説明

スダチ由来の組成物、並びに当該組成物を含有する医薬組成物、健康飲食品及びサプリメント

【課題】天然素材を有効に利用した組成物、並びに当該組成物を含有する医薬組成物、健康飲食品及びサプリメントを提供すること。
【解決手段】スダチ(Citrus sudachi Hort)の果皮、窄汁後の果肉、及び種からなる群から選択される少なくとも1種を凍結乾燥・粉末化して得た組成物、及び当該組成物を含有する医薬組成物、健康飲食品及びサプリメント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スダチ由来の組成物、並びに当該組成物を含有する医薬組成物、健康飲食品及びサプリメントに関し、特に、スダチ(Citrus sudachi Hort)の果皮、窄汁後の果肉及び種を凍結乾燥・粉末化して得た物質を含有する組成物及び当該組成物を含有する健康飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は遺伝素因と環境要因が複雑に絡む疾患で、インスリンの分泌不全による絶対量不足に起因するI型糖尿病と、インスリンの作用不足に起因するII型糖尿病に大別できる。これら糖尿病のうち、II型糖尿病は成人型糖尿病とも呼ばれ、糖尿病全体の90%を占めている。II型糖尿病の主因は、膵β細胞からのインスリン分泌量の低下とインスリン作用の低下(インスリン抵抗性)によって特徴付けられる。II型糖尿病の患者数は近年増加の一途をたどり、我が国では700万人以上、全世界では1億人以上の患者がいるとされている。さらに今後10年は患者数が倍増することが予想されており、糖尿病に起因した合併症(糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症・糖尿病性神経障害)の好発、医療費の増大等社会的な問題になりつつある。
【0003】
この糖尿病の急激な増加の主因としては、遺伝素因よりむしろ環境要因の変化、特に食事の高栄養化・運動不足・ストレスなどによる肥満の助長によると推測されている。肥満に伴うインスリン抵抗性の実態及び成因については、いまだ十分判っていないが、細胞内インスリン情報伝達機構の障害によると考えられる。末梢組織におけるインスリン作用増強については、例えば、Wistar fattyラットの後肢ヒラメ筋において、インスリンの作用(グリコーゲン合成及び解糖亢進作用)を増強すること(ex vivo)、また、Wistar fattyラットの副睾丸周囲脂肪組織由来の単離脂肪細胞において、インスリンの作用(グルコース酸化及び総脂質合成亢進作用)を増強する(ex vivo)ことが報告されている(Sugiyama Y.et al.:Arzneim.-Forsch./Drug Res.,40(I),3:263,1990.)。
【0004】
上述のII型糖尿病の治療薬として、従来はスルホニルウレア剤(SU剤)や、ビグアナイド系薬物と言われる一群の薬物が用いられてきた。また、最近、インスリン抵抗性を改善して糖尿病の治療を行う、『インスリン抵抗性改善薬』という薬物(ピオグリタゾン)が上市され、今後の糖尿病治療の主流となっていくものと考えられる。
【0005】
【非特許文献1】Sugiyama Y.et al.:Arzneim.-Forsch./Drug Res.,40(I),3:263,1990.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記スルホニルウレア剤は、膵臓からのインスリン分泌を促進させることで血中のインスリンを増加させ、末梢組織・臓器へのグルコースの取り込みを促進させて血糖値を下げるが、膵β細胞を過剰に働かせるため長期服用によりI型糖尿病に移行することが懸念される。また、上記ビグアナイド系薬物には、低血糖などの重篤な副作用発症の懸念がある。
【0007】
ところで、スダチ(英名=Sudachi、学名=Citrus sudachi Hort,ex Shirai 科名=ミカン科)は“ゆず”の近縁種で、徳島県が全国生産量の95%を占める香酸かんきつ類である。スダチは生食の用途以外にも、加工食品の原料として消費されているが、その残渣である果皮と果肉絞り粕・種にはこれまで有効な利用方法は見つかっていないのが現状である。このような天然素材は、一般に腸管吸収に優れ、副作用がなく、人体に対する安定性が高いという特徴を有する。しかしながら、これまで天然素材であるスダチの有効利用に関して十分に検討がなされていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、天然素材を有効に利用した組成物、並びに当該組成物を含有する医薬組成物、健康飲食品及びサプリメントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、動物実験においてスダチ乾燥果皮・果肉絞り粕粉末が血糖上昇抑制作用や血中脂質改善作用および生存率の上昇作用等を有することを確認した。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明の組成物(混合物)は、スダチ(Citrus sudachi Hort)の果皮、窄汁後の果肉、及び種からなる群から選択される少なくとも1種を凍結乾燥・粉末化して得たものであることを特徴とする。
