説明

スタビライザ装置

【課題】 左,右のコーナに対する制御を共通化することで、構成や制御を簡略化する。
【解決手段】 第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3とを連結して捩り剛性を調整する可変剛性部4を、各スタビライザバー2,3間の相対回転運動を直線運動に変換するボールアンドランプ機構9と、直線運動を抑制するためにボールアンドランプ機構9の第2のプレート12を付勢するコイルばね15と、このコイルばね15の付勢力を調整する付勢力調整機構16とにより構成する。従って、可変剛性部4は、捩り剛性を調整する場合、付勢力調整機構16によってコイルばね15の初期荷重を小さくするか、大きくするかの調整となる。これにより、左,右のコーナに関係なく同様の制御となるから、左コーナと右コーナとが交互に続く場合でも、電動モータ19の頻繁な駆動を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載され、車体のロール運動を抑制するのに好適なスタビライザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両は、コーナリングなどの走行状態で、車体の姿勢を安定させるためにスタビライザ装置を備えているものがある。昨今では従前から開発されている油圧のスタビライザ装置の他に搭載性に優れた電動スタビライザ装置の開発が行われている。電動スタビライザ装置の一例は特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−120175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スタビライザ装置は、車両に搭載され、車両の走行性を向上するために使用される。このようなスタビライザ装置は、搭載のために必要となる車両のスペースを少なくすることが望ましく、小型化が望まれている。本発明の目的は、小型のスタビライザ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明にあっては、第1のスタビライザバーと、第2のスタビライザバーと、該各スタビライザバーを連結してねじり剛性を調整する可変剛性部とからなり、前記可変剛性部は、前記第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーとの相対回転に応じて直線運動する直動機構と、前記直線運動を抑制する方向に前記直動機構を付勢する付勢機構と、該付勢機構の付勢する力を調整する付勢力調整機構とにより構成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、スタビライザ装置を小型にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】スタビライザ装置を使用した車両の全体構成の一例を示すシステム図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るスタビライザ装置を示す縦断面図である。
【図3】図2のスタビライザ装置をコイルばねの初期荷重を大きくした状態で示す縦断面図である。
【図4】スタビライザ装置を示す分解斜視図である。
【図5】第1のランプと第2のランプとボールとによって各プレートの相対回転を直線運動に変換した状態を示す要部拡大の断面図である。
【図6】各スタビライザバー間のトルクと捩れ角との関係を示す特性線図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るスタビライザ装置を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るスタビライザ装置を示す縦断面図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係るスタビライザ装置を示す縦断面図である。
【図10】本発明の第1の変形例によるランプを示す要部拡大断面図である。
【図11】本発明の第2の変形例によるランプを示す要部拡大断面図である。
【図12】制御装置の回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に説明するスタビライザ装置は、製品化のうえで望ましい課題を色々解決しており、先に説明した小型化の課題だけでなく、後述する課題を解決している。これらのうちの代表的なものについて、以下列挙する。
【0009】
[より小型化の実現について]
本発明に係る実施の形態では、スタビライザ装置のスタビライザバー間の剛性を変化可能とした。そのための構成として、スタビライザ装置は一対のスタビライザバーの間のねじり剛性を調整可能とするための可変剛性部を備えている。
【0010】
より具体的には、可変剛性部として、第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーとの相対回転運動に応じて直線運動する直動機構と、直線運動を抑制する方向に付勢する付勢機構と、付勢機構の付勢する力を調整する付勢力調整機構を設けている。
【0011】
さらに具体的には、直動機構として傾斜部を有する二つのプレート間にボールや円錐ころを挟んだ機構(以下、ボールアンドアンドランプ機構と記す)を採用し、付勢機構としてコイルばねや皿ばねなど、弾性力を有するばね部材を設け、そのばね部材の弾性力すなわち付勢力を調整する機構をさらに設けている。
【0012】
上述のとおり以下の実施例では、ボールアンドアンドランプ機構とそれに作用する押圧力を制御する機構とを備え、これらの機構により、スタビライザの剛性特性を制御可能とする。上記の構成により、スタビライザ装置の小型化を実現できる。
【0013】
さらにまた、ボールアンドアンドランプ機構に押圧力を与える付与機構の内部に弾性力を制御するための機構を配置しているので、スタビライザ装置内部の空間を有効に利用できる。この結果、小型化の課題が実現できる。なお、以下の実施の形態では、弾性力を制御するための機構とは、ばね長を調整してばねの弾性係数を調整する機構である。
【0014】
[装置の簡易化について]
本発明に係る実施の形態では、ボールとボールを挟持し傾斜部を構成するランプ溝を有するボールアンドアンドランプ機構と、その機構にバネ長を変えて押圧力与える機構とからなるシンプルな構成とした。この構成によりコストが低減できる。あるいは生産性が向上する。また装置の構造が簡易化され、長寿命となる。
【0015】
