説明

スクロール圧縮機

【課題】 吐出弁機構を有した高圧シェル型圧縮機において、冷媒回路の高圧空間と低圧空間が圧縮機を介して均圧するとき、吐出口が吐出弁によって閉鎖されるので、主軸に設けられた給油機構を経由して吸入空間と均圧することにより、高圧冷媒ガスとともに圧縮機底部の冷凍機油も一緒に外部の冷媒回路側へ流出され、圧縮機は冷凍機油不足に陥る課題がある。
【解決手段】 高圧シェル型スクロール圧縮機の吐出弁機構に主軸の揺動軸部と揺動スクロールの揺動軸受との軸受隙間の主軸の軸方向に直角な方向の断面積より大きく吐出口の開口面積より小さい開口部を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高圧シェル型スクロール圧縮機の運転停止時における密閉容器外への冷凍機油流出防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は、密閉容器すなわちシェル内に、台板上に板状渦巻歯を有する固定スクロールおよび揺動スクロールと、静止台座を設けたフレームと、揺動スクロールの自転を防止するオルダム機構とによって構成された圧縮機構を備え、固定スクロールおよび揺動スクロールが、お互いの板状渦巻歯を噛み合うように組み合わされ冷媒ガスを圧縮する複数の圧縮室を形成している。揺動スクロールは固定スクロールとフレームとで保持されるとともに、フレームの背面に設けた軸受けを介してフレームにて支持した揺動軸によって揺動運動を行う。なお、揺動軸を支持するフレームは密閉容器に固定されている。
また、揺動運動による圧縮機構の摺動により圧縮機構の磨耗を抑制するため、密閉容器内底部には圧縮機構に給油する冷凍機油が貯油されており、電動機を接続し揺動スクロールを揺動運動させるため揺動軸と一体に設けられた主軸に貯油された冷凍機油を給油する給油機構が設けられており、この給油機構によって圧縮機運転中は圧縮機構に常に給油されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示されている低圧シェル型のスクロール圧縮機では、密閉容器内は固定スクロール及びフレームによって吐出管が設けられた上部の吐出空間と吸入管や電動機が配置された下部の吸入空間とに仕切られている。吸入管から吸入された冷媒ガスは圧縮室にて圧縮され、固定スクロールの上面の吐出空間に吐出弁を介して吐出されるとともに、吐出された冷媒ガスが再び圧縮室内へ再吸入されることを吐出弁が防止している。
【0004】
しかしながら、圧縮機が停止すると、吐出空間から圧縮室内に向かって圧縮機構のわずかな隙間や複数に区切られた各圧縮室間のわずかな隙間から冷媒ガスが漏れ流入するので、時間が経過すると、吐出空間の圧力と圧縮室内の圧力は徐々に均圧する。そして、吐出空間の圧力と圧縮室内の圧力の差圧が小さくなると吐出弁の閉鎖が不完全となり、吐出弁の隙間から圧縮室内へ冷媒ガスが流入し異音等の不具合を発生させる。その対策のため、吐出弁の傍に吐出弁をバイパスし吐出空間と圧縮室とを連通する通路を設け、この連通路から吐出空間の冷媒ガスを流入させ圧縮機の吐出空間と圧縮室を均圧し不具合を回避している。ただし、この連通路から多量に冷媒ガスが流入すると圧縮機構を逆転させ破損させるため、その連通路は、流動抵抗が大きい極めて小径で長さが長いキャピラリーチューブで形成されたキャピラリー通路とし、少量にてゆっくり均圧させ、異音等の不具合を回避させながら圧縮機構の逆転も防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−162077号公報(第3−5頁、第1−2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吐出口に吐出弁機構を有し圧縮機の密閉容器内全体が吐出空間であって圧縮機構によって圧縮された高圧冷媒ガスによって高圧空間となる高圧シェル型スクロール圧縮機の場合、低圧シェル型圧縮機と異なり、密閉容器内の高圧空間とつながった冷媒回路の高圧空間と圧縮機の吸入口とつながった吸入空間である低圧空間が圧縮機を介して均圧しようとすると、吐出口からの経路が吐出弁によって閉鎖されているので、主軸に設けられた給油経路を経由して低圧空間と均圧しようとする。そのため、高圧冷媒ガスとともに密閉容器内底部に存在する冷凍機油も一緒に外部の冷媒回路側へ流出され、圧縮機は冷凍機油不足に陥る課題があった。
【0007】
また、信頼性向上または高効率化のためのコンプライアント機構を持つスクロール圧縮機では、圧縮機停止とともに揺動スクロール等が軸方向へ移動し固定スクロールと揺動スクロールとの間に軸方向の隙間が形成されるため、圧縮機構の複数に区切られた圧縮室が一度につながるとともに、吸入管を介して圧縮機に接続されている冷媒回路の低圧空間とも連通し、高圧冷媒ガスが一度に低圧空間側に流入しようとするため、一緒に排出されようとする冷凍機油も、一度に多量に排出されるという課題があった。
【0008】
また、スクロール圧縮機のための従来の均圧方法である吐出弁をバイパスする連通路であるキャピラリー通路では、圧縮機構を逆転防止のため、流動抵抗が大きく、冷媒ガス流入に時間がかかりすぎ、コンプライアント機構を持つスクロール圧縮機では、主軸の給油経路を通って低圧空間に高圧冷媒ガスと冷凍機油とが一緒に排出されることを抑制できないという課題があった。
【0009】
また、従来の連通路では、流動抵抗を大きくするため、連通路の長さを長くした極めて小径の穴(例えば、内径0.5mm、長さ115mm)をあける必要があり、加工が困難であるという課題があり、対策として適当な大きさの穴をあけその中にキャピラリーチューブとブッシュを入れるというものであったが、連通路の加工以外に追加部品やキャピラリーチューブの径と長さを調整するといった作業が必要であった。
【0010】
また、吐出弁をバイパスする連通路は、通常の圧縮運転時に連通路から冷媒ガスを再吸入、再圧縮する現象を起こし性能低下を引き起こすという課題があった。また、長い連通路を設けると固定スクロール上の吐出弁オサエなどの部品や他のバイパス路と干渉し、邪魔になるという課題もあった。
