説明

スタチンと気管支拡張剤との組み合わせ

本発明は、呼吸器疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)の処置における、気管支拡張剤、副腎皮質ステロイド、およびHMG−CoAリダクターゼ阻害剤の組み合わせを含む医薬を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、呼吸器疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)の処置における、気管支拡張剤、糖質コルチコステロイド、およびHMG−CoAリダクターゼ阻害剤との組み合わせを含む医薬を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
多くの疾患の診断およびマネージメントは、共に、明白な理由のために、特定の疾患で特徴的な、典型的な診断基準および処置方針(manifestation)に焦点を当てている(それによって、それを他のものから識別している)。その例は、リウマチ性関節炎(RA)における関節関連徴候および症状、ならびにCOPDにおける肺機能試験である。
【0003】
しかし、多くの疾患は、重要な共存症(co-morbidity)を有する、すなわち原発性疾患に独特でもなく特徴的でもないため、しばしば“他の”疾患とみなされている。例えば、心血管系共存症は、しばしば、原発性疾患、例えばRAもしくはCOPDに非特異的であり、かつ直接的に関係していないと見られている。しかしながら、共存症は、患者のクオリティー・オブ・ライフと社会的コストの両方の点で、原発性疾患の伝統的な処置方針と同程度に重要である。
【0004】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、通常慢性気管支炎および肺気腫を伴う非可逆性気道閉塞を有する患者を説明するために用いられる用語であり、疫学的に明らかに喫煙に関係する。COPDは、肺機能の加速的減退ならびに増悪と呼ばれる症状および運動能力の急性悪化の両方によって特徴付けられる。従って、該疾患は重篤であり、進行性であり、しばしば重度の呼吸障害、低酸素血症、そして最後には死に至る。COPDは、工業化社会で4番目の死亡原因であり、患者、その経歴、医療資源、および社会に重い負担となっている。西側諸国では、COPDは圧倒的に喫煙者間で見られるが、世界の他の地域では感染および屋内調理が原因のようである。COPDは、喫煙によって誘発される炎症および損傷を受けた粘膜免疫防御が共存症に寄与し得る疾患である。全身の炎症は喫煙中止後も長く活性であり続ける。
【0005】
COPDを有する患者は非常に多く、該疾患は処置が難しい。気管支痙攣、症状、クオリティー・オブ・ライフおよび増悪に効果がある処置は存在するが、進行的で加速的な肺機能損失を遅らせる処置はない。処置の主要目的は、疾患の進行を遅延させることであり、これを達成するためには禁煙が最も重要な過程である。しかし、決して全てのCOPD患者が喫煙をやめることが出来るわけではなく、また望んでいるわけでもないし、たとえ患者が喫煙をやめても、ほとんどの場合、気道閉塞はなくならない。これらの場合においては、薬理学的治療により、幾らか軽減され得る。今日まで、僅かの群で、薬理学的処置が、例えば気管支拡張剤および糖質コルチコステロイドで試験されたが、COPDにおいて異なる結果をもたらした。一連の気管支拡張剤は、短時間作用型および長時間作用型の抗コリン剤およびβ−アゴニストを主に含む。糖質コルチコステロイドによる処置法は問題が多かったが、長時間作用型β−アゴニスト(例えばフォルモテロールおよびサルメテロール)を、糖質コルチコステロイド(例えばブデソニドおよびプロピオン酸フルチカゾン)と共に組み合わせる治療の導入により、新しい薬理学的手段が利用できるようになった。近年、長時間作用型β−アゴニストおよび糖質コルチコステロイドを含む組み合わせ製品、例えばフォルモテロール/ブデソニド(AstraZeneca)、およびサルメテロール/プロピオン酸フルチカゾン(GSK)が、利用できるようになった。
【0006】
さらに、特定の疾患の徴候および症状のために開発された最近の抗炎症剤は、共存症の多くに関与すると推測される、同時性全身炎症を長期間処置するために最適化できない。このような治療は、進行中の全身炎症を軽減し、しかし良好な耐容性および安全性を有することができなければならない。
【発明の開示】
【0007】
本発明の説明
多くの専門家は、COPDの全ての態様に対する新規治療の要請を表明しているが、特に時間の経過に伴う疾病性消耗(the declining of the disease)を阻止し、または少なくとも軽減する方法を見出すことが重要である。
【0008】