さらに、ボールアンドアンドランプ機構に押圧力を与える付与機構を収納するためのハウジングを、ねじり力の伝達部材として使用しているので、装置の構造をシンプルにすることができる。
【0016】
[消費電力の低減]
本発明に係る実施の形態では、逆作動性の悪い台径台形ネジを採用することにより、例えば左コーナと右コーナが交互に連続する場合には、台径台形ネジは制御された位置を保持し、モータへの供給電力を停止あるいは減少させることができるので、電力の消費を低減できる。すなわち以下の実施の形態では、電動モータの回転を直動変換機構を用いて直線運動に変えて、付勢手段の長さを制御し、弾性力を変え、この弾性力を変えることにより、第1と第2のスタビライザバーの間の捩り剛性を調整する構成となっている。上記捩り剛性を保持する場合には直動変換機構の機械的な摩擦力を利用して付勢手段の長さを保持する構造としている。このため上記電動モータのトルクを殆どあるいは全く用いないで調整された捩り剛性を保持できる。捩り剛性を調整しなければならない場合にモータに大電力を供給し、捩り剛性を保持する状態では、大電力の供給を不要とできるので、消費電力を低減できる効果が有る。上記機械的な摩擦力を利用する構造として、一つには直動変換機構に台形ネジを使用している。他の観点として、直動変換機構が備えるねじの軸に対する溝の傾きを小さくしており、回転距離に対する軸方向の移動距離を小さくしている。この構造により、上記の如く付勢力を保持する機能を有すると共に、電動モータが発生する回転トルクを小さくでき、電動モータを小型にできる。
【0017】
[乗り心地の向上]
スタビライザ装置は、捩れ角が小さい範囲ではばね定数を低くし、乗り心地に影響を与えないことが望まれる。一方車両の旋回時などの捩れ角が大きい範囲ではばね定数を大きくして付勢力を大きくし、車両の旋回時のロール運動を抑えることが望まれている。上記各領域での剛性の調整が以下の実施の形態では、容易である。またばね定数が切り替わるときの違和感を少なくすることが重要な課題であり、以下の実施の形態では、ボールアンドアンドランプのランプ溝のプロフィールを調整することで、望ましいばね定数の変化を出すことができる。すなわちボールアンドアンドランプのランプ溝の形状を変えることで、望ましいスタビライザの剛性特性が得られる。このことは車両の乗り心地を向上することに繋がる効果がある。
【0018】
図1にスタビライザ装置1を前輪側および後輪側に使用した車両の全体構成を示す。車体がコーナーを走行した状態で、車両にロール方向の力が作用した場合に、制御装置100からの制御信号に基づいて前後に設けられたスタビライザ装置1はそれぞれ、車両のロール運動を抑制するように動作する。スタビライザ装置により、横転防止あるいは操縦安定性向上あるいは乗り心地向上を図ることができる。
【0019】
図2ないし図3は本発明の第1の実施の形態を示している。スタビライザ装置1は、長さ方向の中央部分が車両を構成する車体側に取付けられ、図1に記載の如く、両端側が左,右の車輪側にそれぞれ接続されている。また、スタビライザ装置1は、第1のスタビライザバー2と、第2のスタビライザバー3と、該各スタビライザバー2と3を連結し、各スタビライザバー2と3の間の捩り剛性を調整する可変剛性部4とを備えている。
【0020】
車体の左側に配設された第1のスタビライザバー2は柔軟性をもったばね鋼からなり、車体のレイアウト等に応じて図1に示す如く所望の形状に曲げられている。第1のスタビライザバー2の基端側は、可変剛性部4を介して第2のスタビライザバー3に連結され、先端側が左車輪側に接続されている。また、第1のスタビライザバー2の基端側には、ねじり剛性を持ってねじり運動を互いに伝達するための機構(以下直動機構と記す)として作用するボールアンドアンドランプ機構9に接続されている。第1のスタビライザバー2は上記ボールアンドランプ機構9の一方端に機械的に接続され、第2のスタビライザバー3は上記ボールアンドランプ機構9の他方端に機械的に接続されている。上記ボールアンドランプ機構9は上記直動機構の一例であり、第1のプレート10と第2のプレート12とボール14を備えている。上記第1のプレート10と第2のプレート12には付勢機構に基づく推力が作用しており、前記推力により、前記ボール14を上記第1のプレート10と第2のプレート12にそれぞれ形成されたランプ溝に押し付けられる、前記推力と前記溝の形状とに基づきトルク伝達係数が調整される。
【0021】
車体の右側に配設された第2のスタビライザバー3は、第1のスタビライザバー2とほぼ同様に、柔軟性をもったばね鋼からなり、図1に記載の如く第1のスタビライザバー2とほぼ対称形状をなすように曲げられている。第2のスタビライザバー3の基端側が可変剛性部4を介して第1のスタビライザバー2に連結され、先端側が右車輪側に接続されている。また、第2のスタビライザバー3の基端部は、後述するケーシング5のモータケース8と機械的に接続されている。
【0022】
第1のスタビライザバー2の基端側と第2のスタビライザバー3の基端側とは、軸線O−O上に配置され、車体側に対し軸線O−Oを中心にして図2の上,下方向に回動自在となるように支持されている。
【0023】
第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3との間を連結して設けられた可変剛性部4は、各スタビライザバー2と3の間の捩り剛性を調整するものである。また、可変剛性部4は、ケーシング5、ボールアンドランプ機構9、コイルばね15、付勢力調整機構16を備えている。
【0024】
可変剛性部4の外形をなすケーシング5は、軸線O−Oに沿って軸方向に延び縮みする円筒状の容器として形成されている。また、ケーシング5は、十分な剛性をもった金属材料等からなり、プレートケース6と蓋体7とモータケース8とを備えている。ケーシング5は、直動機構として作用するボールアンドランプ機構9や前記直動機構に推力を加える付勢機構を内部に収納するだけでなく、ケーシング5自身が、捩れ力すなわちトルクを伝えるための伝達部材として作用する。これにより、スタビライザ構造をシンプルにすることができる効果が生じる。なお、この実施の形態では付勢機構は付勢力を発生するコイルばね15とコイルばね15の軸長を調整する直動変換機構とを備えている。直動変換機構はねじ17Cとねじ18Bとを有している。
【0025】
一方、蓋体7は、段付円筒状をなし、筒部6Aの左端部を閉塞するように一体的に固着されている。また、蓋体7の内周側には、第1のスタビライザバー2の基端側を回転自在に支持するためのすべり軸受7Aが設けられている。
【0026】