【0011】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、固定スクロール上の部品やバイパス路の変更を行うことなく、高圧シェル型圧縮機の密閉容器を介して圧縮機に接続された冷媒回路の高圧空間と低圧空間が均圧されるとき、吐出弁あるいは吐出口から低圧空間に高圧冷媒ガスを流入させ、主軸の給油経路から高圧冷媒ガスが冷凍機油とともに低圧空間に流れ込むことを抑制したスクロール圧縮機を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、高圧シェル型スクロール圧縮機の吐出弁あるいは吐出口に主軸の揺動軸部と揺動スクロールの揺動軸受との軸受隙間の主軸の軸方向に直角な方向の断面積より大きく吐出口の開口面積より小さい開口部を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、高圧シェル型スクロール圧縮機の吐出弁あるいは吐出口に主軸の揺動軸部と揺動スクロールの揺動軸受との軸受隙間の主軸の軸方向に直角な方向の断面積より大きく吐出口の開口面積より小さい開口部を備えたので、固定スクロール上の部品やバイパス路の変更を行うことなく、高圧シェル型圧縮機の密閉容器を介して圧縮機に接続された冷媒回路の高圧空間と低圧空間が均圧されるとき、吐出弁あるいは吐出口から低圧空間に高圧冷媒ガスを流入させ、主軸の給油経路から高圧冷媒ガスが冷凍機油とともに低圧空間に流れ込むことを抑制した高効率で信頼性の高いスクロール圧縮機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係るスクロール圧縮機の断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る冷媒回路全体図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る吐出弁機構の断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る冷凍機油の排出経路の説明図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る吐出弁の説明図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る圧縮機の特性を表す図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る吐出弁機構の断面図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係る吐出弁機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1のスクロール圧縮機100の縦断面図である。固定スクロール1の外周部はガイドフレーム4にボルト(図示せず)によって締結されており、固定スクロール1の台板部1aの一方の面(図1において下面)には板状渦巻歯1bが形成されているとともに、外周部には2個1対のオルダム案内溝1cがほぼ一直線上に形成され、このオルダム案内溝1cにはオルダム機構9の2個1対の固定側キー9aが往復摺動自在に係合されている。
【0016】
揺動スクロール2は、台板部2aの一方の面(図1において上面)には固定スクロール1の板状渦巻歯1bと同一形状の渦巻歯2bが形成されている。固定スクロール1の板状渦巻歯1bと揺動スクロール2の板状渦巻歯2bと互いに噛み合うように組み合わされ、組み合わされた板状渦巻歯1bと板状渦巻歯2bとによって隔てられた冷媒ガスを圧縮する複数の圧縮室が形成される。また、台板部2aにおいて、板状渦巻歯2bが形成された面とは反対側の面(図1において下面)の中心部には中空円筒状のボス部2dが形成されており、そのボス部2dの内側面には揺動軸受2eが形成されている。また、ボス部2dと同じ側の面の外周部には、コンプライアントフレーム3のスラスト軸受3aと圧接摺動可能なスラスト面2fが形成されている。また、揺動スクロール2の台板部2aの外周部には、固定スクロール1のオルダム案内溝1cとほぼ90度の位相差を持つ2個1対のオルダム案内溝2cがほぼ一直線上に形成されており、このオルダム案内溝2cにはオルダム機構9の2個1対の揺動側キー9bが往復摺動自在に係合されている。さらに図1で台板部2aには、揺動スクロール2側の面(図1において上面)とコンプライアントフレーム3側の面(図1において下面)とが連通する細い穴の抽気孔2gが形成されている。そして、この抽気孔2gのコンプライアントフレーム側の面の開口部、すなわち下開口部2hは、通常運転時にはその円軌跡がコンプライアントフレーム3のスラスト軸受3aの内部に常時収まるように配置されている。
【0017】
コンプライアントフレーム3のスラスト軸受3aの外側には、オルダム機構環状部9cが往復摺動運動する面3bが形成されている。コンプライアントフレーム3の中心部には、電動機5によって回転駆動される主軸6を半径方向に支持する主軸受3cおよび補助主軸受3dが形成されている。またコンプライアントフレーム3には、前記揺動スクロールの下開口部2hと対峙する位置にスラスト軸受3aからフレーム下部空間4bに連通する連通穴3eが形成されている。さらにコンプライアントフレーム3のオルダム機構環状部9cの往復摺動運動する面3bには、台板外周部空間2kとフレーム上部空間4aを連通する連通穴3fがオルダム機構環状部9cの内側に連通するように形成されている。また、コンプライアントフレーム3には、揺動スクロール2のボス部2dの外周面と台板部2a面および主軸6の外側面とコンプライアントフレーム3の内側面で囲まれたコンプライアントフレーム空間であるボス部外径空間2nの圧力を調整する中間圧調整弁3g、中間圧調整弁オサエ3h、中間圧調整スプリング3kを収納するための中間圧調整弁空間3nが設けられている。そして中間圧調整スプリング3kは自然長より縮められて収納されている。
【0018】
図1に示すようにガイドフレーム4の内側面の固定スクロール1側(図1において上側)には、上嵌合円筒面4cが形成されており、コンプライアントフレーム3の外周面に形成された上嵌合面3pと係合されている。一方、ガイドフレーム4の内側面の電動機側(図1において下側)には、下嵌合円筒面4dが形成されており、コンプライアントフレーム3の外周面に形成された下嵌合円筒面3sと係合されている。
【0019】
ガイドフレーム4の内側面とコンプライアントフレーム3の外側面とによって形成されるフレーム下部空間4bは、その上下をリング状シール材7a、7bで仕切られている。ここでは、ガイドフレーム4の内周面にリング状シール材7a、7bを収納するリング状のシール溝が2ヶ所に形成されているが、このシール溝はコンプライアントフレーム3の外周面に形成されていてもよい。また、上下を揺動スクロール2の台板部2aとコンプライアントフレーム3で囲われたスラスト軸受3aの外周側の空間、すなわち台板外周部空間2kは吸入ガス雰囲気(吸入圧)の低圧空間となっている。
【0020】
主軸6の揺動スクロール2側(図1において上側)端部には、揺動スクロール2の揺動軸受2eと回転自在に係合する揺動軸部6aが形成されており、その下側にはコンプライアントフレーム3の主軸受3cおよび補助主軸受3dと回転自在に係合する主軸部6bが形成されている。また主軸の他端部には、サブフレーム8の副軸受8aと回転自在に係合する副軸部6cが形成されており、この副軸部6cと主軸部6bとの間に電動機回転子5aが焼嵌られている。また、密閉容器10の底部には、冷凍機油11が貯油されている油だめがあり、主軸6に設けられた給油機構により主軸6の下端面すなわち給油口6dから冷凍機油11を吸い上げる。
【0021】
