得、別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載,従来技術,技術常識等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0009】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(5)項が請求項4に、(7)項が請求項5に、それぞれ相当する。また、請求項2ないし4のいずれかに、(6)項,(8)項および(9)項に記載の特徴を加えたものが請求項6に相当し、(13)項が請求項7に相当する。
【0010】
(1)スキージをスキージ移動装置によりマスクに沿って移動させ、そのマスクの貫通穴を通して回路基板にクリーム状はんだを印刷するスクリーン印刷機において、
前記マスクのマスク枠を受けるマスク枠受けに、前記スキージおよび前記スキージ移動装置を含むスキージ装置を保持させたことを特徴とするスクリーン印刷機。
(2)当該スクリーン印刷機が本体フレームを含み、その本体フレームに、回路基板を支持する基板支持装置が少なくとも前記マスクに平行な平行方向には相対移動不能に保持される一方、前記マスク受けが前記平行方向に相対移動可能に保持され、それらマスク受けと本体フレームとの間に、そのマスク枠受けの前記基板支持装置に対する前記平行方向の相対位置を調節する位置調節装置が設けられた(1)項に記載のスクリーン印刷機。
本項に係るスクリーン印刷機(以下、特に必要がない限り印刷機と略称する)においては、基板支持装置に支持された回路基板とマスクとの相対的な位置ずれの解消が、マスク枠受けの位置調節によって行われる。そのマスク枠受けにはスキージ装置が保持されており、マスク枠受けと一体的に移動する。したがって、マスク枠受けの位置調節が行われても、それによってマスクとスキージとの相対位置に変化が生ずることがなく、下記の効果の少なくとも1つが得られる。
マスクが鉛直な回転軸線のまわりに回転させられれば、そのマスクに形成されている貫通穴とスキージの長手方向との相対的な傾きが変わり、貫通穴へのはんだの充填状態が変わることがあるのであるが、そのような事態の発生が回避される。また、スキージのマスクへの押付力を1回の印刷中に、マスクにおける貫通穴の形状,寸法,向き,密度等の変化に応じて自動的に変化させることが行われる場合には、その押付力の制御を正確に行うことが可能となる。
あるいは、回路基板を搬送する基板搬送装置が、回路基板を印刷機に搬入するインコンベヤ,基板支持装置と協同するメインコンベヤ,および回路基板を印刷機から搬出するアウトコンベヤに分けられる場合に、印刷機を小形化することが特に容易になる。この形態の基板搬送装置を備えた印刷機において、従来のように基板支持装置の位置を調節するようにすれば、インコンベヤおよびアウトコンベヤと、メインコンベヤとの間に、位置調節を許容する隙間を設けることが必要となる。イン,メインおよびアウトの3つのコンベヤの全長は、比較的長くなることを避け得ないのであるが、その上、それら3つのコンベヤの間の隙間を大きくすれば、さらに全長が長くなり、印刷機大形化の一因となる。それに対し、マスク枠受けおよびスキージ装置の側方には他の装置を設ける必要がないことが多く、これらの側方に位置調節のための隙間を設けても、印刷機の大形化につながらない場合が多いからである。
(3)前記位置調節装置が、前記マスク枠受けを、前記平行方向に平行な調節平面上において互いに交差する第1方向と第2方向とにおける第1位置および第2位置と、前記調節平面に直角な回転軸線まわりの回転位置との調節を行うものである(2)項に記載のスクリーン印刷機。
(4)前記位置調節装置が、
互いに前記第1方向に隔たった2つの位置にそれぞれ設けられ、前記第2方向の位置が調節可能な2つの第1スライドと、
それら2つの第1スライドの各々により1つずつ前記第1方向に移動自在に保持された計2つの第2スライドと、
それら2つの第2スライドの各々に1つずつ前記調節平面に直角な回転軸線まわりに回転自在に保持され、それぞれ前記マスク枠受けに固定された計2つの第1回転部材と、
前記2つの第1スライドから前記第2方向に隔たった位置に設けられ、前記第1方向の位置が調節可能な第3スライドと、
その第3スライドに前記第2方向に移動自在に保持された第4スライドと、
その第4スライドに、前記調節平面に直角な回転軸線まわりに回転自在に保持され、前記マスク枠受けに固定された第2回転部材と
を含む(3)項に記載のスクリーン印刷機。
(5)前記位置調節装置が、
前記2つの第1スライドを互いに独立に前記第2方向に駆動可能な2つの第1駆動装置と、
前記第3スライドを前記第1方向に駆動可能な第2駆動装置と、
前記2つの第1駆動装置と前記第2駆動装置とを関連制御することにより、前記マスク枠受けの前記第1位置,前記第2位置および前記回転位置の調節を行わせる調節制御装置と
を含む(4)項に記載のスクリーン印刷機。
前項と本項とに記載の構成を採用すれば、位置調節装置をコンパクトに構成することが容易になる。
(6)さらに、
前記基板支持装置を前記マスクに直角な方向に昇降させる昇降装置と、
その昇降装置により基板支持装置が下降させられることにより前記マスク枠受けと前記基板支持装置との間に形成されるスペースに進入可能に前記本体フレームに保持され、前記マスクを清掃するマスク清掃装置と、
そのマスク清掃装置を前記マスク枠受けに受けられたマスクに平行な清掃装置移動方向に移動させる清掃装置移動装置と
を含む(2)項ないし(5)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
(7)さらに、前記清掃装置移動装置と前記位置調節装置とを関連制御することにより、前記マスク清掃装置と前記マスク枠受けに受けられた前記マスクとの相対移動経路を曲線とする清掃用関連制御部を含む(6)項に記載のスクリーン印刷機。
清掃装置移動装置は、マスク清掃装置を直線的に移動させるものであるため、マスク清掃装置がマスク下面に描く移動軌跡も直線的となり、清掃効果が不足する場合がある。それに対して、位置調節装置は、マスクを、清掃装置移動装置によるマスク清掃装置の移動方向と平行な方向にも交差する方向にも移動させることができ、あるいは鉛直な回転軸線のまわりに回転させることができるため、これらマスクの運動と、清掃装置移動装置によるマスク清掃装置の運動とを組み合わせれば、マスク清掃装置がマスク下面に対して描く移動軌跡を曲線、すなわち、清掃効果のより大きい拭取動作を行わせることが可能となる。
(8)前記位置調節装置による、前記マスク枠受けの、前記清掃装置移動方向に平行な方向の移動可能量が、前記マスクと回路基板との相対位置の調整のために必要な移動可能量を超えて大きくされることにより、前記マスク清掃装置が当該スクリーン印刷機の前部側へと後部側へとの少なくとも一方における移動端位置までへ移動させられた状態では、そのマスク清掃装置へのアクセスが、前記マスク枠受けに受けられたマスクにより妨げられない状態を実現可能とされた(6)項または(7)項に記載のスクリーン印刷機。
本項に係る発明は、マスク枠受けの位置調節装置が、マスク枠受けを、マスク清掃装置の移動方向に平行な方向にも移動させる機能を有することを利用し、この方向の移動可能量を、位置調節に必要な移動可能量より大きくすることによって、マスク枠受けおよびそれに保持されたマスク枠を、前部側あるいは後部側の移動端位置にあるマスク清掃装置の上方から退避させ、マスク清掃装置へのアクセスを可能とするものであり、印刷機の製造コストの上昇を低く抑えつつ、メンテナンス作業を容易にする効果を奏する。
(9)当該スクリーン印刷機の内部空間を覆うカバー装置を含み、そのカバー装置が、前記内部空間の当該スクリーン印刷機の前部側の部分を前方と上方との少なくとも一方に向かって開放する開放位置と、前記前部側の部分を閉塞する閉塞位置とに移動可能な開閉扉を備え、前記マスク清掃装置へのアクセスが前記マスク枠受けに受けられたマスクにより妨げられない状態となる前記移動端位置が、当該スクリーン印刷機の前部側への移動端位置である(8)項に記載のスクリーン印刷機。