プレートケース6の右側に設けられたモータケース8は、後述の電動モータ19を収容するもので、筒部8Aと底部8Bとにより有底筒状に形成されている。また、筒部8Aは、その開口側がプレートケース6の底部6B外周側に一体的に固着され、底部8Bの中心位置には、電動モータ19の固定軸19Bが回転不能に挿嵌される軸固定穴8Cが形成されている。そして、底部8Bの中心部は、第2のスタビライザバー3の基端部に一体的に接続され、これにより、ケーシング5は、第2のスタビライザバー3と一緒に、第1のスタビライザバー2に対して回動することができる。
【0027】
プレートケース6の左側寄りに収容された、直動機構であるボールアンドランプ機構9は、第1のスタビライザバー2と、第2のスタビライザバー3と機械的に接続されたケーシング5との相対回転運動に応じて直動運動するものであり、具体的にはランプの形状により伝達係数を調整している。スタビライザ装置としては剛性特性が調整されたように作用する。上記相対回転位相差を直動運動に変換すると共に直線運動の軸方向に沿って付勢手段による推力を加えることで、上記直動運動による推力と付勢手段による推力とをバランスさせ、バランス位置により、伝達係数が定まる構成とする。上記直動機構として、具体的にはボールアンドランプ機構9を使用する。ボールアンドランプ機構9は、第1のプレート10と第2のプレート12および該各プレート10と12の間に設けられたボール14により大略構成されている。
【0028】
図2でプレートケース6内の左部に設けられた第1のプレート10は、図2ないし図4に示すように、軸線O−Oを中心とする厚肉な円板状に形成されている。そして、第1のプレート10は、その左端面の中心部が第1のスタビライザバー2の基端部に一体的に接続され、これにより、第1のプレート10は、第1のスタビライザバー2と一緒に、第2のスタビライザバー3に対して回動することができる。また、第1のプレート10の右端面(表面)には、第1の傾斜部としての第1のランプ11が円周方向に延びて、複数個、例えば3個設けられている。
【0029】
ここで、各ランプ11は、円弧状に湾曲して形成されている。また、各ランプ11は、長さ方向の中央部が最深部となり、最深部から両端側に向けて所望の曲率で浅くなる傾斜部としての円弧状溝として形成されている。
【0030】
第1のプレート10の右側に対面して設けられた第2のプレート12は、第1のプレート10とほぼ同様に、軸線O−Oを中心とする厚肉な円板状に形成されている。ここで、第2のプレート12の外周面には、図4に示すように、周方向にほぼ等間隔で3個の係合溝12Aが形成され、該各係合溝12Aは、プレートケース6の各突条6Dに係合している。これにより、第2のプレート12は、ケーシング5を介して第2のスタビライザバー3に回転不能に連結されている。
【0031】
また、第1のプレート10に対面する第2のプレート12の左端面(表面)には、第2の傾斜部としての第2のランプ13が3個設けられている。この3個のランプ13は、第1のランプ11とほぼ同様に、円弧状に湾曲して形成され、長さ方向の中央部が最深部となり、この最深部から両端側に向けて浅くなる傾斜部としての円弧状溝として形成されている。この湾曲形状により、車両の乗り心地を調整することができる。捩れ角が小さい範囲ではばね定数を低くし、乗り心地に影響を与えないことが望まれ、捩れ角が大きい範囲ではばね定数を大きくし旋回時のロールを抑えることが望まれている。その要求を実現するため、捩れ角が小さい範囲には、ねじり力が発生しないよう曲率半径が大きい円弧状とし、捩れ角が大きい範囲に入ったら急激にトルクが立ち上がるように曲率半径を小さくするといった非線形特性を溝の形状により調整することができる。また、曲線と直線を組みあわせる等、所望の特性に合わせて溝のプロフィールを決めればよい。
【0032】
第1のプレート10と第2のプレート12とに挟まれた3個のボール14は、第1のランプ11と第2のランプ13に収められている。また、各ボール14は、各ランプ11と13との間に収められた状態で、各プレート10と12が当接しないような直径寸法をもった金属球等として形成されている。
【0033】
そして、このように構成されたボールアンドランプ機構9は、後述するコイルばね15の付勢力により、第1のプレート10と第2のプレート12とを押付けることにより、ボール14を各ランプ11,13の最深部に配置されるように、すなわち各プレート10,12は最小の距離寸法L1となるように付勢される。これにより、常に、第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3とは初期角度(車が傾斜してない角度)になるように付勢される。
【0034】
一方、第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3、ケーシング5とが軸線O−Oを中心に相対回転した場合には、第1のランプ11と第2のランプ13とが周方向に相対的に位置ずれするから、ボール14は、各ランプ11,13の端部側に移動する。これにより、各プレート10,12は、距離寸法L1よりも各ランプ11,13からボール14が突出した分だけ大きな距離寸法L2をもって離間する。この場合、第2のランプ13を第1のランプ11に向け押付けているコイルばね15の付勢力を大きくすることにより、このときの捩り剛性を大きくすることができる。
【0035】
第2のプレート12の右側に位置してプレートケース6内に設けられた付勢機構としてのコイルばね15は、第2のプレート12の直線運動を抑制する方向に該プレート12を付勢するもので、第1のプレート11に向け第2のプレート12を押付ける押付力を発生する弾性部材により構成されている。弾性部材としてコイルばねを用いると一部材で済み、例えば皿ばねを用いる場合と比して組立て性に優れる。
【0036】
コイルばね15の付勢力を調整するためにケーシング5内に設けられた付勢力調整機構16は、コイルばね15の伸縮方向に任意の大きさの初期荷重を付与する荷重付与部として構成されている。また、付勢力調整機構16は、プレートケース6内に設けられた後述のピストン17、ねじ部材18と、モータケース8内に設けられた電動モータ19とにより大略構成されている。ここで、電動モータ19はモータケース8内に収め、ボールアンドランプ機構9や付勢力調整機構16と軸方向に並べて配置しているが、それに限らず、軸方向長さに制約がある場合には、付勢力調整機構と並列に配置するようにしてもよい。
【0037】