このスクロール圧縮機100は、図2のように、配管を介して、外部の凝縮器、蒸発器、膨張弁などと接続された冷媒回路が構成され、空調機や冷蔵庫に使用される。例えば、図2(a)のようにスクロール圧縮機100にて圧縮した冷媒ガスは、吐出管12から吐出され、配管を介して接続された凝縮器101に流入する。凝縮器101では、吐出された高圧高温の冷媒ガスがファン104によって送風される外部の空気などと熱交換を行い、外部の空気に熱を放出して温度降下する。温度降下した高圧冷媒ガスは、配管を介して接続されている膨張弁102に流入し、減圧される。減圧された低圧冷媒ガスは、配管を介して接続されている蒸発器103に流入し、再びファン105によって送風される外部の空気と熱交換を行い、外部の空気から熱を奪い温度上昇する。温度上昇した低圧冷媒ガスは、配管を介して接続された吸入管13から再びスクロール圧縮機100に戻り圧縮される。このようなサイクルを繰り返し、冷媒回路内を冷媒ガスが循環し、空調機では熱交換された空気によって部屋の空調を行ったり、冷蔵庫では熱交換された空気によって食品の冷却あるいは直接食品と熱交換を行ったりする。
よって、圧縮室から直接高圧冷媒ガスが吐出される密閉容器10および吐出管12から膨張弁102の入り口までは高圧冷媒ガスによって高圧空間となり、膨張弁102の出口から吸入管13までは低圧冷媒ガスにより低圧空間となる。すなわち、圧縮室から高圧冷媒ガスが吐出される吐出空間は高圧空間であり、密閉容器10の内部全体が吐出空間である。また、圧縮室に吸入する吸入空間は低圧空間である。
なお、空調機や冷蔵庫の場合は、凝縮器101、蒸発器103は空気と熱交換を行うが、図2(b)のように水熱交106を用い水やブラインと熱交換を行い、水配管などを通して空調や給湯を行うものもある。
【0022】
次に、吐出弁機構について説明する。図3は吐出弁機構を説明する図であって、吐出弁機構は、吐出弁20と吐出弁オサエ21にて構成され、固定スクロール1の背面、中央に設けられている圧縮室内と密閉容器10とを連通させる吐出口1dに取り付けられている。吐出弁20は吐出口1dを塞ぐ形で設けられており、その上方に設けられた吐出弁オサエ21は吐出弁20の移動量を規制するためのもので、吐出弁20と吐出弁オサエ21とはボルトにて固定スクロール1の背面に固定されている。なお、吐出口1dは圧縮室と常に連通しているわけではなく、圧縮工程の最終段階にて連通する。吐出弁20は一度密閉容器内の吐出空間すなわち高圧空間に吐出された高圧冷媒ガスを圧縮機運転時に吐出空間から吐出口1dを介して再び圧縮室内へ再吸入し再圧縮することを防止している。
固定スクロール1の外周側に設けられ吸入管13と接続された吸入口1eを介して低圧空間である吸入空間から冷媒を吸入する圧縮室が揺動スクロール2の揺動運動によって、吸入口1e付近の外周部から内周部に移動することによって、圧縮室内部の冷媒ガスが圧縮される。最終段階で圧縮室が吐出空間と吐出口1dにつながったとき、圧縮室内の圧力が吐出空間の圧力より高ければ圧縮室から吐出口1dを介して吐出空間へスムーズに冷媒ガスが吐出できる。しかしながら、吐出弁がない場合圧縮室が吐出口1dにつがったとき、圧縮室内の圧力が吐出空間の圧力より低い場合は、吐出空間から圧縮室内へ冷媒ガスが逆流すなわち再吸入し、再び圧縮室にて再圧縮することになる。一度圧縮し吐出したガスを再圧縮しても冷媒回路内を循環するものではないため、空調機の空調能力や冷蔵庫の冷却能力に係るものでなく、冷媒回路を冷媒ガスが循環する上での損失となる。吐出弁はこの損失を防止している。
例えば、410A冷媒にて通常の運転(吐出圧力2.0MPa程度)を行っているこの圧縮機を搭載した空調機において、吐出弁機構が無いと、吐出空間から圧縮室へ冷媒ガスが逆流することにより、圧縮性能が4%程度、低下する。なお、この性能低下値は、冷媒の種類や圧縮機の運転状態、圧縮室のボリューム、圧縮率によっても異なるが、吐出弁はいずれの条件でも、性能低下を抑制する役目を果たしている。
【0023】
次に、スクロール圧縮機100の給油機構の給油経路およびコンプライアント機構の動作について説明する。図1において定常運転時には密閉容器空間10aが吐出ガス雰囲気の高圧となり、密閉容器10の底部の冷凍機油11は給油口6dから流入し主軸6に軸方向に貫通して設けられた高圧油給油穴6eを上方向に向かって流れる。そして、揺動軸部6a上面とボス部2dとの間の揺動軸上面ボス部空間2pに導かれた高圧油である冷凍機油11はこの給油経路の中で最も狭い揺動軸部6aと揺動軸受2eとの間の軸受隙間である揺動軸側面ボス部空間2rで減圧されて吸入圧より高く、吐出圧以下の中間圧となり、ボス部外側空間2nに流れる。これとは別に、高圧油給油穴6eの高圧油は、主軸6に設けられた横穴から主軸受3cの高圧側端面(図1において下端面)に導かれ、この給油経路の中で最も狭い主軸受3cと主軸部6bとの空間3uにて減圧されて中間圧となり、同じくボス部外側空間2nに流れる。ボス部外側空間2nの中間圧となった冷凍機油11(冷凍機油に溶解していた冷媒の発砲で、一般にはガス冷媒と冷凍機油の2相流になっている)は、中間圧調整弁収納空間3nを通る際に中間圧調整スプリング3kによって負荷される力に打ち勝って中間圧調整弁3gを押し上げてフレーム上部空間4aに流れ、その後連通穴3fを通ってオルダム機構環状部9cの内側に排出される。
【0024】
また、揺動スクロール2のスラスト面2fとコンプライアントフレーム3のスラスト軸受3aの摺動部に給油したあとにも、オルダム機構環状部9cの内側に流れる。そして、これらから流れ出した冷凍機油11はオルダム機構環状部9cの摺動面およびキー摺動面に給油した後、コンプライアントフレーム3および揺動スクロール2の外周部にある台板外周部空間2kに開放される。以上に説明したように、ボス部外側空間2nの中間圧力Pm1は、
中間圧調整スプリング3kのバネ力と中間圧調整弁3gの中間圧露出面積とによってほぼ決定される所定の圧力αによって、
Pm1=Ps+α(Psは吸入雰囲気圧力すなわち低圧)
で制御されている。
【0025】
また、図1において、揺動スクロール2の台板部2aに設けられた抽気孔2gの下開口部2hはコンプライアントフレーム3に設けられた連通穴3eのスラスト軸受開口部すなわち上開口部3t(図1において上側の開口部)と、常時もしくは間欠的に連通する。このため、固定スクロール1と揺動スクロール2とで形成される圧縮室からの圧縮途上の吸入圧より高く、吐出圧力以下の中間圧の冷媒ガスが、揺動スクロール2の抽気孔2gおよびコンプライアントフレーム3の連通穴3eを介してフレーム下部空間4bに導かれる。但し、導かれるといってもフレーム下部空間4bは上部リング状シール材7aと下部リング状シール材7bとで密閉された閉空間なので、定常運転時には圧縮室の圧力変動に呼応して圧縮室とフレーム下部空間4bとは双方向に微少な流れを有する、いわば呼吸している状態となる。以上に説明したように、フレーム下部空間4bの中間圧Pm2は、連通する圧縮室の位置でほぼ決定される所定の倍率βによって、
Pm2=Ps×β(Psは吸入雰囲気圧力すなわち低圧)
で制御される。
【0026】