幾つかの炎症メディエーターは、多くの炎症細胞が活性化されるので、COPDに関係している可能性が高い。例えば喘息の処置のための医療処置において、単一のメディエーターに対する作用では、新規治療の開発に成功しない。喘息と比べ、COPDに関係するメディエーターは異なっており、従って、異なる薬物を開発する必要がある。COPDのための標的としては、ロイコトリエン B阻害剤、ケモカイン・アンタゴニスト、好中球エラスターゼ、ホスホジエステラーゼ−4阻害剤、カテプシン、マトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMP)、プロテアーゼ阻害剤、およびその他の多くのものがある。COPDに関連する肺損傷は、プロテアーゼ間の不均衡によって生じることを示唆する有力な証拠がある。
【0009】
マトリックス・メタロプロテイナーゼは、エラスチン、コラーゲン、プロテオグリカン、ラミニン、およびフィブロネクチンを含む、肺柔組織の細胞外マトリックスの成分の全てを分解することが可能である(FASEB J, 12 1075 (1998))。幾つかの非選択的MMP阻害剤が開発されているが、長期間使用において副作用が問題となり得る。個々のMMP、例えばMMP−9およびMMP−12のより選択的な阻害剤が、現在開発中である。
【0010】
スタチン類は、抗炎症剤として認識されることが多くなりつつある。Schoenbeck and Libby (Circulation, 109 (suppl. II), II-18-26 (2004))は、スタチン類(3−ヒドロキシ−3−メチル グルタリル コエンザイム A(HMG−CoA)リダクターゼ阻害剤)に関する抗炎症剤としての in vitro および in vivo の証拠を検討することによってこのことを主張している。これらの著者は、如何なる種類の呼吸器疾患についてもスタチン類の使用との何らかの関係について、全く何も述べていない。
【0011】
スタチン類は、抗高脂血症化合物として最も一般的に用いられる。その例は、ロバスタチン、ロスバスタチン(rosuvastatin)(Crestor(商標), AstraZeneca)、プラバスタチン(Pravachol(商標), Bristol-Myers Squibb)、シンバスタチン(Zocord(商標), Merck)、イタバスタチン(itavastatin)、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン(Lipitor(商標), Pfizer)、およびメバスタチン(mevastatin)である。WO 00/48626 (Univ. of Washington)は、0.1mg未満の濃度でHMG−CoAリダクターゼ阻害剤(スタチン)を含む組成物、およびCOPDを含む肺疾患をスタチンのエアゾール製剤で処置する方法を提供している。
【0012】
EP 1 275 388 (Takeda)は、TNF−α関連疾患、例えば炎症性疾患(喘息およびCOPDを含む)の予防および処置のための、TNF−α阻害剤(スタチン)を提供する。
【0013】
スタチンであるセリバスタチンは、慢性気管支炎の患者由来の肺胞マクロファージの炎症活性を低減することが示されている(Circulation 101 (2000), 1760)。スタチンを投与された患者についての研究において(特定の患者編入基準を用いた)、スタチン治療の開始が、タバコ使用因子に関係しないFEV減退率の著しい改善に関与していることが示された。スタチン投与前のベースラインFEVの傾きは、−109.2ml/yrであり、スタチン治療後では、傾きは−46.7ml/yrであった(Chest, 120 (4), suppl, p291S (2001))。
【0014】
我々は、個別に、連続して、もしくは同時に与えられるHMG−CoAリダクターゼ阻害剤(好ましくはスタチン)、気管支拡張剤、および糖質コルチコステロイドの組み合わせが、それぞれの成分の効果を強化し得ること、また、慣用のCOPD処置よりよい効果を生じることを見出した。治療効果は、COPDの顕著な特徴である肺機能の速い減退に関して観察され、そして効果は、COPDに特徴的な全身の炎症に関して観察され得る。本発明による組み合わせの長時間作用は、肺機能の保存、および推定より少ない共存症(全身の炎症に対する効果に基づく)である。
【0015】
第1の態様において、本発明は、
(a) スタチン、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第1活性成分;
(b) 気管支拡張剤、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第2活性成分;および
所望により、
(c) 糖質コルチコステロイド、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第3活性成分;
を混合物中に、もしくは個別に含む、医薬的組み合わせを提供する。
【0016】
本発明の組み合わせは、呼吸器疾患、例えば喘息、COPD、および繊維分解性疾患、例えば全身性強皮症、肺胞炎、サルコイドーシス、および突発性肺線維症の処置のために用いられ得る。
【0017】
本発明による薬理学的に活性な薬剤は、スタチン、例えばロバスタチン、ロスバスタチン(Crestor(商標), AstraZeneca)、プラバスタチン(Pravachol(商標), Bristol-Myers Squibb)、シンバスタチン (Zocord(商標), Merck)、イタバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン(Lipitor(商標), Pfizer)およびメバスタチンを含む。