本項の構成を採用すれば、印刷機の前側からマスク清掃装置へアクセスすることが容易となり、清掃シートの交換等、比較的頻繁に必要となるメンテナンス作業が容易となる。開閉扉は、内部空間を上方と前方との両方に向かって開放するものであることが望ましい。
(10)前記マスク清掃装置が、
使用前の清掃シートが巻かれた第1ロールを軸線のまわりに回転可能に保持する第1ロール保持装置と、
使用済みの清掃シートが巻かれる第2ロールを軸線のまわりに回転可能に保持し、前記第1ロール保持装置から前記清掃装置移動装置による移動方向に平行な方向に離れた位置に設けられた第2ロール保持装置と、
前記第1ロールと前記第2ロールとの間において延びている清掃シートに清掃液を塗布する清掃液塗布ヘッドと、
その清掃液塗布ヘッドを保持し、前記第1,第2ロールの軸線に平行な方向に移動させるとともに、その移動範囲を変更可能である塗布ヘッド移動装置と
を含む(6)項ないし(9)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
マスクの要清掃範囲の大きさに応じて清掃シートの幅を変更することも、要清掃範囲の大きさにかかわらず清掃シートの幅を一定とすることも可能である。しかし、いずれにしても、清掃液は清掃シートの要清掃範囲に応じた領域に塗布すればよいのであり、本項の構成を採用すれば、清掃液の消費量を低減させることができる。
本項に記載のマスク清掃装置は、(6)項ないし(9)項の少なくとも1つに記載の特徴とは独立して採用することも可能である。
(11)前記清掃液塗布ヘッドおよび前記塗布ヘッド移動装置が、当該スクリーン印刷機の後部に設けられた(10)項に記載のスクリーン印刷機。
清掃液塗布ヘッドと塗布ヘッド移動装置とは、マスク清掃装置が後部側への移動端位置へ移動させられた状態で清掃シートに清掃液を供給する位置に配設されること、あるいはマスク枠受けの上方空間より後方に配設されることが望ましい。
(12)前記マスク枠受けおよび前記スキージ装置が、当該スクリーン印刷機の前部に設けられた(1)項ないし(11)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
印刷機に対して必要な作業は、マスクおよびスキージに関連したものが多く、本項の構成を採用すれば、それらの作業を印刷機の前側から行うことができ、作業性が向上する。
本項に記載の特徴は、(1)項ないし(11)項の少なくとも1つに記載の特徴とは独立して採用することも可能である。
(13)当該スクリーン印刷機の内部空間を覆うカバー装置を含み、そのカバー装置が、前記内部空間の当該スクリーン印刷機の前部側の部分を前方と上方との少なくとも一方に向かって開放する開放位置と、前記前部側の部分を閉塞する閉塞位置とに移動可能な開閉扉を備え、前記マスク枠受けおよび前記スキージ装置が、前記開閉扉が前記開放位置にある状態で、当該スクリーン印刷機の前に立った作業者によるアクセスが可能な位置に配設された(12)項に記載のスクリーン印刷機。
(14)さらに、
前記基板支持装置へ回路基板を搬入し、その回路基板支持装置から回路基板を搬出する前コンベヤと、
その前コンベヤの後方に設けられ、回路基板の当該スクリーン印刷機の通過を許容する後コンベヤと
を含む(1)項ないし(13)項のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
印刷機が回路基板の通過を許容する機能を備えることとなり、1本の電子回路部品装着ラインに対して、はんだが印刷された回路基板を、複数の印刷機の共同により供給する印刷ラインの構成が容易となる。また、マスク枠受けおよびスキージ装置が印刷機の前方に配設されることとなる。
(15)前記前コンベヤが、
前記基板支持装置と協同するメインコンベヤと、
そのメインコンベヤの上流側に配設されて回路基板を前記スクリーン印刷機に搬入するインコンベヤと、前記メインコンベヤの下流側に配設されて回路基板を前記スクリーン印刷機から搬出するアウトコンベヤとの少なくとも一方と
を含む(14)項に記載のスクリーン印刷機。
(20)使用前の清掃シートが巻かれた第1ロールを軸線のまわりに回転可能に保持する第1ロール保持装置と、
使用済みの清掃シートが巻かれる第2ロールを軸線のまわりに回転可能に保持し、前記第1ロール保持装置から前記清掃装置移動装置による移動方向に平行な方向に離れた位置に設けられた第2ロール保持装置と、
前記第1ロールと前記第2ロールとの間の清掃シートをマスクの下面に押し付ける押付部材と、
その押付部材を清掃シートを介して前記マスクに接触,離間させる押付部材駆動装置と
を含むマスク清掃装置。
本項のマスク清掃装置は、(1)項ないし(15)項のいずれに記載のスクリーン印刷機にも適用可能である。
(21)前記マスク清掃装置が、前記押付部材の、マスクの下面に平行な回動軸線のまわりの回動を許容する回動許容装置を含む(20)項に記載のマスク清掃装置。
回動許容装置は、押付部材と押付部材駆動装置との間に設けられ、押付部材の押付部材駆動装置に対する回動を許容するものでも、押付部材駆動装置を回動可能に支持することにより、その押付部材駆動装置と共に押付部材の回動を許容するものでもよい。
本項の構成を採用すれば、清掃シートのマスク下面への接触面圧の均一化により、清掃効果を高めることができる。
(22)前記押付部材が、清掃シートに接触する押付面に、清掃シートを通して空気を吸引する吸引口を有し、その吸引口に連通した吸引チャンバ内に、加圧空気を噴出することにより負圧を発生させる負圧発生装置が設けられた(20)項または(21)項に記載のマスク清掃装置。
マスクの貫通穴内に残っているはんだや清掃シートに拭き取られたはんだ、あるいはマスク上面側へ出た清掃液を良好に除去することができる。
(23)前記吸引口が、前記第1,第2ロールの軸線に平行な方向を長手方向とする長手形状を有し、前記吸引チャンバが前記吸引口の長手方向と平行な方向に延び、その吸引チャンバに前記吸引口がその吸引口の全長にわたって連通させられ、前記負圧発生装置が前記吸引チャンバの長手方向の中央部に設けられた(22)項に記載のマスク清掃装置。
長手形状の吸引口の全長にわたってほぼ均一な吸引効果を得ることができる。
(30)互いに一定距離を隔てて互いに平行に設けられた一対の水平ガイドと、
それら水平ガイドに案内されるスキージスライドと、
そのスキージスライドを前記一対の水平ガイドに沿って移動させるスキージスライド駆動装置と、
前記スキージスライドに対して昇降可能な第1昇降部材と、
その第1昇降部材に対して昇降可能な第2昇降部材と、
それら第1昇降部材と第2昇降部材との間に設けられ、第1昇降部材に対して第2昇降部材を昇降させる昇降駆動装置と、
前記第2昇降部材に保持されたスキージと、
前記スキージスライドと前記第1昇降部材との間に互いに直列に設けられた弾性部材および荷重検出器と
を含むスキージ装置。
スキージ本体と第1昇降部材との間に荷重検出器を設ける場合には、従来におけるように昇降駆動装置により昇降させられる昇降部材とスキージとの間に荷重検出器を設ける場合に比較して、昇降駆動装置により荷重検出器をも昇降させる必要がなく、昇降駆動装置を小形化し得るとともに、荷重検出器は昇降しないか昇降距離が小さくて済むため、配線が容易となり、かつ、故障しにくくなる。また、1つの第1昇降部材に対して第2昇降部材,昇降駆動装置およびスキージが一対設けられる場合には、荷重検出器を兼用とすることにより、製造コストを低減し得る特有の効果が得られる。以上は、荷重検出器と直列に弾性部材を設けなくても得られる効果であり、この態様も請求可能発明の一つである。
その上、本項に係る発明は荷重検出器と直列に弾性部材を設けるという特徴を有しており、それによって、昇降駆動装置の単位作動量に対するスキージの押付荷重の変化量が小さくなり、昇降駆動装置の作動量の制御による押付荷重の制御が容易となるという効果が得られる。
本項の特徴は、(1)項ないし(15)項のいずれに記載のスクリーン印刷機にも適用可能であり、(20)項ないし(23)項のいずれに記載のマスク清掃装置とも組み合わせて採用することができる。