さて、コンプライアントフレーム3には、ボス部外側空間2nの中間圧Pm1に起因する力およびスラスト軸受3aを介しての揺動スクロール2からの押し付け力の合計が下向きの力として作用するものの、フレーム下部空間4bの中間圧Pm2に起因する力および下端面の高圧雰囲気に露出している部分に作用する高圧に起因する力の合計が上向きの力として作用し、そして定常運転時にはこの上向きの力が前述した下向きの力より大きくなるように設定されている。
【0027】
このためコンプライアントフレーム3は、上嵌合面3pをガイドフレーム4の上嵌合円筒面4cに、下嵌合円筒面3sをガイドフレーム4の下嵌合円筒面4dに案内され、即ち、コンプライアントフレーム3はガイドフレーム4に対して軸方向に移動可能となっており、固定スクロール側(図1において上方)に浮き上がっている。そしてスラスト軸受3aを介してコンプライアントフレーム3に押し付けられている揺動スクロール2も、同じく上方に浮き上がり、その結果揺動スクロール2の歯先と歯底は、固定スクロール1のそれぞれ歯底と歯先に接触し、摺動する。しかし、圧縮機の起動時等の過度期にはフレーム下部空間4bに冷媒ガスが流れ込まず中間圧Pm2が確保できないため揺動スクロール2とコンプライアントフレーム3は浮き上がらずガイドフレーム4側へ下がっていたり、圧縮室の内圧が異常に上昇したとき等には、圧縮室内の圧力によって揺動スクロール2とコンプライアントフレーム3がガイドフレーム4側へ押し付けられるという現象が発生したりする。
【0028】
これに対して、スクロール圧縮機100が停止すると、固定スクロール1や揺動スクロール2等の圧縮機構の停止とともに圧縮室からフレーム下部空間4bへ冷媒ガスが流入せず中間圧Pm2が維持できないため、コンプライアントフレーム3が軸方向に下がる。すなわち、ガイドフレーム4側に下がった状態となる。同時に、ボス部外側空間2nへも冷媒ガスが流入せず中間圧Pm2が維持できないので、コンプライアントフレーム3とともに押し上げられていた揺動スクロール2も下方に下がり、互いに噛み合うように組み合わされていた板状渦巻歯1bと板状渦巻歯2bとが離れ、歯先に隙間が生じる。すなわち、板状渦巻歯1bと板状渦巻歯2bによって隔てられ形成されていた複数の圧縮室が一つとなり、さらに、圧縮室は吸入口1eを介して吸入管13と連通するので、圧縮室も冷媒回路の低圧空間と連通した低圧空間となる。なお、フレーム下部空間4bなどの中間圧で満たされていた空間も、圧縮室と連通しているので、低圧空間となる。
【0029】
一方、密閉容器10内は吐出管12を介して冷媒回路の高圧空間と連通し一つの高圧空間となっている。
この状態にて、高圧空間と低圧空間が均圧しようとすると、圧縮室と高圧空間を隔てている箇所、すなわち、圧縮機構の隙間や吐出弁機構の隙間、あるいは、主軸6に設けられた密閉容器10から圧縮機構内に給油のため通じている給油経路を通って、高圧冷媒ガスが流入しようとする。しかしながら、圧縮機構の隙間や吐出弁機構の隙間、特に吐出弁機構では吐出弁20にて密閉容器10内の高圧冷媒ガスが吐出口1dを経て圧縮室側に逆流することを妨げているので、高圧冷媒ガスが流入できず、別経路にて高圧冷媒ガスの流入を促す。すなわち、主軸6の給油機構を通って高圧冷媒ガスが流入し均圧することになる。
【0030】
つまり、図4の矢印のように高圧冷媒ガスは高圧油給油穴6e(図4中ア)、揺動軸上面と側面のボス部空間2p、2r(図4中イ)を経てボス部外側空間2nに到達する。ボス部外側空間2nに到達した高圧冷媒ガスは中間圧調整弁収納空間3n、フレーム上部空間4a、連通穴3fを通過するか(図4中ウ)、あるいは揺動スクロール2のスラスト面2fとコンプライアントフレーム3のスラスト軸受3aの摺動部の隙間(図4中エ)を経由してオルダム機構環状部9cに到達し、オルダム機構環状部9cから吸入口1eに流入する(図4中オ)。しかしながら、高圧冷媒ガスは密閉容器10の底部に貯油された冷凍機油11を通過するので、冷媒ガスとともに冷凍機油11も主軸6の高圧油給油穴6eを上昇し吸入口1eに排出され、吸入管13を介してさらに外部の冷媒回路に流出することになる。これによって、密閉容器10内は冷凍機油11が不足し、軸受けなど摺動部が摩擦により破損することになる。
さらに、均圧される高圧空間と低圧空間が大きいので、均圧しようとする冷媒ガスの勢いは強く、多量に冷凍機油11が密閉容器10内から失われる。
【0031】
特に、通常運転時にも冷凍機油11は冷媒ガスに混合し流出されることがあるが、冷媒回路中を冷媒ガスとともに循環して圧縮機100に戻ってくるので問題はない。しかし、圧縮機が停止した場合冷媒ガスが循環しなくなるので、密閉容器10から流出した冷凍機油11は圧縮機100に戻ってくることがなく、高い確率で次回の起動のときに破損することになる。
よって、この現象を抑制するためには、主軸6側の給油経路にて均圧する前に、別経路にて素早く均圧する方法が必要である。
【0032】
なお、従来の吐出弁を設けないスクロール圧縮機では、均圧される際に冷凍機油11が流出するという現象は無かった。なぜなら、吐出口1d側から高圧冷媒ガスが流入するので、冷凍機油11が主軸6の高圧油給油穴6eを上昇し吸入口1eに到達する前に均圧が終了していたためである。
【0033】
以上の対策のため、図5(a)では、主軸6の給油経路にて均圧させず、最も吸入口に近い経路であって新たに圧縮機構への部品追加や細工を行わなくても吐出弁機構から高圧冷媒ガスを圧縮室に流入させる開口部を設けたものについて説明する。
圧縮機が停止し、固定スクロール1の板状渦巻歯1bと揺動スクロール2の板状渦巻歯2bとが離れ複数形成されていた圧縮室同士が連通し、主軸6の高圧油給油穴6eから冷凍機油11が上昇、吸入口1eに到達するまでに、吐出弁20に小径の連通穴22を設け連通穴22から圧縮室へ高圧冷媒ガスを流入させるようにする(図4中カ)。圧縮室に流入した高圧冷媒ガスは、固定スクロール1の板状渦巻歯1bの歯先の隙間あるいは揺動スクロール2の板状渦巻歯2bの歯先の隙間を通り(図4中キ)、吸入口1eに到達する(図4中ク)。吐出弁機構側から高圧冷媒ガスを流入させた場合、揺動スクロール2を高圧冷媒ガスが押すため逆転する恐れがあるが、圧縮機100が停止した場合は、ボス部外側空間2nの中間圧やフレーム下部空間4bの中間圧が維持できないので、揺動スクロール2、コンプライアントフレーム3がガイドフレーム4側に下がっており、複数の圧縮室が一つになっているので、逆転する恐れはない。しかしながら、主軸6の高圧油給油穴6eから冷凍機油11が上昇し吸入口1eに到達するまでの時間が短く、ある程度大きな口径の連通穴22が必要となる。一方、吐出弁20に連通穴22を設けると通常運転時に圧縮室から吐出した高圧冷媒ガスが連通穴22から再び圧縮室に戻って再圧縮を起こす損失を発生するので、損失を最小限度とする連通穴22の口径を選択する必要がある。
【0034】
図6は、冷媒に410Aを使用するとともに、ストロークボリュームが30〜70cc程度、高圧が0.5〜4.2MPa、低圧が0.2〜1.6MPa程度にて使用する5〜10馬力程度の圧縮機を例に説明したものである。