【0011】
本発明の組成物の好ましい実施態様においては、前記凍結乾燥が、-40〜-25℃の範囲で釜入れし、温度勾配をつけながら前記釜入れから24〜26時間後、40〜60℃の範囲で釜だしを行うものである。
【0012】
本発明の組成物は、好ましくは、ヘスペリジン及びフラボノイドからなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0013】
また、本発明の医薬組成物は、血糖値を下げるために、有効量の上記スダチ由来の組成物を含有することを特徴とする。
【0014】
ここで、上記血糖値を下げるための医薬組成物は、好ましくは、3〜20g/日の上記スダチ由来の組成物を含有する。
【0015】
また、本発明の他の医薬組成物は、動脈硬化予防のために、有効量の上記スダチ由来の組成物を含有することを特徴とする。
【0016】
ここで、上記動脈硬化予防のための医薬組成物は、好ましくは、3〜20g/日の上記スダチ由来の組成物を含有する。
【0017】
また、本発明の健康飲食品は、上記スダチ由来の組成物を含有することを特徴とする。
【0018】
本発明の健康飲食品の好ましい実施態様においては、前記健康飲食品が、健康食品である。
【0019】
ここで、上記健康食品は、好ましくは、さらに、米粉、そば粉、うどん粉、小麦粉、及びパン粉からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0020】
本発明の健康飲食品の他の好ましい実施態様においては、前記健康飲食品が、健康飲料である。
【0021】
ここで、上記健康飲料は、好ましくは、さらに、水、ココア、コーヒー、紅茶、牛乳、酒、果実飲料、又は野菜飲料を含有する。
【0022】
また、本発明のサプリメントは、上記スダチ由来の組成物を含有することを特徴とする。
【0023】
本発明のサプリメントの好ましい実施態様においては、前記サプリメントの形状が、錠剤、カプセル、液状、パウダー状、又はソフトカプセルである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のスダチ由来の組成物は、血糖降下作用を有するという有利な効果を奏する。しかも素材が天然素材であるので、生物に対して副作用のおそれがなく、効果的に血糖値を下げる作用を有する。また、本発明のスダチ由来の組成物は、糖尿病を発症したヒトの体内において血糖値の低下をもたらす、および将来糖尿病を発症するリスクを低減する化合物を含有するスダチ由来の製品を提供できるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の組成物は、スダチ(Citrus sudachi Hort)の果皮、窄汁後の果肉、及び種からなる群から選択される少なくとも1種を凍結乾燥・粉末化して得たものである。また、本発明の医薬組成物は、血糖値を下げるため又は動脈硬化予防のために、有効量の上記スダチ由来の組成物を含有する。さらに、本発明の健康飲食品は、本発明のスダチ由来の組成物を含有する。ここで、健康食品又は健康飲料の語は、特に限定されず、広く本発明のスダチ由来の組成物を含有する食品、又は飲料を意味するものである。本発明のスダチ由来の組成物は、そのまま食用とすることも可能であるが、自然に食用できるように、後述するように他の天然素材と混合して食用とすることができる。さらにまた、本発明のサプリメントは、本発明のスダチ由来の組成物を含有する。ここで、サプリメントの語は、1994年に成立したDSHEA法[DSHEA(Dietary Supplement Health and Education Act)は、1994年制定のアメリカ医薬品局FDAのサプリメントに関する法律である]によって「ハーブ、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの栄養成分を1種類以上含む栄養補給のための製品」として明確に定義されているように、形状は錠剤(タブレット)、カプセル、パウダー状、ソフトカプセル、液状など、通常の食べ物の形以外のものを意味するものとする。
【0026】
<スダチ由来の組成物の調製方法>
まず、スダチ由来の組成物の調製方法について説明する。スダチの果実などは、従来から食用されており、果実は、農産工場工程において、搾汁等の工程を経て出荷される。農産工場工程において、残渣である果皮及び果肉絞り粕(種を含む)は、通常廃棄されていたが、本発明においては、このような残渣である果皮及び果肉絞り粕を有効利用する。果皮及び/又は果肉絞り粕は、必要に応じて、一旦冷凍保管される。このような果皮及び/又は果肉絞り粕が凍結乾燥される。好ましい実施態様においては、-40〜-25℃の範囲で釜入れし、温度勾配をつけながら前記釜入れから24〜26時間後、40〜60℃の範囲で釜だしして前記凍結乾燥を行う。なお、必要に応じて、凍結乾燥前に、果皮及び/又は果肉絞り粕をカットしたり、また、原料をカットするために解凍し、再び急激に凍らせると品質が安定しないおそれがあるという観点から、果皮及び/又は果肉絞り粕を予備凍結しても良い。予備凍結の条件としては、+15℃〜+5℃で釜入れして、-25℃〜-40℃まで凍らせる。予備凍結の時間は、特に限定されないが、有効成分を極力残すという観点から、15〜17時間が好ましい。また、釜入れの温度を+15℃〜+5℃としたのは、有効成分を極力残すという観点からであり、予備凍結の温度を-25℃〜-40℃までとしたのは、有効成分を極力残すという観点からである。また、粉末化方法は、特に限定されるものではなく、粉砕などの公知の方法に従って実施できる。