(31)マスクが回路基板に接触させられていない状態で、前記昇降駆動装置を作動させ、前記スキージまたはスキージとは別の検出用部材をマスクに押し付け、その際の昇降駆動装置の作動量と、前記荷重検出器により検出される荷重とに基づいて、マスクの張力と一対一に対応する張力対応量を取得する張力対応量取得部を含む(30)項に記載のスキージ装置。
スキージをマスクに押し付けてマスクを比較的大きく撓ませても差し支えない場合には、スキージを押し付け、それが望ましくない場合には検出用部材を押し付ける。いずれにしても、マスクの張りの状態を簡単に検出することができる。マスクの張りは使用に伴って低下するのが普通であり、張りの低下は印刷精度低下の一因となるため、張り(張力)が設定状態(設定張力)以下である場合には、その旨の報知を行って、マスクの交換を促すことが望ましい。
本項に記載の特徴は、(30)項に記載の特徴とは別に採用することも可能である。
(32)さらに、前記昇降駆動装置を制御することによって、前記スキージのクリーム状はんだからの離間を制御するスキージ離間制御部を含む(30)項または(31)項に記載のスキージ装置。
1回の印刷動作が終了して、スキージをはんだから離間させる際、はんだの一部がスキージに付着して引き出され、ロール状のはんだの形状が崩れたり、はんだ内に空気が閉じこめられて気泡となったりする場合がる。これらの事態は印刷品質に悪影響を及ぼすことがあるため、発生を防止することが望ましい。本項の発明に従えば、この目的を良好に達成することができる。スキージ離間制御部を、荷重検出器による検出結果に基づいて離間を制御するものとすることがさらに望ましい。
(40)マスクに形成された複数の貫通穴を通してスキージによりクリーム状はんだが回路基板に印刷されるスクリーン印刷機のクリーム状はんだ供給装置であって、
前記スキージの長手方向に平行なガイドに沿って移動可能な可動部材と、
その可動部材に、前記スキージの長手方向に直角でかつ前記マスクに平行な回動軸線のまわりに回動可能に保持された回動部材と、
その回動部材に設けられ、クリーム状はんだを収容するとともに一端に吐出口を有するクリーム状はんだ収容器を着脱可能に保持する収容器保持装置と、
前記印刷剤収容器に前記吐出口からクリーム状はんだを吐出させる吐出駆動装置と、
前記可動部材を駆動する可動部材駆動装置と、
前記回動部材を回動させる回動部材駆動装置と、
前記吐出駆動装置,前記可動部材駆動装置および前記回動部材駆動装置を制御することにより、通常は前記印刷剤収容器を前記吐出口が横向きとなる姿勢に保持し、クリーム状はんだの供給時には、前記印刷剤収容器を前記吐出口が下向きとなる姿勢まで回動させ、前記マスクに平行な移動軌跡を描いて移動させつつ前記吐出口からクリーム状はんだを前記マスクに向かって吐出させる制御装置と
を含むことを特徴とするクリーム状はんだ供給装置。
印刷剤収容器を吐出口が下向きの状態を保つものとすることも可能である。しかし、その場合には、はんだの自重によってはんだが吐出口から垂れ下がることがあり得るため、通常は、印刷剤収容器を吐出口が横向きとなる姿勢に保つことが望ましい。
本項に記載のクリーム状はんだ供給装置は、(1)項ないし(15)項のいずれに記載のスクリーン印刷機にも適用可能であり、(20)項ないし(23)項のいずれに記載のマスク清掃装置とも、(30)項ないし(32)項のいずれに記載のスキージ装置とも組み合わせて採用することが可能である。
(41)前記印刷剤収容器に最多量のクリーム状はんだが収容された状態でその印刷剤収容器を前記縦姿勢に向かって付勢する回転モーメントである最大モーメントより小さく、逆向きの回転モーメントである逆モーメントを、前記印刷剤収容器に加える逆モーメント付与装置を含む(40)項に記載のクリーム状はんだ供給装置。
逆モーメント付与装置を、最大モーメントと等しい大きさの逆モーメントを加えるものとすれば、印刷剤収容器に最多量のクリーム状はんだが収容された状態では、回動部材駆動装置が印刷剤収容器を回転させるために必要な駆動モーメントを0とすることができるが、印刷剤収容器に最少量のクリーム状はんだが収容された状態では、殆ど逆モーメントに等しい駆動モーメントが必要となる。したがって、逆モーメント付与装置は、最大モーメントの半分の大きさの逆モーメントを加えるものとすることが望ましい。そのようにすれば、回動部材駆動装置を、逆モーメント付与装置を設けない場合の半分の駆動トルクを発生させ得るものとすることができる。逆モーメント付与装置としては、例えば、カウンタウエイトとスプリングとの少なくとも一方を含むものが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】請求可能発明の一実施形態であるスクリーン印刷機を含む電子回路組立ラインを示す斜視図である。
【図2】上記スクリーン印刷機およびシャトルコンベヤにおける基板搬送装置を示す平面図である。
【図3】上記スクリーン印刷機の本体フレームを示す側面図である。
【図4】上記スクリーン印刷機におけるマスク清掃装置および基準マーク撮像装置を移動させる装置を示す斜視図である。
【図5】上記スクリーン印刷機におけるマスク枠受けと、マスクの位置調節装置とを示す平面図である。
【図6】上記スクリーン印刷機におけるスキージ装置を示す平面図である。
【図7】前記位置調節装置の一部を取り出して示す斜視図である。
【図8】前記スキージ装置の一部を取り出し、スキージスライドの前側の連結部を除去して示す部分断面斜視図である。
【図9】上記スキージ装置のスキージヘッドを示す斜視図である。
【図10】上記スキージ装置におけるはんだ掻寄装置を示す斜視図である。
【図11】前記スクリーン印刷機におけるはんだ供給装置を示す正面図である。
【図12】上記はんだ供給装置を示す一部断面側面図である。
【図13】前記スクリーン印刷機における清掃液塗布装置を示す斜視図である。
【図14】前記スクリーン印刷機における清掃装置を清掃装置本体の一部を除去して示す側面図である。
【図15】前記スクリーン印刷機におけるカバー装置の一部を示す側面図断面図である。
【図16】前記スクリーン印刷機の制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、請求可能発明の実施形態を、図を参照しつつ説明する。なお、請求可能発明は、下記実施形態の他、上記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0013】
図1に、請求可能発明の一実施形態である印刷機(スクリーン印刷機)を含む電子回路組立ラインを示す。この電子回路組立ラインは、複数台(図示の例では2台)の印刷機10と、複数台(図示の例では2台)のシャトルコンベヤ12と、複数台(図示の例では4台)の装着機(電子回路部品装着機)14とを含んでいる。印刷機10および装着機14は回路基板に対して作業を施す対基板作業機の一種であり、電子回路組立ラインは対基板作業ラインの一種である。2台の印刷機10は、4台の装着機14に対して、電子回路組立ラインにおける回路基板の搬送方向において上流側に互いに隣接して設けられ、2台のシャトルコンベヤ12の一方は、2台の印刷機10の間に設けられ、他方は、下流側の印刷機10と、その印刷機10に隣接する装着機12との間に設けられている。本明細書においては、回路基板の搬送方向である基板搬送方向を左右方向とし、基板搬送方向と直交する方向を前後方向とする。本実施形態においては、左右方向および前後方向はいずれも水平である。
【0014】
2台ずつの印刷機10およびシャトルコンベヤ12はそれぞれ、同様に構成されており、上流側の印刷機10およびシャトルコンベヤ12を代表的に説明する。
印刷機10は、図2に示すように、印刷機本体20,前コンベヤ22および後コンベヤ24を備えている。前コンベヤ22は印刷機本体20の前部に設けられ、後コンベヤ24は後部に設けられている。前コンベヤ22は、メインコンベヤ26と、基板搬送方向においてメインコンベヤ26の上流側に配設されたインコンベヤ28と、下流側に配設されたアウトコンベヤ30とを含む。メインコンベヤ26,インコンベヤ28およびアウトコンベヤ30はいずれも、ベルトコンベヤにより構成され、1対のコンベヤベルト32と、それらコンベヤベルト32をそれぞれ周回させるベルト周回装置34とを含み、回路基板をその被印刷面が水平となる姿勢で搬送する。また、搬送すべき回路基板の幅に合わせて搬送幅(一対のコンベヤベルト32の間隔)が、幅変えモータ36およびベルト38を含む幅変え装置により変更される。後コンベヤ24も同様に搬送幅の変更が可能なベルトコンベヤにより構成されている。