図6のグラフAは、吐出弁機構に設けた開口部の面積に対する圧縮機停止時に主軸6の高圧油給油穴6eを通って吸入口1eに到達する冷凍機油11の量を示したもので、吐出弁20に連通穴22を設けない状態すなわち開口面積が0のときの吸入口1eから流出される冷凍機油11の量を100%とし、吐出弁20の連通穴22の口径すなわち開口面積に対する相対的な量を示している。
また、図6のグラフBは、圧縮機の運転条件において、高圧と低圧との差圧が3.5MPa程度の負荷が重い条件での吐出弁機構に設けた開口部の面積に対する圧縮機性能の相対的な低下を示したもので、吐出弁20に連通穴22を設けない状態すなわち開口面積が0のときの性能を100%とし、吐出弁20の連通穴22の口径すなわち開口面積に対する相対的な性能低下量を示している。
【0035】
ここで冷凍機油11が100%排出されるとは、密閉容器10底部に貯油された冷凍機油11の油面が主軸6の給油口6dより下がり、吸い上げられなくなった時点の状態を示し、密閉容器10内には冷凍機油11にはまだ残量が残っている状態である。圧縮機停止時に冷凍機油11が排出されてしまうので、次回の圧縮機起動時に給油機構は冷凍機油11を吸い上げられず、摺動部への給油は行えない。よって、摺動部が破損する。
これに対して、排出量の80%程度までなら流出されたとしても次回の起動で給油機構が給油口6d吸い上げられる程度の残量が残っている。また、圧縮機構には前回の運転時の冷凍機油11が残っていることから、起動とともに密閉容器底部から一気に吸い上げられるものではないので、流出された冷凍機油11が冷媒回路を循環して戻ってくるまで十分給油できる貯油量でもある。
【0036】
また、冷媒回路を循環する冷媒量によっても循環する冷凍機油11の量は違うが、通常運転時には、冷凍機油11は冷媒ガスに30%〜40%程度は混合され外部の冷媒回路を循環している。しかしながら、循環する冷凍機油11は冷媒回路の熱交換性能には寄与せず、損失となるため、出来るだけ、冷凍機油11と冷媒ガスとを、例えば圧縮機の密閉容器内に備えた分離機構によって分離し、圧縮機の密閉容器10内に戻している。したがって、圧縮機停止時とは言え、冷凍機油11の混合・循環量が一時的にも増加すると、次回の運転開始時に冷媒回路の熱交換性能が悪化する上、分離機構の処理能力が間に合っていないので、長時間に渡って冷媒回路を循環し性能を悪化し続ける。よって、分離のための対策が必要となるため、できるだけ、流出量は少ない方が良い。
【0037】
また、図6によれば、連通穴22は口径φ3程度すなわち開口面積A3程度(=吐出口の開口面積σと同面積)あれば、吐出弁20を取り付けていない場合と同じこととなり、密閉容器10から冷凍機油11が過剰に排出され冷凍機油不足となり、次回の起動時に給油機構が給油できなくなるということはない。しかし、これでは吐出弁20の効果すなわち一度吐出された高圧冷媒ガスを再吸入、再圧縮するという圧縮工程の損失を防ぐという効果が全く得られない。
よって、これらの点に対応できる連通穴22を設ける必要がある。
【0038】
まず初めに、給油口側から流入してくる冷凍機油および冷媒ガスと吐出口側から流入してくる冷媒ガスの関係について述べる。高圧空間と低圧空間とが均圧する場合、高圧冷媒ガスは主軸6下部にある給油口6dから高圧油給油穴6eを上昇し低圧雰囲気となっている吸入口1eに抜ける。一方、吐出口1d側に開口部を設ける場合も同じで、高圧冷媒ガスは吐出口1d側に開口部から圧縮室を経由して低圧雰囲気となっている吸入口1eに抜けることになる。よって、給油口側と吐出口側から流入するものが冷媒ガス同士であれば、給油口6dより吐出口1d側の開口部すなわち吐出弁20の連通穴22の面積が大きければ、高圧冷媒ガスが給油口6dより吐出口1d側から流入する量が勝り、吐出口1d側から流入する高圧冷媒ガスにて均圧される。
【0039】
しかし、実際には給油口6dより流入する高圧冷媒ガスは冷凍機油11と混合状態となっているとはいえ冷凍機油11を押し上げる状態にて吸入口1eまで到達するので、冷凍機油11と冷媒ガスでは、質量比/比重が300倍違う上に、冷凍機油11には粘性があること、圧損を生じながら重力に逆らって高圧油給油穴6eを上昇すること、給油経路において、揺動軸部6aと揺動軸受2eの軸受隙間である揺動軸側面ボス部空間2rによって、給油の流量が制限されていることから、揺動軸側面ボス部空間2rの揺動軸部6aの軸方向に直角な方向の断面積すなわち冷凍機油や冷媒ガスの通過面積を調整すると冷凍機油や冷媒ガスの流量や流速を調整することができる。すなわち、揺動軸側面ボス部空間2rの揺動軸部6aの軸方向に直角な方向の断面積と吐出弁20の連通穴22の開口面積との相対関係によって連通穴22側から流入する冷媒ガスの量を給油口6d側から流入する冷媒ガスの量より大きくすることができる。具体的には、軸受隙間である揺動軸側面ボス部空間2rの揺動軸部6aの軸方向に直角な方向の断面積をρとし、連通穴22の開口面積をA、この条件の場合の連通穴22の開口面積をA0とすると、A0=0.1×ρすなわちA0以上の連通穴を設ければ、吐出口1dを優先して高圧ガスが流入してくる。図6からわかるように、連通穴22の開口面積がA0以上すなわち揺動軸側面ボス部空間2rの断面積ρの10%であれば、吸入口1eから排出される冷凍機油11は、連通穴22無い場合の80%程度に抑制されるので、次回起動時に冷凍機油11が不足して、給油機構から吸い上げられないということはなくなる。すなわち、吸入口1eから冷凍機油11が冷凍機油不足になるまで排出される前に、連通穴22によって高圧空間と低圧空間の均圧を終了させることができる。
【0040】
なお、冷凍機油11と冷媒ガスは揺動軸側面ボス部空間2r以外に主軸部主軸受空間3uも通過するが重力向きから揺動軸側面ボス部空間2rを通過する冷凍機油11と冷媒ガスの方が多く、ここでは主軸部主軸受空間3uを無視しても影響はない。
また、0.1は冷媒ガス、冷凍機油の2つの流体の比重や粘性の違い、経路の違いによる流速・流量などを演算、シミュレートして得られる2つの流体の相関関係上の固有値・係数である。すなわち、冷媒ガスと冷凍機油および吐出口側と給油口側との違いで吸入口まで到達する時間や量の違いは10%程度の違いであることを表している。
なお、A0の断面積を実現する連通穴22の口径をφ0とする。
【0041】
これに対して、吐出弁20にさらに大きな連通穴22を設け排出量を減らそうとした場合、圧縮機は再吸入・再圧縮のため大きな効率低下となる。図6のグラフBによれば、連通穴22が吐出口の開口面積σの4%すなわちA2程度で圧縮機の効率が約1%低下する。しかしながら、グラフBは、圧縮機の運転条件において、高圧と低圧との差圧が3.5MPa程度の負荷が重い条件での圧縮機の効率約1%低下であり、実際にこの圧縮機を含めた冷媒回路を使用する例えば空調機などでは、このような高差圧条件を使用する頻度、使用時間は極めて少なく、通年エネルギー消費効率(Annual Performance Factor、以下AFP)換算しても0.05%程度の低下にしかならず、空調機全体に及ぼす影響は極めて少ない。また、グラフAによれば、その時の冷媒排出量は約40%程度と、吐出弁20を取り付けない場合の開口面積A3とほぼ変わらず、通常運転時に循環する冷凍機油量30〜40%と差異はない。よって、これ以上開口面積を大きくしても、循環する冷凍機油量は通常状態と変わらないので、これ以上の開口面積を設ける必要がない。