【0018】
適当な糖質コルチコステロイドは、ブデソニド、フルチカゾン(例えばプロピオン酸エステルとして)、モメタゾン(例えばフランカルボン酸エステルとして)、ベクロメタゾン(例えば17−プロピオン酸エステルもしくは17,21−ジプロピオン酸エステルとして)、シクレソニド、ロテプレドノール(loteprednol)(例えばエタボネートとして)、エチプレドノール(etiprednol)(例えばジクロアセテート(dicloacetate)として)、トリアムシノロン(例えばアセトニド)、フルニソリド、ゾチカゾン(zoticasone)、フルモキソニド(flumoxonide)、ロフレポニド(rofleponide)、ブチキソコート(butixocort)(例えばプロピオン酸エステルとして)、プレドニゾロン、プレドニゾン、チプレダン(tipredane)、WO 2002/12265、WO 2002/12266 および WO 2002/88167 に記載のステロイドエステル(I):例えば6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸 S−フルオロメチル エステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸 S−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3S−イル) エステル、および6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−[(4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボニル)オキシ]−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸 S−フルオロメチル エステル、DE 4129535などに記載のステロイドエステル(II)を含む。
【0019】
好ましくは、気管支拡張剤は、長時間作用型β−アゴニストである。適当な長時間作用型β−アゴニストは、サルメテロール、フォルモテロール、バンブテロール(bambuterol)、TA 2005 (2(1H)−キノロン、8−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[[2−(4−メトキシ−フェニル)−1−メチルエチル]−アミノ]エチル] 一塩酸塩, [R−(R,R)]として化学的に同定され、また Chemical Abstract Service Registry Number 137888-11-0 により識別され、米国特許第 4.579.854 号(=CHF-4226、carmoterol)に開示されている)、QAB149 (CAS no 312753-06-3; indacaterol)、ホルムアニリド誘導体(III)、例えば WO 2002/76933 に開示された3−(4−{[6−({(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}−ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド誘導体(IV)、例えば WO 2002/88167 に開示された3−(4−{[6−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシ−メチル)フェニル]エチル}アミノ)−ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド、WO 2003/042164 および WO 2005/025555 に開示されたアリール アニリン受容体アゴニスト(V)、WO 2004/032921 に開示されたインドール誘導体などを含む。抗コリン化合物としては、イプラトロピウム(例えば臭化物として)、チオトロピウム(例えば臭化物として)、オキシトロピウム(例えば臭化物として)、トルテロジン、ソリフェナシン(例えばコハク酸塩として)、イミダフェナシン、ダリフェナシン、フェソテロジン、グリコピロニウム(例えば臭化物として)、メペンゾラート(例えば臭化物として)、キヌクリジン誘導体、例えば US 2003/0055080 に開示された臭化3(R)−(2−ヒドロキシ−2,2−ジチエン−2−イルアセトキシ)−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンなどが挙げられる。これらの化合物の幾つかは、もしあるならば、薬理学的に許容されるエステル、塩、溶媒和物(例えば水和物)、または該エステルもしくは塩の溶媒和物の形態で投与され得る。ラセミ混合物、ならびに上記の化合物の1個以上の光学異性体の両方が、本発明の範囲内である。
【0020】