【0015】
シャトルコンベヤ12は、コンベヤ本体40と、ガイド42と、可動コンベヤ44と、可動コンベヤ移動装置46とを含む。可動コンベヤ44は、上記前コンベヤ22等と同様に、搬送幅の変更可能なベルトコンベヤにより構成されている。可動コンベヤ移動装置46は、駆動源たるシャトル用モータ50,ベルト52および複数のプーリ54を含む。複数のプーリ54のうちの1つがシャトル用モータ50により回転させられ、ベルト52に連結された固定サイドフレーム56および支持フレーム58が移動させられるとともに、搬送幅調節装置59を介して可動サイドフレーム60も移動させられ、可動コンベヤ44全体が前後方向の任意の位置へ移動可能である。
【0016】
印刷機本体20の主体を成す本体フレーム70は、概略、図3に示す構造を有し、下から順に第1桁72,第2桁74,第3桁76および第4桁78を有している。これら第1ないし第4桁は、本体フレーム70の左側と右側とに1本ずつ設けられて2本ずつで対を成し、本体フレーム70に支持される下記の各装置の左端部と右端部とをそれぞれ支持する。図4に示すように、1対の第3桁76の各々にはガイド80が、1対の第3桁76の一方には送りねじ82がそれぞれ設けられ、送りねじ82が電動モータ84により回転させられることにより、スライド86が前後方向に移動させられる。送りねじ82としてはボールねじが好適であり、電動モータ84としてはサーボモータ等回転角度の制御が可能な電動モータが好適である。以下に記載の送りねじおよび電動モータについても同様である。
【0017】
上記スライド86には、後に詳述するマスク清掃装置88が取り付けられている。また、スライド86には、図4に示すように、別のスライド94がガイド96により案内されて左右方向に移動可能に設けられており、図示を省略する送りねじおよび電動モータにより移動させられる。このスライド94には、後述のマスクおよび回路基板に設けられた基準マークを撮像するための基準マーク撮像装置98が取り付けられている。
【0018】
前記前コンベヤ22および後コンベヤ24は、本体フレーム70の第2桁74の上方位置に設けられ、第1桁72と第3桁76との間の空間に基板支持装置および基板クランプ装置を含む基板保持装置110と、それを昇降させる昇降装置112とが設けられている。これらの構成の詳細な説明は省略し、位置のみを二点鎖線で示すが、基板支持装置はメインコンベヤ22により搬送された回路基板を下方から支持するものであり、メインコンベヤ22と共同して基板クランプ装置を構成する。また、昇降装置は、基板支持装置をメインコンベヤ22に対して相対的に昇降させる第1昇降駆動部と、基板支持装置とメインコンベヤとを一体的に昇降させる第2昇降駆動部とを含んでいる。
【0019】
前記一対の第4桁78により、図5に示すマスク枠受け120および位置調節装置122と、図6に示すスキージ装置124とが支持されている。マスク枠受け120は、印刷領域128に複数の貫通穴130を有するマスク132を保持するマスク枠134を下方から受けるものであり、一対の受け部136と、それらにマスク枠134を押し付けて固定する固定装置としての複数のエアシリンダ138とを備えている。位置調節装置122は、第4桁78とマスク枠受け120との間に設けられ、マスク枠受け120の位置を調節することにより、マスク枠受け120に保持されたマスク132と、前記基板保持装置110に保持された回路基板との相対的な位置ずれを解消するものである。
【0020】
位置調節装置122は、互いに左右方向に隔たった2つの前後方向調節ユニット144と、それら2つの前後方向調節ユニット144から前後方向に隔たった1つの左右方向調節ユニット146と、その1つの左右方向調節ユニット146から左右方向に隔たった1つの浮動支持ユニット148とを含んでいる。前後方向位置調節ユニット144の各々は、図7に一方を代表的に示すように、第4桁78に、前後方向に平行に固定されたガイド154と、そのガイド154に平行にかつ軸方向に移動不能に設けられた送りねじ156と、その送りねじ156を回転駆動する電動モータ158と、スライド160とを含んでおり、電動モータ158の回転によりスライド160が前後方向に移動させられる。そのスライド160には別のスライド162が左右方向に相対移動自在に保持されており、そのスライド162に回転部材164が、鉛直な回転軸線のまわりに回転自在に保持されている。
【0021】
左右方向調節ユニッ146は、図5に示すように、ガイド174,送りねじ176,電動モータ178,スライド180,182および回転部材184を含んでいる。この基本的な構成は前後方向調節ユニット144と同じであるが、ガイド174および送りねじ176が左右方向に平行に配設されている点と、スライド180が前後方向に長い形状を有し、スライド182が前後方向に大きな距離移動自在とされている点とにおいて異なっている。
浮動支持ユニット148は、前後方向に平行なガイド190、そのガイド190上を移動自在なスライド192、そのスライド192上を左右方向に移動自在な別のスライド194、およびそのスライド194に鉛直な回転軸線のまわりに回転可能に保持された回転部材196を含んでいる。
【0022】
本位置調節装置122において、2つの前後方向調節ユニット144のみを同量ずつ同方向に作動させれば、マスク枠受け120を前後方向に平行移動させることができ、1つの左右方向調節ユニット146のみを作動させれば、マスク枠受け120を左右方向に平行移動させることができ、2つの前後方向調節ユニット144と1つの左右方向調節ユニット146とを関連制御すれば、マスク枠受け120を任意の位置の鉛直な回転軸線のまわりに回転させることができ、これらを組み合わせた運動を行わせることもできる。これらいずれの場合にも、浮動支持ユニット148はマスク枠受け120の対応部分の水平方向の自由な移動を許容しつつ荷重を受ける。
【0023】
上記マスク枠受け120の上面に、図5に二点差線で示すスキージ装置本体200が固定されている。スキージ装置本体200は、図6に示すように、平面形状がU字形の平板状部材であり、Uの字の2本のアーム部にそって2本のガイド202が設けられている。これら2本のガイド202に、スキージスライド204が移動可能に支持されおり、スキージスライド駆動装置206によって前後方向に移動させられる。本実施形態におけるスキージスライド駆動装置206は、複数のプーリ210と、それらに巻き掛けられたベルト212と、複数のプーリ210の1つを回転駆動する電動モータ214とを含む。プーリ210およびベルト212としては、タイミングプーリおよびタイミングベルトが好適であり、電動モータ214としてはサーボモータ等回転角度の制御が可能電動モータが好適である。以下のプーリ,ベルトおよび電動モータについても同様である。
【0024】
スキージスライド204は、2本のガイド202にそれぞれ案内される2つのスライド部220と、それらスライド部220を連結する前後2つの連結部224と、それら左右方向に延びる2つの連結部224の間に掛け渡されて前後方向に延びる1つのブリッジ部226と、一対のブリッジ部228とを備えている。そのスキージスライド204には、図8に示すように、1つの第1昇降部材240と、2つの第2昇降部材242とが相対的に昇降可能に保持されており、各第2昇降部材242に、図9に示すスキージヘッド230がそれぞれ保持される。
【0025】
各第2昇降部材242には、左右方向に距離を隔てて2本のガイドロッド244が鉛直上向きに固定されている。これらガイドロッド244はそれぞれ、第1昇降部材240に設けられた2つずつのガイドスリーブ246と、前記1対のブリッジ部228の各々に設けられた2つずつガイドスリーブ248の各一方とに摺動可能に嵌合されており、結局、2つの第2昇降部材242の各々は、2本のガイドロッド244と2つのガイドスリーブ246とにより案内されて第1昇降部材240に対して鉛直方向に昇降し、また、第1昇降部材240は4本のガイドロッド244と4つのガイドスリーブ248とにより案内されてスキージスライド204に対して鉛直方向に昇降する。ガイドロッド244が第1昇降部材240と第2昇降部材242とのガイドを兼ねているのである。