【0027】
また、好ましい実施態様において、スダチの果皮及び/又は果肉絞り粕を凍結乾燥・粉末化して得られた組成物は、ヘスペリジン、及びフラボノイドからなる群から選択される少なくとも1種を含有する。これらの成分のうち、ヘスペリジンは、柑橘類の袋の部分では、果肉の50倍、スジの部分では、果肉の300倍含まれているので、本発明のスダチ由来の組成物には、より多くのヘスペリジンが含有されており、ヘスペリジン及びその他の成分の相乗効果によって、血糖値低下作用、及び動脈硬化予防作用などを発揮すると考えられる。
【0028】
<有効量(血糖値低下作用に対して)>
本発明のスダチ由来の組成物は、血糖値を下げるために有効である。そして、本発明の血糖値降下用の医薬組成物は、血糖値を下げるために有効量の上記スダチ由来の組成物を含有する。ここで、有効量が3〜20g/日であることが、好ましい。
【0029】
本発明による血糖値降下用医薬組成物は、有効的な量のスダチ由来の組成物を含み、適当な投与形態の形で調製される。
【0030】
スダチ由来の組成物の投与量は、投与対象患者の病態及びその重篤度、投薬形態、選択した投与経路及び1日当たりの投与回数等により変更することができる。
【0031】
本発明の血糖値降下用医薬組成物におけるスダチ由来組成物の投与量は、凍結乾燥された粉末状態において、ラットでは少なくとも320mg/kg/日となる量であり、ヒトにおいても同量若しくはそれ以下であることが好ましい。
【0032】
<有効量(動脈硬化予防作用に対して)>
本発明のスダチ由来の組成物は、動脈硬化予防用にも有効である。そして、本発明の動脈硬化予防用の医薬組成物は、動脈硬化を予防するために有効量の上記スダチ由来の組成物を含有する。ここで、有効量が3〜20g/日であることが好ましい。
【0033】
本発明による動脈硬化予防用医薬組成物は、有効的な量のスダチ由来の組成物を含み、適当な投与形態の形で調製される。
【0034】
スダチ由来の組成物の投与量は、投与対象患者の病態及びその重篤度、投薬形態、選択した投与経路及び1日当たりの投与回数等により変更することができる。
【0035】
本発明の動脈硬化予防用医薬組成物におけるスダチ由来組成物の投与量は、凍結乾燥された粉末状態において、ラットでは少なくとも320mg/kg/日となる量であり、ヒトにおいても同量若しくはそれ以下であることが好ましい。
【0036】
また、投与形態としては、経口剤(タブレット、カプセル、被膜タブレット、顆粒、溶液、シロップ)、直腸投与用坐剤、注射等を挙げることができる。投与対象患者は、慢性疾患の場合が多く、長期投与の必要性、連用の容易性という観点から、好ましくは、経口剤である。
【0037】
投与形態には、従来の他の成分、例えば、安定保存剤、甘味料、着色剤、芳香料などを含ませることができる。
【0038】
<急性毒性試験>
天然素材であるので、毒性について特に問題になりそうな成分として、ヘスペリジンがある。文献によれば、マウスにおいて、メチルヘスペリジンを5%含有する餌を与えても何ら毒性を示さないという報告がされている(Toxico Lett. 1993 Jul;69(1):37-44)。
【0039】
<健康飲食品>
次に、本発明の健康飲食品について説明する。上述のようにして得られたスダチ由来組成物の粉末1〜20g程度を、水20〜200mlに溶かして食用することができる。これを1日2〜3回服用することができる。
【0040】
上記スダチ由来の組成物を含有する健康食品は、食事の代用、間食として食用することもできる。この場合、上記スダチ由来組成物粉末と、米粉、そば粉、うどん粉、小麦粉、及びパン粉からなる群から選択される少なくとも1種とを調合して、通常の料理に利用することもできる。また、これらを洋菓子、和菓子、菓子、うどん、そば、パスタ、中華そば、パン等に加工して、さらに食べやすくしても良い。これらの料理方法は常法に従う。
【0041】
また、健康食品の状態は、固体状(粉末、顆粒状)、ゼリー状、液体、懸濁状のいずれでもよい。また、健康食品、又は健康飲料には、甘味料、酸味料、ビタミン剤、ドリンク剤などに含まれる各種成分等が含まれていても良い。
【0042】
また、健康飲料の場合には、さらに水、ココア、コーヒー、紅茶、牛乳、酒、果実飲料、及び野菜飲料からなる群から選択される少なくとも1種を含有してもよい。上述のようにして得られたスダチ由来組成物の粉末1〜10g程度を、水20〜200mlに溶かして食用する場合に、さらに水、ココア等に溶かして飲用することができる。
【0043】
いずれにしても、本発明の健康食品及び健康飲料の飲食方法は自由であり、特に限定されない。したがって、食品素材を活かした飲食方法であれば、本発明の効果を期待できる。よって、発明の実施態様、及び以下の実施例において記述した飲食方法は、単に説明するために用いた本発明の一例にすぎず限定的な解釈とされるべきものではない。