適当な生理学的に許容される塩は、無機酸および有機酸から誘導される酸付加塩を含み、例えば塩化物、臭化物、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、4−メトキシ安息香酸塩、2−もしくは4−ヒドロキシ安息香酸塩、4−クロロ安息香酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グルタル酸塩、トリカルバリル酸塩、ヒドロキシナフタレン−カルボン酸塩(キシナホ酸塩)、またはオレイン酸塩、またはそれらの溶媒和物である。
第2活性成分は、好ましくはフマル酸フォルモテロール 二水和物またはキシナホ酸サルメテロールである。
【0021】
本発明に使用するための望ましい薬理学的に活性なスタチンは、ロスバスタチンおよびアトルバスタチンを含む。望ましい副腎皮質ステロイド剤は、フランカルボン酸モメタゾン、シクレソニド、ゾチカゾン(zoticasone)、フルモキソニド(flumoxonide)、ステロイド(I)、ステロイド(II)、プロピオン酸フルチカゾンおよびブデソニドを含み、さらにより望ましくはブデソニドである。望ましい薬理学的に活性な長時間作用型β−アゴニストは、キシナホ酸サルメテロール、ホルムアニリド誘導体(III)、ベンゼンスルホンアミド誘導体(IV)およびフォルモテロール(例えばフマル酸塩二水和物)であり、さらにより望ましくはフマル酸フォルモテロール 二水和物である。より望ましい抗コリン剤としては、チオトロピウム、トルテロジン、およびキヌクリジン誘導体(US 2003/005580で記載)が挙げられる。
【0022】
好ましくは、それぞれのクラスで1個の活性成分が存在し、すなわち1個のスタチン、1個の気管支拡張剤、および1個の副腎皮質ステロイドが存在する。
【0023】
望ましい組み合わせは、
アトルバスタチン/フマル酸フォルモテロール 二水和物;
ロスバスタチン/フマル酸フォルモテロール 二水和物;
プラバスタチン/フマル酸フォルモテロール 二水和物;
シンバスタチン/フマル酸フォルモテロール 二水和物;
アトルバスタチン/ブデソニド/フマル酸フォルモテロール 二水和物;
ロスバスタチン/ブデソニド/フマル酸フォルモテロール 二水和物;
ロスバスタチン/シクレソニド/フマル酸フォルモテロール 二水和物;
アトルバスタチン/プロピオン酸フルチカゾン/キシナホ酸サルメテロール;
アトルバスタチン/シクレソニド/フマル酸フォルモテロール 二水和物;
ロスバスタチン/フランカルボン酸モメタゾン/フマル酸フォルモテロール二水和物;および
ロスバスタチン/プロピオン酸フルチカゾン/フマル酸フォルモテロール二水和物;
を含む。
【0024】
最も望ましい組み合わせは、
ロスバスタチン/フマル酸フォルモテロール 二水和物;
アトルバスタチン/ブデソニド/フマル酸フォルモテロール 二水和物;および
ロスバスタチン/ブデソニド/フマル酸フォルモテロール 二水和物;
である。
【0025】
他の望ましい組み合わせは、
ロスバスタチン/フマル酸フォルモテロール 二水和物/臭化チオトロピウム;
アトルバスタチン/フマル酸フォルモテロール 二水和物/臭化チオトロピウム;
アトルバスタチン/フマル酸フォルモテロール 二水和物/トルテロジン;
ロスバスタチン/臭化チオトロピウム;
アトルバスタチン/臭化チオトロピウム;
を含む。
【0026】
本発明に従って、呼吸器疾患の処置に使用するための医薬の製造における、
(a) スタチン、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第1活性成分;
(b) 気管支拡張剤、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第2活性成分;および
所望により
(c) 糖質コルチコステロイド、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第3活性成分;
を混合物中に、もしくは個別に含む組み合わせを提供する。
【0027】
本発明はまた、
(a) スタチン、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第1活性成分;
(b) 気管支拡張剤、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第2活性成分;および
所望により
(c) 糖質コルチコステロイド、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第3活性成分;
を混合物中に、もしくは個別に含む、治療有効量の組み合わせを患者に投与することを含む、呼吸器疾患を処置する方法を提供する。
【0028】
成分の有効量は、用いられる特定の化合物および投与方法、ならびに処置される個人の体重および疾病状態に大きく依存する。スタチンの経口投与用量は、一般的に、約0.01mgから約200mgの、好ましくは10から80mgの、より好ましくは5から40mgの範囲であり;吸入のためには、0.001mgから約25mgの用量範囲が望ましく、さらにより好ましくは0.1から25mgの用量である。
【0029】