【0026】
第1昇降部材240の中央部と、スキージスライド204との間には、図8に示すように、弾性部材の一種である圧縮コイルスプリング254と、荷重検出器の一種であるロードセル256とが互いに直列に配設されている。具体的には、前記ブリッジ部226に長手形状のロードセル256の一端部が固定される一方、そのロードセル256の入力部258と第1昇降部材240のスプリングリテーナ260との間に圧縮コイルスプリング254が挟まれているのである。また、第1昇降部材240とスキージスライド204との間には、弾性部材の一種である引張コイルスプリング262が2本配設されている。これら2本の引張コイルスプリング262の張力の和は、第1昇降部材240と、それに保持されている第2昇降部材242,スキージヘッド230をはじめとする種々の部材及び装置の重量の和よりやや大きくされており、ロードセル256には比較的小さい初期圧縮荷重が加えられている。
【0027】
2つの第2昇降部材242の各々は昇降駆動装置270により第1昇降部材240に対して相対的に昇降させられる。本実施形態においては、第2昇降部材242の中央部に1本ずつの送りねじ272が、前記2本ずつのガイドロッド244と平行に上向きに取り付けられる一方、第1昇降部材240に2つのナット274が回転可能かつ軸方向に移動不能に取り付けられて各送りねじ272と螺合されており、各ナット274がそれぞれ電動モータ280,プーリ282およびベルト284により回転させられることによって、各第2昇降部材242が個別に上下方向に平行移動させられる。
【0028】
各第2昇降部材242は長手形状を有するものであるが、それの長手方向の中央から1つの耳片290が垂下させられ、その耳片290がヘッド保持部材292に、連結ピン294により相対回動可能に連結されている。ヘッド保持部材292は長手形状の部材であるが、その中央部に1つの耳片296が設けられており、その耳片296がヘッド保持保持部材292の中央部と共同してヨーク部を形成しており、耳片290がそのヨーク部に嵌入した状態で、両者が連結ピン294により連結されているのである。ヘッド保持部材292は両端支持の連結ピン294によって回動可能に保持されていることとなる。
【0029】
各ヘッド保持部材292に、図9に示すスキージヘッド230が着脱可能に取り付けられる。スキージヘッド230のヘッド本体300には、取付部として2つのフック302が設けられており、これらフック302の各々が、ヘッド保持部材292に螺合された2本の固定ねじ304(図8においては1本のみ図示されている)の軸部に掛けられ、固定ねじ304が手で締め込まれることにより、ヘッド本体300がヘッド保持部材292に取り付けられるのである。したがって、2つの第2昇降部材242が個別に昇降させられれば、それら第2昇降部材の各々に保持されたスキージヘッド230が個別にマスク132に押し付けられ、あるいはマスク132から離間させられることとなる。
なお、固定ねじ304は、図8に示すように、ヘッド保持部材292にそれの長手方向に平行に形成された山形の突起306の頂部に形成された雌ねじ穴308に螺合されており、一方、フック302のヘッド保持部材292に対向する面にはV字形の溝が設けられているため、これらの係合により、ヘッド本体300のヘッド保持部材292に対する上下方向の位置決めが行われる。
【0030】
スキージヘッド230は、ヘッド本体300に対して相対回動可能なスキージ保持体310を含んでいる。スキージ保持体310はスキージ312を着脱可能に保持するものであるが、そのスキージ312の下端縁を中心とする円弧に沿った外周面を有する扇形の被保持部314を備えており、一方、ヘッド保持体310は、上記円弧に沿った受け面316を備えた保持部318を備えている。被保持部314は保持部318に、T溝とTブロックとを利用した固定装置と類似の固定装置により固定される。すなわち、被保持部314は、スキージ保持体310から上方へ互いに平行に延び出させられた扇形板320、321の互いに対向する面の上記円弧に沿った縁部から互いに接近する向きに突出させられた円弧状の2つの凸条322を備えており、これら凸条322と係合する横断面形状がT字形のブロック324に、保持部318に回転可能に保持された固定ねじ326が螺合され、締め付けられることにより、保持部318とブロック324とによって上記2つの凸条322が強固に挟まれ、被保持部314が保持部318に固定されるのである。したがって、スキージ保持体310のヘッド保持部材292に対する相対角度、すなわち、スキージ312とマスク132とが成すくさび角を任意に変更可能であり、この変更は、スキージ312の下端縁を中心とする回動により行われるのである。扇形板320の円弧状の外周面には、保持部318の縁との共同で上記くさび角を表す目盛328が付されている。
【0031】
ヘッド保持部材292にははんだ掻寄部材334が取り付けられている。はんだ掻寄部材334は、図10に示すブラケット336に取り付けられており、このブラケット336がヘッド保持部材292の背面に取り付けられる。はんだ掻寄部材334はゴム製であり、自由状態においては、図10に示すように、真っ直ぐな棒状を成す断面形状が台形の部材であるが、取り付けられた状態では、スキージ312の側端面に当接して弾性的に屈曲させられ、その屈曲させられた部分が、二点鎖線で示すように、スキージ312の移動方向に平行な状態となる。スキージ312のくさび角の変更は、前述のように、スキージ312の下端縁を回動中心線とする回動により行われるため、くさび角の変更によりスキージ312の下端縁の高さが変わることがなく、はんだ掻寄部材334は、常にスキージ312の側端面とマスク132とに接触し、はんだを良好にスキージ側へ掻き寄せる機能を果たす。
【0032】
上記はんだは、図11および図12に示すはんだ供給装置340によりマスク132上に供給される。はんだ供給装置340ははんだ収容器342を備えている。はんだ収容器342は、長手形状の円筒容器であり、一端部にはんだ補給用の開口を有しているが、この開口は通常はキャップ344により気密に覆われている。はんだ収容器342は、他端に吐出口346を有している。はんだ収容器342内にはピストン347が摺動可能に嵌合されており、吐出駆動装置としてのエア供給装置348から、キャップ344に設けられたエア供給部350を経て、加圧空気が供給されることにより、ピストン347を介してはんだ収容器342内のはんだ350が加圧され、吐出口346から吐出される。
【0033】
はんだ収容器342は、収容器保持装置354により回動部材356に着脱可能に取り付けられ、回動部材356は、回動部材駆動装置としてのロータリシリンダ358を介して可動部材360に取り付けられている。可動部材360は、ガイド362を介してはんだ供給装置本体364に、左右方向に移動可能に保持されており、可動部材駆動装置366により移動させられる。可動部材駆動装置366は、はんだ供給装置本体364に固定された駆動源としての図示しない電動モータによって周回させられるベルト368を含んでおり、このベルト368の1箇所に可動部材360が結合されている。したがって、電動モータの回転により、可動部材360およびはんだ収容器342が左右方向に移動させられる。本実施形態においては、はんだ供給装置本体364は前述のスキージスライド204の前側に固定されており、スキージヘッド230と共に移動させられるが、スキージ装置本体200あるいは本体フレーム70に固定することも可能である。
【0034】