第2のプレート12との間にコイルばね15を挟むように該プレート12に対向して設けられたピストン17は、段付筒状に形成されている。また、ピストン17は、図2、図4等に示すように、大径なばね受部17Aの外周面に位置して、周方向にほぼ等間隔で3個の係合溝17Bが形成され、該各係合溝17Bは、プレートケース6の各突条6Dに係合している。これにより、ピストン17は、ケーシング5に対し回転が規制された状態で軸方向に移動可能に連結されている。
【0038】
また、ピストン17の内周側には、例えば台形ねじからなる雌ねじ17Cが形成され、該雌ねじ17Cは、後述するねじ部材18の雄ねじ18Bと共に、後述の電動モータ19による回転運動をピストン17の直線運動に変換するねじ機構を構成している。
【0039】
ピストン17の内周側に設けられたねじ部材18は、基端側の軸取付部18Aが後述する電動モータ19の出力軸19Cに取付けられている。また、ねじ部材18の外周側には、ピストン17の雌ねじ17Cに螺合する台形ねじからなる雄ねじ18Bが形成され、該雄ねじ18Bは、雌ねじ17Cと一緒にねじ機構を構成している。
【0040】
回転アクチュエータとしての電動モータ19がモータケース8内に設けられている。この電動モータ19は、固定子、回転子等(いずれも図示せず)を内蔵した本体部19Aと、該本体部19Aの右端部から突出し、モータケース8の軸固定穴8Cに回転不能に挿嵌された固定軸19Bと、前記本体部19Aの左端部から突出し、前記回転子に接続された出力軸19Cとにより大略構成されている。また、出力軸19Cは、プレートケース6の軸挿通孔6C内でねじ部材18の軸取付部18Aに一体回転するように挿嵌されている。
【0041】
このように構成された付勢力調整機構16では、図2に示すように、コイルばね15の初期荷重は、第2のプレート12とピストン17のばね受部17Aとの間隔寸法G1によって決定される。この場合、電動モータ19によってねじ部材18を回転駆動し、ピストン17を第2のプレート12側に直線移動したときには、図3に示すように、第2のプレート12とピストン17のばね受部17Aとの間隔寸法を小さな寸法G2とすることができ、コイルばね15の初期荷重を大荷重側に調整することができる。一方、電動モータ19によってねじ部材18を逆方向に回転駆動することにより、コイルばね15の初期荷重を小荷重側に調整することができる。
【0042】
従って、付勢力調整機構16は、電動モータ19によってねじ部材18を回転駆動し、コイルばね15の初期荷重を調整することにより、図6に示す如く、各スタビライザバー2,3間の捩れ角に対するトルクとなる捩り剛性を、直進走行、コーナリング走行等の走行状態に応じハッチングで示す範囲で調整することができる。
【0043】
第1の実施の形態によるスタビライザ装置1は、上述のように構成されるもので、次に、その作動について説明する。
【0044】
まず、車両が直進している場合には、車体がロールすることはほとんどない。このために、スタビライザ装置1に求められる捩り剛性は小さく、各スタビライザバー2,3は比較的容易に独立して回動することができる。これにより、例えば直進走行時に一方の車輪が凹部に落ちることがあっても、この一方の車輪だけをストロークさせることができ、安定した走行姿勢を得ることができる。
【0045】
即ち、ステアリング角、アクセル開度、ブレーキの操作状況、横加速度等の情報を基にして走行状況を判断し、直進走行していると判断した場合には、電動モータ19によってねじ部材18を任意の方向に回転させ、図2に示すように、第2のプレート12とピストン17のばね受け部17Aとを例えば大きな間隔寸法G1まで離間させる。これにより、コイルばね15に付加される初期荷重が小さくなるから、第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3とを相対回転させるのに必要な捩り力となるトルクも小さくなる。従って、スタビライザ装置1の捩り剛性を小さくできるから、左,右の車輪は、路面の凹凸に合わせて独立してストロークすることができ、良好な乗り心地を得ることができる。
【0046】
次に、ステアリングを操作してコーナを走行する場合には、外側へのロールを抑える必要がある。そこで、スタビライザ装置1は、電動モータ19によってねじ部材18を先程とは逆方向に回転させ、図3に示すように、第2のプレート12とピストン17のばね受け部17Aとを例えば小さな間隔寸法G2まで接近させる。これにより、コイルばね15に付加される初期荷重が大きくなるから、第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3とを相対回転させるのに必要な捩り力も大きくなる。従って、スタビライザ装置1は、各スタビライザバー2,3間の捩り剛性を高めることで、車体が外側にロールするのを抑えることができ、コーナリング時の走行姿勢を安定させることができる。
【0047】
このコーナリング時の制御では、左コーナを走行する場合、右コーナを走行する場合のいずれでも、付勢力調整機構16によってコイルばね15の初期加重を大きくすることになる。これにより、山道を走行する場合、スラローム走行を行う場合のように、左コーナと右コーナとが交互に続く場合でも、各スタビライザバー2,3間の捩り剛性を一度高めた後には、速度やコーナの大きさに応じて微調整するだけでよく、電動モータ19の頻繁な駆動を防止することができる。
【0048】
かくして、第1の実施の形態によれば、ランプの11,13のプロフィール、つまり円弧状であることにより非線形特性を得ることができ、乗り心地の向上を図ることができる。第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3とを連結して捩り剛性を調整する可変剛性部4を、前記各スタビライザバー2,3間の相対回転運動を直線運動に変換するボールアンドランプ機構9と、前記直線運動を抑制するためにボールアンドランプ機構9の第2のプレート12を付勢するコイルばね15と、該コイルばね15の付勢力を調整する付勢力調整機構16とにより構成している。
【0049】
従って、可変剛性部4は、捩り剛性を調整する場合、付勢力調整機構16によってコイルばね15の付勢力を小さくするか、大きくするかの調整となるから、左コーナと右コーナとで同様の制御とすることができる。
【0050】
この結果、左コーナと右コーナとが交互に続く場合でも、台形ネジを用いているため、各スタビライザバー2,3間の捩り剛性を一度高めるだけでよく、電動モータ19の頻繁な駆動を防止することができるから、調整動作の回数削減による省電力化、構成を簡略化したことによる小型化等を図ることができる。
【0051】