長時間作用型β−アゴニストの適当な1日用量は、1μgから100mgの範囲であり、それぞれの化合物の効力に応じて変化し、例えばフォルモテロールについては、1日用量は1から100μgの範囲であり、望ましい用量は3から48μg(フマル酸塩二水和物として)である。副腎皮質ステロイドについての適当な1日用量は、50μgから2000μgの範囲であり、例えばブデソニドについては、1日用量は、50μgから1600μgの範囲である。抗コリン剤の吸入のための用量は、1μgから300μgであり、好ましくは臭化イプラトロピウム(Atrovent(商標), Boehringer Ingelheim)については、用量は10から200μgであり、そしてチオトロピウム(Spiriva(商標), Boehringer Ingelheim)については、用量は1から50μgである。
【0030】
適切には、第2活性成分と第3活性成分のモル比は1:2500から12:1である。
第2活性成分と第3活性成分のモル比は、好ましくは、1:555から2:1であり、より好ましくは1:150から1:1である。第2活性成分と第3活性成分のモル比は、より好ましくは1:133から1:6である。第2活性成分と第3活性成分のモル比は、最も好ましくは1:70から1:4である。
【0031】
本発明の化合物は、混合物で、すなわち一体となって投与され得るか、または個別に投与され得る。一体となって投与された場合、該成分は、単一医薬組成物として、例えば吸入によって投与され得る固定された組み合わせとして、投与され得る。あるいは、該成分は、個別に、すなわち、次々に、例えば経口でスタチンを、そして残りの2つの成分を吸入によって投与され得る。個別の投与のための時間間隔は、直後(次々に)の投与から数時間離しての投与の何れでもよい。
【0032】
本発明によって処置され得る呼吸器疾患の例は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、全身性強皮症、肺胞炎、サルコイドーシス、嚢胞性線維症、フィブリン性および偽膜性鼻炎、および特発性肺線維症を含む。
【0033】
本発明は、さらに、
(a) スタチン、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第1活性成分;
(b) 気管支拡張剤、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第2活性成分;および
所望により
(c) 糖質コルチコステロイド、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第3活性成分;
を、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤もしくは担体と混合することを含む、本発明の医薬組成物の製造方法を提供する。
【0034】
治療活性成分は、予防的処置として予防的に投与されてもよく、また治療的処置として病状の経過中に投与されてもよい。
【0035】
医薬組成物は、溶液、懸濁液、フルオロアルカン・エアゾール、および乾燥粉末製剤の形態で、局所で(例えば肺および/または気道へ、または皮膚へ);または例えば、錠剤、カプセル剤、シロップ、粉剤もしくは顆粒の形態で経口投与によって、または溶液もしくは懸濁液の形態で非経腸投与によって、または皮下投与によって、または坐剤もしくはフォームの形態で直腸投与によって、または経皮で、全身へ投与され得る。
【0036】
本発明に用いられる組成物は、所望により、さらに、1個以上の薬学的に許容される添加剤、希釈剤および/または担体を含む。組成物は、好ましくは、吸入用乾燥粉末の形態であり、ここで、薬学的に活性な成分の粒子は、10μm未満の質量中位径を有する。
【0037】
別個に投与する場合、投与は、別の経路を介して行われ得る。例えば、スタチンを経口で投与し、ステロイドおよびβ−アゴニストを組み合わせて吸入によって、何れも粉末として、もしくはエアゾール製剤として、または霧状化に適した製剤として投与され得る。化合物は、単一のチャンバー/カートリッジから送達され得るが、また個別のチャンネルを有する2個もしくは3個のチャンバー/カートリッジから送達され得る。
【0038】
生物学的データ
上記で述べた通り、COPDは、感受性のある個人において喫煙がきっかけとなる慢性疾患である。それは、例えば息切れ、湿性咳、喘鳴といった種々の呼吸器の症候によって特徴付けられる。これらの症候は、時に、種々の間隔で、急性増悪によって急に増大し得る。呼吸器感染は、生死に関わる増悪への重要なトリガーであり、そしてクオリティー・オブ・ライフへの重大な影響を与える。幾つかの薬物は、増悪の頻度に対してある種の予防的な効果を示した:例えば吸入副腎皮質ステロイド(ICS)、特に長時間作用型β−アゴニスト(LABA)との組み合わせ。Symbicort (登録商標)、すなわちブデソニドおよびフォルモテロールの固定された組み合わせは、症状、クオリティー・オブ・ライフおよび重度の増悪の予防の効果に基づいて、COPDの処置用として承認されている。この効果は、重度の増悪の最も厳しい:呼吸器の症状による入院の必要性、または経口副腎皮質ステロイド治療の必要性、に基づくものであった。
【0039】