はんだ収容器342は、通常は図11に示すように、長手方向が左右方向と平行になる横向きの姿勢に保たれている。これは、はんだ収容器342内のはんだ352が、エアの供給がないのに自重により吐出口346から垂れることを回避するためである。そして、はんだ350の供給時には、吐出口346が下を向く縦向きの姿勢に回動させられる。はんだ収容器342は、横向きの姿勢では、周辺の部材と干渉するため、充分な大きさのストロークで移動させることができないが、縦向きの姿勢では、マスク132上に予定されている最大はんだ供給領域に対応するストロークで左右方向に移動させることができる。はんだ352は、一対のスキージ312の間のスペースにではなく、そのスペースの外側に供給され、スキージ312の一方がマスク132から離れた上昇位置にある状態で、スキージヘッド230が移動させられ、マスク132上のはんだが平面視で一対のスキージ312の間に位置する状態で、上記一方のスキージ312が下降させられることにより、一対のスキージ312の間のスペースに取り込まれる。
【0035】
はんだ収容器342に収容限度一杯のはんだ352が収容され、そのはんだ収容器342が図11に示す横向きの姿勢にある状態では、はんだ352により相当大きな回転モーメントが回動部材356に加えられる。しかし、本実施形態では、前記キャップ344が比較的質量の大きいものとされるとともに、図12に示すように、回動部材356とロータリシリンダ358のハウジングとの間に、弾性部材としてのねじりコイルスプリング374が設けられており、これの弾性力と上記キャップ344の重量とに基づく回転トルクが、はんだ収容器342に、上記限度一杯のはんだ352の重量に基づく回転トルクの1/2の大きさで逆向きに加えられている。キャップ344とねじりコイルスプリング374とにより逆モーメント付与装置が構成されているのであり、その結果、ロータリシリンダ358の駆動能力を逆モーメント付与装置が設けられない場合の約半分にすることができる。
【0036】
前記マスク清掃装置88の詳細を図13,図14に示す。清掃装置本体380は前述のスライド86に固定されて、スライド86の一部として機能するようにされている。清掃装置本体380には、2つのロール保持装置382(図13には一方のみ図示されている)が前後方向に距離を隔てて保持されており、使用前の清掃シートが巻かれた第1ロール384と使用済みの清掃シートが巻かれる第2ロール386とをそれぞれ軸線のまわりに回転可能に保持する。第1,第2ロール384,386はそれぞれロール駆動装置としての電動モータ390,392により回転させられ、清掃シートの、第1ロール384から第2ロール386へ渡る部分(以下、渡り部394と称する)を送るとともに、その渡り部に張力を加えたり、弛みを与えたりする。
【0037】
第1,第2ロール384,386間にはシート押付装置400が設けられている。シート押付装置400は、押付部材402と、その押付部材402を昇降させる押付部材駆動装置としてのエアシリンダ404とを含んでいる。押付部材402は、連続気泡を有する発泡材から成っており、第1,第2ロール384,386の軸線に平行な方向に長い長手形状を有し、その全長に亘って延びる吸引口406を備えている。押付部材402は、図14に示すように、保持部材410に保持されているが、この保持部材410には、吸引口406とほぼ同じ長さを有する開口412を備えている。開口412は下部ほど横断面積が広くなる形状を有し、その下端に負圧発生装置414が接続されている。負圧発生装置414は良く知られたものであるため、図示および詳細な説明は省略するが、加圧空気を噴射する噴射ノズルの周囲の圧力が低下することを利用して負圧を発生させるものであり、開口412および吸引口406の長手方向の中央部において負圧を発生させる。その結果、開口412,吸引口406および渡り部394を経て、空気が吸引口406の全長にわたってほぼ均一に吸引され、その空気と共に後述の清掃液や、マスク130の貫通穴130内に残るはんだが吸引される。
【0038】
前記清掃装置本体380には、渡り部394を支持するシート支持部材420が固定的に設けられているが、押付部材402はエアシリンダ404により、シート支持部材420より下方に引っ込んだ下降位置と、シート支持部材420から上方へ突出した上昇位置とに移動させられる。しかも、エアシリンダ404が、支持軸422により、前後方向に平行な回転軸線のまわりに回転可能に清掃装置本体380に保持されているため、押付部材402が全長にわたって均一な圧力でマスク132に押し付けられ、渡り部394がマスク132の下面に良好に密着することが保証される。
【0039】
上記渡り部394には、印刷機10の後部に設けられた清掃液塗布装置430により清掃液が塗布される。清掃液塗布装置430は、清掃液塗布ヘッド432と、それを第1,第2ロール384,386の軸線に平行な方向に移動させる塗布ヘッド移動装置434とを含んでおり、前記スライド86が後退端位置へ移動させられた状態で、清掃液塗布ヘッド432がマスク清掃装置88(厳密には清掃シートの渡り部394)の上方に位置するように、本体フレーム70に取り付けられている。清掃液塗布ヘッド432は、ガイド436に案内される移動部材438に保持されており、この移動部材438が、電動モータ444,プーリ446,ベルト448を含む塗布ヘッド移動装置434により移動させられることにより、清掃液塗布ヘッド432が任意の移動範囲において移動させられるのである。したがって、清掃液塗布ヘッド432は、渡り部394の、実際にマスク132の清掃を行うべき部分に限定して清掃液を塗布することとなる。清掃液は溶剤を主体とするものであり、図示を省略する清掃液供給装置から、加圧されて清掃液塗布ヘッド432のノズルに供給され、ノズルから水平に吐出された清掃液は、そのノズルに対向して設けられた受け部材450に受けられ、渡り部394に滴下させられる。
【0040】
本印刷機10においては、前コンベヤ22,基板保持装置110,マスク枠受け120およびスキージ装置124等から成る印刷部が、本体フレーム70の前部に設けられるとともに、印刷機10全体を覆うカバー452(図1参照)の前部に開閉扉454が設けられ、その開閉扉454に、内部を透視可能な透視窓456およびディスプレイを備えた操作パネル458が設けられている。開閉扉454は図15(a)に示す閉状態から図15(b)に示す開状態に手動で容易に開くことができ、かつ、開閉扉454,リンク460およびカバー452により構成されるリンク機構により、図15(b)に示す状態に安定に保持できるようにされている。また、操作パネル458のディスプレイが、開閉扉454を開いた状態においても正面から見ることができるように取り付けられている。そのため、作業者462は、印刷機10を運転するために必要な操作や監視を印刷機10の前方から行うことができるとともに、開閉扉454を開いて行う必要のある印刷部に対するメンテナンス等も、操作パネル458に対する操作やディスプレイの監視を行いつつ前方から行うことができる。カバー452,開閉扉454および透視窓456によりカバー装置が構成されている。
【0041】
以上のように構成された電子回路組立ラインは、図1に示すように、各印刷機10をそれぞれ制御する制御装置470と、各装着機14をそれぞれ制御する制御装置472と、それら制御装置470,472を統括制御する統括制御装置474とを含む制御システムにより制御される。シャトルコンベヤ12はそれぞれそれらの上流側の印刷機10の制御装置470によって制御される。
【0042】
上記制御装置470のさらに詳細な構成を図16に示す。制御装置470はCPU,RAM,ROMおよびI/Oポートを含むコンピュータ480を主体として構成されており、このコンピュータ480に種々の検出装置や作動装置が接続されている。それらのうち、請求可能発明と関係の深いものを図16に示すが、電動モータ84,158,178,214,280,390,392,444等の電動アクチュエータがそれぞれ駆動回路482を介して、また、ロータリシリンダ358,エアシリンダ404,負圧発生装置414等の流体アクチュエータがそれぞれ制御弁駆動回路484および制御弁486等を介してI/Oポートに接続される一方、ロードセル256が直接、基準マーク撮像装置98が制御および画像処理装置488を介してそれぞれI/Oポートに接続されている。
コンピュータ480のROMには、統括制御装置474,操作パネル458および各種検出装置からの情報に基づいて各種作動装置を制御するためのプログラムが格納されている。それらの制御による印刷機10の作動のうち、請求可能発明に関係の深いものを以下に説明する。