【0042】
よって、連通穴22が吐出口の開口面積σの4%すなわちA2以下であれば、圧縮機は再吸入・再圧縮のため冷媒回路の熱交換性能を低下させることなく、連通穴22によって高圧空間と低圧空間の均圧を終了させることができる。
なお、A2の断面積を実現する連通穴22の口径をφ2とする。
【0043】
以上より、吐出弁20の連通穴22の開口面積がA0以上A2以下すなわち揺動軸側面ボス部空間2rの揺動軸部6aの軸方向に直角な方向の断面積ρの10%以上吐出口の開口面積σの4%以下とすれば、圧縮機停止時に冷凍機油11が吸入口1eから冷凍機油11が冷凍機油不足になるまで排出される前に、吐出弁20の連通穴22から高圧冷媒ガスを流入させ高圧空間と低圧空間とを均圧させることができるとともに、通常運転中に高圧冷媒ガスの再吸入・再圧縮による圧縮機の効率も1%未満に抑えることができる。また、次回の起動時に密閉容器に貯油された冷凍機油が不足し給油機構が給油できなくなるということもなくなる。
【0044】
図6に基づき具体的に5〜10馬力の圧縮機について説明する。このときの揺動軸側面ボス部空間2rの揺動軸部6aの軸方向に直角な方向の断面積ρは約1.96mm2であり、グラフAより吐出弁20の連通穴22の開口面積が揺動軸側面ボス部空間2rの断面積ρの10%すなわち約0.196mm2以上あれば、冷凍機油11が吸入口1eから排出される量は80%程度に抑えられるように高圧冷媒ガスが給油口6d側より連通穴22側から流入する。連通穴22が円形として、約0.196mm2の開口面積を実現するためには約0.5mmの口径の穴(図6ではφ0)とすればよい。なお、吐出弁20の生産性・組立性やその寿命を考慮すると、連通穴22の口径が0.5mmでは機械加工の精度が必要であり、生産に時間を要する。また、プレスなどでは、0.5mmの小さい穴を繰り返し開けるためには、装置のメンテナンスにも時間を要し、生産性が悪い。これに対して、吐出弁20の連通穴22の口径を1.0mmとすると装置も一般的な加工装置で良く、繰り返し加工に対しても耐久性が良い。よって、5〜10馬力の圧縮機サイズでは、吐出弁20の連通穴22の口径は1.0mm以上(図6ではφ1)とした方が生産性も良いため、φ1すなわち1.0mmを下限として連通穴22を設ける。すなわち、吐出弁20の連通穴22の口径は1.0mm以上あれば、圧縮機停止時に吸入口1eから冷凍機油11が冷凍機油不足になるまで排出される前に、連通穴22によって高圧空間と低圧空間の均圧を終了させる効果が十分得られる。
【0045】
また、吐出口の開口面積σは約72.382mm2(=口径9.6mm)であり、図6のグラフBより吐出弁20の連通穴22の開口面積が吐出口の約4%すなわち約3.142mm2以下であれば、冷凍機油11が吸入口1eから排出される量は約40%程度であるとともに圧縮機の効率も1%未満に抑えられる。なお、約3.142mm2の開口面積を実現するためには連通穴は約2.0mmの口径(図6ではφ2)とすればよい。これにより、吐出弁20の連通穴22の口径は2.0mm以下あれば、通常運転中に高圧冷媒ガスの再吸入・再圧縮による圧縮機の効率も1%未満に抑えられるとともに、連通穴22によって高圧空間と低圧空間の均圧を終了させることができる。
【0046】
よって、5〜10馬力程度の圧縮機では、吐出弁20の連通穴22の口径を1.0mm以上2.0mm以下とすれば、圧縮機停止時に冷凍機油11が吸入口1eから冷凍機油11が冷凍機油不足になるまで排出される前に、吐出弁20の連通穴22から高圧冷媒ガスを流入させ高圧空間と低圧空間とを均圧させることができるとともに、通常運転中に高圧冷媒ガスの再吸入・再圧縮による圧縮機の効率も1%未満に抑えることができる。
【0047】
なお、冷媒の種類や冷凍機油の封入量によっても、圧縮機停止時に高圧冷媒ガスが流入する量や速度は吸入口側と吐出口側とでは違うことが予想されるが、冷媒の種類は密閉容器内の高圧空間と低圧空間との圧力バランスすなわち差圧が違うだけで、給油口側と吐出口側とから流入する冷媒ガスは同じ圧力であり、開口面積条件に著しい違いを生じない。
また、冷凍機油の封入量は冷媒回路の規模が大きくなると増加させることもあるが、それは、通常運転時に冷媒に混合して冷媒回路を循環し再び圧縮機に戻ってくることに時間がかかるため増量しているので、冷凍機油の封入量の増量により冷媒回路に流出したとしても、密閉容器内に貯油されている冷凍機油量は流出を見込んだ量であり余裕があるので、冷凍機油不足に至ることは無い。よって、冷凍機油の封入量についても、開口面積条件の著しい違いとはならない。
よって、開口面積はこれらの条件に左右されず、圧縮機の吐出口あるいは給油経路の圧縮機の設計条件に従って、開口面積も相対的な変更にて十分な効果が発揮できる。
【0048】
以上より、吐出弁20の連通穴22は、揺動軸側面ボス部空間2rの揺動軸部6aの軸方向に直角な方向の断面積ρの10%以上吐出口の開口面積σの4%以下となる開口面積、すなわち図6における開口面積A0以上A2以下あるいは口径φ0以上φ2以下であれば、圧縮機停止時に冷凍機油11が吸入口1eに到達し外部の冷媒回路に排出される前に、吐出弁機構側から高圧冷媒ガスを流入させ高圧空間と低圧空間の均圧を終了させることができるとともに、通常運転時に吐出した高圧冷媒ガスを再吸入・再圧縮し、冷凍サイクルの効率を低下させることを抑制できる。
これによって、通常運転時の冷凍サイクルの効率を低下させること無く、圧縮機の停止とともに生じる均圧作用により、主軸6の高圧油給油穴6eから冷凍機油11が上昇し吸入口1eから流出し冷凍機油不足となることを回避できる。
【0049】
なお、吐出弁20上の連通穴22は、吐出弁20の中央すなわち吐出口1dの開口部の中央に対応するように配置される必要はなく、周辺部に偏っていても構わない。また、連通穴22は円で説明しているが、円である必要はなく、楕円などでも、同じ開口面積が確保されていれば構わない。
また、図5(b)のように、吐出弁20の周囲の一部を欠いた空隙23としても、同じ開口面積が確保されていれば構わない。これにより、吐出弁20は穴を開ける加工より、吐出弁20の強度を心配しない簡単な加工となる。また、プレスなどの一環工程にて吐出弁20が製作されるとすると、一環工程内で同時に穴を打抜く加工もできるので、更に製作が容易となる。
【0050】
また、図5(c)のように吐出弁20の閉鎖部と吐出口1dの開口部をずらした状態にて取り付け、吐出弁20が閉鎖したときにも隙間24が空くようにしておいても構わない。開口面積が同等に確保されていれば、このような加工・組立てによって、吐出弁20には全く加工を加えること無く、取り付け寸法の変更にて、同じ役目と効果を得ることができる。
【0051】