【0044】
<サプリメント>
次に、本発明のサプリメントについて説明する。本発明のサプリメントは、上述した本発明のスダチ由来組成物を含有する。サプリメントは、特に、忙しくて通常の食事をとれない者や、ハイキング、サイクリング、ランニングしている者、競争者等のパッケージ入りのインスタント高エネルギースナックを運動中に必要とする者にとって、有用な栄養補給となる。本発明のサプリメントにおいて、スダチ由来の組成物に関しては、上述の説明をそのまま適用することができる。
【0045】
上記スダチ由来の組成物の他に、本発明のサプリメントに配合される配合成分は、特に限定されるものではない。このような配合成分として、例えば、小麦澱粉、米澱粉、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、α化澱粉、部分α化澱粉、乳糖、麦芽糖、還元乳糖、還元麦芽糖、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、白糖、ブドウ糖、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、トラガントガム、プルラン、寒天、ゼラチン、大豆食物繊維、結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ポリビニルピロリドン、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、植物硬化油、植物油脂末、カルナウバロウ、カカオ脂末、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、二酸化ケイ素、タルク、ケイ酸アルミニウム、リン酸水素カルシウム等の市販品を挙げることができる。
【0046】
本発明のサプリメントの好ましい態様は、錠剤、カプセル、液状、パウダー状、ソフトカプセルである。例えば、錠剤は、上述のスダチ由来組成物、および必要に応じて前記配合成分を混合したものを常法に従って圧縮成形するか、または、上述のスダチ由来組成物、および必要に応じて前記配合成分を適当な方法で顆粒状とした後、常法に従って圧縮成型して製造できる。
【0047】
また、本発明のサプリメントには、市販の糖菓被覆材料を用いてもよい。本発明において、糖菓被覆材料は、ココアバターベースであってもよいし、あるいは硬化した植物油からなる配合被覆(compound coating)であってもよい。配合被覆に用いられる硬化した植物油の例としては、綿実油、ヤシ油、ダイズ油、パーム油、ラッカセイ油が挙げられる。これらの硬化した植物油は、砂糖と混合され、被覆材料の主要成分をなす。配合被覆は、ピーナツ風味、フルーツ風味、チョコレート風味、バニラ風味、ココナッツ風味、又は他の市販されている香味料で風味を付けられていてもよい。
【0048】
本発明によるサプリメントに、幾つかの食用蛋白質源から得られる蛋白質を単独でまたは組み合わせて用いることによって、栄養強化することもできる。蛋白質源の例としては、乳漿粉、イナゴマメ粉、ダイズレシチン、ピーナッツ粉、小麦蛋白質(小麦麦芽等)及びカゼイン塩(カゼイン酸カルシウム、カゼイン酸カリウム及びカゼイン酸ナトリウム等)が挙げられる。
【0049】
本発明のサプリメントに好適な炭水化物源の例としては、トウモロコシ、大麦、玄米などを麦芽処理した穀類シロップ;モルトデキストラン;フルクトース;高フルクトースコーンシロップ;ナツメヤシペースト;スクロース;赤砂糖及びそれらの混合物が挙げられる。複合多糖源の例としては、オート麦、米、大麦及びトウモロコシなどの穀類由来のものが挙げられる。
【0050】
また、本発明のサプリメントは、更に脂肪を含んでも良い。脂肪は、単位重量あたり最もエネルギーを多く提供する源であり、蛋白質又は炭水化物の約2倍のエネルギーを提供する。糖菓被覆材料に加えて、本発明で用いられる脂肪源の例としては、チョコレート、ココア及びココナッツ等の香味料、及び少なくとも1種の部分的に水素化した植物油(ダイズ油、綿実油、コーン油やパーム油など)が挙げられる。
【0051】
別の好ましい態様においては、サプリメントは、飲料の形状で提供される。本発明で用いられる飲料の例としては、水;アップルジュース、オレンジジュース、グレープフルーツジュース、クランベリージュース、パイナップルジュース、グレープジュース等のフルーツジュース;及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
【0053】
(実施例1)
<スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕の調製>