【0043】
(i) 回路基板とマスク132との位置調節
下降位置にある基板保持装置110に回路基板が保持された後、電動モータ84と図示しない電動モータとが作動させられてスライド86,94が移動させられ、基準マーク撮像装置98より、回路基板とマスク132とにそれぞれ設けられた基準マークが撮像され、その撮像結果に基づいて回路基板とマスク132との位置ずれが除去される。前記位置調節装置122の電動モータ158,178の制御により、マスク枠受け120の左右方向および前後方向の位置および回転位置が調節され、マスク132の位置が回路基板の位置に合わされるのである。この位置合わせが終了したならば、マスク清掃装置88および基準マーク撮像装置98が回路基板とマスク132との間のスペースから退避させられ、基板保持装置110が上昇させられて、回路基板がマスク132に密着させられ、スキージ装置124が作動させられて、はんだの印刷が回路基板の正確な位置に行われる。
【0044】
(ii) マスク132の清掃
印刷の繰返しによりマスク132の下面が汚れ、あるいは貫通穴130にはんだが残って、印刷品質が低下した場合には、マスク清掃装置88が作動させられてマスク132の清掃が行われる。この際、マスク清掃装置88が基板保持装置110とマスク132との間のスペースに進入させられ、エアシリンダ404により押付部材402が上昇させられて、清掃シートの渡り部394をマスク132の下面に押し付ける。その状態で、マスク清掃装置88が電動モータ84を主体とする清掃装置移動装置により前後方向に直線的に移動させられるのであるが、それと同時に、位置調節装置122が作動させられ、マスク132に左右方向の成分を有する運動や、前後方向の往復運動や、鉛直軸線まわりの回転運動が付与される。例えば、マスク132に円運動や左右方向の往復運動が付与されれば、清掃シートの渡り部394は、マスクに対し、マスク清掃装置88の直線運動と、マスク132の円運動や左右往復運動とが組み合わされた曲線の軌跡を描く運動を行うこととなり、単純な直線の軌跡を描く運動を行う場合に比較して、マスク132の清掃が良好に行われる。制御装置470の、清掃装置移動装置と位置調節装置122とを関連制御して、渡り部394に所望の拭い運動を行わせる部分が清掃用関連制御部を構成しているのである。
【0045】
(iii) 清掃シートへの緩み付与
上記のようにマスク132の清掃が行われる際、清掃シートの渡り部394に緩みが付与される。上記のように、渡り部394がマスク132に押し付けられた後、押付部材402が僅かに下降させられるとともに、電動モータ390,392の一方が設定角度回転させられることにより、渡り部394が一定量緩まされるのである。その状態で吸引口406から空気の吸引が行われ、渡り部394の一部が吸引口406の内部に引き込まれる。すなわち、渡り部394の押付部材402によりマスク132に押付られる部分の中央部に吸引口406の長手方向に沿って延びる窪みが形成されるのである。その後、押付部材402が再び上昇させられて、渡り部394がマスク132の下面に押し付けられ、清掃が行われる。清掃の進行に伴ってマスク132に付着していたはんだが清掃シートにより拭い取られ、あるいは空気と共に清掃シート側へ吸引されるのであるが、このはんだの多くが上記渡り部394の窪みに収容され、再びマスク132に付着することが回避されるため、マスク132の清掃が良好に行われる。
【0046】
(iv) マスク清掃装置88のメンテナンス
マスク清掃装置88に対しては、清掃シートの交換等のメンテナンスを行うことが必要であるが、その作業を印刷機10の前方から行うことができる。すなわち、前述の位置調節装置122は、位置調節のために必要な距離以上にマスク枠受け120を後部側へ移動させることができるようにされているため、マスク枠受け120を後退限度位置まで後退させるとともに、マスク清掃装置88を前進端位置まで前進させれば、マスク清掃装置88へのアクセスが、マスク枠受け120,マスク枠134およびマスク132によって妨げられない状態となる。また、印刷機10のカバー452には前述のように開閉扉454が設けられているため、清掃シートの交換等、マスク清掃装置88に対するメンテナンスを、印刷機10の前方から容易に行うことができる。
【0047】
(v) スキージ312の押付荷重の調節
前述のように、第1昇降部材240に対する第2昇降部材242およびそれに保持されたスキージヘッド230の昇降は、電動モータ280,送りねじ272,ナット274等により構成された昇降駆動装置270により行われ、スキージ312がマスク132を介して回路基板に押し付けられる。その際のスキージ312の押付力、すなわち回路基板およびマスク132によりスキージ312に加えられる反力が、スキージヘッド230,第2昇降部材242,昇降駆動装置270,第1昇降部材240および圧縮コイルスプリング254を介してロードセル256に伝達され、その大きさが測定される。このように反力の伝達経路中に圧縮コイルスプリング254が設けられているため、電動モータ280の単位回転角に対する反力の変化量が小さく抑えられ、電動モータ280の回転角(回転位置)の制御により、スキージ312のマスク132および回路基板への押付力の制御を、容易にかつ正確に行うことができる。
【0048】
(vi) マスク132の張り検出
マスク132は適度の張り(張力)を付与した状態でマスク枠134に固定されるのであるが、使用に伴ってその張りが低下し、その結果、印刷精度が低下する。そのため、張りの低下を監視し、一定張り以下に低下したならば、マスク132およびマスク枠134を新しいものと交換することが行われている。本印刷機10においては、この張りの程度の検出を、上記ロードセル256および電動モータ280を利用して行うことができる。回路基板をマスク132から離間させた状態で、電動モータ280を作動させ、スキージ312をマスク132に押し付け、その際の電動モータ280の回転角の変化とロードセル256による検出荷重の変化との関係を取得すれば、マスク132の張りの程度を検出することができるのである。本実施形態においては、制御装置470の上記マスク132の張りの程度との関係を検出する部分が、マスク132の張力と一対一に対応する張力対応量(例えば、電動モータ280の回転角の変化量によりロードセル256による検出荷重の変化量を割った比)を取得する張力対応量取得部を構成している。
【0049】
(vii) スキージ312のはんだロールからの離間制御
上記電動モータ280の制御により、スキージ312のはんだロールからの離間を制御することができる。マスク132上に載せられたはんだは、スキージ312により押されることによってロール状を呈し、はんだロールと称されるのであるが、スキージ312は1回の印刷が終了する毎にはんだロールから離間させられる。その際、はんだの一部がスキージ312に付着してはんだロールから引き出され、スキージ312の離間速度(さらに離間経路)が不適切であれば、はんだロールの形状がくずれ、あるいははんだロール内に気泡が閉じ込められ、印刷品質低下の原因となる。そのため、本印刷機10においては、スキージ312の離間時には、電動モータ280の回転速度が予め設定されたパターンに従って変化させられ、はんだロールからのはんだの不適切な引出しが防止される。この制御に当たって、はんだロールによりスキージ312に加えられる下向きの力の大きさをロードセル256に検出させ、その検出結果にも基づいて電動モータ280の制御を行えば、はんだの不適切な引出しを一層良好に防止することができる。また、それと共に、あるいはそれに代えて、スキージ312のマスク132からの離間とマスク132に平行な方向の移動とを組み合わせ、スキージ312のマスク132からの離間経路を適切なものとすれば、はんだの不適切な引出しを良好に防止することができる。制御装置470の昇降駆動装置270(直接的には電動モータ280)を制御することによって、あるいは必要に応じてスキージスライド駆動装置(直接的には電動モータ214)を制御することによって、スキージ312のはんだ(はんだロール)からの離間を制御する部分が、スキージ離間制御部を構成しているのである。