しかも、ボールアンドランプ機構9は、第1のスタビライザバー2に連結され第1のランプ11が形成された第1のプレート10と、第2のスタビライザバー3に連結され第2のランプ13が形成された第2のプレート12と、前記第1のランプ11と第2のランプ13に収められた状態で前記第1のプレート10と第2のプレート12とに挟まれたボール14とにより構成している。従って、ボールアンドランプ機構9は、各スタビライザバー2,3間の捩れとなる相対回転運動を、簡単な構成で直線運動に変換することができ、構成を簡略化することができる。これにより、スタビライザ装置1を小型化することができ、車体に対する取付けの自由度を高めることができる。
【0052】
また、付勢力調整機構16は、コイルばね15に当接するピストン17と、回転運動を該ピストン17の直線運動に変換するために該ピストン17に螺合したねじ部材18と、該ねじ部材18に連結された電動モータ19とにより構成しているから、制御が容易な電動モータ19を用いてコイルばね15の初期荷重を調整することができ、構成の簡略化による小型化、製造コストの低減等を図ることができる。
【0053】
さらに、各プレート10,12に設けたランプ11,13は、長さ方向の中央部が最深部11A,13Aとなり両端側に向けて浅くなる円弧状溝として形成している。これにより、各スタビライザバー2,3間の捩れ角が小さい範囲では、トルクに影響するばね定数を低くして乗り心地を良好にすることができる。また、各スタビライザバー2,3間の捩れ角が大きい範囲では、ばね定数を高くして捩り剛性を高めることができ、コーナを走行するときのロールを抑制して走行姿勢を安定させることができる。
【0054】
次に、図7は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、剛性調整機構を、第1のスタビライザバーに連結され第1のランプが形成された第1のプレートと、第2のスタビライザバーに連結され第2のランプが形成された第2のプレートと、第1のランプと第2のランプに収められた状態で第1のプレートと第2のプレートとに挟まれた円錐ころとにより構成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0055】
図7において、21は第2の実施の形態による直動機構としての剛性調整機構である。この剛性調整機構21は、第1のスタビライザバー2と第2のスタビライザバー3、ケーシング5との相対回転運動を直線運動に変換するもので、後述する第1のプレート22、第2のプレート24および円錐ころ26により大略構成されている。
【0056】
プレートケース6内に位置して第1のスタビライザバー2が接続された第1のプレート22の右端面には、第2の実施の形態による第1のランプ23が設けられ、該ランプ23は、第1の実施の形態による第1のランプ11とほぼ同様に、円を描くように複数個、例えば3個設けられ、長さ方向の中央部が深く、両端側に向けて浅くなる円弧状溝として形成されている。しかし、第2の実施の形態による第1のランプ23は、その溝底23Aが第1のプレート22の中心側で浅くなり、外周側で深くなるように径方向で傾斜している点で、第1の実施の形態による第1のランプ11と相違している。
【0057】
24は第1のプレート22の右側に対面して設けられた第2のプレートで、該プレート24の外周面には、プレートケース6の各突条6Dに係合する例えば3個の係合溝24Aが形成されている。また、第2のプレート24の左端面には、第2の実施の形態による第2のランプ25が3個設けられ、該各ランプ25は、第1のランプ23とほぼ同様に、円を描くように延びた長さ方向の中央部が深く、両端側に向けて浅くなる円弧状溝として形成されている。また、その溝底25Aが第2のプレート24の中心側で浅くなり、外周側で深くなるように径方向で傾斜している。
【0058】
26は第1のプレート22と第2のプレート24とに挟まれた3個の円錐ころで、該各円錐ころ26は、第1のランプ23と第2のランプ25に収められている。ここで、各円錐ころ26は、各プレート22,24の中心位置を中心として転動するように、移動距離の短い中心側が小径となり移動距離の長い外周側が大径となるように円錐台状に形成されている。そして、円錐ころ26の外周面は、各ランプ23,25の溝底23A,25Aを転動するテーパ面26Aとなっている。
【0059】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、円錐ころ26を用いることにより、前述したボール14よりも大きな負荷に耐えることができる。
【0060】
次に、図8は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、荷重付与部は、弾性部材に当接するピストンと、ピストンの弾性部材と反対側に設けられ作動流体が供給されることによってピストンを押動する圧力室とにより構成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0061】
図8において、第3の実施の形態によるケーシング31は、筒部32A、底部32B、軸挿通孔32Cおよび各突条32Dからなるプレートケース32と、該プレートケース32の筒部32Aの開口側を閉塞するように一体的に固着された蓋体33と、前記プレートケース32の底部32Bに設けられたシリンダケース34とにより大略構成されている。
【0062】
ここで、シリンダケース34は、後述の可動隔壁37を液密に収容するもので、筒部34Aと底部34Bとにより有底筒状に形成されている。また、筒部34Aは、その開口側がプレートケース32の底部32B外周側に液密に固着され、底部34Bの中心位置には、後述のロッド40を軸方向に移動可能に支持する支持穴34Cが第2のスタビライザバー3に達するまで形成されている。そして、底部34Bの中心部は、第2のスタビライザバー3の基端部に一体的に接続されている。
【0063】
35はコイルばね15の付勢力を調整するためにケーシング31内に設けられた第3の実施の形態による付勢力調整機構である。この付勢力調整機構35は、コイルばね15の伸縮方向に任意の大きさの初期荷重を付与する荷重付与部として構成されている。また、付勢力調整機構35は、プレートケース32内に設けられた後述のピストン36と、シリンダケース34内に設けられた可動隔壁37、圧力室38,39と、該圧力室38,39に圧油を給排する圧油給排機構41とにより大略構成されている。
【0064】
36は第2のプレート12との間にコイルばね15を挟むように該プレート12に対向して設けられたピストンで、該ピストン36は、段付筒状に形成されている。また、ピストン36は、大径なばね受部36Aの外周面に位置して、周方向にほぼ等間隔で3個の係合溝36Bが形成され、該各係合溝36Bは、プレートケース32の各突条32Dに係合している。これにより、ピストン36は、ケーシング31に対し回転が規制された状態で軸方向に移動可能に連結されている。