一旦冷凍保管されたスダチの果皮及び果肉絞り粕を、凍結乾燥に用いた。凍結乾燥を-35℃で、24時間行った後、+45℃で釜出しして、粉砕することによりスダチ由来の粉末を得た。次に、スダチ果皮と果肉絞り粕を凍結乾燥後、粉末化した試料の成分を調べた。スダチ果皮と果肉絞り粕を凍結乾燥後、粉末化した試料の栄養分析結果から、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕100g中には、以下の成分が含まれていた(表1参照)。なお、表1中のシネフィリン含有量の欄には、"F. Kusu, K. Matsumoto, K. Takamura, Direct Separation and Determination of Synephrine Enantiomers by High-Performance liquid Chromatography with Electrochemical Detection, Chem. Pharm. Bull., 43(7), 1158-1161(1995)."に記載のスダチ乾燥果皮100g中のシネフィリン含有量の値を参考値として記載した。
【0054】
【表1】

【0055】
(実施例2)
次に、Zucker-fatty ratを用いて、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕の抗糖尿病効果の検討を行った。ここで、Zucker fatty ratとは、多食による肥満を伴い、高脂血症、高インシュリン血漿、高レプチン血漿を呈するラットであり、肥満に伴う糖・脂質代謝異常、インスリン抵抗性の研究に汎用されている。
【0056】
6週齢のZucker-fatty ratをコントロール群、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕粉末群(320mg/kg/day)の2群(n=7)に分け、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕粉末群には、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕粉末水懸濁液(160mg/ml)を1日1回、2ml/kgの割合で経口ゾンデを用い経口投与する。コントロール群には、蒸留水を同様に投与する。体重は連日測定、血圧(最高、最低、心拍数)は毎週、血糖値は半月毎、血中インスリン濃度は1ヶ月毎に測定する。血中脂質は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与130日目に行った。
【0057】
体重の変化を図1に示す。この結果より、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕の投与は体重を減少させないことが示された。
【0058】
血圧及び脈拍の変化を図2及び図3に示す。図2は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による血圧の変化を示しており、また、図3は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による脈拍の変化を示している。スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕中には、昇圧物質であるエピネフリンと分子構造が類似したシネフィリンが含まれ、このシネフィリンには脈拍増加・血圧上昇作用があることが報告されている。しかしながら、今回の実験では、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕の投与による有意な血圧上昇や脈拍の増加は観察されなかった。
【0059】
血中脂質の変化を図4及び図5に示す。図4は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による、総コレステロール(A)、HDLコレステロール値(B)、およびLDLコレステロール値(C)の変化(採血は、実験開始6ヶ月後)を示しており、また、図5は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による、動脈硬化指数の変化(採血は実験開始6ヶ月後)を示している。その結果、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与により、遊離脂肪酸、HDL・LDLコレステロール値は変化が見られなかった(図4参照)。また、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与により、動脈硬化指数[(総コレステロール値−HDLコレステロール値)÷HDLコレステロール値]の低下が見られた(図5参照)。
【0060】
血糖値の変化を図6に示す。図6は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による血糖値の変化(# p<0.05)を示している。その結果、コントロール群では経日的に血糖値が上昇していったのに対し、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与群は有意に血糖値の上昇が抑制されていた。
【0061】
血中インスリン濃度の変化を図7に示す。図7は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による、血中インスリン濃度の変化を示している。その結果、血中インスリン濃度については、コントロール群とスダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与群間に差は見られなかった。