COPDの臨床長期間試験の事後解析において、スタチンで処置された患者に、FEV減退の阻止効果が観察された。この効果は、ICSを含む他の何れの処置でも見られなかった。上記の増悪に対しては、Symbicort(登録商標)として供されるブデソニドおよびフォルモテロールの相乗効果があった。スタチンによる増悪への効果は記載されておらず、また予想されていなかった。驚くべきことに、我々は、フォルモテロールおよびブデソニドの組み合わせ(Symbicort)の、増悪に対する効果は、スタチンによってさらに強化され得ることを見出した。
【0040】
方法
中程度から重度のCOPDに対する、二つの1年間臨床試験より、二次的分析(meta-analysis)を行った。ブデソニド(Pulmicort(登録商標))、フォルモテロール(Oxis(登録商標))、フォルモテロール+ブデソニド(Symbicort(登録商標))、またはプラセボで処置された患者を、併用薬としてのスタチンを伴った場合および伴わない場合について分析した。経口副腎皮質ステロイドの処置が必要であると定義される重度の悪化の頻度を検定した。
【0041】
結果
分析結果を表1に示す。単一成分(ブデソニドおよびフォルモテロールそれぞれ)に対してフォルモテロールおよびブデソニドの組み合わせ(Symbicort(登録商標))処置で陽性の効果が示され、それは、患者がスタチン類での処置を受けたならば、さらに強められた。増悪の発生頻度が最も低いのは、Symbicort (登録商標)+スタチン類を受けた患者で見られるものであり、1年当たり0.3であり、プラセボ・グループに対して75%減少に相当する。
【0042】
【表1】

【0043】
COPDの増悪に対するフォルモテロールおよびブデソニドの組み合わせ(Symbicort(登録商標))処置の陽性の効果はスタチンによって強化され、そしてフォルモテロールおよびブデソニドの組み合わせ(Symbicort(登録商標))、ならびにスタチンは、COPD増悪の発生頻度を最も低くし、すなわちプラセボ・グループに対して82%減少に相当する。
本発明は、下記の実施例によって説明される。
【実施例】
【0044】
実施例1:吸入−乾燥粉末
成分 1回投与当たり
フォルモテロール(フマル酸塩二水和物として) 4.5μg
ブデソニド 160μg
ロスバスタチン 1mg
【0045】
実施例2:吸入−定用量吸入器
成分 1回投与当たり
フォルモテロール(フマル酸塩二水和物として) 4.5μg
ブデソニド 160μg
ロスバスタチン 1mg
HFA 227 50μl
【0046】
実施例3:吸入−乾燥粉末
成分 1回投与当たり
フォルモテロール(フマル酸塩二水和物として) 4.5μg
ブデソニド 160μg
ロスバスタチン 1mg
ラクトース 1、2、5、10もしくは20mgまで
【0047】
実施例4:吸入/経口投与
エアゾール製剤
成分 1回投与当たり
フォルモテロール(フマル酸塩二水和物として) 4.5μg
ブデソニド 160μg
錠剤製剤
ロスバスタチン 10mg
【0048】
実施例5:吸入/経口投与
エアゾール製剤
成分 1回投与当たり
フォルモテロール(フマル酸塩二水和物として) 4.5μg
ブデソニド 160μg
錠剤製剤
ロスバスタチン 20mg

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) スタチン、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第1活性成分;
(b) 気管支拡張剤、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第2活性成分;および
所望により
(c) 糖質コルチコステロイド、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第3活性成分;
を混合物中に、もしくは個別に含む、医薬的組み合わせ。
【請求項2】
スタチン(複数を含む)が、ロバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、イタバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチンおよびメバスタチンから選択される、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
スタチンがロスバスタチンである、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項4】
スタチンがアトルバスタチンである、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項5】
気管支拡張剤(複数を含む)が、長時間作用型β−アゴニストである、請求項1から4の何れか1項に記載の組み合わせ。
【請求項6】