【0065】
37はシリンダケース34内に軸方向に摺動可能に挿嵌された可動隔壁で、該可動隔壁37は、シリンダケース34内を左,右の圧力室38,39に画成するものである。また、40は可動隔壁37の中心部を貫くように軸方向に延びたロッドで、該ロッド40は、一端側がプレートケース32の軸挿通孔32Cを介してピストン36に接続され、他端側がシリンダケース34の支持穴34Cに挿通されている。このように、シリンダケース34、可動隔壁37、ロッド40等により油圧シリンダを構成している。
【0066】
41は各圧力室38,39に圧油を給排する圧油給排機構である。この圧油給排機構41は、各圧力室38,39に接続された管路42,43と、該各管路42,43を介して各圧力室38,39に作動流体としての圧油を供給する油圧ポンプ44と、該油圧ポンプ44から供給される圧油の供給先を切換える給排制御弁45とにより大略構成されている。
【0067】
このように構成された付勢力調整機構35は、圧油給排機構41によって右側の圧力室39に圧油を供給することにより、可動隔壁37、ロッド40を介してピストン36を第2のプレート12側に直線移動し、第2のプレート12とピストン36のばね受部36Aとの間隔寸法を小さくする。これにより、コイルばね15の初期荷重を大荷重側に調整することができる。一方、左側の圧力室38に圧油を供給することにより、コイルばね15の初期荷重を小荷重側に調整することができる。
【0068】
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、荷重付与部となる付勢力調整機構35は、コイルばね15に当接するピストン36、該ピストン36にロッド40を介して接続された可動隔壁37と、圧油が供給されることにより可動隔壁37等を介して前記ピストン36を押動する圧力室38,39とにより大略構成している。従って、シリンダケース34、可動隔壁37、圧力室38,39、ロッド40等からなる油圧シリンダにより、スタビライザ装置1の捩り剛性を調整することができる。
【0069】
次に、図9は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、荷重付与部を、供給される圧縮空気の圧力によって弾性部材をなすと共に、圧縮空気の圧力を調整することにより弾性部材の付勢力を調整する圧力室により構成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0070】
図9において、51は第4の実施の形態によるケーシングで、該ケーシング51は、筒部52A、底部52B、軸挿通孔52Cおよび各突条52Dからなるプレートケース52と、該プレートケース52の筒部52Aの開口側を閉塞するように一体的に固着された蓋体53と、前記プレートケース52の底部52Bに設けられたシリンダケース54とにより大略構成されている。
【0071】
ここで、プレートケース52は、第1の実施の形態で述べたコイルばね15とピストン17を収容していない分、軸方向寸法を大幅に小さくすることができる。また、シリンダケース54は、後述の可動隔壁56を気密に収容するもので、筒部54Aと底部54Bとにより有底筒状に形成されている。また、筒部54Aは、その開口側がプレートケース52の底部52B外周側に気密に固着されている。そして、底部54Bの中心部は、第2のスタビライザバー3の基端部に一体的に接続されている。
【0072】
55は第4の実施の形態による付勢力調整機構で、該付勢力調整機構55は、第2のプレート12を第1のプレート10側に押付ける弾性部材をなすと共に、このときの付勢力を調整して所望の初期荷重を与えるものである。また、付勢力調整機構55は、シリンダケース54内に設けられた後述の可動隔壁56、圧力室58、ロッド59と、該圧力室58に圧縮空気を給排する圧縮空気給排機構61とにより大略構成されている。
【0073】
56はシリンダケース54内に軸方向に摺動可能に挿嵌された可動隔壁で、該可動隔壁56は、シリンダケース54内を左の大気開放室57と右の圧力室58とに画成するものである。また、59は可動隔壁56の中心部から第2のプレート12側に向けて軸方向に延びたロッドで、該ロッド59の先端部はプレートケース52の軸挿通孔52Cを介して第2のプレート12に連結されている。このように、シリンダケース54、可動隔壁56、ロッド59等により空圧シリンダを構成している。
【0074】
なお、60はシリンダケース54の底部54Bと可動隔壁56との間に設けられたばね部材で、該ばね部材60は、圧力室58が大気に開放された状態でも、ボール14を各プレート10,12のランプ11,13の最深部11A,13Aに配置することができる程度の付勢力を有している。
【0075】
61は圧力室58に圧縮空気を給排する圧縮空気給排機構である。この圧縮空気給排機構61は、圧力室58に接続された管路62と、該管路62を介して圧力室58に圧油を供給する空気圧縮機63と、前記管路62の途中に設けられ、前記圧力室58を空気圧縮機63と大気開放側とに切換える給排制御弁64とにより大略構成されている。
【0076】
このように構成された付勢力調整機構55は、圧縮空気給排機構61によって圧力室58に圧縮空気を供給することにより、可動隔壁56、ロッド59を介して第2のプレート12を押圧する初期荷重を大荷重側に調整することができる。一方、給排制御弁64を切換えて圧力室58を大気に開放することにより、第2のプレート12を押圧する初期荷重を小荷重側に調整することができる。
【0077】
かくして、このように構成された第4の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第4の実施の形態によれば、付勢力調整機構55の圧力室58に圧縮空気を供給することにより、この圧力室58を空気ばねとして弾性部材を兼ねることができる。この結果、第1の実施の形態で用いていたコイルばね15とピストン17を省略することができ、小型化することができる。
【0078】
なお、第1の実施の形態では、各ランプ11,13を長さ方向の中央部が最深部11A,13Aとなり両端側に向けて浅くなる円弧状溝として形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図10に示す第1の変形例によるランプ71のように、長さ方向の中央部が最深部71Aとなり両端側に向けて直線状に浅くなるV字状の傾斜溝として形成してもよい。このV字状のランプ71は、捩れ角に比例してトルクを発生することができ、応答性がよく初期荷重の変更を車体の挙動に速やかに反映させることができる。