また、吐出弁20上に高圧冷媒ガスを通す隙間を設けた例について説明してきたが、必ずしも吐出弁20上に設けてある必要は無い。例えば、図5(d)は、固定スクロール1側に設けたものであり、吐出口1dの内周に連通溝25を設けたものである。連通溝25であっても高圧冷媒ガスを通す隙間であることには変わらないので、開口面積が同じであれば、効果は変わらない。また、連通溝25は吐出口1dにつながっていれば良いので、圧縮室近傍まで溝が設けられて無くても構わない。すなわち、図5(e)に対して(f)のように吐出口1dの途中で終了していたり、吐出弁20付近の溝が深く圧縮室に近づくにつれ浅くなる斜めとなったりする溝であっても構わない。これにより、吐出弁20のような強度の弱い部品に加工を施すことに対して、強度の強い固定スクロール1に加工を施すので、加工のときの強度や加工により吐出弁20の強度低下の心配が要らなくなる。
【0052】
なお、吐出弁20上の連通穴22や吐出口1dの連通溝25は、複数設けても構わない。例えば、図5(g)のように連通溝25を連通溝25a、25bのように複数に分けても構わない。また、吐出弁20上の連通穴22aと吐出口1dの連通溝22bを両方有しても構わない。いずれの場合も、吐出口1dと貫通する開口面積の合計が、図6に示される開口面積A0以上A2以下、すなわち、揺動軸側面ボス部空間2rの断面積ρの10%以上吐出口の開口面積の4%以下の開口面積σであれば、同等の効果が得られる。
【0053】
よって、コンプライアント機構を持つスクロール圧縮機にて均圧が行われるとき、吐出弁機構に設けた密閉容器と吐出口と連通する開口部によって、高圧冷媒ガスを高圧空間から吐出口を経由して低圧空間に流入させるようにしたので、圧縮機停止時に主軸側の給油経路から高圧冷媒ガスと冷凍機油とが排出されることを抑制できる。さらに、次回の起動時に密閉容器に貯油された冷凍機油が不足し給油機構が給油できなくなるということを防止できる。
【0054】
一方、通常運転時に吐出弁機構に設けた開口部は、吐出された高圧冷媒ガスを圧縮室へ再び吸入することを抑えた構成としたので、高圧冷媒ガスを圧縮室に再吸入、再圧縮することを抑制できる。すなわち、圧縮機の圧縮性能を低下させることは防止できる。
【0055】
また、コンプライアント機構との組合せにより、吐出口側から高圧冷媒ガスが流入しても圧縮機構を逆転させることがないため、従来のスクロール圧縮機のキャピラリー通路のように流量を制限するキャピラリーチューブを使用し、キャピラリーチューブを複雑に加工してキャピラリー通路の長さを得るような加工や追加部品を必要としない。また、エンドミルなどで連通する長さの長い小径の穴を開ける加工は困難なので、予め大きな連通穴を開けその中にキャピラリーチューブにて連通させたブッシュにて埋めるというような工作方法や追加部品を必要としない。
【0056】
また、吐出弁または吐出口に設けられることにより、固定スクロール上にある他の部品やバイパス路等と干渉せず、スクロール圧縮機としては従来と同じ機能を有することができる。
【0057】
なお、スクロール圧縮機によっては、吸入口に逆止弁を設け、揺動スクロールが逆転しても、圧縮室から吸入口、吸入管を介して外部の冷媒回路に冷媒ガスが逆流しないようにしたものもある。この逆止弁でも、圧縮機停止時の均圧にて密閉容器内の高圧空間から低圧空間に冷媒ガスが流れることを防止できるので、冷凍機油の流出も防止できるが、逆止弁の吸入口閉鎖の動作が遅れたり、不完全であったりした場合、わずかな隙間でも冷凍機油は流出してしまうので、吐出弁に設けた連通穴は有効に動作し、冷凍機油の流出を防ぐことができる。すなわち、吸入口の逆止弁と吐出口の吐出弁および吐出弁の連通穴は、併設されていても問題はない。
【0058】
また、開口部は穴や溝、空隙などによって実現させるので、複雑で特殊な加工も必要なく実現できる。また、加工時に部品の強度などの心配もいらない。例えば、吐出弁であれば、型抜きのプレス時に同時に穴を設けることができる。溝については、大きな面積の深い溝である必要がないので、加工は複雑でも小径の長い連通路に比べれば加工に時間は掛からない。
【0059】
さらに、冷凍機油の流出や圧縮性能の低下を心配することなく、高圧と低圧とを均圧させる速度が速くなるので、圧縮機の再起動時までの間隔が速くできる。すなわち、圧縮機は高圧と低圧との差圧がある状態で再起動を行うと、主軸に大きな負荷がかかり破損するので差圧がなくなるまで待機するが、均圧させる速度が速いので待機させる時間も少なくて済む。
【0060】
以上により、より簡素な構造にて、均圧によって生じる圧縮機外への冷凍機油の流出を抑制し、冷凍機油不足にならない信頼性の高いスクロール圧縮機を得ることができる。
【0061】
実施の形態2.
図7は実施の形態2を示す図であり、実施の形態1の開口部を吐出弁機構にバイパスするバイパス穴にて実現したものである。図7において、吐出弁20、吐出弁オサエ21、吐出口1dは、図3と同じである。これに対して、固定スクロール1に吐出口1dと連通するバイパス穴26を設けている。バイパス穴26が吐出弁20の連通穴22や吐出口1dの連通溝25同様、冷媒ガスの流通を行う。
【0062】
なお、バイパス穴26の場合、実施の形態1に対して、圧損が生じるため開口面積を大きくする必要がある。つまり、バイパス穴26を通過する間、冷媒は圧損を受けるので、通過する時間すなわち通過する距離に比例して流速を失う。それは、実施の形態1の開口部の基準の範囲である揺動軸側面ボス部空間2rの断面積や吐出口の開口面積の範囲であって固定スクロールの台座の厚さからその2倍程度の距離であれば、冷媒が通過する距離に対して2(%)程度損失となる。
よって、開口面積は、バイパス穴26の長さl(mm)に対して、2×l(%)程度大きくすると実施の形態1と同等の効果となる。すなわち、揺動軸側面ボス部空間2rの断面積の10%以上吐出口の開口面積の4%以下の開口面積に対してバイパス穴の開口面積は2×l(%)大きくすることによって、主軸6の高圧油給油穴6eから冷凍機油11が上昇し吸入口1eから排出される前に、バイパス穴26にて十分均圧することができる。
具体的に説明すると、穴の開口面積が穴の開口面積が0.196mm2以上3.142mm2以下必要な条件に対してバイパス穴26の長さが10mmとすると、20%大きな0.235mm2以上3.770mm2以下の開口面積とすれば同等の効果が得られる。
【0063】
なお、バイパス穴26は1つでなくても良く、複数設けても構わない。そのとき、合計した開口面積が、同じであれば、性能を低下させずに、主軸6の高圧油給油穴6eから冷凍機油11が上昇し吸入口1eから排出される前に、バイパス穴26にて均圧することができる。
【0064】
よって、吐出弁には加工を加えることなく、固定スクロール1に加工を加えることにより、加工時や加工後の部品強度を確保できる。
また、吐出弁20の連通穴22や吐出口1dの連通溝25では、通常運転時に圧縮室から吐出された高圧冷媒ガスを連通穴22や連通溝25から、直接、吸い込む可能性があるが、バイパス穴26では吐出口1dから離れた場所に開口部を設けることができるので、吐出後の高圧冷媒ガスを直接吸い込むことは無い。よって、吐出ガスの逆流による再圧縮の損失が抑えることができる。
【0065】
実施の形態3.