長時間作用型β−アゴニスト(複数を含む)が、サルメテロール、フォルモテロール、バンブテロール、2(1H)−キノロン、8−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[[2−(4−メトキシ−フェニル)−1−メチルエチル]−アミノ]エチル] 一塩酸塩, [R−(R,R)]、3−(4−{[6−({(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}−ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、もしくは3−(4−{[6−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシ−メチル)フェニル]エチル}アミノ)−ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミドおよびその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物から選択される、請求項1から5の何れか1項に記載の組み合わせ。
【請求項7】
長時間作用型β−アゴニストがフォルモテロール、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、請求項1から6の何れか1項に記載の組み合わせ。
【請求項8】
長時間作用型β−アゴニストがフマル酸フォルモテロール二水和物である、請求項1から7の何れか1項に記載の組み合わせ。
【請求項9】
気管支拡張剤(複数を含む)が、抗コリン剤、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、請求項1から4の何れか1項に記載の組み合わせ。
【請求項10】
抗コリン剤(複数を含む)が、イプラトロピウム(例えば臭化物として)、チオトロピウム(例えば臭化物として)、オキシトロピウム(例えば臭化物として)、トルテロジン、ソリフェナシン(例えばコハク酸塩として)、イミダフェナシン、ダリフェナシン、フェソテロジン、グリコピロニウム(例えば臭化物として)、メペンゾラート(例えば臭化物として)、キヌクリジン誘導体、例えば臭化 3(R)−(2−ヒドロキシ−2,2−ジチエン−2−イルアセトキシ)−1−(3−フェノキシプロピル)−1−アゾニア−ビシクロ[2.2.2]オクタンおよびその薬学的に許容される塩、もしくは塩の溶媒和物から選択される、請求項1から4の何れか1項に記載の組み合わせ。
【請求項11】
抗コリン剤が臭化チオトロピウムである、請求項10に記載の組み合わせ。
【請求項12】
糖質コルチコステロイド(複数を含む)が、ブデソニド、フルチカゾン、モメタゾン、ベクロメタゾン、シクレソニド、ロテプレドノール、エチプレドノール、トリアムシノロン、フルニソリド、ゾチカゾン、フルモキソニド、ロフレポニド、ブチキソコート、プレドニゾロン、プレドニゾン、チプレダン、6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸 S−フルオロメチル エステル、6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸 S−(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3S−イル) エステル、および6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α−[(4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボニル)オキシ]−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオ酸 S−フルオロメチル エステルおよびその薬学的に許容される塩から選択される、請求項1から4の何れか1項に記載の組み合わせ。
【請求項13】
糖質コルチコステロイドがブデソニドである、請求項1から4の何れか1項に記載の組み合わせ。
【請求項14】
呼吸器疾患の処置に使用するための請求項1から13の何れか1項に記載の組み合わせ。
【請求項15】
COPDの処置に使用するための請求項1から14の何れか1項に記載の組み合わせ。
【請求項16】
(a) スタチン、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第1活性成分;
(b) 気管支拡張剤、その薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、または該塩の溶媒和物である、1個以上の第2活性成分;
(c) 糖質コルチコステロイドである、1個以上の第3活性成分;
を混合物中に、もしくは個別に含む、治療有効量の組み合わせを患者に投与することを含む、呼吸器疾患を処置する方法。
【請求項17】
疾患がCOPDである、請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2008−506674(P2008−506674A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520874(P2007−520874)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002413
【国際公開番号】WO2006/008437
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】