【0079】
また、例えば図11に示す第2の変形例によるランプ81のように、中央の最深部81Aを平坦に形成してもよい。この場合、最深部81Aの位置でボール14が転動しているときには、トルクを発生しないから、小さな凹凸が車体に伝わらないようにすることができ、乗り心地を良好にすることができる。これら第1、第2の変形例は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0080】
また、第1の実施の形態では、各プレート10,12に3本のランプ11,13を設け、該各ランプ11,13に3個のボール14を収容した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばランプ11,13を2本または4本以上設け、ボール14を2個または4個以上設ける構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0081】
一方、第1の実施の形態では、直線運動を抑制する方向に第2のプレート12を付勢する弾性部材としてコイルばね15を用いた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば皿ばね、ゴムばね等の他の弾性部材を用いる構成としてもよい。この構成は、第2、第3の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0082】
さらに、第1の実施の形態では、ピストン17の雌ねじ17Cとねじ部材18の雄ねじ18Bとからなるねじ機構を、台径ねじによって構成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばボールねじ等の他のねじ機構を用いる構成としてもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。ここで、台形ねじを用いた場合とボールねじを用いた場合とを比較する。台形ねじは、逆作動性が低いため、一度剛性を高くする側に移動すると電力を消費することなく特性を保持できるが、フェイル時にピストンの位置が決まってしまい、所定のロール剛性に戻すことができない。一方、ボールねじは機械効率が高く、逆作動性が良いのでフェイル時にはソフト特性に落ち着き前後のロール配分を狙い通りにできる反面、制御時にはピストン位置を保持するためモータに電流を流し続けなければならない。それぞれにメリットとデメリットがあるので、要求に応じて適宜選択するとよい。
【0083】
また、上記各実施の形態では、第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーを柔軟性を持つもので説明したが、本発明おいては、実質的に柔軟性を持たない剛性の極めて高い剛体でもよい。よって、第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーを軽く、剛性の高い材料を用いることもできる。
【0084】
以上の実施の形態で述べたように、第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーとを連結して捩り剛性を調整する可変剛性部は、捩り剛性を調整する場合、付勢力調整機構によって付勢機構の付勢力を小さくするか、大きくするかの調整となるから、左コーナと右コーナとで同様の制御とすることができる。この結果、左コーナと右コーナとが交互に続く場合の制御では、各スタビライザバー間の捩り剛性を一度高めるだけでよく、例えば電動モータ等の動力源の頻繁な動作を抑えることができ、また構成を簡略化して小型化することができる。
【0085】
また、直動機構を、第1のランプが形成された第1のプレートと、第2のランプが形成された第2のプレートと、前記第1のランプと第2のランプに収められたボールとにより構成しているから、簡単な構成で回転運動を直線運動に変換することができ、構成を簡略化することができる。これにより、スタビライザ装置を小型化することができ、車体に対する取付けの自由度を高めることができる。
【0086】
また、剛性調整機構を、第1のランプが形成された第1のプレートと、第2のランプが形成された第2のプレートと、前記第1のランプと第2のランプに収められた円錐ころとにより構成しているから、簡単な構成で回転運動を直線運動に変換することができ、構成を簡略化することができる。これにより、スタビライザ装置を小型化することができ、車体に対する取付けの自由度を高めることができる。また、円錐ころを用いることにより、大きな負荷に耐えることができる。
【0087】
また、付勢力調整機構は、ねじ機構を用いて回転運動を直線運動に変換することができるから、駆動源として電動モータ等の回転アクチュエータを用いることができ、構成の簡略化、製造コストの低減等を図ることができる。
【0088】
また、圧力室に作動流体を流入させることにより、ピストンを介して弾性部材に負荷を与えることができ、簡単な構成で捩り剛性を調整することができる。
【0089】
また、付勢力調整機構の圧力室に圧縮空気を供給することにより、この圧力室を空気ばねとして弾性部材を兼ねることができる。これにより、部品点数を削減することができ、組立作業性を向上でき、また小型化することができる。
【0090】
また、ランプは、長さ方向の中央部が最深部となり両端側に向けて浅くなる円弧状溝として形成しているから、各スタビライザバー間の捩れ角が小さい範囲では、トルクに影響するばね定数を低くして乗り心地を良好にすることができる。また、各スタビライザバー間の捩れ角が大きい範囲では、ばね定数を高くして捩り剛性を高めることができ、コーナを走行するときのロールを抑制して走行姿勢を安定させることができる。
【0091】
図12は図1の制御装置100の回路構成を示すブロック図である。センサとして例えば、横加速度を計測するヨーレートセンサ122の出力を受け、走行路のカーブの度合い、すなわち走行中の道路の極率を求めることができる。また操舵角センサ124からの出力に基づき、運転者がどれだけハンドルを操作したかを検知でき、同様に走行中の道路の極率を求めることができる。路面センサ126からの出力に基づき、路面の平坦度を検知できる。ヨーレートセンサ122や操舵角センサ124、路面センサ126の出力を受け、制御装置100の剛性演算部102で、前輪あるいは後輪に接続されているのでスタビライザ1の目標の剛性が演算される。前輪あるいは後輪に接続されているスタビライザ1の制御が同じであるので代表して一方の動作を説明する。