実施の形態3は、図8に示す通り固定スクロール1の背面へ中間室29となるチャンバー28を設け、チャンバー28の上面へ吐出弁20を設けたものである。これに対して、連通穴27は密閉容器10内とチャンバー28内の中間室29との間を連通するように設ける。実施の形態1同様の開口面積を確保できていれば、性能を低下させずに、主軸6の高圧油給油穴6eから冷凍機油11が上昇し吸入口1eから排出される前に、連通穴27にて均圧する
【0066】
なお、図8では連通穴27は垂直に設けているが、水平に設けても構わないし、傾けた穴であっても構わない。また、連通穴27は1つ設けているが、合計した開口面積が実施の形態1同様の開口面積を確保できていれば、複数設けても構わない。
【0067】
以上のような構成によれば、中間室29と吐出口1dはほぼ同じ圧力となっているので、通常運転時に吐出弁20は密閉容器10と中間室29との間の高圧冷媒ガスの逆流を防いでいる。これに対して、連通穴27を吐出弁機構から離れた場所に設けることができるので、実施の形態2同様、通常運転時に吐出弁機構から吐出した高圧冷媒ガスを再び吸い込み再圧縮するという性能低下は引き起こさない。
さらに、実施の形態2のバイパス穴のように圧損を生じることはないので、開口面積の再設計は必要がない上に、設ける位置を自由に設定できるので、実施の形態2より性能低下を起こさない自由な設計が可能である。
また、固定スクロール1に穴を開ける難しい加工や、性能低下させないために穴の径を調整する加工は難しい。これに対して、チャンバー28の肉厚はそれほど厚くなくても良いので、加工が容易である。また、プレスなどの一環工程で製作されれば、後から穴を開ける必要も無いので、さらに加工が簡単となる。
【0068】
なお、チャンバー28を用いても吐出弁20に連通穴を設ける方法でも構わないし、吐出口1dからチャンバー28の中間室29をバイパスして密閉容器10につながるバイパス穴を設ける方法であっても構わない。
【符号の説明】
【0069】
1 固定スクロール
1a 固定スクロール台板部
1b 固定スクロール板状渦巻歯
1c オルダム案内溝
1d 吐出口
1e 吸入口
2 揺動スクロール
2a 揺動スクロール台板部
2b 揺動スクロール板状渦巻歯
2c オルダム案内溝
2d ボス部
2e 揺動軸受
2f スラスト面
2g 抽気孔
2h 抽気孔の下開口部
2k 台板外周部空間
2n ボス部外径空間
2p 揺動軸上面ボス部空間
2r 揺動軸側面ボス部空間
3 コンプライアントフレーム
3a スラスト軸受
3b 往復摺動面
3c 主軸受
3d 補助主軸受
3e 連通穴
3f 連通穴
3g 中間圧調整弁
3h 中間圧調整弁オサエ
3k 中間圧調整スプリング
3n 中間圧調整弁空間
3p 上嵌合面
3s 下嵌合円筒面
3t スラスト軸受開口部
3u 主軸部主軸受空間
4 ガイドフレーム
4a フレーム上部空間
4b フレーム下部空間
4c 上嵌合円筒面
4d 下嵌合円筒面
5 電動機
5a 電動機回転子
6 主軸
6a 揺動軸部
6b 主軸部
6c 副軸部
6d 給油口
6e 高圧油給油穴
7a 上部リング状シール材
7b 下部リング状シール材
8 サブフレーム
8a 副軸受
9 オルダム機構
9a オルダム機構の固定側キー
9b オルダム機構の揺動側キー
9c オルダム機構環状部
10 密閉容器
10a 密閉容器空間
11 冷凍機油
12 吐出管
13 吸入管
20 吐出弁
21 吐出弁オサエ
22 連通穴
23 空隙
24 空隙
25 連通溝
25a 連通溝
25b 連通溝
26 バイパス穴
27 連通穴
28 チャンバー
100 圧縮機
101 凝縮器
102 膨張弁
103 蒸発器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に冷凍機油が貯油される油だめを有する密閉容器と、
前記密閉容器内に設けられ固定スクロールと揺動軸受を有する中空円筒状のボス部が設けられた揺動スクロールとで構成され前記固定スクロールの板状渦巻歯と前記揺動スクロールの板状渦巻歯とを組合せて形成される圧縮室と、
前記密閉容器に固定され前記揺動スクロールとの間にボス部外径空間を形成し前記ボス部外径空間から前記揺動スクロールの外周部に連通する連通路を有するフレームと
主軸部と揺動軸部とが設けられ前記フレームに支持されるとともに前記揺動軸部と前記揺動軸受とを介して前記揺動スクロールを回転自在に支持し前記揺動軸受に給油する給油路を有した主軸と、
前記固定スクロールの外周部に設けられ冷媒を前記密閉容器外の低圧空間から前記圧縮室に吸入する吸入口と、
前記固定スクロールの中央部に設けられ前記圧縮室にて圧縮された前記冷媒を前記密閉容器内の高圧空間に吐出する吐出口と、
前記吐出口に設けられ前記吐出口を開閉する吐出弁と、
前記吐出弁あるいは前記吐出口に設けられ前記吐出弁が前記吐出口を閉鎖したとき前記高圧空間と前記吐出口とを連通する開口部と、
前記高圧空間から前記油だめを介して前記主軸給油路に入り前記揺動軸部と前記揺動軸受との軸受隙間を経て前記ボス部外径空間に通じ前記ボス部外径空間の連通路を介して前記揺動スクロールの外周部を通り前記吸入口に連通する第1の連通路と、
前記高圧空間から前記吐出口を通り前記圧縮室に入り前記固定スクロールの板状渦巻歯の歯先の隙間あるいは前記揺動スクロールの板状渦巻歯の歯先の隙間を経て前記吸入口に連通する第2の連通路と、
を備え、
前記第2の連通路の前記開口部の開口面積は前記第1の連通路を形成する前記軸受隙間の前記主軸の軸方向に直角な方向の断面積より大きく前記第2の連通路の前記吐出口の開口面積より小さいことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】
前記軸受隙間の前記揺動軸部に直角方向の断面積は前記第1の連通路の中で最も小さいことを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記吐出口の開口面積は前記第2の連通路の中で最も大きいことを特徴とする請求項2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記圧縮室は、前記フレーム空間との間に冷媒を流入させ前記揺動スクロールを前記固定スクロール側に押し付け形成したことを特徴とする請求項3に記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記吐出機構と前記吐出口との間に中間室を形成するチャンバーを設けたことを特徴とする請求項3または4に記載のスクロール圧縮機。
【請求項6】
前記開口部は、前記吐出弁に設けられた連通穴であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載のスクロール圧縮機。
【請求項7】
前記開口部は、前記吐出口に設けられた前記吐出口と前記高圧空間とを連通する連通溝であることを特徴とする請求項3または4に記載のスクロール圧縮機。
【請求項8】
前記開口部は、前記固定スクロールに設けられた前記吐出口と前記高圧空間とを連通するバイパス穴であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載のスクロール圧縮機。
【請求項9】
前記開口部は、前記チャンバーに設けられ前記前記チャンバー内と前記高圧空間とを連通する連通穴であることを特徴とする請求項5に記載のスクロール圧縮機。
【請求項10】
前記開口部は、前記揺動軸と前記揺動軸受との隙間断面積の10%以上吐出口の開口面積の4%以下となる開口面積であることを特徴とする請求項6または7または9に記載のスクロール圧縮機。
【請求項11】
前記連通穴は、口径が1mm以上2mm以下の穴であることを特徴とする請求項6に記載のスクロール圧縮機。
【請求項12】
前記吸入口に前記圧縮室から前記吸入口を介しての前記密閉容器外の前記低圧空間に前記冷媒が逆流することを防止する吸入逆止弁を備えたことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のスクロール圧縮機。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載のスクロール圧縮機と、前記スクロール圧縮機にて圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器にて凝縮された前記冷媒を減圧する減圧器と、前記減圧器にて減圧した前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、を配管で接続し前記冷媒を循環させる冷媒回路を備えたことを特徴とする冷凍空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−127321(P2012−127321A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281780(P2010−281780)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】