【0062】
以上の結果よりスダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与によって、血中インスリン濃度や脂質代謝には変化を与えないが、血糖値の有意な低下が観察された。
【0063】
次に、図6の結果より、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与によって高血糖改善作用(インスリン抵抗性改善作用)が観察されたので、さらにこの点を明らかにするべく、グルコース負荷試験を行った。
【0064】
グルコース負荷試験とは、一晩絶食させた動物に一定濃度のグルコースを飲ませ、摂取直前、摂取後一定時間後に血糖値を測定し、その血糖値の推移のパターンから糖尿病の程度を類推するものである。特に、典型的な糖尿病状態ではグルコース摂取後30分、1時間後に異常に高い血糖値を示し、2時間経っても180mg/dl以上でなかなか下がらないという特徴的なパターンを示す。
【0065】
そこで、ラットを一晩絶食させた後採血し、実験開始前の血糖値を測定して直ちに0.75g/mlのGlucose溶液を4ml/kgの割合で経口投与し、投与後5分、10分、15分、30分、45分、1時間、1時間30分、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間後の血糖値を測定した。図8に、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による、グルコース負荷試験の結果を示す。
【0066】
この結果、コントロール群では、グルコース服用前で既に血糖値が130mg/dlであり(正常値は100mg/dl以下)、かつグルコースを摂取させると血糖値は310mg/dlまで上昇した。一方、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与群では、絶食時の血糖値は90mg/dlであり、グルコースを摂取させた場合も、その最高血中濃度は218mg/dlであった。このように、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕を摂取させたラットで、糖負荷による血糖値の上昇が抑制されたことから、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕の摂取が糖尿病における血糖値の上昇を抑制することが、図6の結果と共に裏付けられた。
【0067】
更に、上記のZucker-fattyラットにスダチ乾燥果皮・果肉絞り粕を1日当たり320mg/kgの割合で1年間に渡り経口投与し続けたところ、投与開始1年目で生存率の有意な改善が見られた(図9参照)。このことから、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕には、糖尿病発症予防効果と共に、生存率を改善する何らかの有効性があることが強く示唆された。
【0068】
(実施例3)
<培養細胞を用いたスダチ乾燥果皮・果肉絞り粕の薬効評価>
近年の研究によって、老化の進展には、生体内で産生される“酸化ストレス”の存在が大きく関与することが指摘されている。そこで、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕に含有される2成分(Hesperidin, Hesperetin)について、抗酸化活性ならびに酸化ストレスを与えた培養細胞に対する保護効果を検討した。
【0069】
抗酸化活性は、比較的安定なラジカルを持つ1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazyl(DPPH)に対する消去活性を電子スピン共鳴(Electron Paramagnetic Resonance: EPR)法にて評価した(この測定法については、Chem Pharm Bull (Tokyo). 52, 186-191, 2004.に報告済である)。
【0070】
その結果、HesperidinにはDPPH消去活性は見られなかったが、消化管内で加水分解されて生じるHesperetinには弱いながら抗酸化活性が認められた(Hesperetin3分子でDPPHラジカル1分子を消去)。
【0071】
また、酸化ストレスを与えた培養細胞に対する保護効果は、次のようにして評価した。まず、Wistar系雄性ラットの腎より単離したメサンギウム細胞(1×105 cells/well)を24時間培養後、12時間スタベーションを行い、その後50mMの検体(Hesperidin、Hesperetin及びSudatitin)を添加した。1時間後に培養細胞に対する酸化ストレス源として300mMの過酸化水素を添加し、8時間インキュベーションした後、細胞からの乳酸脱水素酵素(LDH)の漏出を測定することで、酸化ストレスに対する保護効果を検討した。図10に、Hesperidin, Hesperetinによる酸化ストレス抑制効果(p<0.01)を、図11に、Sudatitinによる酸化ストレス抑制効果(p<0.001)を示す。