【0050】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、ガイド202,スキージスライド204およびスキージスライド駆動装置206がスキージ移動装置を構成し、ガイド80,送りねじ82,電動モータ84およびスライド86が清掃装置移動装置を構成している。また、左右方向および前後方向が位置調節装置122の位置調節平面において互いに交差する第1方向および第2方向であり、2組の電動モータ158および送りねじ156が2つの第1スライドとしてのスライド160を互いに独立に第2方向に駆動可能な2つの第1駆動装置を構成し、電動モータ178および送りねじ176が第3スライドとしてのスライド180を前記第1方向に駆動可能な第2駆動装置を構成している。そして、制御装置470の電動モータ158,178を関連制御する部分が、マスク枠受けの互いに交差する2つの方向における第1位置および第2位置と、鉛直軸線まわりの回転位置の調節を行わせる調節制御装置を構成している。また、押付部材駆動装置としてのエアシリンダ404が支持軸422の軸線まわりに回動可能に支持されている構成が、押付部材の、マスクの下面に平行な回動軸線のまわりの回動を許容する回動許容装置を構成している。
【符号の説明】
【0051】
10:印刷機(スクリーン印刷機) 12:シャトルコンベヤ 14:装着機(電子回路部品装着機) 20:印刷機本体 22:前コンベヤ 24:後コンベヤ 26:メインコンベヤ 28:インコンベヤ 30:アウトコンベヤ 70:本体フレーム 80:ガイド 82:送りねじ 84:電動モータ 86:スライド 88:マスク清掃装置 120:マスク枠受け 122:位置調節装置 124:スキージ装置 132:マスク 134:マスク枠 144:前後方向調節ユニット 146:左右方向調節ユニット 148:浮動支持ユニット 154,174:ガイド 156,176:送りねじ 158,178:電動モータ 160,152,180,182:スライド 164,184:回転部材 200:スキージ装置本体 202:ガイド 204:スキージスライド 206:スキージスライド駆動装置 240:第1昇降部材 242:第2昇降部材 244:ガイドロッド 246,248:ガイドスリーブ 254:圧縮コイルスプリング 256:ロードセル 262:引張コイルスプリング 270:昇降駆動装置 272:送りねじ 274:ナット 280:電動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキージをスキージ移動装置によりマスクに沿って移動させ、そのマスクの貫通穴を通して回路基板にクリーム状はんだを印刷するスクリーン印刷機において、
前記マスクのマスク枠を受けるマスク枠受けに、前記スキージおよび前記スキージ移動装置を含むスキージ装置を保持させたことを特徴とするスクリーン印刷機。
【請求項2】
当該スクリーン印刷機が本体フレームを含み、その本体フレームに、回路基板を支持する基板支持装置が少なくとも前記マスクに平行な平行方向には相対移動不能に保持される一方、前記マスク受けが前記平行方向に相対移動可能に保持され、それらマスク受けと本体フレームとの間に、そのマスク枠受けの前記基板支持装置に対する前記平行方向の相対位置を調節する位置調節装置が設けられた請求項1に記載のスクリーン印刷機。
【請求項3】
前記位置調節装置が、前記マスク枠受けを、前記平行方向に平行な調節平面上において互いに交差する第1方向と第2方向とにおける第1位置および第2位置と、前記調節平面に直角な回転軸線まわりの回転位置との調節を行うものである請求項2に記載のスクリーン印刷機。
【請求項4】
前記位置調節装置が、
互いに前記第1方向に隔たった2つの位置にそれぞれ設けられ、前記第2方向の位置が調節可能な2つの第1スライドと、
それら2つの第1スライドの各々により1つずつ前記第1方向に移動自在に保持された計2つの第2スライドと、
それら2つの第2スライドの各々に1つずつ前記調節平面に直角な回転軸線まわりに回転自在に保持され、それぞれ前記マスク枠受けに固定された計2つの第1回転部材と、
前記2つの第1スライドから前記第2方向に隔たった位置に設けられ、前記第1方向の位置が調節可能な第3スライドと、
その第3スライドに前記第2方向に移動自在に保持された第4スライドと、
その第4スライドに、前記調節平面に直角な回転軸線まわりに回転自在に保持され、前記マスク枠受けに固定された第2回転部材と、
前記2つの第1スライドを互いに独立に前記第2方向に駆動可能な2つの第1駆動装置と、
前記第3スライドを前記第1方向に駆動可能な第2駆動装置と、
前記2つの第1駆動装置と前記第2駆動装置とを関連制御することにより、前記マスク枠受けの前記第1位置,前記第2位置および前記回転位置の調節を行わせる調節制御装置と
を含む請求項3に記載のスクリーン印刷機。
【請求項5】
さらに、
前記基板支持装置を前記マスクに直角な方向に昇降させる昇降装置と、
その昇降装置により基板支持装置が下降させられることにより前記マスク枠受けと前記基板支持装置との間に形成されるスペースに進入可能に前記本体フレームに保持され、前記マスクを清掃するマスク清掃装置と、
そのマスク清掃装置を前記マスク枠受けに受けられたマスクに平行な清掃装置移動方向に移動させる清掃装置移動装置と、
その清掃装置移動装置と前記位置調節装置とを関連制御することにより、前記マスク清掃装置と前記マスク枠受けに受けられた前記マスクとの相対移動経路を曲線とする清掃用関連制御部を含む請求項2ないし4のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
【請求項6】
さらに、
前記基板支持装置を前記マスクに直角な方向に昇降させる昇降装置と、
その昇降装置により基板支持装置が下降させられることによりその基板支持装置と前記マスク枠受けとの間に形成されるスペースに進入可能に前記本体フレームに保持され、前記マスクを清掃するマスク清掃装置と、
そのマスク清掃装置を前記マスク枠受けに受けられたマスクに平行な清掃装置移動方向に移動させる清掃装置移動装置と
を含み、かつ、前記位置調節装置による、前記マスク枠受けの、前記清掃装置移動方向に平行な方向の移動可能量が、前記マスクと回路基板との相対位置の調整のために必要な移動可能量を超えて大きくされることにより、前記マスク清掃装置が当該スクリーン印刷機の前部側の移動端位置まで移動させられた状態では、そのマスク清掃装置へのアクセスが、前記マスク枠受けに受けられたマスクにより妨げられない状態を実現可能とされるとともに、当該スクリーン印刷機が、そのスクリーン印刷機の内部空間を覆うカバー装置を含み、そのカバー装置が、前記内部空間の当該スクリーン印刷機の前部側の部分を前方と上方との少なくとも一方に向かって開放する開放位置と、前記前部側の部分を閉塞する閉塞位置とに移動可能な開閉扉を備えた請求項2ないし4のいずれかに記載のスクリーン印刷機。
【請求項7】
前記マスク枠受けおよび前記スキージ装置が、当該スクリーン印刷機の前部に設けられるとともに、当該スクリーン印刷機がそのスクリーン印刷機の内部空間を覆うカバー装置を含み、そのカバー装置が、前記内部空間の当該スクリーン印刷機の前部側の部分を前方と上方との少なくとも一方に向かって開放する開放位置と、前記前部側の部分を閉塞する閉塞位置とに移動可能な開閉扉を備え、前記マスク枠受けおよび前記スキージ装置が、前記開閉扉が前記開放位置にある状態で、当該スクリーン印刷機の前に立った作業者によるアクセスが可能な位置に配設された請求項1ないし6のいずれかに記載のスクリーン印刷機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−230353(P2011−230353A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102298(P2010−102298)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】