【0092】
剛性演算部102で演算された目標剛性に基づき、目標位置演算部104で目標剛性を得るためのピストン17あるいはピストン36の位置を演算する。すなわち付勢機構15の軸長を演算する。ピストン17あるいは36の位置と電動モータ19の回転子の回転位置とが対応しているので、電動モータ19の回転子の位置である磁極位置を検出するためのレゾルバの出力から、ピストン17あるいは36の位置を検知できる。検出された電動モータ19の回転子の回転位置あるいはピストン17あるいは36の位置あるいは付勢機構15の軸長は現在位置保持部112に保持される。目標位置演算部104は現在位置保持部112からの現在位置を表す信号と目標位置から情報を基に移動量、すなわち電動モータ19の回転子の回転方向と回転移動量を演算により求める。
【0093】
目標位置演算部104で演算された移動量に基づき電動モータ19のトルク指令演算部106で目標回転トルクを演算する。目標位置演算部104で演算された移動量がゼロの場合にはすなわち目標位置が現在位置と一致する場合には、上記実施の形態では回転直動変換機構が機械的な摩擦力により付勢機構15の軸長を保持できる機能を有するので、電動モータ19に回転位置を保持するための保持電流を流す必要が無い。目標電流演算部108は、目標位置演算部104で演算された移動量に基づいて電動モータ19に供給する電流値を演算する。演算させた目標の電流値に基づき、直流を交流に変換するインバータ110を制御して電動モータ19に交流電流を供給する。電流値を検出するための電流センサの出力に基づいてモータへ供給される電流値のフィードバック制御が為される。電動モータ19の現在の回転位置はレゾルバの出力などから検出でき、現在位置保持部に保持される。
【0094】
車両走行路のカーブが緩やかな場合には、カーブの緩やかな状態がヨーレートセンサ122や操舵角センサ124により検出され、剛性演算部102で演算された目標剛性は小さくなり、その結果、付勢機構であるコイルばね15の軸長が長くなるように電動モータ19が制御される。さらに路面センサの出力に基づき、路面が凸凹している場合には車体の揺れを少なくするために、目標剛性を低くする。この結果コイルばね15の軸長が長くなるように電動モータ19が制御され、ボールアンドランプ機構への押圧力が小さくなり、抵抗が小さくなる。この結果スタビライザ装置の剛性が小さくなる。一方路面の凸凹が小さい場合、すなわち路面が滑らかな場合には、目標剛性を高くする。この結果コイルばね15の軸長を短くし、ボールアンドランプ機構への押圧力が大きくなり、ボールアンドランプ機構の抵抗を大きくなる。この結果、スタビライザ装置の剛性が大きくなる。
【0095】
上述のとおり、電動モータの回転量を制御することにより、スタビライザ装置の剛性特性を最適に調整することができる。また、上記制御で目標位置演算部104の演算に基づく移動量が所定の値より小さい場合には、電動モータ19へ供給する電流値を非常に小さくできる。あるいは上記電流値をゼロにできる。これにより、消費電力を低減できる。
【符号の説明】
【0096】
1 スタビライザ装置
2 第1のスタビライザバー
3 第2のスタビライザバー
4 可変剛性部
5,31,51 ケーシング
9 ボールアンドランプ機構(直動機構)
10,22 第1のプレート
11,23 第1のランプ(第1の傾斜部)
11A,13A,71A,81A 最深部
12,24 第2のプレート
13,25 第2のランプ(第2の傾斜部)
14 ボール
15 コイルばね(付勢機構)
16,35,55 付勢力調整機構
17,36 ピストン
17C 雌ねじ(ねじ機構)
18 ねじ部材
18B 雄ねじ(ねじ機構)
19 電動モータ(回転アクチュエータ)
21 剛性調整機構(直動機構)
26 円錐ころ
37,56 可動隔壁
38,39 圧力室
41 圧油給排機構
58 圧力室(弾性部材)
61 圧縮空気給排機構
71,81 ランプ(傾斜部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスタビライザバーと、第2のスタビライザバーと、該各スタビライザバーを連結してねじり剛性を調整する可変剛性部とからなり、
前記可変剛性部は、
前記第1のスタビライザバーと第2のスタビライザバーとの相対回転に応じて直線運動する直動機構と、
前記直線運動を抑制する方向に前記直動機構を付勢する付勢機構と、
該付勢機構の付勢する力を調整する付勢力調整機構とを有する構成としてなるスタビライザ装置。
【請求項2】
前記直動機構は、前記第1のスタビライザバーに連結され表面に周方向に延びる第1の傾斜部が形成された第1のプレートと、前記第2のスタビライザバーに連結され前記第1のプレートと表面が対向するように設けられ、該表面に周方向に延びる第2の傾斜部が形成された第2のプレートと、前記第1の傾斜部と第2の傾斜部間に挟まれたボールまたは円錐ころとにより構成し、
前記付勢機構は、前記第1のプレートと第2のプレートとを押付ける押付力を発生する弾性部材であり、
前記付勢力調整機構は、前記弾性部材に荷重を与える荷重付与部により構成してなる請求項1に記載のスタビライザ装置。
【請求項3】
前記荷重付与部は、前記弾性部材に当接するピストンと、回転運動を該ピストンの直線運動に変換する直動変換機構と、該直動変換機構に連結された回転アクチュエータとにより構成してなる請求項2に記載のスタビライザ装置。
【請求項4】
前記荷重付与部は、前記弾性部材に当接するピストンと、該ピストンの前記弾性部材と反対側に設けられ作動流体が供給されることによって前記ピストンを押動する圧力室とにより構成してなる請求項2に記載のスタビライザ装置。
【請求項5】
前記荷重付与部は、供給される圧縮空気の圧力によって前記弾性部材をなすと共に、圧縮空気の圧力を調整することにより前記弾性部材の付勢力を調整する圧力室により構成してなる請求項2に記載のスタビライザ装置。
【請求項6】
前記各傾斜部は、長さ方向の中央部が最深部となり両端側に向けて浅くなる傾斜溝として形成してなる請求項1,2,3,4または5に記載のスタビライザ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−31734(P2011−31734A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179707(P2009−179707)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】