【0072】
その結果、Hesperetin(図10参照)、Sudatitin(図11参照)ともに過酸化水素によって惹起されたメサンギウム細胞の障害を有意に改善するという結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のスダチ由来の組成物は、生物に対する副作用を伴うことなく、血糖降下作用及び血中脂質改善作用、並びに生存率改善作用を有するので、広範な分野において適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、体重の変化を示す。
【図2】図2は、血圧の変化を示す。
【図3】図3は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による脈拍の変化を示す。
【図4】図4は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による、総コレステロール(A)、HDLコレステロール値(B)、およびLDLコレステロール値(C)の変化を示す(採血は、実験開始6ヶ月後)。
【図5】図5は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による、動脈硬化指数の変化を示す(採血は実験開始6ヶ月後)。
【図6】図6は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による血糖値の変化(# p<0.05)を示す。
【図7】図7は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による、血中インスリン濃度の変化を示す。
【図8】図8は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による、グルコース負荷試験の結果を示す。
【図9】図9は、スダチ乾燥果皮・果肉絞り粕投与による、生存率の変化(p<0.05)を示す。
【図10】図10は、Hesperidin, Hesperetinによる、酸化ストレス抑制効果(p<0.01)を示す。
【図11】図11は、Sudatitinによる、酸化ストレス抑制効果(p<0.001)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スダチ(Citrus sudachi Hort)の果皮、窄汁後の果肉、及び種からなる群から選択される少なくとも1種を凍結乾燥・粉末化して得た組成物。
【請求項2】
前記凍結乾燥が、-40〜-25℃の範囲で釜入れし、温度勾配をつけながら前記釜入れから24〜26時間後、40〜60℃の範囲で釜だしを行うものである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ヘスペリジン及びフラボノイドからなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
血糖値を下げるために、有効量の請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物を含有する医薬組成物。
【請求項5】
前記有効量が、3〜20g/日である請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
動脈硬化予防のために、有効量の請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物を含有する医薬組成物。
【請求項7】
前記有効量が、3〜20g/日である請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物を含有する健康飲食品。
【請求項9】
健康飲食品が、健康食品である請求項8に記載の健康飲食品。
【請求項10】
さらに、米粉、そば粉、うどん粉、小麦粉、及びパン粉からなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項9に記載の健康飲食品。
【請求項11】
健康飲食品が、健康飲料である請求項8に記載の健康飲食品。
【請求項12】
さらに、水、ココア、コーヒー、紅茶、牛乳、酒、果実飲料、又は野菜飲料を含有する請求項11に記載の健康飲食品。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物を含有するサプリメント。
【請求項14】
サプリメントの形状が、錠剤、カプセル、液状、パウダー状、又はソフトカプセルである請求項13に記載のサプリメント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−77139(P2007−77139A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221171(P2006−221171)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【出願人】(505312372)ケイティーティー貿易株式会社 (2)
【出願人】(504158700)徳島市農業協同組合 (1)
【Fターム(参考)】